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特開2024-137451積層体、インプリントモールド、インプリントモールドの製造方法、光学素子の製造方法、および電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137451
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】積層体、インプリントモールド、インプリントモールドの製造方法、光学素子の製造方法、および電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240927BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 17/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 B
B32B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048976
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】相澤 毅
(72)【発明者】
【氏名】池西 幹男
【テーマコード(参考)】
4F100
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F100AA12B
4F100AA17
4F100AA17A
4F100AA18
4F100AA18A
4F100AA20
4F100AA20B
4F100AB01C
4F100AB11B
4F100AB13C
4F100AB19C
4F100AG00
4F100AG00A
4F100AK01
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100DC11B
4F100DC11C
4F100DD01B
4F100EH66
4F100EJ15B
4F100EJ15C
4F100GB41
4F100JB14
4F100JN01B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AH73
4F209AJ01
4F209PA02
4F209PB01
4F209PQ11
5F146AA32
(57)【要約】
【課題】設計工程や製造工程を複雑化することなく、高精度に所望の凹凸形状を得られるインプリントモールド用ブランクとして好適に用いられる積層体を提供する。
【解決手段】積層体10は、CaO、La2O3、Nb2O5およびBaOのうち少なくともいずれか1つを含む基板1と、前記基板1上に設けられた機能層2と、前記機能層2上に設けられたエッチングマスク層3とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaO、La2O3、Nb2O5およびBaOのうち少なくともいずれか1つを含む基板と、
前記基板上に設けられた機能層と、
前記機能層上に設けられたエッチングマスク層と、を備えることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記機能層は、前記基板に接していることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基板に含まれるCaO、La2O3、Nb2O5およびBaOの合計含有量が30質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記機能層は、ケイ素と、酸素および窒素のうち少なくともいずれか1つと、を含む材料からなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記基板上に前記機能層を積層した状態において、前記基板および前記機能層を透過する波長365nmの光の透過率は50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
前記エッチングマスク層は、クロム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウムおよびタングステンから選ばれる1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
インプリントモールドの製造方法であって、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層体を用意する工程と、
前記エッチングマスク層にエッチングマスクパターンを形成する工程と、
前記エッチングマスクパターンをマスクとして、前記機能層をエッチングする工程と、
前記エッチングマスクパターンを除去する工程と、
を含むことを特徴とするインプリントモールドの製造方法。
【請求項8】
インプリントモールドであって、
CaO、La2O3、Nb2O5およびBaOのうち少なくともいずれか1つを含む基板と、
前記基板上に設けられる機能層と、を備え、
前記機能層は、所定のモールドパターンを構成する複数の凹部を有することを特徴とするインプリントモールド。
【請求項9】
前記機能層は、前記基板に接していることを特徴とする請求項8に記載のインプリントモールド。
【請求項10】
前記基板に含まれるCaO、La2O3、Nb2O5およびBaOの合計含有量が30質量%以上であることを特徴とする請求項8に記載のインプリントモールド。
【請求項11】
前記機能層は、ケイ素と、酸素および窒素のうち少なくともいずれか1つと、を含む材料からなることを特徴とする請求項8に記載のインプリントモールド。
【請求項12】
前記基板上に前記機能層を積層した状態において、前記基板および前記機能層を透過する波長365nmの光の透過率は50%以上であることを特徴とする請求項8に記載のインプリントモールド。
【請求項13】
前記凹部の底面は、前記基板が露出してなることを特徴とする請求項8に記載のインプリントモールド。
【請求項14】
光学素子の製造方法であって、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層体を用いて製造されたインプリントモールド、または請求項8乃至13のいずれか1項に記載のインプリントモールドを用意する工程と、
前記インプリントモールドを光学素子用基板に塗布された転写対象に押圧した状態で、前記転写対象を硬化させる工程と、
前記インプリントモールドを前記転写対象から分離する工程と、
を含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項15】
電子部品の製造方法であって、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の積層体を用いて製造されたインプリントモールド、または請求項8乃至13のいずれか1項に記載のインプリントモールドを用意する工程と、
前記インプリントモールドを電子部品用基板に塗布された転写対象に押圧した状態で、前記転写対象を硬化させる工程と、
前記インプリントモールドを前記転写対象から分離する工程と、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等の電子部品の微細回路パターン作製や、微細パターンにより光学的機能を付加した光学素子作製等に適用するインプリントモールド及びその製造方法、インプリントモールドの製造にインプリントモールド用ブランクとして好適に用いられる積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の電子部品の微細回路パターン作製や、微細パターンにより光学的機能を付加した光学部品(回折格子など)作製等における微細パターン形成において、同じ微細パターンを大量に転写するためのインプリント法が用いられるようになってきている。
