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特開2024-137382冷却方法、電子モジュール及び冷却システム
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  • 特開-冷却方法、電子モジュール及び冷却システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137382
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】冷却方法、電子モジュール及び冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 23/44 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H05K7/20 M
H01L23/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048884
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】椎 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小城原 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信靖
(72)【発明者】
【氏名】大野 航太朗
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】仲村 達也
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA09
5E322AA11
5E322DA01
5E322DA03
5E322DA04
5E322DB06
5E322FA01
5E322FA09
5F136CB01
5F136CB11
5F136CB13
(57)【要約】
【課題】冷媒が冷却対象物に到達することが抑制され、かつ冷却対象物に発生した熱が効率よく除去される冷却方法、電子モジュール及び冷却システムを提供する。
【解決手段】冷却方法は、発熱体2を含む冷却対象物1を、保護層3で被覆した状態で液状の冷媒RFの中に配置することを含む。保護層3が、粘土とバインダ樹脂332とを含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を含む冷却対象物を、保護層で被覆した状態で液状の冷媒の中に配置することを含み、
前記保護層が、粘土とバインダ樹脂とを含有する、
冷却方法。
【請求項2】
前記冷媒を循環させながら熱交換器で冷却することを含む、
請求項1に記載の冷却方法。
【請求項3】
液状の前記冷媒が気化し、気化した前記冷媒が、前記熱交換器によって冷却されることよって液状に戻ることを含む、
請求項2に記載の冷却方法。
【請求項4】
前記粘土は鉱物粒子を含み、
前記鉱物粒子の形状は、板状及び薄片状のうち少なくとも一方である、
請求項1に記載の冷却方法。
【請求項5】
前記鉱物粒子は、雲母、バーミキュライト、ベントナイト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト及びノントロナイトよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する、
請求項4に記載の冷却方法。
【請求項6】
前記冷媒は、水を含有する、
請求項1に記載の冷却方法。
【請求項7】
前記冷却対象物が、基板と、前記基板に実装されている実装部品とを備え、
前記実装部品が、前記発熱体を含み、
前記保護層が、前記基板及び前記実装部品を被覆する、
請求項1に記載の冷却方法。
【請求項8】
前記保護層における前記粘土の割合は、前記保護層の全量に対して、30.0質量%以上80.0質量%以下である、
請求項1に記載の冷却方法。
【請求項9】
基板と、前記基板に実装されている実装部品と、前記基板及び前記実装部品を被覆する保護層とを備え、
前記実装部品が、発熱体を含み、
前記保護層が、粘土とバインダ樹脂とを含有する、
電子モジュール。
【請求項10】
発熱体を含む冷却対象物を冷却する冷却システムであって、
前記冷却対象物と、
前記冷却対象物を被覆し、かつ粘土とバインダ樹脂とを含有する保護層と、
前記冷却対象物を液状の冷媒で冷却する液浸冷却装置とを備える、
冷却システム。
【請求項11】
前記冷却対象物が、基板と、前記基板に実装されている実装部品とを備え、
前記実装部品が、前記発熱体を含み、
前記保護層が、前記基板及び前記実装部品を被覆する、
請求項10に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却方法、電子モジュール及び冷却システムに関し、より詳細には、冷媒を用いた冷却方法並びにその冷却方法によって冷却される電子モジュール及び冷却方法に使用される冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液浸層内に貯留された絶縁性冷却液内に、電子機器を浸漬し、熱交換器によって、前記絶縁性冷却液を冷却し、前記電子機器を冷却する液浸冷却方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-21766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の課題は、冷媒が冷却対象物に到達することが抑制され、かつ冷却対象物に発生した熱が効率よく除去される冷却方法、電子モジュール及び冷却システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る冷却方法は、発熱体を含む冷却対象物を、保護層で被覆した状態で液状の冷媒の中に配置することを含み、前記保護層が、粘土とバインダ樹脂とを含有する。
【0006】
