(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137391
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】両回転式スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20240927BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F04C18/02 311W
F04C29/02 311F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048900
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】橋本 友次
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 洋介
(72)【発明者】
【氏名】管原 彬人
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭史朗
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA02
3H039AA13
3H039BB04
3H039BB11
3H039CC08
3H039CC27
3H039CC42
3H129AA02
3H129AA15
3H129AB03
3H129BB01
3H129BB44
3H129CC04
3H129CC32
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れた両回転式スクロール型圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明の両回転式スクロール型圧縮機は、ハウジング6、駆動機構10、駆動スクロール30、従動スクロール40及び従動機構20を備えている。駆動スクロール30には吸入口32が形成されている。ハウジング6は、駆動スクロール30及び吸入口32と駆動軸心O1方向で対向する第1対向部61を有している。駆動スクロール30は、第1対向部61と駆動軸心O1方向で対向する第2対向部37を有している。この第2対向部37に吸入口32が形成されている。第1対向部61には、吸入口32よりも径方向の外側から吸入口32に向けて潤滑油18を案内する案内部23が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるとともに潤滑油を含有する流体が吸入されるスクロール室を有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとによって流体を圧縮する圧縮室が形成される両回転式スクロール型圧縮機であって、
前記駆動スクロール及び前記従動スクロールの少なくとも一方は、前記圧縮室に流体を吸入させる吸入口が形成された特定スクロールとされ、
前記ハウジングは、前記特定スクロール及び前記吸入口と前記駆動軸心方向で対向する第1対向部を有し、
前記特定スクロールは、前記第1対向部と前記駆動軸心方向で対向する第2対向部を有し、
前記第2対向部に前記吸入口が形成され、
前記第1対向部及び前記第2対向部の少なくとも一方には、前記特定スクロールの回転によって、前記吸入口よりも前記特定スクロールの径方向の外側から前記吸入口に向けて前記スクロール室内で流体から分離された前記潤滑油を案内する案内部が設けられていることを特徴とする両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記案内部は、前記第1対向部及び前記第2対向部の両方に設けられている請求項1記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記ハウジングは、外部から前記スクロール室に流体を吸入させる吸入連絡口を有し、
前記駆動機構は前記スクロール室内に収容され、
前記吸入口は、前記駆動機構を挟んで前記吸入連絡口とは前記駆動軸心方向の反対側に位置している請求項1又は2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記案内部は凹溝からなる請求項1記載の両回転式スクロール型圧縮機。
【請求項5】
前記案内部は前記第2対向部に形成され、
前記第2対向部の内周側には、前記案内部に連続しつつ前記案内部に案内された前記潤滑油を前記吸入口に導く環状の導入部が形成されている請求項1記載の両回転スクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両回転式スクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の両回転式スクロール型圧縮機(以下、単に圧縮機という。)が開示されている。この圧縮機は、ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備えている。ハウジングには主フレームが設けられており、この主フレームによって、ハウジング内にはスクロール室と低圧室とが区画されている。スクロール室内には、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構が収容されている。低圧室内には駆動機構が収容されている。また、主フレームには、低圧室とスクロール室とを連通する吸入口が形成されている。さらに、ハウジングには、低圧室とハウジングの外部とを連通させる吸入管が設けられている。
【0003】
駆動スクロールは駆動軸を有している。駆動軸は、主フレームに回転可能に支持されつつ低圧室内に延びており、駆動機構に固定されている。駆動スクロールと従動スクロールとは、スクロール室内で対向して配置されている。そして、駆動スクロールと従動スクロールとによって圧縮室が形成されている。従動機構は、駆動スクロールと従動スクロールとの間に配置されている。
【0004】
この圧縮機では、駆動スクロールが駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、従動スクロールが駆動スクロール及び従動機構によって従動軸心周りで回転従動される。また、吸入管を通じてハウジングの外部から低圧室内に流体が吸入され、さらに、この流体は吸入口によってスクロール室内に流通する。そして、スクロール室内の流体は、圧縮室内に吸入されることにより、圧縮室内で圧縮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の圧縮機では、スクロール室内の流体は回転する駆動スクロール及び従動スクロールの影響を不可避的に受けてしまうことから、流体に含まれた潤滑油が流体から遠心分離され得る。これにより、この圧縮機では、スクロール室から圧縮室内に吸入される流体には潤滑油が十分に含まれず、潤滑油によって駆動スクロール及び従動スクロールを好適に潤滑し難い。この結果、この圧縮機では、駆動スクロール及び従動スクロールが摩耗し易いことから耐久性が懸念される。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、耐久性に優れた両回転式スクロール型圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機は、ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるとともに潤滑油を含有する流体が吸入されるスクロール室を有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとによって流体を圧縮する圧縮室が形成される両回転式スクロール型圧縮機であって、
前記駆動スクロール及び前記従動スクロールの少なくとも一方は、前記圧縮室に流体を吸入させる吸入口が形成された特定スクロールとされ、
前記ハウジングは、前記特定スクロール及び前記吸入口と前記駆動軸心方向で対向する第1対向部を有し、
前記特定スクロールは、前記第1対向部と前記駆動軸心方向で対向する第2対向部を有し、
前記第2対向部に前記吸入口が形成され、
前記第1対向部及び前記第2対向部の少なくとも一方には、前記特定スクロールの回転によって、前記吸入口よりも前記特定スクロールの径方向の外側から前記吸入口に向けて前記スクロール室内で流体から分離された前記潤滑油を案内する案内部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機では、特定スクロールが回転することで、潤滑油が案内部によって吸入口に案内される。このため、この圧縮機では、たとえスクロール室内において回転する駆動スクロール及び従動スクロールの影響を受けて流体から潤滑油が遠心分離されても、この潤滑油についても流体とともに吸入口から圧縮室内に好適に吸入させることができる。このため、この圧縮機では、圧縮室内に吸入された潤滑油によって駆動スクロール及び従動スクロールを好適に潤滑できるため、駆動スクロール及び従動スクロールが摩耗し難い。
