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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137450
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】アンプ回路及びドライバ回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/34 20060101AFI20240927BHJP
   H02P 31/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H03F3/34 210
H03F3/34 220
H02P31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048975
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白土 広明
(72)【発明者】
【氏名】吉野 浩
【テーマコード(参考)】
5H501
5J500
【Fターム(参考)】
5H501BB06
5H501BB11
5H501HA05
5H501JJ01
5H501JJ25
5H501LL22
5H501LL23
5J500AA01
5J500AA11
5J500AA51
5J500AC12
5J500AC13
5J500AC41
5J500AC54
5J500AF09
5J500AF12
5J500AF14
5J500AF15
5J500AF17
5J500AF18
5J500AH29
5J500AH39
5J500AK02
5J500AM13
5J500AS15
5J500AT01
5J500AT06
(57)【要約】
【課題】アンプのオフセット電圧を自動的に補正するアンプ回路において、二つの動作モードの切り替えによって生じるオフセット電圧補正の特性劣化を抑制し、微小信号等を用いる高精度回路にも適用可能なアンプ回路を提供する。
【解決手段】実施形態のアンプ回路は、メインアンプとヌルアンプと、を備えたアンプ回路において、前記ヌルアンプの出力端子に設けられた動作モードの切替用のスイッチを介さずに前記出力端子に接続された容量を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインアンプとヌルアンプと、を備えたアンプ回路において、
前記ヌルアンプの出力端子に設けられた動作モードの切替用のスイッチを介さずに前記出力端子に接続された容量を備えたアンプ回路。
【請求項2】
前記動作モードとして前記ヌルアンプのオフセット電圧を補正する第1動作モードと、前記ヌルアンプの出力に基づいて、前記メインアンプのオフセット電圧を補正しつつ、増幅を行う第2動作モードと、を備え
前記切替用のスイッチは、前記動作モードの切替時にハイインピーダンス期間が設けられている、
請求項1に記載のアンプ回路。
【請求項3】
前記動作モードとして前記ヌルアンプのオフセット電圧を補正する第1動作モードと、前記ヌルアンプの出力に基づいて、前記メインアンプのオフセット電圧を補正しつつ、増幅を行う第2動作モードと、を備え
前記容量の容量値は、動作モードの切替周波数で前記ヌルアンプの周波数特性が利得を有するように設定される、
請求項1に記載のアンプ回路。
【請求項4】
前記動作モードとして前記ヌルアンプのオフセット電圧を補正する第1動作モードと、前記ヌルアンプの出力に基づいて、前記メインアンプのオフセット電圧を補正しつつ、増幅を行う第2動作モードと、を備え
前記容量の容量値は、動作モードの切替周波数で前記ヌルアンプの周波数特性が利得を有するように設定される、
請求項2に記載のアンプ回路。
【請求項5】
前記動作モードとして前記ヌルアンプのオフセット電圧を補正する第1動作モードと、前記ヌルアンプの出力に基づいて、前記メインアンプのオフセット電圧を補正しつつ、増幅を行う第2動作モードと、を備え、
前記第1動作モード用の第1容量と、
前記第2動作モード用の第2容量と、を有し、
