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特開2024-137459パラキシレン製造用触媒群、パラキシレン製造用触媒群の製造方法、およびパラキシレンの製造方法
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  • 特開-パラキシレン製造用触媒群、パラキシレン製造用触媒群の製造方法、およびパラキシレンの製造方法 図1
  • 特開-パラキシレン製造用触媒群、パラキシレン製造用触媒群の製造方法、およびパラキシレンの製造方法 図2
  • 特開-パラキシレン製造用触媒群、パラキシレン製造用触媒群の製造方法、およびパラキシレンの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137459
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】パラキシレン製造用触媒群、パラキシレン製造用触媒群の製造方法、およびパラキシレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/48 20060101AFI20240927BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240927BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20240927BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20240927BHJP
   B01J 35/51 20240101ALI20240927BHJP
   C01B 39/38 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20240927BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B01J29/48 M
B01J37/08
B01J37/10
B01J37/03 B
B01J35/08 Z
C01B39/38
C07C1/04
C07C15/08
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048987
(22)【出願日】2023-03-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/化学品へのCO2利用技術開発/CO2を原料としたパラキシレン製造に関する技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598152091
【氏名又は名称】ハイケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 理華
(72)【発明者】
【氏名】中尾 憲治
(72)【発明者】
【氏名】椿 範立
(72)【発明者】
【氏名】吉本 亮介
(72)【発明者】
【氏名】兪 琳
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G073BD15
4G073CB08
4G073CZ13
4G073FC03
4G073FD21
4G073FD23
4G073UA01
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA15
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB05C
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC58A
4G169BC58B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169CB66
4G169CC23
4G169DA06
4G169EC26
4G169EE01
4G169FB09
4G169FB14
4G169FB30
4G169FB57
4G169FB61
4G169FC08
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZD03
4G169ZD09
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA07
4H006BA14
4H006BA16
4H006BA19
4H006BA30
4H006BA33
4H006BA71
4H006BA81
4H006BC13
4H006BC32
4H006BE20
4H006BE40
4H006DA12
4H039CA41
4H039CH40
(57)【要約】
【課題】一酸化炭素と水素とを原料として用いてパラキシレンを効率よく製造可能なパラキシレン製造用触媒群、パラキシレン製造用触媒群の製造方法およびパラキシレンの製造方法を提供する。
【解決手段】クロムと亜鉛の二元系複合酸化物を含む第1の触媒と、表面が非晶質のケイ素を含む酸化物により被覆されたH-ZSM-5ゼオライトを含む第2の触媒と、鉄とマンガンの二元系複合酸化物を含む第3の触媒と、を含み、前記第1の触媒、前記第2の触媒、および前記第3の触媒のうち、少なくとも前記第1の触媒と前記第2の触媒とが混合された造粒物として存在する、パラキシレン製造用触媒群、並びにその製造方法及びそれを用いたパラキシレンの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロムと亜鉛の二元系複合酸化物を含む第1の触媒と、
表面が非晶質のケイ素を含む酸化物により被覆されたH-ZSM-5ゼオライトを含む第2の触媒と、
鉄とマンガンの二元系複合酸化物を含む第3の触媒と、を含み、
前記第1の触媒、前記第2の触媒、および前記第3の触媒のうち、少なくとも前記第1の触媒と前記第2の触媒とが混合された造粒物として存在する、パラキシレン製造用触媒群。
【請求項2】
前記第1の触媒は、前記第1の触媒に含まれる全金属量に対して、クロムが30質量%以上70質量%以下、および亜鉛が30質量%以上70質量%以下含まれ、かつ、
前記第3の触媒は、前記第3の触媒に含まれる全金属量に対して、鉄が90質量%以上99質量%以下、およびマンガンが1質量%以上10質量%以下含まれる、請求項1に記載のパラキシレン製造用触媒群。
【請求項3】
前記第1の触媒に対し、前記第2の触媒が10質量%以上1000質量%以下含まれ、かつ、
前記第1の触媒、前記第2の触媒、および前記第3の触媒の全量に対し、前記第3の触媒が0.1質量%以上含まれる、請求項1に記載のパラキシレン製造用触媒群。
【請求項4】
一酸化炭素および水素を請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のパラキシレン製造用触媒群に接触させて、パラキシレンを合成する工程を含む、パラキシレンの製造方法。
【請求項5】
前記一酸化炭素および前記水素の流れ方向に対し、前記第3の触媒を上流側に、前記第1の触媒と前記第2の触媒とが混合された前記造粒物を下流側にそれぞれ配置し、前記一酸化炭素および前記水素を前記第3の触媒に接触させた後のガスを前記造粒物に接触させて、前記パラキシレンを合成する、請求項4に記載のパラキシレンの製造方法。
【請求項6】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のパラキシレン製造用触媒群を製造する方法であって、
共沈法により、クロムと亜鉛を含む複合水酸化物を得て、前記クロムと亜鉛を含む複合水酸化物を乾燥および焼成のいずれか一方又は両方を行って前記第1の触媒を得る工程と、
ケイ素化合物とH-ZSM-5ゼオライトとの存在下で水熱合成又は加熱を行い、前記表面が非晶質のケイ素を含む酸化物により被覆されたH-ZSM-5ゼオライトを含む前記第2の触媒を得る工程と、
共沈法により、鉄とマンガンを含む複合水酸化物を得て、前記鉄とマンガンを含む複合水酸化物を乾燥および焼成のいずれか一方又は両方を行って前記第3の触媒を得る工程と、
前記第1の触媒、前記第2の触媒、および前記第3の触媒のうち、少なくとも前記第1の触媒と前記第2の触媒とを混合して造粒することにより前記造粒物を得る工程と、
を含む、パラキシレン製造用触媒群の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パラキシレン製造用触媒群、パラキシレン製造用触媒群の製造方法、およびパラキシレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化への関心が高まっている。温室効果ガス排出削減等の国際的枠組みを協議するCOP(Conference of the Parties)では、世界共通の長期目標として産業革命前からの平均気温の上昇を2℃よりも十分下方に保持することを目的とし、排出ピークをできるだけ早期に抑え、最新の科学に従って急激に削減することが目標とされている。COP21パリ協定では、全ての国が長期の温室効果ガス低排出開発戦略を策定・提出するように努めるべきとされており、我が国では長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すことが策定された。人為的に排出されている温室効果ガスの中では、二酸化炭素の影響量が最も大きいと見積もられており、二酸化炭素削減のための対策技術開発が各所で精力的に行われている。