【0003】
インプリント法は、微細なモールドパターンが形成されたインプリントモールド(スタンパ)を原版として用い、例えば基板上に塗布された転写対象である光硬化性樹脂等の液体樹脂に対してインプリントモールドを直接押し付けて紫外線等によって硬化させることにより、硬化した液体樹脂にモールドパターンを転写する方法である。このため、インプリント法によれば、同じ微細パターンを大量に転写することが可能である。
【0004】
このようにインプリントモールドは同じ微細パターンを大量に転写するための原版となるため、モールド上に形成されたモールドパターンの寸法精度は、作製される微細パターンの寸法精度に直接影響する。また、インプリントモールドは基板上に塗布された液体樹脂に直接押し付けてパターンを転写するため、モールドパターンの断面形状も作製される微細パターンの形状に大きく影響する。半導体デバイス等の集積度が向上するにつれ、要求されるパターンの寸法は小さくなり、また、等倍でのパターン転写となるため、インプリントモールドの精度もより高いものが要求されるようになってきている。
【0005】
従来、インプリントモールドの作製においては、合成石英などからなる基板上に設けられた薄膜パターンをマスクとして、エッチングにより基板を掘り込むことが知られている(例えば特許文献1)。これにより、所望の凹凸形状を基板上に形成し、インプリントモールドを得ることができる。
【0006】
また、インプリントモールドを作製するためのインプリント用基板として、合成石英などからなる基板上に、互いにエッチング選択性のある2層からなる膜(2層膜)を複数積層させた構成とするものがある(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-227950号公報
【特許文献2】特開平6-258510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示されているようなインプリントモールドの作製においては、基板を掘り込む量(掘り込み深さ)を高精度に制御することは容易ではない。また、基板を掘り込んで得られる凹部を、精度良く所望の形状にすることや基板面内で均一なものとすることも容易ではない。
【0009】
一方、特許文献2に開示されているようなインプリントモールドを作製するためのインプリント用基板によれば、2層膜の膜厚を調整することにより、エッチング時に掘り込み深さを精緻に制御する必要がない。しかし、このようなインプリント用基板を作製する場合、掘り込み深さの異なる複数の凹部の数に応じて2層膜をいくつも積層する必要があるだけでなく、それぞれの層の膜厚を所望の掘り込み深さに応じて設計し、都度膜厚を調整して成膜する必要がある。したがって、インプリント用基板の設計工程や製造工程が非常に複雑になる。また、2層膜における上の層の材料としては、基板とエッチング選択性の低い例えばSiO2が用いられる。このため、基板に接する2層膜における上の層をエッチングする際には、下の層がエッチングストッパー膜として基板を保護する機能を果たすが、インプリントモールドが有する最も掘り込み深さの大きな凹部の底面においては、下の層がエッチングにより除去され、基板が露出している。この下の層をエッチングする際には、基板のダメージは避けられなかった。このため、所望の凹凸形状を精度良く得られないといった不都合が生じていた。
【0010】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、第1に、設計工程や製造工程を複雑化することなく、高精度に所望の凹凸形状を得られるインプリントモールド用ブランクとして好適に用いられる積層体を提供することであり、第2に、上記の積層体を用いて作製されたインプリントモールドおよびその製造方法を提供することであり、第3に、上記のインプリントモールドを用いた光学素子の製造方法および電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らの鋭意検討の結果、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0012】
(構成1)
CaO、La2O3、Nb2O5およびBaOのうち少なくともいずれか1つを含む基板と、前記基板上に設けられた機能層と、前記機能層上に設けられたエッチングマスク層と、を備えることを特徴とする積層体。
【0013】
(構成2)
前記機能層は、前記基板に接していることを特徴とする構成1に記載の積層体。
(構成3)
前記基板に含まれるCaO、La2O3、Nb2O5およびBaOの合計含有量が30質量%以上であることを特徴とする構成1に記載の積層体。
【0014】
(構成4)
前記機能層は、ケイ素と、酸素および窒素のうち少なくともいずれか1つと、を含む材料からなることを特徴とする構成1に記載の積層体。
(構成5)
前記基板上に前記機能層を積層した状態において、前記基板および前記機能層を透過する波長365nmの光の透過率は50%以上であることを特徴とする構成1に記載の積層体。
【0015】
(構成6)
前記エッチングマスク層は、クロム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウムおよびタングステンから選ばれる1つ以上を含むことを特徴とする構成1に記載の積層体。
【0016】
(構成7)
インプリントモールドの製造方法であって、構成1乃至6のいずれかに記載の積層体を用意する工程と、前記エッチングマスク層にエッチングマスクパターンを形成する工程と、前記エッチングマスクパターンをマスクとして、前記機能層をエッチングする工程と、前記エッチングマスクパターンを除去する工程と、を含むことを特徴とするインプリントモールドの製造方法。
【0017】
(構成8)
インプリントモールドであって、CaO、La2O3、Nb2O5およびBaOのうち少なくともいずれか1つを含む基板と、前記基板上に設けられる機能層と、を備え、前記機能層は、所定のモールドパターンを構成する複数の凹部を有することを特徴とするインプリントモールド。
【0018】
(構成9)
前記機能層は、前記基板に接していることを特徴とする構成8に記載のインプリントモールド。
(構成10)
前記基板に含まれるCaO、La2O3、Nb2O5およびBaOの合計含有量が30質量%以上であることを特徴とする構成8に記載のインプリントモールド。
【0019】
(構成11)
前記機能層は、ケイ素と、酸素および窒素のうち少なくともいずれか1つと、を含む材料からなることを特徴とする構成8に記載のインプリントモールド。
(構成12)
前記基板上に前記機能層を積層した状態において、前記基板および前記機能層を透過する波長365nmの光の透過率は50%以上であることを特徴とする構成8に記載のインプリントモールド。
【0020】
(構成13)
前記凹部の底面は、前記基板が露出してなることを特徴とする構成8に記載のインプリントモールド。
【0021】
(構成14)
光学素子の製造方法であって、構成1乃至6のいずれかに記載の積層体を用いて製造されたインプリントモールド、または構成8乃至13のいずれかに記載のインプリントモールドを用意する工程と、前記インプリントモールドを光学素子用基板に塗布された転写対象に押圧した状態で、前記転写対象を硬化させる工程と、前記インプリントモールドを前記転写対象から分離する工程と、を含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
【0022】
(構成15)
