(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137366
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】太陽電池複層ガラスおよびガラス窓
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20240927BHJP
H02S 40/34 20140101ALI20240927BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240927BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L31/04 560
H02S40/34
E04F13/08 Z
E06B5/00 A
E06B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048861
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 久史
【テーマコード(参考)】
2E110
2E239
5F251
【Fターム(参考)】
2E110AA04
2E110AB04
2E110AB22
2E239AA01
2E239AB00
2E239AB06
5F251AA01
5F251BA03
5F251FA04
5F251JA02
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA09
5F251JA27
(57)【要約】
【課題】見込み寸法の増大を抑えた太陽電池複層ガラスを提供する。
【解決手段】一対のガラスパネル12,14間に中空層18を設けた太陽電池複層ガラス10は、一対のガラスパネル12,14の少なくとも一方の面上に設けられた第1透明導電膜層26と、第1透明導電膜層26上に設けられた太陽電池セル層28と、太陽電池セル層28上に設けられた第2透明導電膜層30とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のガラスパネル間に中空層を設けた太陽電池複層ガラスであって、
前記一対のガラスパネルの少なくとも一方の面上に設けられた第1透明導電膜層と、
前記第1透明導電膜層上に設けられた太陽電池セル層と、
前記太陽電池セル層上に設けられた第2透明導電膜層と、
を備える太陽電池複層ガラス。
【請求項2】
前記第1透明導電膜層、前記太陽電池セル層および前記第2透明導電膜層を覆うように設けられた封止層をさらに備える、請求項1に記載の太陽電池複層ガラス。
【請求項3】
前記封止層を覆うように設けられた保護層をさらに備える、請求項2に記載の太陽電池複層ガラス。
【請求項4】
前記一対のガラスパネルの周縁部を封着する封着材をさらに備え、
前記第1透明導電膜層および前記第2透明導電膜層の端部に、前記太陽電池セル層で生じた電流を外部に取り出すための取出電極が設けられ、
前記取出電極は、前記封着材を介して前記中空層の外部に引き出される、請求項1から3のいずれかに記載の太陽電池複層ガラス。
【請求項5】
前記封止層は、前記一対のガラスパネルの少なくとも一方の端部まで延在しており、
前記一対のガラスパネルの周縁部を、前記封止層の端部を介して封着する封着材をさらに備え、
前記第1透明導電膜層および前記第2透明導電膜層の端部に、前記太陽電池セル層で生じた電流を外部に取り出すための取出電極が設けられ、
前記取出電極は、前記封止層を介して前記中空層の外部に引き出される、請求項2または3に記載の太陽電池複層ガラス。
【請求項6】
請求項1に記載の太陽電池複層ガラスと、
前記太陽電池複層ガラスの外周端部を支持するフレームと、
を備えるガラス窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルを備えた複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対のガラスパネル間に太陽電池セル層を設けた合わせガラスタイプの太陽電池ガラスが知られている。また、合わせガラスタイプの太陽電池ガラスとガラスパネルとの間に中空層を設けた合わせ複層ガラスタイプの太陽電池複層ガラスも知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、合わせ複層ガラスタイプの太陽電池複層ガラスは、見込み寸法が増大するという課題がある。見込み寸法が増大すると、フレームの開口部寸法や断面形状なども大きく変更する必要がある。また、重量が増し、重心位置のずれが生じるため、撓みや捩じれを抑制する上で、断面性能や断面二次モーメントおよび断面極二次モーメントを大きくする必要が出てくる。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、見込み寸法の増大を抑えた太陽電池複層ガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の太陽電池複層ガラスは、一対のガラスパネル間に中空層を設けた太陽電池複層ガラスであって、一対のガラスパネルの少なくとも一方の面上に設けられた第1透明導電膜層と、第1透明導電膜層上に設けられた太陽電池セル層と、太陽電池セル層上に設けられた第2透明導電膜層と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、上記の太陽電池複層ガラスと、太陽電池複層ガラスの外周端部を支持するフレームと、を備えるガラス窓である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る太陽電池複層ガラスを示す概略断面図である。
【
図2】第2実施形態に係る太陽電池複層ガラスを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。以下の構成は本開示を理解するための例示を目的とするものであり、本開示の範囲は、添付の請求の範囲によってのみ定まる。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る太陽電池複層ガラス10を示す概略断面図である。
図1に示す太陽電池複層ガラス10の外周端部は、フレーム(サッシ)により支持される。太陽電池複層ガラス10とフレームとを備えるガラス窓は、建物の開口部に配置される。
【0011】
図1に示すように、太陽電池複層ガラス10は、透光性を有する一対のガラスパネル12,14(以下適宜、室外側ガラスパネル12、室内側ガラスパネル14と呼ぶ)と、スペーサ16とを備える。
【0012】
太陽電池複層ガラス10は、一対のガラスパネル12,14の間にスペーサ16によって中空層18を設け、該中空層18に乾燥空気を封入した複層ガラスとして構成されている。スペーサ16内には中空層18の空気を乾燥状態に保つ吸湿剤17が入れられている。
【0013】
