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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137512
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ロータ及びコンプレッサ
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20240927BHJP
   F04C 23/02 20060101ALI20240927BHJP
   F04B 35/01 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F04C18/02 311M
F04C23/02 H
F04C23/02 J
F04B35/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049052
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三谷 怜
(72)【発明者】
【氏名】夏目 直人
(72)【発明者】
【氏名】越前 雅之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅幸
【テーマコード(参考)】
3H039
3H076
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA04
3H039AA12
3H039BB02
3H039CC12
3H039CC20
3H039CC32
3H039CC33
3H039CC34
3H076AA16
3H076BB01
3H076CC07
3H076CC40
3H129AA02
3H129AA15
3H129AB03
3H129BB21
3H129CC02
3H129CC07
3H129CC09
3H129CC30
(57)【要約】
【課題】ロータを含む回転体のアンバランスを容易に補正できるロータを提供する。
【解決手段】ロータ60は、ロータコア30と、ロータコア30の軸方向一方側の端面に設けられた第1バランスウェイト62と、ロータコア30の軸方向他方側の端面に設けられた第2バランスウェイト64とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコア(30)と、
前記ロータコアの軸方向一方側の端面に設けられた第1バランスウェイト(62)と、
前記ロータコアの軸方向他方側の端面に設けられた第2バランスウェイト(64)と、
を備えるロータ(60)。
【請求項2】
前記第1バランスウェイトは、
前記ロータコアの軸方向一方側の端面に固定された第1固定部(82)と、
前記第1固定部の外周側の端部から前記ロータコアの軸方向一方側へ延出する第1軸方向延出部(84)と、
を有する、
請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記第1バランスウェイトは、前記第1軸方向延出部の先端側の端部から前記ロータコアの径方向外側へ延出する第1径方向延出部(86)を有する、
請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記ロータコアの径方向に沿った前記第1径方向延出部の長さは、前記ロータコアの軸方向に沿った前記第1軸方向延出部の長さよりも長い、
請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記ロータコアの軸方向に沿った前記第1固定部の厚さは、前記ロータコアの軸方向に沿った前記第2バランスウェイトの厚さよりも薄い、
請求項2に記載のロータ。
【請求項6】
前記第1固定部及び前記第1軸方向延出部は、板状に形成されている、
請求項2に記載のロータ。
【請求項7】
前記第1固定部、前記第1軸方向延出部、及び前記第1径方向延出部は、板状に形成されている、
請求項3に記載のロータ。
【請求項8】
前記第1軸方向延出部は、前記ロータコアの周方向に沿う円弧状に形成されている、
請求項2に記載のロータ。
【請求項9】
前記第1軸方向延出部及び前記第1径方向延出部は、それぞれ前記ロータコアの周方向に沿う円弧状に形成されている、
請求項3に記載のロータ。
【請求項10】
前記ロータコアは、前記ロータコアの中心部に形成され、シャフトが挿入されるシャフト挿入穴(74)を有し、
前記第1バランスウェイトは、前記シャフトに対して位置決めする位置決め部(90;92)を有する、
請求項1に記載のロータ。
【請求項11】
前記ロータコアは、ロータコアの中心部よりも前記ロータコアの径方向外側の偏心した位置に空洞状に形成されたマイナスバランス部(78)を有する、
請求項1に記載のロータ。
【請求項12】
前記ロータは、前記マイナスバランス部よりも前記ロータコアの径方向外側の位置に設けられたロータマグネット(32)を有し、
前記マイナスバランス部は、前記ロータマグネットによる磁路を避けた位置に形成されている、