【0010】
したがって、本発明の両回転式スクロール型圧縮機は耐久性に優れている。
【0011】
案内部は、第1対向部及び第2対向部の両方に設けられていることが好ましい。この場合には、第1対向部及び第2対向部にそれぞれ設けられた案内部によって、潤滑油をより好適に吸入口に案内することができる。このため、この圧縮機では、潤滑油を圧縮室内により好適に吸入させることができるため、駆動スクロール及び従動スクロールをより好適に潤滑できる。
【0012】
ハウジングは、外部からスクロール室に流体を吸入させる吸入連絡口を有し得る。また、駆動機構はスクロール室内に収容され得る。そして、吸入口は、駆動機構を挟んで吸入連絡口とは駆動軸心方向の反対側に位置していることが好ましい。
【0013】
この場合には、流体が吸入連絡口からスクロール室内に吸入され、さらに、吸入口から圧縮室内に吸入される過程において、駆動機構を流体によって好適に冷却することができる。このため、発熱による駆動機構の耐久性も防止できるため、この圧縮機は、より優れた耐久性を発揮する。
【0014】
案内部は凹溝からなることが好ましい。この場合には、案内部の形成を容易しつつ、凹溝によって潤滑油を好適に吸入口に案内することができる。
【0015】
案内部は第2対向部に形成され得る。そして、第2対向部の内周側には、案内部に連続しつつ案内部に案内された潤滑油を吸入口に導く環状の導入部が形成されていることが好ましい。この場合には、潤滑油をより好適に圧縮室内に吸入させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の両回転式スクロール型圧縮機は耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機の断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図1のA-A断面を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図1のB-B断面を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機の断面図である。
【
図5】
図5は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図4のC-C断面を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施例2の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図4のD-D断面を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施例3の両回転式スクロール型圧縮機の断面図である。
【
図8】
図8は、実施例3の両回転式スクロール型圧縮機に係り、
図7のE-E断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施例1~3を図面を参照しつつ説明する。実施例1~3の圧縮機は、図示しない車両に搭載されており、車両の空調装置を構成している。
【0019】
(実施例1)
図1に示すように、実施例の圧縮機は、ハウジング6、電動モータ10、駆動スクロール30、従動スクロール40及び従動機構20を備えている。電動モータ10は本発明における「駆動機構」の一例である。なお、
図1では、説明を容易にするため、ハウジング6及び駆動スクロール30等の形状を誇張又は簡略化して図示している。後述する
図4及び
図7についても同様である。
【0020】
本実施例では、
図1に示す実線矢印によって、圧縮機の前後方向及び上下方向を規定している。前後方向と上下方向とは直交している。そして、
図2以降では、
図1に対応して圧縮機の前後方向及び上下方向を規定している。また、本実施例の圧縮機は、自己の下方が車両の下方となる状態で車両に搭載されている。なお、前後方向及び上下方向は説明の便宜のための一例であり、圧縮機は搭載される車両に応じて、自己の姿勢を適宜変更可能である。
【0021】
図1に示すように、ハウジング6は、ハウジング本体60と、軸受ハウジング61と、ハウジングカバー62とによって構成されている。軸受ハウジング61は、本発明における「第1対向部」の一例である。これらのハウジング本体60、軸受ハウジング61及びハウジングカバー62は、アルミニウム合金製である。
【0022】
ハウジング本体60は、第1外周壁60a及び後壁60bを有する有底筒状部材である。第1外周壁60aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。駆動軸心O1は前後方向と平行である。
【0023】
第1外周壁60aは内周面601を有している。また、第1外周壁60aには、吸入連絡口68が形成されている。吸入連絡口68は、第1外周壁60aにおける後方側、つまり、第1外周壁60aにおいて後壁60bに近い個所に位置している。そして、吸入連絡口68はハウジング本体60の径方向に延びている。吸入連絡口68は、配管(図示略)を通じて圧縮機の外部に接続している。
【0024】
後壁60bは、ハウジング本体60の後端に位置している。後壁60bは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。後壁60bの外周縁は、第1外周壁60aの後端に接続している。なお、上述の吸入連絡口68を後壁60bに形成しても良い。
【0025】
後壁60bの内面中央には第1支持部64が形成されている。第1支持部64は、駆動軸心O1を中心とする略円柱状をなしており、後壁60bの内面中央から前方、すなわち後述するスクロール室65内に突出している。第1支持部64には第1滑り軸受51が設けられている。
【0026】
また、第1支持部64において駆動軸心O1から偏心した位置には、ピン孔4が形成されている。ピン孔4は第1支持部64の前端面に開口しつつ、第1支持部64内を後方に向かって直線状に延びている。ここで、ピン孔4は第1支持部64を前後方向に貫通していない。このため、ピン孔4の後端は第1支持部64内に位置している。
【0027】
軸受ハウジング61は、ハウジング本体60の前方に配置されている。軸受ハウジング61は、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。軸受ハウジング61は、外周縁がハウジング本体60の第1外周壁60aの前端に当接している。
【0028】
軸受ハウジング61は、前面61aと、前面61aの反対側に位置する後面61bとを有している。前面61aはハウジングカバー62に面している。後面61bは、スクロール室65に面している。
【0029】
また、軸受ハウジング61の中央には、駆動軸心O1を中心とする円筒状の第2支持部66が設けられている。第2支持部66は、前部が前面61aよりも前方に突出しており、後部が後面61bと略面一となっている。第2支持部66の内部には、第2滑り軸受52が設けられている。なお、第2支持部66の後部は後面61bよりも後方に突出していても良い。また、第1、2滑り軸受51、52に換えて、第1、2支持部64、66にそれぞれ玉軸受等を設けても良い。
【0030】
さらに、軸受ハウジング61には、第1凹溝23が形成されている。第1凹溝23は、本発明における「凹部」、ひいては「案内部」の一例である。第1凹溝23は、軸受ハウジング61において、後面61bから前方に向かって凹設されている。
【0031】
図2に示すように、第1凹溝23は、外周部23aと、渦巻部23bとで構成されている。外周部23aは円環状に形成されている。外周部23aは、駆動スクロール30の径方向において、後述する吸入口32よりも外側に位置している。渦巻部23bは、外周部23aの内側に配置されており、外周部23aと接続している。そして、渦巻部23bは、第2支持部66を囲いつつ、外周部23a側から軸受ハウジング61の中央に向かって渦巻状に延びている。ここで、渦巻部23bにおける渦巻の方向は、駆動スクロール30の回転方向R1(
図3参照)に沿った方向となっている。
【0032】
図1に示すように、ハウジングカバー62は、軸受ハウジング61の前方に配置されている。ハウジングカバー62は、第2外周壁62a及び前壁62bを有する有底筒状部材である。第2外周壁62aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、駆動軸心O1方向に延びている。ここで、第2外周壁62aにおける駆動軸心O1方向の長さは、ハウジング本体60の第1外周壁60aにおける駆動軸心O1方向の長さよりも短くなっている。
【0033】
前壁62bは、ハウジングカバー62の前端に位置している。前壁62bは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びており、軸受ハウジング61の前面61aと対向している。前壁62bの外周縁は、第2外周壁62aの前端に接続している。また、前壁62bには、吐出連絡口69が形成されている。吐出連絡口69は駆動軸心O1方向に延びている。なお、吐出連絡口69を第2外周壁62aに形成しても良い。