本開示の一態様に係る電子モジュールは、基板と、前記基板に実装されている実装部品と、前記基板及び前記実装部品を被覆する保護層とを備え、前記実装部品が、発熱体を含み、前記保護層が、粘土とバインダ樹脂とを含有する。
【0007】
本開示の一態様に係る冷却システムは、発熱体を含む冷却対象物を冷却する冷却システムであって、前記冷却対象物と、前記冷却対象物を被覆し、かつ粘土とバインダ樹脂とを含有する保護層と、前記冷却対象物を液状の冷媒で冷却する液浸冷却装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、冷媒が冷却対象物に到達することが抑制され、かつ冷却対象物に発生した熱が効率よく除去される冷却方法、電子モジュール及び冷却システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る冷却対象物の冷却方法の一例を示す断面図である。
図2図2は、同上の冷却方法に使用される被覆物の一例を示す断面図である。
図3図3は、同上の冷却方法に使用される被覆物の他例を示す断面図である。
図4図4Aは鉱物粒子を示す概略図である。図4Bは粘土層を示す断面図である。
図5図5は、本開示の他の実施形態に係る冷却対象物の冷却方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.概要
液浸層内に貯留された冷却液内に、電子機器を浸漬し、熱交換器によって、冷却液を冷却し、電子機器を冷却する液浸冷却方法が知られている。
【0011】
近年、データセンタにおいて電子機器の発熱量が増加する傾向があり、このため、電子機器を効率よく冷却することができる方法が求められている。そこで、発明者は、電子機器を効率よく冷却することを目的として、冷媒に冷却能力の高い水を含有させることを見出した。しかし、上記のような液浸冷却方法において、水を含有する冷媒が用いられる場合、水が電子機器に到達し得ることがあり、このため、電子機器の性能が損なわれる問題が生じる。
【0012】
このような事情に鑑みて、発明者は、鋭意研究開発を進めた結果、冷媒が冷却対象物に到達することが抑制され、かつ冷却対象物に発生した熱が効率よく除去される冷却方法を完成するに至った。
【0013】
これより、実施形態について、図面を参照して説明するが、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。また、下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。更に、実施例の構成を適宜組み合わせることも可能である。各図面に示される同一の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとするものとし、適宜重複した説明は省略する。なお、以下において参照する図は、いずれも模式的な図であり、図中の構成要素の寸法比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
本開示の冷却方法は、発熱体2を含む冷却対象物1を、保護層3で被覆した状態で液状の冷媒RFの中に配置することを含む。冷却対象物1は、冷媒RFの中に配置されることによって冷却されるため、冷却対象物1に発生した熱が効率よく除去される。
【0015】
また、保護層3が、粘土とバインダ樹脂332とを含有する。この場合、冷却対象物1と冷媒RFとの間に、冷媒RFに対するバリア性能の高められた保護層3が介在し得る。これによって、冷媒RFが、冷却対象物1に到達することが抑制される。
【0016】
このようにして、本開示の冷却方法は、冷媒RFが冷却対象物1に到達することを抑えることができ、かつ冷却対象物1に発生した熱を効率よく除去することができる。
【0017】
2.実施形態
2.1 第1実施形態
第1実施形態に係る冷却方法について、図1図2及び図3を参照しながら説明する。なお、図1は、冷却対象物1の冷却方法の一例を示す断面図である。図2及び図3は、冷却対象物1を、保護層3で被覆することによって作製された被覆物10の断面図である。
【0018】
第1実施形態では、冷却対象物1が、基板と基板に実装されている実装部品とを備え、実装部品が発熱体2を含み、保護層3が、基板及び実装部品を被覆している。言い換えれば、第1実施形態では、被覆物10が、基板と、基板に実装されている実装部品と、基板及び実装部品を被覆する保護層3とを備える電子モジュールであり、その実装部品が、発熱体2を含む。なお、ここでいう発熱体2は、能動素子及び受動素子のうち少なくとも一方を含む。能動素子は、例えば継電器(リレー)、トランス、ダイオード、トランジスタ等の単体素子;レーザーダイオード、フォトダイオード等の光半導体素子;温度センサ、圧力センサ等のセンサ素子;サイリスタ;及びIC等の集積回路素子等よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。受動素子は、例えば抵抗素子、コンデンサ素子及びコイル素子等よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。更に、コンデンサ素子は、例えば電解コンデンサ素子、導電性高分子電解コンデンサ素子、電解ハイブリッドコンデンサ素子、積層セラミックコンデンサ素子、フィルムコンデンサ素子及び電気二重層コンデンサ素子等よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0019】
[冷却システム]
第1実施形態では、図1に示すような冷却システム100を用いて、被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1の冷却を行う。なお、冷却システム100は、発熱体2を含む冷却対象物1を冷却するシステムであって、冷却対象物1を被覆し、かつ粘土とバインダ樹脂332とを含有する保護層3と、冷却対象物1を液状の冷媒RFで冷却する液浸冷却装置110とを備える(図1参照)。つまり、第1実施形態において、被覆物10(電子モジュール)は、冷却システム100における、冷却対象物1と、保護層3とを備えている、とも言いかえることができる。