請求項11に記載のロータ。
【請求項13】
前記ロータは、前記マイナスバランス部よりも前記ロータコアの径方向外側の位置に設けられたロータマグネットを有し、
前記マイナスバランス部の少なくとも一部は、前記ロータマグネットの横幅方向の中央部と対応する位置に形成されている、
請求項11に記載のロータ。
【請求項14】
前記ロータは、前記マイナスバランス部よりも前記ロータコアの径方向外側の位置に設けられた複数のロータマグネットを有し、
前記複数のロータマグネットは、前記ロータの周方向に並んで配置されており、
前記マイナスバランス部の少なくとも一部は、隣り合う前記ロータマグネットの間と対応する位置に形成されている、
請求項11に記載のロータ。
【請求項15】
前記マイナスバランス部は、
前記ロータコアの軸方向一方側の端面に開口する第1マイナスバランス部(122)と、
前記ロータコアの軸方向他方側の端面に開口する第2マイナスバランス部(124)と、
を有する、
請求項11に記載のロータ。
【請求項16】
前記ロータコアは、前記ロータコアの軸方向一方側の端面に開口し、ロータマグネットを収容するマグネット収容穴を有し、
前記マグネット収容穴は、前記第1固定部によって塞がれており、
前記第1固定部は、前記ロータコアの軸方向から見て前記ロータマグネットと隣接する位置に形成されたマグネット冷却穴(126A;126B)を有する、
請求項2に記載のロータ。
【請求項17】
前記第2バランスウェイトは、
前記ロータコアの軸方向他方側の端面に固定された第2固定部(112)と、
前記第2固定部の外周側の端部から前記ロータコアの軸方向他方側へ延出する第2軸方向延出部(114)と、
前記第2軸方向延出部の先端側の端部から前記ロータコアの径方向外側へ延出する第2径方向延出部(116)と、
を有する、
請求項1に記載のロータ。
【請求項18】
モータ部(12)と、
前記モータ部の軸方向一方側に設けられたコンプレッサ部(14)と、
を備え、
前記モータ部は、
モータハウジング(16)と、
前記モータハウジングの内側に固定されたステータ(18)と、
前記ステータの内側に回転可能に設けられたロータ(60)と、
前記ロータの中心部に設けられたシャフト(22)と、
を備え、
前記コンプレッサ部は、
前記モータハウジングに対して組み付けられたコンプレッサハウジング(34)と、
前記コンプレッサハウジングの内側に固定された固定スクロール(36)と、
前記シャフトに対して偏芯した状態で固定され、前記固定スクロールに対して旋回可能に設けられた可動スクロール(38)と、
を備え、
前記ロータは、
ロータコア(30)と、
前記ロータコアの軸方向一方側の端面に設けられたバランスウェイト(62)と、
を備え、
前記バランスウェイトは、
前記ロータコアの軸方向一方側の端面に固定された固定部(82)と、
前記固定部の外周側の端部から前記ロータコアの軸方向一方側へ延出する軸方向延出部(84)と、
前記軸方向延出部の先端側の端部から前記ロータコアの径方向外側へ延出する径方向延出部(86)と、
を有し、
前記径方向延出部は、前記モータ部の軸方向における前記ステータと前記コンプレッサハウジングとの間のスペース(100)に配置されている、
コンプレッサ。
【請求項19】
前記ロータは、前記バランスウェイトを含むアンバランス補正部(80)を備え、
前記アンバランス補正部は、前記可動スクロールによるアンバランスを補うアンバランス補正量を有する、
請求項18に記載のコンプレッサ。
【請求項20】
前記ステータは、前記ロータコアの径方向外側に配置されたステータコア(24)を有し、
前記軸方向延出部と前記固定部との接続部は、前記ロータコアの外形よりも内側に位置しており、
前記径方向延出部の外周側の端部は、前記ステータコアの外形よりも内側に位置している、
請求項18又は請求項19に記載のコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ及びコンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクロール型のコンプレッサが知られている(例えば、特許文献1参照)。図31は、スクロール型のコンプレッサ10の一例を示す縦断面図である。コンプレッサ10は、モータ部12と、モータ部12の軸方向一方側に設けられたコンプレッサ部14とを備える。
【0003】
モータ部12は、モータハウジング16と、モータハウジング16の内側に固定されたステータ18と、ステータ18の径方向内側に回転可能に設けられたロータ20と、ロータ20の中心部に設けられたシャフト22とを備える。
【0004】
ステータ18は、ステータコア24と、ステータコア24に装着されたインシュレータ26と、インシュレータ26を介してステータコア24に巻装された巻線28とを備える。ロータ20は、ロータコア30と、ロータコア30の外周面側の部分に設けられたロータマグネット32とを備える。
【0005】
