(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137390
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】画像処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 15/00 20110101AFI20240927BHJP
B41J 5/30 20060101ALI20240927BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240927BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G06T15/00 501
B41J5/30 Z
G03G15/00 303
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048898
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 功一
(72)【発明者】
【氏名】西國 勇一
(72)【発明者】
【氏名】高石 真也
(72)【発明者】
【氏名】黒津 大地
【テーマコード(参考)】
2C187
2H270
5B080
【Fターム(参考)】
2C187AC06
2C187AC08
2C187AD14
2C187BF41
2C187CD12
2C187CD17
2H270KA59
2H270LB01
2H270LC02
2H270LC03
2H270LC05
2H270LC09
2H270MB36
2H270MH07
2H270NC02
2H270NC03
2H270QA23
2H270QA31
2H270QB02
2H270QB11
2H270QB18
2H270ZC03
2H270ZC04
5B080AA19
5B080BA02
5B080DA06
5B080FA02
5B080FA09
5B080GA00
5B080GA11
5B080GA23
(57)【要約】
【課題】画像形成材で形成される記録媒体上の盛り上がり部を、印刷物のプレビュー画像において実物と同じ、或いはそれに近い態様で表現できるようにする。
【解決手段】画像処理システムはプロセッサを備える。プロセッサは、印刷画像の画像データに基づいて、記録媒体に付着される画像形成材の層厚を表す情報を含む立体画像データを生成し、その立体画像データに基づいて、印刷物のプレビュー画像を表示部に表示させる。画像形成材の層厚を表す情報は、画像形成材の盛り上がり部の端部が記録媒体面に向かって傾斜する態様、又は、丸みを帯びる態様を表す情報を含む。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを含み、
前記プロセッサは、
印刷画像の画像データに基づいて、記録媒体に付着される画像形成材の層厚を表す情報を含む立体画像データを生成し、
前記立体画像データに基づいて、印刷物のプレビュー画像を表示部に表示させ、
前記画像形成材の層厚を表す情報は、前記画像形成材の盛り上がり部の端部が記録媒体面に向かって傾斜する態様、又は、丸みを帯びる態様を表す情報を含む、
画像処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記画像データに基づいて、前記画像形成材の盛り上がり部の高さを表す膜厚データを生成し、
前記膜厚データにおいて、前記画像形成材の盛り上がり部の端部を平滑化処理して、平滑化済み膜厚データを生成し、
前記平滑化済み膜厚データに基づいて、前記画像形成材の層厚を表す情報を生成する、
画像処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記膜厚データにおける前記画像形成材の盛り上がり部の端部の高さに基づいて、前記膜厚データにおいて前記画像形成材の盛り上がり部の端部周囲に前記画像形成材が拡張されるように平滑化処理を実行して、前記平滑化済み膜厚データを生成する、
画像処理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記画像データに基づいて、前記画像形成材の盛り上がり部の高さを表す膜厚データを生成し、
前記膜厚データに基づいて、法線マップを生成し、
前記法線マップにおいて、前記画像形成材の盛り上がり部の端部を表す情報を平滑化処理することで、前記画像形成材の層厚を表す情報を生成する、
画像処理システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の画像処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記画像データ及び前記印刷物の印刷条件に基づいて、前記画像形成材の層厚を表す情報を生成する、
画像処理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理システムであって、
前記印刷条件は、前記印刷物の追い刷り回数を含む、
画像処理システム。
【請求項7】
請求項5に記載の画像処理システムであって、
前記印刷条件は、前記印刷物に使用されるトナーの種類を含む、
画像処理システム。
【請求項8】
請求項5に記載の画像処理システムであって、
前記印刷条件は、前記印刷物に使用される記録媒体の種類を含む、
画像処理システム。
【請求項9】
請求項5に記載の画像処理システムであって、
前記印刷条件は、前記印刷物を作成する印刷装置の印刷方式を含む、
画像処理システム。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1つに記載の画像処理システムであって、
前記画像形成材の層厚に表す情報は、ハイトマップを含む、
画像処理システム。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1つに記載の画像処理システムであって、
前記画像形成材の層厚を表す情報は、法線マップを含む、
画像処理システム。
【請求項12】
印刷画像の画像データに基づいて、記録媒体に付着される画像形成材の層厚を表す情報を含む立体画像データを生成し、
前記立体画像データに基づいて、印刷物のプレビュー画像を表示部に表示させる、
処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記画像形成材の層厚を表す情報は、前記画像形成材の盛り上がり部の端部が記録媒体面に向かって傾斜する態様、又は、丸みを帯びる態様を表す情報を含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物の仕上がり具合を、印刷前に確認するためのプレビューの技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、立体部を有する画像を媒体に形成するための画像情報に基づいて、プリント形態を模したプレビュー画像を表示装置に表示させる画像処理装置が開示されている。同文献には、プレビュー画像において立体部を特定色や点滅等で表す形態が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷物は、インクやトナー等の画像形成材が付着することで盛り上がり部を有する。このような印刷物の盛り上がり部を、印刷物のプレビュー画像において実物と同じ、或いはそれに近い態様で表現できるようにすることが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、画像形成材で形成される記録媒体上の盛り上がり部を、印刷物のプレビュー画像において実物と同じ、或いはそれに近い態様で表現できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、プロセッサを含み、前記プロセッサは、印刷画像の画像データに基づいて、記録媒体に付着される画像形成材の層厚を表す情報を含む立体画像データを生成し、前記立体画像データに基づいて、印刷物のプレビュー画像を表示部に表示させ、前記画像形成材の層厚を表す情報は、前記画像形成材の盛り上がり部の端部が記録媒体面に向かって傾斜する態様、又は、丸みを帯びる態様を表す情報を含む、画像処理システムである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の画像処理システムであって、前記プロセッサは、前記画像データに基づいて、前記画像形成材の盛り上がり部の高さを表す膜厚データを生成し、前記膜厚データにおいて、前記画像形成材の盛り上がり部の端部を平滑化処理して、平滑化済み膜厚データを生成し、前記平滑化済み膜厚データに基づいて、前記画像形成材の層厚を表す情報を生成する、画像処理システムである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の画像処理システムであって、前記プロセッサは、前記膜厚データにおける前記画像形成材の盛り上がり部の端部の高さに基づいて、前記膜厚データにおいて前記画像形成材の盛り上がり部の端部周囲に前記画像形成材が拡張されるように平滑化処理を実行して、前記平滑化済み膜厚データを生成する、画像処理システムである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の画像処理システムであって、前記プロセッサは、前記画像データに基づいて、前記画像形成材の盛り上がり部の高さを表す膜厚データを生成し、前記膜厚データに基づいて、法線マップを生成し、前記法線マップにおいて、前記画像形成材の盛り上がり部の端部を表す情報を平滑化処理することで、前記画像形成材の層厚を表す情報を生成する、画像処理システムである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1~4のいずれか1つに記載の画像処理システムであって、前記プロセッサは、前記画像データ及び前記印刷物の印刷条件に基づいて、前記画像形成材の層厚を表す情報を生成する、画像処理システムである。