【0020】
液浸冷却装置110は、槽111を備える。槽111内には、冷媒RFが貯留されている。より詳しくは、槽111は、液状の冷媒RFが存在する貯留部114と、液状の冷媒RFが存在しない空間部115とを有する。
【0021】
冷媒RFは、水を含有する。冷媒RFが、水を含有することによって、冷却対象物1の冷却効率を特に高めることができる。
【0022】
ここで、基板と、基板に実装されている実装部品とを備える冷却対象物1を保護層3で被覆せずに水を含有する冷媒RFの中に配置した場合、水が冷却対象物1の内部に容易に浸入し得る。このため、冷却対象物1が備える実装部品の性能が損なわれるおそれがある。これに対して、第1実施形態では、冷却対象物1を、保護層3で被覆した状態で液状の冷媒RFの中に配置する。上記の通り、保護層3は、粘土とバインダ樹脂332とを含有するため、冷媒RF、特に水へのバリア性能が高められている。このため、冷却対象物1の性能が維持されながら、かつ冷却対象物1で発生した熱が特に効率よく除去される。言い換えれば、冷却対象物1を冷却するにあたり、本実施形態の冷却システム100を適用すれば、冷却対象物1の性能の維持と、冷却対象物1に対する高い冷却効率との両立が可能となる。なお、第1実施形態において「冷却対象物1の性能が維持される」とは、基板に実装されている実装部品の電気的な特性が損なわれずに維持されることを意味している。
【0023】
また、冷媒RFは水に加えて、アルコール系溶剤等の有機溶剤を含有していてもよい。アルコール系溶剤は、親水性の高い1価又は2価のアルコール類等が好ましく、具体的には、メタノール、エタノール及びエチレングリコール等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0024】
槽111は、冷媒RFを供給するための供給口116と、冷媒RFを排出するための排出口117とを備える(図1参照)。槽111において、供給口116及び排出口117の各々が設置される箇所は特に定められていないが、例えば、槽111において、供給口116は、排出口117よりも下側に設置される。この場合、冷却対象物1から発生した熱が効率よく除去され得る。
【0025】
液浸冷却装置110は、熱交換器112を備える。熱交換器112は、排出口117から排出された冷媒RFを冷却する。熱交換器112としては、特に定められていないが、例えば、プレート式熱交換器、シェル&チューブ型熱交換器、フィンチューブ型熱交換器等が挙げられる。
【0026】
液浸冷却装置110は、ポンプ113を備える。ポンプ113は、槽111と熱交換器112との間で冷媒RFを循環させる。これによって、槽111内で冷却対象物1から熱を受け取った冷媒RFは、槽111から効率よく排出されるとともに熱交換器112に送られる。また、熱交換器112に送られた冷媒RFが、熱交換器112で冷却された後に、槽111に効率よく供給される。
【0027】
[被覆物]
被覆物10(電子モジュール)について説明する。
【0028】
上記の通り、冷却対象物1の冷却を行うにあたり、冷却対象物1を粘土とバインダ樹脂332を含有する保護層3で被覆して作製した被覆物10(電子モジュール)を用意する(図2参照)。冷却対象物1を保護層3で被覆することによって、被覆物10(電子モジュール)を作製する方法としては、冷却対象物1に粘土とバインダ樹脂332とを含有する粘土組成物を塗布させて、乾燥させる又は硬化させる方法等が挙げられる。冷却対象物1に粘土組成物を塗布する方法としては、適宜の方法が採用されるが、具体的には、冷却対象物1を粘土組成物の中に浸漬させることによって、冷却対象物1に粘土組成物を塗布する方法、冷却対象物1に粘土組成物を塗工することによって、冷却対象物1に粘土組成物を塗布する方法等が挙げられる。
【0029】
第1実施形態では、保護層3は、冷却対象物1と冷媒RFとが接触しないようにするため、冷却対象物1の外側全体を覆うようにして被覆する。なお、被覆物10(電子モジュール)は、冷却対象物1に加えて、ケーブル11を備える。この場合、保護層3は、冷却対象物1を被覆することに加えて、ケーブル11が冷媒RFと直接接することがないよう、ケーブル11の一部も被覆する(図1図2参照)。
【0030】
また、被覆物10(電子モジュール)は、発熱体2で発生した熱を冷媒RFにより効率的に受け渡すことができるように、被覆物10(電子モジュール)の表面の表面積を大きくするような構成を備えていてもよい。具体的には、被覆物10(電子モジュール)は、ヒートシンク12を備えていてもよい(図3参照)。ヒートシンク12は、複数のフィンを有していてもよい。なお、被覆物10(電子モジュール)がヒートシンク12を備える場合、ヒートシンク12も保護層3で被覆される。この場合、冷却対象物1と、ヒートシンク12との両方が保護層3で被覆された状態で、液状の冷媒RFの中に配置されることによって、被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1の冷却が行われる。
【0031】
保護層3について、図4を参照しながら更に詳しく説明する。
【0032】
上記の通り、保護層3は、粘土を含有する。粘土は、複数の鉱物粒子331の集合体である。また、粘土は、複数の鉱物粒子331の集合体に加えて、少量の水を含有していても構わない。
【0033】
鉱物粒子331は、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト及びノントロナイトよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0034】
鉱物粒子331は、例えばAl(アルミニウム原子)を中心とした八面体構造と、2つのSi(シリコン原子)を中心とした四面体構造とから構成された単層構造を有することがある。この場合、2つの四面体構造の間に、八面体構造が配置されている。加えて、この単層構造に関し、3価のAlの一部が2価のMgやFeに置換されている場合がある。この場合、単層構造は負の電荷を帯びる。そのため、単層構造を電気的に中性にするため、単層構造の間にNaやCa2+のような陽イオンの水和物が存在し得る。