【0034】
ハウジングカバー62は、第2外周壁62aの後端が軸受ハウジング61の前面61aに当接している。そして、ハウジング6では、上述のように軸受ハウジング61が第1外周壁60aと当接し、かつ、第2外周壁62aが軸受ハウジング61に当接した状態で複数のボルト(図示略)によって、ハウジングカバー62、軸受ハウジング61及びハウジング本体60が駆動軸心O1方向で固定されている。
【0035】
こうして、ハウジング6では、軸受ハウジング61によってハウジング本体60の前方が塞がれることにより、ハウジング本体60内にスクロール室65が形成されている。そして、軸受ハウジング61の第1凹溝23は、スクロール室65に臨んでいる。
【0036】
また、ハウジング6では、軸受ハウジング61によってハウジングカバー62の後方が塞がれることにより、ハウジングカバー62内に吐出連絡室13が形成されている。つまり、ハウジング6において、軸受ハウジング61は、スクロール室65と吐出連絡室13とを区画している。
【0037】
また、スクロール室65は吸入連絡口68と連通している。これにより、スクロール室65には吸入連絡口68に接続された配管を通じてハウジング6の外部から冷媒ガスが吸入される。冷媒ガスは本発明における「流体」の一例である。こうして、スクロール室65は冷媒ガスの吸入室として機能している。一方、吐出連絡室13は吐出連絡口69と連通している。
【0038】
電動モータ10はスクロール室65内に収容されている。これにより、スクロール室65は、電動モータ10を収容するモータ室を兼ねている。
【0039】
電動モータ10は、ステータ17及びロータ11によって構成されている。ステータ17は、駆動軸心O1を中心とする円筒状であり、巻き線17aを有している。ステータ17は、第1外周壁60aの内周面601に嵌入することにより、ハウジング本体60、ひいてはハウジング6に固定されている。
【0040】
ロータ11は、駆動軸心O1周りで円筒状をなしており、ステータ17内に配置されている。詳細な図示を省略するものの、ロータ11は、ステータ17に対応する複数個の永久磁石と、各永久磁石を固定する積層鋼板とで構成されている。
【0041】
駆動スクロール30はアルミニウム合金製である。駆動スクロール30はスクロール室65内に収容されている。駆動スクロール30は、駆動端板31、駆動渦巻体33、第1カバー体35及び第2カバー体37を有している。第2カバー体37は、本発明における「第2対向部」の一例である。
【0042】
駆動端板31は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。ここで、従動軸心O2は、駆動軸心O1に対して偏心しつつ駆動軸心O1と平行に延びている。つまり、従動軸心O2も前後方向に平行である。駆動端板31は、第2カバー体37と対向する前面311と、前面311の反対側に位置する後面312とを有している。
【0043】
また、駆動端板31には、凹部38及び吐出口39が形成されている。凹部38は、前面311から後方に向かって略円柱状に凹設されている。凹部38では、前方部分が後方部分に比べて大径に形成されている。また、凹部38では、前方部分よりも後方部分が深く形成されている。なお、凹部38の形状は適宜設計可能である。
【0044】
吐出口39は、駆動端板31において、凹部38内となる個所に形成されており、駆動端板31を前後方向に貫通している。また、凹部38内において、駆動端板31には、吐出リード弁57及びリテーナ58が固定ボルト59によって固定されている。これにより、吐出リード弁57は吐出口39を開閉可能となっており、また、リテーナ58は、吐出リード弁57の開度を調整可能となっている。
【0045】
さらに、駆動端板31において、凹部38よりも外側となる個所には、第1吸入口32aが形成されている。第1吸入口32aは、駆動端板31を駆動軸心O1方向に貫通している。詳細な図示を省略するものの、第1吸入口32aは、駆動端板31の周方向に円弧状に湾曲する長孔形状をなしている。
【0046】
駆動渦巻体33は駆動端板31と一体をなしており、駆動端板31の後面312から後方、すなわち従動スクロール40に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。詳細な図示を省略するものの、駆動渦巻体33は、駆動端板31の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。
【0047】
第1カバー体35は、本体部35aと周壁部35bとを有しており、有底の筒状をなしている。本体部35aは、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。本体部35aの中央には、駆動軸心O1及び従動軸心O2方向で後方に向かって突出する第1ボス35cが形成されている。第1ボス35c内には挿通孔351が形成されている。挿通孔351は、第1ボス35c内を含め本体部35aを駆動軸心O1方向に貫通している。これにより、第1ボス35cは駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。
【0048】
また、本体部35aにおいて、第1ボス35cよりも外周側となる個所には、4つのリング22が設けられている。なお、
図1では、4つのリング22のうちの2つを図示している。後述する
図4についても同様である。
【0049】
さらに、本体部35aにおいて、各リング22よりも外周側となる個所には、第3吸入口35dが形成されている。第3吸入口35dは、本体部35aを駆動軸心O1方向に貫通している。詳細な図示を省略するものの、第3吸入口35dは、第1カバー体35の周方向に円弧状に湾曲する長孔形状をなしている。なお、第3吸入口35dは丸孔形状等であっても良い。また、本体部35aに対して複数の第3吸入口35dが形成されても良い。さらに、第3吸入口35dの形成を省略しても良い。
【0050】
周壁部35bは、本体部35aの外周縁と接続している。周壁部35bは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、本体部35aから前方に向かって延びている。
【0051】
第2カバー体37は、カバー本体37aと、第2ボス37bとを有している。カバー本体37aは、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円形平板状に延びている。また、カバー本体37aは駆動端板31とほぼ同径に形成されている。カバー本体37aは、前面371と、後面372とを有している。前面371は前方に面している。後面372は、前面371の反対側に位置しており、駆動端板31に面している。
【0052】
図3に示すように、カバー本体37aには、第2吸入口32bと、複数の第2凹溝37cと、4つのボルト収容孔37dと、導入部25とが形成されている。各第2凹溝37cも本発明における「凹部」、ひいては「案内部」の一例である。なお、
図3では、説明を容易にするため、電動モータ10の図示を省略している。後述する
図6及び
図8についても同様である。
【0053】
図1に示すように、第2吸入口32bは、第1吸入口32aに対応する個所に位置しており、カバー本体37aを駆動軸心O1方向に貫通している。
図3に示すように、第2吸入口32bは、第1吸入口32aの形状に沿うように、カバー本体37aの周方向に円弧状に湾曲する長孔形状をなしている。
【0054】
図1に示すように、各第2凹溝37cは、カバー本体37aの前面371から後方に向かって凹設されている。また、各第2凹溝37cは、カバー本体37aにおいて第2ボス37bよりも外側に配置されている。
図3に示すように、各第2凹溝37cは、カバー本体37aの周方向に円弧状に湾曲しつつ、カバー本体37aにおける吐出通路370側、ひいては駆動軸心O1側からカバー本体37aの外周側に向かって延びている。こうして、各第2凹溝37cは、円弧状に湾曲しつつ、カバー本体37aの中心側から外周側に向かって延びる長溝形状をなしている。なお、吐出通路370については後述する。
【0055】
各第2凹溝37c同士は、カバー本体37aの周方向に等間隔で配置されている。この際、各第2凹溝37c同士は、駆動スクロール30の回転方向R1に沿って、駆動軸心O1側からカバー本体37aの外周側に向かって周回しつつ拡散するように各々の角度を変更させて配置されている。また、各第2凹溝37cにおける一部の第2凹溝37c(本実施例では、4つの第2凹溝37c)は、第2吸入口32b及び導入部25と重なっており、第2吸入口32b及び導入部25と接続している。なお、第2凹溝37cの個数及び形状は適宜設計可能である。
【0056】
各ボルト収容孔37dは、カバー本体37aの前面371から後方に向かって円柱状に凹設されている。各ボルト収容孔37dは、カバー本体37aの周方向に配置されている。各ボルト収容孔37dは、自己と重なった第2凹溝37cと接続している。各ボルト収容孔37dには、それぞれボルト50が収容されている。
