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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137353
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】二酸化炭素貯留方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240927BHJP
   B01F 21/00 20220101ALI20240927BHJP
   B01F 23/45 20220101ALI20240927BHJP
   B01F 25/00 20220101ALI20240927BHJP
   B01F 23/2373 20220101ALI20240927BHJP
   B01F 23/231 20220101ALI20240927BHJP
【FI】
B01J19/00 A
B01F21/00
B01F23/45
B01F25/00
B01F23/2373
B01F23/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048846
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 康一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 郷司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英一
(72)【発明者】
【氏名】刈茅 孝一
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃治
【テーマコード(参考)】
4G035
4G075
【Fターム(参考)】
4G035AA01
4G035AB04
4G035AB37
4G035AC01
4G035AC22
4G075AA04
4G075AA13
4G075BA06
4G075BB03
4G075BB05
4G075BD03
4G075BD05
4G075BD13
4G075BD15
4G075BD27
4G075CA65
4G075DA01
4G075DA02
4G075EA02
4G075EB01
4G075FB01
4G075FB02
4G075FB03
4G075FB04
4G075FB12
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を、比較的浅い地層において、早期かつ確実に炭酸塩鉱物として貯留する。
【解決手段】二酸化炭素を地中に貯留する二酸化炭素貯留方法であって、水に前記二酸化炭素が溶解した二酸化炭素溶解マイクロバブル水と、前記二酸化炭素と反応して炭酸塩鉱物となるカプセル状の樹脂組成物と水を混合して、前記地中に2液を同時注入する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を地中に貯留する二酸化炭素貯留方法であって、
水に前記二酸化炭素が溶解した二酸化炭素溶解マイクロバブル水と、
前記二酸化炭素と反応して炭酸塩鉱物となるカプセル状の樹脂組成物と水
を混合して、前記地中に2液を同時注入することを特徴とする二酸化炭素貯留方法。
【請求項2】
二酸化炭素を地中に貯留する二酸化炭素貯留方法であって、
前記二酸化炭素と、
前記二酸化炭素と反応して炭酸塩鉱物となるカプセル状の樹脂組成物と水との混合液と、
を事前に混合して、二酸化炭素溶解マイクロバブル水としたのちに、前記地中に注入することを特徴とする二酸化炭素貯留方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の二酸化炭素貯留方法であって、
pH調整剤をさらに混合して前記地中に注入する、
ことを特徴とする二酸化炭素貯留方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の二酸化炭素貯留方法であって、
前記カプセル状の樹脂組成物は、カルシウムイオンの放出材を含む、
ことを特徴とする二酸化炭素貯留方法。
【請求項5】
請求項4に記載の二酸化炭素貯留方法であって、
前記カプセル状の樹脂組成物は、前記放出材による前記カルシウムイオンの放出を制御する放出制御材を含む、
ことを特徴とする二酸化炭素貯留方法。
【請求項6】
請求項1に記載の二酸化炭素貯留方法であって、
前記2液は、地表で混合されて、前記地中に同時注入される、
ことを特徴とする二酸化炭素貯留方法。
【請求項7】
請求項2に記載の二酸化炭素貯留方法であって、
前記カプセル状の樹脂組成物と前記水は、地表で混合されて、
前記二酸化炭素は、前記地中で前記混合液と混合される、
ことを特徴とする二酸化炭素貯留方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の二酸化炭素貯留方法であって、
前記水には、前記地中の帯水層から汲み上げられたものが用いられる、
ことを特徴とする二酸化炭素貯留方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素貯留方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素をマイクロバブルとして、地中の帯水層に貯蓄する方法が提案されている。二酸化炭素をバブル化することで、岩石の間隙に入りやすく、地表への漏洩がしにくく、バブルとして存在する二酸化炭素(CO)も含んだ貯留方法となる。
【0003】
