(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137510
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/30 20230101AFI20240927BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20240927BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
C02F1/30
B01J19/12 D
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049050
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】523339034
【氏名又は名称】リズム翔栄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 範安
(72)【発明者】
【氏名】関端 隆
(72)【発明者】
【氏名】矢部 嘉一
【テーマコード(参考)】
4D037
4G075
【Fターム(参考)】
4D037BA16
4D037BA18
4D037BB06
4D037BB09
4G075AA05
4G075BA04
4G075CA02
4G075CA32
4G075CA33
4G075CA34
4G075CA54
4G075DA02
4G075EB32
4G075ED13
4G075ED15
4G075EE02
4G075FA01
4G075FB06
(57)【要約】
【課題】照射対象に照射される光の強度を調整できる水処理装置を提供する。
【解決手段】水処理装置10は、液体を貯留可能な水槽(空間V)が形成された容器20と、外部から照射され、前記水槽内に設けられる照射対象を照射する光を水槽内へ透過させる透過板材100を、容器20に固定可能な固定機構40と、透過板材100と対向する位置に水槽の壁部を形成すると共に、透過板材100との距離が可変である可動板材60と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留可能な水槽が形成された容器と、
外部から照射され、前記水槽内に設けられる照射対象を照射する光を前記水槽内へ透過させる透過板材を、前記容器に固定可能な固定機構と、
前記透過板材と対向する位置に前記水槽の壁部を形成すると共に、前記透過板材との距離が可変である可動板材と、
を有する水処理装置。
【請求項2】
前記容器には開口部が形成され、
前記固定機構は、
前記開口部の外縁を被覆する枠材及び前記枠材を前記容器へ固定する留め具を備え、
前記留め具は、前記開口部を閉塞した前記透過板材を、前記外縁と前記枠材との間に挟んだ状態で前記容器に取り外し可能に固定できる、
請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記透過板材として、石英ガラス、偏光板、位相差板、ホットミラー、コールドミラー及びバンドパスフィルタの何れかが交換可能に備えられている、
請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記可動板材には貫通孔が形成され、
前記可動板材における前記透過板材と反対側の面には、前記貫通孔を閉塞する板材を取り外し可能に固定できる、
請求項1に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記可動板材は、
前記水槽へ液体を注入可能な注入口と、
前記水槽から液体を排出可能な排出口と、
前記透過板材側の面に形成され、前記注入口及び前記排出口のそれぞれと前記貫通孔とを連通する溝と、
を備えている、
請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記注入口には注入管が接続され、
前記注入管には、流路を閉塞する閉塞部材が取り付け可能である、
請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記可動板材と前記透過板材との距離は、前記可動板材における前記透過板材と反対側の面と、前記容器との間に配置されたスペーサの入れ替えによって可変とされている、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記容器には振動発生機構が固定され、
前記固定機構には温度調整機構が固定されている、