【0057】
導入部25は、カバー本体37aの内周側、すなわちカバー本体37aの中心側に配置されている。
図1に示すように、導入部25は、カバー本体37aの前面371から後方に向かって凹設されている。ここで、導入部25は、各第2凹溝37cよりも浅く凹設されている。
【0058】
図3に示すように、導入部25は、第1導入部位25aと第2導入部位25bとで構成されている。第1導入部位25aは、駆動軸心O1を中心とする円環状に形成されており、第2ボス37bを外周側から囲っている。第1導入部位25aは、各第2凹溝37cにおいて内周側となる部分と連続している。
【0059】
第2導入部位25bは、第1導入部位25aと第2吸入口32bとの間に位置している。第2導入部位25bは、第1導入部位25aよりも深く凹設されており、第1導入部位25aと第2吸入口32bとに接続している。これにより、第2導入部位25bは第2吸入口32bと連通している。このため、第1導入部位25aは、第2導入部位25bを通じて第2吸入口32bと連通している。また、第2導入部位25bは、自己と重なる4つの第2凹溝37cと接続している。こうして、第1、2導入部位25a、25b、すなわち導入部25は、各第2凹溝37c及び第2吸入口32bと連通している。なお、第2導入部位25bは、第1導入部位25aよりも浅く形成されても良く、第1導入部位25aと同等の深さで形成されても良い。また、導入部25の形成を省略しても良い。
【0060】
図1に示すように、第2ボス37bは、カバー本体37aの前面371に一体に形成されており、カバー本体37aから、駆動軸心O1及び従動軸心O2方向で前方に向かって突出している。第2ボス37b内には吐出通路370が形成されている。吐出通路370は、第2ボス37b内を含め第2カバー体37を駆動軸心O1方向に貫通している。これにより、第2ボス37bは駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。
【0061】
第2カバー体37は、カバー本体37aの後面372を駆動端板31の前面311に当接させている。また、第2カバー体37では、第1吸入口32aに対して第2吸入口32bを駆動軸心O1方向で整合させている。こうして、第1吸入口32aと第2吸入口32bとが連通することにより、第1吸入口32aと第2吸入口32bとによって吸入口32が形成されている。吸入口32は、第2導入部位25b、ひいては導入部25と連通している。こうして形成された吸入口32は、カバー本体37a及び駆動端板31を駆動軸心O1方向に貫通している。また、このように吸入口32が形成されることにより、この圧縮機では、駆動スクロール30が本発明における「特定スクロール」に相当している。
【0062】
また、カバー本体37aの後面372を駆動端板31の前面311に当接させることにより、カバー本体37aは、駆動端板31の凹部38を前方から覆っている。これにより、カバー本体37a及び凹部38によって吐出室2が形成されている。また、吐出通路370は、凹部38、すなわち吐出室2と連通している。
【0063】
図1に示す従動スクロール40もアルミニウム合金製である。従動スクロール40は、スクロール室65内、より具体的には駆動スクロール30内に収容されている。従動スクロール40は、従動端板41及び従動渦巻体43を有している。
【0064】
従動端板41は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。従動端板41は前面411と後面412とを有している。前面411は、駆動スクロール30内において駆動端板31の後面312と対向している。後面412は、前面411の反対側に位置しており、第1カバー体35の本体部35aと対向している。
【0065】
また、従動端板41には収容部41aが形成されている。収容部41aは従動端板41の後面412から前方に向かって従動軸心O2を中心とする円柱状に凹設されている。収容部41a内にはブッシュ53が設けられている。なお、ブッシュ53は、滑り軸受や玉軸受等を介して収容部41a内に設けられても良い。
【0066】
また、ブッシュ53には従動ピン55が挿通されている。この際、従動ピン55は、ブッシュ53における中心、すなわち従動軸心O2よりも偏心した位置でブッシュ53に挿通されている。従動ピン55は鉄鋼製であり、円柱状をなしている。従動ピン55は、ブッシュ53、ひいては従動端板41から後方に突出している。
【0067】
さらに、従動端板41において、収容部41aよりも外周であって、各リング22と対向する個所には、自転阻止ピン21が固定されている。自転阻止ピン21の個数はリング22の個数に対応している。つまり、本実施例では、従動端板41に対して4つの自転阻止ピン21が固定されている。なお、
図1及び
図4では、4つの自転阻止ピン21のうちの2つを図示している。
【0068】
図1に示すように、従動渦巻体43は従動端板41と一体をなしており、従動端板41の前面411から前方、すなわち駆動端板31に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。詳細な図示を省略するものの、従動渦巻体43は、従動端板41の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって渦巻状に延びている。
【0069】
従動機構20は、4つの自転阻止ピン21と4つのリング22とで構成されている。なお、自転阻止ピン21及びリング22は、それぞれ3つ以上であればその個数は適宜設計可能である。
【0070】
この圧縮機では、第1カバー体35の周壁部35bを駆動端板31の後面312に向けた状態としつつ、駆動端板31と周壁部35bとでロータ11を挟持している。そして、この状態で、第2カバー体37、駆動端板31、ロータ11及び第1カバー体35が4つのボルト50によって接続されている。こうして、駆動スクロール30はロータ11と固定されてロータ11と一体化している。また、駆動スクロール30では、駆動端板31に対して第2カバー体37が固定されている。なお、
図1及び
図4では、4つのボルト50のうちの2つを図示している。
【0071】
そして、この圧縮機では、駆動スクロール30内に従動スクロール40を収容しつつ、駆動渦巻体33と従動渦巻体43とを噛合させている。また、各自転阻止ピン21を各リング22内に進入させている。こうして、駆動スクロール30と従動スクロール40とが前後方向で組み付けられることにより、駆動スクロール30と従動スクロール40とはスクロール圧縮部100を構成している。なお、より詳細には、駆動渦巻体33と従動渦巻体43とが噛合され、かつ、各自転阻止ピン21を各リング22内に進入させた後に、駆動スクロール30では、各ボルト50によって、第2カバー体37、駆動端板31、ロータ11及び第1カバー体35を接続している。
【0072】
また、駆動スクロール30と従動スクロール40とが組み付けられることにより、駆動スクロール30と従動スクロール40とによって吸入部30aが形成されている。そして、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43は吸入部30aの径方向の内側に位置している。吸入部30aは、駆動端板31、ロータ11及び第1カバー体35によってスクロール室65から区画されている。また、吸入部30aは、吸入口32及び第3吸入口35dとそれぞれ連通している。こうして、吸入部30は、吸入口32及び第3吸入口35dを通じてスクロール室65と連通している。
【0073】
そして、駆動スクロール30では、第1カバー体35の挿通孔351内に第1滑り軸受51を挿通させている。これにより、第1ボス35c、ひいては第1カバー体35は、第1滑り軸受51を介して第1支持部64に回転可能に支持されている。また、駆動スクロール30では、第2カバー体37の第2ボス37bを第2滑り軸受52内に挿通させている。これにより、第2ボス37b、ひいては第2カバー体37は、第2滑り軸受52を介して第2支持部66に回転可能に支持されている。こうして、駆動スクロール30は、スクロール室65内に収容されつつ、第1支持部64と第2支持部66との両方によってハウジング6に駆動軸心O1周りで回転可能に支持されている。
【0074】
また、このように第2ボス37bを第2滑り軸受52内に挿通させることにより、吐出通路370を通じて吐出室2と吐出連絡室13とが連通する。これにより、吐出室2は、吐出連絡室13及び吐出連絡口69を通じてハウジング6の外部と連通している。
【0075】
一方、従動スクロール40では、従動ピン55が第1支持部64のピン孔4内に挿通されている。これにより、従動スクロール40は、第1支持部64に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。つまり、駆動スクロール30と異なり、従動スクロール40は、第1支持部64のみによってハウジング6に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。
