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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001375
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】スペーサーを伴った台シート
(51)【国際特許分類】
   A63B 60/12 20150101AFI20231227BHJP
   A63B 102/02 20150101ALN20231227BHJP
   A63B 102/04 20150101ALN20231227BHJP
【FI】
A63B60/12
A63B102:02
A63B102:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097732
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】522243473
【氏名又は名称】名古屋HKプランニング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137899
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 広文
(72)【発明者】
【氏名】堀部 泰隆
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ストリングスを備えたラケットのグリップ部に装着してプレーヤーの手の表皮の摩耗及びそれに伴う皮疹(まめ)の発症の抑制に寄与することができるスペーサー(詰め物、間に挟む小片、又は薄い片)を装着する場合、複数のスペーサーの小片を組み合わせたり、グリップ部において調整した最適箇所に位置決めしたりすることが意外に煩雑で難しい。
【解決手段】本発明は、個々のプレーヤーの特徴、好み、及び使用方法に沿って調整したスペーサーを台紙のような薄くて柔軟なシート上に予め配置した合体物とすることで装着方法を容易にすると共に合体物の配置に関して精度や再現性の向上を図り、課題解決に導こうとするものである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストリングスを備えたラケットを使用する球技において、プレーヤーが把持する前記ラケットのグリップ部及び/又は前記グリップ部から繋がる隣接部(以下、単に「隣接部」という)に対して後付けで密着被覆することができる薄い台シートであって、
前記台シートの上には、前記プレーヤーの手指と前記グリップ部及び/又は前記隣接部との間に生じた隙間、及び/又は、前記プレーヤーの手と前記グリップ部が接触していても把持力が前記グリップ部及び/又は前記隣接部に有効に伝わらない箇所を埋設可能とするような、所定の肉厚及び所定の形状を備えるスペーサーが配置されており、この前記台シートを台紙のような基盤の役割としながら、前記スペーサーが固設された、又は前記スペーサーと一体化した前記台シートが、前記グリップ部及び/又は前記隣接部に対して前記スペーサーを所定の位置へ簡易に、且つ再現性高く配置し易くすることによって前記プレーヤーの手指の表皮の摩耗の抑制及びその摩耗に伴う皮疹の発症の予防に寄与することを特徴とする、ストリングスを備えたラケットのグリップ部及び/又は隣接部に後付可能な前記スペーサーを伴った台シート。
【請求項2】
前記台シートを両端が解放された筒状の台シートとし、前記ラケットの前記隣接部から前記グリップ部の方向へ装着することを特徴とする、請求項1に記載の前記スペーサーを伴った台シート。
【請求項3】
前記台シートを筒の片端が閉塞されたカップ形状の台シートとし、前記ラケットの前記隣接部から前記グリップ部の方向へ装着することを特徴とする、請求項1に記載の前記スペーサーを伴った台シート。
【請求項4】
前記台シートを前記カップ形状の台シートの閉塞された底面に対して前記ラケットの前記隣接部の形状よりやや小さく、貫通した穴を設けた底穴付きカップ形状の台シートとし、前記ラケットの前記隣接部から前記グリップ部の方向へ装着することを特徴とする、請求項3に記載の前記スペーサーを伴った台シート。
【請求項5】
前記台シートを、前記台シートのシート部に多数の小さな貫通孔を設けて網状の台シートとしたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の前記スペーサーを伴った台シート。
【請求項6】
前記台シートのいずれかの位置に目印が記されており、
前記目印と、前記ラケットの特定位置又は前記ラケットのいずれかの位置に記された合いマークと符号することにより、既に前記台シートの上に配置された前記スペーサーを前記ラケットの前記グリップ部、及び又は、前記隣接部の所定の位置に位置決めできることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の前記スペーサーを伴った台シート。
【請求項7】
前記台シートのいずれかの位置に目印が記されており、
前記目印と、前記ラケットの特定位置又は前記ラケットのいずれかの位置に記された合いマークと符号することにより、既に前記台シートの上に配置された前記スペーサーを前記ラケットの前記グリップ部、及び又は、前記隣接部の所定の位置に位置決めできることを特徴とする、請求項5に記載の前記スペーサーを伴った台シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球技で使用する打球具の中でもストリングスを備えたラケットのグリップ部、及び/又は、隣接部に装着する後付可能なスペーサー(詰め物、間に挟む小片又は薄い片)の配置を補助するものである「スペーサーを伴った台シート」に関する。
