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  • 特開-遠隔操作ロボット機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137409
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】遠隔操作ロボット機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B25J3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048930
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】390000804
【氏名又は名称】白山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 茂男
(72)【発明者】
【氏名】木村 直人
(72)【発明者】
【氏名】和田 周賢
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707CS08
3C707DS01
3C707HT02
3C707HT04
3C707HT36
3C707KT02
3C707KT04
3C707LV18
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】遠隔操作ロボットにおいて、先端にカメラを取り付けた軽量な受動アームスタンドを作業アームでマニピュレーションすることで、作業視点の移動を可能とする遠隔操作ロボット機構を提供すること。
【解決手段】
基台部と、基台部との接続部に旋回軸を有し、遠隔操作により作業を行う作業アームと、前記作業アームの近傍に設置され、関節部の摩擦により姿勢の保持が可能な受動関節からなるアームスタンドと、前記アームスタンドの先端に取り付けられた作業監視装置および/または作業補助装置とを備え、前記作業アームが前記移動カメラを所望の位置に移動させるための機構を備える、遠隔操作ロボット機構
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部と;
基台部との接続部に旋回軸を有し、遠隔操作により作業を行う作業アームと;
前記作業アームの近傍に設置され、関節部の摩擦により姿勢の保持が可能な受動関節からなるアームスタンドと;
前記アームスタンドの先端に取り付けられた作業監視装置および/または作業補助装置と;
を備え、
前記作業アームが前記移動カメラを所望の位置に移動させるための機構を備える、
遠隔操作ロボット機構。
【請求項2】
前記アームスタンドが自重補償機構を備える、請求項1に記載の遠隔操作ロボット機構。
【請求項3】
前記作業アームの根元の旋回軸まわりの回転に対してあそびをもって連動するテーブルを備え、
前記アームスタンドの支持部が前記テーブル上に設置されるよう構成される、
請求項1または請求項2に記載の遠隔操作ロボット機構。
【請求項4】
前記テーブル上に前記作業アームと前記アームスタンドを俯瞰的に捉える固定カメラを備え、前記固定カメラが前記テーブルと連動するように構成される、請求項3に記載の遠隔操作ロボット機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作ロボットにおいて、先端にカメラを取り付けたアームスタンドを作業用アームでマニピュレーションすることで作業視点を移動するカメラ視点移動法を可能とする遠隔操作ロボット機構に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔操作ロボットでは、操縦者が遠隔地においてロボットもしくはその近傍に設置されたカメラの映像をもとに作業を行う必要がある。1台のカメラにより提示される視野およびロボットに搭載可能なカメラの数は限られているため、作業を円滑に行うためには、カメラの配置方法を工夫する、またはカメラ自体を動かして作業に応じた視野を確保する必要がある。
【0003】
例えば特許文献1および特許文献2に開示された遠隔操作ロボット機構は、作業アームが搭載された基台上にアームを俯瞰する固定カメラを配置する構成としている。特許文献3に開示された遠隔操作ロボット機構は、作業アームを俯瞰する固定カメラだけでなく、作業アームの先端にもカメラを搭載し、作業アームの手先で行う作業の様子が良く見える構成としている。
【0004】
一方、特許文献4に開示された構成は、カメラ自体を移動させることにより作業に必要な視野を確保する構成である。特許文献4に開示された遠隔操作ロボットは、作業アームが搭載された基台上に、先端にカメラを搭載した能動アームを搭載し、前記アームを操作することでカメラ視野を移動できる構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-277976号
