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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137460
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】補修システムおよび補修方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 1/16 20060101AFI20240927BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20240927BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20240927BHJP
   F27D 25/00 20100101ALI20240927BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F27D1/16 Q
F27D1/16 T
F27D1/00 V
F27D21/00 Q
F27D25/00
B28B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048992
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100195785
【弁理士】
【氏名又は名称】市枝 信之
(72)【発明者】
【氏名】小原 祐司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真吾
(72)【発明者】
【氏名】日野 雄太
(72)【発明者】
【氏名】阮 方
【テーマコード(参考)】
4G052
4K051
4K056
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
4K051AA06
4K051AB03
4K051BH01
4K051LF01
4K051LH03
4K056AA06
4K056CA01
4K056EA08
4K056FA19
(57)【要約】
【課題】吹き付けや中子の設置を行うことなしに、高い精度で耐火物層の補修を行う。
【解決手段】内面に耐火物層を有する構造物の補修システムであって、前記構造物内面の3次元形状を測定する測定装置と、前記構造物内面の耐火物層の少なくとも一部を除去する除去装置と、前記除去装置により前記耐火物層の少なくとも一部が除去された後の前記構造物内面に嵌合する耐火物ブロックを、不定形耐火物を用いて積層造形する造形装置と、 前記測定装置による測定結果に基づいて前記造形装置を制御する造形制御装置と、前記耐火物ブロックを前記構造物内面に嵌合する位置に据え付ける据付装置とを備える、補修システム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面に耐火物層を有する構造物の補修システムであって、
前記構造物内面の3次元形状を測定する測定装置と、
前記構造物内面の耐火物層の少なくとも一部を除去する除去装置と、
前記除去装置により前記耐火物層の少なくとも一部が除去された後の前記構造物内面に嵌合する耐火物ブロックを、不定形耐火物を用いて積層造形する造形装置と、
前記測定装置による測定結果に基づいて前記造形装置を制御する造形制御装置と、
前記耐火物ブロックを前記構造物内面に嵌合する位置に据え付ける据付装置とを備える、補修システム。
【請求項2】
前記測定装置は、前記除去装置によって耐火物層が除去された後の構造物内面の3次元形状を測定し、
前記造形制御装置は、前記測定の結果に基づいて前記造形装置を制御する、請求項1に記載の補修システム。
【請求項3】
前記測定装置は、前記除去装置によって耐火物層が除去される前の構造物内面の3次元形状を測定し、
前記造形制御装置は、前記測定により得られた3次元形状から前記除去装置によって実際に除去した部分を差し引くことにより、前記除去装置によって耐火物層が除去された後の構造物内面の3次元形状を算出し、算出された3次元形状に基づいて前記造形装置を制御する、請求項1に記載の補修システム。
【請求項4】
内面に耐火物層を有する構造物の補修方法であって、
前記構造物内面の3次元形状を測定する測定工程と、
前記構造物内面の耐火物層の少なくとも一部を除去する除去工程と、
前記除去工程で前記耐火物層の少なくとも一部が除去された後の前記構造物内面に嵌合する耐火物ブロックを、不定形耐火物を用いて積層造形する造形工程と、
前記耐火物ブロックを前記構造物内面に嵌合する位置に据え付ける据付工程とを備え、
前記造形工程においては、前記測定工程における測定結果に基づいて造形の制御が行われる、補修方法。
【請求項5】
前記測定工程では、前記除去工程で耐火物層が除去された後の構造物内面の3次元形状を測定し、
前記造形工程では、前記測定の結果に基づいて前記造形の制御が行われる、請求項4に記載の補修方法。
【請求項6】
前記測定工程では、前記除去工程で耐火物層が除去される前の構造物内面の3次元形状を測定し、