コンプレッサ部14は、コンプレッサハウジング34と、コンプレッサハウジング34の内側に固定された固定スクロール36と、固定スクロール36に対して旋回可能に設けられた可動スクロール38とを備える。コンプレッサハウジング34は、モータハウジング16に対して組み付けられた第1ハウジング40と、第1ハウジング40の軸方向一方側に設けられた第2ハウジング42とを備える。
【0006】
モータハウジング16には、吸入口44が形成されており、第2ハウジング42には、吐出口46が形成されている。固定スクロール36と可動スクロール38との間の空間は、圧縮室として形成されており、吸入口44は、モータハウジング16の内側の空間等を通じて圧縮室と連通されており、圧縮室は、第2ハウジング42に形成された流路等を通じて吐出口46と連通されている。
【0007】
モータハウジング16には、第1軸受48が設けられており、第1ハウジング40には、第2軸受50が設けられている。シャフト22は、第1軸受48及び第2軸受50によって回転可能に支持されている。シャフト22の軸方向一方側の端部には、偏芯シャフト52が設けられており、可動スクロール38には、第3軸受54が設けられている。可動スクロール38は、偏芯シャフト52が第3軸受54によって回転可能に支持されることにより、シャフト22に対して偏芯した状態で固定されている。
【0008】
上記構成のコンプレッサ10では、ステータ18によって回転磁界が形成されると、ロータ20と一体にシャフト22が回転する。また、シャフト22の回転に伴って可動スクロール38が旋回することにより、圧縮室の容積が変化し、吸入口44から圧縮室に吸入された流体が圧縮室において圧縮される。そして、圧縮された流体が吐出口46から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-105933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図31に示すコンプレッサ10では、可動スクロール38がシャフト22に対して偏芯した状態で固定されている。したがって、可動スクロール38と、ロータ20と、シャフト22とを含む回転体にアンバランス(すなわち、回転体の重心が回転軸上からずれている状態)が発生する。回転体のアンバランスを抑制する一手法として、シャフト22又はロータ20にバランスウェイトを取り付けてアンバランスを補正することが考えられる。
【0011】
しかしながら、シャフト22又はロータ20に一つのバランスウェイトを取り付けるだけでは、回転体のアンバランスを補正することが難しい。また、シャフト22又はロータ20にバランスウェイトを取り付ける場合には、バランスウェイトを設けたことによってコンプレッサ10が軸方向に大型化することを抑制できることが望ましい。
【0012】
本発明の第1の観点は、ロータを含む回転体のアンバランスを容易に補正できるロータを提供することを目的とする。
【0013】
本発明の第2の観点は、バランスウェイトを備えていても、軸方向に大型化することを抑制できるコンプレッサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点に係る目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ロータコアと、前記ロータコアの軸方向一方側の端面に設けられた第1バランスウェイトと、前記ロータコアの軸方向他方側の端面に設けられた第2バランスウェイトとを備えるロータである。
【0015】
請求項1に記載の発明では、ロータコアが、ロータコアの軸方向一方側の端面に設けられた第1バランスウェイトと、ロータコアの軸方向他方側の端面に設けられた第2バランスウェイトとを備える。したがって、第1バランスウェイト及び第2バランスウェイトの両方によって、ロータを含む回転体のアンバランスを補正することができるので、例えば、ロータコアが第1バランスウェイト及び第2バランスウェイトのうちのどちらか一方のみを備える場合に比して、回転体のアンバランスを容易に補正することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記第1バランスウェイトが、前記ロータコアの軸方向一方側の端面に固定された第1固定部と、前記第1固定部の外周側の端部から前記ロータコアの軸方向一方側へ延出する第1軸方向延出部とを有するロータである。
【0017】
請求項2に記載の発明では、第1バランスウェイトが、ロータコアの軸方向一方側の端面に固定された第1固定部と、第1固定部の外周側の端部からロータコアの軸方向一方側へ延出する第1軸方向延出部とを有する。したがって、例えば、ロータコアの径方向に沿った第1固定部の長さ、及び、ロータコアの軸方向に沿った第1軸方向延出部の長さ等を調整することにより、回転体のアンバランスを補正することができる。これにより、回転体のアンバランスを容易に補正することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のロータにおいて、前記第1バランスウェイトが、前記第1軸方向延出部の先端側の端部から前記ロータコアの径方向外側へ延出する第1径方向延出部を有するロータである。