電子部品の製造方法であって、構成1乃至6のいずれかに記載の積層体を用いて製造されたインプリントモールド、または構成8乃至13のいずれかに記載のインプリントモールドを用意する工程と、前記インプリントモールドを電子部品用基板に塗布された転写対象に押圧した状態で、前記転写対象を硬化させる工程と、前記インプリントモールドを前記転写対象から分離する工程と、を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、設計工程や製造工程を複雑化することなく、高精度に所望の凹凸形状を得られるインプリントモールド用ブランクとして好適に用いられる積層体を提供することができる。
また、本発明によれば、上記の積層体を用いて作製された、高精度のモールドパターンを有するインプリントモールドおよびその製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、上記のインプリントモールドを用いて、高精度の微細パターンが形成された光学素子の製造方法および電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る積層体の一実施形態の層構成を示す断面図である。
図2】本発明に係るインプリントモールドの一実施形態を示す断面図である。
図3】(a)~(i)はインプリントモールドの製造工程の第1の実施形態を説明するための断面図である。
図4】(j)~(p)は図3の工程の続きを示す断面図である。
図5】(a)~(i)はインプリントモールドの製造工程の第2の実施形態を説明するための断面図である。
図6】(j)~(o)は図5の工程の続きを示す断面図である。
図7】(a)~(i)はインプリントモールドの製造工程の第3の実施形態を説明するための断面図である。
図8】(j)~(o)は図7の工程の続きを示す断面図である。
図9】インプリントによる転写対象へのパターン転写を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
[積層体]
まず、本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、インプリントモールドを製造する際、インプリントモールド用ブランクとして好適に用いられる。
【0027】
図1は、本発明に係る積層体の一実施形態の層構成を示す断面図である。
図1に示されるように、本発明の一実施形態の積層体10は、基板1と、前記基板1上に設けられた機能層2と、前記機能層2上に設けられたエッチングマスク層3とを備える。
【0028】
本発明において、上記基板1は、2つの対向する主表面と、4つの端面を有する。上記基板1は、CaO、La2O3、Nb2O5およびBaOのうち少なくともいずれか1つを含む基板であり、特に、基板1に含まれるCaO、La2O3、Nb2O5およびBaOの合計含有量が30質量%以上であるガラス基板であることが好適である。
【0029】
詳細は後述するように、上記積層体を用いてインプリントモールドを製造する場合、フッ素含有ガスを用いて、基板1表面が露出するまで上記機能層2をエッチングして凹部を形成する工程において、上記基板1は、例えばSiO2からなる合成石英基板などと比べると、エッチングによる加工ダメージ量を無視できるほど小さくすることができる。また、上記基板1は、塩素系ガスに対しても高い耐性を有するため、塩素系ガスを用いた凹部形成工程における基板1の加工ダメージ量も、無視できるほど小さくできる。その結果、上記機能層2をエッチングにより掘り込んで得られる凹部を、精度良く所望の形状に形成することができる。
【0030】
なお、上記基板1のd線(587.56 nm)に対する屈折率nは、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上である。また、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.3以下、さらに好ましくは2.2以下である。また、上記基板1のアッベ数νは、好ましくは60以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは40以下である。また、好ましくは10以上、より好ましくは15以上である。
アッベ数νは、ν=(n-1)/(n-n)で求めることができる。ここで、nは上記基板1のF線(486.13nm)に対する屈折率、nは上記基板1のC線(656.27nm)に対する屈折率を意味する。
【0031】
次に、上記機能層2について説明する。
上記機能層2は、上記基板1に接して該基板1の一方の主表面上に設けられることが好ましい。すなわち、上記機能層2と上記基板1の間に他の層や膜が介在しないことが好適である。
【0032】
また、上記機能層2は単一層であることが好ましい。機能層2が単一層であれば、機能層2をエッチングにより掘り込んで得られる凹部を、途中で段差のない所望の形状に形成することができるからである。
【0033】
また、上記機能層2は、基板1との界面(例えば基板1側から5nm以内の範囲)およびエッチングマスク層3との界面(例えばエッチングマスク層3側から5nm以内の範囲)を除いて、膜厚方向に均一な組成であることが好ましい。機能層2が、基板1との界面およびエッチングマスク層3との界面を除いて、膜厚方向に均一な組成であれば、機能層2をエッチングにより掘り込んで得られる凹部を、途中で段差のない所望の形状に形成することができ、また機能層2のエッチング条件を制御しやすいからである。凹部の断面形状を良好にすることができれば、機能層2の組成は、膜厚方向に連続的または段階的に変化してもよい。
【0034】
本発明において、上記機能層2は、フッ素含有ガスでエッチング可能な材料からなることができる。このようなフッ素含有ガスでエッチング可能な材料であれば、特に制約はなく用いることができる。フッ素含有ガスとしては、Fガス、CFのようなパーフルオロカーボンガス、CFHのようなハイドロフルオロカーボンガス、SFガス、NFガス、SiFガスおよびHFガスなどが挙げられる。またこれらのフッ素含有ガスは、貴ガスおよび/または酸素をさらに含んでもよい。貴ガスは特に限定されないが、例えばアルゴン(Ar)を用いることができる。フッ素含有ガスによるエッチングは異方性が高く、凹部の形状を良好にすることができるため好ましい。
【0035】
フッ素含有ガスでエッチング可能な材料としては、例えば、ケイ素を含む材料が挙げられる。特に好ましくは、ケイ素と、酸素および窒素のうち少なくともいずれか1つとを含む材料である。ケイ素を含む材料の具体例としては、SiO2、SiNxやSi3N4、SiONなどが挙げられる。また、チタンを含む材料も好ましく挙げられる。チタンを含む材料の具体例としては、例えばTiO2などが挙げられる。他にも、例えばNbのようなニオブ(Nb)を含む材料を用いることもできる。
【0036】
また、基板1は、塩素含有ガスに対しても高い耐性を有するため、上記機能層2は、塩素含有ガスでエッチング可能な材料からなることも可能である。このような塩素含有ガスでエッチング可能な材料であれば、特に制約はなく用いることができる。例えば、アルミニウムを含む材料やハフニウムを含む材料を用いることができる。アルミニウムを含む材料としては、Al、アルミニウムシリケート(AlxSiyO)などが挙げられる。また、ハフニウムを含む材料としては、HfO、HfSiOやHfAlOなどが挙げられ、組成比は適宜調整される。
【0037】
上記機能層2をフッ素含有ガスでエッチングする場合、上記基板1に対する上記機能層2のエッチング選択比は、好ましくは2.5以上であり、より好ましくは3.0以上であり、さらに好ましくは3.5以上である。
【0038】