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の画像処理システムであって、前記印刷条件は、前記印刷物の追い刷り回数を含む、画像処理システムである。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項5に記載の画像処理システムであって、前記印刷条件は、前記印刷物に使用されるトナーの種類を含む、画像処理システムである。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項5に記載の画像処理システムであって、前記印刷条件は、前記印刷物に使用される記録媒体の種類を含む、画像処理システムである。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項5に記載の画像処理システムであって、前記印刷条件は、前記印刷物を作成する印刷装置の印刷方式を含む、画像処理システムである。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項1~3のいずれか1つに記載の画像処理システムであって、前記画像形成材の層厚に表す情報は、ハイトマップを含む、画像処理システムである。
【0017】
請求項11に係る発明は、請求項1~4のいずれか1つに記載の画像処理システムであって、前記画像形成材の層厚を表す情報は、法線マップを含む、画像処理システムである。
【0018】
請求項12に係る発明は、印刷画像の画像データに基づいて、記録媒体に付着される画像形成材の層厚を表す情報を含む立体画像データを生成し、前記立体画像データに基づいて、印刷物のプレビュー画像を表示部に表示させる、処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記画像形成材の層厚を表す情報は、前記画像形成材の盛り上がり部の端部が記録媒体面に向かって傾斜する態様、又は、丸みを帯びる態様を表す情報を含む、プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1又は12に係る発明によれば、画像形成材で形成される記録媒体上の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像において実物と同じ、或いはそれに近い態様で表現される。
【0020】
請求項2又は4に係る発明によれば、平滑化された画像形成材の盛り上がり部の端部を表す情報が、画像形成材の層厚を表す情報に含まれるようになる。
【0021】
請求項3に係る発明によれば、印刷物のプレビュー画像において、画像形成材の盛り上がり部の端部の傾斜する態様、又は、丸みを帯びる態様が明確に現れ得る。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、印刷条件に応じた画像形成材の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像に現れる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、追い刷り回数に応じた画像形成材の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像に現れる。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、トナーの種類に応じた画像形成材の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像に現れる。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、記録媒体の種類に応じた画像形成材の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像に現れる。
【0026】
請求項9に係る発明によれば、印刷方式に応じた画像形成材の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像に現れる。
【0027】
請求項10に係る発明によれば、ハイトマップにより、プレビュー画像において画像形成材の盛り上がり部が表現される。
【0028】
請求項11に係る発明によれば、法線マップにより、プレビュー画像において画像形成材の盛り上がり部が表現される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係る画像処理システムの機能ブロック図である。
【
図2】画像処理システムが行う処理を示すフローチャートである。
【
図3】膜厚データと法線マップの作成処理の説明図である。
【
図4】膜厚データと法線マップの作成処理の説明図である。
【
図5】複数のトナーの濃度と、膜厚を紐づけたテーブルの一例を示す図である。
【
図6】トナーの濃度と膜厚の関係を示す近似式の説明図である。
【
図7】複数のトナーの濃度と、膜厚を紐づけたテーブルの別の複数の例を示す図である。
【
図15】(A)は実施形態に係るプレビュー画像の一例であり、(B)は従来技術のプレビュー画像の一例である。
【
図16】(A)は色変換テーブルの一例であり、(B)は入射角と鏡面反射方向と視線方向のなす角γの関係を説明するための図である。
【
図17】コンピュータのハードウエア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<概略>
以下、本発明に係る実施形態について添付図面を確認しながら詳細に説明する。以下で述べる構成は、説明のための例示であり、適宜変更が可能である。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0031】
以下では、印刷画像の画像データに基づいてプレビュー画像を生成する画像処理システムについての実施形態を説明する。
【0032】
印刷画像は、記録媒体に印刷される画像である。画像データは、画像処理システムに入力された、或いは画像処理システム内で生成された印刷画像を表すデータである。画像データは、例えば、各画素がRGBやCMYKの画素値で表されたデータであってよく、画素値はCMYKの濃度値であってもよい。また、画像データの画素値は、CMYK以外の特色の画素値を含んでよい。
【0033】
画像形成材は、印刷画像を表すための記録媒体に付着される色材等の材料である。画像形成材は、例えばトナー、インク等である。画像形成材の色は、基本色として、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)等がある。また、画像形成材の色は、特色として、シルバー、ゴールド、クリア、白等がある。印刷物に使用される画像形成材の種類、色は、限定されない。本実施形態では、基本色のトナーを「基本トナー」と言い、特色のトナーを「特殊トナー」と言う。
【0034】
以下の説明において、画像形成材の層厚を表す情報は、印刷物における画像形成材の厚みを表す情報である。画像形成材の層厚を表す情報は、一例として法線マップ、或いはハイトマップであってよい。以下の説明では、画像形成材の層厚を表す情報を、層厚情報とも言う。また、立体画像データは、印刷物のプレビューにおいて、印刷物を3次元で表すために必要となるデータである。
【0035】