前記ヌルアンプのトランスコンダクタンスをgmとし、動作モードの切替周波数をfmとし、前記第1容量の容量をCとし、前記切替用のスイッチを介さずに前記出力端子に接続された第3容量の容量をCとした場合に、
fm<gm/{2π(C+C)}
とする、
請求項1に記載のアンプ回路。
【請求項6】
前記容量の容量値は、前記第2動作モードの周波数特性が所定の位相余裕を持つように設定される、
請求項3に記載のアンプ回路。
【請求項7】
請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載のアンプ回路と、
前記アンプ回路の出力端子に接続された外部負荷としてのモータを流れる駆動電流あるいは前記モータへの印加電圧を検出する検出部と、を備え、
前記検出部の検出結果を前記アンプ回路の入力端子に入力し、前記モータの駆動制御を行う、
ドライバ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アンプ回路及びドライバ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メインアンプ、ヌルアンプ(自動補正アンプ)、ヌルアンプのオフセット補正電圧を保持する第1容量(容量)及びメインアンプのオフセット補正電圧を保持する第2容量を備え、低オフセットの増幅回路としてのオートゼロアンプが知られている。
【0003】
オートゼロアンプにおいては、ヌルアンプのオフセット補正電圧を取得するオートゼロフェーズの動作モードと、オフセット補正電圧が補正されて理想アンプとして動作するヌルアンプを用いてメインアンプのオフセット電圧を補正しつつ増幅回路としての実動作を行うアンプフェーズの動作モードと、を備えている。
【0004】
そして、オートゼロアンプでは第1容量及び第2容量に保持する電荷がリーク電流などによって時間と共にずれるため、一般的にはオートゼロフェーズとアンプフェーズを一定時間ごとに切り替えて第1容量及び第2容量の電荷をリフレッシュして更新しながら動作させていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術においては、オートゼロフェーズとアンプフェーズとを切り替える際の切替動作に基づくノイズの発生や、実際にはヌルアンプが理想アンプとして動作しないことに起因して、微小信号等を用いる高精度回路にオートゼロアンプを用いた場合には、特性劣化が乗じる虞があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アンプのオフセット電圧を自動的に補正するアンプ回路において、二つの動作モードの切り替えによって生じるオフセット電圧補正の特性劣化を抑制し、微小信号等を用いる高精度回路にも適用可能なオートゼロアンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のアンプ回路は、メインアンプとヌルアンプと、を備えたオートゼロアンプにおいて、前記ヌルアンプの出力端子に設けられた動作モードの切替用のスイッチを介さずに前記出力端子に接続された容量を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態のオートゼロアンプの回路構成例の説明図(オートゼロフェーズ)である。
図2図2は、実施形態のオートゼロアンプの回路構成例の説明図(アンプフェーズ)である。
図3図3は、実施形態のオートゼロアンプを用いてバッファアンプを構成した場合の説明図である。
図4図4は、図3のバッファアンプの動作波形の説明図である。
図5図5は比較例のオートゼロアンプの回路構成例の説明図(オートゼロフェーズ)である。
図6図6は比較例のオートゼロアンプの回路構成例の説明図(アンプフェーズ)である。
図7図7は、比較例のオートゼロアンプを用いてバッファアンプを構成した場合の説明図である。
図8図8は、図7のバッファアンプの動作波形の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態のオートゼロアンプの回路構成例の説明図(オートゼロフェーズ)である。
【0010】