また、上記機能層2上に設けられたエッチングマスク層3をエッチングによりパターニングする際、下層の機能層2がダメージを受けないようにするため、上記機能層2は、上記エッチングマスク層3のエッチング条件に対して耐性を有することが好ましい。後述するように、上記エッチングマスク層3は、例えばクロムを含有する材料が好ましく用いられる。クロムを含有する材料からなるエッチングマスク層3をパターニングする際のエッチングガスとしては、通常、塩素を含有するガス(例えば、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、CCl、BCl)や上記塩素を含有するガスのうちの少なくとも1つと酸素との混合ガスが用いられる。したがって、エッチングマスク層3がクロムを含有する材料からなる場合には、上記機能層2は、上記の塩素を含有するガス(例えば、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、CCl、BCl)や上記塩素を含有するガスのうちの少なくとも1つと酸素との混合ガスに対して耐性を有することが好ましい。
【0039】
上記機能層2の好ましい材料として挙げた、例えばケイ素を含む材料やチタンを含む材料は、上記の塩素を含有するガスや、この塩素を含有するガスと酸素との混合ガスに対しても耐性を有する材料である。
【0040】
上記機能層2の膜厚は、特に制約はされる必要はない。要するに、本発明の積層体10を用いてインプリントモールドを製造する際、機能層2をエッチングにより掘り込んで形成される凹部の掘り込み深さおよび/または後述する凸部の高さに応じて上記機能層2の膜厚を設計し、成膜すればよい。
【0041】
上記基板1上に上記機能層2を形成する方法は特に制約される必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することが出来るので好適である。
【0042】
また、インプリントモールドを原版として用い、転写対象(被転写体)に対してモールドパターンを転写する場合、インプリントモールドを例えば光学素子用基板に塗布された樹脂(転写対象)に押圧した状態で、前記樹脂を硬化させる工程においては、一般には光照射または加熱により前記樹脂を硬化させる。特に、インプリントモールド側から光照射を行う場合は、インプリントモールドは光透過性を有することが必要である。したがって、インプリントモールド側から光照射を行う場合は、上記基板1上に上記機能層2を積層した状態において、上記基板1および上記機能層2を透過する例えば波長365nmの光の透過率は50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上である。
【0043】
次に、上記エッチングマスク層3について説明する。
上記エッチングマスク層3は、上記機能層2に接して該機能層2上に設けられることが好ましい。すなわち、上記エッチングマスク層3と上記機能層2の間に他の層や膜が介在しないことが好適である。
【0044】
上記エッチングマスク層3は、上記機能層2にモールドパターンを形成するための機能層2をエッチング(掘り込み)加工する際のハードマスク膜としての機能を有する。したがって、上記エッチングマスク層3としては、後の工程のモールドパターンを形成するための上記機能層2のエッチング条件に対して機能層2との間でエッチング選択性を有する材料が選択される。上記したように、上記機能層2は、フッ素含有ガスまたは塩素含有ガスでエッチングされるため、このエッチング条件に対して、上記エッチングマスク層3は耐性を有することが好ましい。本発明においては、上記エッチングマスク層3は、例えば、クロム、タンタル、ジルコニウム、ハフニウムおよびタングステンから選ばれる1つ以上を含む材料で形成されることが好ましい。機能層2が塩素含有ガスでエッチングされる場合には、エッチングマスク層3は、フッ素含有ガスでエッチング可能な材料で形成されることが好ましく、例えば、SiO、SiON、SiNおよびSiのようなケイ素を含有する材料で形成することができる。
【0045】
上記エッチングマスク層3は、例えばクロムを含有する材料で形成されることが好適である。上記機能層2のドライエッチングにはフッ素含有ガスが用いられる場合、上記クロムを含有する材料は、フッ素含有ガスに対して上記機能層2との間でエッチング選択性を有する。また、クロムを含有する材料は、塩素含有ガスで容易にエッチングでき、加工性が優れるため、好ましい。
【0046】
上記クロム(Cr)を含有する材料(クロム系材料)としては、例えばクロム金属、クロム窒化物、クロム炭化物、クロム炭化窒化物およびクロム酸化炭化窒化物などが挙げられる。この場合、上記エッチングマスク層3は、塩素を含有するガスでエッチング可能である。クロム系材料が最も多く含む金属は、クロムであることが好ましい。クロム系材料が含む金属は、好ましくはクロム以外の金属を5原子%以下含み、より好ましくはクロム以外の金属を含まない。塩素を含有するガスでクロム系材料をエッチングする場合のエッチングレートは、ケイ素を含有する材料をフッ素含有ガスでエッチングする場合のエッチングレートよりも高いため、クロム系材料をエッチングマスク層3として用いることで生産性を向上することができる。
【0047】
また、クロムを含む材料以外では、例えば、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、タングステンなどを含む材料(合金、単金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭窒化物、酸化窒化炭化物、同様に合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭窒化物、酸化窒化炭化物)が挙げられる。また、タンタルを含有する材料は、塩素含有ガスおよび/またはフッ素含有ガスで容易にエッチングでき、加工性が優れるため、好ましい。
【0048】
このようなエッチングマスク層3としては、単層でも複数層でもよい。例えば、上記エッチングマスク層3が上記クロム系材料の単層膜よりなる場合が挙げられる。また、例えば上記エッチングマスク層3が少なくとも上層と下層の積層膜よりなり、上層は上記クロム系材料で形成され、下層がタンタル(Ta)を主成分とする材料で形成される場合などが挙げられる。この場合のタンタルを主成分とする材料としては、例えばTaHf、TaZr、TaHfZrなどのTa化合物、あるいはこれらのTa化合物をベース材料として、例えばB、Ge、Nb、Si、C、N等の副材料を加えた材料などがある。また、タンタルを主成分とする材料は、エッチングマスク層3上にレジストパターン形成の際の電子線描画時のチャージアップ防止や、走査型電子顕微鏡(SEM)によるモールドパターン検査が可能となるように、必要な導電性を確保する機能を持たせることができるので好適である。エッチングマスク層3は、膜厚方向にその組成が連続的または段階的に変化する組成傾斜膜であってもよい。
勿論、このようなエッチングマスク層3の構成および材料の例示はあくまでも一例であり、本発明はこれらに制約される必要はない。
【0049】
上記エッチングマスク層3の膜厚は特に制約されないが、例えば2nm以上80nm以下とすることができ、70nm以下であるとより好ましく、60nm以下であるとさらに好ましい。このエッチングマスク層3の膜厚を2nm以上とすることにより、モールドパターン作製時にエッチングマスク層3のパターンをマスクとして機能層2をエッチング加工するときに、加工が終わるまでエッチングマスク層3のパターンを十分残存させることができる。上記エッチングマスク層3の膜厚は5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることがさらに好ましい。一方、このエッチングマスク層3の膜厚を80nm以下とすることにより、微細パターンの形状を良好なものとすることができる。また、機能層2の材質にダメージを与えずにエッチングマスク層3を最後に除去することができる。