【0019】
請求項3に記載の発明では、第1バランスウェイトが、第1軸方向延出部の先端側の端部からロータコアの径方向外側へ延出する第1径方向延出部を有する。したがって、例えば、ロータコアの径方向に沿った第1径方向延出部の長さ等を調整することにより、回転体のアンバランスを補正することができる。これにより、回転体のアンバランスを容易に補正することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のロータにおいて、前記ロータコアの径方向に沿った前記第1径方向延出部の長さが、前記ロータコアの軸方向に沿った前記第1軸方向延出部の長さよりも長いロータである。
【0021】
請求項4に記載の発明では、ロータコアの径方向に沿った第1径方向延出部の長さが、ロータコアの軸方向に沿った第1軸方向延出部の長さよりも長い。したがって、例えば、第1径方向延出部の長さが第1軸方向延出部の長さよりも短い場合に比して、第1バランスウェイトによるアンバランス補正量を大きくすることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載のロータにおいて、前記ロータコアの軸方向に沿った前記第1固定部の厚さが、前記ロータコアの軸方向に沿った前記第2バランスウェイトの厚さよりも薄いロータである。
【0023】
請求項5に記載の発明では、ロータコアの軸方向に沿った第1固定部の厚さが、ロータコアの軸方向に沿った第2バランスウェイトの厚さよりも薄い。したがって、例えば、第1固定部の厚さが第2バランスウェイトの厚さと同等である場合に比して、ロータの軸方向の長さを抑制することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載のロータにおいて、前記第1固定部及び前記第1軸方向延出部が、板状に形成されているロータである。
【0025】
請求項6に記載の発明では、第1固定部及び第1軸方向延出部が板状に形成されている。したがって、ロータコアの周辺のスペースに応じて、第1固定部及び第1軸方向延出部の形状を設定できるので、例えば、第1バランスウェイトがブロック状に形成される場合に比して、第1バランスウェイトの配置の自由度を高めることができる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項3に記載のロータにおいて、前記第1固定部、前記第1軸方向延出部、及び前記第1径方向延出部が、板状に形成されているロータである。
【0027】
請求項7に記載の発明では、第1固定部、第1軸方向延出部、及び第1径方向延出部が板状に形成されている。したがって、ロータコアの周辺のスペースに応じて、第1固定部、第1軸方向延出部、及び第1径方向延出部の形状を設定できるので、例えば、第1バランスウェイトがブロック状に形成される場合に比して、第1バランスウェイトの配置の自由度を高めることができる。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項2に記載のロータにおいて、前記第1軸方向延出部が、前記ロータコアの周方向に沿う円弧状に形成されているロータである。
【0029】
請求項8に記載の発明では、第1軸方向延出部が、ロータコアの周方向に沿う円弧状に形成されている。したがって、例えば、第1軸方向延出部が矩形状に形成される場合に比して、第1軸方向延出部の大きさを大きくすることができる。これにより、第1バランスウェイトによるアンバランス補正量を大きくすることができる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、請求項3に記載のロータにおいて、前記第1軸方向延出部及び前記第1径方向延出部が、それぞれ前記ロータコアの周方向に沿う円弧状に形成されているロータである。
【0031】
請求項9に記載の発明では、第1軸方向延出部及び第1径方向延出部が、それぞれロータコアの周方向に沿う円弧状に形成されている。したがって、例えば、第1軸方向延出部及び第1径方向延出部が矩形状に形成される場合に比して、第1軸方向延出部及び第1径方向延出部の大きさを大きくすることができる。これにより、第1バランスウェイトによるアンバランス補正量を大きくすることができる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記ロータコアが、前記ロータコアの中心部に形成され、シャフトが挿入されるシャフト挿入穴を有し、前記第1バランスウェイトが、前記シャフトに対して位置決めする位置決め部を有するロータである。
【0033】
請求項10に記載の発明では、ロータコアが、ロータコアの中心部に形成され、シャフトが挿入されるシャフト挿入穴を有し、第1バランスウェイトが、シャフトに対して位置決めする位置決め部を有する。したがって、位置決め部を用いて、第1バランスウェイトをシャフトに対して位置決めすることができるので、例えば、位置決め部が無い場合に比して、第1バランスウェイトによるアンバランス補正量の精度を確保することができる。