オートゼロアンプ10は、メインアンプ11と、ヌルアンプ12と、第1スイッチ13と、第2スイッチ14と、第3スイッチ15と、第4スイッチ16と、第1容量17と、第2容量18と、第3容量19と、第1入力端子Tinpと、第2入力端子Tinnと、出力端子Toutと、を備えている。
【0011】
メインアンプ11は、非反転入力端子が第1入力端子Tinpに接続され、反転入力端子が第2入力端子Tinnに接続され、出力端子が出力端子Toutに接続されている。
【0012】
ヌルアンプ12は、非反転入力端子が第1スイッチ13を介して第2入力端子Tinnが接続可能とされるとともに、第2スイッチ14を介して第1入力端子Tinpに接続可能とされ、反転入力端子が第2入力端子Tinnに接続され、出力端子が第3スイッチ15の一端、第4スイッチ16の一端及び第3容量19の一端に接続され、オフセット補正電圧入力端子C2が第3スイッチ15の他端に接続されている。
【0013】
第1スイッチ13は、一端が第2入力端子Tinnに接続され、他端がヌルアンプ12の非反転入力端子に接続されている。
第2スイッチ14は、一端が第1入力端子Tinpに接続され、他端がヌルアンプ12の非反転入力端子に接続されている。
【0014】
第3スイッチ15は、一端がヌルアンプ12の出力端子に接続され、他端が第1容量17一端に接続されている。
第4スイッチ16は、一端がヌルアンプ12の出力端子に接続され、他端が第2容量18一端及びメインアンプ11のオフセット補正電圧入力端子C1に接続されている。
【0015】
第1容量17は、一端がヌルアンプ12のオフセット補正電圧入力端子(ループ端子)C2に接続され、他端が接地されている。
第2容量18は、一端がメインアンプ11のオフセット補正電圧入力端子(ループ端子)C1に接続され、他端が接地されている。
第3容量19は、一端がヌルアンプ12の出力端子に接続され、他端が接地されている。
【0016】
ここで、第1実施形態の説明に先立ち、比較例について説明する。
図5は比較例のオートゼロアンプの回路構成例の説明図(オートゼロフェーズ)である。
図6は比較例のオートゼロアンプの回路構成例の説明図(アンプフェーズ)である。
図5及び図6において、図1の実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0017】
図5及び図6の比較例のオートゼロアンプ10Pが、図1のオートゼロアンプ10と異なる点は、第3スイッチ15及び第1容量17に、並列に接続された第3容量19が設けられていない点である。
【0018】
次に比較例のオートゼロアンプ10Pの動作を説明する。
オートゼロアンプ10Pの動作モードには、図5に示すように、各部が接続されているオートゼロフェーズモードと、図6に示すように、各部が接続されているアンプフェーズモードとがある。
【0019】
オートゼロフェーズモードにおいては、図5に示すように、ヌルアンプ12の非反転入力端子と反転入力端子と(=差動入力端子)を、第1スイッチ13をオン状態(閉状態)として短絡させるととともに、第3スイッチ15をオン状態として、ヌルアンプ12の出力端子をオフセット補正電圧入力端子C2に接続する。
なお、第2スイッチ14及び第4スイッチ16は、オフ状態(開状態)である。
【0020】
この結果、ヌルアンプ12は、バッファ状態となりヌルアンプ12の非反転入力端子及び反転入力端子は短絡されているので、ヌルアンプ12自体のオフセット補正電圧を第1容量17に保持することとなる。
【0021】
この場合において、ヌルアンプ12は、メインアンプ11への動作ループからは除かれているので、メインアンプ11は、第2容量18に保持された電荷(電圧)を用いてオフセット補正を行い動作することとなる。
【0022】
これに対し、アンプフェーズモードでは、図6に示すように、ヌルアンプ12の入力は第2スイッチ14がオン状態となり、メインアンプ11と同じように並列接続され、ヌルアンプ12の出力端子は、第4スイッチ16がオン状態となることで第2容量17に接続された状態となる。
【0023】
これにより、ヌルアンプ12は、第1容量17に保持された電圧を使用して動作することとなる。