請求項1に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、太陽光を用いて光触媒活性を発揮させるための水処理装置が記載されている。この水処理装置においては、形状が凹凸状である基材に付加した光触媒を水中に設置する。また、水の濁度に応じて基材の配置を変えている。これにより、光触媒への光の照射強度を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の水処理装置のように水中において基材の配置を変えるためには、水中において基材を固定する機構が必要である。水中にこのような機構を配置すると、水流や光の透過に影響が生じ、光触媒への光の照射強度にも影響が生じる可能性がある。このため、水処理装置において、光触媒などの照射対象に照射される光の強度を調整できる別の方法が求められる。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、照射対象に照射される光の強度を調整できる水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の水処理装置は、液体を貯留可能な水槽が形成された容器と、外部から照射され、前記水槽内に設けられる照射対象を照射する光を前記水槽内へ透過させる透過板材を、前記容器に固定可能な固定機構と、前記透過板材と対向する位置に前記水槽の壁部を形成すると共に、前記透過板材との距離が可変である可動板材と、を有する。
【0007】
請求項1の水処理装置は、外部から照射された光を水槽内へ透過させる透過板材を、固定機構によって容器に固定できる。そして、容器に固定された透過板材と対向する位置に、可動板材によって水槽の壁部が形成される。この可動板材は、透過板材との距離が可変である。
【0008】
このため、この水処理装置では、透過板材を透過した光が、透過板材と対向する壁部に到達するまでの距離を変えることができる。すなわち、水槽内に液体を貯留した際に、壁部を照射する光の強度が可変である。また、光の入射方向に対する水槽内の液体の深度が可変である。
【0009】
これにより、例えば可動板材に照射対象としての光触媒を担持させた場合は、可動板材の位置を変えれば、当該光触媒に照射される光の強度を調整できる。また、例えば液体中に照射対象としての光触媒を混入した場合は、液体中に分散する光触媒に照射される光の平均強度を調整できる。
【0010】
このように、本態様の水処理装置によると、光触媒を可動板材に担持させた場合及び液体中に混入した場合の双方において、すなわち、光触媒の配置に関わらず、光触媒に照射される光の強度を調整できる。一例として、太陽光は人為的に強度を変えることが難しいが、この水処理装置を使えば、光触媒に照射される太陽光の強度を変えることができる。
【0011】
また、可動板材と透過板材との距離を変えることにより、可動板材に光触媒を担持させた場合は、光触媒に作用する水圧を変えることができる。水圧は、光触媒と液体との反応によって発生した気体の、液体中への拡散に影響を与える。水圧を可変とすることにより、光触媒毎に最適な水圧を検討できる。
【0012】
請求項2の水処理装置は、請求項1に記載の水処理装置において、前記容器には開口部が形成され、前記固定機構は、前記開口部の外縁を被覆する枠材及び前記枠材を前記容器へ固定する留め具を備え、前記留め具は、前記開口部を閉塞した前記透過板材を、前記外縁と前記枠材との間に挟んだ状態で前記容器に取り外し可能に固定できる。
【0013】
請求項2の水処理装置では、透過板材が、留め具によって容器の開口部の外縁と枠材との間に挟まれて固定されている。そして、留め具は、透過板材を容器に取り外し可能に固定する。
【0014】
透過板材を取り外して異なる種類の透過板材に付け替えれば、光触媒に照射される光の強度を変えることができる。
【0015】
請求項3の水処理装置は、請求項2に記載の水処理装置において、前記透過板材として、石英ガラス、偏光板、位相差板、ホットミラー、コールドミラー及びバンドパスフィルタの何れかが交換可能に備えられている。
【0016】
請求項3の水処理装置は、透過板材として、石英ガラス、偏光板、位相差板、ホットミラー、コールドミラー及びバンドパスフィルタの何れかが交換可能に備えられている。これにより、光触媒に照射される光の強度のほか、光の偏光面、位相及び波長を変えることができる。
【0017】
請求項4の水処理装置は、請求項1に記載の水処理装置において、前記可動板材には貫通孔が形成され、前記可動板材における前記透過板材と反対側の面には、前記貫通孔を閉塞する板材を取り外し可能に固定できる。
【0018】
請求項4の水処理装置では、可動板材に形成された貫通孔が、板材によって閉塞されている。そして、この板材は可動板材に取り外し可能に固定されている。
【0019】
このため、例えば光触媒を担持させた板材を用いることができるし、光触媒を担持させない板材を用いることもできる。光触媒を担持させた板材を用いれば、液体中に光触媒を混入しなくても、板材に担持させた光触媒を液体と反応させることができる。また、光触媒を担持させない板材を用いる場合は、光触媒を液体中に混入すれば、光触媒を液体と反応させることができる。
【0020】
このように、本態様の水処理装置を用いれば、液体と反応させる光触媒の配置を任意に変更できる。
【0021】
なお、請求項4の水処理装置は、請求項1~3の何れか1項に記載の水処理装置において、前記可動板材には貫通孔が形成され、前記可動板材における前記透過板材と反対側の面には、前記貫通孔を閉塞する板材を取り外し可能に固定してもよい。
【0022】