また、バブル化した二酸化炭素を水(例えば海水や地下水)に溶解させることが可能であることが知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、二酸化炭素を溶解させた水は弱酸性となる。この弱酸性の水を地中(例えば帯水層)に入れても、注入部分に炭酸塩鉱物、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)などが大量に含まれていれば、中和されることも明らかになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-238054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二酸化炭素の地中貯留というと、超臨界となる深度(地下水位以下800m以深)が対象であり、さらに背斜構造がある岩盤が対象である。そのため、深いボーリングに費用がかかり、適地まで二酸化炭素を運ぶためのパイプライン設置やタンクでの輸送に特に費用がかかっている。
【0006】
さらに、超臨界状態にある二酸化炭素は、それがガスになって、地下水に溶けて、地下水中の陽イオンと反応して、炭酸塩鉱物という安定な鉱物となるためには、何万年という年月が必要であった。何年のモニタリング期間を設ければ安定に貯留されていることを検証できるのかが課題であった。このため、社会的な受容がなかなか得られていないのが現状である。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、二酸化炭素を、比較的浅い地層において、早期かつ確実に炭酸塩鉱物として貯留することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、二酸化炭素を地中に貯留する二酸化炭素貯留方法であって、水に前記二酸化炭素が溶解した二酸化炭素溶解マイクロバブル水と、前記二酸化炭素と反応して炭酸塩鉱物となるカプセル状の樹脂組成物と水を混合して、前記地中に2液を同時注入する二酸化炭素貯留方法である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二酸化炭素を、比較的浅部の地層において、早期かつ確実に炭酸塩鉱物として貯留することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施系形態の二酸化炭素の貯留方法を示すフロー図である。
図2】第1実施系形態の貯留方法を実施する構成の一例を示す概略説明図である。
図3】コンクリーション化剤の構成成分の一例を示す図である。
図4】第2実施系形態の二酸化炭素の貯留方法を示すフロー図である。
図5】第2実施系形態の貯留方法を実施する構成の一例を示す概略説明図である。
図6】二酸化炭素マイクロバブル地中貯留システムの一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
(態様1)
二酸化炭素を地中に貯留する二酸化炭素貯留方法であって水に前記二酸化炭素が溶解した二酸化炭素溶解マイクロバブル水と、前記二酸化炭素と反応して炭酸塩鉱物となるカプセル状の樹脂組成物と水を混合して、前記地中に2液を同時注入することを特徴とする二酸化炭素貯留方法。
【0014】
態様1の二酸化炭素貯留方法によれば、比較的浅部の地層において、自然の鉱物化過程に任せるのではなく、強制的に数時間程度の早期に鉱物化を図ることができる。これにより二酸化炭素を早期かつ確実に炭酸塩鉱物として貯留することができる。
【0015】
(態様2)
二酸化炭素を地中に貯留する二酸化炭素貯留方法であって、前記二酸化炭素と、前記二酸化炭素と反応して炭酸塩鉱物となるカプセル状の樹脂組成物と水との混合液と、を事前に混合して二酸化炭素溶解マイクロバブル水としたのちに、前記地中に注入することを特徴とする二酸化炭素貯留方法。
【0016】
態様2の二酸化炭素貯留方法によれば、比較的浅部の地層において、早期かつ確実に炭酸塩鉱物として貯留することができる。
【0017】
(態様3)
態様1又は態様2に記載の二酸化炭素貯留方法であって、pH調整剤をさらに混合して前記地中に注入することが望ましい。
【0018】
態様3の二酸化炭素貯留方法によれば、一時的な地下水のpHの変化を抑制することができ、生態系への影響および重金属の溶出を抑制できる。
【0019】
(態様4)
態様1~3の何れかに記載の二酸化炭素貯留方法であって、前記カプセル状の樹脂組成物は、カルシウムイオンの放出材を含むことが望ましい。
【0020】
態様4の二酸化炭素貯留方法によれば、非常に緻密で硬い炭酸カルシウムを短期間で析出し、長期に安定させることができる。
【0021】
(態様5)
態様4に記載の二酸化炭素貯留方法であって、前記カプセル状の樹脂組成物は、前記放出材による前記カルシウムイオンの放出を制御する放出制御材を含む、ことが望ましい。
【0022】
態様5の二酸化炭素貯留方法によれば、炭酸塩鉱物の析出場所をコントロールすることができる。
【0023】
(態様6)
態様1に記載の二酸化炭素貯留方法であって、前記2液は、地表で混合されて、前記地中に同時注入されてもよい。
【0024】
態様6の二酸化炭素貯留方法によれば、地表から地中に2液を同時に送ることができる。
【0025】
(態様7)
態様2に記載の二酸化炭素貯留方法であって、前記カプセル状の樹脂組成物と前記水は、地表で混合されて、前記二酸化炭素は、前記地中で前記混合液と混合されてもよい。
【0026】
態様7の二酸化炭素貯留方法によれば、地中で二酸化炭素溶解マイクロバブル水を生成でき、カプセル状の樹脂組成物と混ぜることができる。これにより、二酸化炭素の貯留量をより増やすことができる。
【0027】
(態様8)
態様1~7の何れかに記載の二酸化炭素貯留方法であって、前記水には、前記地中の帯水層から汲み上げたものが用いられることが望ましい。
【0028】
態様8の二酸化炭素貯留方法によれば、帯水層の水を有効利用でき、また、帯水層の水質をモニタリングしつつ二酸化炭素を貯留することができる。
【0029】
===第1実施形態===
<<二酸化炭素マイクロバブル地中貯留について>>