【背景技術】
【0002】
ストリングスを備えたラケットを使用する球技において、プレーヤーは自らの手でラケットのグリップ部を把持して競技を行うわけであるが、ラケットのスイングと球の打撃による衝撃は、まずラケットのグリップ部を通してプレーヤーの手指の表皮に伝えられる。これが幾度となく繰り返されることでプレーヤーの手指の表皮は摩耗し、ひいては肉刺(外傷性水疱)を発症する場合がある。この時、プレーヤーが把持した手指の表面とラケットのグリップ部がピタリと密着していればよいが、手指の表面とグリップ部の間に僅かな隙間や浮いた感触の部分があると打球時の衝撃によってズレが生じ、プレーヤーの手指の表皮が繰り返し擦れてその部分に赤い腫れや肉刺が発症する。このような隙間や浮いた感触の部分を埋めて手指の表面とラケットのグリップ部に生じるズレを最小限に抑制することを目的とし、プレーヤーの手指とラケットのグリップ部との間に挟み込んで使用する詰め物、又は小片を「スペーサー」と称する。なお、スペーサーの詳細については、特許文献1を参照されたい。
【0003】
使用したプレーヤーの感想によれば、ラケットのグリップ部にスペーサーを装着することによって手指の表面がグリップ部により密着し、打球時のズレが最小限に抑制されることを実感できたとのことである。また、長時間プレーしても手の表面が局部的に赤く腫れる箇所も少なくなり、肉刺もでき難くなったとのことである。このことからプレーヤーの使用条件に十分に合せ込んだスペーサーが当初の目的とする効果をプレーヤーに提供することができるのは、概ね間違い無さそうである。
【0004】
現状考えられるスペーサーの装着方法としては、グリップ基部とベースとなるレザーグリップテープの間、又はベースのレザーグリップテープとその上に巻き付ける使い捨てのオーバーグリップテープの間に挟み込んで使用することが一般的である。なぜなら個々のプレーヤーの使用方法の違いでスペーサーの形状、サイズ、配置が異なるため、グリップ部の最も外側の表面にスペーサーを安定的に固定しておく方法、例えば強力な接着剤による固定、が困難であるからである。固定するための密着面の面積、グリップ部の表面からの張り出し量や分布も様々であり、グリップ部の表面に接着されただけのスペーサーでは到底、打球時の手指の表面とグリップ部の間に生ずる衝撃や摩擦に耐え続けられないことは容易に想像できる。したがって、グリップ部に巻き付けられるグリップテープ類の内側である中間層にスペーサーを挟み込む方法が、現在、スペーサーを最も安定的に使用することができる方法である。
【特許文献1】特許第6764046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここまでスペーサーとその使用方法について簡単に述べてきたが、そもそもスペーサーは、個々のプレーヤーの手指の特徴や使用するラケットのグリップ部の握り方などに合わせて製作又は選定され、更に実際のプレーによる試用を通してプレーヤー独自の使用方法や感性に即して調整されるべきものである。言い換えれば、製作や選定と同じくらいスペーサーを調整する作業も重要であるということである。したがって、個々のプレーヤーが求める理想状態に近いスペーサーに収斂させていく過程において当然、着脱による試行錯誤が繰り返されることになる。しかし、スペーサーを調整する場面において、着脱を始めとするいくつかの作業が殊の外、煩雑であり、このことがスペーサーの取り扱いを非常に難しくしている。つまり、現状のスペーサーにはまだ改良の余地が残されているということである。
【0006】
まず、大まかにスペーサーを選定又は適切な形状と大きさに調整した後、タイル片や薄い膜状片、或いは特別な形状をした成形片といった様々な種類のスペーサーをグリップ基部又はベースのレザーグリップの上の適切な位置に配置する必要がある。個々のスペーサーはバラバラであって、調整段階でグリップ基部又はレザーグリップの上に一々、接着剤で貼り付けて行き、その上からオーバーグリップテープを巻いて都度、プレーヤーが把持して確認する作業を繰り返すことになる。プレーヤーが自分に適合するスペーサーの組合せや形状を模索する段階において、一度目の試行でそのプレーヤーの納得する状態に仕上がれば幸運であるが、違和感があれば始めからやり直すことになる。そのような場合、オーバーグリップテープを一旦、外した上でスペーサーの個数や種類を変更したり、成形片の形状を更に修正加工したり、前スペーサーの接着剤を除去したりと様々な作業をプレーヤー自身に適合したスペーサーに辿り着くまで繰り返さなければならず、非常に煩雑である。
【0007】