印刷条件は、印刷物の作成に用いられる材料や、印刷物の作成過程における条件(例えば環境、作成方法、使用機材等)を示す情報である。印刷条件は、一例として、印刷物に用いられる記録媒体の種類、印刷に用いられる画像形成材の種類や色、追い刷り回数、印刷方式の少なくとも1つであってよい。
【0036】
記録媒体の種類は、例えば普通紙、コート紙、非コート紙、再生紙、フィルム等がある。印刷方式の種類は、例えばオフセット印刷、グラビア印刷、電子写真方式、インクジェット方式等がある。なお、記録媒体や印刷方式の種類は、限定されない。
【0037】
表示部は、例えば表示装置としてのディスプレイである。表示部は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等であってよい。
【0038】
<画像処理システム>
図1は、実施形態に係る画像処理システム10の機能ブロック図である。画像処理システム10は、印刷物の仕上がり具合を、印刷物の作成前に確認するためのプレビュー画像をディスプレイ90に表示させるものである。画像処理システム10には、表示部としてのディスプレイ90が電気的に接続されている。なお、この実施形態で想定している印刷物は、電子写真方式の印刷装置により、トナーを用いて作成される印刷物である。
【0039】
図15(A)は、本実施形態のプレビュー画像の一例であり、
図15(B)は、従来技術のプレビュー画像の一例である。従来から、例えばクリアトナーなどを用いて、記録媒体上にトナーの盛り上がりを形成する印刷(厚盛プリントと言う)が知られている。厚盛プリントされた印刷物の実物は、例えば光沢感と立体感がともに存在するものとなる。しかし、
図15(B)に示すように、従来技術のプレビュー画像では、光沢感はあるが立体感がない画像となってしまう(用紙面が光っている状態である)。この実施形態では、
図15(A)に示すように、従来に比べて立体感があるプレビュー画像を実現させる。
【0040】
図1に示すように、画像処理システム10は、機能的な要素として、入力部12、画像処理部14、及び出力部16を備える。
【0041】
入力部12は、基本トナー情報受付部20と、特殊トナー情報受付部22を備える。これらの受付部20、22は、画像データを受け付ける。具体的には、基本トナー情報受付部20は、画像データの各画素における4色(CMYK)の画素値を受け付ける。また、特殊トナー情報受付部22は、画像データの各画素における特色の画素値を受け付ける。なお、この実施形態では、特色は1色であるが、特色は2色以上あってもよい。なお、画像データの各画素の画素値は、例えば0~255の値をとる。また、画像データの各画素の画素値は、トナーの濃度値(0~100%)であってもよい。
【0042】
画像処理部14は、プレビュー画像作成部30、色変換テーブル記憶部32、法線マップ作成部34、膜厚予測部36、プレビュー部40、及びプレビュー操作受付部42を備える。
【0043】
色変換テーブル記憶部32には、複数の色変換テーブルが記憶されている。
図16(A)には、色変換テーブル33の一例が示されている。色変換テーブル33は、CMYK特色の画素値とRGB光沢値を紐づけたテーブルである。色変換テーブル33は、記録媒体やトナーの種類等の印刷条件ごとに用意される。プレビュー画像作成部30は、色変換テーブル記憶部32の中にある、印刷物の印刷条件に対応する色変換テーブルを用いて、画像データの画素ごとに、画像データの画素値(CMYK特色)を、RGB光沢値に変換して、RGB光沢データを作成する。
【0044】
膜厚予測部36は、画像データの画素ごとに、画像データの画素値(CMYK特色)から、トナーの膜厚を予測して、膜厚データを作成する。法線マップ作成部は、膜厚予測部36が作成した膜厚データに基づいて、法線マップを作成する。法線マップは、画像形成材の層厚を表す情報(層厚情報)の一例である。プレビュー画像作成部30は、色変換テーブルから得られたRGB光沢データと、法線マップ作成部34から得られた法線マップとを合わせ情報を、立体画像データとして、プレビュー部40に出力する。
【0045】
プレビュー部40は、反射率分布関数算出部50、レンダリング部52、及び表示制御部60を備える。
【0046】
反射率分布関数算出部50は、プレビュー画像作成部30から得られたRGB光沢データに基づいて、画素毎に反射率分布関数を算出する。レンダリング部52は、仮想の3次元空間の仮想のスクリーン上に画像データに対応する印刷物の3次元モデルを配置し、その表面を構成する各画素のRGB値を決定する。具体的には、レンダリング部52は、反射率分布関数算出部50で算出された反射率分布関数と、法線マップ作成部34から得られた法線マップに基づいて、印刷物の3次元モデルの表面を構成する各画素のRGB値を決定する。
【0047】
表示制御部60は、レンダリング部52から得られた、印刷物の3次元モデルを含む3次元CG(コンピュータグラフィック)画像を、プレビュー画像として、出力部16を介してディスプレイ90に表示させる。プレビュー操作受付部42は、仮想の3次元空間内での印刷物の3次元モデルに対する操作(例えば印刷物を傾かせる操作等)をユーザから受け付ける。表示制御部60は、プレビュー操作受付部42が受け付けたユーザ操作を反映させた3次元CG画像をディスプレイ90に表示させる。
【0048】
図2は、画像処理システムが行う処理を示すフローチャートである。S100で、画像処理システムは、印刷物の画像データと印刷条件を受け付ける。S102で、画像処理システムは、S100で受け付けた印刷条件に基づいて、色変換テーブルを選択する。S104で、画像処理システムは、S102で選択された色変換テーブルを用いて、画像データ(CMYK特色の画素値)を、RGB光沢データに変換する。S106で、画像処理システムは、画像データ(CMYK特色の画素値)に基づいて膜厚データを生成する。S108で、画像処理システムは、S106で生成された膜厚データに基づいて法線マップを作成する。S110で、画像処理システムは、RGB光沢データ(S104で取得)と法線マップ(S108で取得)に基づいて印刷物のプレビュー画像を表示させる。
【0049】
<膜厚予測部と法線マップ作成部>
次に、膜厚予測部36と法線マップ作成部34による具体的な処理について説明する。
図3(A)には、画像データ100の一例が示されている。同図の画像データ100は、各画素値がCMYK特色のそれぞれの濃度値(0~100%)で表されている。同図は、画像の中央に矩形状のトナーの盛り上がりが形成される印刷画像に関する画像データ100を表す。同図において、中央に位置する画素群の各画素V1は(CMYK特色)=(100,100,100,0,100)の画素値をとり、周辺に位置する画素群の各画素V0は(CMYK特色)=(0,0,0,0,0)の画素値をとる。
【0050】
膜厚予測部36は、画像データ100から濃度データ101を作成する。
図3(B)には、濃度データ101の一例が示されている。濃度データ101は、画素毎に、CMYK特色の濃度値の合計値(以下、濃度合計値と言う)を、画素値としたデータである。
図3(B)において、中央に位置する画素群の各画素の画素値は400、周辺に位置する画素群の各画素の画素値は0となっている。
【0051】
次に、膜厚予測部36は、濃度データ101から膜厚データ102を作成する。
図3(C)には、膜厚データ102の一例が示されている。膜厚データ102は、画素毎に、膜厚(一例として単位はμm)を画素値としたデータである。膜厚予測部36は、濃度データ101の画素毎に、濃度データ101の画素値(濃度合計値)から、膜厚データ102の膜厚を取得する。例えば、濃度合計値と膜厚を紐づけたテーブルが、予め記憶装置に格納される。また、例えば、濃度合計値から膜厚を算出するための算出式が、予め規定されて、記憶装置に格納される。膜厚予測部36は、それらのテーブル又は算出式を用いて、濃度合計値から膜厚を取得する。
図3(C)において、中央に位置する画素群の各画素の画素値(膜厚)は20μm、周辺に位置する画素群の各画素の画素値(膜厚)は0μmとなっている。
【0052】
法線マップ作成部34は、膜厚データ102から法線マップ110を作成する。法線マップ110は、Red版、Green版、及びBlue版のデータが存在する。
図3(D1)には、Red版のデータの一例が示されており、
図3(D2)には、Green版のデータの一例が示されている。Blue版のデータは省略されている。以下、Red版、Green版、Blue版のそれぞれを、R版、G版、B版と言う。なお、
図3(D1)(D2)のR、G版のデータは、
図3(C)の膜厚データ102と画素が1:1で対応していない(すなわち解像度が異なっている)点に留意されたい。法線マップ作成部34は、当然、膜厚データ102と同じ解像度を有するR、G、B版のデータを作成してもよい。
【0053】