【0035】
単層構造に分離した鉱物粒子331から保護層3が作製された場合、保護層3においても鉱物粒子331は単層構造に分離した状態を維持し得る。これにより、保護層3の内部には迷路のような構造(迷路構造)が形成され得る(図4B参照)。
【0036】
詳しく説明すると、保護層3中において、複数の鉱物粒子331が、厚み方向が保護層3の厚み方向と一致しながら、幅方向でほぼランダムに位置した状態で分散されているため、隣り合う鉱物粒子331の間がジグザグの通路のように形成されている。このため、冷媒RFが保護層3を厚み方向で通過する際には、直線的には移動することができず、隣り合う鉱物粒子331の間を通ってジグザグに移動しなければならない(図4Bの点線参照)。このように、保護層3が、上記のような迷路構造を有していることにより、保護層3における冷媒RF、特に冷媒RFに含有される水を遮断する機能が高められ得る。
【0037】
なお、上記のような単層構造を有する鉱物粒子331としては、例えばモンモリロナイトが挙げられる。つまり、保護層3が、水を特に効率よく遮断するためにはモンモリロナイトを含有していることが特に好ましい。
【0038】
図4Aは鉱物粒子331の具体例の概略図である。第1実施形態において、鉱物粒子331は板状又は薄片状の粒子であることが好ましい。この場合、保護層3における水を遮断する機能が高まり得る。
【0039】
また、鉱物粒子331は厚みaが横幅bよりも小さい形状を有する粒子であることが好ましく、この場合も、保護層3の水を遮断する機能が高まり得る。なお、横幅bは鉱物粒子331を視認した場合に、鉱物粒子331の一番長い部分の寸法である。例えば、鉱物粒子331の形状が円形であれば、その直径が横幅bである。また、厚みaは横幅bと直交し、かつ鉱物粒子331の最も短い寸法である。
【0040】
第1実施形態では、鉱物粒子331は高アスペクト比を有していることが好ましい。つまり、横幅b/厚みaで定義されるアスペクト比が高いことが好ましい。例えば、モンモリロナイトであれば、そのアスペクト比は300程度である。
【0041】
また、アスペクト比は、鉱物粒子331の厚みaと横幅bとを測定して確認することができる。なお、厚みaは、例えば透過電子顕微鏡(TEM)で測定されるが、鉱物粒子331の単層の厚みは種類ごとに略均一であるため、多量の鉱物粒子331に対して測定する必要はない。例えば、モンモリロナイトであれば、その厚みaは1nm程度である。また、横幅bは原子間力顕微鏡(AFM)を用いることで測定することができる。具体的には、鉱物粒子331の平坦部分を観察し一番長い寸法を横幅bとして規定することができる。例えば、モンモリロナイトであれば、その横幅bは300nm程度である。
【0042】
更に説明すると、鉱物粒子331のアスペクト比は20以上であることが好ましい。この場合、保護層3における水を遮断する機能が高まり得る。更に、鉱物粒子331のアスペクト比は100以上であることがより好ましく、150以上であることが更に好ましい。この場合、保護層3中における鉱物粒子331の分散性が確保され得るため、保護層3の強度が維持されながら、かつ保護層3が容易に作製され得る。
【0043】
また、鉱物粒子331において、複数の異なるアスペクト比を有する材料が組み合わされていても構わない。例えば、低いアスペクト比を有する材料は高いアスペクト比を有する材料の間に入り込むことができる。そのため、保護層3中の鉱物粒子331の充填率が高められ得る。これによって、保護層3における水を遮断する機能が高まり得る。
【0044】
バインダ樹脂332は、例えばモノマー、オリゴマー、プレポリマー及びポリマー等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。バインダ樹脂332は、例えば熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のうち少なくとも一方を含有する。また、バインダ樹脂332が、熱硬化性樹脂を含有する場合、粘土組成物には、硬化剤が含有されていることが好ましい。なお、バインダ樹脂332が熱硬化性樹脂を含有する場合、保護層3はバインダ樹脂332の硬化物を含み得る。
【0045】
バインダ樹脂332は、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアセタール樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。これらの中でも、バインダ樹脂332は、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリアミド樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。この場合、保護層3に含有されるバインダ樹脂332と、水との反応性を低下させることができる。このため、バインダ樹脂332の加水分解が抑制され、その結果、保護層3の水を遮断する機能が高まり得る。
【0046】
また、バインダ樹脂332は、変性処理されていても構わない。この場合、保護層3と、冷却対象物1との密着性が高まり得る。更に具体的に言えば、バインダ樹脂332は、変性ポリオレフィン樹脂を含有することが好ましい。この場合、保護層3の耐水性と密着性とが高まり得る。
【0047】
保護層3は、例えば鉱物粒子331がバインダ樹脂332の中に分散されている。この場合、鉱物粒子331は、その厚み方向が保護層3の厚み方向と略一致した状態で分散されている。また、厚み方向で隣り合う複数の鉱物粒子331の間には、間隙が存在している。この間隙には、バインダ樹脂332が充填され得る。更に、厚み方向と直交する方向で隣り合う複数の鉱物粒子331の間にも間隙が存在し得る。この間隙にも、バインダ樹脂332が充填され得る。
【0048】