【0076】
また、この圧縮機では、駆動スクロール30がスクロール室65内に収容されることにより、第2カバー体37及び吸入口32が軸受ハウジング61と駆動軸心O1方向で対向している。そして、第2カバー体37の各第2凹溝37cは、スクロール室65に臨みつつ、軸受ハウジング61の第1凹溝23と対向している。
【0077】
ここで、この圧縮機では、吸入口32が駆動端板31の第1吸入口32aと第2カバー体の第2吸入口32bとによって構成されているため、吸入口32は、駆動スクロール30における前方側に位置している。これにより、駆動スクロール30がスクロール室65内に収容されることにより、吸入口32は、スクロール室65内における前方側に位置している。一方、吸入連絡口68は、第1外周壁60aにおける後方側に位置している。このため、スクロール室65内において、吸入口32は、電動モータ10を挟んで吸入連絡口68とは駆動軸心O1方向で反対側に位置している。つまり、吸入口32と吸入連絡口68とは電動モータ10を挟んで駆動軸心O1方向に離隔している。なお、駆動スクロール30がスクロール室65内に収容されることにより、第3吸入口35dは、スクロール室65内における後方側に位置している。
【0078】
以上のように構成されたこの圧縮機では、吸入連絡口68に接続された配管を通じてハウジング6の外部からスクロール室65内に冷媒ガスが吸入される。そして、電動モータ10が作動し、ロータ11が回転すれば、スクロール室65内において、駆動スクロール30が駆動軸心O1周りで回転駆動する。つまり、駆動スクロール30とロータ11とは一体で回転駆動する。この際、従動機構20において、各自転阻止ピン21は各リング22の内周面に摺接しつつ各リング22を各自転阻止ピン21の中心周りで相対的に回転させる。こうして、従動機構20は、従動スクロール40に駆動スクロール30のトルクを伝達する。
【0079】
その結果、従動スクロール40は、従動軸心O2周りで駆動スクロール30及び従動機構20によって回転従動される。この際、従動機構20は、従動スクロール40が自転することを規制する。これにより、従動スクロール40は駆動スクロール30に対して従動軸心O2周りで相対的に公転する。そして、このように駆動スクロール30が回転駆動し、従動スクロール40が回転従動することにより、吸入部30a内において駆動渦巻体33及び従動渦巻体43がそれぞれ回転する。これにより、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43は、互いに接触することによって双方の間に圧縮室12を形成する。
【0080】
また、スクロール室65内の冷媒ガスは、吸入口32から、吸入部30aひいては圧縮室12に吸入される。ここで、吸入口32は駆動端板31及び第2カバー体37に形成されている。このため、吸入口32は、駆動スクロール30の回転駆動に伴って駆動軸心O1周りで回転しつつ、スクロール室65内の冷媒ガスを圧縮室12に吸入させる。さらに、この圧縮機では、第3吸入口35dによってもスクロール室65内の冷媒ガスが吸入部30a、ひいては圧縮室12内に吸入される。この際、第3吸入口35dについても、駆動スクロール30の回転駆動に伴って駆動軸心O1周りで回転しつつ、スクロール室65内の冷媒ガスを圧縮室12内に吸入させる。
【0081】
また、駆動スクロール30が回転駆動し、従動スクロール40が回転従動することにより、圧縮室12は、駆動端板31、駆動渦巻体33、従動端板41及び従動渦巻体43によって吸入部30aから区画される。このため、圧縮室12内に存在する冷媒ガスは、圧縮室12内に閉じ込められた状態となる。そして、駆動スクロール30が回転駆動し、従動スクロール40が回転従動することに伴い、駆動渦巻体33及び従動渦巻体43は、圧縮室12の容積を縮小させつつ圧縮室12内の冷媒ガスを圧縮する。こうして、吐出圧力まで圧縮された冷媒ガスは、吐出口39から吐出室2に吐出され、さらに、吐出通路370、吐出連絡室13及び吐出連絡口69を経て圧縮機の外部に吐出される。こうして、車両用空調装置による空調が行われる。
【0082】
ところで、スクロール室65内に吸入された冷媒ガスは潤滑油18を含んでいるものの、冷媒ガスは、スクロール室65内で回転駆動する駆動スクロール30及び従動回転する従動スクロール40による遠心力の影響を不可避的に受けてしまう。このため、冷媒ガスに含まれた潤滑油18が冷媒ガスから遠心分離し、スクロール室65内において潤滑油18は駆動スクロール30及び従動スクロール40の径方向の外側に向かって飛散する。また、この圧縮機では、自己の下方が車両の下方となる状態で車両に搭載されているため、潤滑油18は重力によってスクロール室65内の下方に貯留され易くなる。また、スクロール室65内の冷媒ガスは、スクロール室65内において駆動スクロール30等に衝突することによっても潤滑油18が分離され得る。これによっても、この圧縮機では、冷媒ガスから分離された潤滑油18がスクロール室65内に貯留され得る。
【0083】
ここで、この圧縮機では、軸受ハウジング61に第1凹溝23が形成されているとともに、第2カバー体37に複数の第2凹溝37cが形成されている。そして、上述のように、この圧縮機では、駆動スクロール30の回転駆動に伴って、吸入口32が駆動軸心O1周りで回転しつつ、スクロール室65内の冷媒ガスを圧縮室12に吸入させる。このため、
図2の破線矢印で示すように、スクロール室65内の潤滑油18は、吸入口32に吸入される冷媒ガスに引き寄せられる。これにより、潤滑油18は、第1凹溝23の外周部23aから渦巻部23bを流通することにより、第1凹溝23によって吸入口32の近傍まで案内される。また、同様に、スクロール室65内の潤滑油18は、各第2凹溝37cも流通する(
図3の破線矢印参照。)。そして、潤滑油18は、各第2凹溝37cによってカバー本体37aの内周側に向かって流通しつつ吸入口32まで案内される。この際、導入部25では、各第2凹溝37cによってカバー本体37aの内周側まで流通した潤滑油18を第1導入部位25aが第2導入部位25bまで導き、さらに第2導入部位25bは、潤滑油18を吸入口32まで導く。このように、この圧縮機では、第1凹溝23及び各第2凹溝37cによって、スクロール室65内の潤滑油18が吸入口32よりも駆動スクロール30の径方向の外側から吸入口32に向けて案内される。
【0084】
こうして、この圧縮機では、たとえスクロール室65内において冷媒ガスから潤滑油18が遠心分離されても、この潤滑油18についても冷媒ガスとともに吸入口32から吸入部30a、ひいては圧縮室12内に好適に吸入させることが可能となっている。これにより、この圧縮機では、圧縮室12内に吸入された潤滑油18によって、駆動端板31、駆動渦巻体33、従動端板41及び従動渦巻体43をそれぞれ好適に潤滑できる。この結果、この圧縮機では、駆動スクロール30及び従動スクロール40が摩耗し難くなっている。
【0085】
したがって、実施例1の圧縮機は耐久性に優れている。
【0086】
特に、この圧縮機では、第1カバー体35の本体部35aに形成された第3吸入口35dによってもスクロール室65内の冷媒ガスが吸入部30a、ひいては圧縮室12に吸入される。このため、吸入口32のみによって冷媒ガスが圧縮室12内に吸入される場合に比べて、この圧縮機では、冷媒ガスを圧縮室12内に好適に吸入させることが可能となっている。ここで、第3吸入口35dから吸入される冷媒ガスは、回転駆動する駆動スクロール30及び従動回転する従動スクロール40の影響を受けることにより、冷媒ガスに含まれた潤滑油18が遠心分離し得る。そして、このように冷媒ガスから分離した潤滑油18は、吸入部30aからスクロール室65内に流出し得るものの、たとえ潤滑油18がスクロール室65内に流出しても、この潤滑油18はスクロール室65内に貯留されることで、上述のように、第1凹溝23及び各第2凹溝37cによって吸入口32に案内され、結果として圧縮室12内に吸入されることになる。
【0087】
また、この圧縮機では、上述のように圧縮室12内に潤滑油18を好適に吸入させることができるため、この潤滑油18によるオイルシールが好適に発揮される。このため、この圧縮機では、圧縮室12内の冷媒ガスの漏れを好適に防止することも可能となっている。
【0088】
また、この圧縮機では、吸入口32と吸入連絡口68とが電動モータ10を挟んで駆動軸心O1方向に離隔しているため、吸入連絡口68からスクロール室65内に吸入された冷媒ガスは、スクロール室65内を前方に向かって流通しつつ吸入口32に吸入される。これにより、この圧縮機では、冷媒ガスが吸入口32に向かってスクロール室65内を流通する際、冷媒ガスはステータ17とロータ11との間を流通し易くなっている。これにより、この圧縮機では、冷媒ガスによって電動モータ10を好適に冷却することができるため、発熱による電動モータ10の劣化も生じ難くなっている。この点においても、この圧縮機は耐久性に優れている。
【0089】