請求項5の水処理装置は、請求項4に記載の水処理装置において、前記可動板材は、前記水槽へ液体を注入可能な注入口と、前記水槽から液体を排出可能な排出口と、前記透過板材側の面に形成され、前記注入口及び前記排出口のそれぞれと前記貫通孔とを連通する溝と、を備えている。
【0023】
請求項5の水処理装置では、可動板材に、水槽へ液体を注入可能な注入口及び水槽から液体を排出可能な排出口が形成されている。また、可動板材は、透過板材側の面に、注入口及び排出口のそれぞれと貫通孔とを連通する溝が形成されている。
【0024】
このため、例えば可動板材と透過板材とを接して配置した場合でも、注入口から注入された液体は、溝を通って貫通孔へ流入し、透過板材と板材との間の空間に貯留される。また、液体は、透過板材と板材との間の空間から、溝を通って排出口から排出される。
【0025】
これにより、透過板材を透過した光が、透過板材と対向する壁部に到達するまでの距離の最小値を、可動板材の厚みによって規定できる。
【0026】
請求項6の水処理装置は、請求項5に記載の水処理装置において、前記注入口には注入管が接続され、前記注入管には、流路を閉塞する閉塞部材が取り付け可能である。
【0027】
請求項6の水処理装置では、可動板材の注入口に注入管が接続され、注入管には、流路を閉塞する閉塞部材が取り付け可能である。これにより、光触媒を混入した液体を水槽に注入した際に、当該光触媒が注入管を逆流して水槽内から流失することを抑制できる。
【0028】
請求項7の水処理装置は、請求項1に記載の水処理装置において、前記可動板材と前記透過板材との距離は、前記可動板材における前記透過板材と反対側の面と、前記容器との間に配置されたスペーサの入れ替えによって可変とされている。
【0029】
請求項7の水処理装置では、スペーサを入れ替えることで可動板材と透過板材との距離を変えることができる。このため、スペーサの厚みを規定することで、可動板材と透過板材との距離を規定することができる。
【0030】
なお、請求項7の水処理装置は、請求項1~6の何れか1項に記載の水処理装置において、前記可動板材と前記透過板材との距離は、前記可動板材における前記透過板材と反対側の面と、前記容器との間に配置されたスペーサの入れ替えによって可変としてもよい。
【0031】
請求項8の水処理装置は、請求項1に記載の水処理装置において、前記容器には振動発生機構が固定され、前記固定機構には温度調整機構が固定されている。
【0032】
請求項8の水処理装置は、振動発生機構を備えている。振動発生機構により、光触媒を混入した液体を水槽に注入した際に、光触媒が沈殿することを抑制できる。また、光触媒と液体とが反応して気体が発生した場合に、気泡が滞留することを抑制できる。
【0033】
また、この水処理装置は、温度調整機構を備えている。温度調整機構により、水槽に貯留された液体の温度を冷却したり加温したりできる。これにより、様々な温度環境で光触媒を液体と反応させることができる。
【0034】
なお、請求項8の水処理装置は、請求項1~7の何れか1項に記載の水処理装置において、前記容器には振動発生機構が固定され、前記固定機構には温度調整機構が固定されているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、照射対象に照射される光の強度を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施形態に係る水処理装置を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る水処理装置の分解断面図である。
【
図3】(A)は本発明の実施形態に係る水処理装置の可動板材を示す正面図であり、(B)は(A)におけるB-B線断面図であり、(C)は(A)におけるC-C線断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る水処理装置に液体を貯留した状態を示す断面図である。
【
図5】(A)は本発明の実施形態に係る水処理装置においてスペーサを省略した状態を示す断面図であり、(B)はスペーサの厚みを最も大きくした状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態に係る水処理装置について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0038】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0039】
<水処理装置>
図1に示す本発明の実施形態に係る水処理装置10は、容器20、固定機構40、可動板材60を含んで構成されている。詳しくは後述するが、水処理装置10は、容器20の凹部22、透過板材100、可動板材60及び板材102によって囲まれる空間Vが、液体を貯留可能な水槽として機能する筐体である。
【0040】
液体は、注入管72Aを介して空間Vへ流入し、排出管72Bを介して空間Vから排出される。また、排出管72Bからは、後述するように、光の照射対象である光触媒と液体との反応によって生じた気体も排出される。