【0034】
請求項11に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記ロータコアは、ロータコアの中心部よりも前記ロータコアの径方向外側の偏心した位置に空洞状に形成されたマイナスバランス部を有するロータである。
【0035】
請求項11に記載の発明では、ロータコアが、ロータコアの中心部よりもロータコアの径方向外側の偏心した位置に空洞状に形成されたマイナスバランス部を有する。したがって、第1ウェイトバランス及び第2バランスウェイトに加えて、マイナスバランス部によっても、回転体のアンバランスを補正することができる。これにより、例えば、ロータコアがマイナスバランス部を有しない場合に比して、第1ウェイトバランス及び第2バランスウェイトを小型化することができる。
【0036】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のロータにおいて、前記ロータが、前記マイナスバランス部よりも前記ロータコアの径方向外側の位置に設けられたロータマグネットを有し、前記マイナスバランス部が、前記ロータマグネットによる磁路を避けた位置に形成されているロータである。
【0037】
請求項12に記載の発明では、マイナスバランス部が、ロータマグネットによる磁路を避けた位置に形成されている。したがって、例えば、マイナスバランス部の少なくとも一部が、ロータマグネットによる磁路に形成されている場合に比して、磁路の領域を確保することができる。これにより、モータ部の特性が低下することを抑制することができる。
【0038】
請求項13に記載の発明は、請求項11に記載のロータにおいて、前記ロータが、前記マイナスバランス部よりも前記ロータコアの径方向外側の位置に設けられたロータマグネットを有し、前記マイナスバランス部の少なくとも一部は、前記ロータマグネットの横幅方向の中央部と対応する位置に形成されているロータである。
【0039】
請求項13に記載の発明では、マイナスバランス部の少なくとも一部が、ロータマグネットの横幅方向の中央部と対応する位置に形成されている。したがって、マイナスバランス部の少なくとも一部が、ロータマグネットによる磁路に形成されることを回避しつつ、マイナスバランス部の少なくとも一部をよりロータコアの径方向外側に位置させることができる。これにより、マイナスバランス部によるアンバランス補正量を大きくすることができる。
【0040】
請求項14に記載の発明は、請求項11に記載のロータにおいて、前記ロータが、前記マイナスバランス部よりも前記ロータコアの径方向外側の位置に設けられた複数のロータマグネットを有し、前記複数のロータマグネットが、前記ロータの周方向に並んで配置されており、前記マイナスバランス部の少なくとも一部が、隣り合う前記ロータマグネットの間と対応する位置に形成されているロータである。
【0041】
請求項14に記載の発明では、マイナスバランス部の少なくとも一部が、隣り合うロータマグネットの間と対応する位置に形成されている。したがって、マイナスバランス部の少なくとも一部が、ロータマグネットによる磁路に形成されることを回避しつつ、マイナスバランス部の少なくとも一部をよりロータコアの径方向外側に位置させることができる。これにより、マイナスバランス部によるアンバランス補正量を大きくすることができる。
【0042】
請求項15に記載の発明は、請求項11に記載のロータにおいて、前記マイナスバランス部が、前記ロータコアの軸方向一方側の端面に開口する第1マイナスバランス部と、前記ロータコアの軸方向他方側の端面に開口する第2マイナスバランス部とを有するロータである。
【0043】
請求項15に記載の発明では、マイナスバランス部が、ロータコアの軸方向一方側の端面に開口する第1マイナスバランス部と、ロータコアの軸方向他方側の端面に開口する第2マイナスバランス部とを有する。したがって、第1マイナスバランス部及び第2マイナスバランス部の両方によって、回転体のアンバランスを補正することができる。これにより、例えば、マイナスバランス部が第1マイナスバランス部及び第2マイナスバランス部のうちのどちらか一方のみを備える場合に比して、回転体のアンバランスを容易に補正することができる。
【0044】
請求項16に記載の発明は、請求項11に記載のロータにおいて、前記ロータコアが、前記ロータコアの軸方向一方側の端面に開口し、ロータマグネットを収容するマグネット収容穴を有し、前記マグネット収容穴が、前記第1固定部によって塞がれており、前記第1固定部が、前記ロータコアの軸方向から見て前記ロータマグネットと隣接する位置に形成されたマグネット冷却穴を有するロータである。
【0045】
請求項16に記載の発明では、第1固定部は、ロータコアの軸方向から見てロータマグネットと隣接する位置に形成されたマグネット冷却穴を有する。したがって、マグネット冷却穴に流体が流入することにより、ロータマグネットを冷却することができる。
【0046】