二酸化炭素マイクロバブル地中貯留システム(CMS)は、二酸化炭素(以下、CO)のマイクロバブルで作成したCO溶解水を地中に貯留する方法である。このCMSで地中に注入されるCO溶解水の比重(密度)は、周辺の地下水の比重(密度)よりも大きい。このため、CO溶解水は沈降するので、COの漏洩リスクが低いと考えられている。
【0030】
図6は、二酸化炭素マイクロバブル地中貯留システムの一例を示す概念図である。
【0031】
図6に示すシステムは、揚水井12、ポンプ14、パイプ15、注水井16、工場20、パイプ22、圧縮機24を備えて構成されている。なお、図6において、黒色の矢印はCOの流れを示し、白色の矢印は水の流れを示している。
【0032】
揚水井12は、帯水層1の水を汲み上げるための坑井であり、地上から帯水層1まで貫通している。また、揚水井12はモニタリング孔を兼ねており、帯水層1の水質を直接監視できる。
【0033】
ポンプ14は、揚水井12から帯水層1の水(地下水)を汲み上げるとともに、汲み上げた水をパイプ15に圧縮・輸送(圧送)する。
【0034】
注水井16は、帯水層1にCO溶解水を注入(圧入)するための坑井であり、地上から帯水層1まで貫通している。また、注水井16は、パイプ15及びパイプ22と連通している。
【0035】
圧縮機24は、工場20からパイプ22を介して送られてきたCOを圧縮し、COをマイクロバブル化して、パイプ15の水(地下水)に溶解させる。これにより、CO溶解水(CO溶解マイクロバブル水)が生成される。
【0036】
そして、CO溶解水は、注水井16から帯水層1に注入(圧入)される。注水井16から注入されたCO溶解水は暫時沈降する。
【0037】
なお、COガスを水に溶解させた際の水中での存在形態は以下の4つである。
【0038】
(1)CO分子の形
CO分子が水のミクロな構造の空孔(水素結合で繋がった水分子相互の間にできる空孔)に収まって存在する形である。化学変化を伴わないことから、下記の(2)~(4)と区別して物理的溶解と呼ばれることもある。
【0039】
(2)炭酸(HCO)の形
上記のCO分子の一部は水分子と反応して炭酸になる。
CO+HO⇔HCO
この反応の平衡定数は1.7×10-3(25℃)と小さく、平衡状態は左辺に偏っている。すなわち、通常の水中では上記(1)のCO分子としての存在が圧倒的に多い。
【0040】
(3)炭酸水素イオン(HCO )の形
上記の炭酸の一部は、炭酸水素イオンと水素イオンに解離する。
CO⇔HCO +H
この反応の平衡定数は2.5×10-4(25℃)と小さく、平衡状態は左辺に偏っている。換言すると、炭酸は弱酸(水素イオンの発生力が弱い酸)である。なお、炭酸水素イオンは重炭酸イオンとも呼ばれる。
【0041】
(4)炭酸イオン(CO 2-)の形
上記の炭酸水素イオンの一部は、さらに炭酸イオンと水素イオンに解離する。
HCO ⇔CO 2-+H
この反応の平衡定数は4.7×10-11(25℃)と非常に小さく、平衡状態は著しく左辺に偏っている。換言すると、通常の水にCOガスを溶解させた際の炭酸イオンの量は無視できるほど小さい。
【0042】
よって、例えば、昇圧により、COの溶解を促進させると、溶解量とともに(1)の物理的溶解量が増え、(2)~(4)の反応が進行し、水素イオンの生成量が増え、pHが低下する。このようにCO溶解水は、溶解量と平衡定数に応じて水素イオン濃度が決まり、弱酸性を示す。
【0043】
一方、地下水は、中性~弱アルカリ性であることが多い。このため、弱酸性のCO溶解水を地中(例えば帯水層)に注入しても、注入部分に炭酸塩鉱物、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)などが大量に含まれていれば、弱酸性のCO溶解水が中和され、炭酸塩鉱物が析出される。例えば、カルシウムが含まれている場合、以下のように炭酸カルシウムが析出される。
CO 2-+Ca2+⇔CaCO(炭酸カルシウム)
この反応は、[CO 2-]の濃度と[Ca2+]の濃度の積[CO 2-][Ca2+]に依存する(これを溶解度積という)。したがって、それぞれの濃度を高めることで炭酸カルシムが析出し、COを大量に貯留することが可能となる。
【0044】
しかし、地中に上記の炭酸塩鉱物、Ca、Mgなどが少ない場合、CO溶解水の注入量が多くなると中和できなくなる。この場合、地下水が弱酸性になり、地下の生態系に影響を与えたり、帯水層に含まれる重金属等が地下水に溶け出したりするおそれがある。
【0045】
さらに、二酸化炭素の地中での最終形態は炭酸塩鉱物という安定な鉱物であり、それになるのに自然状態では何万年という時間を要する。このような状況について住民や行政の理解を得ることが難しいという社会的受容性に課題があり、二酸化炭素の貯留量を増やすことが困難であった。
【0046】
そこで、本実施形態では、地中へCOと陽イオンを同時に注入することにより、早期鉱物化およびCOの貯蓄量の増大を図っている。
【0047】
<<本実施形態のCO貯留方法について>>
図1は、第1施系形態の二酸化炭素の貯留方法を示すフロー図である。また、図2は、第1実施系形態の貯留方法を実施する構成の一例を示す概略説明図である。なお、図2において、図6と同一構成の部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0048】
本実施形態では、図1に差示すように圧力槽30を備えている。圧力槽30は地上(地表)に設けられている。
【0049】
圧力槽30は、マイクロバブル化された二酸化炭素(CO)を水に溶解させるとともに、水とコンクリーション化剤(後述)を混合するための部材である。圧力槽30には、帯水層1から揚水井12を介して汲み上げられた水(地下水)が取り込まれる。また、工場20から排出されたCOが圧縮機24でマイクロバブル化されてパイプ26を介して取り込まれる。さらに、圧力槽30には、投入口32からコンクリーション化剤が投入される。そして、圧力槽30は、その混合物を、注入井16を介して地中(帯水層1)に注入(圧入)する。なお、圧力槽30は、地下水圧相当の圧力となるように設定されている。