対策技術の一つとして、排出された二酸化炭素を有用物に変換する幾つかの試みが提案されているが、二酸化炭素を別の物質に変換させるためには大きなエネルギーが必要であり、反応を促進させるための有効な触媒の開発が望まれている。
【0003】
また、二酸化炭素削減に資する技術とするためには、需要の多い有用物を製造する必要がある。パラキシレンは、汎用樹脂であるポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate:PET)の原料として有用な化合物である。このような化合物を二酸化炭素と水素から効率よく製造することが可能であれば、二酸化炭素の削減のための有用な方策となり得る。
【0004】
従来、パラキシレンは、原油、ナフサからの改質により製造されてきた。一方で、従来の製造方法では、大量の二酸化炭素が排出される問題があった。
そこで、一酸化炭素と水素の混合ガス、いわゆる合成ガスを原料として、パラキシレンを製造する技術が提案されている(例えば、非特許文献1)。この技術が確立されれば、二酸化炭素の排出が抑制されるのに加え、バイオマス由来の合成ガスなども利用することができ、より環境に低負荷な有用化成品の合成方法となる。非特許文献1に開示されている技術は、合成ガスからメタノールを合成するための触媒として、ZnCrスピネル構造の触媒を用い、メタノールからパラキシレンを合成するための触媒として、亜鉛ドープH-ZSM-5ゼオライトにシリカライト-1を被覆した触媒を用いる。そして、これらの触媒が存在する系において、合成ガスを導入することにより、1段階でのパラキシレンの合成が可能となることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Peipei Zhang et al., Chemical Science, The Royal Society of Chemistry, 2017年10月, 第8巻, 7941~7946頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一酸化炭素と水素とを原料として用いてパラキシレンを効率よく製造するためには、触媒の改良及び製造方法の改良を行う余地があった。
【0007】
そこで、本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、一酸化炭素と水素とを原料として用いてパラキシレンを効率よく製造可能なパラキシレン製造用触媒群、パラキシレン製造用触媒群の製造方法およびパラキシレンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の要旨は、以下に記す通りである。
【0009】
<1> クロムと亜鉛の二元系複合酸化物を含む第1の触媒と、
表面が非晶質のケイ素を含む酸化物により被覆されたH-ZSM-5ゼオライトを含む第2の触媒と、
鉄とマンガンの二元系複合酸化物を含む第3の触媒と、を含み、
前記第1の触媒、前記第2の触媒、および前記第3の触媒のうち、少なくとも前記第1の触媒と前記第2の触媒とが混合された造粒物として存在する、パラキシレン製造用触媒群。
<2> 前記第1の触媒は、前記第1の触媒に含まれる全金属量に対して、クロムが30質量%以上70質量%以下、および亜鉛が30質量%以上70質量%以下含まれ、かつ、
前記第3の触媒は、前記第3の触媒に含まれる全金属量に対して、鉄が90質量%以上99質量%以下、およびマンガンが1質量%以上10質量%以下含まれる、<1>に記載のパラキシレン製造用触媒群。
<3> 前記第1の触媒に対し、前記第2の触媒が10質量%以上1000質量%以下含まれ、かつ、
前記第1の触媒、前記第2の触媒、および前記第3の触媒の全量に対し、前記第3の触媒が0.1質量%以上含まれる、<1>または<2>に記載のパラキシレン製造用触媒群。
<4> 一酸化炭素および水素を<1>~<3>のいずれか一つに記載のパラキシレン製造用触媒群に接触させて、パラキシレンを合成する工程を含む、パラキシレンの製造方法。
<5> 前記一酸化炭素および前記水素の流れ方向に対し、前記第3の触媒を上流側に、前記第1の触媒と前記第2の触媒とが混合された前記造粒物を下流側にそれぞれ配置し、前記一酸化炭素および前記水素を前記第3の触媒に接触させた後のガスを前記造粒物に接触させて、前記パラキシレンを合成する、<4>に記載のパラキシレンの製造方法。
<6> <1>~<3>のいずれか一つに記載のパラキシレン製造用触媒群を製造する方法であって、
共沈法により、クロムと亜鉛を含む複合水酸化物を得て、前記クロムと亜鉛を含む複合水酸化物を乾燥および焼成のいずれか一方又は両方を行って前記第1の触媒を得る工程と、
ケイ素化合物とH-ZSM-5ゼオライトとの存在下で水熱合成又は加熱を行い、前記表面が非晶質のケイ素を含む酸化物により被覆されたH-ZSM-5ゼオライトを含む前記第2の触媒を得る工程と、
共沈法により、鉄とマンガンを含む複合水酸化物を得て、前記鉄とマンガンを含む複合水酸化物を乾燥および焼成のいずれか一方又は両方を行って前記第3の触媒を得る工程と、
前記第1の触媒、前記第2の触媒、および前記第3の触媒のうち、少なくとも前記第1の触媒と前記第2の触媒とを混合して造粒することにより前記造粒物を得る工程と、
を含む、パラキシレン製造用触媒群の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、一酸化炭素と水素とを原料として用いてパラキシレンを効率よく製造可能なパラキシレン製造用触媒群、パラキシレン製造用触媒群の製造方法およびパラキシレンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示に係るパラキシレン製造用触媒群の形態の一例を模式的に示す図である。
図2】実施例におけるパラキシレン製造用触媒群の形態を模式的に示す図である。
図3】比較例におけるパラキシレン製造用触媒群の形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一例である実施形態について説明する。
なお、本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
触媒に含まれる元素の含有量について、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値、あるいは、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値、あるいは、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本開示の発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、従来用いられていたZnCrスピネル構造の第1の触媒と、H-ZSM-5ゼオライトに非晶質のケイ素を含む酸化物が被覆した第2の触媒に、新たに第3の触媒としてFeMn複合酸化物を添加することで、パラキシレンの前駆体となるアルケンの生産性が高められ、最終的なパラキシレン製造の生産性も高められるのではないかと考えて鋭意検討したところ、上記第1の触媒と第2の触媒を混合した造粒物とし、さらに上記第3の触媒を添加することで高いパラキシレンの生産性を示すことを見出した。
【0014】
具体的には、例えば、ZnCrスピネル構造の第1の触媒と、H-ZSM-5ゼオライトに非晶質のケイ素を含む酸化物が被覆した第2の触媒との造粒物と、FeMn複合酸化物の第3の触媒とを混合したものを反応器に充填して一酸化炭素と水素からパラキシレンを製造する。従来は、ZnCrスピネル構造の第1の触媒とH-ZSM-5ゼオライトに非晶質のケイ素を含む酸化物を被覆した第2の触媒のみを用いていたが、本開示の発明者らは、新たにFeMn複合酸化物を添加することにより、炭素―炭素結合形成反応が促進され、パラキシレンの前駆体であるアルケンの生成が促進されて最終的なパラキシレンの生産性が高くなることを見出し、本開示の発明に至った。
【0015】
本開示の発明者らは、上記のような検討により得られた知見を踏まえ、さらに検討を行った結果、一酸化炭素と水素の流れに対し、第三の触媒であるFeMn複合酸化物を上層(上流側)に、第1の触媒および第2の触媒が物理的に混合された触媒を下層(下流側)に充填した反応装置を用いることで、パラキシレンの生産性がより向上することも見出した。
なお、本明細書において各触媒の配置に関し、パラキシレンの合成の原料となるガス(一酸化炭素および水素)の流れ方向に対し、上流側を「上層」又は「上段」と記し、下流側を「下層」又は「下段」と記す場合がある。
【0016】
以下、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
<1.パラキシレン製造用触媒群>
まず、本開示のパラキシレン製造用触媒群の好適な実施形態について説明する。
本開示に係るパラキシレン製造用触媒群は、一酸化炭素および水素を原料とした炭化水素化合物、特にパラキシレンの合成反応を触媒する。本開示に係るパラキシレン製造用触媒群は、クロムと亜鉛の二元系複合酸化物を含む第1の触媒と、表面が非晶質のケイ素を含む酸化物により被覆されたH-ZSM-5ゼオライトを含む第2の触媒と、鉄とマンガンの二元系複合酸化物を含む第3の触媒とを含む。そして、第1の触媒、第2の触媒、および第3の触媒のうち、少なくとも第1の触媒と第2の触媒は混合された造粒物として存在する。
【0018】
クロムと亜鉛の二元系複合酸化物を含む第1の触媒は、一酸化炭素および水素からメタノールへの変換を触媒する。一方で、表面が非晶質のケイ素を含む酸化物により被覆されたH-ZSM-5ゼオライトを含む第2の触媒は、メタノールからのパラキシレンへの変換を触媒する。さらに、鉄とマンガンの二元系複合酸化物を含む第3の触媒は、一酸化炭素および水素からの炭素―炭素形成反応を触媒し、メタノールと同様にパラキシレンの前駆体となるアルケンの生成を促進する。