法線マップ作成部34は、膜厚データ102のx方向(左右方向)に並ぶ画素列に関し、y方向(上下方向)に並ぶ画素列ごとに処理(以下、行処理と言う)を行うことで、R、B版の法線マップ110を作成する。また、法線マップ作成部34は、膜厚データ102のy方向(上下方向)に並ぶ画素列に関し、x方向(左右方向)に並ぶ画素列ごとに処理(以下、列処理と言う)を行うことで、G、B版の法線マップ110を作成する。
【0054】
行処理と列処理により、B版の法線マップ110は、2つ取得されることになる。法線マップ作成部34は、B版の法線マップ110に関し、行処理と列処理のそれぞれで取得される法線マップ(2次元データ)を合成して、1つの法線マップ(2次元データ)を作成する。この詳細については後述する。
【0055】
ここで、具体的に、法線マップの作成方法について説明する。
図4(A)~(C)は、x方向のトナー断面を模式的に示す図である。これらの図を用いて、行処理による法線マップの作成方法について説明する。なお、列処理による法線マップの作成方法は、ここで説明するx方向に並ぶ画素に対する処理が、y方向に並ぶ画素に対する処理に置き換わるのみであり、行処理と同様の処理となる。
【0056】
図4(A)は、
図3(B)の濃度データ101における1つの画素列を示し、
図4(B)は、
図3(C)の膜厚データ102における1つの画素列を示す。法線マップ作成部34は、
図4(B)の膜厚データにおいて、注目画素を左から右に向かって順番に移動させながら、注目画素のトナー層の傾き角度を算出し、各画素値が傾き角度を表す角度データ(
図4(C))を取得する。
【0057】
具体的には、法線マップ作成部34は、注目画素とその右隣りの画素の膜厚差と、1画素の幅から、トナー層の傾き角度を算出する。例えば、画像データの解像度が600dpiの場合には、1画素の幅は約42.3μmとなる。今、注目画素が画素N1とすると、画素N1の膜厚0μmと、注目画素の右隣りの画素N+1の膜厚20μmの膜厚差は、20μm(=-20μm)である。この場合、注目画素N1の傾き角度は、arctan(-20/42.3)=-25.3度と算出される。これは、左向きの25.3度である。
【0058】
次に、注目画素が1画素だけ右に移動することで、注目画素は、画素N1+1となる。注目画素N1+1の膜厚20μmと、注目画素の右隣りの画素N1+2の膜厚20μmの膜厚差は、0μmである。この場合、注目画素N1+1の傾き角度は、arctan(0/42.3)=0度と算出される。
【0059】
同様にして、注目画素を順番に右に移動していき、各画素の傾き角度を算出していく。そして、今、注目画素が画素N2-1になったとすると、画素N2-1の膜厚20μmと、注目画素の右隣りの画素N2の膜厚0μmの膜厚差は、20μm(=+20μm)である。この場合、注目画素N2-1の傾き角度は、arctan(20/42.3)=+25.3度と算出される。これは、右向きの25.3度である。
【0060】
このようにして、1つの画素列の角度データが算出されることになる。そして、法線マップ作成部34は、角度データの各画素値(傾き角度)を、法線マップに変換する。
図4(D)には、1つの画素列のR版の法線マップが例示されている。以上説明した行処理が、y方向に並ぶ各画素例に対して行われることで、2次元データとしての法線マップが得られる。すなわち、R,B版の法線マップが得られる。
【0061】
なお、列処理においては、注目画素を上から下に向かって順番に移動させながら、注目画素の膜厚と、注目画素の下隣りの画素の膜厚に基づいて、注目画素の傾き角度を算出する。それにより、角度データが取得されることになる。この際、傾き角度は、上向き、或いは下向きの角度を表す。列処理により、G,B版の法線マップが得られることになる。
【0062】
<法線マップ>
ここで、法線マップについて具体的に説明する。法線マップは、物体表面の向きを示す情報である。法線マップは、物体の法線ベクトルのX,Y,Z成分に対応したRGBデータである。
【0063】
法線ベクトルのX成分は、左右方向の成分であり、-1(-90度:左向き90度)~1(90度:右向き90度)の範囲をとり、それらの値は、R版の画素値として0(-90度:左向き90度)~255(90度:右向き90度)で表される。X成分の値Xvと、R版の画素値Rの関係は、例えば以下の式(1)で表される。
【0064】
R=(Xv+1)/2×255 ・・・(1)
【0065】
法線ベクトルのY成分は、上下方向の成分であり、-1(-90度:下向き90度)~1(90度:上向き90度)の範囲をとり、それらの値は、G版の画素値0(-90度:下向き90度)~255(90度:上向き90度)で表される。Y成分の値Yvと、G版の画素値Gの関係は、例えば以下の式(2)で表される。
【0066】
G=(Gv+1)/2×255 ・・・(2)
【0067】
法線ベクトルのZ成分は、手前/奥の成分であり、0~1の範囲をとり、それらの値はB版の画素値として0~255で表される。Z成分の値Zvと、B版の画素値Bの関係は、例えば以下の式(3)で表される。
【0068】
B=Zvn×255 ・・・(3)
【0069】
例えば、物体が平面の場合、法線マップ(R,G,B)は、(127.5,127.5,255)となる。
【0070】
また、例えば、物体が右向きの場合、法線マップ(R,G,B)は、(255,127.5,127.5)となる。また、例えば、物体が右向き45度の場合、法線マップ(R,G,B)は、(((1+cos(45°))×127.5),127.5,((1+sin(45°))×127.5))となる。
【0071】
また、例えば、物体が上向きの場合、法線マップ(R,G,B)は、(127.5,255,127.5)となる。また、例えば、物体が上向き45度の場合、法線マップ(R,G,B)は、(127.5,((1+cos(45°))×127.5),((1+sin(45°))×127.5))となる。
【0072】
この実施形態では、行処理と列処理で、画素ごとに法線マップ(R,G,B)が算出される。なお、実施形態の説明において、法線マップの値は、小数点以下を四捨五入して整数で表すことがあり、例えば、「127.5」は「128」と表すことがある。
【0073】
行処理では、物体としてのトナー層における、左右方向の傾き度合が算出されるから、G版の法線マップ(上下方向の傾き)の画素値は、常に127.5となる。よって、行処理では、R,B版の法線マップ(データ)が得られる。
【0074】
また、列処理では、物体としてのトナー層における、上下方向の傾き度合が算出されるから、R版の法線マップ(左右方向の傾き)の画素値は、常に127.5となる。よって、列処理では、G,B版の法線マップ(データ)が得られる。
【0075】
B版の法線マップに関しては、行処理と列処理により、2つの法線マップが得られる。法線マップ作成部34は、B版の法線マップ110に関し、行処理と列処理のそれぞれで取得される法線マップ(データ)を合成して、1つの法線マップ(データ)を作成する。具体的には、法線マップ作成部34は、B版の法線マップ110に関し、行処理と列処理において排他的に255以外の画素値を持つ画素が得られるので、その画素に対しては行処理又は列処理で得られる255以外の画素値を設定し、その他の画素については255の画素値を設定した、1つの法線マップ(データ)を作成する。
【0076】
なお、法線ベクトルの大きさは常に1であるため、R,G版の法線マップが得られると、一意にB版の法線マップが決まることになる。よって、法線マップ作成部34は、行処理ではR版の法線マップを取得し、列処理ではG版の法線マップを取得し、その後、R,G版の法線マップからB版の法線マップを作成してもよい。
【0077】
なお、以上で説明した法線マップの作成方法は一例である。法線マップは、別の方法で作成されてもよく、法線マップの作成方法は限定されない。
【0078】
<行処理と列処理の別の形態>
以上説明した実施形態では、行処理において、注目画素の膜厚と、その右隣りの画素の膜厚から、注目画素の傾き角度を算出した。しかし、行処理において、注目画素の膜厚と、その左隣りの画素の膜厚に基づいて、注目画素の傾き角度が算出されてもよい。同様に、列処理において、注目画素の膜厚と、その上隣りの画素の膜厚に基づいて、注目画素の傾き角度が算出されてもよい。
【0079】
また、行処理において、注目画素の左隣りの画素の膜厚と、注目画素の右隣りの画素の膜厚に基づいて、注目画素の傾き角度が算出されてもよい。例えば、
図4(C)において、注目画素を画素N1とすると、注目画素N1の左隣りの画素N1-1の膜厚0μm(不図示)と、注目画素N1の右隣りの画素N1+1の膜厚20μmに基づいて、注目画素N1の傾き角度が算出される。次に、注目画素を画素N1+1とすると、注目画素N1+1の左隣りの画素N1の膜厚0μmと、注目画素N1+1の右隣りの画素N1+2の膜厚20μmに基づいて、注目画素N1+1の傾き角度が算出される。このようすると、複数の画素が、傾き角度が0度ではない角度を持つようになる。すなわち、1つのトナー層の傾きに対して、複数の画素によりその傾きが表されるようになる。