第1実施形態では、保護層3における粘土の割合は、保護層3の全量に対して、30.0質量%以上80.0質量%以下である。この場合、冷却対象物1で発生した熱が効率よく除去されながら、かつ保護層3における水を遮断する機能が高まり得る。保護層3における粘土の割合は、保護層3の全量に対して、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。保護層3における粘土の割合は、保護層3の全量に対して、95質量部以下であることが好ましく、80質量部以下であることがより好ましい。
【0049】
保護層3における鉱物粒子331の割合は、保護層3の全量に対して50.0質量%以上であることが好ましい。この場合、保護層3における水を遮断する機能が確保され得る。また、保護層3が鉱物粒子331とバインダ樹脂332とを含有する場合、鉱物粒子331の割合が特定の数値範囲に調整されることにより、保護層3の強度が確保されながら、かつ保護層3における水を遮断する機能が高まり得る。具体的には、鉱物粒子331の割合は保護層3の全量に対して50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。バインダ樹脂332の割合は、保護層3の全量に対して5.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
【0050】
保護層3の厚みは、0.5μm以上100.0μm以下であることが好ましい。保護層3の厚みは、0.5μm以上であれば、保護層3の水を遮断する機能が確保され得る。保護層3の厚みは、100.0μm以下であれば、保護層3の強度が確保されながら、かつ保護層3と冷却対象物1との密着性を高めることができる。また、保護層3の厚みは、100.0μm以下であれば、保護層3を作製することが容易となる。保護層3の厚みは、50.0μm以下であることがより好ましく、10.0μm以下であることが更に好ましい。
【0051】
[冷却方法]
冷却システム100を用いて、被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1を冷却するフロー(冷却方法)について、具体的に例を挙げて説明する。
【0052】
まず、槽111に冷媒RFを貯留する(手順1.1)。貯留する冷媒RFの量は、例えば、冷却対象物1の全体が、液体の冷媒RFに浸漬する程度、言い換えれば、貯留部114に配置される程度の量を貯留すればよい。なお、このとき貯留する冷媒RFは、予め冷却されていなくても構わない。
【0053】
次に、ポンプ113を稼働する(手順1.2)。これによって、液浸冷却装置110内で冷媒RFを循環させる。冷媒RFをポンプ113で循環させるにあたり、その冷媒RFの流量は、発熱体2から発生する熱の量に応じて、適宜調整されることが好ましい。
【0054】
続いて、熱交換器112を稼働する(手順1.3)。熱交換器112の冷却能力は、例えば、発熱体2から発生する熱の量に応じて、適宜調整されることが好ましい。
【0055】
次に、被覆物10(電子モジュール)を槽111の貯留部114に配置し、被覆物10を槽111に保持する(手順1.4)。なお、図1に示されている、被覆物10(電子モジュール)の個数は3であるが、被覆物10(電子モジュール)の個数は特に定められておらず、使用の態様に合わせて、適宜個数が変更されてもよい。
【0056】
そして、上記の(手順1.1)から(手順1.4)までが行われた後に、被覆物10(電子モジュール)が備える実装部品を稼働する。
【0057】
上記の通り、熱交換器112とポンプ113とが稼働されている状態にある。つまり、冷媒RFは、槽111と熱交換器112との間で循環し、かつ循環している冷媒RFは熱交換器112を通過することにより冷却され続けている状態にある。このため、被覆物10(電子モジュール)に含まれる発熱体2から発生した熱を槽111内の冷媒RFが受け取る、その熱を受け取って温められた冷媒RFは熱交換器112に送られることで冷却される、及び熱交換器112で冷却された冷媒RFが槽111内に供給されることを連続的に繰り返す。これによって、被覆物10(電子モジュール)に含まれる発熱体2から熱が発生し続けていても、効率よく被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1が冷却され続ける。
【0058】
上記のようなフローに従って、被覆物10(電子モジュール)に含まれる発熱体2から発生した熱は除去される。なお、上記のフローは、第1実施形態における冷却システム100を用いて被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1を冷却する方法の一例に過ぎない。つまり、上記の(手順1.1)から(手順1.4)までに加えて、適宜必要な手順が追加されてもよい。また、被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1を冷却するにあたって、上記の(手順1.1)から(手順1.4)までが、記載した順に行われなくともよく、その順番が入れ替わっても構わない。
【0059】
2.2 第2実施形態
第2実施形態は、第1実施形態と同様に、冷却システム100が備える液浸冷却装置110が、槽111と熱交換器112とを備える(図5参照)。しかし、第2実施形態では、槽111から冷媒RFを排出することなく、冷却対象物1を冷却することができる点において、第1実施形態と相違する。
【0060】
[冷却システム]
第2実施形態における冷却システム100は、冷媒RFの気化潜熱(吸熱)を利用し、槽111から冷媒RFを排出することなく冷却することができるシステムである。より詳しくは、第2実施形態では、冷却対象物1が、冷媒RFの沸点以上に発熱した場合であっても、冷媒RFが、気化する際の気化潜熱(吸熱)を利用することにより冷却対象物1を冷却する。また、気化した冷媒RFは、槽111の空間部115へと移動するが、熱交換器112によって冷却された槽111の壁と接触し、冷却されることによって再度液化する。そして、液化した冷媒RFは、槽111の壁を伝うことによって、貯留部114に戻る。このように、第2実施形態における冷却システム100は、冷媒RFを、槽111の貯留部114では液体として、空間部115では気体として循環させ、かつ冷媒RFの気化潜熱を利用することによって、冷却対象物1で発生した熱を除去する。このため、冷却対象物1が、冷媒RFの沸点以上に発熱する場合であっても、冷却対象物1を効率よく冷却することができる。