【0050】
上記機能層2上に上記エッチングマスク層3を形成する方法は特に制約される必要はないが、なかでもスパッタリング成膜法が好ましく挙げられる。スパッタリング成膜法によると、均一で膜厚の一定な膜を形成することが出来るので好適である。
【0051】
また、本発明の一実施形態の上記積層体10は、上記エッチングマスク層3の上に、後述のレジスト膜を形成した形態であっても構わない。
【0052】
[インプリントモールド]
次に、本発明のインプリントモールドについて説明する。
図2は、本発明に係るインプリントモールドの一実施形態を示す断面図である。
図2に示される本発明の一実施形態のインプリントモールド20は、インプリントモールド用ブランクとして上述の積層体10を用いて作製されたものである。
【0053】
すなわち、上記インプリントモールド20は、基板1と、前記基板1上に形成された所定のモールドパターンを構成する複数の凹部5を有する機能層2a、2b、2cとを備えている。この複数の凹部5の底面は、いずれも上記基板1面が露出している。また、本実施形態のインプリントモールド20では、図示するように、当該機能層2a、2b、2cは、基板1面からの高さがそれぞれ異なる態様である。要するに、本実施形態のインプリントモールド20は、基板1と、前記基板1上に形成された所定のモールドパターンを構成する高さの異なる凹凸構造の機能層2a、2b、2cとを備えている。なお、機能層2a、2b、2cは基板1から突出した形状を有しており、まとめて凸部と呼ぶことがある。インプリントモールド20は、互いに高さの異なる複数の凸部を有することができる。凸部の上面は、いずれも基板の主表面に平行であることができる。凸部の上面とは、機能層2a、2b、2cの基板に接する面と対向する面を指す。また、基板の主表面に平行であるとは、凸部の上面を基準として最小二乗法で定められる平面Aと、基板1の主表面を基準として最小二乗法で定められる平面Bとが平行または略平行であることを意味する。略平行とは、平面Aと平面Bとがなす角度が、10度以下であることを意味する。
【0054】
上記インプリントモールド20は、上述の積層体10を用いて作製されたものである。したがって、上記インプリントモールド20における基板1は、CaO、La2O3、Nb2O5およびBaOのうち少なくともいずれか1つを含むガラス基板である。また、所定のモールドパターンを構成する上記機能層2a、2b、2cは前述のフッ素含有ガスでエッチング可能な材料からなる。上記機能層2a、2b、2cは、塩素含有ガスでエッチング可能な材料からなることもできる。
【0055】
また、上記インプリントモールド20において、上記機能層2a、2b、2cは、上記基板1に接している。
また、上記インプリントモールド20において、上記基板1および上記機能層2a、2b、2cの積層状態での波長365nmの光の透過率は50%以上であることが好適である。
【0056】
また、上記インプリントモールド20において、凹部5の幅寸法は、例えば、10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.8μmがさらに好ましい。また、凹部5の幅寸法は、例えば、3nm以上とすることができるが、10nm以上とすることもでき、100nm以上とすることもできる。
【0057】
また、上記インプリントモールド20において、上記基板1の裏面側に凹部が形成されていてもよい。ここで、裏面とは、基板1の機能層2a、2b、2cが形成されている主表面に対向する、反対の主表面を指す。上記基板1の裏面側に凹部が形成されていることにより、転写対象にモールドパターンをインプリントで転写した後、転写対象からインプリントモールド20を剥離しやすくなるので好適である。
【0058】
[インプリントモールドの製造方法]
次に、本発明のインプリントモールドの製造方法について説明する。
本発明のインプリントモールドの製造方法は、上述の積層体10を用意する工程と、当該積層体10の上記エッチングマスク層3にエッチングマスクパターンを形成する工程と、前記エッチングマスクパターンをマスクとして、当該積層体10の上記機能層2をエッチングする工程と、前記エッチングマスクパターンを除去する工程とを含むものである。
【0059】
以下、本発明のインプリントモールドの製造方法の具体的な実施形態について図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図3の(a)~(i)はインプリントモールドの製造工程の第1の実施形態を説明するための断面図であり、図4の(j)~(p)は図3の工程の続きを示す断面図である。
【0060】
上述の本発明の一実施形態の積層体10の上面に、例えば、液体状の光硬化型樹脂からなるレジスト膜4を塗布する(図3(a)参照)。なお、この場合のレジスト膜4はネガ型のレジストが好ましいが、勿論ポジ型レジストを使用してもよい。
【0061】
次に、レジスト膜4に対し、微細パターン(モールドパターン)をレーザー描画し、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターン4aを形成する(図3(b)参照)。
【0062】
次に、上記レジストパターン4aを形成した積層体10を、ドライエッチング装置に導入し、エッチングガス(例えば塩素系ガス、Cl等)を用いたドライエッチングを行うことにより、上記レジストパターン4aをマスクとしてエッチングマスク層3をエッチング加工して、図3(c)に示すようにエッチングマスクパターン3aを形成する。
【0063】
ここで、ドライエッチング装置からエッチングマスクパターン3aを形成した積層体を一旦取り出して、残存する上記レジストパターン4aを除去する(図3(d)参照)。ここで、残存する上記レジストパターン4aを除去せずに、次の工程を実施してもよい。
なお、積層体10において上記エッチングマスクパターン3a等を形成した状態のものも、説明の便宜上、以下「積層体」と呼ぶ。
【0064】
次いで、同じドライエッチング装置内で、例えばフッ素系ガス(CHF、CF4等)を用いたドライエッチングを行うことにより、上記エッチングマスクパターン3aをマスクとして基板1表面が露出するまで機能層2をエッチング加工して凹部を形成し、図3(e)に示すように、基板1上に凹凸構造の機能層パターン2aを形成する。
本発明においては、基板1表面が露出した凹部の底面においてエッチングによる基板1の加工ダメージ量を無視できるほど小さくすることができる。その結果、上記機能層2をエッチングにより掘り込んで得られる凹部を、精度良く所望の形状に形成することができる。
【0065】
なお、ここで、残存する上記エッチングマスクパターン3aを剥離すれば、複数の凸部の高さが同じ機能層パターン2aを有するインプリントモールドができあがる。
【0066】
次に、上記エッチングマスクパターン3a及び機能層パターン2aを形成した積層体の上面に、再び、レジスト膜4を塗布する(図3(f)参照)。なお、この場合のレジスト膜4は、この後の描画領域を小さくできるように、ポジ型のレジストが好ましく、以下の説明では、ポジ型レジストを使用した場合を説明する。勿論ネガ型レジストを使用してもよい。
【0067】