【0041】
(容器)
図2に示すように、容器20における一方の側面(
図1においては右側面)には、他方の側面に向かって陥没した凹部22が形成されている。凹部22の底は、底22Aと、底22Aからさらに陥没した底22Bと、を備えた二段底である。凹部22の開口端は、本発明における開口部であり、以下の説明においては開口部22Cと称す。
【0042】
容器20において凹部22の外側には、固定機構40のボルト48Aが挿通可能な貫通孔24が形成されている。また、底22Aには、注入管72A及び排出管72Bを挿通可能な貫通孔26が形成されている。
【0043】
容器20において凹部22の外側、かつ、貫通孔24の内側(換言すると、開口部22Cの外縁)には、止水材であるOリングO1が嵌め込まれる溝G1が形成されている。溝G1及びOリングO1は、凹部22の外周全体に亘って配置されている。
【0044】
(固定機構)
図1に示すように、固定機構40は、外部から照射され、水槽(以下、空間Vと称す)内に設けられる照射対象を照射する光を空間V内へ透過させる透過板材100を、容器20に取り外し可能に固定できる部材である。
【0045】
図2に示すように、固定機構40は、枠材42及び留め具としてのボルト48A及びナット48Bを備えて構成されている。枠材42は、容器20における開口部22Cの外縁を被覆する。ボルト48Aは、枠材42の貫通孔44及び容器20の貫通孔24に挿通される。ボルト48A及びナット48Bは、枠材42を容器20へ固定する。
【0046】
図1に示すように、ボルト48A及びナット48Bは、開口部22Cを閉塞した透過板材100を、開口部22Cの外縁と枠材42との間に挟んだ状態で容器20に固定する。
【0047】
透過板材100は、OリングO1と接して配置される。ボルト48Aに対してナット48Bを捩じ込むことで、透過板材100がOリングO1に密着して、容器20と透過板材100との液密性が確保される。ボルト48Aに対してナット48Bを緩めることで、透過板材100の容器20に対する固定が解除され、透過板材100を容器20から取り外すことができる。
【0048】
(可動板材)
可動板材60は、透過板材100と対向する位置に空間Vの壁部を形成すると共に、透過板材100との距離が可変な部材である。
【0049】
図2に示すように、可動板材60には透過板材100側の面から反対側の面に向かって貫通する貫通孔66が形成されている。そして、可動板材60における透過板材100と反対側の面には、貫通孔66を閉塞する板材102を取り外し可能に固定できる。
【0050】
(可動板材の固定機構)
図3(A)、(C)に示すように、可動板材60には、貫通孔66の外側に貫通孔68が形成されている。この貫通孔66には、ボルト69が挿通される。このボルト69は、
図2に示す容器20における凹部22の底22Aに形成された貫通孔(不図示)にも挿通される。そして、このボルト69にナットを捩じ込むことで、可動板材60を容器20へ固定することができる。
【0051】
可動板材60を容器20へ固定する際、可動板材60と底22Bとの間には、スペーサ70を配置することができる。また、スペーサ70の有無に関わらず、可動板材60と底22Bとの間には、板材102が配置される。
【0052】
板材102は、可動板材60における透過板材100と反対側の面に取り外し可能に固定される板材であって、貫通孔66を閉塞する。
【0053】
図3(A)~(C)に示すように、可動板材60の端面には、可動板材60を取り囲む溝G2が形成されている。また、可動板材60において板材102(
図2参照)と対向する面には、貫通孔66を取り囲む溝G3が形成されている。この溝G2及びG3には、それぞれ
図2に示すように、OリングO2及びO3が嵌め込まれている。
【0054】
可動板材60を容器20へ固定するには、まず容器20における凹部22の底22Bに隣接してスペーサ70を配置する。そして、このスペーサ70に隣接して板材102を配置する。そして、この板材102にOリングO3が接触するように、可動板材60を配置する。最後に、
図3(C)に示すボルト69を、貫通孔68及び凹部22の底22Aに形成された貫通孔(不図示)へ挿通し、ナット(不図示)をボルト69へ捩じ込む。
【0055】
ボルト69に対してナットを捩じ込むことで、
図1に示すように、板材102がOリングO3に密着して、容器20と板材102との液密性が確保される。また、凹部22の壁部がOリングO2に密着して、容器20と可動板材60との液密性が確保される。
【0056】
また、ボルト69(
図3(C)参照)に対してナットを緩めることで、板材102の容器20に対する固定が解除され、板材102を容器20から取り外すことができる。
【0057】
(可動板材の通水機構)
図3(A)、(B)に示すように、可動板材60には、注入口62A及び排出口62Bが形成されている。注入口62Aは、空間Vへ液体を注入可能な貫通孔であり、排出口62Bは、空間Vから液体を排出可能な貫通孔である。水処理装置10の使用姿勢において、排出口62Bは注入口62Aの上方に配置される。また、