また、たとえそのプレーヤーの使用方法や感性に適合したスペーサーを見出せたとしても、ラケットのグリップ基部又はレザーグリップの上に的確に配置することが難しい場合がある。ラケットのグリップ部は、そのほとんどが正八角形の一つの対辺を長くして少し扁平な八角形の断面をしたグリップ基部に、グリップ基部の途中からグリップ部の端にかけて八角錐台状に盛り上がった樹脂製のエンドキャップが被せられ、その上にレザーグリップなどの基本となるグリップテープが巻かれたものである。繰り返しになるが、スペーサーは、このグリップ部の形状とプレーヤーが把持した手指の表面との間に入って微小な隙間や浮いた感触の部分を埋める繊細な凹凸物である。したがって、グリップ部の上に配置するスペーサーが当初の調整で得られた最適位置から少しでもずれれば、プレーヤーにとって異物と同じ違和感の原因となり、再度配置をやり直さなければならないことになる。ところが、スペーサー自体の調整のために着脱を繰り返すたびに複雑な曲面で構成されるグリップ部に対して毎度、元の的確な位置へ戻す作業が意外に難しいのである。スペーサーを実用する過程で明らかになった位置決めにおける取り扱い難さも見逃すことのできない課題である。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、前述したスペーサーの配置に関する煩雑さに起因するところの取り扱い難さを克服し、スペーサーの使用を試みるプレーヤーがより容易に、より再現性高くスペーサーを使用できるように改良を加えたスペーサーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明として、前記スペーサーを容易に、且つ再現性高く使いこなすために予め土台となる薄いシートの上にスペーサーを配置する方法を以下に述べる。
【0010】
請求項1の発明は、ストリングスを備えたラケットを使用する球技において、プレーヤーが把持する前記ラケットのグリップ部及び/又は前記グリップ部から繋がる隣接部(以下、単に「隣接部」という)に対して後付けで密着被覆することができる薄い台シートであって、
前記台シートの上には、前記プレーヤーの手指と前記グリップ部及び/又は前記隣接部との間に生じた隙間、及び/又は、前記プレーヤーの手と前記グリップ部が接触していても把持力が前記グリップ部及び/又は前記隣接部に有効に伝わらない箇所を埋設可能とするような、所定の肉厚及び所定の形状を備えるスペーサーが配置されており、この前記台シートを台紙のような基盤の役割としながら、前記スペーサーが固設された、又は前記スペーサーと一体化した前記台シートが、前記グリップ部及び/又は前記隣接部に対して前記スペーサーを所定の位置へ簡易に、且つ再現性高く配置し易くすることによって前記プレーヤーの手指の表皮の摩耗の抑制及びその摩耗に伴う皮疹の発症の予防に寄与することを特徴とする、ストリングスを備えたラケットのグリップ部及び/又は隣接部に後付可能な前記スペーサーを伴った台シートである。
【0011】
請求項2の発明は、前記台シートを両端が解放された筒状の台シートとし、前記ラケットの前記隣接部から前記グリップ部の方向へ装着することを特徴とする、請求項1に記載の前記スペーサーを伴った台シートである。
【0012】
請求項3の発明は、前記台シートを筒の片端が閉塞されたカップ形状の台シートとし、前記ラケットの前記隣接部から前記グリップ部の方向へ装着することを特徴とする、請求項1に記載の前記スペーサーを伴った台シートである。
【0013】
請求項4の発明は、前記台シートを前記カップ形状の台シートの閉塞された底面に対して前記ラケットの前記隣接部の形状よりやや小さく、貫通した穴を設けた底穴付きカップ形状の台シートとし、前記ラケットの前記隣接部から前記グリップ部の方向へ装着することを特徴とする、請求項3に記載の前記スペーサーを伴った台シートである。
【0014】
請求項5の発明は、前記台シートを、前記台シートのシート部に多数の小さな貫通孔を設けて網状の台シートとしたことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の前記スペーサーを伴った台シートである。
【0015】
請求項6の発明は、前記台シートのいずれかの位置に目印が記されており、前記目印と、前記ラケットの特定位置又は前記ラケットのいずれかの位置に記された合いマークと符号することにより、既に前記台シートの上に配置された前記スペーサーを前記ラケットの前記グリップ部、及び又は、前記隣接部の所定の位置に位置決めできることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の前記スペーサーを伴った台シートである。
【0016】
請求項7の発明は、前記台シートのいずれかの位置に目印が記されており、前記目印と、前記ラケットの特定位置又は前記ラケットのいずれかの位置に記された合いマークと符号することにより、既に前記台シートの上に配置された前記スペーサーを前記ラケットの前記グリップ部、及び又は、前記隣接部の所定の位置に位置決めできることを特徴とする、請求項5に記載の前記スペーサーを伴った台シートである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、本発明のスペーサーを可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性を有する平面状の薄い台シートの上へ個別に調整されたスペーサーを配置した合体物とすることで、ストリングスを備えたラケットのグリップ部及び/又は前記グリップ部から繋がる隣接部に容易に装着することが可能になると同時に、プレーヤー個人の使用方や感性に合致したスペーサーをラケットのグリップ部及び/又は前記グリップ部から繋がる隣接部のほとんど変わらない最適な位置に再現性高く配置することが可能となる。