したがって、オートゼロフェーズモードにおいて確認したオフセット補正電圧により補正された状態のヌルアンプ12は、理論的には、オフセットの影響のない理想アンプとして動作し、メインアンプ11のオフセット電圧を補正しながら動作することとなる。
【0024】
ところで、実際のオートゼロアンプ10Pでは、第1容量17や第2容量18にはリーク電流などが存在し、オフセット補正電圧を保持する第1容量17や第2容量18が保持している電荷はリーク電流などによって時間と共に変動することとなり、ひいてはオフセット補正電圧が時間とともに変動することとなる。
【0025】
このため、一般的なオートゼロアンプにおいては、オートゼロフェーズモードとアンプフェーズモードを一定時間ごとに切り替えて2つのコンデンサの容量電荷をリフレッシュして更新しながら動作させることで、オフセット電圧補正をより確実に行うようにしている。
【0026】
図7は、比較例のオートゼロアンプを用いてバッファアンプを構成した場合の説明図である。
図7に示す様に、図5で示したオートゼロアンプ10Pを使用してバッファアンプを構成している。
【0027】
この場合において、オートゼロアンプ10Pの出力端子Toutを第2入力端子Tinn接続して帰還ループを形成し、バッファアンプとしている。
ここで、所定の電圧を有する任意の電源30を第1入力端子Tinpに接続して、動作を確認するものとする。
【0028】
図8は、図7のバッファアンプの動作波形の説明図である。
オートゼロアンプ10Pは、第1容量17にヌルアンプ12のオフセット補正用の電圧を保持し、第2容量18にメインアンプ11のオフセット補正用の電圧を保持するので、互いの保持電圧が干渉するのを避ける必要がある。
このため、第3スイッチ15及び第4スイッチ16は、同時にオン状態とならないように、第1スイッチ13及び第2スイッチ14は、共にオフ状態となる期間が必要となる。
【0029】
もし、オン状態にするスイッチを、第3スイッチ15及び第4スイッチ16の何れか一方から何れか他方に切り替える場合に、第3スイッチ15及び第4スイッチ16の双方がオン状態であると、正しいオフセット補正電圧を取得することはできない。そのため、オフセット補正が正しく行えずにオフセット補正電圧の信頼性が低下し、バッファアンプの特性劣化を招く虞があった。
【0030】
このため、第3スイッチ15及び第4スイッチ16は、共にハイインピーダンス状態(オフ状態)となる期間を確実に設ける必要があるが、ハイインピーダンス状態(オフ状態)となる期間を長くすることにより以下の様な不具合が生じる虞があった。
【0031】
第3スイッチ15及び第4スイッチ16が共にオフである期間に移行することは、ヌルアンプ12にとっては負荷の接続が突然無くなるという状態(ハイインピーダンス状態)ということになるので、ヌルアンプ12の出力信号Aoutの電圧自体も急に変化して大きく変動する状態となる。
【0032】
より詳細には、図8(E)に示すようにヌルアンプ12の出力信号Aoutの電圧が暴れてノイズNZが発生した状態で、第4スイッチ16がオン状態となるので、図8(C)に示す様に、アンプフェーズモードPH2に移行した直後はメインアンプ11の出力電圧も暴れやすくなる。
【0033】
また、上述したように、オートゼロフェーズPH1からアンプフェーズPH2に切り替わる際に、第3スイッチ15が完全にオフ状態へ移行する直前のヌルアンプ12の出力信号Aoutの電圧暴れの影響が生じていた。より具体的には、例えば、図8(D)に破線楕円B11、B12として示す様に、オートゼロフェーズPH1とアンプフェーズPH2との間で、第1容量17に保持していたオフセット補正電圧Vcにずれが生じてしまうこととなっていた。
【0034】
同様にオートゼロフェーズPH1からアンプフェーズPH2に切り替わる際も入力信号VIN-に波形の暴れが生じるとともに、例えば、図8(C)に破線楕円A11、A12に示す様に、入力信号VIN-が同一である場合であっても、電圧レベルにずれが生じてしまうこととなっていた。
【0035】