【0019】
なお、本明細書における「触媒群」とは、上記のように機能が異なる3種の触媒、すなわち、第1の触媒、第2の触媒、および第3の触媒が組み合わされて構成されていることを意味し、本開示に係るパラキシレン製造用触媒群は、第1の触媒と第2の触媒が混合された造粒物として存在するが、第3の触媒は、第1の触媒および第2の触媒とともに混合された造粒物と存在してもよいし、第1の触媒と第2の触媒とが混合された造粒物とは別体として存在してもよい。また、「造粒物」、例えば「第1の触媒と第2の触媒とが混合された造粒物」とは、第1の触媒と第2の触媒とが1つの粒子内に混合して存在していることを意味する。
【0020】
図1は、本開示に係るパラキシレン製造用触媒群の形態の一例を模式的に示しており、第1の触媒10と、第2の触媒20と、第3の触媒30が混合された造粒物として存在している。図2は、パラキシレン製造用触媒群の3つの形態を模式的に示す図である。図2の形態(a)では、反応器40内に第1の触媒10と、第2の触媒20と、第3の触媒30が混合された造粒物が配置されている。図2の形態(b)および(c)は、第3の触媒が、第1の触媒と第2の触媒が混合された造粒物とは別体として存在している。図2(b)に示されるように、第3の触媒30は、第1の触媒10と第2の触媒20とが混合された造粒物と混合されて存在してもよいし、図2の形態(c)に示されるように、第3の触媒は、第1の触媒10と第2の触媒20が混合された造粒物とは混合せずに物理的に離れて存在してもよい。
【0021】
一方、図3の(d)および(e)に示す形態では、第1の触媒10と第2の触媒20とが混合された造粒物として存在していない。これらの形態では、パラキシレンの収率の向上が見られず、本開示に係るパラキシレン製造用触媒群には含まれない。
【0022】
(1.1. 第1の触媒)
上述したように、第1の触媒は、クロムと亜鉛の二元系複合酸化物であり、一酸化炭素および水素からメタノールへの変換を触媒する。ここで、クロムと亜鉛の二元系複合酸化物は酸素欠陥を有することから、クロムと亜鉛の二元系複合酸化物の表面に一酸化炭素が吸着しやすく、クロムと亜鉛の二元系複合酸化物に吸着された一酸化炭素と水素との反応が効率よく生じ、メタノールが効率よく生成される。
【0023】
第1の触媒に含まれるクロムと亜鉛の二元系複合酸化物には、ZnCrが挙げられる。ZnCrは、良好な触媒作用を有するとともに、触媒反応が生じる環境下において安定であることから、好ましい。
【0024】
第1の触媒は、クロムと亜鉛の二元系複合酸化物を主体として構成される。一方で、第1の触媒の製造に起因した他の化合物や、第1の触媒の担持に用いる担体に由来する化合物が、第1の触媒中に含まれていてもよい。
第1の触媒は、好ましくは全金属量に対してクロムが30質量%以上70質量%以下含まれ、より好ましくは全金属量に対してクロムが40質量%以上、60質量%以下含まれる。さらに、好ましくは全金属量に対して亜鉛が30質量%以上%以下70質量%以下含まれ、より好ましくは全金属量に対して亜鉛が50質量%以上、60質量%以下含まれる。
【0025】
第1の触媒中の金属質量濃度は、走査型高周波誘導結合プラズマ法(ICP-AES法)により定量することができる。
具体的には、試料を粉砕後、アルカリ融解剤(例えば炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムなど)を加えて白金坩堝内で加熱融解し、冷却後に塩酸溶液に加温下で全量溶解させる。その溶液をICP分析装置へインジェクションすると、装置内の高温プラズマ状態の中で試料溶液が原子化・熱励起し、これが基底状態に戻る際に元素固有の波長の発光スペクトルを生じるため、その発光波長及び強度から含有元素種、量を定性・定量することができる。
各金属質量濃度は、下記式から算出できる。
クロム濃度[%]=(第1の触媒中のクロム量)/(第1の触媒中のクロム量+第1の触媒中の亜鉛量)×100[%]
亜鉛濃度[%]=(第1の触媒中の亜鉛量)/(第1の触媒中のクロム量+第1の触媒中の亜鉛量)×100[%]
【0026】
第1の触媒の形態は特に限定されず、例えば、粒状であってもよいし、層状(膜状)であってもよい。第1の触媒は、通常、多孔質であり、したがって、反応を行うための細孔を備えており、比較的大きな比表面積を有する。以下、第1の触媒が多孔質である場合の比表面積等について説明する。
【0027】
第1の触媒は、細孔径を小さくする、又は細孔容積を大きくすることにより比表面積を大きくすることができる。すなわち、細孔径と細孔容量は、第1の触媒の比表面積と関連している。一般的には比表面積は大きい方が好ましいが、細孔径、細孔容積を適正な範囲に維持しようとすると極端に大きい比表面積は得られない。
【0028】
第1の触媒の比表面積は、特に限定されないが、例えば、3m/g以上500m/g以下、好ましくは10m/g以上100m/g以下である。これにより、水素と一酸化炭素との反応のための活性点を十分に供給することができる。また、比表面積が上述した上限以下であることにより、細孔径が過度に小さくなり、細孔内において一酸化炭素と水素のガス拡散速度の差が生じ、第1の触媒内で一酸化炭素の分圧と、水素の分圧とで差が生じることを防止できる。この結果、水素および一酸化炭素からのメタノールへの変換が効率よく行われる。比表面積は、BET法により測定することができる。
【0029】
また、第1の触媒の平均細孔径は特に限定されないが、例えば、0.5nm以上100nm以下、好ましくは2nm以上30nm以下である。これにより、細孔内における一酸化炭素と水素とのガス拡散速度の差が生じることが防止されるとともに、第1の触媒の比表面積を大きくすることができ、活性点を十分に供給することが可能となる。この結果、水素と一酸化炭素からのメタノールへの変換が効率よく行われる。
【0030】
なお、細孔径はガス吸着法(BET比表面積測定)から得られたデータをBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法により解析することで求めることができる。測定に用いる吸着ガスは例えばN分子を用いることができ、ガス分子の吸着量と測定サンプルの重量から比表面積を測定できる。さらにこの測定を吸着分子が液化する温度で行うことで、細孔内に充填された液状の吸着分子を測定して細孔容量及び細孔径を測定することができる。
【0031】
第1の触媒の細孔容量は、特に限定されず、例えば、0.1cc/g以上5cc/g以下、好ましくは、0.5cc/g以上2cc/g以下である。
【0032】
なお、細孔容量は水銀圧入法で求めることができる。水銀圧入法が使用できない場合は水滴定法により測定することができる。また、平均細孔径は、水銀ポロシメーターによる水銀圧入法により測定することができる。水銀圧入法が使用できない場合はガス吸着法により求めることができる。
【0033】
また、第1の触媒が粒状をなす場合、第1の触媒の平均粒子径は、例えば1μm以上800μm以下、好ましくは10μm以上200μm以下である。これにより、第1の触媒と第2の触媒の間の物質移動も加速され、原料ガスの流通抵抗も低下(圧損低減)する。なお、本明細書中において「平均粒子径」とは、湿式のレーザー回折・散乱法による、体積基準50%粒子径(D50)をいう。また、分散性が悪い等の理由でレーザー回折・散乱法による測定が困難な場合には、画像イメージング法等の手法を適用することができる。
【0034】
(1.2. 第2の触媒)
上述したように、第2の触媒は、表面が非晶質のケイ素を含む酸化物により被覆されたH-ZSM-5ゼオライトを含む。第2の触媒は、第1の触媒を介して生成したメタノールからのパラキシレンへの変換を触媒する。ここで、第2の触媒において、H-ZSM-5ゼオライトは、主としてメタノールからのパラキシレンへの選択的な変換を触媒し、一方でH-ZSM-5ゼオライト表面に被覆した非晶質のケイ素を含む酸化物は、パラキシレンの異性化を防止する。
【0035】
第2の触媒は、表面が非晶質のケイ素を含む酸化物により被覆されたH-ZSM-5ゼオライトを主体として構成される。一方で、第2の触媒中の非晶質のケイ素を含む酸化物には、製造に起因した他の元素や、第2の触媒の担持に用いる担体に由来する元素が、第2の触媒中に微量(例えば5%以下)含まれていてもよい。他の元素として、アルミやマグネシウム等が考えられる。
【0036】
なお、ケイ素を含む酸化物の非晶質性は、ブロードなX線回折像の観測により判定する。結晶性のケイ素を含む酸化物であれば、SiOのピーク強度が高く現れるが、非晶質性であれば、弱い強度のピークとして現れるため、判別可能である。さらに、透過型電子顕微鏡による電子回折パターンによっても結晶性と非結晶性を判断することができる。結晶性の場合、構造に周期性があることから、強い回折が得られ、明確な電子回折パターンが得られるが、非晶質の場合、構造に周期性が無いため、回折は弱く、ハロー(光輪状)の像が得られる。以下、非晶質のSiOを単に「SiO」と称する場合がある。
【0037】
H-ZSM-5は、ケイ素化合物とアルミニウム化合物とから、合成される。一方で、ケイ素化合物やアルミニウム化合物には、製造に起因した他の元素などが微量(例えば5%以下)含まれていてもよい。他の元素として、マグネシウム等が考えられる。
【0038】
