IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ゼロックス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-画像形成装置 図1
  • 特開-画像形成装置 図2
  • 特開-画像形成装置 図3
  • 特開-画像形成装置 図4
  • 特開-画像形成装置 図5
  • 特開-画像形成装置 図6
  • 特開-画像形成装置 図7
  • 特開-画像形成装置 図8
  • 特開-画像形成装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137427
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048950
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】富永 宜幸
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200FA04
2H200GA12
2H200GA23
2H200GB22
2H200JA02
2H200JB01
2H200JB22
2H200JC04
2H200JC12
2H200LA06
2H200LA24
2H200LA29
2H200PA13
2H200PA22
2H200PB12
2H200PB25
(57)【要約】
【課題】転写部を対象物に接触して画像を転写する印刷方式において、媒体を回転させながら画像を転写する際に、媒体の画像が転写された部分と転写部とが再度接触することによる画像の品質の低下を抑制する。
【解決手段】媒体500に接触してこの媒体500に画像を転写する中間転写ベルト131と、円周面を有する媒体500が、円周面が中間転写ベルト131の転写方向に沿って回転するように保持する取付台と、取付台に保持された媒体500を搬送経路に沿って搬送すると共に、中間転写ベルト131が媒体500に画像を転写する際に媒体500の搬送を停止し、媒体500における画像の転写が完了した面が中間転写ベルト131に再度接触する前に中間転写ベルト131から媒体500を離隔させる搬送機構と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に接触して当該対象物に画像を転写する転写部と、
円周面を有する前記対象物が、当該円周面が前記転写部の転写方向に沿って回転するように保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記対象物を搬送経路に沿って搬送すると共に、前記転写部が当該対象物に画像を転写する際に当該対象物の搬送を停止し、当該対象物における画像の転写が完了した面が当該転写部に再度接触する前に当該転写部から当該対象物を離隔させる搬送部と、
を備えることを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記転写部は、
複数のローラに掛けて張られ、帯電した粒子で形成された画像を保持すると共に、転写位置において前記対象物の搬送方向と一致する方向へ動くように回転し、当該転写位置において画像を当該対象物に転写するベルトと、
前記複数のローラの一つであって、前記ベルトが前記対象物側へ張り出すように配置された転写用ローラと、を備え、
前記転写位置は、前記転写用ローラにより前記ベルトが前記対象物側へ最も張り出した位置、または、当該位置よりも当該ベルトの動作方向の下流側に位置することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ベルトと前記対象物との接触位置に応じて、前記保持部に保持された前記対象物の高さを調整する高さ調整部をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送部による搬送経路は、前記転写部による前記対象物への画像の転写後、当該対象物を当該転写部の接触位置から離隔させる方向へ向かう経路であることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記保持部に保持された前記対象物の高さを変更可能とし、前記転写部による前記対象物への画像の転写後、当該対象物の高さを下げて当該転写部から離隔させる昇降部をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記転写部は、
複数のローラに掛けて張られ、帯電した粒子で形成された画像を保持すると共に、転写位置において前記対象物の搬送方向と一致する方向へ動くように回転し、当該転写位置において画像を当該対象物に転写するベルトと、
前記複数のローラの一つであって、前記ベルトが前記対象物側へ張り出すように配置された転写用ローラと、を備え、
前記昇降部は、前記ベルトが前記対象物側へ最も張り出した位置よりも下流側に前記転写位置がある場合に、当該対象物の高さを前記搬送部が当該ベルトの最も張り出した位置よりも下げ、当該位置を通過した後に、当該対象物の高さを上げて当該対象物を当該ベルトに接触させることを特徴とする、請求項5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、金属、ガラス、タイル等の様々な厚みや形状を有する媒体を対象物として画像を印刷することがある。
【0003】
特許文献1には、搬送テーブルにディスクを載せ、搬送テーブルごとディスクを搬送しながら、ディスクに対して画像を形成する印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3292954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
転写部を対象物に接触して画像を転写する印刷方式において、円筒や球体等を回転させながら円周面に画像を転写する場合、既に画像が転写された部分が、媒体が回転することによって再度転写部に接触すると、既に転写されている画像が乱れる原因となる。
【0006】
本発明は、転写部を対象物に接触して画像を転写する印刷方式において、媒体を回転させながら画像を転写する際に、媒体の画像が転写された部分と転写部とが再度接触することによる画像の品質の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る本発明は、