次に、上記レジスト膜4に対し、所定の領域(本実施形態では機能層パターン2cを形成する領域)をレーザー描画し、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターン4bを形成する(図3(g)参照)。なお、基板1はフッ素含有ガスおよび塩素含有ガスに対して高い耐性を有し、図3(i)の工程において機能層パターン2aをエッチングする際に、基板1の損傷は、生じないあるいは無視できるほどに少ない。したがって、前記所定の領域が、図3(i)の工程においてエッチング対象となる機能層パターン2aが存在する第1の領域と完全に一致するように描画する必要はない。このため、前記所定の領域がこの第1の領域を含んでさえいれば、前記所定の領域が第1の領域より大きくなるように描画することができる。すなわち、本実施形態によれば、1回目の描画(図3(b))と2回目の描画(図3(g))との間でのアライメントを精緻に管理する必要がない。
【0068】
次に、上記レジストパターン4bを形成した積層体を、ドライエッチング装置に導入し、エッチングガス(例えば塩素系ガス、Cl等)を用いたドライエッチングを行うことにより、露出しているエッチングマスクパターン3aを除去する(図3(h)参照)。
【0069】
次いで、例えばフッ素系ガス(CHF、CF4等)を用いたドライエッチングを行うことにより、露出した機能層パターン2aを所定の高さ(深さ)まで掘り込んで、機能層パターン2cを形成する(図3(i)参照)。
【0070】
次に、残存する上記レジストパターン4bを剥離した後(図4(j)参照)、積層体の上面に、再び、レジスト膜4を塗布する(図4(k)参照)。なお、この場合のレジスト膜4についても、この後の描画領域を小さくできるように、ポジ型のレジストが好ましく、以下の説明では、ポジ型レジストを使用した場合を説明する。勿論ネガ型レジストを使用してもよい。
【0071】
次に、上記レジスト膜4に対し、所定の領域(本実施形態では機能層パターン2bを形成する領域)をレーザー描画し、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターン4cを形成する(図4(l)参照)。ここでも、上述と同様に、1、2回目の描画(図3(b)、(g))と3回目の描画(図4(l))との間でアライメントを精緻に管理する必要はない。
【0072】
次に、上記レジストパターン4cを形成した積層体を、ドライエッチング装置に導入し、エッチングガス(例えば塩素系ガス、Cl等)を用いたドライエッチングを行うことにより、露出しているエッチングマスクパターン3aを除去する(図4(m)参照)。
【0073】
次いで、例えばフッ素系ガス(CHF、CF4等)を用いたドライエッチングを行うことにより、露出した機能層パターン2aを所定の高さ(深さ)まで掘り込んで、機能層パターン2bを形成する(図4(n)参照)。
【0074】
次に、残存する上記レジストパターン4cを剥離した後(図4(o)参照)、さらに、機能層パターン2a上に残存する上記エッチングマスクパターン3aを除去することにより、図4(p)に示すような、基板1と、前記基板1上に形成された所定のモールドパターンを構成する高さの異なる凹凸構造の機能層2a、2b、2cとを備えたインプリントモールド20が出来上がる。
【0075】
<第2の実施形態>
図5の(a)~(i)はインプリントモールドの製造工程の第2の実施形態を説明するための断面図であり、図6の(j)~(o)は図5の工程の続きを示す断面図である。
【0076】
上述の本発明の一実施形態の積層体10の上面に、レジスト膜4を塗布する(図5(a)参照)。なお、この場合のレジスト膜4はネガ型のレジストが好ましいが、勿論ポジ型レジストを使用してもよい。
【0077】
次に、レジスト膜4に対し、微細パターン(モールドパターン)をレーザー描画し、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターン4aを形成する(図5(b)参照)。
【0078】
次に、上記レジストパターン4aを形成した積層体を、ドライエッチング装置に導入し、エッチングガス(例えば塩素系ガス、Cl等)を用いたドライエッチングを行うことにより、上記レジストパターン4aをマスクとしてエッチングマスク層3をエッチング加工して、図5(c)に示すようにエッチングマスクパターン3aを形成する。
【0079】
ここで、ドライエッチング装置からエッチングマスクパターン3aを形成した積層体を一旦取り出して、残存する上記レジストパターン4aを除去する(図5(d)参照)。ここで、残存する上記レジストパターン4aを除去せずに、次の工程を実施してもよい。
【0080】
次いで、同じドライエッチング装置内で、例えばフッ素系ガス(CHF、CF4等)を用いたドライエッチングを行うことにより、上記エッチングマスクパターン3aをマスクとして基板1表面が露出するまで機能層2をエッチング加工して凹部を形成し、図5(e)に示すように、基板1上に凹凸構造の機能層パターン2aを形成する。
前述したように、本発明においては、基板1表面が露出した凹部の底面においてエッチングによる基板1の加工ダメージ量を無視できるほど小さくすることができる。その結果、上記機能層2をエッチングにより掘り込んで得られる凹部を、精度良く所望の形状に形成することができる。
【0081】
なお、ここで、残存する上記エッチングマスクパターン3aを剥離すれば、複数の凸部の高さが同じ機能層パターン2aを有するインプリントモールドができあがる。
【0082】
次に、上記エッチングマスクパターン3a及び機能層パターン2aを形成した積層体の上面に、再び、レジスト膜4を塗布する(図5(f)参照)。なお、この場合のレジスト膜4は、この後の描画領域を小さくできるように、ポジ型のレジストが好ましく、以下の説明では、ポジ型レジストを使用した場合を説明する。勿論ネガ型レジストを使用してもよい。
【0083】
次に、上記レジスト膜4に対し、所定の領域(本実施形態では機能層パターン2bおよび2cを形成する領域)をレーザー描画し、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターン4dを形成する(図5(g)参照)。ここでも上述と同様に、描画間でのアライメントを精緻に管理する必要はない。
【0084】
次に、上記レジストパターン4dを形成した積層体を、ドライエッチング装置に導入し、エッチングガス(例えば塩素系ガス、Cl等)を用いたドライエッチングを行うことにより、露出しているエッチングマスクパターン3aを除去する(図5(h)参照)。
【0085】
次いで、例えばフッ素系ガス(CHF、CF4等)を用いたドライエッチングを行うことにより、露出した機能層パターン2aを所定の高さ(深さ)まで掘り込んで、機能層パターン2bを形成する(図5(i)参照)。
【0086】
次に、残存する上記レジストパターン4dを剥離した後(図6(j)参照)、積層体の上面に、再び、レジスト膜4を塗布する(図6(k)参照)。なお、この場合のレジスト膜4についても、この後の描画領域を小さくできるように、ポジ型のレジストが好ましく、以下の説明では、ポジ型レジストを使用した場合を説明する。勿論ネガ型レジストを使用してもよい。
【0087】
次に、上記レジスト膜4に対し、所定の領域(本実施形態では機能層パターン2cを形成する領域)をレーザー描画し、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターン4eを形成する(図6(l)参照)。ここでも上述と同様に、描画間でのアライメントを精緻に管理する必要はない。
【0088】
次に、上記レジストパターン4eを形成した積層体を、ドライエッチング装置に導入し、例えばフッ素系ガス(CHF、CF4等)を用いたドライエッチングを行うことにより、露出した機能層パターン2bを所定の高さ(深さ)まで掘り込んで、機能層パターン2cを形成する(図6(m)参照)。
【0089】
次に、残存する上記レジストパターン4eを剥離した後(図6(n)参照)、さらに、機能層パターン2a上に残存する上記エッチングマスクパターン3aを除去することにより、図6(o)に示すような、基板1と、前記基板1上に形成された所定のモールドパターンを構成する高さの異なる凹凸構造の機能層2a、2b、2cとを備えたインプリントモールド20が出来上がる。