前記造形工程では、前記測定により得られた3次元形状から前記除去工程で実際に除去した部分を差し引くことにより、前記除去工程で耐火物層が除去された後の構造物内面の3次元形状を算出し、算出された3次元形状に基づいて前記造形の制御が行われる、請求項4に記載の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面に耐火物層を有する構造物の補修システムに関する。また、本発明は内面に耐火物層を有する構造物の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温の内容物を保持するための構造物には、内容物の熱から構造物を保護するために、該構造物の内面にライニングとしての耐火物層が設けられることが一般的である。このような耐火物層を有する構造物としては、例えば、溶融金属を保持するための容器(以下、「溶融金属容器」という)や、高炉樋などの溶融金属用の樋が挙げられる。
【0003】
しかし、そのような構造物を使用していると、高温の内容物と接触することによる損耗や、熱衝撃などに起因するスポーリング(き裂、剥離)のため、前記耐火物層は次第に劣化する。そのため、前記耐火物層の機能を維持するためには、定期的に補修を行う必要がある。
【0004】
耐火物層を補修する方法としては、不定形耐火物を吹き付ける方法が一般的に用いられている。しかし、劣化した耐火物層の上に不定形耐火物を吹き付けた場合、補修後の耐火物層の内部に、劣化した耐火物層と新しい耐火物層の界面が残存することになる。また、劣化した耐火物層の表面には、構造物を使用していた際に付着した溶融金属やスラグなどの滓(ノロ、ビルドアップなどともいう)が付着していることもある。そのため、補修した後に構造物を使用する中で、表面側の新しい耐火物層に亀裂が生じると、該亀裂を通じて溶融金属などが劣化した耐火物層と新しい耐火物層の界面まで侵入し、新しい耐火物層が剥離してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、上記剥離を防ぐために、耐火物層の補修にあたっては、補修する箇所の表面をはつって、劣化した耐火物層や耐火物層の表面に付着した滓を除去した後に、不定形耐火物を吹き付けることが行われている。
【0006】
例えば、特許文献1には、溶融金属構造物内面のライニングを吹き付け補修する際に、予め破砕工具により耐火物層表面の劣化層を全面にわたり除去・解体することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-292278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されているように、予め耐火物層表面の劣化層を除去した後に吹き付けを行うことにより、新しい耐火物層の剥離を防止することができる。
【0009】
しかし、通常、吹き付けによる耐火物層の補修は、作業者が吹き付けノズルを手で保持した状態で前記ノズルから不定形耐火物を吐出することによって行われている。そのため、最終的な耐火物層の厚さを均一にすることが困難であった。また、仮に表面が平坦になるように吹き付けができたとしても、所望の厚さの耐火物層が形成できているかどうかを確認することは困難であった。さらに、ノズルを保持した状態で重量のある不定形耐火物の吹き付けを連続的に行うことは、作業者にとっての負担が大きいという問題もあった。
【0010】
また、吹き付けに代えて、流し込みにより不定形耐火物層を施工する方法も知られている。前記方法では、前記構造物内に中子と呼ばれる型を設置し、構造物内面と前記中子との間の空間に不定形耐火物を流し込み、硬化させることにより耐火物層を形成する。
【0011】
しかし、前記流し込みによる方法では、中子の形や寸法は一定であるため、運用過程で乗じる前記構造物の形状に対応することができない。そのため最終的な耐火物の厚さを均一にすることが困難であった。また、構造物内部の限られた空間において、中子を正確な位置に設置することも困難であった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、吹き付けや中子の設置を行うことなしに、高い精度で耐火物層の補修を行うことが可能な補修システムおよび補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その要旨構成は、以下の通りである。
【0014】
1.内面に耐火物層を有する構造物の補修システムであって、
前記構造物内面の3次元形状を測定する測定装置と、
前記構造物内面の耐火物層の少なくとも一部を除去する除去装置と、
前記除去装置により前記耐火物層の少なくとも一部が除去された後の前記構造物内面に嵌合する耐火物ブロックを、不定形耐火物を用いて積層造形する造形装置と、
前記測定装置による測定結果に基づいて前記造形装置を制御する造形制御装置と、
前記耐火物ブロックを前記構造物内面に嵌合する位置に据え付ける据付装置とを備える、補修システム。
【0015】
2.前記測定装置は、前記除去装置によって耐火物層が除去された後の構造物内面の3次元形状を測定し、