対象物に接触して当該対象物に画像を転写する転写部と、
円周面を有する前記対象物が、当該円周面が前記転写部の転写方向に沿って回転するように保持する保持部と、
前記保持部に保持された前記対象物を搬送経路に沿って搬送すると共に、前記転写部が当該対象物に画像を転写する際に当該対象物の搬送を停止し、当該対象物における画像の転写が完了した面が当該転写部に再度接触する前に当該転写部から当該対象物を離隔させる搬送部と、
を備えることを特徴とする、画像形成装置である。
請求項2に係る本発明は、
前記転写部は、
複数のローラに掛けて張られ、帯電した粒子で形成された画像を保持すると共に、転写位置において前記対象物の搬送方向と一致する方向へ動くように回転し、当該転写位置において画像を当該対象物に転写するベルトと、
前記複数のローラの一つであって、前記ベルトが前記対象物側へ張り出すように配置された転写用ローラと、を備え、
前記転写位置は、前記転写用ローラにより前記ベルトが前記対象物側へ最も張り出した位置、または、当該位置よりも当該ベルトの動作方向の下流側に位置することを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置である。
請求項3に係る本発明は、
前記ベルトと前記対象物との接触位置に応じて、前記保持部に保持された前記対象物の高さを調整する高さ調整部をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置である。
請求項4に係る本発明は、
前記搬送部による搬送経路は、前記転写部による前記対象物への画像の転写後、当該対象物を当該転写部の接触位置から離隔させる方向へ向かう経路であることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置である。
請求項5に係る本発明は、
前記保持部に保持された前記対象物の高さを変更可能とし、前記転写部による前記対象物への画像の転写後、当該対象物の高さを下げて当該転写部から離隔させる昇降部をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置である。
請求項6に係る本発明は、
前記転写部は、
複数のローラに掛けて張られ、帯電した粒子で形成された画像を保持すると共に、転写位置において前記対象物の搬送方向と一致する方向へ動くように回転し、当該転写位置において画像を当該対象物に転写するベルトと、
前記複数のローラの一つであって、前記ベルトが前記対象物側へ張り出すように配置された転写用ローラと、を備え、
前記昇降部は、前記ベルトが前記対象物側へ最も張り出した位置よりも下流側に前記転写位置がある場合に、当該対象物の高さを前記搬送部が当該ベルトの最も張り出した位置よりも下げ、当該位置を通過した後に、当該対象物の高さを上げて当該対象物を当該ベルトに接触させることを特徴とする、請求項5に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、媒体の画像が転写された部分と転写部とが再度接触することを抑制することができる。
請求項2の発明によれば、ベルトが最も張り出した位置よりも上流側を転写位置とする構成と比較して、転写後にそのまま搬送することにより、対象物を転写部から離隔させることができる。
請求項3の発明によれば、対象物の高さを変えずに搬送する構成と比較して、対象物とベルトに作用する無用な圧力を抑制することができる。
請求項4の発明によれば、搬送手段が対象物を転写部から離隔させる機構を有する構成と比較して、簡易な構造で転写部からの対象物の離隔を実現することができる。
請求項5の発明によれば、搬送経路により対象物を転写部から離隔させる構成と比較して、画像形成装置の大型化を抑制することができる。
請求項6の発明によれば、対象物の高さを変えずに搬送する構成と比較して、対象物とベルトに作用する無用な圧力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態が適用される画像形成装置の構成を示す図である。
図2】転写部の構成を示す図である。
図3】転写部による画像形成が開始される前の搬送機構の動作を示す図であり、図3(A)は高さ制御を行う様子を示す図、図3(B)は高さ制御の後に準備位置へ退避した様子を示す図、図3(C)は転写部による画像の転写が開始される状態を示す図である。
図4】円周面を有する媒体に対する画像の転写方法を示す図である。図4(A)は転写開始時の状態を示す図、図4(B)は転写中の状態を示す図、図4(C)は転写終了時の状態を示す図である。
図5】媒体を回転可能に保持する治具の構成例を示す図であり、図5(A)は媒体の回転軸に平行な向きで治具および媒体を見た図、図5(B)は媒体の回転軸に垂直な向きで治具および媒体を見た図である。
図6】転写位置の例を示す図であり、図6(A)は中間転写ベルトの最下端よりも上流側に転写位置を設定した状態を示す図、図6(B)は中間転写ベルトの最下端に転写位置を設定した状態を示す図、図6(C)は中間転写ベルトの最下端よりも下流側に転写位置を設定した状態を示す図である。
図7】媒体の高さの調整方法の例を示す図であり、図7(A)は媒体が中間転写ベルトの最下端の上流側に接触した状態を示す図、図7(B)は媒体が中間転写ベルトの最下端に接触した状態を示す図、図7(C)は媒体が中間転写ベルトの最下端の下流側に接触した状態を示す図である。
図8】搬送方向により中間転写ベルトと媒体との再接触を防ぐ例を示す図である。
図9】昇降部により中間転写ベルトと媒体との再接触を抑制する例を示す図であり、図9(A)は中間転写ベルトと媒体とが接触している様子を示す図、図9(B)は中間転写ベルトと媒体とを離隔させた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態の画像形成装置は、デジタル印刷による画像形成装置である。デジタル印刷の印刷方式としては、電子写真方式やインクジェット方式等が存在するが、本実施形態では、電子写真方式を想定する。電子写真方式では、媒体に画像が転写される際に転写部と媒体とが接触する。また、本実施形態では、印刷の対象物として、金属、ガラス、タイル等の様々な厚みや形状を有する媒体を想定する。
【0011】
<装置構成>