【特許文献2】特開平6-65949号
【特許文献3】WO2017/03351A1
【特許文献4】特開2021―88027号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1および特許文献2に開示された構成のように、固定カメラにより作業アームを俯瞰する構成では、作業アーム先端がカメラの死角になりやすく、手先の細かな作業が難しい。特許文献3に開示された構成のように作業アームの手先にカメラを取り付ければ、死角を回避できるが、アームの操作中にカメラ視点が移動してしまうため、細かな作業が難しいうえ、操縦者がカメラ酔いしてしまうことが問題となる。一方、特許文献4に開示された構成のように、作業アームとは別に設置されたカメラ自体を移動させる構成であれば、作業アームの手先付近にカメラ視野を移動させて死角を回避できるほか、作業アームによる作業中でもカメラは動かないため、カメラ酔いしにくい。しかし、この構成では、カメラの視点移動に複数のアクチュエータを要するために、機構が重くなりがちであるほか、ロボットの電子回路を含むハードウェア構成が煩雑になる問題がある。
【0007】
そこで本発明では、遠隔操作ロボットにおいて、先端に作業監視装置および/または作業補助装置を取り付けたアームスタンドを作業アームでマニピュレーションすることにより作業視点の移動を可能とし作業環境の改善も図ることができる、遠隔操作ロボット機構を提供することを課題とする。特に、遠隔操作ロボットにおいて、先端にカメラを取り付けた軽量な受動アームスタンドを作業アームでマニピュレーションすることにより作業視点の移動を可能とする遠隔操作ロボット機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の様態に係る遠隔操作ロボット機構は、
基台部と;
基台部との接続部に旋回軸を有し、遠隔操作により作業を行う作業アームと、
前記作業アームの近傍に設置され、関節部の摩擦により姿勢の保持が可能な受動関節からなるアームスタンドと、
前記アームスタンドの先端に取り付けられた作業監視装置および/または作業補助装置と、
前記作業アームが前記移動カメラを所望の位置に移動させるための機構を備える、遠隔操作ロボット機構である。
【0009】
また、本発明の他の実施態様は、前記アームスタンドが自重補償機構を備える、上記記載の遠隔操作ロボット機構である。
【0010】
また、本発明の他の実施態様は、前記作業アームの根元の旋回軸まわりの回転に対してあそびをもって連動するテーブルを備え、
前記アームスタンドの支持部が前記テーブル上に設置されるよう構成される、
上記記載の遠隔操作ロボット機構である。
【0011】
また、本発明の他の実施態様は、前記テーブル上に前記作業アームと前記アームスタンドを俯瞰的に捉える固定カメラを備え、前記固定カメラが前記テーブルと連動するように構成される,上記記載の遠隔操作ロボット機構である。
【0012】
本発明の遠隔操作ロボット機構は、基台部と、基台部との接続部に旋回軸を有し、能動関節からなる作業アームと、作業アームの先端に取り付けられた作業機構と、作業アームの近傍に設置され、関節部の摩擦により姿勢の保持が可能な受動関節からなるアームスタンドと、アームスタンドの先端に取り付けられた作業監視装置または作業補助装置あるいはこれらの組合せとを備える。本発明において、作業アームは受動関節からなるアームスタンドを所望の位置に移動させるための機構を備える。このような機構の例としては、作業アームの先端に設けられた把持機構や、フック機構などがあるが、これらに限定されない。あるいは、作業アームの長さや関節数の工夫により、アームスタンドを押し下げたり持ち上げたりすることで作業監視装置や作業補助装置を所望の位置に移動させることができる。基台部は車輪やクローラをもつ移動式のものでも、それらを持たない固定式のものでも良い。アームスタンドは作業アームの近傍に一つだけあっても、複数あっても良い。また、アームスタンドの運動自由度は任意だが、作業監視装置や作業補助装置の位置と姿勢と位置を任意に定められるよう、6自由度以上であることが好ましい。このように構成すると、遠隔作業者が作業アームを操作し、移動カメラを所望の位置に移動できるため、作業アームの手先が見やすい位置に、作業監視装置や作業補助装置の位置および姿勢を作業アームで自由に移動させることができる。作業アームは、アームスタンドを所望の位置に移動させるための機構を備えるもののほかに、他の作業を行うことが可能な機構を備えたアームも追加的に併設することができる。このように構成することにより、本発明の遠隔操作ロボット機構が作業を行う過程を、監視装置および/または作業監視装置を作業アームで操作しながら、他の作業アームでの作業を監視、撮像することが可能となる。アームスタンドはその関節の摩擦力により、作業アームによる移動操作を解除しても、これらの装置の位置と姿勢を保持することができる。