以上の説明のように、比較例のオートゼロアンプ10Pにおいては、このようにオートゼロフェーズからアンプフェーズの切り替わり時にVIN-に電圧暴れのノイズが生じる問題や、オートゼロフェーズとアンプフェーズでVIN-電圧に差が生じオフセット電圧補正が劣化して理想的には動作せず、微小信号などを用いる高精度回路に用いた場合には特性劣化を起こしてしまう問題があった。
【0036】
次に実施形態のオートゼロアンプ10の動作を説明する。
上述したように、図1の実施形態とオートゼロアンプ10と、図5のオートゼロアンプ10Pとが異なる点は、ヌルアンプ12の出力端子にスイッチを介さず、常時接続されている第3容量19を設けた点である。
【0037】
以下、動作を説明する。
オートゼロフェーズモードにおいては、ヌルアンプ12の差動入力を第1スイッチ13で短絡させ、ヌルアンプ12の出力端子は、第3スイッチ15をオン状態とすることで、ヌルアンプ12はバッファ状態となる。
【0038】
そして、ヌルアンプ12自体のオフセット補正電圧を第1容量17及び第3容量19に保持して、ヌルアンプ12自身のオフセット補正電圧を取得し、その後、補正する。
【0039】
この場合において、図1に示すような接続状態においては、ヌルアンプ12は、メインアンプ11への動作ループからは除かれている。
したがって、メインアンプ11は、第2容量18に保持された電圧をメインアンプ11のオフセット補正電圧として使用し動作する。
【0040】
図2は、実施形態のオートゼロアンプの回路構成例の説明図(アンプフェーズ)である。
これに対し、アンプフェーズモードでは、図2に示す様に、第2スイッチ14がオン状態となり、ヌルアンプ12は、メインアンプと同じように並列接続され、ヌルアンプ12の出力端子は、第3容量19に接続されるとともに、第4スイッチ16を介して第2容量18に接続される。
【0041】
これによりヌルアンプ12は、第1容量17に保持されたオフセット補正電圧を使用して動作する。
【0042】
上述したオートゼロフェーズで自身のオフセット電圧が補正されたヌルアンプ12は、理想アンプとして動作することが可能となり、メインアンプ11のオフセット電圧を補正しながら動作する。
【0043】
比較例の問題点の説明でも述べた様に、実施形態のオートゼロアンプ10においても、第1容量17、第2容量18及び第3容量19に保持する電荷がリーク電流などによって時間と共に変動する。
【0044】
このため、本実施形態においても、比較例と同様にオートゼロフェーズモードとアンプフェーズモードとを一定時間ごとに切り替えてこれらの第1容量17、第2容量18及び第3容量19の電荷をリフレッシュして更新しながら動作させている。
【0045】
以上の説明のように、実施形態の回路構成の場合には、第3容量19は、常時、ヌルアンプ12の出力端子に接続されている状態となり、比較例と異なり、第3スイッチ15及び第4スイッチ16の切り替えに際しても、ヌルアンプ12の負荷が突然無くなるような状態となることはないので、ヌルアンプ12の動作を安定して行わせることが可能となる。
【0046】
したがって、オートゼロフェーズからアンプフェーズの切り替わり時にVIN-に電圧暴れのノイズが生じる問題もなく、オートゼロフェーズとアンプフェーズでVIN-電圧に差が生じてオフセット電圧補正が劣化することがない。そのため、理想的な動作により微小信号などを扱う高精度回路に用いた場合にも特性劣化を抑制できることがわかる。
【0047】
次により具体的に実施形態の動作を説明する。
図3は、実施形態のオートゼロアンプを用いてバッファアンプを構成した場合の説明図である。
図3に示す様に、図1で示したオートゼロアンプ10使用してバッファアンプを構成している。
この場合において、オートゼロアンプ10の出力端子Toutを第2入力端子Tinnに接続して帰還ループを形成し、バッファアンプとしている。
ここで、所定の電圧を有する任意の電源30を第1入力端子Tinpに接続して、動作を確認するものとする。
【0048】
図4は、図3のバッファアンプの動作波形の説明図である。