図1にも示すように、排出口62Bは空間Vにおける上側部分に配置される。
図3(A)、(B)に示すように、注入口62Aには注入管72Aを接続することができ、排出口62Bには排出管72Bを接続することができる。
【0058】
注入管72A及び排出管72Bは、例えばシリコーンなどの可撓性を有する材料で形成されている。注入管72A及び排出管72Bには、流路を閉塞する閉塞部材が取り付け可能である。例えば閉塞部材としてのクリップや結束バンド等で注入管72A及び排出管72Bを外側から挟んで変形させることにより、流路を閉塞させることができる。また、閉塞部材としては、液体の流れを一方向に規制する逆止弁等を用いてもよい。
【0059】
なお、注入管72A及び排出管72Bを形成する材料は必ずしも可撓性を有していなくてもよい。例えばアルミなどの可撓性が低い金属を用いることもできるし、金属と可撓性を有する材料とを接続して用いることもできる。金属のみを用いる場合、閉塞部材としては止水栓などを適宜用いればよい。
【0060】
図4に示すように、可動板材60を容器20に固定した状態で、注入管72Aから注入された液体WTは、空間Vに貯留される。また、液体WTは、排出管72Bから排出される。
【0061】
図3(A)、(B)に示すように、可動板材60には、注入口62A及び排出口62Bのそれぞれと貫通孔66とを連通する溝64が形成されている。溝64は、
図2に示すように、可動板材60における透過板材100側の面に形成されている。
【0062】
(スペーサ)
図1に示すように、スペーサ70は、板材102における透過板材100と反対側の面と、容器20における底22Bとの間に配置された底上げ部材である。スペーサ70は、板材102を挟んでOリングO3と対向する位置に配置されている。なお、後述するように板材102を設けない場合は、スペーサ70は可動板材60に接して配置される。
【0063】
スペーサ70の有無及びスペーサ70の厚み(凹部22の深さ方向における長さであり、
図1における紙面左右方向の長さ)は任意である。
【0064】
例えば
図5(A)に示すように、スペーサ70は省略してもよい。また、例えばスペーサ70は、
図5(B)に示すように、可動板材60と透過板材100とが接する高さとしてもよい。
【0065】
このように、スペーサ70を入れ替えることで、可動板材60と透過板材100との距離を変えることができる。
【0066】
(その他の機構)
図1に示すように、枠材42には温度調整機構80が固定されている。温度調整機構80は、枠材42に取り外し可能に固定することができる。温度調整機構80は、発熱又は吸熱することにより、枠材42及び透過板材100を介して、空間V内の液体を加温又は冷却することができる。
【0067】
温度調整機構80としては、電動式のヒーター、化学発熱体、蓄熱材、ペルチェ素子を用いた電動式クーラー、保冷材等、任意のものを用いることができる。熱伝導率の観点から、枠材42には、アルミや鋼材などの金属を用いることが好ましい。なお、枠材としては樹脂等を用いてもよい。
【0068】
また、容器20には振動発生機構82が固定されている。振動発生機構82は、容器20に取り外し可能に固定することができる。振動発生機構82は、容器20を介して空間V内の液体を振動させることができる。
【0069】
なお、液体内に光の照射対象として光触媒を混入した場合、当該光触媒が排出管72Bから排出されることを抑制するために、
図3(B)に示す排出口62Bには、メッシュフィルターを設けてもよい。
【0070】
(透過板材及び板材)
本発明の水処理装置10には、透過板材100及び板材102が取り外し可能に固定されている。水処理装置10の構成要素としては、透過板材100及び板材102の双方又は一方を含めてもよいし、含めなくてもよい。
【0071】
水処理装置10に用いる透過板材100は特に限定されるものではないが、石英ガラス、偏光板、位相差板、ホットミラー、コールドミラー及びバンドパスフィルタを用いることができる。水処理装置10のユーザは、これらの板材を、任意に取捨選択して交換することができる。
【0072】
また、水処理装置10に用いる板材102は特に限定されるものではないが、青板ガラス、光の照射対象として光触媒を担持させた青板ガラス、金属板、光触媒を担持させた金属板、樹脂板、光触媒を担持させた樹脂板、光触媒を活性化させる担体で形成した板材、担体で形成した板材に光触媒を担持させたもの、等各種の板材を用いることができる。水処理装置10のユーザは、これらの板材を、任意に取捨選択して交換することができる。板材102に光触媒を担持させない場合は、液体内に光触媒を混入する。ユーザは、任意の光触媒を用いることができる。
【0073】
(光源)
透過板材100を透過させる光の光源としては、太陽及び人工光源の何れを用いてもよい。人工光源を用いる場合、光としては可視光、紫外線、赤外線、近紫外線、赤外線等の各種の波長の光を用いることができる。これらの光の強度は適宜調整できる。また、これらの光と各種の透過板材とを組み合わせることで、光触媒に様々な光を照射させることができる。