【0013】
本発明の遠隔操作ロボット機構における、作業監視装置の例としては、作業アームでの作業を撮像し記憶するための移動カメラ、3次元計測装置があるがこれらに限定されない。作業補助装置としては、カメラでの監視がしやすくなるようなLEDライトなどの照明、作業部分にマークするためのマークアップ機構や構造化照明(ストラクチャードライト)機構があるがこれらに限定されない。あるいは、作業補助機構としては、はんだ付けをするときのはんだや電線を押し付けるアームの代用とすることができるが、これらに限定されず、あらゆる作業の補助となる用途に使用可能である。
【0014】
また、本発明の遠隔操作ロボット機構は、アームスタンドの内部に、アームスタンドの自重により各関節に生じるモーメント荷重を弾性要素やカウンターウェイトなどの受動要素により補償する自重補償機構を備える。このように構成すると、アームスタンドの重量が大きい場合でも、関節部の小さな摩擦により関節の姿勢を保持できる。
【0015】
また、本発明の遠隔操作ロボット機構は、作業アームの根元の旋回軸にまわりの回転に対し、一定の角度のあそびがあるように構成され、このあそびをもって連動するテーブルの上に設置することができる。アームスタンドの支持部も、テーブル上に設置することができる。このように構成すると、テーブルのあそびの範囲内では、根元の旋回を含む作業アームの各関節を動かしても、移動カメラおよび固定カメラの位置と姿勢は変化しない。しかし、テーブルのあそびを超える範囲で作業アームを旋回させると、アームスタンドと作業アームがテーブルと一緒に旋回する。そのため、アームスタンドが作業アームの可動域を制限しないうえ、作業者は移動カメラの視点を作業アームの作業エリアに合わせて大きく変えることができる。
【0016】
また、本発明の遠隔操作ロボット機構は、テーブルの上に作業アームとアームスタンドの姿勢を俯瞰的に捉える固定カメラを備える。このように構成すると、作業アームの旋回角度にかかわらず、遠隔操縦者が常に作業アームを視界にとらえながら操作し、アームスタンドの把持と姿勢変更を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、先端にカメラを取り付けた軽量な受動アームスタンドを作業アームでマニピュレーションできるようにすることで、駆動部の少ない軽量な機構構成でありながら、複数の作業視点の移動を可能とする遠隔操作ロボット機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の1実施形態としての遠隔操作ロボット機構において、作業アームの先端の把持機構が、先端に移動カメラを持つアームスタンドを把持する様子を示す概念図である。
図2図1に示す遠隔操作ロボット機構において、作業アームにより移動カメラおよびアームスタンドを動かし、複数視点から手先の様子が良く見えるように2つの移動カメラを配置した様子を示す概念図である。
図3図1に示す遠隔操作ロボット機構において、テーブルのあそびの範囲内で作業アームを動かすことで、移動カメラと固定カメラを動かさずに、アーム作業をする様子を示す概念図である。
図4図3に示す遠隔操作ロボット機構において、テーブルのあそびを超える範囲で大きく作業アームを旋回させることで、作業エリアに合わせて、移動カメラおよび固定カメラの視点を大きく動かす様子を示す概念図である。
図5】引張コイルばねを用いた自重補償機構を備えるアームスタンドの実施例の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0020】
図1には、本発明に係る遠隔操作ロボット機構101の実施例を示す。遠隔操作ロボット機構101は、6つの走行車輪を有する移動式の基台部1と、基台部1との接続部に旋回軸を有し、能動関節からなる作業アーム2と、アーム先端に取り付けられた把持機構3と、作業アーム2の前記旋回軸まわりの回転運動に際してあそびをもって連動するテーブル4と、テーブル4上における作業アーム2の両脇に設置され、関節部の摩擦により姿勢の保持が可能な受動関節からなるアームスタンド5と、アームスタンド5の先端に取り付けられた移動カメラ6と、テーブル4上に固定され作業アーム2とアームスタンド5の姿勢を俯瞰的に捉える固定カメラ7とを備える。作業アーム2は、基台部1上を旋回する肩部と、ピッチ軸方向に直列2リンク系をなす上腕部と前腕部、直交3軸まわりの回転関節を持つ手首部からなる6自由度のアームである。アームスタンド5も同様の関節構成で6自由度を有する。このように構成すると、遠隔作業者が固定カメラ7からの映像を注視しながら作業アーム2を操作し、図1に示すように移動カメラ6には把持機構により把持可能な取手部分があり、取手部分を把持機構3で把持することで、移動カメラ6の位置および姿勢を、作業アーム2を動かして自由に移動させることができる。図1のように移動式の基台部を用いる場合、一般に基台に搭載するツールの重量が可搬重量により制限される。しかし、本発明における遠隔操作ロボット機構は、移動カメラ用のアームスタンドをすべて受動要素で構成した軽量な構造であるため、設計上重量制限が厳しくないうえ、図1に示すような複数カメラの搭載も可能である。