【0080】
なお、注目画素からn(nは1以上の整数)個左隣りの画素の膜厚と、注目画素からn個右隣りの画素の膜厚に基づいて、注目画素の傾き角度が算出されてもよい。同様に、列処理において、注目画素からn個上隣りの画素の膜厚と、注目画素からn個下隣りの画素の膜厚に基づいて、注目画素の傾き角度が算出されてもよい。
【0081】
<膜厚データの別の生成方法>
次に、法線マップの基礎となる膜厚データの別の生成方法について説明する。膜厚データ102(例えば
図3(C)参照)は、画像データ100の各画素値から直接又は間接的に算出されてよい。
【0082】
例えば、
図5に示すように、各トナーの濃度値と、膜厚を紐づけたテーブル70が予め記憶装置に格納される。そして、膜厚予測部36は、そのテーブル70を用いて、画像データ100の各画素値(濃度値)を、膜厚に変換することで、膜厚データ102を取得する。トナーの濃度と膜厚は、非線形の関係(比例ではない関係)を有し得る。そこで、テーブル70は、その非線形の関係が反映されたテーブルとしてもよい。なお、
図5のテーブル70は、一例である。テーブル70の左欄は、使用するトナー種に応じて列の数が変化する。例えば、印刷物が複数種類の特殊トナーを用いて印刷される場合には、テーブル70の左欄には、複数種類の特殊トナーの濃度が規定される。また、例えば、印刷物が特殊トナーを用いずに印刷される場合には、テーブル70の左欄には、基本色(CMYK)のトナーの濃度のみが規定される。
【0083】
トナーの膜厚は、印刷物の印刷条件に応じて変化し得る。例えば、同じ濃度であっても、トナーの種類によって形成される膜厚が異なることがある。また、記録媒体の種類によっても形成される膜厚が異なることがある。また、印刷装置の印刷方式や機種によって、形成される膜厚が異なることがある。従って、印刷条件に基づいて膜厚データ102が作成されてもよい。すなわち、印刷条件を膜厚に反映して、印刷条件に応じてプレビューでの膜厚の立体感の差が表現されてもよい。
【0084】
これを実現するために、各トナーの濃度値と膜厚を紐づけたテーブル70は、トナー種ごと、トナーの種類の組み合わせごと、記録媒体の種類ごと、印刷装置の印刷方式や機種ごと、の少なくとも1つに応じて設けられてよい。
【0085】
図7には、別のテーブル70A~70Dの例が示されている。テーブル70Aは、特殊トナーとしてクリアトナーを用い、記録媒体として非コート紙を用いる印刷物のためのテーブルである。テーブル70Bは、特殊トナーとして白トナーを用い、記録媒体として非コート紙を用いる印刷物のためのテーブルである。テーブル70Cは、特殊トナーとしてクリアトナーを用い、記録媒体としてコート紙を用いる印刷物のためのテーブルである。テーブル70Dは、特殊トナーとして白トナーを用い、記録媒体としてコート紙を用いる印刷物のためのテーブルである。
【0086】
特殊トナーは、その種類により、記録媒体に形成されるトナー層の厚み(膜厚)が異なることがある。例えば、クリアトナーと白トナーでは膜厚が異なり得る。
図4のテーブル70A~70Dには、クリアトナーの膜厚に比べて、白トナーの膜厚が厚くなる傾向が示されている。例えば、粒形が大きいトナーが使用される場合には、粒形が小さいトナーが使用される場合に比べて、記録媒体に形成されるトナー層の厚みが大きくなることが考えられる。
【0087】
また、記録媒体は、その種類により、記録媒体に形成されるトナー層の厚み(膜厚)が異なることがある。例えば、非コート紙は、コート紙に比べ平滑度が悪いため、膜厚が低くなる傾向にある。
図4のテーブル70A~70Dには、コート紙の膜厚に比べて、非コート紙の膜厚が低くなる傾向が示されている。
【0088】
膜厚予測部36は、印刷物に使用されるトナーの種類と記録媒体に応じて、テーブル70A~70Dを選択的に使用して、膜厚データ102を作成する。これにより、プレビュー画像において、トナーの種類と記録媒体に応じた膜厚の違いが現れるようになる。
【0089】
なお、膜厚予測部36は、テーブル70に代えて、
図6に示すように、トナー濃度と膜厚の関係を規定した近似式を用いて、画像データ100の各画素値(濃度値)を膜厚に変換して、膜厚データ102を作成してもよい。例えば、近似式は、トナーの種類ごとに用意される。膜厚予測部36は、画像データ100の画素ごとに、画像データ100の画素値である複数トナーの濃度値から、各トナーの近似式を用いて、複数のトナーのそれぞれの層厚を取得する。そして、膜厚予測部36は、画素ごとに、複数のトナーの層厚を合計した合計層厚を算出し、その合計層厚を画素値とする膜厚データ102を作成する。なお、
図6の近似式に示されるように、トナーの濃度と膜厚は、非線形の関係(比例ではない関係)を有し得る。
【0090】
また、近似式は、複数のトナーの合計濃度値と、膜厚の関係を規定したものであってもよい。この場合には、膜厚予測部36は、画像データ100の画素ごとに、画像データ100の画素値である複数トナーの濃度値から、それらの濃度値を合計した合計濃度値を算出する。そして、膜厚予測部36は、画素ごとに、近似式を用いて合計濃度値を膜厚に変換して、膜厚データ102を作成する。
【0091】
また、印刷物は、追い刷り印刷等により、複数回繰り返してトナーが積層されて形成されることがある。なお、追い刷りとは、印刷装置で印刷された記録媒体の面に、更に上から印刷を行うことである。この場合には、膜厚予測部36は、画像データ100の画素ごとに、各トナーの濃度値と膜厚の関係を示すテーブル70等により膜厚(仮膜厚と言う)を取得し、その仮膜厚に、追い刷り分の膜厚(追加膜厚と言う)を加算して合計膜厚を算出して、その合計膜厚を画素値とする膜厚データ102を作成する。
【0092】
図8は、追い刷り回数と、追加膜厚の関係を示すグラフの一例である。なお、追い刷り回数とは、追い刷りを行う回数を意味する。
図8は、クリアトナーによる追い刷りに関するグラフである。
図8のグラフに示されるように、追い刷り回数と追加膜厚は、非線形の関係(比例ではない関係)を有し得る。例えば、
図8に示すようなグラフに対応するテーブル(追い刷り回数と、追加膜厚の関係を規定したテーブル)が、記憶装置に予め格納される。膜厚予測部36は、そのテーブルを用いて、印刷物における追い刷り回数に対応する追加膜厚を取得し、仮膜厚にその追加膜厚を加算して、合計膜厚を算出する。
【0093】
以上説明したように、膜厚データ102は、様々な方法により生成することができる。膜厚データ102の生成方法は、限定されない。なお、膜厚データ102は、画像データ100に基づいて設定された、画素ごとの仮の膜厚に、トナーの種類、記録媒体の種類、印刷方式の種類、印刷装置の種類(機種等)のうちの少なくとも1つに応じて予め定められた係数を乗算することで、取得されてもよい。
【0094】
なお、本実施形態では、プレビュー画像において印刷物の画像形成材の厚みを表すために、プレビュー部40(レンダリング部52)において、層厚情報としての法線マップが用いられる。しかし、プレビュー部40(レンダリング部52)において、層厚情報として、法線マップに代えてハイトマップが用いられてもよい。ハイトマップは、例えば、膜厚データ102自体、或いは膜厚データ102の各画素値に所定の係数を乗算したもの等である。
【0095】
<盛り上がり部の処理>
次に、画像形成材(一例としてトナー)の盛り上がり部の処理について説明する。印刷物のトナーの盛り上がり部は、複数色のトナーの位置ずれ(版の位置ずれ)等により、中央の膜厚に比べて、端部の膜厚が低くなることがある。それにより、印刷物の実物は、トナーの盛り上がり部の端部が記録媒体面に向かって傾斜する態様を有したり、丸みを帯びる態様を有したりする。ここで説明する実施形態は、印刷物のプレビュー画像において、記録媒体上の盛り上がり部の端部が、印刷物の実物と同様或いはそれに近い態様で現れるようにするものである。
【0096】
これを実現するために、
図9に示すように、法線マップが、盛り上がり部の端部が傾斜する態様、又は、丸みを帯びる態様を表す情報を含むようにする。盛り上がり部の端部が傾斜する態様(
図9(A)参照)は、例えば、複数の画素が1つのトナー層の傾きを表すように、膜厚データから角度データ(
図4(C)参照)を生成することで実現される。これは、
図4(C)を用いて説明したように、膜厚データにおける注目画素からn(nは1以上の整数)個左隣りの画素の膜厚と、注目画素からn個右隣りの画素の膜厚に基づいて、注目画素の傾き角度(角度データの画素値)を算出することで実現される。角度データ(