そのため、台シートを伴ったスペーサーの配置に関わる微調整をする場合は勿論、ラケットを交換してその台シートを伴ったスペーサーを移植する場合であっても、プレーヤーは、調整された心地よいグリップ部の握った感覚と、手指の表皮の摩耗の抑制及びその摩耗に伴う皮疹の発症の予防に寄与する効果を容易に且つ安定的に享受することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、本発明のスペーサーを可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性を有する薄い筒状の薄い台シートの上にスペーサーを配置した合体物とすることで、ストリングスを備えたラケットのグリップ部、及び/又は、前記グリップ部から繋がる隣接部にプレーヤー個人の好みや使用条件に合致したスペーサーを装着する場合、そのプレーヤーにとって最適なグリップの外周方向の位置に対して精度よく配置することが可能となり、スペーサーの効果をより安定的に発揮することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、本発明のスペーサーを可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性を有する薄いカップ形状の薄い台シートの上にスペーサーを配置した合体物とすることで、ストリングスを備えたラケットのグリップ部及び/又は前記グリップ部から繋がる隣接部にプレーヤー個人の好みや使用条件に合致したスペーサーを装着する場合、そのプレーヤーにとって最適なグリップの外周方向の位置のみならず、ラケットのグリップ端部からの距離に対しても精度よく配置することが可能となり、スペーサーの効果をより安定的に発揮することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、前記の請求項3によるカップ形状の台シートの上にスペーサーを配置した合体物を、ストリングスを備えたラケットのグリップ部及び/又は前記グリップ部から繋がる隣接部に装着した場合、ラケットのグリップ端部が覆われて前記隣接部に記されたラケット製造者固有の文字、或いはマークを認識することが困難になることがあるが、グリップ端の隣接部の大きさよりやや小さな貫通した穴が空いていることにより隣接部の文字或いはマークを容易に認識することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、前記の請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の台シートに多数の貫通する穴を設けて網状の台シートとすることで台シート自体の軽量化を果たすと共に、密着被覆する台シートがラケットのグリップ部、及び/又は、前記グリップ部から繋がる隣接部の表面へ固着し難くすることで台シートを伴ったスペーサーの着脱を容易にすることができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、ストリングスを備えた前記ラケットの前記グリップ部及び/又は前記隣接部に後付けで被せることができて可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性を有する薄い前記台シートに記された一つ又は複数の目印と、ラケットの特定位置又はラケット側に記した合いマークに合致させることにより、前記スペーサーが配置された前記台シートを所定の位置に精度よく装着することができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、ストリングスを備えた前記ラケットの前記グリップ部及び/又は前記隣接部に後付けで被せることができて可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性を有し多数の小さな貫通孔が設けられた網状の薄い前記台シートに記された一つ又は複数の目印と、ラケットの特定位置又はラケット側に記した合いマークに合致させることにより、前記スペーサーが配置された前記台シートを所定の位置に精度よく装着することができる。
【0024】
スペーサーに台シートが伴うことにより、使用するラケットのグリップ部及び/又は隣接部に対して脱着が容易であって、スペーサーを使用するプレーヤーにとって最適に調整された基準位置とも言える状態に簡単に戻すことができる。同じ銘柄のラケットを複数所有する熟練したプレーヤーがこの台シートを伴うスペーサーを使用する場合、同じ形状のグリップ状態を有するラケットを容易に再現できるので、握り心地の良い均一なグリップ状態のラケットを複数本、揃えることが可能となる。
【0025】
また、筒状の台シートにおいては、可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性を有するものであれば、単体のスペーサーを使用する場合に、より必要性の高かった接着剤が必ずしも必要が無くなるのでスペーサー使用後にグリップ表面等に残存する接着剤を除去する手間が不要となり、スペーサー使用に対する障害がまた一つ取り除かれて使い易さが更に向上すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一般的なテニスラケットに従来例であるスペーサーを適用した概念図である。 (補注:スペーサーを顕在化させるため、一部の選択的な装着物を省略した。)
図2】従来例であるスペーサーの使用方法を示した概念図である。
図3】平面状の台シートにスペーサーを配置した概念図である。(1)斜視図 (2)側面図
図4】筒状の台シートにスペーサーを配置した概念図である。(1)斜視図 (2)断面図(※仮想切断面:A)
図5】ラケットのグリップ部を太くする目的で市販されているチューブ状(筒状)の樹脂膜を表現した図である。
図6】カップ状の台シートにスペーサーを配置した概念図である。(1)斜視図 (2)断面図(※仮想切断面:A)
図7】底穴付きカップ状の台シートにスペーサーを配置した概念図である。(1)斜視図 (2)断面図(※仮想切断面:A)