請求項17に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記第2バランスウェイトが、前記ロータコアの軸方向他方側の端面に固定された第2固定部と、前記第2固定部の外周側の端部から前記ロータコアの軸方向他方側へ延出する第2軸方向延出部と、前記第2軸方向延出部の先端側の端部から前記ロータコアの径方向外側へ延出する第2径方向延出部とを有するロータである。
【0047】
請求項17に記載の発明では、第2バランスウェイトが、ロータコアの軸方向他方側の端面に固定された第2固定部と、第2固定部の外周側の端部からロータコアの軸方向他方側へ延出する第2軸方向延出部と、第2軸方向延出部の先端側の端部からロータコアの径方向外側へ延出する第2径方向延出部とを有する。したがって、例えば、ロータコアの径方向に沿った第2固定部の長さ、ロータコアの軸方向に沿った第2軸方向延出部の長さ、及び、ロータコアの径方向に沿った第2径方向延出部の長さ等を調整することにより、回転体のアンバランスを補正することができる。これにより、回転体のアンバランスを容易に補正することができる。
【0048】
本発明の第2の観点に係る目的を達成するために、請求項18に記載の発明は、モータ部と、前記モータ部の軸方向一方側に設けられたコンプレッサ部とを備え、前記モータ部が、モータハウジングと、前記モータハウジングの内側に固定されたステータと、前記ステータの内側に回転可能に設けられたロータと、前記ロータの中心部に設けられたシャフトとを備え、前記コンプレッサ部が、前記モータハウジングに対して組み付けられたコンプレッサハウジングと、前記コンプレッサハウジングの内側に固定された固定スクロールと、前記シャフトに対して偏芯した状態で固定され、前記固定スクロールに対して旋回可能に設けられた可動スクロールとを備え、前記ロータが、ロータコアと、前記ロータコアの軸方向一方側の端面に設けられたバランスウェイトとを備え、前記バランスウェイトが、前記ロータコアの軸方向一方側の端面に固定された固定部と、前記固定部の外周側の端部から前記ロータコアの軸方向一方側へ延出する軸方向延出部と、前記軸方向延出部の先端側の端部から前記ロータコアの径方向外側へ延出する径方向延出部とを有し、前記径方向延出部が、前記モータ部の軸方向における前記ステータと前記コンプレッサハウジングとの間のスペースに配置されているコンプレッサである。
【0049】
請求項18に記載の発明では、径方向延出部が、モータ部の軸方向におけるステータとコンプレッサハウジングとの間のスペースに配置されている。ここで、モータ部の軸方向におけるステータとコンプレッサハウジングとの間のスペースは、デッドスペースである。したがって、バランスウェイトを備えていても、コンプレッサが軸方向に大型化することを抑制することができる。
【0050】
請求項19に記載の発明は、請求項18に記載のコンプレッサにおいて、前記ロータが、前記バランスウェイトを含むアンバランス補正部を備え、前記アンバランス補正部が、前記可動スクロールによるアンバランスを補うアンバランス補正量を有するコンプレッサである。
【0051】
請求項19に記載の発明では、ロータが、バランスウェイトを含むアンバランス補正部を備え、アンバランス補正部が、可動スクロールによるアンバランスを補うアンバランス補正量を有する。これにより、ロータ及び可動スクロールを含む回転体のアンバランスを補正することができるので、回転体の回転に伴う騒音の発生等を抑制することができる。
【0052】
請求項20に記載の発明は、請求項18又は請求項19に記載のコンプレッサにおいて、前記ステータが、前記ロータコアの径方向外側に配置されたステータコアを有し、前記軸方向延出部と前記第1固定部との接続部が、前記ロータコアの外形よりも内側に位置しており、前記径方向延出部の外周側の端部が、前記ステータコアの外形よりも内側に位置しているコンプレッサである。
【0053】
請求項20に記載の発明では、軸方向延出部と第1固定部との接続部が、ロータコアの外形よりも内側に位置している。したがって、第1固定部がロータコアの径方向外側に配置されたステータコアと干渉することを抑制することができる。また、径方向延出部の外周側の端部は、ステータコアの外形よりも内側に位置している。したがって、径方向延出部がステータコアの径方向外側に配置されたモータハウジング等と干渉することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の一実施形態に係るロータを備えたコンプレッサの要部を示す縦断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るロータの分解斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るロータの斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る第1バランスウェイトの斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る第1バランスウェイトの二面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るロータコアを軸方向一方側から見た図である。