図4(C)参照)から法線マップが算出されるので、法線マップは、盛り上がり部の端部が傾斜する態様を表す情報を含むようになる(
図9(A)参照)。
【0097】
また、印刷物のプレビュー画像において、盛り上がり部の端部が傾斜する態様、又は、丸みを帯びる態様を表すために、膜厚データまたは法線マップに対して平滑化処理を行ってもよい。なお、盛り上がり部の端部を表す情報に対して処理を行うことを、輪郭処理又はエッジ処理とも言う。
【0098】
まずは、法線マップに対する平滑化処理について説明する。
図10(D1)(D2)の法線マップ110は、以上で説明した
図3(D1)(D2)の法線マップ110と同じである。法線マップ作成部34は、R,G版の法線マップ110のそれぞれに対して、フィルタ(
図10参照)を用いて平滑化処理を行い、R,G版の平滑化済み法線マップ110Aを作成する。なお、フィルタは、例えば平滑化フィルタであってよい。
【0099】
この実施形態の平滑化処理(ここではフィルタ処理)は、注目画素を左右上下に移動させながら処理を行うものである。注目画素にフィルタの中心を配置した状態で、注目画素の画素値にフィルタの中心の係数を乗算するとともに、注目画素の周囲の各画素に、それらに対応して配置されたフィルタの中心周囲の各係数を乗算して、それらの乗算結果の合計値を求め、その合計値をフィルタの係数の総和で除算して、注目画素のフィルタ処理後の画素値とする。なお、フィルタの形態は、ここで説明したものに限定されない。また、平滑化処理は、フィルタを用いた処理に限定されない。以下で説明する平滑化処理も同じである。
【0100】
法線ベクトルの大きさは常に1であるため、R,G版の法線マップが得られると、一意にB版の法線マップが決まることになる。法線マップ作成部34は、R,G版の平滑化済み法線マップ110Aから、B版の平滑化済み法線マップ110A(不図示)を作成する。これにより、法線マップは、盛り上がり部の端部が傾斜する態様を表す情報(
図9(A)参照)、または、盛り上がり部の端部が丸みを帯びる態様を表す情報(
図9(B)参照)を含むようになる。
【0101】
次に、膜厚データに対して平滑化処理を行うことで、法線マップにおける盛り上がり部の端部の傾斜、或いは、丸みを帯びる態様を表す情報を作る実施形態について説明する。
図11は、この実施形態の説明図である。膜厚予測部36は、膜厚データ(
図11(B)参照)において、トナーの盛り上がり部の端部を平滑化処理して、平滑化済み膜厚データ(
図11(C)参照)を生成する。そして、法線マップ作成部34は、平滑化済み膜厚データ(
図11(C)参照)に基づいて、法線マップ(
図11(D)参照)を作成する。
【0102】
図12には、膜厚データ(同図(B)参照)に対してフィルタ(同図(B1)参照)を用いて平滑化処理を行い、平滑化済み膜厚データ(同図(C)参照)を生成した一例が示されている。なお、フィルタ(
図12(B1))の使い方は、以上で説明した法線マップに対するフィルタと同じである。
図12に示す例では、膜厚データの全体に対してフィルタ処理を行うことで、平滑化済み膜厚データが取得されている。このように、膜厚予測部36は、膜厚データの全体に対して平滑化処理を行って、平滑化済み膜厚データを取得してよい。また、膜厚予測部36は、膜厚データにおける盛り上がり部の端部を表す画素に対してのみ平滑化処理を行って、平滑化済み膜厚データを取得してもよい。
【0103】
この実施形態においても、法線マップは、盛り上がり部の端部が傾斜する態様を表す情報(
図9(A)参照)、または、盛り上がり部の端部が丸みを帯びる態様を表す情報(
図11(D)参照)を含むようになる。
【0104】
なお、以上で説明したように、プレビュー部40(レンダリング部52)において、層厚情報として、法線マップに代えてハイトマップが用いられてもよい。ハイトマップは、例えば、膜厚データ、または、それを加工したデータである。この場合には、平滑化済み膜厚データ、または、それを加工したデータが、ハイトマップとしてプレビュー部40で使用されることになる。なお、膜厚データ、及び、平滑化済み膜厚データは、盛り上がり部の高さを表すデータと言うこともできる。
【0105】
次に、平滑化済み膜厚データの別の作成方法について説明する。膜厚予測部36は、膜厚データにおけるトナーの盛り上がり部の端部の高さに基づいて、膜厚データにおいてトナーの盛り上がり部の端部周囲にトナーが拡張されるように平滑化処理を実行して、平滑化済み膜厚データを作成してもよい。この実施形態について、以下で説明する。
【0106】
図13は、複数種類のフィルタを用いて膜厚データを平滑化する実施形態を説明するための図である。
図13(A)は、カラー版数データの一例を示す図である。カラー版数データは、膜厚データと画素が1対1で対応づけられるデータであり、画素値がカラー版数を表すデータである。カラー版数は、画素に対して使用されるトナーの種類の数である。例えば、カラー版数の2は、2種類のトナーが使用される画素であり、カラー版数の3は、3種類のトナーが使用される画素である。
図13(A)の例では、カラー版数の2の画素は、シアンとクリアの2つのトナーがそれぞれ濃度値100%で使用される画素であり、カラー版数の3の画素は、シアン、マゼンタ、及びクリアの3つのトナーがそれぞれ濃度値100%で使用される画素である。膜厚予測部36は、画像データに基づいて、カラー版数データと膜厚データ(
図13には不図示)を作成する。
【0107】
次に、膜厚予測部36は、カラー版数データ(
図13(A))において、トナーの盛り上がり部(カラー版数が2と3の画素)の端部周囲にトナーが拡張されるように、端部(エッジ)膨張処理を行って、膨張済みカラー版数データ(
図13(B))を作成する。例えば、膜厚予測部36は、カラー版数データ(
図13(A))において注目画素を順次、左右上下に移動させて、注目画素を中心とする5×5画素(
図13(B1)参照)の中の最大の画素値を、注目画素の膨張処理済みの画素値とする。
【0108】
次に、膜厚予測部36は、膨張済みカラー版数データ(
図13(B))の各画素値(カラー版数)に応じて、膜厚データの各画素に適用するフィルタを変更して、平滑化済み膜厚データを作成する。
【0109】
具体的には、
図13(C)に示すように、カラー版数ごとにフィルタが用意される。フィルタは、カラー版数の値が大きいほど、注目画素の画素値が、注目画素からより遠い画素の画素値の影響を受けるように構成される。膜厚予測部36は、膨張済みカラー版数データ(
図13(B))の画素値が0の画素に対応する膜厚データの画素に対して、カラー版数0の画素用フィルタ(
図13(C)参照)を用いてフィルタ処理を行う。同様に、膜厚予測部36は、膨張済みカラー版数データ(
図13(B))の画素値が2の画素に対応する膜厚データの画素に対して、カラー版数2の画素用フィルタ(
図13(C)参照)を用いてフィルタ処理を行う。カラー版数3の画素についても同様であり、カラー版数3の画素用フィルタ(
図13(C)参照)を用いてフィルタ処理が行われる。なお、フィルタの使い方は、以上で説明した膜厚データや法線マップに対するフィルタと同じである。なお、
図13の例では、カラー版数1の画素に対するフィルタ処理が省略されているが、カラー版数1の画素用フィルタが用意されて、カラー版数1の画素に対してフィルタ処理が行われてよい。
【0110】
この実施形態によれば、平滑化済み膜厚データが、トナーの盛り上がり部の端部周囲にトナーが拡張されたトナー拡張部分の情報を持つようになるとともに、盛り上がり部の端部が高いほど、その端部周囲のトナー拡張部分のトナー高さが高くなる情報を持つようになる。
【0111】
なお、ここでは、カラー版数について説明したが、追い刷り回数についても同じである。すなわち、カラー版数データに代えて、各画素に対して適用される追い刷り回数が規定された追い刷り回数データが用意されて、以上で説明した処理が行われる。なお、各画素に対して適用されるカラー版数と追い刷り回数を合わせた値が規定されたデータが用意されて、そのデータに対して、以上説明した処理が行われてもよい。次に説明する実施形態においても同様である。
【0112】
次に、膜厚データに対して複数回、フィルタ処理を行って、平滑化済み膜厚データを作成する実施形態について説明する。
図14は、この実施形態の説明図である。
図14(A)(B)のカラー版数データは、
図13(A)(B)のカラー版数データと同じである。膜厚予測部36は、膨張済みカラー版数データ(
図14(B)参照)の各画素値(カラー版数)に応じて、膜厚データの各画素に対するフィルタ処理の回数を変更して、平滑化済み膜厚データを作成する。
【0113】
具体的には、
図14(C)に示すように、膜厚予測部36は、膨張済みカラー版数データ(