前記造形制御装置は、前記測定の結果に基づいて前記造形装置を制御する、上記1に記載の補修システム。
【0016】
3.前記測定装置は、前記除去装置によって耐火物層が除去される前の構造物内面の3次元形状を測定し、
前記造形制御装置は、前記測定により得られた3次元形状から前記除去装置によって実際に除去した部分を差し引くことにより、前記除去装置によって耐火物層が除去された後の構造物内面の3次元形状を算出し、算出された3次元形状に基づいて前記造形装置を制御する、上記1に記載の補修システム。
【0017】
4.内面に耐火物層を有する構造物の補修方法であって、
前記構造物内面の3次元形状を測定する測定工程と、
前記構造物内面の耐火物層の少なくとも一部を除去する除去工程と、
前記除去工程で前記耐火物層の少なくとも一部が除去された後の前記構造物内面に嵌合する耐火物ブロックを、不定形耐火物を用いて積層造形する造形工程と、
前記耐火物ブロックを前記構造物内面に嵌合する位置に据え付ける据付工程とを備え、
前記造形工程においては、前記測定工程における測定結果に基づいて造形の制御が行われる、補修方法。
【0018】
5.前記測定工程では、前記除去工程で耐火物層が除去された後の構造物内面の3次元形状を測定し、
前記造形工程では、前記測定の結果に基づいて前記造形の制御が行われる、上記4に記載の補修方法。
【0019】
6.前記測定工程では、前記除去工程で耐火物層が除去される前の構造物内面の3次元形状を測定し、
前記造形工程では、前記測定により得られた3次元形状から前記除去工程で実際に除去した部分を差し引くことにより、前記除去工程で耐火物層が除去された後の構造物内面の3次元形状を算出し、算出された3次元形状に基づいて前記造形の制御が行われる、上記4に記載の補修方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、吹き付けや中子の設置を行うことなしに、高い精度で耐火物層の補修を行うことできる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の例について具体的に説明する。なお、以下の説明は、本発明の実施形態を例示的に示すものであり、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0022】
[構造物]
本発明は、内面に耐火物層を有する構造物を補修するためのものである。前記構造物としては、少なくとも内面に耐火物層を有するものであれば任意の構造物を対象とできる。前記構造物は、例えば、溶融金属用構造物であってよい。前記溶融金属用構造物としては、溶銑鍋、溶鋼の取鍋、精錬容器などの溶融金属容器や、高炉樋などの溶融金属用樋が例示される。
【0023】
本発明は、任意の材質および構造を有する耐火物層に適用できる。したがって、前記構造物の内面に設けられた耐火物層は、耐火物で構成された層であれば任意の材質および構造であってよい。
【0024】
また、ライニングとしての耐火物層を、パーマレンガと称される定型耐火物の層と、不定形耐火物の層とで構成することも一般的に行われている。例えば、典型的な溶融金属構造物は、鉄皮と称される金属製構造物本体と、前記金属製構造物本体の内面に設けられた定型耐火物(パーマレンガ)の層と、前記定型耐火物層の内面に設けられた不定形耐火物の層とを備えており、前記定型耐火物の層と前記不定形耐火物の層とにより耐火物層が構成されている。本発明は、上記のような構造を有する耐火物層の補修にも好適に用いることができる。
【0025】
以下、具体的な実施形態に基づいて本発明を説明する。なお、以下の実施形態では、主に前記構造物が容器である場合を例として説明するが、上述したように本発明は容器に限らず任意の構造物に適用可能である。
【0026】
本発明の一実施形態における補修システムは、下記(1)~(5)を備えている。
(1)構造物内面の3次元形状を測定する測定装置
(2)構造物内面の耐火物層の少なくとも一部を除去する除去装置
(3)構造物内面に嵌合する耐火物ブロックを、不定形耐火物を用いて積層造形する造形装置
(4)前記測定装置による測定結果に基づいて前記造形装置を制御する造形制御装置
(5)前記耐火物ブロックを前記構造物内面に嵌合する位置に据え付ける据付装置
【0027】
また、本発明の他の第一の実施形態における補修方法は、下記(A)~(D)の工程を備えており、(C)造形工程においては、(A)測定工程における測定結果に基づいて造形の制御を行う。
(A)構造物内面の3次元形状を測定する測定工程
(B)構造物内面の耐火物層の少なくとも一部を除去する除去工程
(C)構造物内面に嵌合する耐火物ブロックを、不定形耐火物を用いて積層造形する造形工程
(D)前記耐火物ブロックを前記構造物内面に嵌合する位置に据え付ける据付工程
【0028】
以下、上記各装置および各工程について説明する。
【0029】
[測定]
本発明では、構造物内面の3次元形状を測定し、その結果に基づいて造形装置を制御することが重要である。これにより、実際の構造物内面の形状に適合するように耐火物ブロックを造形することができる。
【0030】