図1は、本実施形態が適用される画像形成装置の構成を示す図である。画像形成装置10は、転写部100と、定着部200と、媒体着脱部300と、搬送機構400とを備える。また、特に図示しないが、画像形成装置10は、演算手段である1または複数のプロセッサ、データ処理における作業領域としてのメモリ、プログラムやデータを保持する記憶装置などを有する制御部を備える。制御部は、画像形成装置10全体の動作を制御する単一のものであっても良いし、転写部100、定着部200、搬送機構400等の各々に個別に設けても良い。
【0012】
転写部100は、トナー等の粒子で形成された画像を転写対象物である媒体500に転写するユニットである。定着部200は、媒体500を加熱することにより転写部100により転写された画像を媒体500の表面に定着させるユニットである。媒体着脱部300は、画像形成装置10のユーザが、搬送機構400に設けられる取付台(後述)に対して媒体500の取り付けを行うユニットである。搬送機構400は、転写部100、定着部200および媒体着脱部300の全体にわたって設けられ、図1に矢印にて示すように、印刷対象の媒体500を各部100、200、300へ搬送する。
【0013】
媒体着脱部300は、一部に媒体500を出し入れ可能な開口を有する筐体である。媒体着脱部300の内部には、搬送機構400を構成する搬送レール410の一端側の部位があり、搬送開始位置および搬送終了位置が設定されている。図1に示す画像形成装置10は、搬送開始位置と搬送終了位置とが同じ場所に設定される。搬送開始位置および搬送終了位置として設定される搬送レール410の場所には、初期状態において搬送機構400を構成する取付台420が配置される。ユーザが媒体500を媒体着脱部300の筐体の開口から入れて取付台420に載せることで、搬送機構400による媒体500の搬送が可能な状態となる。媒体500を取付台420に載せる際、媒体500を保持する治具等により、媒体500を取付台420に固定しても良い。媒体500に対して転写部100により画像が転写され、定着部200により定着処理が行われた後、媒体500を載せた取付台420は、搬送レール410を移動して搬送終了位置へ到達する。この状態で、ユーザは、媒体500を保持した治具(後述)を取付台420から取り外し、媒体着脱部300の筐体の開口から取り出す。
【0014】
<転写部100の構成>
図2は、転写部100の構成を示す図である。転写部100は、帯電した粒子で画像を形成し、電界を発生させて媒体500に画像を転写する。転写部100は、現像装置110と、一次転写ロール120と、中間転写ベルト131と、を備える。中間転写ベルト131は、ローラ132、133およびバックアップロール140により、現像装置110と媒体500への転写が行われる位置との間に張られる。また、転写部100は、中間転写ベルト131に付着した粒子を取り除くためのクリーニング装置150を備える。
【0015】
現像装置110は、感光体に転写対象の画像の静電潜像を形成し、この感光体の静電潜像に対して帯電した粒子を付着させて画像を現像するユニットである。現像装置110としては、電子写真方式による画像形成装置で用いられる既存の装置を用い得る。図2には、イエロー、マゼンタ、シアンの3色に、ブラックを加えた4色によるカラー画像形成処理を行う場合の構成例が示されている。現像装置110は、これらの色ごとにそれぞれ設けられており、図2では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の現像装置110に、該当する色を示すY、M、C、Kの添え字を付して記載している。以下の説明において、現像装置110に関して各色を区別する場合、符号にY、M、C、Kの添え字を付して記載するが、各色を区別する必要がない場合は添え字を付さずに記載する。
【0016】
一次転写ロール120は、現像装置110において形成された画像を中間転写ベルト131に転写(一次転写)するのに用いられるユニットである。一次転写ロール120は、現像装置110の感光体と対向するように配置され、現像装置110と一次転写ロール120との間に中間転写ベルト131が位置するように構成される。一次転写ロール120は、現像装置110Y、110M、110C、110Kの各々に対応して設けられる。図2では、各色の現像装置110Y、110M、110C、110Kに対応する各一次転写ロール120に、該当する色を示すY、M、C、Kの添え字を付して記載している。以下の説明において、一次転写ロール120に関して各色を区別する場合、符号にY、M、C、Kの添え字を付して記載するが、各色を区別する必要がない場合は添え字を付さずに記載する。
【0017】
中間転写ベルト131、ローラ132、133およびバックアップロール140は、現像装置110において形成された画像を媒体500に転写するのに用いられるユニットである。図2に示すように、中間転写ベルト131は、ローラ132、133およびバックアップロール140に掛けて張られた状態で、図2の矢印方向(図示の例では、反時計回り)に回転する。この回転方向は、後述する「転写位置」において、搬送機構400による媒体500の搬送方向と一致する方向である。中間転写ベルト131の回転は、例えば、ローラ132、133の一方または両方を回転駆動するローラとし、このローラの回転で中間転写ベルト131を牽引することにより行われる。
【0018】
中間転写ベルト131は、図2の構成例において外側の面が画像を保持する面(以下、「転写面」と呼ぶ)となっている。中間転写ベルト131が現像装置110と一次転写ロール120との間を通過する際に、現像装置110の感光体から中間転写ベルト131の転写面へ画像が転写される。図2に示す構成例では、現像装置110Y、110M、110C、110Kおよび一次転写ロール120Y、120M、120C、120Kにより、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像が転写面に重ねられることにより多色画像が形成される。
【0019】