【0050】
次に、図1及び図2を参照しつつ、第1実施形態の二酸化炭素の貯留方法を説明する。
【0051】
まず、工場20から排出された二酸化炭素(CO)を圧力機24でマイクロバブル化して、圧力槽30において、帯水層1から汲み上げられた水(地下水)に溶解させる。これにより、二酸化炭素(CO)溶解マイクロバブル水を生成する(S101)。なお、ここでは二酸化炭素をマイクロバブル化しているが、これには限られず、微細な気泡状であればよい。例えば、ナノバブルでもよい。上述したようにCO溶解水(CO溶解マイクロバブル水)は、弱酸性である。また、CO溶解水ではCOが過飽和となっている。
【0052】
また、圧力槽30にカプセル状のコンクリーション化剤(後述)を投入し、カプセル状のコンクリーション化剤と水を混合する(S202)。本実施形態において、コンクリーション化剤は、固形状のものを粉砕機等で粉砕等することにより、粉体状に形成されており、マイクロカプセルに封入されている。カプセルは水溶性のものが好ましく、その材料としては、加水分解性を有するエチルセルロース、ゼラチン等のタンパク質、アルギン酸、デンプン、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、及びポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。なお、この際、後述するpH調整剤も混合することが望ましい。
【0053】
そして、圧力槽30から注水井16を介して、上記の2液(CO溶解マイクロバブル水、コンクリーション化剤と水の混合液)を地中の帯水層1に同時に注入(圧入)する(S103)。後述するように、コンクリーション化剤は、陽イオン(具体的にはCaイオン)の放出材を有している。上記混合物の注入後に、コンクリーション化剤から放出された陽イオン(Caイオン)とCO溶解マイクロバブル水の炭酸イオン(重炭酸イオン)とによって難溶性の炭酸カルシウム(炭酸塩鉱物に相当)が析出する。
【0054】
なお、コンクリーション化剤(特に後述するマトリックス材)の成分や濃度の調整により、炭酸カルシウムが析出する場所をコントロールすることができる。また、上述したように、コンクリーション化剤がカプセル状(粉体状)に形成されていることにより、水に混合しやすく、また、イオンになる前の状態で、遠くまで届かせるようにすることができる(混合物を注入する注水井などが、析出する炭酸カルシウムによって塞がらないようにできる)。
【0055】
こうして、地中の比較的浅い地層(ここでは帯水層1)に、炭酸カルシウムとしてCOを貯留することができる。本実施形態では、混合物に含まれるコンクリーション化剤の陽イオン(Caイオン)とCO溶解マイクロバブル水の炭酸イオンが反応して、炭酸カルシウムとして析出する。地中の炭酸塩鉱物、Ca、Mgの量にかかわらず、人工的にCOとCaイオンを注入することで、COの貯留量を増やすことができる。
【0056】
<コンクリーション及びコンクリーション化剤について>
コンクリーションは、非常に緻密で硬い炭酸カルシウム(CaCO)を母材とする塊であり、多くの場合、内部に化石を含んでいる。コンクリーションは、内部に化石として含まれる生物の体組織を構成していた炭素成分が重炭酸イオン(HCO )として外部に浸出し、地層中に存在していたカルシウムイオンと化学反応を起こし、水に対する溶解度が小さい炭酸カルシウムとして沈殿することにより形成されたものである。このメカニズムにより、コンクリーションは、自然環境に晒されても風化しない化学的に極めて安定で緻密なバリアを生物の周囲に形成する。
【0057】
コンクリーション化剤(樹脂組成物に相当)は、コンクリーションと同様のメカニズムにより、内部より放出したイオンにより周辺に化学的に安定な難溶性塩を形成できる材料である。なお、本実施形態における難溶性塩は、上述したように炭酸カルシウムである。コンクリーション化剤は、例えば、構造物の亀裂などのシーリングや道路・トンネル周辺岩盤の地下水抑制などに用いられる。
【0058】
図2は、コンクリーション化剤の構成成分の一例を示す図である。
【0059】
図2に示すように、コンクリーション化剤は、イオン放出材と、マトリックス材とを含んでいる。
【0060】
イオン放出材(放出材に相当)は、イオンを発生(放出)する材料であり、陽イオン(ここではカルシウムイオン)を発生するCaイオン発生材料や、陰イオン(ここでは炭酸イオン)を発生するCOイオン発生材料を含んでいる。なお本実施形態のコンクリーション化剤には、少なくともCaイオン発生材料が含まれている。
【0061】
Caイオン発生材料としては、無機酸塩や有機酸塩が挙げられる。例えば、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、及び硫酸カルシウム等が挙げられる。
【0062】
COイオン発生材料としては、金属-重炭酸塩や金属-炭酸塩等が挙げられる。金属-重炭酸塩としては、例えば、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。また、金属-炭酸塩としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸銅(II)、炭酸鉄(II)、及び炭酸銀(I)等が挙げられる。
【0063】
マトリックス材(放出制御材に相当)は、上述したイオン放出材を運んだり、イオン放出材がイオンを発生するタイミングを制御したりするための材料である。マトリックス材の条件(成分や濃度など)によって、炭酸カルシウムの析出場所をコントロールすることができる。マトリックス材は、硬化性材料もしくは可塑性材料からなる。
【0064】