3次元形状の測定に用いる測定装置としては、とくに限定されず、構造物内面の3次元形状を測定できるものであれば任意の装置を用いることができる。好適に使用できる測定装置としては、例えば、3次元レーザースキャナ、フォトグラメトリ方式の3次元形状測定装置、パターン投影方式の3次元形状測定装置などが挙げられるが、中でも3次元レーザースキャナを用いることが好ましい。
【0031】
前記3次元形状の測定は、1回で行ってもよく、複数回行ってもよい。使用する測定装置の視野に全測定範囲が収まる場合には、1回の測定で構造物全体の3次元形状データを得ることができる。例えば、前記構造物が容器である場合、3次元レーザースキャナを該容器の中心軸上かつ容器口の高さに配置し、容器中心軸を中心に360°のレーザースキャンを実施することにより容器内面の3次元形状を一度の測定で取得可能である。一方、フォトグラメトリで測定を行う場合には、測定原理上、測定範囲がカメラ視野に限定されるため、測定装置(カメラ)の向きや位置を変えながら構造物内面を複数回測定し、後処理でデータを合成することで構造物内面全体の3次元形状データを得ることができる。
【0032】
前記測定装置は、補修対象である構造物を使用している設備に備え付けておくこともできる。例えば、前記構造物が、製鉄所において溶鋼を運搬するための容器(鍋)である場合には、該容器を1チャージ使用するごとに、設備に備え付けられた測定装置で容器内面の3次元形状を測定することもできる。なお、ここで「チャージ」とは、転炉などから溶融金属を容器に受け入れ、溶鋼中の不純物を取り除く2次精錬工程を経て、次工程である鋳造設備などに溶融金属を送り出して容器が空になるまでのサイクルを指す。
【0033】
なお、前記測定装置により構造物内面の3次元形状を測定するタイミングはとくに限定されないが、除去装置による耐火物層の除去の前と、除去装置による耐火物層の除去の後の、少なくとも一方において測定を行うことが好ましい。測定のタイミングについてはさらに後ほど説明する。
【0034】
[除去]
次いで、構造物内面の耐火物層の少なくとも一部を除去する。前記除去には、定型耐火物を除去できるものであれば、とくに限定されることなく任意の装置を用いることができる。通常、前記除去装置は、回転または往復運動する工具により耐火物層を切削、破砕、または剥離する工具を備えることが好ましい。また、前記工具を容器の内面に沿って走査させながら除去を行うために、前記除去装置は、前記工具を3次元的に移動させる移動手段と、前記工具の姿勢(向き)を制御する姿勢制御手段とを備えていることが好ましい。前記移動手段および姿勢制御手段としては、例えば、重機のアームなどを使用することもできる。前記重機としては、例えば、キャタピラ等で駆動される車体本体と、工具を6自由度(3軸方向の位置/回転)またはそれ以上の自由度で位置決めできるアームを備えた重機を用いることが好ましい。
【0035】
前記除去は任意の方法で行うことができる。しかし、滓や劣化した耐火物層が残存した状態で新たな耐火物ブロックを設置すると、十分な密着性が得られない場合がある。例えば、構造物が溶融金属容器である場合、補修後の容器に高温の溶融金属を入れると、その熱により残存していた滓が溶融し、その結果、設置した耐火物ブロックが剥離する場合がある。。そのため、前記除去においては、少なくとも、構造物内面の耐火物層の表面に付着した滓と、該耐火物層の表面側の劣化している部分(劣化層)とを除去することが好ましい。
【0036】
工具を容器内面に沿って走査しながら除去を行う場合、その走査パターンは特に限定されず、使用する除去装置や対象とする容器の形状に合わせて決定すればよい。切削粉が下に落ちていくことを考慮すると、容器内面の周方向に走査しながら除去する動作を、下方から上方へわたって繰り返すことが好ましい。
【0037】
また、工具を容器内面に沿って走査しながら除去を行う場合には、1回の走査(1パス)で除去を行うこともできるが、複数回の走査(複数パス)で除去を行うこともできる。複数パスで除去を行う場合、走査回数は2以上の任意の数とできるが、過度に回数を多くすると除去に要する時間が長くなり作業効率が低下する。そのため、走査回数は3回以下とすることが好ましい。さらに、複数パスで除去を行う場合には、1回の走査が完了した後に、次の走査における除去量を演算することもできる。
【0038】
[造形]
本発明においては、除去装置により前記耐火物層の少なくとも一部が除去された後の前記構造物内面に嵌合する耐火物ブロックを、不定形耐火物を用いて積層造形する。このように積層造形された耐火物ブロックを、次の据付工程において構造物内面に嵌合する位置に据え付けることにより、吹き付けや中子を用いた流し込みを行うことなく、正確に補修を行うことができる。
【0039】
前記積層造形は、とくに限定されることなく任意の場所で行うことができるが、典型的には、補修対象である構造物の外部で行うことが好ましい。
【0040】