【0090】
<第3の実施形態>
図7の(a)~(i)はインプリントモールドの製造工程の第3の実施形態を説明するための断面図であり、図8の(j)~(o)は図7の工程の続きを示す断面図である。
【0091】
上述の本発明の一実施形態の積層体10の上面に、レジスト膜4を塗布する(図7(a)参照)。なお、この場合のレジスト膜4はネガ型のレジストが好ましいが、勿論ポジ型レジストを使用してもよい。
【0092】
次に、レジスト膜4に対し、微細パターン(モールドパターン)をレーザー描画し、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターン4aを形成する(図7(b)参照)。
【0093】
次に、上記レジストパターン4aを形成した積層体を、ドライエッチング装置に導入し、エッチングガス(例えば塩素系ガス、Cl等)を用いたドライエッチングを行うことにより、上記レジストパターン4aをマスクとしてエッチングマスク層3をエッチング加工して、図7(c)に示すようにエッチングマスクパターン3aを形成する。
【0094】
ここで、ドライエッチング装置からエッチングマスクパターン3aを形成した積層体を一旦取り出して、残存する上記レジストパターン4aを除去する(図7(d)参照)。ここで、残存する上記レジストパターン4aを除去せずに、次の工程を実施してもよい。
【0095】
次いで、同じドライエッチング装置内で、例えばフッ素系ガス(CHF、CF4等)を用いたドライエッチングを行うことにより、上記エッチングマスクパターン3aをマスクとして基板1表面が露出するまで機能層2をエッチング加工して凹部を形成し、図7(e)に示すように、基板1上に凹凸構造の機能層パターン2aを形成する。
前述したように、本発明においては、基板1表面が露出した凹部の底面においてエッチングによる基板1の加工ダメージ量を無視できるほど小さくすることができる。その結果、上記機能層2をエッチングにより掘り込んで得られる凹部を、精度良く所望の形状に形成することができる。
【0096】
なお、ここで、残存する上記エッチングマスクパターン3aを剥離すれば、複数の凸部の高さが同じ機能層パターン2aを有するインプリントモールドができあがる。
【0097】
次に、上記エッチングマスクパターン3a及び機能層パターン2aを形成した積層体の上面に、再び、レジスト膜4を塗布する(図7(f)参照)。なお、この場合のレジスト膜4は、この後の描画領域を小さくできるように、ポジ型のレジストが好ましく、以下の説明では、ポジ型レジストを使用した場合を説明する。勿論ネガ型レジストを使用してもよい。
【0098】
次に、上記レジスト膜4に対し、所定の領域(本実施形態では機能層パターン2bおよび2cを形成する領域を含む領域)をレーザー描画し、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターン4fを形成する(図7(g)参照)。ここでも上述と同様に、描画間でのアライメントを精緻に管理する必要はない。
【0099】
次に、上記レジストパターン4fを形成した積層体を、ドライエッチング装置に導入し、エッチングガス(例えば塩素系ガス、Cl等)を用いたドライエッチングを行うことにより、露出しているエッチングマスクパターン3aを除去する(図7(h)参照)。
【0100】
次いで、例えばフッ素系ガス(CHF、CF4等)を用いたドライエッチングを行うことにより、露出した機能層パターン2aを所定の高さ(深さ)まで掘り込んで、機能層パターン2bを形成する(図7(i)参照)。
【0101】
次に、残存する上記レジストパターン4fを剥離した後(図8(j)参照)、積層体の上面に、再び、レジスト膜4を塗布する(図8(k)参照)。なお、この場合のレジスト膜4についても、この後の描画領域を小さくできるように、ポジ型のレジストが好ましく、以下の説明では、ポジ型レジストを使用した場合を説明する。勿論ネガ型レジストを使用してもよい。
【0102】
次に、上記レジスト膜4に対し、所定の領域(本実施形態では機能層パターン2cを形成する領域を含む領域)をレーザー描画し、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターン4gを形成する(図8(l)参照)。ここでも上述と同様に、描画間でのアライメントを精緻に管理する必要はない。
【0103】
次に、上記レジストパターン4gを形成した積層体を、ドライエッチング装置に導入し、例えばフッ素系ガス(CHF、CF4等)を用いたドライエッチングを行うことにより、露出した機能層パターン2bを所定の高さ(深さ)まで掘り込んで、機能層パターン2cを形成する(図8(m)参照)。
【0104】
次に、残存する上記レジストパターン4gを剥離した後(図8(n)参照)、さらに、機能層パターン2a上に残存する上記エッチングマスクパターン3aを除去することにより、図8(o)に示すような、基板1と、前記基板1上に形成された所定のモールドパターンを構成する高さの異なる凹凸構造の機能層2a、2b、2cとを備えたインプリントモールド20が出来上がる。
【0105】
[光学素子の製造方法、電子部品の製造方法]
本発明は、光学素子の製造方法および電子部品の製造方法についても提供するものである。
すなわち、前述の本発明の積層体を用いて製造されたインプリントモールド、または前述の本発明のインプリントモールドを用意する工程と、前記インプリントモールドを光学素子用基板に塗布された樹脂(転写対象)に押圧した状態で、前記樹脂を硬化させる工程と、前記インプリントモールドを前記樹脂から分離する工程と、を含む光学素子の製造方法である。
【0106】
また、前述の本発明の積層体を用いて製造されたインプリントモールド、または前述の本発明のインプリントモールドを用意する工程と、前記インプリントモールドを電子部品用基板に塗布された樹脂(転写対象)に押圧した状態で、前記樹脂を硬化させる工程と、前記インプリントモールドを前記樹脂から分離する工程と、を含む電子部品の製造方法である。
【0107】
図9は、インプリントによる転写対象へのパターン転写を説明するための断面図である。
本発明により得られる上述のインプリントモールド(マスターモールド)20を、被転写体(転写対象)の樹脂(例えば光硬化型樹脂や熱硬化型樹脂)40に直接押し付け、このインプリントモールド20を樹脂40に押圧した状態で、前記樹脂40を硬化させる(図9(a)、(b)参照)。光硬化型樹脂を用いる場合、光照射はモールド側、樹脂側のいずれからでもよい。
【0108】
この樹脂40は、別の基板、例えば被転写体構成層(光学素子用基板や電子部品用基板(例えばシリコンウェハ))上に塗布されてもよい。また、樹脂40をインプリントモールド20上に塗布してもよい。
次いで、上記インプリントモールド20を上記樹脂40から分離(離型)することにより、図9(c)に示すような、インプリントモールド20のモールドパターンが転写された転写体30が得られる。
なお、上記インプリントモールド20のモールドパターンを上記樹脂40に転写することにより、マスターモールドからレプリカモールドを作製することもできる。
【0109】
本発明により得られるインプリントモールド20を用いることにより、転写対象に高精度のモールドパターンを精度良く転写することができるため、高精度の微細パターンが形成された光学素子や電子部品を製造することができる。
【0110】
以上説明したように、本発明によれば、設計工程や製造工程を複雑化することなく、高精度に所望の凹凸形状を得られるインプリントモールド用ブランクとして好適に用いられる積層体を提供することができる。