一対のガラスパネル12,14の周縁部は封着材によりシールされており、中空層18は外部空気と流通がなく、密閉された状態となっている。封着材は、スペーサ16と一対のガラスパネル12,14の間をシールする一次封着材20と、スペーサ16と一次封着材20の外側に配置され、一対のガラスパネル12,14の間をシールする二次封着材22とを含む。中空層18には、Kr(クリプトン)やAr(アルゴン)などの希ガスが封入されてよい。
【0014】
太陽電池複層ガラス10においては、室外側ガラスパネル12の内側面12aと室内側ガラスパネル14の内側面14aとが対向している。また、室外側ガラスパネル12の外側面12bが建物の外部空間に面しており、室内側ガラスパネル14の外側面14bが室内空間に面している。
【0015】
太陽電池複層ガラス10は、中空層18内に太陽電池モジュール24を備える。太陽電池モジュール24は、室外側ガラスパネル12の内側面12a上に設けられている。
【0016】
太陽電池モジュール24は、室外側ガラスパネル12の内側面12a上に設けられた第1透明導電膜層26と、第1透明導電膜層26上に設けられた太陽電池セル層28と、太陽電池セル層28上に設けられた第2透明導電膜層30と、第1透明導電膜層26、太陽電池セル層28および第2透明導電膜層30を覆うように設けられた封止層32と、封止層32を覆うように設けられた保護層34と、を備える。これらの層は、室外側ガラスパネル12の内側面12a上で蒸着等の工程を行うことにより、形成することができる。
【0017】
第1透明導電膜層26および第2透明導電膜層30は、太陽電池セル層28で生じた電力を取り出すためのものであり、太陽電池セル層28を挟むように形成されている。第1透明導電膜層26および太陽電池セル層28は、例えば酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)で形成されてよい。
【0018】
太陽電池セル層28は、複数の太陽電池セルが配列された層である。太陽電池セルは、光起電力効果を利用し、太陽光エネルギーを電力に変換するものである。太陽電池セル層28では、複数の太陽電池セルが電気的に直列に接続され、必要な所定の電圧を得られるようになっている。また、複数の太陽電池セルが電気的に直列接続されたものを複数集めて並列接続することで、必要な電流が得られるようになっている。太陽電池セル層28は、薄膜シリコンを用いたものであってよい。太陽電池セル層28は、半透明であってもよいし、有色であってもよい。太陽電池セルは、片面受光タイプであってもいし、両面受光タイプであってもよい。
【0019】
封止層32は、例えば、軽量且つ耐久性を有するエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA:Ethylen-Vinyl Acetate)、ポリビニルブチラール(PVB)、アイオノマー、シリコーンなどを用いることができる。封止層32の厚さは、150μm~300μm程度であってよい。保護層34は、例えばETFE(Ethylene Tetra Fluoro Ethylen)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)などを用いて形成されてよい。保護層34の厚さは、25μm程度であってよい。
【0020】
中空層18にArガスやKrガスを封入することで、断熱性が向上し酸素が存在しなくなるので、第2透明導電膜層30が露出したままでも酸化をある程度抑えることができるが、封止層32および保護層34を設けることで、より耐久性を向上することができる。
【0021】
第1透明導電膜層26および第2透明導電膜層30の端部には、太陽電池セル層28で生じた電流を外部に取り出すための取出電極36が設けられている。この取出電極36は、一次封着材20および二次封着材22を介して、中空層18の外部に引き出されている。引き出された取出電極36は、太陽電池複層ガラス10の上部に設けられた端子箱38に引き込まれており、端子箱38において配線ケーブル(図示せず)と接続される。なお、端子箱38は、太陽電池複層ガラス10の上部に限定されず、太陽電池複層ガラス10の側部や下部に配置されてもよい。
【0022】
以上のように構成された太陽電池複層ガラス10では、室外側ガラスパネル12の内側面12a上に太陽電池モジュール24を設ける構成としていることから、従来の合わせ複層ガラスタイプの太陽電池複層ガラスと比較して、見込み寸法の増大を大幅に抑えることができるとともに、大幅な軽量化を図ることができる。太陽電池モジュール24の厚さによるが、通常の複層ガラスとほぼ同じ見込み寸法とすることも可能である。また、通常の複層ガラスと比較して重心位置が大きく変わることもないので、断面性能や断面二次モーメントおよび断面極二次モーメントを大きくする必要もない。
【0023】
図1に示す実施形態では、室外側ガラスパネル12の内側面12aに太陽電池モジュール24を設けたが、太陽電池モジュール24を設ける面はこれに限定されず、室外側ガラスパネル12の外側面12b、室内側ガラスパネル14の内側面14a、室内側ガラスパネル14の外側面14bに設けてもよい。また、二面以上に設けられてもよい。
【0024】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る太陽電池複層ガラス40を示す概略断面図である。第2実施形態に係る太陽電池複層ガラス40は、ガラスパネルの周縁部の封止処理が第1実施形態に係る太陽電池複層ガラス10と異なる。
【0025】
図2に示すように、太陽電池複層ガラス40では、封止層32および保護層34が室外側ガラスパネル12の端部まで延在している。そして、一対のガラスパネル12,14の周縁部は、一次封着材20および二次封着材22により、封止層32および保護層34の端部を介して封着されている。つまり、室外側ガラスパネル12上の保護層34と、室内側ガラスパネル14の内側面14aとの間に封着材が設けられている。
【0026】
第1透明導電膜層26および第2透明導電膜層30の端部に、太陽電池セル層28で生じた電流を外部に取り出すための取出電極36が設けられている。第2実施形態に係る太陽電池複層ガラス40では、取出電極36は、封止層32を介して中空層18の外部に引き出されている。引き出された取出電極36は、太陽電池複層ガラス10の上部に設けられた端子箱38に引き込まれており、端子箱38において配線ケーブル(図示せず)と接続される。なお、端子箱38は、太陽電池複層ガラス10の上部に限定されず、太陽電池複層ガラス10の側部や下部に配置されてもよい。
【0027】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0028】
10、40 太陽電池複層ガラス、 12 室外側ガラスパネル、 14 室内側ガラスパネル、 18 中空層、 20 一次封着材、 22 二次封着材、 24 太陽電池モジュール、 26 第1透明導電膜層、 28 太陽電池セル層、 30 第2透明導電膜層、 32 封止層、 34 保護層、 36 取出電極、 38 端子箱。