図8】スペーサーが配置された底穴付きカップ状の台シートをラケットのグリップ部に装着した概念図である。傍らのテープは、更にその上から巻き付けるオーバーグリップテープである。
図9】空隙を配した底穴付きカップ形状の台シートにスペーサーを配した概念図である。(1)斜視図 (2)断面図(※仮想切断面:A)
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、ストリングスを備えたラケット4のグリップ部5及び/又は隣接部7にスペーサー(詰め物、間に挟む小片、又は薄い片)を装着する場合、個々のプレーヤーの手指2の特徴、好み、又は握り方等の使用方法に沿って調整されたスペーサーをラケット4のグリップ部5の最適な位置へ簡易に、且つ再現性高く配置することを目的に追加で導入する台シートに関する。なお、スペーサーとは、スペーサー甲11、スペーサー乙12、スペーサー丙13それぞれの略語である。また、台シートとは、平面状の台シート21、筒状の台シート22、カップ形状の台シート23、底穴付きカップ形状の台シート24、多数の貫通する空隙25aを設けた網状の台シート25それぞれの略語である。
【0028】
具体的には、個別に調整された単独又は複数のスペーサーの配置を補助する台シートを付加することで取り扱いをより容易にした「台シートを伴ったスペーサー」を実現することにある。この台シートの上にプレーヤーの手指2とグリップ部5、及び/又は、グリップ部5の端から繋がる隣接部7(以下、単に「隣接部7」という)との間に生じた隙間、及び/又は、プレーヤーの手指2とグリップ部5が接触しても把持力がグリップ部5、及び/又は、隣接部9に有効に伝わらない箇所を埋設可能とするような、所定の肉厚及び所定の形状を備えるスペーサーが配置されている。この台シートを基盤となる台紙のような役割としつつ、台シート上にスペーサーを固設、又は台シートとスペーサーと一体化した合体物がラケット4のグリップ部5、及び/又は、隣接部7に後付け可能な台シートを伴ったスペーサーである。なお、以降の説明で言うところのスペーサーは、既に個々のプレーヤーの手指2の特徴、好み、又は使用方法に沿ってスペーサーの形状や寸法、又はスペーサー小片の選択と組合せが最適に調整されたものを指すものとする。
【0029】
また、ここからは、ストリングスを備えたラケット4の中でテニスラケットを対象とし、右利きでフォアハンド側が片手打ち、バックハンド側が両手打ちのプレーヤーを例に挙げて具体的な実施例の説明を進める。この場合、フォアハンド側では右手1a一本でラケット4を把持して操作し、バックハンド側では右手1aよりもラケット4の先端側のグリップ部5を左手1bで把持して両手で操作することになる。
【0030】
図1は、前記のようなプレーヤーがスペーサーを使用する状況を示した概念図である。ただし、スペーサーを顕在化並びにスペーサーの固定方法についての課題を顕在化させるため、一般的に下地となるグリップレザーテープ15の上に使用されるオーバーグリップテープ16の描写を省略している。
【0031】
ここでは、ストリングスを備えたラケット4のグリップ部5に利き手となる右手1a用のスペーサー甲11およびスペーサー乙12、左手1b用のスペーサー丙13を装着したものである。他方で、利き手が左手1bとなるプレーヤーの場合は、スペーサー甲11およびスペーサー乙12が左手1b用となり、スペーサー丙13が右手1a用となることは勿論である。
【0032】
また、各スペーサーの簡単な説明として、グリップ部5の端に近くに配置されたスペーサー甲11は、主に右手1a掌の中央部の窪みによる隙間を埋めて掌とグリップ部5との密着度を高めるものである。スペーサー乙12は、段状面12aを備えてグリップ部5の端と隣接部7に跨って配置され、薬指から小指にかけてグリップ部5と密着度を高めつつ比較的、握力の小さい小指の力を最大発揮できるよう意図したものである。(ここでは便宜的にスペーサー乙12を省略した。)一方、両手でグリップ部5を握って打撃するプレーヤーも近年、増加しており、スペーサー丙13は、利き手以外の左手1bに対応するもので、スペーサー甲11と同様に掌の中央部の窪みによる隙間を埋めて密着度を高めようとするものである。
【0033】
再びスペーサーの説明をグリップ部5への固定方法に戻すことにする。図1のスペーサー甲11、スペーサー乙12、及びスペーサー丙13のように外側へむき出しの状態では、仮にグリップ部5に接着剤でしっかり固定されていたとしてもプレー中に発生するプレーヤーの手指2との激しい摩擦で各スペーサーが脱落したり、材質によってはスペーサー自体が磨滅したりする可能性がある。
【0034】
この不都合に対する解決策として、これまでも述べて来た通り、図2のようにグリップ基部6に巻かれるグリップレザーテープ15(第1層)の内側、或いはオーバーグリップテープ16(第2層)の内側に各スペーサーを挟み込んで固定する方法が現状で考え得る最も優れていると考えられる。図2において、スペーサー甲11がグリップレザーテープ15とオーバーグリップテープ16の間に、スペーサー丙13がグリップ基部6とグリップレザーテープ15の間に挟み込む例を示している。勿論、各スペーサーが挟み込まれる位置は、第1層、又は第2層のいずれの内側であっても構わない。
【0035】