バックアップロール140は、中間転写ベルト131の転写面を媒体500に接触させて、画像を媒体に転写(二次転写)させる。バックアップロール140は、転写用ローラの一例である。画像を転写する際、バックアップロール140には、予め定められた電圧が印加される。これにより、バックアップロール140および媒体500を含む範囲に電界(以下、「転写電界」と呼ぶ)が発生し、帯電された粒子により形成された画像が、中間転写ベルト131から媒体500へ転写される。このように、中間転写ベルト131から媒体500へ画像を転写するには、バックアップロール140から中間転写ベルト131を経て媒体500へ電流が流れる必要がある。ここで、媒体500が金属等の導体である場合は、媒体500自体に電流が流れるため、転写電界を発生させることで媒体500の表面に画像が転写される。一方、媒体500が導体でない場合、媒体に電流が流れないため、そのままでは画像を転写することができない。このため、導体でない物質を媒体500とする場合、事前に、媒体500の表面における少なくとも画像を形成しようとする領域に、導電材による層(以下、「導電層」と呼ぶ)を形成する等の手段により、媒体500に電流が流れるようにすることが行われる。
【0020】
中間転写ベルト131による画像の転写の手順について説明する。中間転写ベルト131が回転すると、現像装置110Y、110M、110C、110Kおよび一次転写ロール120Y、120M、120C、120Kにより、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像が順に中間転写ベルト131の転写面(図2において、外側の面)に重ねられ、多色画像が形成される。中間転写ベルト131がさらに回転すると、中間転写ベルト131の転写面に形成された画像が、中間転写ベルト131が媒体500と接触する位置(以下、「転写位置」と呼ぶ)に到達する。そこで上記のように、バックアップロール140に電圧が印加されて転写電界が発生し、画像が中間転写ベルト131から媒体500へ転写される。
【0021】
クリーニング装置150は、中間転写ベルト131の転写面に付着した粒子を除去するユニットである。クリーニング装置150は、中間転写ベルト131の回転方向において転写位置の下流側であって、現像装置110Yおよび一次転写ロール120Yの上流側に設けられている。これにより、中間転写ベルト131から媒体500へ画像が転写された後、中間転写ベルト131の転写面に残存する粒子がクリーニング装置150により除去される。そして、次の動作サイクルで、粒子が除去された転写面に対して新たに画像が転写(一次転写)される。
【0022】
<搬送機構400の構成および媒体500の取り付け構造>
ここで、媒体500の取り付け構造について説明する。本実施形態では、様々な厚みや形状を有する媒体500を想定している。ベルトやローラで構成された搬送路に媒体500を直接載せ置いて搬送する場合、媒体500の厚みや形状が異なると、転写部100の転写位置において搬送路に対する媒体500の高さが異なるため、中間転写ベルト131を媒体500に対して適切に接触させることが困難である。具体的には、媒体500の高さが低ければ、媒体500が中間転写ベルト131に接触せず、媒体500の高さが高ければ、媒体500が中間転写ベルト131に接触する際に強い衝撃を発生させてしまうといったことが起こり得る。そこで、本実施形態の搬送機構400は、高さ制御手段を備えた取付台420に媒体500を載せて、この取付台420ごと媒体500を搬送する。
【0023】
図2を参照すると、搬送機構400は、媒体500の搬送経路を特定する搬送レール410と、搬送レール410上を移動する取付台420とを備える。取付台420は、搬送レール410に取り付けられた脚部421と、媒体500を載せるための台座部422とを備える。また、台座部422には、台座部422上で媒体500を保持する治具423が取り付けられる。搬送機構400は、搬送部の一例である。取付台420は、保持部の一例である。
【0024】
搬送レール410は、図1に示す構成例では、媒体着脱部300から定着部200を経て転写部100まで架設されている。搬送レール410の媒体着脱部300側の端部は搬送開始位置および搬送終了位置である。取付台420は、媒体着脱部300の搬送開始位置から図1の左方向へ搬送され、転写部100において媒体500に画像が転写される。画像転写後、取付台420は、図1の右方向へ搬送され、定着部200において媒体500に対する画像の定着が行われた後、媒体着脱部300の搬送終了位置へ到達する。
【0025】
脚部421は、搬送レール410に取り付けられ、搬送レール410上を移動する。脚部421が搬送レール410を移動するための機構については特に限定しない。例えば、脚部421に駆動装置を設けて自走する構成としても良いし、搬送レール410に脚部421を牽引する手段を設けても良い。
【0026】
また、脚部421は、台座部422の高さを制御する高さ制御手段としての昇降部421aを有する。昇降部421aは、媒体500に対して中間転写ベルト131による画像の転写が行われる際に媒体500を中間転写ベルト131に接触させ、転写終了後に媒体500を中間転写ベルト131から離隔させるように、台座部422の高さを制御する。
【0027】
昇降部421aの構成は特に限定しない。例えば、ラック・アンド・ピニオンと駆動モータにより台座部422を上下させる構成であっても良い。また、台座部422の高さに連動するギアを手動で動作させて台座部422の高さを制御する構成としても良い。さらに、高さ制御を行うための操作方法も種々の方法を用い得る。例えば、駆動モータの制御部に対する入力インターフェイスを用意し、画像形成装置10の操作者が入力インターフェイスを用いて手入力で高さのデータを入力して設定しても良い。また、センサを用いて取付台420に取り付けられた媒体500の高さを自動検知し、媒体500が適当な高さとなるように駆動モータを制御する構成としても良い。
【0028】
台座部422は、脚部421に取り付けられており、治具423を介して媒体500を載せ置く台である。台座部422には、治具423を位置決めする留め具(図示せず)が設けられている。この留め具に適合する治具423であれば、治具423自体の形状に関わらず、台座部422に位置決めして取り付けることができる。
【0029】
また、台座部422は、上方からの圧力に応じて、脚部421に対して浮き沈みするように取り付けられている。台座部422が浮き沈みする構成は、例えば、台座部422と脚部421との接合部分に弾性体を介在させることにより実現される。このような構成とすることにより、台座部422に取り付けられた治具423により保持される媒体500が転写部100の中間転写ベルト131に接触する際の衝撃が緩和される。