前記積層造形においては、とくに限定されることなく、不定形耐火物を積層して所望の3次元形状の耐火物ブロックを製造できるものであれば任意の装置を用いることができる。典型的には、前記造形装置は、不定形耐火物を保持するタンクと、不定形耐火物を吐出するノズルと、前記タンクから前記ノズルへ不定形耐火物を送給するポンプとを備えることが好ましい。また、前記成形装置は、前記ノズルを3次元的に移動させるノズル移動手段と、前記ノズルの姿勢(向き)を制御するノズル姿勢制御手段とを備えていることが好ましい。前記ノズル移動手段およびノズル姿勢制御手段としては、例えば、作業床に設置された走行レール上を走行可能な門型の走行台車と、前記レールと直行する方向に前記台車上に設置された横行レール上を横行する横行台車と、前記横行台車上に設置された昇降レール上を昇降台車と、昇降台車に設置されたノズル吐出角度調整用アクチュエータなどを用いることが好ましい。
【0041】
前記造形においては、とくに限定されず、任意の不定形耐火物を用いることができる。前記不定形耐火物としては、従来の吹付け施工や流し込み施工に使用される不定形耐火物を使用することもできる。不定形耐火物の水分量や組成を変えることで、積層造形が行いやすいように不定形耐火物の流動性や硬化時間を調整してもよい。
【0042】
前記造形においては、乾燥を行って不定形耐火物を硬化させればよい。前記乾燥は、自然乾燥および加熱乾燥の一方または両方であってよい。前記乾燥においては、耐火物ブロックを完全に乾燥させてもよいが、少なくとも、クレーン等の据付装置で搬送および据付が可能な程度に乾燥させればよい。
【0043】
本発明の一実施形態においては、以下の手順で乾燥と焼成を行うことができる。まず、造形工程においては、積層造形した耐火物ブロックを、搬送および据付が可能な程度まで乾燥させる。次いで、前記乾燥後の耐火物ブロックを前記構造物内面に嵌合する位置に据え付ける。既存の耐火物層と前記耐火物ブロックの間の隙間、および据え付けた耐火物ブロック同士の間に不定形耐火物を充填する。その後、構造物内に据え付けられた前記耐火物ブロックおよび充填された不定形耐火物を、さらに加熱して乾燥、焼成する。
【0044】
耐火物ブロックの大きさはとくに限定されず、任意の大きさとすることができる。構造物が大きい場合には、当該構造物の内面全体に嵌合する耐火物ブロックを一体に造形してしまうと、搬送や据付が困難となる場合がある。そのため、据付の行いやすさなどを考慮して、補修に必要な耐火物層を、複数のブロックに分割して作成することが好ましい。例えば、補修対象の高さが2m以上である場合、高さ1m以下の複数の耐火物ブロックを作成し、下段から上段へ順次耐火物ブロックを据え付けることにより全体を補修することもできる。また、高さ方向だけでなく、水平方向にも複数のブロックに分割してもよい。例えば、容器内面に円筒状の耐火物ブロックを設置する場合、前記円筒を水平方向に2~4分割した耐火物ブロックを作成することもできる。
【0045】
また、嵌合時の干渉による耐火物ブロックの破損を防止するため、前記構造物と嵌合するように耐火物ブロックを設置した際にクリアランスを設けることが好ましい。言い換えると、設置した際にクリアランスができるように積層造形する耐火物ブロックのサイズを決定することが好ましい。前記クリアランスとしては、(1)劣化層を除去した後の構造物の表面と、そこに嵌合させる耐火物ブロックとの間の隙間、および(2)耐火物ブロック同士の間の隙間の、少なくとも一方を設けることが好ましく、両方を設けることが好ましい。
【0046】
しかし、前記クリアランス部に隙間(空気層)が残存したまま補修後の構造物を運用すると、前記隙間に溶融金属などが侵入し、前記構造物が高温によって溶融してしまうおそれがある。そのため、耐火物ブロックを据え付けた後、前記クリアランスに空気層が残存しないよう、不定形耐火物を圧入することが好ましい。そこで、前記耐火物ブロックには、不定形耐火物を圧入するための湯口や湯道を成形しておくことが好ましい。
【0047】
[造形制御]
本発明では、上記積層造形の際に、前記測定装置による測定結果に基づいて造形の制御を行うことが重要である。これにより、実際の構造物内面の形状に応じた3次元形状を有する耐火物ブロックを作成することができる。
【0048】
具体的な制御の方法はとくに限定されないが、測定装置によって測定された3次元形状データを参照し、製造した耐火物ブロックを据え付けた際に、構造物内面が所望の形状となるように、造形装置の動作を制御すればよい。一般的には、造形装置のノズル先端から不定形耐火物を吐出しながら、水平断面形状を1層成形し、これを鉛直方向に1層ずつ積層しながら成形するのが好ましい。前記制御においては、最終的な耐火物層の3次元形状に影響する各種のパラメータ、例えば、ノズルの走査経路、走査速度、ノズルの向き、吐出量などを制御することができる。また、前記制御においては、不定形耐火物の粘度等の物性を合わせて考慮することもできる。
【0049】
前記制御においては、さらに、予め用意した、目標とする形状を表す3次元形状データ(以下、目標形状データ)を併用することも好ましい。前記目標形状データとは、言い換えると、積層造形した耐火物ブロックを前記構造物内面に嵌合した後の構造物内面の形状を表した3次元形状データである。測定装置によって測定された3次元形状データと、前記目標形状データとを比較することにより、より正確に製造する耐火物ブロックの形状を調整することが可能となる。
【0050】