硬化性材料としては、硬化性成分を含む硬化性樹脂が挙げられる。上記硬化性樹脂成分には、硬化性化合物、硬化剤、及び光重合開始剤等が含まれる。上記硬化性成分は、上記硬化性化合物と、上記硬化剤とを含むことが好ましい。上記硬化性成分は、上記硬化性化合物と上記硬化剤との混合物であることが好ましい。上記硬化性化合物、上記硬化剤、及び上記光重合開始剤はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
上記硬化性樹脂成分は、樹脂と溶剤とを混合した樹脂含有溶液を加熱乾燥して、溶剤を除去して得られる23℃で固体の樹脂であってもよく、モノマー溶液又はオリゴマー溶液を重合して得られる23℃で固体のポリマーであってもよく、2種以上のモノマー又は2種以上のオリゴマーを反応させて得られる23℃で固体のポリマーであってもよい。
【0066】
上記硬化性化合物としては、シリコーン化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物、フェノール化合物、ビニルエステル化合物、及びナフトキサジン化合物等が挙げられる。
【0067】
上記シリコーン化合物としては、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノポリシロキサンの主鎖は、ジオルガノシロキサンの重合体が一般的であるが、一部枝分かれした構造又は環状の構造を有していてもよい。上記オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、ペテニル基、へキセニル基、オクテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
【0068】
上記シリコーン化合物は、変性シリコーン化合物であってもよい。
【0069】
上記変性シリコーン化合物としては、特に限定されないが、湿気硬化型の変性シリコーン化合物等が挙げられる。湿気硬化型の変性シリコーン化合物は、加水分解性ケイ素基を有する。上記加水分解性ケイ素基を有する変性シリコーン化合物は、ポリエーテル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー又はアクリル系ポリマーを主鎖(加水分解性ケイ素基を除く部分)として有する。したがって、上記主鎖の材料となるモノマーとしては、アルキレンオキサイド系モノマー、オレフィン系モノマー又はアクリル系モノマー等が挙げられる。上記重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。上記重合体が共重合体である場合、用いられる。モノマーとしては、アルキレンオキサイド系モノマー、オレフィン系モノマー成分、アクリル系モノマー、及びビニル系モノマー等が挙げられる。変性シリコーン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されよい。
【0070】
上記アルキレンオキサイド系モノマーとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びブチレンオキサイド等が挙げられる。硬化後の伸びおよび粘性的な取り扱い易さを良好にする観点から、上記アルキレンオキサイド系モノマーは、プロピレンオキサイドを重合することにより得られる、ポリプロピレンオキサイドであることが好ましい。
【0071】
上記オレフィン系モノマーとしては、イソブチレン等が挙げられる。
【0072】
上記アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル2-ヒドロキシプロピルフタル酸等が挙げられる。なお、アクリル系ポリマーが、他のビニルモノマー成分が共重合されたものである場合、加水分解性ケイ素基を有するビニルモノマー成分を共重合することにより加水分解性ケイ素基を導入することができる。
【0073】
上記加水分解性ケイ素基としては、特に限定されないが、ハロゲン化シリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基、及びアルコキシシリル基等が挙げられる。
【0074】
上記加水分解性ケイ素基におけるケイ素原子に結合した加水分解性基の数は、好ましくは1以上であり、好ましくは3以下である。1個のケイ素原子に結合した加水分解性基は1種であってもよく、2種以上であってもよい。上記加水分解性基と非加水分解性基とが1個のケイ素原子に結合していてもよい。安定性に優れ、取り扱いが容易であることから、上記加水分解性ケイ素基は、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、又はトリアルコキシシリル基であることが好ましい。
【0075】
上記硬化性成分が上記変性シリコーン化合物を含む場合に、上記硬化性成分は、シラノール縮合触媒を含むことが好ましい。すなわち、上記硬化性成分は、上記変性シリコーン化合物と、シラノール縮合触媒とを含むことが好ましい。上記シラノール縮合触媒を用いることにより、変性シリコーン化合物を含む樹脂層の材料を短時間で硬化させることができ、樹脂層を短時間で良好に得ることができる。上記シラノール縮合触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0076】
上記シラノール縮合触媒としては、モノアルキル錫エステル及びジアルキル錫エステル等の錫触媒、ポリ(ジアルキルスタノキサン)ジシリケート化合物、並びに有機チタネート等が挙げられる。
【0077】
上記モノアルキル錫エステルとしては、例えば、ブチルスズトリス(2-エチルヘキサノエート)等が挙げられる。上記ジアルキル錫エステルとしては、例えば、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテート、オクタン酸第一錫等が挙げられる。
【0078】