具体的には、H-ZSM-5ゼオライトの細孔内においては、酸点が多く存在しており、当該酸点を活性点として、メタノールから、ジメチルエーテル、軽質オレフィンを経由し、芳香環(ベンゼン環)が形成される。さらに、ベンゼン環は、H-ZSM-5ゼオライトの細孔内において、さらなるメタノールにより、その1,4位がフリーデル・クラフツ反応を介してメチル化される。ここで、H-ZSM-5ゼオライトの細孔は、その細孔径が、パラキシレンが通過可能であり、一方で、オルトキシレン、メタキシレンが通過不可能な大きさである。したがって、いわゆる空間局限効果により、パラキシレンが優先的に生成する。なお、空間局限効果とは、一定の空間内で反応が進行する際に空間の形状とサイズに応じて反応が制御または局限(制限)され、特定の反応または特定の部位での反応が優先的に進行する現象及び効果をいう。
【0039】
さらに、H-ZSM-5ゼオライトの細孔内においては生成したパラキシレンが安定に存在することができる。この結果、一旦生成したパラキシレンのメタキシレン、オルトキシレンへの異性化が防止される。
【0040】
一方で、H-ZSM-5ゼオライトの細孔を除く外表面においては、空間的な制限が存在しないため、空間局限効果が発現しない。したがって、外表面の酸点においてオルトキシレン、メタキシレンが生じる恐れがある。これに対し、本開示においては、H-ZSM-5ゼオライトの表面(外表面)を非晶質のケイ素を含む酸化物が被覆している。
【0041】
非晶質のケイ素を含む酸化物は、シリカを主成分(好ましくは50%以上)とする酸化物で、SiOが該当する。SiOは、酸性度が低く、メタノールや、メタノール由来の化合物の反応を触媒する機能を基本的に有していない。このような反応に寄与しない非晶質のケイ素を含む酸化物をH-ZSM-5ゼオライトの外表面に被覆させることにより、H-ZSM-5ゼオライトの外表面の活性点である酸点を消失させ、パラキシレンのメタキシレン、オルトキシレンへの異性化を防止することができる。一方で、H-ZSM-5ゼオライトの細孔内で生成したパラキシレンは、SiOの細孔を介して、第2の触媒の外部に放出される。
【0042】
第2の触媒において、SiOとH-ZSM-5ゼオライトとは、H-ZSM-5ゼオライトの表面にSiOが被覆していれば、いかなる位置関係であってもよい。例えば、第2の触媒は、H-ZSM-5ゼオライトの粒子が核(コア)を形成し、その周囲に殻(シェル)としてのSiOが被覆する、いわゆるコア-シェル構造を備えていてもよい。さらに、SiOが複合した状態で被覆していても良い。
【0043】
また、第2の触媒において、H-ZSM-5ゼオライトの表面を被覆するSiOの膜厚は、特に限定されないが、例えば0.01μm以上200μm以下、好ましくは0.05μm以上50μm以下である。これにより、パラキシレンのメタキシレン、オルトキシレンへの異性化をより確実に防止することができるとともに、SiOの膜厚が大きすぎてH-ZSM-5ゼオライトへメタノールが十分に供給されず、反応効率が低下することを防止することができる。
【0044】
H-ZSM-5ゼオライトの外表面に形成されるSiOの膜厚は、触媒の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより測定することができる。触媒断面を観察するためのサンプル調製方法としては、触媒粒子を樹脂に埋め込んだ後、研磨する方法がある。なお、上記の膜厚は平均値であり、触媒断面のSEMによる観察にて測定する場合、膜厚が均一であれば測定箇所は数点で良いが、均一で無い場合には平均値を算出できる程度(例えば、周方向に略均等間隔となるように16箇所)の測定箇所を設定する。
また、粒子毎に膜厚が異なる場合には、複数粒子(例えば、10粒子)を代表として観察し、平均化する。代表となる複数粒子の選択にあたっては、代表となる粒子よりも多くの粒子を観察した後、極端に膜厚の異なる粒子を除いた平均的な膜厚のものを選定する。異なる粒子径の触媒が混在する場合には、前記のように代表として観察する場合、平均粒子径程度の粒子径のものを選定する。平均粒子径の測定には、分散した触媒粒子にレーザー光を照射し、粒子からの散乱光強度の角度依存性を測定することにより粒子径分布を求めるレーザー回折式粒度分布測定装置を使用する。なお、一部にSiO膜が形成されない欠陥部が存在する場合もあるが、このような場合には欠陥部は測定箇所とせずに、SiOが形成されている箇所の平均値とする。
【0045】
また、第2の触媒において、SiOの質量割合は特に限定されないが、例えばH-ZSM-5ゼオライトの質量に対し、5質量%以上100質量%以下、好ましくは10質量%以上40質量%以下である。ここで、「H-ZSM-5ゼオライトの質量に対し、5質量%以上100質量%以下」とは、「H-ZSM-5ゼオライトの100質量部に対し、5質量部以上100質量部以下」を意味する。これにより、パラキシレンのメタキシレン、オルトキシレンへの異性化をより確実に防止することができるとともに、SiOの膜厚が大きすぎてH-ZSM-5ゼオライトへメタノールが十分に供給されず、反応効率が低下することを防止することができる。
【0046】
第2の触媒中のSiOの質量割合は、以下の方法により求められる。まず、ICP-AES法により第2の触媒のシリカ(SiO+H-ZSM-5)とアルミナを定量分析する。次いで、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDS)により、断面分析した際のH-ZSM-5のシリカ/アルミナ比を得る。そして、H-ZSM-5のシリカ/アルミナ比を考慮して、ICP-AES法にて定量されたシリカ全体をSiO分とH-ZSM-5分に区別することにより、SiOの質量割合が算出される。
【0047】
第2の触媒の平均細孔径は、特に限定されないが、例えば、0.1nm以上2.5nm以下、好ましくは0.4nm以上0.6nm以下である。これにより、細孔内における上述した空間局限効果をより確実に得ることができ、第2の触媒の内部のH-ZSM-5により合成されたパラキシレンが通過できる程度に大きな細孔径となる。
【0048】
第2の触媒の比表面積は、特に限定されないが、例えば、20m/g以上1000m/g以下、好ましくは100m/g以上400m/g以下である。これにより、メタノールの反応およびパラキシレンの合成のための活性点を十分に供給することができるとともに、第2の触媒の細孔径を容易に上述した範囲とすることができる。
【0049】
第2の触媒の細孔容量は、特に限定されず、例えば、0.1cc/g以上5cc/g以下、好ましくは、0.5cc/g以上2cc/g以下である。
【0050】
また、第2の触媒が粒状をなす場合、第2の触媒の平均粒子径は、例えば0.1μm以上10μm以下、好ましくは0.5μm以上5μm以下である。これにより、第1の触媒と第2の触媒の間の物質移動も加速され、原料ガスの流通抵抗も低下(圧損低減)する。
【0051】
(1.3. 第3の触媒)
上述したように、第3の触媒は、一酸化炭素および水素からの炭素―炭素形成反応を触媒し、メタノールと同様にパラキシレンの前駆体となるアルケンの生成を促進する。ここで、鉄とマンガンの複合酸化物はカルベンの生成を促進するため、炭素―炭素結合形成反応が効率よく進行する。
【0052】
第3の触媒は、鉄とマンガンの二元系複合酸化物を主体として構成される。一方で、第3の触媒の製造に起因した他の化合物や、第3の触媒の担持に用いる担体に由来する化合物が、第3の触媒中に含まれていてもよい。
第3の触媒は、好ましくは全金属量に対して鉄が90質量%以上99質量%以下含まれ、より好ましくは全金属量に対して鉄が95質量%以上97質量%以下含まれる。さらに、好ましくは全金属量に対してマンガンが1質量%以上10質量%以下含まれ、より好ましくは全金属量に対してマンガンが1質量%以上5質量%以下含まれる。
【0053】
第3の触媒中の金属質量濃度は、走査型高周波誘導結合プラズマ法(ICP-AES法)により定量することができる。
具体的には、試料を粉砕後、アルカリ融解剤(例えば炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムなど)を加えて白金坩堝内で加熱融解し、冷却後に塩酸溶液に加温下で全量溶解させる。その溶液をICP分析装置へインジェクションすると、装置内の高温プラズマ状態の中で試料溶液が原子化・熱励起し、これが基底状態に戻る際に元素固有の波長の発光スペクトルを生じるため、その発光波長及び強度から含有元素種、量を定性・定量することができる。
各金属質量濃度は、下記式から算出できる。
鉄濃度[%]=(第3の触媒中の鉄量)/(第3の触媒中の鉄量+第3の触媒中のマンガン量)×100[%]
マンガン濃度[%]=(第3の触媒中のマンガン量)/(第3の触媒中の鉄量+第3の触媒中のマンガン量)×100[%]
【0054】
第3の触媒の形態は、特に限定されず、例えば、粒状であってもよいし、層状(膜状)であってもよい。第3の触媒は、通常、多孔質であり、したがって、反応を行うための細孔を備えており、比較的大きな比表面積を有する。
【0055】
第3の触媒は、細孔径を小さくする、又は細孔容積を大きくすることにより比表面積を大きくすることができる。すなわち、細孔径と細孔容量は、第3の触媒の比表面積と関連している。一般的には比表面積は大きい方が好ましいが、細孔径、細孔容積を適正な範囲に維持しようとすると極端に大きい比表面積は得られない。
【0056】