前記目標形状データは任意の方法で用意することができる。例えば、耐火物層を形成した状態の構造物の設計データ(CADデータ等)から目標形状データを作成することもできる。また、例えば、耐火物層がパーマレンガと称される定型耐火物の層と不定形耐火物の層とで構成されている場合には、定型耐火物の層のみが設けられ、不定形耐火物の層が設けられていない状態の3次元形状データを実測または設計データから作成し、前記3次元形状データに、所望の厚みの耐火物層を加えた形状を計算することによって目標形状データを作成することもできる。
【0051】
以下、前記測定および造形制御の好適な2つの態様について説明する。
【0052】
(除去後測定方式)
本発明の一実施形態においては、まず、前記測定工程において、前記除去工程で耐火物層が除去された後の容器内面の3次元形状を測定する。そして、前記造形工程においては、前記測定の結果に基づいて造形制御を行う(以下、除去後測定方式という)。
【0053】
この除去後測定方式では、実際に除去後の3次元形状を測定し、その結果に基づいて制御を行うため、より正確に補修を行うことができる。特に、除去に使用する工具の損耗などにより、滓や劣化層が計画通り除去できていない可能性を考慮すれば、除去後測定方式を採用することが好ましい。なお、除去前に3次元形状の測定を行った場合でも、除去後に再度3次元形状の測定を実施し、その測定結果を用いることができる。
【0054】
(除去前測定方式)
また、本発明の別の実施形態においては、前記測定工程において、前記除去工程で耐火物層が除去される前の容器内面の3次元形状を測定する。そして、前記造形工程では、前記測定により得られた3次元形状から前記除去工程で実際に除去した部分を差し引くことにより、前記除去工程で耐火物層が除去された後の構造物内面の3次元形状を算出し、算出された3次元形状に基づいて造形制御を行う(以下、除去前測定方式という)。
【0055】
この除去前測定方式では、前記除去工程で耐火物層が除去される前の構造物内面の3次元形状を測定するが、後述するように、その除去前の3次元形状データは、除去工程における除去装置の制御にも利用することができる。そしてその場合、除去前に1回測定を行うのみで、除去後に改めて形状を測定する必要が無いため、作業効率が高い。
【0056】
以上の通り、本発明によれば、耐火物層を除去した後の構造物内面の形状に対応した3次元形状を有する耐火物ブロックを形成することができる。
【0057】
[据付]
次いで、上記造形工程で作成した耐火物ブロックを、構造物内面に嵌合する位置に据え付ける。前記据付を行うための据付装置としては、とくに限定されることなく任意の装置を用いることができる。前記据付装置としては、典型的にはクレーンを用いることができる。
【0058】
例えば、構造物の外部で積層造形して作成した耐火物ブロックを、クレーンにより構造物内に装入し、所望の位置に構造物内面に嵌合するように据え付ければよい。
【0059】
耐火物ブロックを据え付けた後には、隙間に不定形耐火物を圧入することが好ましい。具体的には、既存の耐火物層と前記耐火物ブロックの間の隙間、および据え付けた耐火物ブロック同士の間に不定形耐火物を充填することが好ましい。
【0060】
なお、不定形耐火物を充填した後、さらに加熱を行って、設置した耐火物ブロックおよび充填した不定形耐火物を乾燥・焼成することが好ましい。前記加熱は任意の方法で行うことができる。例えば、火炎を噴射するバーナーを構造物の内部に設置し、構造物内を加熱することによって乾燥・焼成を行うとこができる。その際、前記構造物が容器である場合には、加熱効率を高めるために容器の開口部に蓋をしておくことが好ましい。
【0061】
(3次元形状データに基づく除去)
なお、本発明においては、上述したように任意の方法で耐火物層の除去を行うことができるが、本発明のより好適な実施形態においては、除去に先立って前記測定装置による測定を実施し、その測定結果(3次元形状データ)に基づいて除去を行うこともできる。以下、前記実施形態について説明する。
【0062】
本実施形態における補修システムは、さらに、前記測定手段によって得た3次元形状に基づいて、前記耐火物層を除去する範囲を決定する演算装置を備えている。そして、前記除去装置は、前記演算手段による演算結果に基づいて前記構造物内面の耐火物層を除去するよう構成されている。
【0063】
また、本実施形態における補修方法は、前記測定工程で得た3次元形状に基づいて、前記耐火物層を除去する範囲を決定する演算工程を備えており、前記除去工程においては、前記演算工程における演算結果に基づいて前記構造物内面の耐火物層を除去する。
【0064】
[演算装置・演算工程]
上記演算においては、得られた構造物内面の3次元形状に基づいて耐火物層を除去する範囲を決定する。すなわち、構造物内面の3次元形状とは、耐火物層とその表面に付着した滓を含めた表面のプロファイルであるから、当該プロファイルにおいて凸部となっている部分は滓が厚く付着している可能性が高く、したがってその部分は除去量を多くする必要があると判断できる。反対に、当該プロファイルにおいて凹部となっている部分は、劣化した耐火物層が剥離した結果、凹部となっている可能性が高く、したがって、その部分は除去量を少なくすればよい。言い換えると、得られた構造物内面の3次元形状に基づいて、各部における耐火物層の除去量を決定することが好ましい。