比較例においては、オートゼロフェーズからアンプフェーズに切り替わり時に入力信号VIN-に電圧暴れのノイズが生じる問題があったが、実施形態のバッファアンプにおいては、図4(C)に示す様に、第2入力端子Tinnにおける入力信号VIN-の電圧暴れの期間が短くなっており、改善されていることがわかる。
【0049】
また、比較例においては、図8(C)に示す様に、第2入力端子Tinnにおける入力信号VIN-1はオートゼロフェーズとアンプフェーズで電圧に差が生じてオフセット電圧補正が劣化して理想的には動作しきれていない問題があったが、本提案ではVIN-はオートゼロフェーズとアンプフェーズでの電圧差が抑制されており特性劣化の問題が改善していることが分かる。
【0050】
これは本実施形態では、フェーズの切り替わりにおいて、ヌルアンプ12の出力端子に接続されている第3スイッチ15と第4スイッチ16とを切り替える場合であっても、ヌルアンプ12の出力端子には、常時、第3容量19が接続されているため、オートゼロフェーズモード及びアンプフェーズモードのいずれであっても、各フェーズモードにおける電圧状態を保持することが可能となる。
【0051】
すなわち、第3スイッチ15及び第4スイッチ16の双方がオフ状態でも、ヌルアンプ12の出力端子には、第3容量19が常に接続されているため、ヌルアンプ12の出力端子がハイインピーダンス状態になることは無く、ヌルアンプ12の出力端子の負荷が急激に変化するのを抑制することができる。
【0052】
より詳細には、図4(E)に示すようにヌルアンプ12の出力信号Aoutの電圧の暴れがなく、例えば、破線枠C1,C2の位置に比較例と異なりノイズが発生することなく、第4スイッチ16がオン状態となるので、図4(C)に示す様に、アンプフェーズモードPH2に移行した直後であってもメインアンプ11の出力電圧の暴れを抑制できている。
【0053】
オートゼロフェーズPH1からアンプフェーズPH2に切り替わる際に、第3スイッチ15が完全にオフ状態に移行する直前のヌルアンプ12の出力信号Aoutの電圧暴れを抑制できる。したがって、例えば、図4(D)の破線楕円B1、B2に示す様に、オートゼロフェーズPH1とアンプフェーズPH2との間で、第1容量17に保持していたオフセット補正電圧Vcにずれが生じてしまうことも抑制できる。
【0054】
同様に図4(C)に示すように、オートゼロフェーズPH1からアンプフェーズPH2に切り替わる際も入力信号VIN-に生じる波形の暴れを抑制できるとともに、例えば、図4(C)の破線楕円A1、A2に示す様に、入力信号VIN-が同一である場合に電圧レベルにずれが生じてしまうことを抑制できる。
【0055】
以上の説明のように、実施形態のオートゼロアンプ10においては、比較例のようにオートゼロフェーズからアンプフェーズの切り替わり時に入力信号VIN-に電圧暴れのノイズが生じる問題や、オートゼロフェーズとアンプフェーズとで、入力信号VIN-の電圧に差が生じオフセット電圧補正が劣化して理想的には動作しないという問題がない。
【0056】
したがって、微小信号などを扱う高精度回路に用いた場合であっても、特性劣化を起こしてしまうこと無く信頼性の高い処理を行える。
なお、図4(C)に示す様な入力信号VIN-に生じているフェーズの切り替わり時の短い期間のノイズについては、発生タイミングが事前に分かっているので、ブランキングフィルタ等で除去が可能であり特には問題にはならない。
【0057】
なお、実施形態の図1及び図2に示したオートゼロアンプの構成では、第1容量17、第2容量18及び第3容量19は、基準電位である低電位側電源に接地していたが、直流的に安定した任意の電圧に接続することも可能である。
【0058】
以上の説明においては、図1及び図2のオートゼロアンプ構成例を用いて説明したが、オートゼロアンプを構成するメインアンプとヌルアンプの各+端子と-端子の接続やスイッチの接続状態およびそれらのスイッチの設定状態は異なっていても、オートゼロアンプにおいてヌルアンプの出力にスイッチ等を介さずに常時(あるいは時間連続的に)接続されるコンデンサ(容量)を設ける構成とすれば、同様の効果が期待できる。
【0059】