上記有機チタネートとしては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラ(2-エチルヘキシルチタネート)トリエタノールアミンチタネート等のチタンアルコキシド類、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、オクチレングリコレート等のチタンキレート類等が挙げられる。
【0079】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、及びこれらの水添化物等のビスフェノール型エポキシ化合物;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル型エポキシ化合物等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物;フタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ化合物等のエステル型エポキシ化合物;フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、及びこれらの水添化物等のノボラック型エポキシ化合物;トリフェノールメタン型エポキシ化合物等のトリスフェノール型の多官能エポキシ化合物;トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ化合物、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ化合物、テトラグリシジルメタキシレンジアミン型エポキシ化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物等の含窒素環型多官能エポキシエポキシ化合物;ナフタレン型エポキシ化合物等の縮環型エポキシ化合物;ビフェニル型エポキシ化合物;ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物;エーテルエステル型エポキシ化合物;3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3´,4´-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂環式構造を有するエポキシ化合物;ウレタン型エポキシ化合物; ポリブタジエン及びアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴム骨格を有するゴム変性エポキシ化合物等が挙げられる。
【0080】
上記硬化性成分が上記エポキシ化合物を含む場合に、上記硬化性成分は、エポキシ化合物の硬化剤(エポキシ硬化剤)を含むことが好ましい。すなわち、上記硬化性成分は、上記エポキシ化合物と、エポキシ硬化剤とを含むことが好ましい。また、上記硬化性成分は、上記変性シリコーン化合物と、上記エポキシ化合物と、上記シラノール縮合触媒と、上記エポキシ硬化剤とを含むことが好ましい。この場合には、得られる樹脂層において、エポキシ化合物の硬化物に由来して靭性を高めることができ、かつ変性シリコーン化合物の硬化物に由来して弾性を高めることができる。
【0081】
上記エポキシ化合物の硬化剤(エポキシ硬化剤)としては、アミン化合物、イミダゾール化合物、アミド化合物、及びシアノ化合物等が挙げられる。上記アミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、それらのアミンアダクト、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。上記イミダゾール化合物としては、メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、エチルイミダゾール、イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール、ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。上記アミド化合物としては、ポリアミド等が挙げられる。上記シアノ化合物としては、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0082】
上記エポキシ化合物は、活性アミンがブロックされており、水分などの所定の条件下で活性化するケチミンなどの潜在型硬化剤であってもよい。たとえばケチミンは、水分がない状態では安定に存在するが、水分の存在によって一般に一級アミンとなり、エポキシ化合物と反応する。具体的には、2,5,8-トリアザ-1,8-ノナジエン、2,10-ジメチル-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、2,10-ジフェニール-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、3,11- ジメチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、3,11-ジエチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、2,4,12,14-テトラメチル-5,8,11-トリアザ-4,11-ペンタデカジエン、2,4,20,22-トラメチル-5,12,19-トリアザ-4,19-トリエイコサジエン、2,4,15,17-テトラメチル-5,8,11,14-テトラアザ-4,14-オクタデカジエンなどが挙げられる。
【0083】
上記エポキシ化合物と上記エポキシ硬化剤とを反応させることにより、エポキシ化合物の硬化物を得ることができる。
【0084】
上記エポキシ化合物は、芳香族骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ化合物、又はビスフェノールF型エポキシ化合物であることがより好ましい。