【0030】
治具423は、媒体500を保持し、台座部422に取り付けられる器具である。治具423は、台座部422に取り付けられる部位において、台座部422の留め具に適合する形状や構造を有している。また、治具423は、媒体500を保持するための形状を有している。したがって、媒体500の形状やサイズに応じた治具423を用意することにより、様々な形状やサイズの媒体500を取付台420に載せることができる。本実施形態では、画像を形成する対象である媒体500として、円周面を有する媒体500を想定し、転写部100により媒体500の円周面に対して円周方向に沿って画像を転写する。このため、治具423として、媒体500の円周面を円周方向に沿って転写部100の中間転写ベルト131に接触させる機能を有するものが用いられる。このような治具423の詳細については後述する。
【0031】
<定着部200の構成>
転写部100において媒体500に画像が転写されると、次に、定着部200において画像の定着が行われる。本実施形態では、様々な厚さや形状の媒体500に対して画像を形成するため、例えば、非接触型の装置による定着処理が行われる。定着部200は、媒体500に転写された画像を形成する粒子を加熱して溶融し、媒体500の表面に定着させる。
【0032】
定着部200は、加熱定着のための熱源を備える。熱源としては、例えば、ハロゲンランプ、セラミックヒータ、赤外線ランプ等の既存の種々の熱源を用い得る。また、熱源に代えて、赤外線レーザを照射して、画像を形成する粒子を加熱する装置を用いても良い。定着部200は、熱源を覆うことが可能な覆い部材を設け、定着処理を行う際に熱源を露出させる構成としても良い。覆い部材は、例えば、シャッターや開閉扉により実現される。また、断熱材を用いたカーテンやエアーカーテンにより内部の空気が漏れることを防ぐ構成としても良い。
【0033】
<画像形成の事前動作>
本実施形態の画像形成装置10は、上記のように構成された搬送機構400を有するため、様々な形状やサイズの媒体500を対象として印刷を行うことができる。ただし、媒体500に画像を転写する際に媒体500と転写部100の中間転写ベルト131とが接触により強い衝撃が生じたり、接触しなかったりする不具合を防止するため、画像の転写動作が開始される前に台座部422の高さ制御が行われる。
【0034】
図3は、転写部100による画像形成が開始される前の搬送機構400の動作を示す図である。図3(A)は高さ制御を行う様子を示す図、図3(B)は高さ制御の後に準備位置へ退避した様子を示す図、図3(C)は転写部100による画像の転写が開始される状態を示す図である。
【0035】
媒体500に対して画像形成を行う場合、まず、媒体着脱部300の搬送開始位置において、治具423に保持された媒体500が取付台420にセットされる。そして、取付台420の昇降部421aにより媒体500が転写部100の中間転写ベルト131に接触しない高さまで下げられた後、媒体500を載せた取付台420が、転写部100の転写位置の下まで移動する。
【0036】
次に、転写位置において媒体500が画像を転写するのに適当な強さで中間転写ベルト131に接触するように、取付台420の高さ制御が行われる(図3(A)の矢印a)。高さ制御が行われると、得られた適当な高さ(以下、「転写実行高さ」と呼ぶ)の情報が制御部のメモリ等に保持される。そして、取付台420が、媒体500が中間転写ベルト131に接触しない高さまで下げられ、転写動作の準備位置へ移動する(図3(A)の矢印b)。
【0037】
取付台420が準備位置へ移動すると、高さ制御で得られた情報に基づき、取付台420の高さが転写実行高さに調整される。この後、取付台420が転写位置へ移動し(図3(B)の矢印c)、媒体500が転写位置において中間転写ベルト131に接触すると、画像の転写が開始される(図3(C))。
【0038】
<円周面を有する媒体500に対する画像の転写>
図4は、円周面を有する媒体500に対する画像の転写方法を示す図である。図4(A)は転写開始時の状態を示す図、図4(B)は転写中の状態を示す図、図4(C)は転写終了時の状態を示す図である。図4に示す例では、円柱形状の媒体500の側面に、円周方向の半周にわたって画像Tを転写する様子を示している。
【0039】
媒体500の円周面である側面に、円周方向に沿って画像Tを形成するには、転写部100の転写位置に媒体500を停止させた状態で、媒体500の側面における転写部100の中間転写ベルト131に接触する部位を、中間転写ベルト131の進行に合わせて移動させる必要がある。このため、治具423は、媒体500の円周面の中心軸が、転写位置における中間転写ベルト131の進行方向(以下、「転写方向」と呼ぶ)に対して直交するように媒体500を保持し、媒体500を中心軸回りに回転させる。媒体500の回転の向きは、中間転写ベルト131と媒体500の円周面とが接触する位置において、円周面の進行が中間転写ベルト131の転写方向と一致する向きである。図4(A)~(C)に示す例では、媒体500は、円周面の中心軸が紙面に垂直となる向きで示されている。そして、中間転写ベルト131は図の左方から右方へ向かって進行し、媒体500は図において右回り(時計回り)に回転する(図中の矢印参照)。
【0040】
転写部100が媒体500に画像Tを転写する場合、まず、中間転写ベルト131の進行に伴って、各色の現像装置110により中間転写ベルト131に画像Tが形成される。そして、さらに中間転写ベルト131が進行し、中間転写ベルト131に形成された画像Tが転写位置に到達すると、図4(A)に示すように、画像Tが中間転写ベルト131から媒体500に転写される。さらに中間転写ベルト131が進行すると、これに伴って媒体500が回転し、媒体500の接触部位が円周方向に沿って移動しながら画像Tの転写が実行される。このため、図4(B)、(C)に示すように、媒体500の円周面に円周方向に沿って中間転写ベルト131上の画像Tが転写されていく。
【0041】
<治具423の構成>
次に、円周面を有する媒体500のための治具423について説明する。本実施形態では、図4を参照して説明したように媒体500を回転させ、転写部100の中間転写ベルト131に対し、媒体500の円周面を円周方向に沿って連続的に接触させる治具423が用いられる。以下、このような治具423の構成について、具体例を挙げて説明する。