図14(B))の画素値が0以上の画素(すなわち全画素)に対応する膜厚データの画素(すなわち全画素)に対して、フィルタ(
図14(C)参照)を用いてフィルタ処理を行って、1回平滑化済み膜厚データを取得する。次に、膜厚予測部36は、膨張済みカラー版数データ(
図14(B))の画素値が2以上の画素に対応する1回平滑化済み膜厚データの画素に対して、フィルタ(
図14(C)参照)を用いてフィルタ処理を行って、2回平滑化済み膜厚データを取得する。そして、膜厚予測部36は、膨張済みカラー版数データ(
図14(B))の画素値が3以上の画素に対応する2回平滑化済み膜厚データの画素に対して、フィルタ(
図14(C)参照)を用いてフィルタ処理を行って、3回平滑化済み膜厚データを取得する。そして、膜厚予測部36は、3回平滑化済み膜厚データを、最終版の平滑化済み膜厚データとする。
【0114】
この実施形態においても、平滑化済み膜厚データが、トナーの盛り上がり部の端部周囲にトナーが拡張されたトナー拡張部分の情報を持つようになるとともに、盛り上がり部の端部が高いほど、その端部周囲のトナー拡張部分のトナー高さが高くなる情報を持つようになる。
【0115】
なお、印刷物におけるトナーの盛り上がり部の端部の態様は、トナーの種類、記録媒体の種類、印刷装置の印刷方式や機種に応じて変化する可能性がある。よって、印刷物に使用されるトナーの種類、記録媒体の種類、印刷装置の印刷方式、印刷装置の機種の少なくとも1つに応じて、プレビュー画像における盛り上がり部の端部の態様が異なるように、膜厚データ又は法線マップが作成されてもよい。
【0116】
<色変換テーブル>
ここからは、プレビューの実現方法について詳細に説明する。まずは、プレビュー画像作成部30(
図1参照)が用いる色変換テーブルについて詳細に説明する。
図16(A)は、色変換テーブル33の一例を示す図である。色変換テーブル33は、画像データの画素値(CMYK特色)と、RGB値及び光沢値(gloss値)とを対応づけたテーブルである。光沢値は、ΔRΔGΔBの3つの数値で表されている。
【0117】
色変換テーブル33は、例えば記録媒体、画像形成材(トナー等)、印刷方式等の組み合わせごとに用意される。従って、複数の色変換テーブル33が存在している。
【0118】
色変換テーブル33は、例えば、次のようにして作成されたものである。まず、記録媒体に色と濃度が異なる複数のパッチを印刷したパッチチャートが用意される。そして、パッチチャートを画像読取装置で読み取ることで、パッチごとの拡散反射画像と鏡面反射画像それぞれの平均RGB値が取得される。ここで、拡散反射画像の平均RGB値が、色変換テーブル33のRGB値である。そして、拡散反射画像の平均RGB値と鏡面反射画像の平均RGB値の差分を演算することで、差分画像が生成される。差分画像のRGB値が、色変換テーブル33のΔRΔGΔB値である。そして、パッチごとに、パッチの画素値(CMYK特色)と、そのパッチに対応するRGB値、ΔRΔGΔB値を紐づけることで、色変換テーブル33が生成される。
【0119】
色変換テーブル33は、パッチチャートに使用した記録媒体、画像形成材(トナー等)、印刷方式の情報が付加されて、色変換テーブル記憶部32(
図1参照)で管理される。なお、ここで説明した色変換テーブル33の作成方法の詳細は、例えば特開2020-52483号公報に記載されている。
【0120】
プレビュー対象の印刷物の作成に用いられる記録媒体、画像形成材(トナー等)、印刷方式等に基づいて、複数の色変換テーブル33の中から1つが選択され、その色変換テーブル33を用いて色変換処理(
図2のS104)が行われる。
【0121】
なお、色変換テーブル33(
図16(A)参照)は、左欄において、CMYK特色の画素値として、0~255の値、或いは、0~100%(濃度)の値が規定されてよい。また、色変換テーブル33は、右欄において、RGB値に代えてL*、a*、b*系の値が規定されてもよい。また、ΔRΔGΔBに代えて1つの数値の光沢値が規定されてもよい。なお、ここで説明した色変換テーブル33は一例であり、プレビュー表示を実現するための色変換テーブル、或いはそれに代わる手段は限定されない。
【0122】
<プレビュー表示>
次に、プレビュー画像作成部30(
図1参照)とプレビュー部40が行う処理について詳細に説明する。プレビュー画像作成部30とプレビュー部40は、例えば特開2020-52483号公報に記載された公知技術を採用して実現されてよい。プレビュー表示までの処理を説明する。
【0123】
プレビュー画像作成部30は、画像データの画素ごとに、CMYK特色を検索キーとして色変換テーブル33(
図16(A)を参照)を検索し、CMYK特色に対応するRGB値とΔRΔGΔB値を読み出す。
【0124】
なお、色変換テーブル33に、画像データの画素値(CMYK特色)が記録されていない場合には、プレビュー画像作成部30は、そのCMYK特色と類似する色に対応するRGB値とΔRΔGΔB値を読み出してもよい。ここで、類似する色とは、例えば色空間上での距離が一番近い色、予め定めた距離以内の色をいう。また、プレビュー画像作成部30は、類似する複数の色について複数組のRGB値とΔRΔGΔB値を読み出し、それらの値からRGB値とΔRΔGΔB値の推定値を計算してもよい。
【0125】
これにより、各画素値が、RGB値とΔRΔGΔB値(RGB光沢値)からなる、2次元データとしてのRGB光沢データが得られることになる。
【0126】
反射率分布関数算出部50は、RGB光沢データの画素ごとに、RGB光沢データの画素値(RGB値とΔRΔGΔB値)から、印刷時の見え方に相当する反射率分布関数を算出する。例えば反射率分布関数算出部50は、Phongの反射モデルに従い、反射率分布関数を次式として算出する。
【0127】
I=Ii・{wd・RGB・cosθi}+Ii・{ws・ΔRΔGΔB・cosnγ}
・・・(4)
【0128】
ここで、Iは反射光強度である。右辺第1項のうち{wd・RGB・cosθi}は、拡散反射率分布関数である。ここで、wdは、拡散反射重み係数であり、RGBは、色変換テーブル33から読み出された値である。θiは入射角である。右辺第2項のうち{ws・ΔRΔGΔB・cosnγ}は、鏡面反射率分布関数である。ここで、wsは、鏡面反射重み係数であり、ΔRΔGΔBは、色変換テーブル33から読み出された値である。γは鏡面反射方向と視線方向のなす角であり、nは鏡面反射指数である。
【0129】
図16(B)は、入射角θiと鏡面反射方向と視線方向のなす角γの関係を説明する図である。ここで、ベクトルNは法線ベクトルを示している。ベクトルLは光源方向ベクトルを示し、ベクトルRは反射ベクトルを示す。また、ベクトルVは視線方向ベクトルを示す。ここでのベクトルRが鏡面反射方向に相当し、ベクトルVが視線方向に相当する。
【0130】
レンダリング部52は、CG画像を生成する。換言すると、レンダリング部52は、仮想の3次元空間の仮想のスクリーン上に画像データに対応する印刷物の3次元モデルを配置し、その表面を構成する各画素のRGB値を決定する。具体的には、レンダリング部52は、反射率分布関数算出部50で算出された反射率分布関数と、法線マップ作成部34で作成された層厚情報としての法線マップに基づいて、印刷物の3次元モデルの表面を構成する各画素のRGB値を決定する。なお、レンダリング処理は公知であり、例えば相互反射を考慮したラジオシティ法やレイトレーシング法が用いられてもよい。
【0131】
なお、レンダリング部52は、層厚情報として、法線マップに代えて、膜厚データ等のハイトマップを用いてもよい。この場合には、レンダリング部52は、反射率分布関数算出部50で算出された反射率分布関数と、ハイトマップに基づいて、印刷物の3次元モデルの表面を構成する各画素のRGB値を決定する。
【0132】
表示制御部60は、表示部としてのディスプレイ90にレンダリングによって生成された3次元モデルの画像を、プレビュー表示する。この3次元モデルは、画像データに対応する印刷物のシミュレーション画像である。プレビュー操作受付部42は、仮想の3次元空間内での印刷物の3次元モデルに対する操作(例えば印刷物を傾かせる操作等)をユーザから受け付ける。表示制御部60は、プレビュー操作受付部42が受け付けたユーザ操作を反映させた3次元CG画像をディスプレイ90に表示させる。
【0133】
図15(A)は、本実施形態のプレビュー画像の一例であり、
図15(B)は、従来技術のプレビュー画像の一例である。
図15(A)に示すように、本実施形態によれば、画像形成材の立体感があるプレビュー画像を表示させることが可能となる。
【0134】
なお、ここで説明したプレビュー表示の技術は一例である。物体表面の質感(光沢感や凹凸感など)を3次元CGで再現する技術は公知であり、適宜、それらの一部又は全部が本実施形態に採用されてよい。BRDF(双方向反射率分布関数:Bidirectional Reflectance Distribution Function)に関する技術が採用されてもよい。