【0085】
上記エポキシ硬化剤は、アミン系硬化剤(アミン化合物)であることが好ましい。
【0086】
上記ポリオール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシクロヘキシルメタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン又はα-メチル-ε-カプロラクトンなどのラクトンを開環重合して得られる重合体等が挙げられる。
【0087】
上記ポリオール化合物の硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0088】
上記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。上記芳香族ポリイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。上記脂環族ポリイソシアネートとしては、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0089】
上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物とを硬化反応させることにより、ウレタン樹脂を得ることができる。
【0090】
上記ポリオール化合物は、ポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオールであることが好ましい。上記ポリオール化合物の硬化剤(ポリイソシアネート化合物)は、ジフェニルメタンジイソシアネート、又はトルエンジイソシアネートであることが好ましい。
【0091】
上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物との配合比は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との種類の組み合わせによって適宜変更可能である。上記ポリイソシアネート化合物の配合量は、上記ポリオール化合物の水酸基量と、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基量(NCO量)とが等量となる量であることが好ましい。
【0092】
上記シリコーン化合物としては、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノポリシロキサンの主鎖は、ジオルガノシロキサンの重合体が一般的であるが、一部枝分かれした構造又は環状の構造を有していてもよい。上記オルガノポリシロキサンが有するアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、ペテニル基、へキセニル基、オクテニル基、及びシクロへキセニル基等が挙げられる。
【0093】
上記シリコーン化合物の硬化剤(架橋剤)としては、SiH基を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、フェニルメチルハイドロジェンポリシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、及び両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0094】
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール、及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0095】
上記フェノール化合物の硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、及びパラホルムアルデヒド等が挙げられる。
【0096】
上記ビニルエステル化合物としては、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸との反応物等が挙げられる。上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ノボラック型ポリグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、並びに1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族系グリシジルエーテル類等が挙げられる。上記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸等が挙げられる。上記エポキシ化合物と、上記アクリル酸及び上記メタクリル酸との反応物としては、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0097】
上記ビニルエステル化合物の硬化剤としては、有機過酸化物等が挙げられる。上記有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーベンゾエート、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、パーオキシエステル、及びパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0098】