しかしながら、上記のようなスペーサーの装着の仕方が反って前記のスペーサーを使用し難くしてしまうことが徐々に明らかになってきた。というのも、スペーサーの上に巻かれたテープ類をはずした際にスペーサーの小片や個別成形した形状片が脱落してそれまでの配置が分からなくなったり、固定していた接着剤の残りカスを取り除くのに苦労したり、と煩わしい状況にしばしば陥ることが発生した。折角、プレーヤーが自らの手指2や握り方などの使用方法に沿って調整したスペーサーの小片もグリップ部5における所定の配置から少しでもずれれば、プレーヤーは握った瞬間に違和感を覚えて邪魔な突起物として認識する。仮に面倒くさいからといってスペーサーの配置をやり直すことなく使用し続ければ、逆に局所的な摩耗を誘発して手指2の表皮3が赤く腫れ、更には肉刺を発症させ兼ねないことになってしまう。
【0036】
そこで、前記の調整済みのスペーサーを予め配置が変化し難い台シートの上に固定してラケット4のグリップ部5に対してより装着し易い合体物とすることで、この使用し難さという課題を解決することにした。
【0037】
図3は、平面状の薄い台シート21の上に各スペーサーを配置し、固設したものである。図3(1)は斜視図、図3(2)は側面図である。台シート21には、可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性があり、必要であれば接着剤の力を借りて、装着対象となるグリップ部5表面の凹凸に沿って密着してグリップ部5を部分的に被覆することができる。この時、複数のスペーサー或いはスペーサーを構成する各小片を台シート21上に取りまとめ、各スペーサーの相対的な位置関係を維持する役目も担っている。したがって、スペーサーは、これら諸性質を有する台シート21上に固設等されることから、台シート21とほぼ同等の可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性が備わっていることが望ましい。
【0038】
台シート21の材質として選ばれるものには、スペーサーに備わる可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性を上回る可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性を有することが望ましい。スペーサーの材質が熱硬化性エラストマーや熱可塑性エラストマーに分類される各種の合成樹脂、天然ゴム、スポンジ、粘土などが適用可能であるが、台シートは、その名の通り、薄いシート状のものであって装着するグリップ部5及び/又は隣接部7に密着被覆する必要があることから、具体的な例として、常温で十分な伸縮性が維持される天然ゴム、ポリウレタン、イソプレンラバーなどが適用可能な候補素材であると考えられる。特にポリウレタンは、素材の性質上、伸縮性が高過ぎないので、その上に配置されるスペーサーが本来の位置からずれ難くなり、より好適な材質であると言うことができる。
【0039】
平面状の台シート21上へ各スペーサーを配置する方法の一例として、一旦、台シート21をラケット4のグリップ部5に密着被覆させた状態でその上から形状調整済みのスペーサーを最適位置へ接着剤で固定するという手順が挙げられる。その後は、スペーサーと台シートが合体物としてグリップ部5から脱着可能となるため、別のラケット4へ付け替えることが可能となったり、台シートごとスペーサーを複製すれば、同じ感触を持ったグリップ部5を有するラケット4を複数本準備することが可能になったり、と利便性が一挙に向上する。ここでスペーサーと台シートを接着剤で固設する方法について付言するならば、スペーサーと台シートの伸縮性の差異に応じ、その接着箇所がスペーサーの全面に及んでも、或いは局所的であっても構わない。更に、スペーサーの材質に十分な柔軟性が加わればスペーサーと台シートを一体成型で製作することも可能である。
【0040】
一方、台シートが備えるべき所定の肉厚についてであるが、まず均一であって、更に薄ければ薄い方がよい。なぜならスペーサーが手指2に接触する部分以外のグリップ部5、即ち元のグリップ部5が極力、太くならないようにしたいからである。その一方で、台シートには少なくともラケット4のグリップ部5及び/又は隣接部7にスペーサーを伴って着脱する程度では破れない強度が確保できる肉厚が必要である。スペーサーの肉厚は、その形状によって所々で異なる肉厚を有するが、概ね上限7.6mmから下限0.1mmの範囲としている。これに対して台シートの肉厚は、選択する素材の性能にも因るが、概ね0.01mmから0.10mmの範囲にあることが望ましいと思われる。また、これまでのスペーサーのみの装着時(図2)と同様、台シートを伴ったスペーサーを装着した状態の上からオーバーグリップテープ16を巻くことを推奨するので、プレーヤーは予め細めのグリップサイズを念頭に置いて使用するラケット4を選択する方がよいかも知れない。
【0041】
図4は、薄い筒状の台シート22の上に各スペーサーを配置して固設したものである。図4(1)は斜視図、図4(2)は筒状部の端面の中心を通る直線を筒状部の長手方向に移動した軌跡に相当する面A(台シートの断面を投影するための仮想的な切断面)で切断した断面図である。装着対象となる棒状のグリップ部5は、端部がグリップエンドキャップ8で盛り上がっており、筒状で、且つ可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性を有する台シートであれば、棒状のグリップ部5へは容易に被覆させることが可能である。つまり、この筒状の台シート22の内径を少し延ばして拡げて端部から被せるのである。また、筒状の台シート22の内径をグリップ部5及び/又はグリップエンドキャップ8の外径よりも若干小径とすることで、しわによる細かな凹凸に悩まされることなく筒状の台シート22をグリップ部5及び/又はグリップエンドキャップ8の外周面に密着させることもできる。