【0065】
なお、前記除去量の決定においては、構造物の使用履歴などの情報を考慮することもできる。例えば、構造物内面の3次元形状を定期的に測定している場合には、その測定データに基づいて剥離の発生を判定するとともに、剥離した部位を特定することもできる。また、剥離が生じない場合、形成される劣化層のおおよその厚さを、構造物の使用履歴(使用回数、仕様時間など)から推定することも可能である。したがって、前記除去量の決定においては、構造物の使用履歴から推定される劣化層の推定厚さを使用することもできる。また、形成される劣化層の厚みはある程度(例えば、30~40mmなど)で飽和する傾向がある。そのため、既知の劣化層の飽和厚みを予め演算装置に入力しておき、前記除去量の決定に使用することもできる。
【0066】
このように、得られた構造物内面の3次元形状に基づいて耐火物層を除去する範囲を決定することにより、耐火物層表面に付着した滓や劣化層をより的確に除去するとともに、劣化していない耐火物層が除去される量を低減することができる。
【0067】
前記演算工程においては、耐火物層を除去する範囲を決定し、その決定された範囲の耐火物層を除去できるように、除去に用いる工具の走査経路を決定することも好ましい。
【0068】
また、前記耐火物層を除去する範囲の決定においては、さらに、予め用意した除去限界位置を表す3次元形状データ(以下、除去限界データ)を併用することも好ましい。ここで、除去限界位置とは、当該位置を超えて(当該位置よりも深く)除去を行ってはいけない位置を指すものとする。耐火物層を除去する範囲を決定する際に、前記除去限界データを参照することにより、耐火物層を過剰に除去してしまうことや、耐火物層以外の部分(構造物本体など)を工具で損傷させてしまうことを防止できる。
【0069】
例えば、上述したように耐火物層がパーマレンガと称される定型耐火物の層と不定形耐火物の層とで構成されている場合、不定形耐火物の層のみを除去し、定型耐火物の層は除去しないことが好ましい。したがって、そのようなケースでは、定型耐火物の層のみが設けられ、不定形耐火物の層が設けられていない状態の3次元形状データを前記除去限界データとして使用することにより、定型耐火物の層を除去してしまうことを防止できる。
【0070】
上述したように、前記除去装置は上記測定装置を備えていてもよい。除去装置が測定装置を備えている場合、該測定装置で構造物内面の3次元形状を測定し、その結果に基づいて前記除去装置を制御することができる。
【0071】
また、前記除去装置は上記測定装置(ここでは第一の測定装置とする)とは別の、構造物内面の3次元形状を測定する第二の測定装置を備えていてもよい。除去装置が第二の測定装置を備えている場合、前記第二の測定装置の測定結果を利用して該除去装置の位置合せを行うことができる。例えば、除去装置を、除去を実施するための位置に設置した後、第二の測定装置による測定を行い、その結果を利用することで容易に位置合せを行うことができる。より具体的な例としては、構造物を使用している設備(工場など)に設置されている第一の測定装置を用いて構造物内面の3次元形状を測定して第一の3次元形状データを取得し、その後、除去装置に備えられている第二の測定装置を用いて第二の3次元形状データを取得し、前記第一の3次元形状データと第二の3次元形状データを比較することによって前記除去装置の位置合せ(原点出し)を行うこことができる。第一の3次元形状データと第二の3次元形状データを比較する方法としては、例えば、一方を他方にフィッティングする方法が挙げられる。第一の3次元形状データの座標系と第二の3次元形状データの座標系の座標変換行列を求めることもできる。
【0072】
本実施形態における補修システムは、さらに、前記除去装置にかかる負荷をモニターし、前記負荷に基づいて耐火物層を除去する範囲を調整する制御装置を備えていてもよい。
【0073】
また、本実施形態における補修方法は、さらに、前記除去工程における負荷をモニターし、前記負荷に基づいて耐火物層を除去する範囲を調整する制御工程を備えていてもよい。
【0074】
上述したように耐火物層の表面には滓が付着している場合があるが、耐火物と滓とでは材質が異なるため、両者の物性(硬さなど)は異なっている。また、同じ耐火物層であっても、劣化した部分(劣化層)と劣化していない部分(健全層)とでは、やはり物性が異なっている。そのため、除去の際に除去装置にかかる負荷をモニターすることにより、現在除去している部分の物性の変化を知ることができる。したがって、前記負荷に基づいて耐火物層を除去する範囲を調整することにより、より的確に除去を行うことができる。
【0075】
具体的な調整の方法はとくに限定されないが、例えば、負荷の変化に基づいて除去している部分の変化(例えば、滓から劣化層、劣化層から健全層)を検知し、それに基づいてその部位における除去の継続または終了を判定することもできる。また、他の例としては、予め適当な閾値を設定しており、負荷と前記閾値とを比較することによって現在除去している部位が滓、劣化層、および健全層のいずれであるかを判別し、それに基づいてその部位における除去の継続または終了を判定することもできる。