さらに、この圧縮機では、第1凹溝23及び各第2凹溝37cを本発明における「案内部」としているため、軸受ハウジング61及び第2カバー体37に案内部を容易に形成することが可能となっている。
【0090】
また、この圧縮機では、第2カバー体37のカバー本体37aに導入部25が形成されており、この導入部25は、各第2凹溝37cと連続している。これにより、この圧縮機では、各第2凹溝37cが潤滑油18を吸入口32まで案内するに当たり、導入部25がその補助を行うことが可能となっている。この点においても、この圧縮機では、潤滑油18を圧縮室12内に好適に吸入させることが可能となっている。
【0091】
(実施例2)
図4に示すように、実施例2の圧縮機は、ハウジング6がハウジング本体70と、軸受ハウジング71と、ハウジングカバー62とによって構成されている。
【0092】
ハウジング本体70は、第1外周壁70a及び後壁70bを有する有底筒状部材である。後壁70bは本発明における「第1対向部」の一例である。第1外周壁70aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。第1外周壁70aには、吸入連絡口68が形成されている。ここで、吸入連絡口68は、第1外周壁70aにおける前方側に位置している。また、第1外周壁70aは内周面700を有しており、この内周面700にステータ17が嵌入している。
【0093】
後壁70bは、ハウジング本体70の後端に位置している。後壁70bは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。後壁70bは、スクロール室65に面する前面701と、前面701の反対側に位置してハウジング6の外部に面する後面702とを有している。後壁70bの外周縁は、第1外周壁70aの後端に接続している。
【0094】
実施例1の圧縮機における後壁60bと同様、後壁70bの中央には、第1支持部64が形成されている。さらに、後壁70bには、第3凹溝24が形成されている。第3凹溝24も本発明における「凹部」、ひいては「案内部」の一例である。第3凹溝24は、後壁70bにおいて、前面701から後方に向かって凹設されている。これにより、第3凹溝24は、スクロール室65に臨んでいる。
【0095】
図5に示すように、第3凹溝24は、外周部24aと、渦巻部24bとで構成されている。外周部24aは円環状に形成されている。外周部24aは、駆動スクロール30の径方向において、後述する吸入口74よりも外側に位置している。渦巻部24bは、外周部24aの内側に配置されており、外周部24aと接続している。そして、渦巻部24bは、第1支持部64を囲いつつ、外周部24a側から後壁70bの中央に向かって渦巻状に延びている。渦巻部24bにおける渦巻の方向も駆動スクロール30の回転方向R1(
図6参照)に沿った方向となっている。
【0096】
図4に示すように、軸受ハウジング71は、ハウジング本体70の前方に配置されている。軸受ハウジング71は、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。軸受ハウジング71は、外周縁がハウジング本体70の第1外周壁70aの前端に当接している。軸受ハウジング71は、スクロール室65と吐出連絡室13とを区画している。
【0097】
軸受ハウジング71は、ハウジングカバー62に面する前面711と、スクロール室65に面する後面712とを有している。ここで、軸受ハウジング61と異なり、軸受ハウジング71には、第1凹溝23は形成されていない。また、軸受ハウジング71の中央には、第2支持部72が設けられている。第2支持部72は、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、前面711及び後面712よりもそれぞれ駆動軸心O1方向に突出している。第2支持部72の内部には、第2滑り軸受52が設けられている。
【0098】
また、この圧縮機では、駆動スクロール30が駆動端板31、駆動渦巻体33、第1カバー体73及び第2カバー体75を有している。第1カバー体73は、本発明における「第2対向部」の一例である。ここで、この圧縮機では、駆動端板31に対して第1吸入口32aが形成されていない。
【0099】
第1カバー体73は、本体部73aと周壁部73bとを有しており、有底の筒状をなしている。本体部73aは、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。また、本体部35aと同様に、本体部73aの中央には後方に向かって突出する第1ボス35cが形成されている。また、本体部73aにおいて、第1ボス35cよりも外周となる個所には、4つのリング22が設けられている。
【0100】
また、本体部73aには、吸入口74と、複数の第4凹溝73cとが形成されている。各第4凹溝73cも本発明における「凹部」、ひいては「案内部」の一例である。吸入口74は、本体部73aにおいて、各リング22よりも外側となる個所に形成されており、本体部73aを駆動軸心O1方向に貫通している。
図6に示すように、吸入口74は、本体部73aの周方向に円弧状に湾曲する長孔形状をなしている。なお、吸入口74の形状は適宜設計可能である。
【0101】
図4に示すように、各第4凹溝73cは、本体部73aの後面、すなわち、本体部73aにおいて、ハウジング本体70の後壁70bと対向する面から前方に向かって凹設されている。
図6に示すように、各第4凹溝73cは、本体部73aの周方向に円弧状に湾曲しつつ、駆動軸心O1側から本体部73aの外周側に向かって延びている。これにより、第2凹溝37cと同様、第4凹溝73cも長溝形状をなしている。
【0102】
各第4凹溝73c同士は、本体部73aの周方向に等間隔で配置されている。この際、各第4凹溝73c同士は、駆動スクロール30の回転方向R1に沿って、駆動軸心O1側から本体部73aの外周側に向かって周回しつつ拡散するように各々の角度を変更させて配置されている。また、各第4凹溝73cにおける一部の第4凹溝73cは、吸入口74と重なっており、吸入口74と接続している。なお、第4凹溝73cの個数及び形状は適宜設計可能である。
【0103】
図4に示すように、周壁部73bは、本体部73aの外周縁と接続している。周壁部73bは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしており、本体部73aから前方に向かって延びている。
【0104】
第2カバー体75は、カバー本体75aを有している。カバー本体75aは、第2吸入口32b及び各第2凹溝37cが形成されていない点を除いて、カバー本体37aと同様の構成である。また、カバー本体37aと同様、カバー本体75aには第2ボス37bが一体で形成されている。
【0105】
この圧縮機では、第1カバー体73の周壁部73bを駆動端板31の後面312に向けた状態としつつ、駆動端板31と周壁部73bとでロータ11を挟持している。また、駆動端板31の前面311に第2カバー体75のカバー本体75aを当接させている。そして、この状態で、第2カバー体75、駆動端板31、ロータ11及び第1カバー体73が4つのボルト50によって接続されている。
【0106】
また、駆動スクロール30では、第1カバー体73が第1滑り軸受51を介して第1支持部64に回転可能に支持されているとともに、第2カバー体75が第2滑り軸受52を介して第2支持部72に回転可能に支持されている。こうして、この圧縮機では、第1カバー体73の本体部73a及び吸入口74がハウジング本体70の後壁70bと駆動軸心O1方向で対向している。そして、第1カバー体73の各第4凹溝73cがスクロール室65に臨みつつ、後壁70bの第3凹溝24と対向している。
【0107】
また、この圧縮機では、吸入口74が第1カバー体73に形成されることにより、吸入口74が駆動スクロール30における後方側に位置している。これにより、駆動スクロール30がスクロール室65内に収容されることにより、吸入口74は、スクロール室65内における後方側に位置している。一方、吸入連絡口68は、第1外周壁70aにおける前方側に位置している。このため、スクロール室65内において、吸入口74と吸入連絡口68とは電動モータ10を挟んで駆動軸心O1方向に離隔している。この圧縮機における他の構成は、実施例1の圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0108】
この圧縮機では、駆動スクロール30の回転駆動に伴って、吸入口74が駆動軸心O1周りで回転しつつ、スクロール室65内の冷媒ガスを圧縮室12に吸入させる。このため、
図5の破線矢印で示すように、この圧縮機でも、スクロール室65内の潤滑油18は、吸入口74に吸入される冷媒ガスに引き寄せられつつ、第3凹溝24の外周部24aから渦巻部24bを流通することにより、第3凹溝24によって吸入口74の近傍まで案内される。また、同様に、スクロール室65内の潤滑油18は、
図6の破線矢印で示すように、各第4凹溝73cを流通することにより、各第4凹溝73cによっても吸入口74まで案内される。
【0109】