【0021】
アームスタンド5は、受動関節部に生じる摩擦でもって、任意の姿勢を保持するように構成される。そのため、図2に示すように、作業アーム2の手先の様子が見やすい位置に移動カメラの位置と姿勢を保持することができる。関節部の摩擦を増加させるには、パッキンや摩擦板が用いられる。図1の実施例では、関節部を防塵・防水構造とするために、関節の摺動部にパッキンを取り付けている(図示せず)。しかし、アームスタンド5を構成する各リンクの重量が大きい場合、関節部に生じる摩擦力のみではアームスタンド5の姿勢を保持できない問題が生じる。逆に、姿勢を保持するために摺動部の摩擦を増やすと、作業アーム2を用いてアームスタンド5を自由に動かせない問題が生じる。この場合、アームスタンド5には、自重により各関節に生じる荷重を弾性要素やカウンターウェイトなどの受動要素で補償する自重補償機構を導入する。このようにすると、アームスタンド5を軽い力で動かすことができ、姿勢の保持もできる。
【0022】
前記自重補償機構の実施例を図5に示す。アームスタンド200のアーム部分は、基台に対してヨー軸まわりに回転自由に支持される第1節201と、第1節201のピッチ軸まわりに回転自由に支持される第2節202と、第2節202のピッチ軸まわりに回転自由に支持される第3節203と、それぞれが直交する受動回転関節により直列に接続される第4節204、第5節205、第6節206とで構成される。第4節204、第5節205、第6節206は軽量であり、回転関節の摩擦により、相対的な姿勢を保持できるように構成される。第3節203にはプーリ207が、第2節202と第3節203を接続する回転軸に同軸に配置され、第1節201と第2節202間の回転軸と同軸に、プーリ208が回転自由で接続される。プーリ208には、補償力調整節209が固定されており、ベルト210を介して、第3節303と常に平行な姿勢を保つように構成される。補償力調節節215は第2節202の端部に第2節と平行に固定される。補償力調整節209、215の端部にはワイヤ213の端部が回転自由に支持され、第1節上の穴212、第1節に回転自由に支持されたプーリ212を介して引張コイルばね214に接続される。引張コイルばね214のもう片方の端部は第1節201に固定される。このように構成すると、ワイヤ212、穴211、プーリ212、引張コイルばね214からなる機構は仮想的に自然長が零のばねであるとみなすことができるため、第2節203を含むアーム上腕部および第3節203を含む前腕部の質量と重心位置に基づき、補償力調整節209、215の長さおよび引張コイルバネばね214のばね定数を調整すれば、前腕部と上腕部の姿勢によらず、アーム姿勢を理論上完全にバランスさせることができる。実際には重心位置に誤差が含まれているが、各関節部が少しの摩擦を有していれば、この誤差を吸収してバランスをとることが可能である。
【0023】
図3図4には、図1の作業アーム2を基台部上の旋回軸まわりに回転させた様子を示す。図3に示すように、テーブル4のあそび8の範囲内で根元の旋回軸を含む作業アーム2の各関節を動かしても、移動カメラおよび固定カメラの位置と姿勢は変化しない。このことにより、作業者はアームの操作中にアームとその手先を注視することができるうえ、カメラ酔いしにくい。一方、図4に示すように、テーブル4のあそび8を超える範囲で作業アーム2を旋回させると、テーブル4と作業アーム2が一緒に旋回する。そのため、アームスタンド5が作業アーム2の可動域を制限しないうえ、作業者は移動カメラ6および固定カメラ7の視点を作業アーム2の作業エリアに合わせて大きく変えることができる。これにより、作業内容に応じた、操作性の高い遠隔操作を実現可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 基台部
2 作業アーム
3 把持機構
4 テーブル
5、200 アームスタンド
6 移動カメラ
7 固定カメラ
8 あそび
101 遠隔操作ロボット機構
201 第1節
202 第2節
203 第3節
204 第4節
205 第5節
206 第6節
207、207、212 プーリ
209、215 補償力調整節
210 ベルト
211 穴
213 ワイヤ
214引張コイルばね

図1
図2
図3
図4
図5