【0061】
第2実施形態における冷却システム100について更に詳しく説明する。
【0062】
第2実施形態における冷却システム100は、上記の通り、第1実施形態における冷却システム100と同様、液浸冷却装置110を備え、かつ液浸冷却装置110は、槽111と熱交換器112とを備える。しかし、第2実施形態では、冷媒RFの気化潜熱(吸熱)を利用して冷却を行っており、冷媒RFは、貯留部114と空間部115との間を移動する。つまり、第2実施形態において、冷却システム100は、槽111から冷媒RFを液体状態で排出することを必要としない。そのため、槽111が、供給口116と排出口117とを備えなくともよい(図5参照)。
【0063】
また、第2実施形態に係る冷却システム100は、上記の通り、冷媒RFを槽111の外側に排出しない。別の言い方をすれば、第2実施形態に係る冷却システム100は、冷媒RFを槽111と、槽111の外側に配置されている熱交換器112との間で循環させることを必要としない。つまり、第2実施形態に係る液浸冷却装置110は、冷媒RFを槽111と、熱交換器112との間で循環させるためのポンプ113を備えなくても構わない(図5参照)。
【0064】
また、第2実施形態に係る冷却システム100は、第1実施形態とは異なり、空間部115付近に熱交換器112を備える。ただし、上記の通り、第2実施形態では、冷却システム100は、冷媒RFを槽111から排出しない。このため、第2実施形態では、冷媒RFが熱交換器112によって冷却される場合、冷媒RFは熱交換器112と直接接触しない。これに関しより詳しく説明すると、第2実施形態では、熱交換器112は、槽111の壁を介して、空間部115と隣合うように配置される(図5参照)。この場合、熱交換器112は、槽111の壁のうち空間部115と接している壁を冷却し得る。これによって、気化した冷媒RFが、熱交換器112によって冷却された壁と接触することで冷却され、その結果、液状に戻ることができる。このようにして、第2実施形態では、空間部115に存在する気化した冷媒RFが、熱交換器112と直接接触することなく、熱交換器112によって冷却される。そして、気化した冷媒RFが液状に戻り得る。
【0065】
また、熱交換器112によって冷却された壁は、空間部115を冷却することができる。空間部115が冷却されれば、空間部115に存在する気化した冷媒RFが冷却されることとなる。その結果、空間部115に存在する気化した冷媒RFは、液状に戻ることができる。この場合、冷媒RFは、壁を伝うことなく、空間部115から貯留部114へ戻り得る。
【0066】
熱交換器112は、第1実施形態と同様、プレート式熱交換器、シェル&チューブ型熱交換器、フィンチューブ型熱交換器等であってもよい。この場合、第2実施形態における冷却システム100では、熱交換器112に対して、冷媒RFとは異なる冷媒を循環させることによって、冷却機能を確保することができる。
【0067】
このように、第2実施形態では、冷却システム100が、空間部115付近に熱交換器112を備える。そして、冷媒RFは、槽111の貯留部114では液体として、空間部115では気体として循環し、かつ冷媒RFの気化潜熱(吸熱)が利用されている。これによって、冷却対象物1が冷媒RFの沸点まで発熱したとしても、冷却対象物1が効率よく冷却される。
【0068】
[被覆物]
第2実施形態でも、第1実施形態と同様、冷却対象物1の冷却を行うにあたり、冷却対象物1を粘土とバインダ樹脂332を含有する保護層3で被覆して作製した被覆物10(電子モジュール)を用意する。ただし、本実施形態では、槽111が有する空間部115に気化した冷媒RFが存在し得る。このため、保護層3は、ケーブル11のうち、槽111内に配置されている部分全体を覆うようにして、ケーブル11と、貯留部114に存在する液状の冷媒RFだけでなく、空間部115に存在する気化した冷媒RFの両方とが直接接触することのないように、被覆する(図5参照)。このように、冷却対象物1と、ケーブル11とを保護層3で被覆した上で、第2実施形態における冷却が行われることにより、冷却対象物1の性能が維持されながら、かつ冷却対象物1で発生した熱が特に効率よく除去される。なお、第2実施形態において「冷却対象物1の性能が維持される」とは、第1実施形態と同様、基板に実装されている実装部品の電気的な特性が損なわれずに維持されることを意味している。
【0069】
また、第2実施形態では、保護層3は、表面の表面積を大きくする処理が施されていることが好ましい。この場合、被覆物10(電子モジュール)と接触し、かつ被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1に含まれる発熱体2から発生した熱を受け取る冷媒RFの気化を促すことができる。これによって、より効率的に被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1の冷却を行うことができるようになる。
【0070】
保護層3の表面積を大きくする処理の方法は、特に定められておらず、適宜の方法を採用することができる。また、具体的な例としては、保護層3の表面に微孔性金属沸騰強化コーティング剤を塗布する方法が挙げられる。微孔性金属沸騰強化コーティング剤の具体的な例としては、金属粉末材料(BEC L-20227)(3M社製)が挙げられる。
【0071】
[冷却方法]
冷却システム100を用いて、被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1を冷却するフロー(冷却方法)について説明する。
【0072】