こうして、この圧縮機では、冷媒ガスと共に潤滑油18を吸入口74から圧縮室12内に好適に吸入させることが可能となっている。これにより、この圧縮機でも実施例1の圧縮機と同様の作用を奏することが可能となっている。
【0110】
(実施例3)
図7に示すように、実施例3の圧縮機は、ハウジング8、電動モータ10、駆動スクロール130、従動スクロール140及び従動機構20aを備えている。
【0111】
ハウジング8は、ハウジング本体81とハウジングカバー82とによって構成されている。ハウジングカバー82は本発明における「第1対向部」の一例である。
【0112】
ハウジング本体81は、外周壁81a及び後壁81bを有する有底筒状部材である。外周壁81aは、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。外周壁81aには、吸入連絡口68が形成されている。ここで、吸入連絡口68は、外周壁81aにおける後方側に位置している。また、外周壁81aは内周面810を有しており、この内周面810にステータ17が嵌入している。
【0113】
後壁81bは、ハウジング本体81の後端に位置している。後壁81bは、駆動軸心O1と直交して略円形平板状に延びている。後壁81bの外周縁は、外周壁81aの後端に接続している。後壁81bの内面中央には、前方に向かって突出する円柱状の軸支部83が凸設されている。軸支部83には、ベアリング84の外輪が嵌入している。
【0114】
ハウジングカバー82は、ハウジング本体81の前方に配置されている。ハウジングカバー82は、その外周縁がハウジング本体81の外周壁81aの前端に当接する状態で、図示しないボルトによって外周壁81aに締結されている。これにより、ハウジングカバー82は、ハウジング本体81を前方から塞いでいる。こうして、ハウジング本体81内にスクロール室65aが形成されている。スクロール室65aは吸入連絡口68と連通している。これにより、スクロール室65a内には、吸入連絡口68を通じて冷媒ガスが吸入される。
【0115】
また、ハウジングカバー82の中央には、軸支部85が凸設されている。軸支部85は、従動軸心O2を中心とする略円筒状に形成されている。軸支部85内には、ニードルベアリング86の外輪が嵌入している。さらに、ハウジングカバー82には、吐出連絡口69が形成されている。
【0116】
駆動スクロール130は、駆動端板131、駆動周壁132及び駆動渦巻体133を有している。駆動端板131は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。駆動端板131は、前面131aと、前面131aの反対側に位置する後面131bとを有している。後面131bの中央には、後壁81bに向かって突出する第1ボス134が形成されている。第1ボス134は、駆動軸心O1を中心とする円筒状をなしている。
【0117】
駆動周壁132は、駆動端板131と一体に形成されており、駆動端板131の外周縁から従動スクロール140に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。駆動周壁132は、駆動軸心O1を中心とする略円筒状をなしている。また、駆動周壁132の前端には、駆動周壁132から前方に突出する状態で4つの自転阻止ピン21aが固定されている。なお、
図7では、4つの自転阻止ピン21aのうちの2つを図示している。
【0118】
駆動渦巻体133は、駆動周壁132の内側に位置している。駆動渦巻体133は、駆動端板31の前面131aから前方に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。詳細な図示を省略するものの、駆動渦巻体133は、駆動端板131の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって駆動軸心O1周りで渦巻状に延びている。そして、駆動渦巻体133は、渦巻における外周側の端部で駆動周壁132と接続している。
【0119】
従動スクロール140は、従動端板141及び従動渦巻体143を有している。従動端板41は、駆動軸心O1及び従動軸心O2と直交して略円板状に延びている。従動端板141は、前面141aと、前面141aの反対側に位置する後面141bとを有している。
【0120】
前面141aの中央には、ハウジングカバー82に向かって突出する第2ボス144が形成されている。第2ボス144は、従動軸心O2を中心とする円筒状をなしている。一方、後面141bにおいて従動渦巻体143よりも外周側となる個所には、各自転阻止ピン21aと対応するように4つリング22aが固定されている。なお、
図7では、4つのリング22aのうちの2つを図示している。
【0121】
また、従動端板41には、吸入口47と吐出口48とが形成されている。吸入口47は、従動端板141において、第2ボス144よりも外側となる個所に形成されており、従動端板141を駆動軸心O1方向に貫通している。
図8に示すように、吸入口47は、従動端板141の周方向に円弧状に湾曲する長孔形状をなしている。このように、従動端板41に吸入口47が形成されることにより、従動スクロール140は本発明における「特定スクロール」に相当している。なお、吸入口47の形状は適宜設計可能である。
【0122】
吐出口48は、従動端板141において、第2ボス144内となる個所に配置されており、従動端板141を駆動軸心O1方向に貫通している。また、従動端板141にも、吐出リード弁57及びリテーナ58が固定ボルト59によって固定されている。
【0123】
さらに、従動端板141には、複数の第5凹溝87が形成されている。各第5凹溝87は、第2ボス144よりも外側に位置しており、従動端板141の前面141aから後方に向かって凹設されている。
図8に示すように、各第5凹溝87は、従動端板141の周方向に円弧状に湾曲しつつ、従動軸心O2及び吐出口48側から従動端板141の外周側に向かって延びている。これにより、第2凹溝37c及び第4凹溝73cと同様、第5凹溝87も長溝形状をなしている。
【0124】
各第5凹溝87同士は、従動端板141の周方向に等間隔で配置されている。この際、各第5凹溝87同士は、従動スクロール140の回転方向R1に沿って、従動軸心O2及び吐出口48側から従動端板141の外周側に向かって周回しつつ拡散するように各々の角度を変更させて配置されている。また、各第5凹溝87における一部の第5凹溝87は、吸入口47と重なっており、吸入口47と接続している。なお、第5凹溝87の個数及び形状は適宜設計可能である。
【0125】
図7に示すように、従動渦巻体143は、従動端板141の後面141bから駆動スクロール130に向かって駆動軸心O1及び従動軸心O2と平行に延びている。詳細な図示を省略するものの、従動渦巻体143は、従動端板141の中心側を渦巻中心としつつ、渦巻中心から外周に向かって従動軸心O2周りで渦巻状に延びている。
【0126】
従動機構20aは、4つの自転阻止ピン21aと4つのリング22aとで構成されている。なお、自転阻止ピン21a及びリング22aについても、それぞれ3つ以上であればその個数は適宜設計可能である。
【0127】
この圧縮機では、スクロール室65a内に駆動スクロール130及び従動スクロール140を収容しつつ、駆動端板131の前面131aと従動端板141の後面141bとを対向させている。また、各自転阻止ピン21aを各リング22a内に進入させている。こうして、駆動スクロール130と従動スクロール140とが前後方向で組み付けられている。これにより、駆動スクロール130と従動スクロール140とはスクロール圧縮部101を構成している。また、駆動スクロール130と従動スクロール140とによって吸入部30bが形成されている。吸入部30bは、駆動端板131、駆動周壁132及び従動端板141によってスクロール室65aから区画されている。吸入部30bは、吸入口47と連通している。また、駆動渦巻体133及び従動渦巻体143は吸入部30b内に位置しつつ、互いに噛合している。これにより、駆動渦巻体133と従動渦巻体143とは双方の間に圧縮室12aを形成している。
【0128】
そして、駆動スクロール130は、駆動周壁132がロータ11に固定されることにより、ロータ11と一体化されている。また、駆動スクロール130では、第1ボス134に対してベアリング84の内輪が内嵌している。これにより、第1ボス134はベアリング84を介して軸支部83に回転可能に支持されている。この結果、駆動スクロール130はハウジング8に駆動軸心O1周りで回転可能に支持されている。
【0129】
一方、従動スクロール140では、第2ボス144がニードルベアリング86の内輪に内嵌されている。これにより、第2ボス144はニードルベアリング86を介して軸支部85に回転可能に支持されている。この結果、従動スクロール140はハウジング8に従動軸心O2周りで回転可能に支持されている。
【0130】
このように、第2ボス144が軸支部85に支持されることにより、第2ボス144の内周面に囲まれ、かつ、ハウジングカバー82と従動端板141とに挟まれた空間は、吐出室5とされている。吐出室5は、吐出連絡口69と連通している。