上記硬化性成分が上記ビニルエステル化合物を含む場合に、該硬化性成分は、ラジカル重合性不飽和単量体を含んでいてもよい。上記ラジカル重合性不飽和単量体としては、スチレンモノマー、スチレンのα-,o-,m-,p-アルキル,ニトロ,シアノ,アミド,エステル誘導体、クロルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー、ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、イソプレン、及びクロロプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-i-プロピル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド及び(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド等のビニル化合物;シトラコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル;N-フェニルマレイミド等のモノマレイミド化合物;N-(メタ)アクリロイルフタルイミドなどが挙げられる。
【0099】
また、可塑性材料としては、樹脂等が挙げられる。樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0100】
<pH調整剤について>
pH調整剤とは、水素イオン指数(pH)を好ましい範囲(例えば7.5以上)に調整するための添加物である。pH調整剤としては、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、氷酢酸、乳酸、乳酸ナトリウム、ピロリン酸二水素ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、DL-リンゴ酸などが挙げられる。CO2溶解水とコンクリーション化剤と混合物に、pH調整剤をさらに混合して地中に注入することにより、一時的な地下水のpHの変化を抑制することができ、重金属等の溶出を抑制できる。ただし、pH調整剤を混合しなくてもよい。
【0101】
<水について>
本実施形態では、地中の帯水層1から汲み上げた水(地下水)を用いているが、COを溶解させる水、及びカプセル状のコンクリーション化剤と混合する水は、特に限定されず、例えば、水道水などの水(淡水)でもよいし、海水でもよい。ただし、本実施形態のようにすることで、帯水層1の水を有効利用でき、また、地下水の水質をモニタリングしつつ貯留を行うことができる。
【0102】
以上、説明したように、本実施形態では、水にCOが溶解したCO溶解マイクロバブル水と、カプセル状のコンクリーション化剤(樹脂組成物)と水との混合液と、を混合して2液を地中(帯水層1)に同時に注入している。これにより、地中の比較的浅い地層において、数時間で炭酸塩鉱物(炭酸カルシウム)が析出し、早期かつ確実にCOの貯留を図ることができる。
【0103】
また、混合するコンクリーション化剤(特にマトリックス材)の成分や濃度等を調整することにより、炭酸カルシウムの析出する場所をコントロールすることができる。
===第2実施形態===
図4は、第2施系形態の二酸化炭素の貯留方法を示すフロー図である。また、図5は、第2実施系形態の貯留方法を実施する構成の一例を示す概略説明図である。なお、図5において、図2および図6と同一構成の部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0104】
本実施形態では、図5に示すように混合槽31とパイプ27を備えている。混合槽31は地上(地表)に設けられている。混合槽31は、地中の帯水層1から汲み上げられた水(地下水)とコンクリーション化剤(及びpH調整剤)を混合するための部材である。なお、第1実施形態の圧力槽30が地下水圧相当に設定されていたのに対し、第2実施形態の混合槽31は常圧に設定されている。
また、パイプ27は、圧力機24から出力されるCO(マイクロバブル)を注水井16へと送る。パイプ27は、注入井16を通って地中まで延在しており、地中において、注水井16内にCO(マイクロバブル)を放出する。なお、本実施形態の圧力機24は、地下水圧相当のガス圧を出力可能であることが必要である。
【0105】
以下、図4及び図5を参照しつつ、第2実施形態の二酸化炭素の貯留方法を説明する。
【0106】
まず、混合層31において、帯水層1から汲み上げられた水(地下水)に、カプセル状のコンクリーション化剤(マイクロカプセル)を投入する。これにより、カプセル状のコンクリーション化剤と水を混合した混合液を生成する(S201)。なお、この際にpH調整剤も混合してもよい。この混合液は、注入井16を通って地中(帯水層1)へと送られる。
【0107】
次に、工場20から排出された二酸化炭素(CO)を圧力機24でマイクロバブル化し、パイプ27を介して地中の注入井16内で(事前)に上記混合液とCO(マイクロバブル)を混合し、CO溶解マイクロバブル水とする(S202)。
【0108】
その後(CO溶解マイクロバブル水とした後)、CO溶解マイクロバブル水とカプセル状のコンクリーション化剤の混合物を地中の比較的浅部の地層(ここでは帯水層1)に注入(圧入)する(S203)。
【0109】
この第2実施形態でも、地中の比較的浅い地層において、数時間で炭酸塩鉱物(炭酸カルシウム)が析出し、早期かつ確実にCOの貯留を図ることができる。また、第2実施形態では、COの貯留量をより増やすことができる。
【0110】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。例えば、以下に示す形態であっても、本発明に含まれる。
【0111】
前述の実施形態では、CO溶解マイクロバブル水と、カプセル状のコンクリーション化剤との混合物を地中の帯水層に注入していたが、これには限られない。例えば、上記混合物(具体的には、析出する炭酸カルシウム)は、地盤改良としての効果も期待できる。よって、上記混合物を、例えば、地中の液状化のおそれのある個所に注入して、液状化対策に用いてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 帯水層
12 揚水井
14 ポンプ
15 パイプ
16 注水井
20 工場
22 パイプ
24 圧縮機
27 パイプ
30 圧力槽
31 混合槽
32 投入口
図1
図2
図3
図4
図5
図6