第3の触媒の比表面積は、特に限定されないが、例えば、3m/g以上500m/g以下、好ましくは10m/g以上100m/g以下である。これにより、炭素―炭素結合形成反応のための活性点を十分に供給することができる。また、比表面積が上述した上限以下であることにより、細孔径が過度に小さくなり、細孔内において一酸化炭素と水素のガス拡散速度の差が生じ、第3の触媒内で一酸化炭素の分圧と、水素の分圧とで差が生じることを防止できる。この結果、水素および一酸化炭素からのアルケンへの変換が効率よく行われる。比表面積は、BET法により測定することができる。
【0057】
第3の触媒の平均細孔径は、特に限定されないが、例えば、0.5nm以上100nm以下、好ましくは2nm以上30nm以下である。これにより、細孔内における一酸化炭素と水素とのガス拡散速度の差が生じることが防止されるとともに、第3の触媒の比表面積を大きくすることができ、活性点を十分に供給することが可能となる。この結果、水素および一酸化炭素からのアルケンへの変換が効率よく行われる。
【0058】
第3の触媒の細孔容量は、特に限定されず、例えば、0.1cc/g以上5cc/g以下、好ましくは、0.5cc/g以上2cc/g以下である。
【0059】
なお、細孔容積は水銀圧入法で求めることができる。水銀圧入法が使用できない場合は水滴定法により測定することができる。また、平均細孔径は、水銀ポロシメーターによる水銀圧入法により測定することができる。水銀圧入法が使用できない場合はガス吸着法により求めることができる。
【0060】
また、第3の触媒が粒状をなす場合、第3の触媒の平均粒子径は、例えば1μm以上800μm以下、好ましくは10μm以上200μm以下である。これにより、第3の触媒と第2の触媒との間の物質移動も加速され、原料ガスの流通抵抗も低下(圧損低減)する。
【0061】
(1.4. 3種の触媒の位置関係)
上述したように、本開示に係るパラキシレン製造用触媒群は、第1の触媒と、第2の触媒と、第3の触媒とを含む。第1の触媒と第2の触媒と第3の触媒の位置関係は、第1の触媒と第2の触媒とを物理混合させた後に造粒し、この造粒物と第3の触媒とを物理混合した状態、または物理混合後に造粒した状態が好ましい。また、第1の触媒と第2の触媒との造粒物とは別の位置に第3の触媒が配置されていてもよい。すなわち、第3の触媒は、造粒された第1の触媒と第2の触媒との造粒物と混合して使用してもよいし、あるいは、第3の触媒を反応器の上層(上流側)に配置し、下層(下流側)に第1の触媒と第2の触媒とを物理混合した後に造粒した造粒物を充填しても構わない。
【0062】
なお、第1の触媒と第2の触媒は、互いに近接化している状態がより好ましい。理由は、第1の触媒と第2の触媒とが近接化していない場合、中間体であるメタノールから他の副反応が進行し、パラキシレンの選択率が低下するためである。第1の触媒と第2の触媒が混合された造粒物して存在すれば、両者は近接する。そのため、本開示に係るパラキシレン製造用触媒群は、少なくとも第1の触媒と第2の触媒とが互いに混合された造粒物として存在する。
なお、本開示における造粒物の粒径は特に限定されず、造粒物が第3の触媒を含むか否かで粒径も異なるが、例えば平均粒子径は、200μm以上1000μm以下である。粒子径は、湿式のレーザー回折・散乱法による、体積基準50%粒子径(D50)をいう。また、分散性が悪い等の理由でレーザー回折・散乱法による測定が困難な場合には、画像イメージング法等の手法を適用することができる。
【0063】
本開示に係るパラキシレン製造用触媒群中において、第2の触媒は、第1の触媒に対し、例えば10質量%以上1000質量%以下(すなわち、第1の触媒が100質量部に対し、第2の触媒が10質量部以上1000質量部以下)であり、好ましくは80質量%以上120質量%以下含まれる。これにより、第1の触媒におけるメタノールの合成速度と、第2の触媒におけるメタノールの消費速度を、比較的近いものとすることができ、余剰の化合物により意図せぬ副反応が生じることが防止される。
【0064】
本開示に係るパラキシレン製造用触媒群の製造時に、第1の触媒と第2の触媒との混合時の各質量(配合量)を調整することで、第1の触媒に対する第2の触媒の割合を適正化することができる。第1の触媒と第2の触媒とが混合された後(その後、成形された場合や、整粒された場合を含む)の触媒において、当該割合は、例えば、走査型高周波誘導結合プラズマ法(ICP)を用いて求めることができる。具体的には、試料を粉砕後、アルカリ融解剤(例えば炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムなど)を加えて白金坩堝内で加熱融解し、冷却後に塩酸溶液に加温下で全量溶解させる。その溶液をICP分析装置へインジェクションすると、装置内の高温プラズマ状態の中で試料溶液が原子化・熱励起し、これが基底状態に戻る際に元素固有の波長の発光スペクトルを生じるため、その発光波長及び強度から含有元素種、量を定性・定量することができる。そして、定量された含有元素種の比率を考慮して、第1の触媒と、第2の触媒との割合を算出することができる。
【0065】
パラキシレン製造用触媒群中において、第3の触媒は、第1の触媒及び第2の触媒の混合物に対し、例えば0.1質量%以上1.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下含まれる。これにより、パラキシレンの前駆体となるアルケンの生成が促進される。一方で、第3の触媒の添加量が多すぎるとアルケンへの反応が主反応となり、パラキシレンの選択性が低下する。そのため、第1の触媒及び第2の触媒の混合物に対し、第3の触媒の添加量は0.1質量%以上1.5質量%以下が好ましい。
【0066】
第1の触媒と第2の触媒との造粒物と第3の触媒との混合物が上記の割合で混合されていることは、例えば、走査型高周波誘導結合プラズマ法(ICP)を用いて求めることができる。具体的には、試料を粉砕後、アルカリ融解剤(例えば炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムなど)を加えて白金坩堝内で加熱融解し、冷却後に塩酸溶液に加温下で全量溶解させる。その溶液をICP分析装置へインジェクションすると、装置内の高温プラズマ状態の中で試料溶液が原子化・熱励起し、これが基底状態に戻る際に元素固有の波長の発光スペクトルを生じるため、その発光波長及び強度から含有元素種、量を定性・定量することができる。そして、定量された含有元素種の比率を考慮して、第1の触媒と、第2の触媒と、第3の触媒の割合を算出することができる。
【0067】
以上、本開示に係るパラキシレン製造用触媒群について説明した。本開示によれば、一酸化炭素と水素とを原料として用いてパラキシレンを効率よく製造することができる。すなわち、第1の触媒として一酸化炭素が吸着しやすく一酸化炭素と水素との反応が効率よく進行するクロムと亜鉛の二元系複合酸化物を用い、第2の触媒として、空間局限効果を有しパラキシレンを選択的かつ効率よく合成可能な表面が非晶質のケイ素を含む酸化物により被覆されたH-ZSM-5ゼオライトを用い、第3の触媒として、メタノールと同様にパラキシレンの前駆体となるアルケンの生成を促進する鉄とマンガンの二元系複合酸化物を用いることにより、パラキシレンが効率よく、また大きな収率で合成される。
【0068】
<2. パラキシレン製造用触媒群の製造方法>
次に、本開示に係るパラキシレン製造用触媒群の製造方法について説明する。本開示に係るパラキシレン製造用触媒群の製造方法は、少なくともクロムと亜鉛の二元系酸化物である第1の触媒を得る工程(第1の工程)と、ケイ素化合物とH-ZSM-5ゼオライトとの存在下で水熱合成又は加熱を行い、H-ZSM-5ゼオライトの表面に非晶質のケイ素を含む酸化物を被覆させた第2の触媒を得る工程(第2の工程)と、鉄とマンガンの二元系酸化物である第3の触媒を得る工程(第3の工程)と、第1の触媒と、第2の触媒と、第3の触媒とを混合および/または配置する工程(第4の工程)と、を含む。なお、本開示に係るパラキシレン製造用触媒群の製造方法は、任意に、第3の工程に先立ち、水熱合成法により、ケイ素化合物とアルミニウム化合物とから、H-ZSM-5ゼオライトを合成する工程(第5の工程)を含んでもよい。
【0069】
例えば、第1の工程は、共沈法により、クロムと亜鉛を含む複合水酸化物を得て、クロムと亜鉛を含む複合水酸化物を乾燥および焼成のいずれか一方又は両方を行って第1の触媒を得る工程であり、
第2の工程は、水熱合成法又は加熱により、ケイ素化合物とH-ZSM-5ゼオライトとから、表面が非晶質のケイ素を含む酸化物により被覆されたH-ZSM-5ゼオライトを含む第2の触媒を得る工程であり、
第3の工程は、共沈法により、鉄とマンガンを含む複合水酸化物を得て、鉄とマンガンを含む複合水酸化物を乾燥および焼成のいずれか一方又は両方を行って第3の触媒を得る工程であり、
第4の工程は、第1の触媒、第2の触媒、および第3の触媒のうち、少なくとも第1の触媒と第2の触媒とを混合して造粒することにより造粒物を得る工程である。
以下、各工程について具体的に説明する。
【0070】
(2.1. 第1の工程)
まず、第1の工程においては、例えば湿式沈殿法(共沈法)によりクロムと亜鉛の複合水酸化物を得て、当該クロムと亜鉛の複合水酸化物を乾燥および/または焼成して第1の触媒を得る。
【0071】
具体的には、まず、クロム化合物と亜鉛化合物を水溶液中に溶解させ、沈降剤を添加することによりクロムと亜鉛の複合水酸化物を沈降させる。
クロム化合物(クロム源)としては、水溶液に溶解可能であれば特に限定されず、例えば硝酸クロム、酢酸クロム、塩化クロム、臭化クロム、二クロム酸アンモニウム等を用いることができる。
亜鉛化合物(亜鉛源)としては、水溶液に溶解可能であれば特に限定されず、例えば硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛等を用いることができる。