【0074】
(光触媒)
本発明の水処理装置10においては、例えば金属酸化物、金属水酸化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩等を適宜組み合わせて形成される光触媒を用いることができる。
【0075】
金属酸化物としては、Fe2O3、Fe3O4、MnO、CeO2、La2O3、ZnO、ZnO2、CuO、Cu2O、V2O5、AgO、SnO2、In2O3、WO3、KTaO3、Bi2O3、Nb2O3、SrTiO2、BaTiO3、CaTiO3、FeTiO3、K2NbO2、BiVO4の一種又は二種以上を挙げることができる。
【0076】
また、金属水酸化物としては、(FeOOH)、Ni(OH)2、NiOOH、Cr(OH)3、La(OH)3、Ti(OH)4、Zr(OH)4、Cu(OH)2、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Zn(OH)2、Al(OH)3の一種又は二種以上、金属硫酸塩としてはBaSO4、金属炭酸塩としてはMnCO3,MgCO3,CaCO3の一種又は二種以上を挙げることができる。
【0077】
さらに、水処理装置10においては、上記光触媒に加えて、光触媒を活性化させる助触媒を用いることもできる。助触媒は、光触媒表面に担持させる金属であり、例えばPd、Ag、Ru、Rh、Pt、Au、Ir、Ni、Fe、Cu、Cr、Co、Ir等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0078】
助触媒は、光触媒の表面に担持させる材料であるため、板材102の表面に光触媒が担持されているか否かに関わらず、触媒粉末を液体中に分散させた場合にも利用することができる。
【0079】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る水処理装置10は、
図1に示すように、外部から照射された光を空間V内へ透過させる透過板材100を、固定機構40によって容器20に固定できる。そして、容器20に固定された透過板材100と対向する位置に、可動板材60及び板材102によって空間Vの壁部が形成される。この可動板材60及び板材102は、透過板材100との距離が可変である。
【0080】
このため、この水処理装置10では、
図4及び5に示すように、透過板材100を透過した光LTが、透過板材100と対向する壁部に到達するまでの距離Hを変えることができる。すなわち、空間V内に液体WTを貯留した際に、壁部を照射する光の強度が可変である。また、光の入射方向に対する空間V内の液体WTの深度が可変である。
【0081】
これにより、例えば上記実施形態に示すように可動板材60に板材102を取付け、当該板材102に光触媒を担持させた場合は、可動板材60の位置を変えれば、当該光触媒に照射される光の強度を調整できる。
【0082】
また、例えば液体WT中に光触媒を混入した場合は、液体WT中に分散する光触媒に照射される光の平均強度を調整できる。なお、液体WT中に光触媒を混入する場合、板材102には光触媒を担持させてもよいし、させなくてもよい。
【0083】
このように、本態様の水処理装置10によると、光触媒を板材102に担持させた場合、及び、光触媒を液体中に混入した場合の双方において、すなわち、光触媒の配置に関わらず、光触媒に照射される光の強度を調整できる。一例として、太陽光は人為的に強度を変えることが難しいが、この水処理装置10を使えば、光触媒に照射される太陽光の強度を変えることができる。
【0084】
また、可動板材60と透過板材100との距離を変えることにより、可動板材60に光触媒を担持させた場合は、光触媒に作用する水圧を変えることができる。水圧は、光触媒と液体との反応によって発生した気体の、液体中への拡散に影響を与える。水圧を可変とすることにより、光触媒毎に最適な水圧を検討できる。
【0085】
また、水処理装置10では、
図1に示すように、透過板材100が、留め具としてのボルト48A及びナット48Bによって、容器20の開口部22Cの外縁と枠材42との間に挟まれて固定されている。そして、留め具は、透過板材100を容器に取り外し可能に固定する。
【0086】
これにより、透過板材100の種類を変えることができる。例えば透過板材100として、石英ガラス、偏光板、位相差板、ホットミラー、コールドミラー及びバンドパスフィルタの何れかを用いることができる。これにより、光触媒に照射される光の強度のほか、光の方向、位相及び波長を変えることができる。
【0087】
また、水処理装置10では、可動板材60に形成された貫通孔66が、板材102によって閉塞されている。そして、この板材102は可動板材60に取り外し可能に固定されている。
【0088】
このため、板材102としては、例えば光触媒を担持させた板材を用いることができるし、光触媒を担持させない板材を用いることもできる。
【0089】
板材102として光触媒を担持させた板材を用いれば、液体中に光触媒を混入しなくても、板材に担持させた光触媒を液体と反応させることができる。また、板材102として光触媒を担持させない板材を用いる場合は、光触媒を液体中に混入すれば、光触媒を液体と反応させることができる。