また、本発明によれば、上記の積層体を用いて作製された、高精度のモールドパターンを有するインプリントモールドおよびその製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、上記のインプリントモールドを用いて、高精度の微細パターンが形成された光学素子の製造方法および電子部品の製造方法を提供することができる。
【実施例0111】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
[積層体の作製]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.25mmのガラスからなる基板を準備した。この実施例1で用いる基板は、CaO、La2O3、Nb2O5およびBaOのうち少なくともいずれか1つを含む基板であり、その組成の詳細は後記表1に示した。
【0112】
まず、上記基板上に、ケイ素および酸素からなる機能層(SiO層 Si:O=34原子%:66原子%)を100nmの厚さで形成した。この機能層は、枚葉式RFスパッタ装置内に上記基板を設置し、SiOターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとし、RF電源による反応性スパッタリング(RFスパッタリング)によって形成した。
【0113】
次に、上記機能層の上に、クロムおよび窒素からなるエッチングマスク層(CrN層 Cr:N=75原子%:25原子%)を50nmの厚さで形成した。このエッチングマスク層は、枚葉式DCスパッタ装置内に上記機能層を成膜した基板を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとし、DC電源による反応性スパッタリング(DCスパッタリング)によって形成した。
以上のようにして、上記基板上に上記機能層および上記エッチングマスク層を成膜してなる実施例1の積層体を作製した。
【0114】
[インプリントモールドの作製]
上記の積層体の上面に、液体状の光硬化型樹脂からなるネガ型レジスト膜を塗布した。
次に、このレジスト膜に対し、所定の微細パターン(モールドパターン)をレーザー描画し、描画後、レジスト膜を現像してレジストパターンを形成した。
【0115】
次に、上記レジストパターンを形成した積層体を、ドライエッチング装置に導入し、塩素系ガス(塩素ガス(Cl)および酸素ガス(O)の混合ガス)を用いたドライエッチングを行うことにより、上記レジストパターンをマスクとして上記エッチングマスク層をエッチング加工して、エッチングマスクパターンを形成した。
【0116】
ここで、ドライエッチング装置からエッチングマスクパターンを形成した積層体を一旦取り出して、残存する上記レジストパターンを除去した。
【0117】
次いで、同じドライエッチング装置内で、CHFおよびCFを含む混合ガス(流量比でCHF:CF=1:2.5)を用いたドライエッチングを行うことにより、上記エッチングマスクパターンをマスクとして基板表面が露出するまで上記機能層をエッチングして凹部を形成し、前述の図3(e)に示すように、基板上に凹凸構造の機能層パターンを形成した。ここでは、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いた。なお、このときのエッチング条件は、プラズマ励起パワーとしてのICPパワー425W、RFパワー(バイアス電力)125W、圧力5mTorrとした。
さらに、残存する上記エッチングマスクパターンを剥離し、基板上に複数の凸部の高さが同じ機能層パターンを有するインプリントモールドを作製した。
【0118】
(実施例2~9)
後記表1に示す実施例2~9のガラス組成の基板をそれぞれ用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、基板上に上記機能層および上記エッチングマスク層を成膜してなる実施例2~9の積層体を作製した。
次いで、これら実施例2~9の積層体をそれぞれ用いて、上記実施例1と同様の方法、同じエッチング条件で、基板表面が露出するまで上記機能層をエッチングして凹部を形成し、基板上に複数の凸部の高さが同じ機能層パターンを有する実施例2~9のインプリントモールドを作製した。
【0119】
(比較例)
後記表1に示す比較例の合成石英基板(SiO)を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、基板上に上記機能層および上記エッチングマスク層を成膜してなる比較例の積層体を作製した。
次いで、この比較例の積層体を用いて、上記実施例1と同様の方法、同じエッチング条件で、基板表面が露出するまで上記機能層をエッチングして凹部を形成し、基板上に複数の凸部の高さが同じ機能層パターンを有する比較例のインプリントモールドを作製した。
【0120】
【表1】
【0121】
<評価>
得られた実施例1~9および比較例の各インプリントモールドの凹部において、基板の加工ダメージ量を測定した。その結果は以下のとおりである。
実施例1:69.7nm、実施例2:90nm、実施例3:97nm、実施例4:145nm、実施例5:202nm、実施例6:269nm、実施例7:662nm、実施例8:663.1nm、実施例9:674nm
比較例:2452nm
【0122】
上記の結果から明らかなように、各実施例において、基板の加工ダメージ量を、比較例の合成石英基板(SiO)の加工ダメージ量の30%未満にまで大幅に低減することができた。本発明の実施例においては、基板表面が露出した凹部の底面において機能層のエッチングによる基板の加工ダメージ量を無視できるほど小さくすることができた。その結果、上記機能層をエッチングにより掘り込んで得られる凹部を、精度良く所望の形状に形成することができた。なお、実施例の基板に対する機能層のエッチング選択比は、いずれも2.5以上であった。これに対し、比較例においては、基板の加工ダメージ量が大きく、凹部を所望の形状に形成することはできなかった。また、比較例においては、凹部の底面の表面あれが生じ、波長365nmの光の透過率も大きく低下していた。
【0123】
また、別の実施態様として、上記機能層として、SiON、Si、TiOを用いた積層体をそれぞれ作製し、上記と同様に機能層をエッチングしてインプリントモールドを作製したところ、機能層としてSiOを用いた場合と同様に、実施例の基板のダメージは無視できるほど小さく、比較例の基板ではダメージが大きかった。また、実施例の基板に対する各機能層のエッチング選択比は、いずれも2.5以上であった。
【0124】
また、上記実施例1~9で得られたインプリントモールドをマスターモールドとして用いて光インプリントリソグラフィを行い、レプリカモールドを作製したところ(前述の図9を参照)、精度良く所望の形状を有するレプリカモールドが得られた。一方、比較例のインプリントモールドを用いても、所望の形状を有するレプリカモールドは得られなかった。
【0125】
以上説明したように、本発明の実施例によれば、設計工程や製造工程を複雑化することなく、高精度の所望の形状のモールドパターンを有するインプリントモールドが得られる。また、このインプリントモールドを用いて、精度良く所望の形状を有するレプリカモールドが得られ、また高精度の微細パターンが形成された光学素子や電子部品等を作製することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 基板
2 機能層
2a,2b,2c 機能層(凸部)
3 エッチングマスク層
4 レジスト膜
5 凹部
10 積層体
20 インプリントモールド(マスターモールド)
30 転写体
40 樹脂(転写対象)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9