【0131】
この圧縮機では、従動スクロール140がスクロール室65a内に収容されることにより、従動端板141及び吸入口47がハウジングカバー82と駆動軸心O1方向で対向している。そして、従動端板141の各第5凹溝87はスクロール室65aに臨んでいる。
【0132】
さらに、この圧縮機では、吸入口47が従動端板141に形成されることにより、吸入口47が従動スクロール140における後方側に位置している。このため、スクロール室65a内において、吸入口47と吸入連絡口68とは電動モータ10を挟んで駆動軸心O1方向に離隔している。この圧縮機における他の構成は、実施例1の圧縮機と同様である。
【0133】
この圧縮機では、電動モータ10によって駆動スクロール130が駆動軸心O1周りで回転駆動するとともに、従動スクロール140が駆動スクロール130及び従動機構20aによって従動軸心O2周りで回転従動する。これにより、吸入口47は、従動スクロール140の回転従動に伴って、従動軸心O2周りで回転しつつ、スクロール室65a内の冷媒ガスを吸入部30b、ひいては圧縮室12aに吸入させる。そして、圧縮室12a内で圧縮された冷媒ガスは、吐出口48から吐出室5に吐出され、さらに、吐出連絡口69からハウジング8の外部に吐出される。
【0134】
そして、この圧縮機においても、
図8の破線矢印で示すように、スクロール室65内の潤滑油18は、吸入口47に吸入される冷媒ガスに引き寄せられつつ、各第5凹溝87を流通することで吸入口47まで案内される。こうして、この圧縮機でも潤滑油18を冷媒ガスとともに吸入口47から圧縮室12a内に好適に吸入させることが可能となっている。
【0135】
また、この圧縮機では、ハウジングカバー82に対して第1凹溝23のような案内部が形成されていないため、ハウジングカバー82の製造が容易となっている。この圧縮機における他の作用は実施例1の圧縮機と同様である。
【0136】
以上において、本発明を実施例1~3に即して説明したが、本発明は上記実施例1~3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0137】
例えば、実施例1の圧縮機では、第1凹溝23及び各第2凹溝37cを本発明における「案内部」としている。しかし、これに限らず、軸受ハウジング61及び第2カバー体37からそれぞれスクロール室65内に向かって突出するリブ等形成し、このリブ等を本発明における「案内部」としても良い。実施例2、3の圧縮機についても同様である。
【0138】
また、実施例1の圧縮機において、第1凹溝23及び各第2凹溝37cの一方を省略しても良い。同様に、実施例2の圧縮機において、第3凹溝24及び各第4凹溝73cの一方を省略しても良い。
【0139】
また、実施例3の圧縮機において、ハウジングカバー82に第1凹溝23を形成しても良い。
【0140】
また、実施例1の圧縮機において、吸入連絡口68を第1外周壁60aにおける前方側に形成することにより、吸入口32と吸入連絡口68とが共に電動モータ10の前方に配置される構成としても良い。実施例3の圧縮機についても同様である。
【0141】
また、実施例2の圧縮機において、吸入連絡口68を第1外周壁70aにおける後方側に形成することにより、吸入口74と吸入連絡口68とが共に電動モータ10の後方に配置される構成としても良い。
【0142】
また、実施例1の圧縮機では、導入部25が各第2凹溝37cよりも浅く凹設されている。しかし、これに限らず、導入部25は、各第2凹溝37cよりも深く凹設されていても良い。
【0143】
また、実施例2の圧縮機において、第2カバー体75及び駆動端板31を貫通する吸入口を形成するとともに、第2カバー体75のカバー本体75aに対して実施例1の圧縮機における各第2凹溝37cを形成しても良い。この際、カバー本体75aに導入部25をさらに形成しても良い。
【0144】
また、実施例3の圧縮機において、駆動端板131に対してもスクロール室65a内の冷媒ガスを圧縮室12aに吸入させる吸入口を形成するとともに、従動端板131の後面131bに対して、実施例2の圧縮機における各第4凹溝73cを形成しても良い。つまり、駆動スクロール130及び従動スクロール140の双方が本発明における「特定スクロール」に相当する構成としても良い。また、この場合には、ハウジング本体81の後壁81bに対して、実施例2の圧縮機における第3凹溝24を形成しても良い。さらに、後面131bに実施例1の圧縮機における導入部25を形成しても良い。
【0145】
また、実施例1の圧縮機では、駆動端板31と第1カバー体35の周壁部35bとによってロータ11を挟持しつつ、これらをボルト50によって接続している。しかし、これに限らず、駆動端板31と周壁部35bとをボルト50によって直接接続し、周壁部35bの外周面にロータ11を固定する構成としても良い。実施例2の圧縮機についても同様である。
【0146】
また、実施例1の圧縮機において、駆動スクロール30とロータ11とを駆動軸によって動力伝達可能に接続することにより、駆動スクロール30とロータ11とを駆動軸心O1方向に離隔して配置する構成としても良い。実施例2、3の圧縮機についても同様である。
【0147】
また、実施例1、2の圧縮機では、従動機構20が自転阻止ピン21及びリング22によって構成されている。しかし、これに限らず、従動機構20は、2本のピンが1つのフリーリングの内周面に摺接するピン・リング・ピン方式、2本のピンの外周面同士が摺接するピン・ピン方式、オルダム接手を用いる方式等によって構成されていても良い。実施例3の圧縮機における従動機構20aについても同様である。
【0148】
また、本明細書では以下の発明を含んでいる。
(付記1)
ハウジング、駆動機構、駆動スクロール、従動スクロール及び従動機構を備え、
前記ハウジングは、前記駆動スクロール及び前記従動スクロールが収容されるとともに潤滑油を含有する流体が吸入されるスクロール室を有し、
前記駆動スクロールは、前記駆動機構によって駆動軸心周りに回転駆動され、
前記従動スクロールは、前記駆動スクロールに対して偏心しつつ従動軸心周りで前記駆動スクロール及び前記従動機構によって回転従動され、
前記駆動スクロールと前記従動スクロールとによって流体を圧縮する圧縮室が形成される両回転式スクロール型圧縮機であって、
前記駆動スクロール及び前記従動スクロールの少なくとも一方は、前記圧縮室に流体を吸入させる吸入口が形成された特定スクロールとされ、
前記ハウジングは、前記特定スクロール及び前記吸入口と前記駆動軸心方向で対向する第1対向部を有し、
前記特定スクロールは、前記第1対向部と前記駆動軸心方向で対向する第2対向部を有し、
前記第2対向部に前記吸入口が形成され、
前記第1対向部及び前記第2対向部の少なくとも一方には、前記特定スクロールの回転によって、前記吸入口よりも前記特定スクロールの径方向の外側から前記吸入口に向けて前記スクロール室内で流体から分離された前記潤滑油を案内する案内部が設けられていることを特徴とする両回転式スクロール型圧縮機。
(付記2)
前記案内部は、前記第1対向部及び前記第2対向部の両方に設けられている付記1記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記3)
前記ハウジングは、外部から前記スクロール室に流体を吸入させる吸入連絡口を有し、
前記駆動機構は前記スクロール室内に収容され、
前記吸入口は、前記駆動機構を挟んで前記吸入連絡口とは前記駆動軸心方向の反対側に位置している付記1又は2記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記4)
前記案内部は凹溝からなる付記1乃至3のいずれか1項記載の両回転式スクロール型圧縮機。
(付記5)
前記案内部は前記第2対向部に形成され、
前記第2対向部の内周側には、前記案内部に連続しつつ前記案内部に案内された前記潤滑油を前記吸入口に導く環状の導入部が形成されている付記1乃至4のいずれか1項記載の両回転スクロール型圧縮機。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は車両の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0150】
6、8…ハウジング
10…電動モータ(駆動機構)
12、12a…圧縮室
18…潤滑油
20、20a…従動機構
23…第1凹溝(案内部、凹溝)
24…第3凹溝(案内部、凹溝)
25…導入部
30、130…駆動スクロール
32、47、74…吸入口
37…第2カバー体(第2対向部)
37c…第2凹溝(案内部、凹溝)
40、140…従動スクロール
61…軸受ハウジング(第1対向部)
65、65a…スクロール室
68…吸入連絡口
70b…後壁(第1対向部)
73…第1カバー体(第2対向部)
73c…第4凹溝(案内部、凹溝)
82…ハウジングカバー(第1対向部)
87…第5凹溝(案内部、凹溝)
141…従動端板(第2対向部)
O1…駆動軸心
O2…従動軸心