【0135】
<画像処理システムの構成>
上記実施形態の画像処理システムは、例えば汎用のコンピュータを用いて構成される。画像処理システムは、例えば単体のコンピュータ、又は、互いに連携する複数のコンピュータからなるシステムとして構築されてもよい。
図17に例示するように、画像処理システム10のベースとなるコンピュータは、例えば、プロセッサ1002、ランダムアクセスメモリ(RAM)等のメモリ(主記憶装置)1004、フラッシュメモリやSSD(ソリッドステートドライブ)、HDD(ハードディスクドライブ)等の不揮発性記憶装置である補助記憶装置1006を制御するコントローラ、各種の入出力装置1008とのインタフェース、ネットワークとの接続のための制御を行うネットワークインタフェース1010等が、例えばバス1012等のデータ伝送路を介して接続された回路構成を有する。処理内容が記述されたプログラムが、ネットワーク等を経由してそのコンピュータにインストールされ、補助記憶装置1006に記憶される。補助記憶装置1006に記憶されたプログラムが、プロセッサ1002によりメモリ1004を用いて実行されることにより、本実施形態の画像処理システムが構成される。
【0136】
なお、上記プログラムは、インターネット等のネットワークを介して提供することはもちろん、光ディスクやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することが可能である。
【0137】
上記実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0138】
また上記実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによってなすのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働してなすものであってもよい。また、プロセッサの各動作は、以上の実施形態において説明した順序のみに限定されるものではなく、適宜に変更してもよい。
【0139】
(付記)
(((1)))
プロセッサを含み、
前記プロセッサは、
印刷画像の画像データに基づいて、記録媒体に付着される画像形成材の層厚を表す情報を含む立体画像データを生成し、
前記立体画像データに基づいて、印刷物のプレビュー画像を表示部に表示させ、
前記画像形成材の層厚を表す情報は、前記画像形成材の盛り上がり部の端部が記録媒体面に向かって傾斜する態様、又は、丸みを帯びる態様を表す情報を含む、
画像処理システム。
(((2)))
(((1)))に記載の画像処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記画像データに基づいて、前記画像形成材の盛り上がり部の高さを表す膜厚データを生成し、
前記膜厚データにおいて、前記画像形成材の盛り上がり部の端部を平滑化処理して、平滑化済み膜厚データを生成し、
前記平滑化済み膜厚データに基づいて、前記画像形成材の層厚を表す情報を生成する、
画像処理システム。
(((3)))
(((2)))に記載の画像処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記膜厚データにおける前記画像形成材の盛り上がり部の端部の高さに基づいて、前記膜厚データにおいて前記画像形成材の盛り上がり部の端部周囲に前記画像形成材が拡張されるように平滑化処理を実行して、前記平滑化済み膜厚データを生成する、
画像処理システム。
(((4)))
(((1)))に記載の画像処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記画像データに基づいて、前記画像形成材の盛り上がり部の高さを表す膜厚データを生成し、
前記膜厚データに基づいて、法線マップを生成し、
前記法線マップにおいて、前記画像形成材の盛り上がり部の端部を表す情報を平滑化処理することで、前記画像形成材の層厚を表す情報を生成する、
画像処理システム。
(((5)))
(((1)))~(((4)))のいずれか1つに記載の画像処理システムであって、
前記プロセッサは、
前記画像データ及び前記印刷物の印刷条件に基づいて、前記画像形成材の層厚を表す情報を生成する、
画像処理システム。
(((6)))
(((5)))に記載の画像処理システムであって、
前記印刷条件は、前記印刷物の追い刷り回数を含む、
画像処理システム。
(((7)))
(((5)))に記載の画像処理システムであって、
前記印刷条件は、前記印刷物に使用されるトナーの種類を含む、
画像処理システム。
(((8)))
(((5)))に記載の画像処理システムであって、
前記印刷条件は、前記印刷物に使用される記録媒体の種類を含む、
画像処理システム。
(((9)))
(((5)))に記載の画像処理システムであって、
前記印刷条件は、前記印刷物を作成する印刷装置の印刷方式を含む、
画像処理システム。
(((10)))
(((1)))~(((3)))のいずれか1つに記載の画像処理システムであって、
前記画像形成材の層厚に表す情報は、ハイトマップを含む、
画像処理システム。
(((11)))
(((1)))~(((9)))のいずれか1つに記載の画像処理システムであって、
前記画像形成材の層厚を表す情報は、法線マップを含む、
画像処理システム。
(((12)))
印刷画像の画像データに基づいて、記録媒体に付着される画像形成材の層厚を表す情報を含む立体画像データを生成し、
前記立体画像データに基づいて、印刷物のプレビュー画像を表示部に表示させる、
処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記画像形成材の層厚を表す情報は、前記画像形成材の盛り上がり部の端部が記録媒体面に向かって傾斜する態様、又は、丸みを帯びる態様を表す情報を含む、
プログラム。
【0140】
(((1)))又は(((12)))に係る発明によれば、画像形成材で形成される記録媒体上の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像において実物と同じ、或いはそれに近い態様で表現される。
(((2)))又は(((4)))に係る発明によれば、平滑化された画像形成材の盛り上がり部の端部を表す情報が、画像形成材の層厚を表す情報に含まれるようになる。
(((3)))に係る発明によれば、印刷物のプレビュー画像において、画像形成材の盛り上がり部の端部の傾斜する態様、又は、丸みを帯びる態様が明確に現れ得る。
(((5)))に係る発明によれば、印刷条件に応じた画像形成材の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像に現れる。
(((6)))に係る発明によれば、追い刷り回数に応じた画像形成材の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像に現れる。
(((7)))に係る発明によれば、トナーの種類に応じた画像形成材の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像に現れる。
(((8)))に係る発明によれば、記録媒体の種類に応じた画像形成材の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像に現れる。
(((9)))に係る発明によれば、印刷方式に応じた画像形成材の盛り上がり部が、印刷物のプレビュー画像に現れる。
(((10)))に係る発明によれば、ハイトマップにより、プレビュー画像において画像形成材の盛り上がり部が表現される。
(((11)))に係る発明によれば、法線マップにより、プレビュー画像において画像形成材の盛り上がり部が表現される。
【符号の説明】
【0141】
10 画像処理システム、12 入力部、14 画像処理部、16 出力部、18 基本トナー情報受付部、20 特殊トナー情報受付部、30 プレビュー画像作成部、32 色変換テーブル記憶部、33 色変換テーブル、34 法線マップ作成部、36 膜厚予測部、40 プレビュー部、42 プレビュー操作受付部、50 反射率分布関数算出部、52 レンダリング部、60 表示制御部、70,70A,70B,70C,70D テーブル、100 画像データ、101 濃度データ、102 膜厚データ、110 法線マップ(画像形成材の層厚を表す情報,層厚情報)、110A 平滑化済み法線マップ(画像形成材の層厚を表す情報,層厚情報)、1002 プロセッサ、1004 メモリ、1006 補助記憶装置、1008 入出力装置、1010 ネットワークインタフェース、1012 バス。