【0042】
平面状の台シート21と同様、筒状の台シート22の上に個々のスペーサーを配置するので、個々のスペーサーの間のグリップ部5の周方向に対する相対的なズレが生じ難いという利点もある。ただし、筒状の台シート22へのスペーサーの配置には、予めグリップ部5への装着における台シートの伸延代を考慮しておく必要があるかも知れない。
【0043】
その他の利点として、従来のスペーサーをグリップ部5に固定するための強力な接着剤が必要ないので、筒状の台シート22を伴ったスペーサーを調整する場合、接着剤の残り滓を除去する煩わしさから解放されることになる。
【0044】
また、この筒状の台シート22を伴ったスペーサーを製作する方法として、初めに筒状の台シート22だけをラケット4のグリップ部5に密着被覆させ、その状態でスペーサーの調整を繰り返して最適な形状、寸法、組合せ、それと位置を見つけたらそのまま個々のスペーサーを接着剤で固定してしまえば良く、その後は、スペーサーと筒状の台シート22の合体物となる。勿論、前記の合体物を原型として、別に一体成型した筒状の台シート22を伴ったスペーサーを製作しても構わない。
【0045】
ところでテニス等で使用するラケット4に関して「筒状の膜状物をグリップ部5に被せて利用する」という類似の技術が既に存在し、商品化もされている事実に触れておかなければならない。図5は、その商品の概要を表現した図である。
この商品は、グリップ部5よりも十分に内径が大きいチューブ状(筒状)の樹脂膜31であって、ラケット4に元から備わるグリップレザーテープ15等を一旦すべて剥がして、グリップ基部6に直に被せ(図5中の白抜き矢印の通り)、ドライヤー32の熱風等によりチューブ状の樹脂膜31を収縮させてグリップ基部6に密着させて使用するものとのことである。
【0046】
ここで最も重要な点は、この商品の目的である。市販のラケット4のグリップサイズ、即ち、グリップ部5を均一に太くすることであり、入手してしまったラケット4のグリップ部5を何らかの理由でプレーヤーが太くする方向へ調整したい場合、その手段を手軽に提供する商品と思われる。本発明における筒状の台シート22との比較において、プレーヤーがラケット4を握る時の感触を向上させようとする方向性は本発明と共通であるが、この商品は従来のラケット4選定時のグリップサイズ選択の延長上にある汎用的な発想に基づく技術であるのに対し、本発明の台シートはそれ自体が薄いシートとしてラケット4のグリップサイズへの影響を極力、排除しようとしている点で異なっており、その上、個別のプレーヤーに向けて専用に調整されたスペーサーという技術の使用を補助するという発想を出発点としていることからもこの商品と本発明の筒状の台シート22は、全く目的の異なる技術である。
【0047】
図6は、図4の筒状の台シート22の一端が閉じられた薄いカップ形状の台シート23の上に各スペーサーを配置したものである。図6(1)は斜視図、図6(2)は図4(2)と同様の断面図である。筒状の台シート22と同様の性質を有する一方で、閉じた側の底面23aが隣接部7と密着する状態で装着されるので、グリップ部5の端から各スペーサーまでの距離がズレ難くなり、結果としてグリップ部5の長手方向に対するスペーサーの配置精度が向上することになる。
【0048】
また、このカップ形状の台シート23を伴ったスペーサーを製作する方法として、初めにカップ状の台シート23だけをラケット4のグリップ部5に密着被覆させ、その状態でスペーサーの調整を繰り返して最適な形状、寸法、組合せ、それと位置を見つけたらそのまま個々のスペーサーを接着剤で固定してしまえば良く、その後は、スペーサーとカップ形状の台シート23の合体物となる。勿論、前記の合体物を原型として、別に一体成型したカップ形状の台シート23を伴ったスペーサーを製作しても構わない。
【0049】
ところで、ラケット4のグリップ部5の端に嵌められたグリップエンドキャップ8の端面、すなわち隣接部7にはラケット4製造者の固有のロゴマーク10が略すべてに表記されている。これは、製造者のブランドを象徴する一方、ラケット4を所有するプレーヤーの満足感を高め、一般プレーヤーの間でテニスのゲームを始める際にサーブレシーブ等の取り決めに活用されるなど、ラケット4には無くてはならないものとなっている。
【0050】
ここで今、直前で説明したカップ状の台シート23を伴ったスペーサーを使用した場合を考えてみる。容易に想像できると思われるが、グリップ部5の端の隣接部7に表記された固有のロゴマーク10がカップ状の台シート23を伴ったスペーサーによって認知できなくなる。この不都合を解消する手段として隣接部7を覆い隠す底面23aの外側に別の記号を表記する方法や隣接部7に密着する底面23aの部分を透明な素材にする方法などが考えられる。一方、いくら一般プレーヤーの草試合といえども、公式試合におけるコイントスのような客観性を担保しようと思えば、このカップ形状の台シート23を伴ったスペーサーを装着したラケット4を試合開始の取り決めに使用しない方が無難であろう。
【0051】
図6のカップ形状の台シート23ではロゴマーク10が底面23aで覆い隠されて見えなくなってしまうが、図7は、その不都合な点を解決すべく底面23aに所定の穴24aを設けた底穴付きカップ形状の台シート24である。図7(1)は斜視図、図7(2)は図4(2)と同様の断面図である。グリップエンドキャップ8の外周よりも若干径小な穴24aによって、隣接部7のロゴマーク10を見せつつ、底穴付きカップ形状の台シート24の底部の内側の隅が隣接部7に引っ掛かることで、図6のカップ形状の台シート23と同様、グリップ部5の長手方向に対するスペーサーの配置精度を確保している。