まず、槽111に冷媒RFを貯留する(手順2.1)。貯留する冷媒RFの量は、例えば、冷却対象物1の全体が、液体の冷媒RFに浸かる程度、言い換えれば貯留部114に配置される程度の量を貯留すればよい。なお、このとき貯留する冷媒RFは、予め冷却されていなくても構わない。
【0073】
続いて、熱交換器112を稼働する(手順2.2)。熱交換器112の冷却能力は、例えば、発熱体2から発生する熱量に応じて、適宜調整されることが好ましい。
【0074】
次に、被覆物10(電子モジュール)を槽111に設置し、被覆物10(電子モジュール)を槽111に保持する(手順2.3)。図5に示されている、被覆物10の個数は3であるが、被覆物10の個数は特に定められておらず、使用の態様に合わせて、適宜個数が変更されてもよい。
【0075】
そして、上記の(手順2.1)から(手順2.3)までが行われた後に、被覆物10(電子モジュール)が備える実装部品を稼働する。
【0076】
上記の通り、熱交換器112が稼働されている状態にある。このため、被覆物10(電子モジュール)に含まれる発熱体2から発生した熱を貯留部114の冷媒RFが受け取る、熱を受け取った冷媒RFが気化する(吸熱冷却する)、及び気化した冷媒RFはすぐに熱交換器112によって冷却され液化することを連続的に繰り返す。これによって、被覆物10(電子モジュール)に含まれる発熱体2から熱が発生し続けていても、効率よく被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1が冷却され続ける。
【0077】
上記のようなフローに従って、被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1に含まれる発熱体2から発生する熱は除去される。なお、上記のフローは、第2実施形態における冷却システム100を用いて被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1を冷却する方法の一例に過ぎない。つまり、上記の(手順2.1)から(手順2.3)までに加えて、適宜必要な手順が追加されてもよい。また、被覆物10(電子モジュール)が備える冷却対象物1を冷却するにあたって、上記の(手順2.1)から(手順2.3)までが、記載した順に行われなくともよく、その順番が入れ替わっても構わない。
【0078】
2.3 まとめ
以上、上記実施形態における冷却方法は、発熱体2を含む冷却対象物1を、保護層3で被覆した状態で液状の冷媒RFの中に配置することを含む。保護層3が、粘土とバインダ樹脂332とを含有する。上記冷却方法が、データセンタにおける、基板と、基板に実装されている実装部品とを備える電子機器を冷却するために適用されれば、データセンタにおける電力効率を高めることができる。
【0079】
また、本開示における冷却方法によって冷却される冷却対象物1は、基板と、基板に実装されている実装部品とを備え、実装部品が、発熱体2を含むもののみに限定されない。つまり、冷却対象物1は、電子機器に限らず、種々の製品が適用され得る。
【実施例0080】
以下に、実施例を挙げて更に詳細に説明する。ただし、本開示は、実施例に限定されるものではない。
【0081】
(1)保護層作製用の組成物の調製
下記の原料を用意した。
【0082】
[原料]
-バインダ樹脂:変性ポリオレフィン樹脂。
-粘土:モンロリロナイト(平均厚み1nm、平均アスペクト比300)。
-溶剤:疎水性溶媒(組成物全体に対して80質量%含有)。
【0083】
[調製方法]
表1に示す割合で原料をペイントシェイカーで混合し、組成物を調整した。
【0084】
(2)電子部品の作製方法
(2.1)導電性高分子アルミ電解コンデンサ
「(1)保護層作製用の組成物の調製」で得られた組成物を用いて導電性高分子アルミ電解コンデンサを作製した。
【0085】
まず、実施例1~3、比較例1~2に記載した組成に従って作製した組成物を、ディップすることによって導電性高分子アルミ電解コンデンサ(パナソニックインダストリー株式会社製、品名SP-Cap(品番:EEFSX0E471E4)全体を覆うようにして塗布した。続いて、120℃、2hの条件で乾燥し、組成物に含まれる溶剤を乾燥させることにより、保護層(厚み10μm)で被覆した導電性高分子アルミ電解コンデンサを作製した。なお、比較例1の導電性高分子アルミ電解コンデンサは保護層を備えておらず、比較例2の導電性高分子アルミ電解コンデンサの保護層を作製するために用いた組成物には粘土は含有されていない。
【0086】
(2.2)導電性高分子タンタルコンデンサ
「(1)保護層作製用の組成物の調製」で得られた組成物を用いて導電性高分子タンタルコンデンサを作製した。
【0087】
まず、実施例4~6、比較例3~4に記載した組成に従って作製した組成物を、ディップすることによって導電性高分子タンタルコンデンサ(パナソニックインダストリー株式会社製、品名POSCAP(品番:ETPSF270M6E))全体を覆うようにして塗布した。続いて、120℃、2hの条件で乾燥し、組成物に含まれる溶剤を乾燥させることにより、保護層(厚み10μm)で被覆した導電性高分子タンタルコンデンサを作製した。なお、比較例1の導電性高分子タンタルコンデンサは保護層を備えておらず、比較例2の導電性高分子タンタルコンデンサの保護層を作製するために用いた組成物には粘土は含有されていない。
【0088】
(3)電子部品の評価
[高温通電試験]
実施例1~6、比較例1~4の電子部品(導電性高分子アルミ電解コンデンサ、導電性高分子タンタルコンデンサ)に関し、外部接続端子間の誘電正接を測定した。次に、それらの電子部品を冷媒(純水:エチレングリコール 1:1、温度 45℃)に1週間浸漬した。1週間経過後、電子部品を冷媒から取り出し、80℃、2時間の条件で乾燥させた後に、電子部品の誘電正接を測定し、誘電正接の変化を確認した。冷媒への浸漬前後の電子部品の誘電正接を比較して、冷媒への浸漬前の電子部品の誘電正接の値を基準(100%)として、冷媒へ浸漬した後の電子部品の誘電正接の変化の割合(誘電正接変化率)を算出した。その結果を表1に記載した。
【0089】