【0042】
図5は、媒体500を回転可能に保持する治具423の構成例を示す図であり、図5(A)は媒体500の回転軸に平行な向きで治具423および媒体500を見た図、図5(B)は媒体500の回転軸に垂直な向きで治具423および媒体500を見た図である。図5(A)、(B)に示す治具423は、媒体500の円周面の中心軸を回転軸として回転可能に支持する。治具423は、媒体500を回転可能に押さえる押さえ具423dを有する。治具423には、媒体500を回転させるための駆動装置423eが内蔵されている。治具423は、台座部422の留め具に適合する構造を有し、台座部422に固定される。
【0043】
図5(A)、(B)に示す治具423は、媒体500の円周面の中心軸が通る位置を、押さえ具423dにより軸の両端側から挟んで押さえる。駆動装置423eは、押さえ具423dを回転させるための駆動手段である。この押さえ具423dは、媒体500を押さえた状態で、駆動装置423eから動力を得、媒体500を円周面の中心軸の回りに回転させる。駆動装置423eとしては、既存の種々の機構を用いることができ、具体的な構造は限定しない。例えば、モータにより押さえ具423dを直接、回転駆動する構成等としても良い。駆動装置423eは、媒体500の回転速度が、転写部100の中間転写ベルト131との接触位置における中間転写ベルト131の進行速度と等しくなるように、押さえ具423dを回転させる。
【0044】
なお、ここでは治具423に駆動装置423eを設け、押さえ具423dを駆動輪として用い、転写部100の中間転写ベルト131の動作に合わせて治具423が媒体500を動的に回転させる構成を説明した。これに対し、治具423は媒体500を単に回転自在に支持し、押さえ具423dを従動輪として用いて、中間転写ベルト131の動作に応じて媒体500が回転する構成としても良い。例えば、媒体500が中間転写ベルト131に対して摩擦係数の大きい材質であれば、媒体500は、接触位置において中間転写ベルト131に引かれ、押さえ具423dによる駆動を必要とせずに回転する。
【0045】
図5(A)、(B)に示した治具423は、媒体500の円周面の中心軸を押さえて回転させるため、球形や円錐台形状など、円周面を有する様々な形状の媒体500を、円周面の中心軸を押さえることで保持し得る。また、図5(A)、(B)に示した治具423は、円周面の一部に凹凸がある媒体500に対しても、円周面の部分に対して画像を転写するように媒体500を保持し得る。
【0046】
<転写位置における媒体500の移動制御>
転写部100において媒体500の円周面に画像を転写する場合、上記のように、転写部100の中間転写ベルト131の進行に合わせて媒体500を回転させる一方、媒体500自体は、画像が転写される間、転写位置で停止していなければならない。画像の転写時に媒体500の移動を停止させる手法としては、例えば、媒体500が転写位置まで移動したところで搬送機構400が媒体500を載せた取付台420の搬送を止めることが考えられる。また、他の手法として、治具423を取付台420の台座部422に対して取付台420の搬送方向と反対の方向に移動させることにより、転写部100の転写位置に対する媒体500の位置を停止させることが考えられる。
【0047】
図2を参照して説明した構成では、治具423は、台座部422に設けられた留め具を用いて取付台420に固定された。これに対し、治具423を台座部422に対して移動させる場合、台座部422に移動路が設けられ、治具423は、この移動路に従って移動する移動手段を有する。台座部422の移動路および治具423の移動手段の具体的な構成は、治具423が決められた移動路に沿って移動できるものであれば良く、特に限定しない。一例としては、台座部422に移動路としての溝やレールを設け、治具423が、移動手段として、この溝やレール上を走行するための車輪を有する構成等が考えられる。さらに具体的には、移動路のレールとしてラックを用い、治具423の車輪としてピニオン・ギアを用いたラック・アンド・ピニオンにより、治具423のピニオン・ギアの回転を制御して治具423を移動させても良い。治具423の移動は、治具423にモータ等の駆動手段を備え、治具423が台座部422の移動路上を自走する構成として実現しても良い。また、台座部422の移動路に、治具423を牽引する手段を設けても良い。
【0048】
移動路は、取付台420の搬送方向と平行に設けられる。治具423は、移動路に沿う方向にのみ移動可能であり、移動路の幅方向への動きが制限される。また、治具423を台座部422に対して移動させる場合、移動路は、媒体500への画像の転写が行われる間、治具423が移動する長さが必要である。このため、図2を参照して説明した構成のように治具423を台座部422に固定する構成と比較して、治具423に対する台座部422の大きさが大きくなる。
【0049】
<転写位置>
次に、転写位置について説明する。図5を参照して説明したように構成された治具423を用いることにより、媒体500の円周面に対し、媒体500を1回転(360度)以上回転させながら画像を形成することができる。しかしながら、転写部100において画像が形成された段階では、定着部200による画像を定着させる工程が行われていないため、媒体500に形成された画像は定着していない。このため、媒体500が回転することによって、既に画像が形成されている個所がさらに中間転写ベルト131に接触すると、媒体500に形成されている画像が乱れる原因となる。
【0050】
本実施形態では、転写位置の設定により、媒体500に画像を形成した後、画像が形成された個所が中間転写ベルト131に再度接触することなく媒体500を中間転写ベルト131から離隔させる。なお、媒体500を一周(360度)以上回転させ、画像が既に形成されている個所にさらに画像を形成(上書き)する場合があるが、この場合、転写位置において画像を転写している間は媒体500に対して転写電界がかけられているため、画像の乱れは生じない。本実施形態は、媒体500の円周面に対し、一周以上にわたって画像を転写する場合であっても適用され、転写位置における画像の形成が終了した後に、媒体500が中間転写ベルト131に再度接触することが抑制される。
【0051】