その他、図1及び図2においては、ヌルアンプ12が1個搭載されているオートゼロアンプの構成例を示したが、ヌルアンプを複数搭載するオートゼロアンプ構成においてもその搭載しているヌルアンプの出力端子にそれぞれスイッチ等を介さず時間連続的に接続されるコンデンサ(容量)を設ける構成であれば、同様の効果が期待できる。
【0060】
[2]実施形態の第1変形例
以上の説明においては、オートゼロフェーズとアンプフェーズとを切り替える場合に、第3スイッチ15及び第4スイッチ16の双方がオフ状態となる状態については詳細に述べなかったが、ヌルアンプ12の出力端子には、第3容量19が常に接続されている。
【0061】
このため、第3スイッチ15及び第4スイッチ16の双方がオフ状態なる期間を長くしてもヌルアンプ12の出力端子の出力電圧自体が急激に変化しないので、オフ状態となる期間を長く設定することが容易にでき、信頼性の高い切り替えが行える。
【0062】
[3]実施形態の第2変形例
実施形態のオートゼロフェーズ時のヌルアンプ12の利得が1となる周波数(以下ユニティゲイン周波数と記す)は、ヌルアンプ12のトランスコンダクタンスをgmとし、ヌルアンプ12の出力にスイッチ等を介さず時間連続的に接続される第3容量19の容量をCとし、第1容量17の容量をCとした場合、ユニティゲイン周波数Fは、次式で表される。
F=gm/{2π(C+C)}
【0063】
このヌルアンプのユニティゲイン周波数Fはオートゼロフェーズとアンプフェーズのモードの切替周波数fmよりも高いことが望ましい。
これはオートゼロフェーズでオフセット補正に用いる電圧を正しく第1容量17及び第3容量19に保持する必要があるからである。
【0064】
上記の場合において、切替周波数fmとユニティゲイン周波数との関係式は、次式の通りとなる。
fm<gm/{2π(C+C)}
【0065】
第1容量17は、アンプフェーズの期間で保持している電荷がリーク電流などによってずれてオフセット補正に影響が出ないような容量値にすることを主に考えて設定するのが好ましい。
【0066】
また、第3容量19の容量Cが次式を満たすような値に設定することで、オフセット電圧補正を良好にできる。
fm<gm/{2π(C+C)}
【0067】
[4]実施形態の第3変形例
実施形態のオートゼロアンプ10のアンプフェーズモードの周波数特性は、発振しないように任意の位相余裕を確保することが必要で、ヌルアンプ12の出力にスイッチ等を介さず時間連続的に接続される第3容量19の容量値Cの値を位相余裕も確保できるように設定することで、オートゼロフェーズからアンプフェーズへの切り替わり時の電圧暴れなどを良好にできる。
【0068】
[5]他の実施形態
以上の説明においては、アンプ回路としてのオートゼロアンプについて述べたが、上記アンプ回路を制御量の検出を行う回路として用い、ドライバ回路を構成することが可能である。
【0069】
例えば、アンプ回路としてのオートゼロアンプの出力端子Toutに、外部負荷としてのモータを接続し、モータを流れる電流値を検出する電流検出部あるいはモータに印加される電圧値を検出する電圧検出部の検出信号を直接、あるいは、バイアス回路を介してオートゼロアンプの入力端子(第1入力端子Tinp、第2入力端子Tinn)に入力して、モータをフィードバック制御し、駆動するモータドライバ回路を構成することが可能である。
【0070】
このような構成を採ることにより、ドライバ回路として高精度にフィードバック量を取得することができ、高精度のフィードバック制御が行える。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
10 オートゼロアンプ
11 メインアンプ
12 ヌルアンプ
13 第1スイッチ
14 第2スイッチ
15 第3スイッチ
16 第4スイッチ
17 第1容量
18 第2容量
19 第3容量
30 電源
Aout 出力信号
F ユニティゲイン周波数
PH1 オートゼロフェーズ
PH2 アンプフェーズ
Tinn 第2入力端子
Tinp 第1入力端子
Tout 出力端子
Vc オフセット補正電圧
fm (動作モードの)切替周波数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8