【0072】
また、沈降剤としては、クロムと亜鉛の複合水酸化物を沈降(析出)可能であれば特に限定されず、例えば炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、尿素、炭酸カリウム等を用いることができる。
【0073】
なお、クロムと亜鉛の複合水酸化物の粒径、形状の制御等を目的として、クロムと亜鉛の複合水酸化物が沈降した状態で、熟成処理を行ってもよい。熟成処理は、例えば、30分以上12時間以下攪拌することにより行うことができる。
【0074】
上記の処理において、水溶液の温度は、特に限定されないが、例えば30℃以上100℃以下である。
【0075】
次に、得られたクロムと亜鉛の複合水酸化物について乾燥および/または焼成して、クロムと亜鉛の複合水酸化物を含む第1の触媒を得る。なお、乾燥および/または焼成に先立ち、クロムと亜鉛の複合水酸化物を適宜洗浄してもよい。
【0076】
乾燥は、例えば60℃以上200℃以下の大気雰囲気下で、30分以上12時間以下行うことができる。また、焼成は、例えば400℃以上600℃以下の大気雰囲気下で、30分以上10時間以下行うことができる。
以上のようにして、クロムと亜鉛の複合酸化物を含む第1の触媒が得られる。
【0077】
なお、クロムと亜鉛の複合水酸化物を別途入手可能であれば、本工程は省略されてもよい。また、上記の説明に関わらず、クロムと亜鉛の複合酸化物は、湿式沈降法により製造されていなくてもよい。
【0078】
(2.2. 第2の工程)
本工程では、少なくともケイ素化合物とH-ZSM-5ゼオライトとの存在下で水熱合成を行うか、または、ケイ素化合物とH―ZSM-5ゼオライトとの存在下で加熱を行い、H-ZSM-5ゼオライトの表面に非晶質のSiOを被覆させた第2の触媒を得る。 SiOの形成は、例えば、H-ZSM-5ゼオライトが分散した有機溶媒にテトラエトキシシラン(TEOS)を滴下した後に加熱することで行われる。
【0079】
また、SiOの被覆時にH-ZSM-5を分散させる有機溶媒には、ヘキサン等が用いられる。この他にも他有機溶媒、アルコール等が含まれていてもよい。
【0080】
また、H-ZSM-5を有機溶媒中に分散させるために、撹拌を行うが、その撹拌速度は、特に限定されないが、例えば、200~1000rpm、好ましくは、300~800rpmとすることができる。
【0081】
H-ZSM-5分散有機溶媒にTEOSを滴下させた後の加熱温度は、特に限定されないが、例えば、50~150℃、好ましくは、50~80℃とすることができる。
【0082】
H-ZSM-5分散有機溶媒にTEOSを滴下させた後に加熱を行いながら有機溶媒を除去する。この時の加熱時間は、特に限定されないが、例えば、50~150℃、好ましくは、50~80℃とすることができる。
【0083】
上記によりSiOが被覆したH-ZSM-5ゼオライトは、必要に応じて、加熱終了後、乾燥、焼成に供される。乾燥時間は、特に限定されないが、例えば、0.5~20時間とすることができる。乾燥温度は、特に限定されないが、例えば、50~150℃とすることができる。
【0084】
次いで、乾燥した触媒について焼成処理を行い、ゼオライトの孔内に存在する有機物を除去する。これによりSiOが被覆したH-ZSM-5ゼオライトを得る。焼成時間は、特に限定されないが、例えば、0.5~15時間とすることができる。焼成温度は、特に限定されないが、例えば、400~600℃とすることができる。
【0085】
以上により、表面に非晶質のSiOが被覆したH-ZSM-5ゼオライトを含む第2の触媒を得ることができる。
【0086】
(2.3. 第3の工程)
第3の工程においては、湿式沈殿法により鉄とマンガンの複合水酸化物を得、鉄とマンガンの複合水酸化物を乾燥および/または焼成して第3の触媒を得る。
【0087】
具体的には、まず、鉄化合物とマンガン化合物を水溶液中に溶解させ、沈降剤を添加することにより鉄とマンガンの複合水酸化物を沈降させる。
鉄化合物(鉄源)としては、水溶液に溶解可能であれば特に限定されず、例えば硝酸鉄、酢酸鉄、塩化鉄、臭化鉄等を用いることができる。
マンガン化合物(マンガン源)としては、水溶液に溶解可能であれば特に限定されず、例えば硝酸マンガン、酢酸マンガン、塩化マンガン、臭化マンガン等を用いることができる。
【0088】
また、沈降剤としては、鉄とマンガンの複合水酸化物を沈降(析出)可能であれば特に限定されず、例えば炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、尿素、炭酸カリウム等を用いることができる。
【0089】
なお、鉄とマンガンの複合水酸化物の粒径、形状の制御等を目的として、鉄とマンガンの複合水酸化物が沈降した状態で、熟成処理を行ってもよい。熟成処理は、例えば、30分以上12時間以下静置することにより行うことができる。
【0090】
上記の処理において、水溶液の温度は、特に限定されないが、例えば30℃以上100℃以下である。
【0091】
次に、得られた鉄とマンガンの複合水酸化物について乾燥および/または焼成して、クロムと亜鉛の複合水酸化物を含む第3の触媒を得る。なお、乾燥および/または焼成に先立ち、鉄とマンガンの複合水酸化物を適宜洗浄してもよい。
【0092】
乾燥は、例えば60℃以上200℃以下の大気雰囲気下で、30分以上12時間以下行うことができる。また、焼成は、例えば400℃以上600℃以下の大気雰囲気下で、30分以上10時間以下行うことができる。
以上のようにして、鉄とマンガンの複合水酸化物を含む第1の触媒が得られる。
【0093】
なお、鉄とマンガンの複合水酸化物を別途入手可能であれば、本工程は省略されてもよい。また、上記の説明に関わらず、鉄とマンガンの複合酸化物は、湿式沈降法により製造されていなくてもよい。
【0094】
(2.4. 第4の工程)
本工程では、第1の触媒、第2の触媒、および第3の触媒のうち、少なくとも第1の触媒と第2の触媒とを混合して造粒することにより造粒物を得る。例えば、3種の触媒が混合された造粒物を製造する場合は、第1の触媒と、第2の触媒と、第3の触媒とを物理的に混合し、造粒する。これにより、パラキシレン製造用触媒群を得る。混合は、例えば乳鉢、ボールミル、自動混練器等により行うことができる。
【0095】
なお、混合後、第1の触媒と、第2の触媒と、第3の触媒との密着性、もしくは、第1の触媒と第2の触媒との密着性を向上させることを目的として、パラキシレン製造用触媒群のペレットを成形し、同ペレットを粉砕してもよい。
【0096】
メタノールからのパラキシレンへの反応が効率よく進むためには、第1の触媒と第2の触媒とが互いに近接化していることが特に好ましい。本開示に係るパラキシレン製造用触媒群は、第1の触媒と第2の触媒とが混合された造粒物として存在することで、第1の触媒と第2の触媒とが互いに近接化しており、メタノールからのパラキシレンへの高い反応効率を達成することが可能である。
【0097】
本開示に係るパラキシレン製造用触媒群を用いてパラキシレンの生産性をより上げるためには、第3の触媒を上層に充填し、第1の触媒と第2の触媒を物理的に混合した粉体(造粒物)を下層に充填し、上層と下層の間にガラスウールを挟んだ形態とすることが好ましい。このような形態により、パラキシレンの合成反応を高い生産性で行うことができる。
【0098】
(2.5. 第5の工程)
本工程は、第2の工程に先立って任意に行われる工程であり、例えば水熱合成法により、ケイ素化合物とアルミニウム化合物とから、H-ZSM-5ゼオライトを合成する。H-ZSM-5ゼオライトの形成は、例えば、ケイ素化合物(シリカ源)およびアルミニウム化合物(アルミナ源)を含む水溶液(前駆体溶液)を加熱することにより行われる。
【0099】
ケイ素化合物としてはテトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート等、アルミニウム化合物としては硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム等を使用することができるが、これらに限定されない。
【0100】
また、前駆体溶液には、テンプレート剤(有機構造規定剤)としてアミン化合物、例えばテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等が含まれていてもよい。さらに、前駆体溶液の溶媒は、水を主成分とするが、ケイ素化合物の加水分解速度の制御を目的として、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒が含まれていてもよい。
【0101】
水熱合成における温度は、特に限定されないが、例えば、150~200℃、好ましくは、170~190℃とすることができる。
【0102】
水熱合成の時間増加に伴い、H-ZSM-5ゼオライトの粒径が増加する。水熱合成の時間は、例えば1時間以上168時間以下であり、好ましくは24時間以上72時間以下である。
【0103】
なお、水熱合成においては、必要に応じ、反応液を撹拌してもよい。撹拌条件は、適宜設定可能である。また、H-ZSM-5ゼオライトの粒径や、細孔径、比表面積等の物性は時間等の水熱合成の条件によって制御することが可能である。
【0104】
水熱合成により製造されたH-ZSM-5ゼオライトは、水熱合成終了後適宜、洗浄、乾燥に供される。乾燥時間は、特に限定されないが、例えば、0.5~20時間とすることができる。乾燥温度は、特に限定されないが、例えば、50~150℃とすることができる。
【0105】