図6は、転写位置の例を示す図であり、図6(A)は中間転写ベルト131の最下端よりも上流側に転写位置を設定した状態を示す図、図6(B)は中間転写ベルト131の最下端に転写位置を設定した状態を示す図、図6(C)は中間転写ベルト131の最下端よりも下流側に転写位置を設定した状態を示す図である。図6(A)~(C)の各々において、媒体500は図の左方から搬送され、画像が転写された後、図の右方へ搬送されるものとする。また、図6(A)~(C)に示す例では、媒体500の円周面の全体に画像Tが形成されている。なお、図6(A)~(C)では、媒体500と転写位置との位置関係をわかりやすくするため、治具423の一部を省略している。
【0052】
ここで、中間転写ベルト131の「最下端」とは、図2を参照して説明した転写部100の構成において、中間転写ベルト131がローラ132、133およびバックアップロール140に掛けて張られた状態で、最も下に張り出した部位である。図2に示した転写部100では、中間転写ベルト131を張る複数のローラのうちバックアップロール140が最も下に位置しているので、バックアップロール140に掛かる部分に最下端が存在する。中間転写ベルト131はこれらのローラに掛けられた状態で回転するので、中間転写ベルト131における最下端の部位は、各時点において最下端に位置している部位であり、中間転写ベルト131の回転に伴って回転方向の後方へ移動する。また、最下端に対する「上流側」、「下流側」とは、中間転写ベルト131の回転方向における上流側および下流側である。
【0053】
図6(A)に示すように、中間転写ベルト131の最下端よりも上流側に転写位置を設定した場合、画像転写後の搬送方向に中間転写ベルト131の最下端が存在する。したがって、媒体500は、画像Tが形成された後、中間転写ベルト131の最下端を乗り越えて搬送される。このため、媒体500が中間転写ベルト131の最下端を乗り越える際に、媒体500における画像Tが形成されている個所が中間転写ベルト131に接触する可能性がある。
【0054】
図6(B)に示すように、中間転写ベルト131の最下端に転写位置を設定した場合、画像Tの形成が終了した後に媒体500の搬送を再開すると、媒体500は直ちに中間転写ベルト131から離隔される。したがって、画像Tが形成されている個所が中間転写ベルト131に再度接触する可能性はない。
【0055】
図6(C)に示すように、中間転写ベルト131の最下端よりも下流側に転写位置を設定した場合においても、画像Tの形成が終了した後に媒体500の搬送を再開すると、媒体500は直ちに中間転写ベルト131から離隔される。したがって、画像Tが形成されている個所が中間転写ベルト131に再度接触する可能性はない。
【0056】
以上のように、転写位置における画像Tの形成が終了した後に、媒体500が中間転写ベルト131に再度接触することを抑制するには、転写位置を中間転写ベルト131の最下端または最下端よりも下流側に設定する。なお、ここでは図2に示した転写部100の構成を参照し、転写位置を中間転写ベルト131の最下端または最下端よりも下流側に設定したが、転写部100の構成によっては、他の位置に転写位置を設定する場合がある。具体的には、転写部100の構成において、バックアップロール140により中間転写ベルト131が媒体500側へ最も張り出した位置またはこの位置よりも下流側に、転写位置が設定される。
【0057】
転写位置を中間転写ベルト131最下端以外の場所に設定する場合、媒体500の搬送過程において、媒体500は中間転写ベルト131の最下端を乗り越える。このとき、取付台420は、媒体500の高さを、中間転写ベルト131の最下端を乗り越える分だけ下げるように調整する。この媒体500の高さを調整する構成について説明する。
【0058】
図7は、媒体500の高さの調整方法の例を示す図であり、図7(A)は媒体500が中間転写ベルト131の最下端の上流側に接触した状態を示す図、図7(B)は媒体500が中間転写ベルト131の最下端に接触した状態を示す図、図7(C)は媒体500が中間転写ベルト131の最下端の下流側に接触した状態を示す図である。なお、図7(A)~(C)では、中間転写ベルト131に対する媒体500の接触位置と媒体500との位置関係をわかりやすくするため、治具423の一部を省略している。
【0059】
図7(A)~(C)に示す例では、取付台420の治具423と脚部421との間に弾性部材424が設けられている。弾性部材424としては、例えば、圧縮ばねが用いられる。媒体500の搬送時、媒体500が中間転写ベルト131に接触して上方から下方へ押圧される力に応じて、治具423と脚部421との間に介在する弾性部材424が弾性変形する。これにより、治具423が沈んで媒体500の高さが下がり、媒体500が中間転写ベルト131の最下端を乗り越える。
【0060】
<他の実現手段による再接触の防止>
本実施形態では、媒体500に画像を形成した後、画像が形成された個所が中間転写ベルト131に再度接触することなく媒体500を中間転写ベルト131から離隔させることとした。そして、図6を参照して説明した例では、転写位置の設定により、画像が形成された媒体500と中間転写ベルト131との再接触を抑制した。ここで、画像が形成された媒体500と中間転写ベルト131との再接触の抑制を、転写位置の設定によらずに実現しても良い。一例として、媒体500の搬送方向により、画像が形成された媒体500と中間転写ベルト131との再接触を抑制することが考えられる。
【0061】
図8は、搬送方向により中間転写ベルト131と媒体500との再接触を防ぐ例を示す図である。図8に示す例では、媒体500に対する画像転写後の搬送方向を図の下方へ向かう方向(図中の矢印参照)とする。このように構成すれば、転写位置が中間転写ベルト131の最下端よりも上流側に設定されている場合(図6(A)参照)、転写位置が中間転写ベルト131の最下端に設定されている場合(図6(B)参照)、転写位置が中間転写ベルト131の最下端よりも下流側に設定されている場合(図6(C)参照)の何れであっても、画像Tの形成が終了した後に媒体500の搬送を再開すると、媒体500は、画像Tが形成されている個所が中間転写ベルト131に再度接触することなく、直ちに中間転写ベルト131から離隔される。
【0062】