なお、誘電正接は、インピーダンスアナライザ(キーサイト・テクノロジー株式会社、型番:E4294A)を用いて測定を行った。誘電正接の測定条件は以下の通りである。
【0090】
・交流条件:120Hz、500mV
・測定温度 :20℃
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
実施例1~3と、比較例1とを比較すると、比較例1は、保護層を備えていないため、誘電正接が悪化し得る(高くなる)ことが確認された。同様に、実施例4~6と、比較例3とを比較すると、比較例3は、保護層を備えていないため、誘電正接が悪化し得る(高くなる)ことが確認された。
【0094】
実施例1~3と、比較例2とを比較すると、比較例2は、保護層に粘土が含有されていないため、誘電正接が悪化し得る(高くなる)ことが確認された。同様に、実施例4~6と、比較例4とを比較すると、比較例4は、保護層に粘土が含有されていないため、誘電正接が悪化し得る(高くなる)ことが確認された。
【0095】
実施例1と実施例2~3とを比較すると、実施例2~3は、保護層に含有されている粘土の割合が高められているため、誘電正接が維持され得る(変化が小さい)ことが確認された。同様に、実施例4と実施例5~6とを比較すると、実施例5~6は、保護層に含有されている粘土の割合が高められているため、誘電正接が維持され得る(変化が小さい)ことが確認された。
【0096】
3.態様
上記の実施形態から明らかなように、本開示では、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧書き付きで付している。
【0097】
本開示の第1の態様に係る冷却方法は、発熱体(2)を含む冷却対象物(1)を、保護層(3)で被覆した状態で液状の冷媒(RF)の中に配置することを含む。保護層(3)が、粘土とバインダ樹脂(332)とを含有する。
【0098】
この態様によれば、冷媒(RF)が冷却対象物(1)に到達することを抑えることができ、かつ冷却対象物(1)に発生した熱を効率よく除去することができる冷却方法を提供することができる。
【0099】
本開示の第2の態様に係る冷却方法は、第1の態様において、冷媒(RF)を循環させながら熱交換器(112)で冷却することを含む。
【0100】
本開示の第3の態様に係る冷却方法は、第2の態様において、液状の冷媒(RF)が気化し、気化した冷媒(RF)が、熱交換器(112)によって冷却されることよって液状に戻ることを含む。
【0101】
この態様によれば、冷却対象物(1)が、冷媒(RF)の沸点以上に発熱する場合であっても、冷却対象物(1)を効率よく冷却することができる。
【0102】
本開示の第4の態様に係る冷却方法は、第1から第3のいずれか1の態様において、粘土は鉱物粒子(331)を含む。鉱物粒子(331)の形状は、板状及び薄片状のうち少なくとも一方である。
【0103】
この態様によれば、水が、冷却対象物(1)に到達することが抑えられる。
【0104】
本開示の第5の態様に係る冷却方法は、第1から第4のいずれか1の態様において、鉱物粒子(331)は、雲母、バーミキュライト、ベントナイト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト及びノントロナイトよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0105】
この態様によれば、水が、冷却対象物(1)に到達することがより抑えられる。
【0106】
本開示の第6の態様に係る冷却方法は、第1から第5のいずれか1の態様において、冷媒(RF)は、水を含有する。
【0107】
この態様によれば、冷却対象物(1)を冷却する効率がより高まり得る。
【0108】
本開示の第7の態様に係る冷却方法は、第1から第6のいずれか1の態様において、冷却対象物(1)が、基板と、基板に実装されている実装部品とを備える。実装部品が、発熱体(2)を含む。保護層(3)が、基板及び実装部品を被覆する。
【0109】
本開示の第8の態様に係る冷却方法は、第1から第7のいずれか1の態様において、保護層(3)における粘土の割合は、保護層(3)の全量に対して、30.0質量%以上80.0質量%以下である。
【0110】
この態様によれば、この場合、冷却対象物(1)で発生した熱が効率よく除去されながら、かつ保護層(3)が、水を遮断する機能が高まり得る。
【0111】
本開示の第9の態様に係る電子モジュールは、基板と、基板に実装されている実装部品と、基板及び実装部品を被覆する保護層(3)とを備える。実装部品が、発熱体(2)を含む。保護層(3)が、粘土とバインダ樹脂(332)とを含有する。
【0112】
この態様によれば、基板と実装部品とが水と接触することに起因する性能の低下が抑制され得る電子モジュールを提供することができる。
【0113】
本開示の第10の態様に係る冷却システム(100)は、発熱体(2)を含む冷却対象物(1)を冷却する冷却システム(100)であって、冷却対象物(1)と、冷却対象物(1)を被覆し、かつ粘土とバインダ樹脂(332)とを含有する保護層(3)と、冷却対象物(1)を液状の冷媒(RF)で冷却する液浸冷却装置(110)とを備える。
【0114】
この態様によれば、冷媒(RF)が冷却対象物(1)に到達することを抑えることができ、かつ冷却対象物(1)に発生した熱を効率よく除去することができる冷却システム(100)を提供することができる。
【0115】
本開示の第11の態様に係る冷却システム(100)は、第10の態様において、冷却対象物(1)が、基板と、基板に実装されている実装部品とを備える。実装部品が、発熱体(2)を含む。保護層(3)が、基板及び実装部品を被覆する。
【符号の説明】
【0116】
1 冷却対象物
2 発熱体
3 保護層
10 被覆物
100 冷却システム
110 液浸冷却装置
111 槽
112 熱交換器
113 ポンプ
114 貯留部
115 空間部
116 供給口
117 排出口
331 鉱物粒子
332 バインダ樹脂
RF 冷媒
図1
図2
図3
図4
図5