次いで、乾燥した触媒について焼成処理を行い、ゼオライトの孔内に存在する有機物を除去する。これによりH-ZSM-5ゼオライトを得る。焼成時間は、特に限定されないが、例えば、0.5~15時間とすることができる。焼成温度は、特に限定されないが、例えば、400~600℃とすることができる。
【0106】
なお、H-ZSM-5ゼオライトを別途入手可能であれば、本工程は省略されてもよい。また、上記の説明に関わらず、H-ZSM-5ゼオライトは、水熱合成法により製造されていなくてもよい。
【0107】
<3.パラキシレンの製造方法>
次に、上述したパラキシレン製造用触媒群を用いたパラキシレンの製造方法について、好適な実施形態に基づき説明する。
【0108】
パラキシレンの製造は、一酸化炭素および水素を本開示に係るパラキシレン製造用触媒群と接触させることにより行うことができる。一酸化炭素および水素は別個に供給されてもよいが、通常これらの混合ガスとして供給される。
【0109】
本開示に係る方法で使用する一酸化炭素と水素の混合ガスには、パラキシレンの生産性の面から、一酸化炭素と水素の合計が全体の50体積%以上であるガスが好ましく、特に、水素と一酸化炭素のモル比(水素/一酸化炭素)が0.5~4.0の範囲であることが望ましい。これは、水素と一酸化炭素のモル比が0.5未満の場合には、原料ガス中の水素の存在量が少な過ぎるため、一酸化炭素の水素化反応が進み難く、生産性が高くならないためであり、一方、水素と一酸化炭素のモル比が4.0を超える場合には、原料ガス中の一酸化炭素の存在量が少な過ぎるため、触媒活性に関わらず液状炭化水素の生産性が高くならないためである。
【0110】
また、混合ガスと本開示に係る触媒との接触に用いられる反応器としては、特に限定されず、例えば、固定床、噴流床、流動床等の一般的な気相合成プロセス用反応器、スラリー床等の液相合成プロセス用反応器およびマイクロチャネル反応器等が挙げられる。
【0111】
パラキシレンを製造する反応を行う際には、クロムと亜鉛の二元系複合酸化物(第1の触媒)が、還元された状態である必要がある。したがって、混合ガスを供給してパラキシレンを製造する前に、例えば水素ガス等の還元性ガスを流通させてパラキシレン製造用触媒群の還元処理を行う。このような還元処理は、特に限定されないが、例えば300~500℃の温度で、1~40時間行うことができる。
【0112】
なお、パラキシレン製造用触媒群は、反応器への充填後に還元されてもよいし、充填前に還元されてもよい。例えば、反応器内にパラキシレン製造用触媒群を仕込む前に還元処理を行い、その後に充填することも可能である。
【0113】
より生産性を上げるためには、第3の触媒を上層に充填し、第1の触媒と第2の触媒を物理的に混合した粉体を下層に充填し、上層と下層の間にガラスウールを挟んだ形態で反応を行うことができる。
【0114】
パラキシレンの製造時における条件は、特に限定されず、反応器の種類に応じて条件を設定することができる。
【0115】
例えば、パラキシレンを製造する反応時における反応温度は、特に限定されないが、200~500℃、好ましくは300~400℃である。また、反応時における系内の圧力は、特に限定されないが、例えば、0.8~6.0MPa、好ましくは2.5~5.0MPaである。
【0116】
著しく転化率が高い、あるいは反応時間が長いなどの要因で、活性低下が生じた場合には、混合ガスの代わりに水素を含むガス(再生ガス)を供給することにより、パラキシレン製造用触媒群を再生することができる。再生ガスの水素含有量は、5%以上であることが好ましい。なお、再生ガス中の水素含有量は100%であってもよい。また、再生ガスは、水素に加え、窒素、アルゴン等の不活性ガスを含有してもよい。
【0117】
パラキシレン製造用触媒群の再生の条件としては、触媒再生が進行すれば、特に限定されない。水素を含む再生ガスとパラキシレン製造用触媒群を接触させることによる触媒再生機構としては、副生水により酸化した酸化クロム触媒等の再還元と、水素による析出炭素の除去によるものと推察される。
【0118】
具体的には、再生時における温度は、例えば、300~500℃である。
再生時における圧力は、例えば、常圧~反応圧である。特に、再生圧力を反応圧以下にすると、反応において反応圧に昇圧するためのコンプレッサーを利用することが可能となり、再生のために新たにコンプレッサーを設置する必要がなくなるため、設備コストの面から有利となる。また、再生時間は、例えば、1時間以上とすることができる。
【実施例0119】
以下、実施例及び比較例により本開示に係るパラキシレン製造用触媒群等をさらに詳細に説明するが、本開示はこれら実施例及び比較例に限定されない。
【0120】
〔実施例1〕
(1.パラキシレン製造用触媒群の製造)
硝酸クロム4.0g、硝酸亜鉛3.0gを精秤して、500mlの純水に溶解させた。この水溶液を70℃の加温下、炭酸アンモニウム水溶液を加えて、クロムと亜鉛を二元系複合水酸化物として沈殿させ、スターラーで十分に攪拌した。その後、70℃に保持したまま3時間攪拌を続けて熟成を行った後、ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄を行った。洗浄後に得られた沈殿物を100℃で乾燥し、粗粉砕した後、空気中500℃で焼成(か焼)した。これにより、第1の触媒としてのクロムと亜鉛の二元系複合酸化物粉末(ZnCr)を得た。
【0121】
一方、H-ZSM-5ゼオライトを製造するため、テトラメチルオルトシリケート、硝酸アルミニウム、水、テトラプロピルアンモニウム水酸化物、およびエタノールをモル比で1:1/40:50:0.24:4に精秤して溶解させた。その溶液をテフロン(登録商標)シールのオートクレーブに導入し、マグネティックスターラーで4時間撹拌後、180℃、24時間反応させた。そこで得られた生成物を蒸留水で洗浄し、120℃で一晩乾燥させたのち、550℃で5時間空気中で焼成(か焼)することでゼオライトポアに存在していた有機物を分解除去し、多孔質のH-ZSM-5ゼオライト粉末を得た。得られたH-ZSM-5ゼオライト粉末は、N吸脱着によるBET比表面積が367.6m/g、平均細孔径が2.0nmであった。
【0122】
こうして得られた1gのゼオライト(H-ZSM-5)を7gのノルマルヘキサン100mL中に投入し、撹拌子を用いて500rpmで撹拌した。次いで、この溶媒へ3.4gのTEOSを滴下した。TEOSを滴下した後、4時間撹拌を続けた。次いで、撹拌しながら溶液を80℃に加熱し、吸引しながらノルマルヘキサンを除去した。得られた試料を100℃で12時間乾燥させた後、550℃で5時間焼成することで、第2の触媒として、表面が非晶質のSiOで被覆されたH-ZSM-5ゼオライト(以下、「SiO被覆ゼオライト」と称する場合がある。)を得た。
【0123】
一方、鉄とマンガンの二元系複合酸化物は、以下の方法で調製した。硝酸鉄九水和物10.1g、硝酸マンガン四水和物0.63gを精秤して、500mlの純水に溶解させた。この水溶液を70℃の加温下、炭酸ナトリウム水溶液を加えて、鉄とマンガンを二元系複合水酸化物として沈殿させ、スターラーで十分に攪拌した。その後、70℃に保持したまま3時間攪拌を続けて熟成を行った後、ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄を行った。洗浄後に得られた沈殿物を100℃で乾燥し、粗粉砕した後、空気中500℃で焼成(か焼)した。これにより、第3の触媒としての鉄とマンガンの二元系複合酸化物粉末を得た。
【0124】
上記のようにして得られたクロムと亜鉛の二元系複合酸化物(第1の触媒)と、SiO被覆ゼオライト(第2の触媒)と、鉄とマンガンの二元系複合酸化物(第3の触媒)とを質量比で125:70:2なるように精秤し、乳鉢内で10分間物理混合して混合粉末を得た。その後、混合粉末を圧縮成形器を用いて3mmφの錠剤状にプレス成型し、錠剤成型体を得た後、粉砕して20-40meshとなるように整粒し、パラキシレン製造用触媒群(造粒粉)を得た。
【0125】
(パラキシレンの製造)
得られた造粒粉、0.125gを用い、内径6mmのSUS製反応管(反応器)の中央に位置するよう石英ウールで固定し、触媒層中央位置に熱電対を挿入し、これら固定床反応管を所定の位置にセットした。
【0126】
合成反応を始める前に、まず反応器を窒素雰囲気下で400℃まで昇温した後、水素ガスを60mL/min流しながら2時間還元処理を行った。
その後、室温に下げた後、水素:CO=3:1、内部標準としてアルゴンを5%含むガスを30mL/minになるよう導入し、5MPa下、375℃で6時間合成を行った。反応生成物は、水分を除去した後、二つのガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製:GC-8A)に注入して熱伝導度型検出器(TCD:Thermal Conductivity Detector)、及び水素炎イオン化型検出器(FID:Flame Ionization Detector)による分析を行った。
【0127】
合成反応の反応度合(パラキシレンの生成率)は、CO転化率、CO選択率、メタン選択率、エタン、プロパン、ブタンからC2-C4(O)の選択率、エチレン、プロピレン、ブチレンからC2-C4(=)の選択率、メタノールとジメチルエーテル(DME)からCHOH+DME選択率、ペンタン以降の長鎖脂肪族炭化水素(C5+)選択率、芳香族(Aromatics)選択率、芳香族化合物中のベンゼン(B)選択率、トルエン(T)選択率、オルトキシレン(o-X)選択率、メタキシレン(m-X)選択率、パラキシレン(p-X)選択率、炭素数9の芳香族炭化水素(A(C9))選択率、炭素数10以上の芳香族炭化水素(A(C10+))選択率、および全キシレン(オルトキシレンとメタキシレンとパラキシレン)中のパラキシレンの割合としてのp-X/Xを、各成分濃度より、以下の式で算出した。その結果を表1中の実施例1に示す。