なお、画像転写前の搬送方向は特に限定しない。例えば、転写前において媒体500が下方より上昇するように搬送され、転写位置にて中間転写ベルト131に接触し、画像転写後に下方へ搬送されるように構成しても良い。また、図4図6を参照して説明したように、転写前は、媒体500が図の左方から搬送され、転写位置にて中間転写ベルト131に接触し、画像転写後に下方へ搬送されるように構成しても良い。
【0063】
また、転写位置の設定によらずに、画像が形成された媒体500と中間転写ベルト131との再接触を抑制する他の例として、取付台420の脚部421に設けられた昇降部421aの動作を用いても良い。昇降部421aは、取付台420の台座部422を昇降させて媒体500の高さを制御する。そこで、媒体500に画像が形成された後、昇降部421aにより媒体500を下げて中間転写ベルト131から離隔させ、媒体500の搬送を再開することが考えられる。
【0064】
図9は、昇降部421aにより中間転写ベルト131と媒体500との再接触を抑制する例を示す図であり、図9(A)は中間転写ベルト131と媒体500とが接触している様子を示す図、図9(B)は中間転写ベルト131と媒体500とを離隔させた様子を示す図である。図9(A)に示すように、画像転写時において、昇降部421aは、媒体500の高さを、図3を参照して説明した事前動作で設定された転写実行高さに制御する。そして、媒体500に画像が形成された後、図9(B)に示すように、昇降部421aは、媒体500の高さを下げて中間転写ベルト131から離隔させ(図中の矢印A参照)、搬送機構400が画像転写後の媒体500の搬送を再開する(図中の矢印B参照)。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。例えば、上記の実施形態では、治具423を、媒体500の円周面の中心軸が通る位置を軸の両端側から挟んで押さえる構成とした。しかしながら、治具423は、媒体500における画像が形成される個所に接触せずに治具423を回転可能に保持するものであれば良く、上記実施形態の構成には限定されない。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【0066】
<付記>
(((1)))
対象物に接触して当該対象物に画像を転写する転写部と、円周面を有する前記対象物が、当該円周面が前記転写部の転写方向に沿って回転するように保持する保持部と、前記保持部に保持された前記対象物を搬送経路に沿って搬送すると共に、前記転写部が当該対象物に画像を転写する際に当該対象物の搬送を停止し、当該対象物における画像の転写が完了した面が当該転写部に再度接触する前に当該転写部から当該対象物を離隔させる搬送部と、を備えることを特徴とする、画像形成装置。
(((2)))
前記転写部は、複数のローラに掛けて張られ、帯電した粒子で形成された画像を保持すると共に、転写位置において前記対象物の搬送方向と一致する方向へ動くように回転し、当該転写位置において画像を当該対象物に転写するベルトと、前記複数のローラの一つであって、前記ベルトが前記対象物側へ張り出すように配置された転写用ローラと、を備え、前記転写位置は、前記転写用ローラにより前記ベルトが前記対象物側へ最も張り出した位置、または、当該位置よりも当該ベルトの動作方向の下流側に位置することを特徴とする、(((1)))に記載の画像形成装置。
(((3)))
前記ベルトと前記対象物との接触位置に応じて、前記保持部に保持された前記対象物の高さを調整する高さ調整部をさらに備えることを特徴とする、(((2)))に記載の画像形成装置。
(((4)))
前記搬送部による搬送経路は、前記転写部による前記対象物への画像の転写後、当該対象物を当該転写部の接触位置から離隔させる方向へ向かう経路であることを特徴とする、(((1)))~(((3)))のいずれかに記載の画像形成装置。
(((5)))
前記保持部に保持された前記対象物の高さを変更可能とし、前記転写部による前記対象物への画像の転写後、当該対象物の高さを下げて当該転写部から離隔させる昇降部をさらに備えることを特徴とする、(((1)))~(((4)))に記載の画像形成装置。
(((6)))
前記転写部は、複数のローラに掛けて張られ、帯電した粒子で形成された画像を保持すると共に、転写位置において前記対象物の搬送方向と一致する方向へ動くように回転し、当該転写位置において画像を当該対象物に転写するベルトと、前記複数のローラの一つであって、前記ベルトが前記対象物側へ張り出すように配置された転写用ローラと、を備え、前記昇降部は、前記ベルトが前記対象物側へ最も張り出した位置よりも下流側に前記転写位置がある場合に、当該対象物の高さを前記搬送部が当該ベルトの最も張り出した位置よりも下げ、当該位置を通過した後に、当該対象物の高さを上げて当該対象物を当該ベルトに接触させることを特徴とする、(((5)))に記載の画像形成装置。
【0067】
(((1)))に係る画像形成装置によれば、媒体の画像が転写された部分と転写部とが再度接触することを抑制することができる。
(((2)))に係る画像形成装置によれば、ベルトが最も張り出した位置よりも上流側を転写位置とする構成と比較して、転写後にそのまま搬送することにより、対象物を転写部から離隔させることができる。
(((3)))に係る画像形成装置によれば、対象物の高さを変えずに搬送する構成と比較して、対象物とベルトに作用する無用な圧力を抑制することができる。
(((4)))に係る画像形成装置によれば、搬送手段が対象物を転写部から離隔させる機構を有する構成と比較して、簡易な構造で転写部からの対象物の離隔を実現することができる。
(((5)))に係る画像形成装置によれば、搬送経路により対象物を転写部から離隔させる構成と比較して、画像形成装置の大型化を抑制することができる。
(((6)))に係る画像形成装置によれば、対象物の高さを変えずに搬送する構成と比較して、対象物とベルトに作用する無用な圧力を抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
10…画像形成装置、100…転写部、110…現像装置、120…一次転写ロール、131…中間転写ベルト、132、133…ローラ、140…バックアップロール、150…クリーニング装置、200…定着部、300…媒体着脱部、400…搬送機構、410…搬送レール、420…取付台、421…脚部、421a…昇降部、422…台座部、423…治具、424…弾性部材、500…媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9