【0052】
次の図8は、図7の底穴付きカップ状の台シート24のシート部分に多数の空隙25aを設けた網状の台シート25である。図8(1)は斜視図、図8(2)は図4(2)と同様の断面図である。まず、これらの空隙25aは、台シートを伴ったスペーサーの更なる軽量化に寄与する。やはりラケット4全体のバランスを極力、変えないためにもラケット4に追加で付加する台シートを伴ったスペーサーの軽量化は重要である。それと共に、台シートが下地となるグリップレザーテープ15等に密着する面積が単純に減少することと通気性が改善されることで台シートを伴ったスペーサーが下地に固着する度合いを軽減する効果も見込まれる。プレー中に上から強い握力を加えられれば、台シートの材料によっては簡単に固着して下地のグリップレザーテープ15等を傷めてしまう可能性もある。したがって、固着し難い素材の選択や密着する側の表面の凹凸加工など、台シートに対して前もって考えられる対策を講じておくことが望ましい。
【0053】
言うまでもないが、平面状の台シート21、筒状の台シート22、カップ形状の台シート23、底穴付きカップ形状の台シート24、及び多数の貫通する空隙25aを設けた網状の台シート25には、いずれも台シートの基本的な性質として可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性を有することは勿論である。
【0054】
図9は、各スペーサーを備えた前記の底穴付きカップ形状の台シート24をラケット4のグリップ部5及び隣接部7に装着した状態の概念図である。この状態からプレーヤーは、好みのオーバーグリップテープ16を上から巻いてラケット4を使用することになる。所定の位置に精度よく配置することができる台シートを伴ったスペーサーを装着しつつも、グリップエンドキャップ8のロゴマーク10をしっかりと認識できる状態である。
【0055】
このような状態で使用される台シートを伴ったスペーサーを更に使い易くするための工夫として、台シートに専用の目印41を付与することが考えられる。具体的な例として図3図4図6図7図8、及び図9における台シート上に記された黒塗り三角形(▲)の目印41である。この黒塗り三角形(▲)の目印41をラケット4の特定位置に合わせれば、配置を調整する作業を何度繰り返そうとも、台シートを伴ったスペーサーを最適な位置へ安定的に配置することが可能である。ラケット4の特定位置としては、装着しようとするグリップ部5の外観上、明確な位置が選ばれることが望ましい。例えば、隣接部7のグリップエンドキャップ8に描かれた文字やロゴマークに正対した時の12時の位置(図9)、或いはグリップ部5の扁平な八角形の断面において選定されたある一つの角部などが挙げられる。勿論、目印41を合わせに行こうとする位置は、ラケット4の隣接部7のロゴマークの一部や付いてしまったキズなど、各々プレーヤーが適宜決めても構わない。
【0056】
また、この専用の目印41は、台シートの上に描かれた導き線42であっても構わない。具体的な例として図4図7、及び図9における台シート上に記された1本又は複数の導き線42である。既に述べている通り、本発明の台シートには可撓性及び/又は弾力性及び/又は伸縮性が備わっており、スペーサーを伴った台シートは、ラケット4の特殊な八角柱状のグリップ部5に対して前記の可撓性、弾力性、伸縮性といった3特性を利用して密着被覆させることになる。しかしながら、スペーサーを伴った台シートをグリップ部5に装着する場面で前記の3特性が裏目に出てしまい、台シートがグリップ部5上で捻じれてスペーサーが調整された本来の位置からずれてしまうことが考えられる。そこで前記の導き線42を、例えば、グリップ部5の長手方向に揃えることでスペーサーを配置する精度を高い水準で維持することができる。
【0057】
或いは、図9のようにラケット4側、ここではグリップエンドキャップ8、に付けた白抜き三角形(△)の合いマーク43と台シート側の黒塗り三角形(▲)の目印41を合わせることで台シートを伴ったスペーサーを最適な位置へ導けるようにしてもよい。なお、目印41が記される位置は特に限定されず、台シートのいずれかの位置でよい。また、合いマーク43の位置も特に限定されず、ラケット4(グリップ部5、隣接部7等)のいずれかの位置でよい。
【0058】
以上、各実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、各実施例に記載の技術、又は、その他の公知や周知の技術を組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1a:右手
1b:左手
2:手指
3:表皮
4:ラケット
5:グリップ部
6:グリップ基部
7: 隣接部(グリップエンド部)
8:グリップエンドキャップ
10:(ラケット製造者固有の)ロゴマーク
11:スペーサー甲
12:スペーサー乙
12a:段状面
13:スペーサー丙
15:グリップレザーテープ
16:オーバーグリップテープ
21:(平面状の)台シート
22:筒状の台シート
23:カップ形状の台シート
23a:底面
24:底穴付きカップ形状の台シート
24a:穴
25:網状の台シート
25a:空隙
31:チューブ状の樹脂膜
32:ドライヤー
41:黒塗り三角形の目印(各図中の▲)
42:導き線
43:白抜き三角形の合いマーク(図9中の△)
A:台シートの断面を投影するための仮想的な切断面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9