【0076】
このような調整を行うことにより、3次元形状の測定結果のみに基づいて除去を行う場合よりも一層的確な滓や除去部の除去が可能となることに加え、劣化していない耐火物層が除去される量をさらに低減することができる。
【0077】
例えば、深さ方向に一定の切込み量で工具を走査しながら除去する工程を、2パス(2回)またはそれ以上繰り返して行う場合には、1パス(1回)の走査が終了するごとに負荷の値を評価し、健全層に到達していると判断される場合には以降のパスを省略することもできる。
【0078】
なお、モニターする前記負荷としては、除去している部位の物性の変化が反映される部分の負荷であれば任意のものを用いることができる。典型的には、切削工具を駆動するアクチュエータにかかる負荷を使用することが好ましい。例えば、切削工具をモータで回転させる場合には、前記モータにかかる負荷をモニターすることができる。前記モータが油圧モータであれば、油圧をモニターすればよい。
【0079】
また、本実施形態における補修システムは、さらに、前記構造物内面の色情報を取得する色情報取得装置を備えていてもよく、前記演算装置は、前記測定手段によって得た3次元形状に加え、さらに前記色情報取得装置で得た色情報を考慮して、前記耐火物層を除去する範囲を決定することもできる。
【0080】
また、本実施形態における補修方法は、さらに、前記構造物内面の色情報を取得する色情報取得工程を備えていてもよく、前記演算工程では、前記測定工程で得た3次元形状に加え、さらに前記色情報取得工程で得た色情報を考慮して、前記耐火物層を除去する範囲を決定することもできる。
【0081】
上述したように耐火物層の表面には滓が付着している場合があるが、耐火物と滓とでは材質が異なるため、両者の色調は異なっている。また、同じ耐火物層であっても、劣化した部分(劣化層)と劣化していない部分(健全層)とでは、やはり色調が異なっている。例えば、劣化していない健全層は耐火物本来の色(典型的には明るい茶色)を保っているのに対して、溶融金属との接触により劣化した劣化層は金属に浸透により黒ずんだ色合いに変化している。そのため、構造物内面の色情報を取得することにより、当該部分の材質を知ることができる。したがって、演算を行って耐火物層を除去する範囲を決定する際に、3次元形状に加え、前記色情報を考慮することにより、より的確に除去を行うことが可能となる。
【0082】
色情報を利用方法はとくに限定されないが、予め閾値を設定しておき、前記閾値と色情報とを比較して、当該部分が滓、劣化層、および健全層のいずれであるかを判別することが好ましい。
【0083】
前記色情報取得装置としては、構造物内面の色情報を取得することができる装置であれば任意のものを用いることができるが、典型的には、デジタルカメラを使用することができる。色情報取得装置を使用する場合には、該色情報取得装置と3次元形状の測定に用いる測定装置とは、別体であってもよいが、一体であってもよい。言い換えると、3次元形状の測定に用いる測定装置が色情報取得装置を兼ねていてもよい。例えば、3次元形状を測定するためのレーザースキャナの中には、カラー画像を撮影するデジタルカメラを内蔵しており、レーザースキャナによって得られる3次元点群データに含まれる各点に、色情報(RGB)をマッピングすることができるものもがある。そのようなデジタルカメラ内蔵型レーザースキャナは、測定装置兼色情報取得装置として好適に用いることができる。
【0084】
色情報取得装置を使用する場合には、測定された3次元形状に基づいて1パス目の走査で構造物内面に付着した滓を除去し、その後、色情報取得装置で色情報を取得し、その結果に基づいて露出した表面が劣化層であるか健全層であるかを判定することもできる。それにより、色情報に基づいた判定結果を考慮して2パス目の除去量を決定することができる。
【0085】
次に、本発明における除去の、さらに好適な実施形態の一例について、以下、説明する。
【0086】
(1)構造物内面の3次元形状(形状1)を測定する。
(2)前記測定で得た3次元形状に基づいて走査範囲を決定し、工具を走査して構造物内面の表層部を除去する(1パス目)。
(3)前記除去後の構造物内面の3次元形状(形状2)を測定し、形状1と形状2の差から、構造物内面の各部が、1パス目の除去によって以下のいずれの状態になっているのかを判定する。
A)滓と劣化層が一体で剥離した状態(健全層の表面が露出)
B)滓のみ剥離した面(劣化層の表面が露出)
C)元々滓は付着していないが劣化層の剥離が発生した状態(健全層の表面が露出)
D)元々滓は付着しておらず剥離が発生していない状態(劣化層の表面が露出)
*形状1と形状2の差:A>B>C>D
*形状2における凹み程度:A≒C>B≒D
健全層が露出しているかどうかの判定には、色情報を用いることもできる。
(4)上記の判定結果に基づいて、走査範囲を決定し、工具を走査して構造物内面を再度除去する(2パス目)。その際、健全層が露出している部分は除去しない。