【0128】
CO転化率(%)=(1-(反応後のCO量)/(供給されたCOの供給量))×100
CO選択率(%)=(COの体積量)/((供給されたCOの供給量)―(反応後のCO量))×100
炭化水素選択率(%)=(炭化水素の体積量)/((供給されたCOの供給量)―(反応後のCO量)))×100
CH選択率(%)=(CHの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
エタン選択率(%)=(エタンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
プロパン選択率(%)=(プロパンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
ブタン選択率(%)=(ブタンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
C2-C4(O)選択率(%)=(エタン選択率)+(プロパン選択率)+(ブタン選択率)
【0129】
エチレン選択率(%)=(エチレンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
プロピレン選択率(%)=(プロピレンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
ブチレン選択率(%)=(ブチレンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
C2-C4(=)選択率(%)=(エチレン選択率)+(プロピレン選択率)+(ブチレン選択率)
【0130】
CHOH選択率(%)=(CHOHの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
DME選択率(%)=(DMEの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
CHOH+DME選択率(%)=(CHOH選択率)+(DME選択率)
ペンタン選択率(%)=(ペンタンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
ペンタン以降長鎖脂肪族炭化水素(C5+)(%)=(ペンタン選択率)+(C6以上の長鎖脂肪族炭化水素選択率)
【0131】
B選択率(%)=(ベンゼンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
T選択率(%)=(トルエンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
E選択率(%)=(エチルベンゼンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
o-X選択率(%)=(オルトキシレンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
m-X選択率(%)=(メタキシレンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
p-X選択率(%)=(パラキシレンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
A(C9)選択率(%)=(クメンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
テトラリン選択率(%)=(テトラリンの体積量)/(炭化水素の体積量)×100
A(C10+)選択率(%)=(テトラリン選択率)+(C11以上の芳香族炭化水素選択率)
芳香族(Aromatics)選択率(%)=(B選択率)+(T選択率)+(o-X選択率)+(m-X選択率)+(p-X選択率)+(A(C9)選択率)+(A(C10+)選択率)
全キシレン中のパラキシレン割合(%)=(p-X選択率)/((o-X選択率)+(m-X選択率)+(p-X選択率))×100
【0132】
パラキシレンの収量(%)は、CO転化率(%)÷100×(100-CO選択率(%))×p-X選択率(%)÷100により算出できる。従って、本条件では、パラキシレンは、26.6÷100×(100-45.7)×8.53÷100=1.23%の割合で生成することが分かった。
【0133】
〔実施例2〕
第3の触媒の製造において、硝酸鉄九水和物を20.2g、硝酸マンガン四水和物0.63gを用いて鉄とマンガンの二元系複合酸化物を得たことと、クロムと亜鉛の二元系複合酸化物(第1の触媒)と、SiO被覆ゼオライト(第2の触媒)と、鉄とマンガンの二元系複合酸化物(第3の触媒)とを質量比で100:56:1なるように精秤したほかは実施例1と同様にして調製し、パラキシレン製造用触媒群を得た。得られたパラキシレン製造用触媒群を用いて実施例1と同様にしてパラキシレンの合成を行った。その結果を表1、実施例2に示す。
【0134】
〔実施例3~5〕
全触媒量に対する第3の触媒の添加量をそれぞれ1.5質量%、0.1質量%、または0.5質量%としたほかは実施例1と同様にして調製し、パラキシレン製造用触媒群を得た。得られたパラキシレン製造用触媒群を用いて実施例1と同様にしてパラキシレンの合成を行った。その結果を表1、実施例3~5に示す。
【0135】
〔実施例6〕
第1の触媒と第2の触媒を物理混合した後に圧縮成形により造粒してペレット状にし、これと実施例1と同様のFe/Mnモル比で調製した第3の触媒(鉄とマンガンの二元系複合酸化物)を物理混合したほかは実施例2と同様にして調製し、パラキシレン製造用触媒群を得た。得られたパラキシレン製造用触媒群を用いて実施例1と同様にしてパラキシレンの合成を行った。その結果を表1、実施例6に示す。
【0136】
〔実施例7〕
第3の触媒を反応器上段に充填し、第1の触媒と第2の触媒を物理混合した後に圧縮成形により造粒してペレット状にしたものを反応器下段に充填し、上段と下段の間にガラスウールを挟み込んだ構成とし、第3の触媒の含有率を0.6質量%としたほかは実施例1と同様にして調製し、パラキシレン製造用触媒群を得た。得られたパラキシレン製造用触媒群を用いて実施例1と同様にしてパラキシレンの合成を行った。その結果を表1、実施例7に示す。
【0137】
〔比較例1〕
第2の触媒と第3の触媒とを物理混合した後に圧縮成形により造粒してペレット状にし、これと第1の触媒を物理混合し、第3の触媒の含有率を0.6質量%としたほかは実施例1と同様にして調製し、パラキシレン製造用触媒群を得た。得られたパラキシレン製造用触媒群を用いて実施例1と同様にしてパラキシレンの合成を行った。その結果を表1、比較例1に示す。
【0138】
〔比較例2〕
第1の触媒と第2の触媒と第3の触媒とを物理混合し、第3の触媒の含有率を0.6質量%としたものを用いたほかは実施例1と同様にして調製し、パラキシレン製造用触媒群を得た。得られたパラキシレン製造用触媒群を用いて実施例1と同様にしてパラキシレンの合成を行った。その結果を表1、比較例2に示す。
【0139】
〔比較例3〕
第3の触媒を添加せず、第1の触媒と第2の触媒のみを物理混合した後に圧縮成形によりペレット状にしたものを用いたほかは実施例1と同様にして調製し、パラキシレン製造用触媒群を得た。得られたパラキシレン製造用触媒群を用いて実施例1と同様にしてパラキシレンの合成を行った。その結果を表1、比較例3に示す。
【0140】
〔比較例4〕
得られた1gのゼオライト(H-ZSM-5)を用い、シリカ、テトラプロピルアンモニウム水酸化物、エタノールと水をモル比で1:0.06:16:240の溶液中に浸したのち、テフロンシールのオートクレーブに仕込み、分速3回転の速度で回転させながら180℃、24時間反応させた。この操作を2回繰り返すことで第2の触媒としてのシリカライト―1が被覆したゼオライトを得た。このシリカライト―1が被覆したゼオライト(H-ZSM-5@シリカライト―1)を用いたほかは実施例1と同様にして調製を行い、パラキシレン製造用触媒群を得た。得られたパラキシレン製造用触媒群を用いて実施例1と同様にしてパラキシレンの合成を行った。その結果を表1、比較例4に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
表1の実施例及び比較例より、実施例1~7の空時収率は比較例1~3の空時収率よりも高く、第1の触媒と第2の触媒を物理混合後に造粒して近接化した状態で用い、さらに第3の触媒を添加することで第1の触媒と第2の触媒を混合造粒していない比較例1、2よりも、また、第3の触媒を含まない比較例3よりも高いパラキシレンの生産性を示すことが分かった。特に、第3の触媒を反応器上段に充填し、第1の触媒と第2の触媒を物理混合した後に圧縮成形により造粒してペレット状にしたものを反応器下段に充填し、上段と下段の間にガラスウールを挟み込んだ形態(実施例7)でより高いパラキシレン生産性が得られることが分かる。
【0143】
また、表1の実施例及び比較例4より、本開示のパラキシレン製造用触媒群は、シリカライト―1被覆のH-ZSM-5よりも、SiO被覆のH-ZSM-5を用いた時の方がパラキシレンの生産性が高く、好ましいことが分かる。
【0144】
以上、本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
図1
図2
図3