【0090】
このように、本態様の水処理装置を用いれば、液体と反応させる光触媒の配置を任意に変更できる。
【0091】
また、水処理装置10では、
図3(A)、(B)に示すように、可動板材60に、空間Vへ液体を注入可能な注入口62A及び空間Vから液体を排出可能な排出口62Bが形成されている。また、可動板材60は、透過板材100(
図1等参照)側の面に、注入口62A及び排出口62Bのそれぞれと貫通孔66とを連通する溝64が形成されている。
【0092】
このため、例えば
図5(B)に示すように、可動板材60と透過板材100とを接して配置した場合でも、注入口62Aから注入された液体WTは、溝64を通って貫通孔66へ流入し、透過板材100と板材102との間の空間に貯留される。また、液体WTは、透過板材100と板材102との間の空間から、溝64を通って排出口62Bから排出される。
【0093】
これにより、透過板材100を透過した光が、透過板材100と対向する壁部に到達するまでの距離Hの最小値を、可動板材60の厚みによって規定できる。
【0094】
また、水処理装置10では、
図3(B)に示すように、可動板材60の注入口62Aに注入管72Aが接続され、注入管72Aには、流路を閉塞する閉塞部材が取り付け可能である。これにより、光触媒を混入した液体を空間Vに注入した際に、当該光触媒が注入管72Aを逆流して空間V内から流失することを抑制できる。
【0095】
また、水処理装置10では、
図4及び5に示すように、スペーサ70を入れ替えることで可動板材60及び板材102と透過板材100との距離を変えることができる。このため、スペーサの厚みを規定することで、可動板材60と透過板材100との距離を規定することができる。
【0096】
また、水処理装置10では、枠材42に温度調整機構80が固定されている。このため、空間Vに貯留された液体の温度を冷却したり加温したりできる。これにより、様々な温度環境で光触媒を液体と反応させることができる。
【0097】
また、容器20には振動発生機構82が固定されている。液体の振動により、板材102の表面等に、光触媒と液体との反応により発生した気泡が滞留することを抑制して、気泡を遊離させることができる。気泡は、空間V内において、上方へ向かって移動する。このため、排出管72Bから排出され易い。
【0098】
また、一例として光触媒で水を分解して水素を発生させる場合、板材102の表面等に水素が滞留すると、酸素との反応によって水への逆反応が生じる可能性がある。気泡を遊離させれば、このような逆反応を抑制して、水素生成の効率を高めることができる。
【0099】
また、液体内に光触媒を混入した場合は、液体の振動により液体が攪拌され、光触媒を液体内に分散させることができる。
【0100】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては固定機構40が透過板材100を容器20に取り外し可能に固定しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。透過板材100は容器20から取り外しできないものとしてもよい。
【0101】
水処理装置10をこのように形成しても、可動板材60と透過板材100との距離が可変であるため、光触媒の配置に関わらず、光触媒に照射される光の強度を変えることができる。
【0102】
また、上記実施形態においては、可動板材60に板材102を取付け、当該板材102に光触媒を担持させる態様について説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば可動板材60には貫通孔66を設けず、かつ、板材102も取り付けず、可動板材60に直接光触媒を担持させてもよい。
【0103】
また、上記実施形態においては、可動板材60に、注入口62A及び排出口62Bのそれぞれと貫通孔66とを連通する溝64が形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば溝64は省略してもよい。溝64を省略しても、可動板材60と透過板材100とを離間して配置すれば、液体は空間V内で流通できる。
【0104】
また、上記実施形態においては、水処理装置10に温度調整機構80及び振動発生機構82が固定されているものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。温度調整機構80及び振動発生機構82の双方または一方を省略してもよい。このように、本発明は様々な態様で実施できる。
【符号の説明】
【0105】
10 水処理装置
20 容器
40 固定機構
42 枠材(固定機構)
48A ボルト(固定機構)
48B ナット(固定機構)
60 可動板材
62A 注入口
62B 排出口
64 溝
66 貫通孔
70 スペーサ
72A 注入管
72B 排出管
80 温度調整機構
82 振動発生機構
100 透過板材
102 板材
V 空間(水槽)