図7】本発明の一実施形態に係る第2バランスウェイトの厚みと回転アンバランス補正量との関係を示すグラフである。
図8】本発明の一実施形態に係る第2バランスウェイトの厚みとモーメントアンバランス補正量との関係を示すグラフである。
図9】二種類のロータの軸長を比較する図である。
図10】第1バランスウェイト及び第2バランスウェイトの組み合わせの第1変形例を示す縦断面図である。
図11】第1バランスウェイト及び第2バランスウェイトの組み合わせの第2変形例を示す縦断面図である。
図12】第1バランスウェイト及び第2バランスウェイトの組み合わせの第3変形例を示す縦断面図である。
図13】第1バランスウェイト及び第2バランスウェイトの組み合わせの第4変形例を示す縦断面図である。
図14】第1バランスウェイト及び第2バランスウェイトの組み合わせの第5変形例を示す縦断面図である。
図15】第1バランスウェイトの形状の第1変形例を示す縦断面図である。
図16】第1バランスウェイトの形状の第2変形例を示す縦断面図である。
図17】第1バランスウェイトの形状の第3変形例を示す縦断面図である。
図18】第1バランスウェイトの形状の第4変形例を示す縦断面図である。
図19】第1バランスウェイトの形状の第5変形例を示す縦断面図である。
図20】第1バランスウェイトの形状の第6変形例を示す縦断面図である。
図21】第1バランスウェイトの形状の第7変形例を示す縦断面図である。
図22】マイナスバランス部の構成の変形例を示す縦断面図である。
図23】第1マイナスバランス部の深さと回転アンバランス補正量との関係を示すグラフである。
図24】第1マイナスバランス部の深さとモーメントアンバランス補正量との関係を示すグラフである。
図25】マイナスバランス部の形状の第1変形例を示す縦断面図である。
図26】マイナスバランス部の形状の第2変形例を示す縦断面図である。
図27】第1バランスウェイトの固定部の第1変形例を示す図である。
図28】第1バランスウェイトの固定部の第2変形例を示す図である。
図29】ロータの構成の第1変形例を示す分解斜視図である。
図30】ロータの構成の第2変形例を示す分解斜視図である。
図31】スクロール型のコンプレッサの一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0056】
図1は、本実施形態に係るロータ60を備えたコンプレッサ10の要部を示す縦断面図である。図1に示すコンプレッサ10において、以下に説明するロータ60を除く構成は、図31に示すコンプレッサ10と同様であるため、図31と同一の符号を用いることとして説明を省略する。図2は、本実施形態に係るロータ60の分解斜視図であり、図3は、本実施形態に係るロータ60の斜視図である。
【0057】
ロータ60は、ロータコア30と、第1バランスウェイト62と、第2バランスウェイト64と、第1蓋板66と、第2蓋板68とを備える。第1バランスウェイト62は、本発明における「バランスウェイト」の一例である。
【0058】
第1蓋板66は、ロータコア30の軸方向一方側の端面に設けられており、第2蓋板68は、ロータコア30の軸方向他方側の端面に設けられている。第1蓋板66には、シャフト挿入穴70が形成されており、第2蓋板68には、シャフト挿入穴72が形成されている。第1蓋板66は、シャフト挿入穴70にシャフト22が圧入されることにより、シャフト22及びロータコア30に対して固定されている。同様に、第2蓋板68は、シャフト挿入穴72にシャフト22が圧入されることにより、シャフト22及びロータコア30に対して固定されている。
【0059】
第1バランスウェイト62は、ロータコア30の軸方向一方側の端面に第1蓋板66を介して取り付けられており、第2バランスウェイト64は、ロータコア30の軸方向他方側の端面に第2蓋板68を介して取り付けられている。第1バランスウェイト62は、例えば、板金製であり、板状に形成されている。一方、第2バランスウェイト64は、ブロック状に形成されている。第2バランスウェイト64は、一例として、ロータコア30の軸方向から見てロータ60の周方向に沿う円弧状に形成されている。第2バランスウェイト64は、圧入又はかしめ等により、ロータコア30に対して固定される。
【0060】
ロータコア30は、シャフト挿入穴74と、マグネット収容穴76と、マイナスバランス部78とを有する。シャフト挿入穴74は、ロータコア30の中心部に形成されており、ロータコア30の軸方向に貫通している。シャフト挿入穴74には、シャフト22が挿入(一例として、圧入)されており、これにより、ロータコア30がシャフト22に固定されている。
【0061】
マグネット収容穴76は、ロータコア30の外周面側の部分に形成されており、ロータコア30の軸方向に貫通している。マグネット収容穴76には、ロータマグネット32が収容されている。ロータマグネット32は、一例として、ボンドマグネットである。マグネット収容穴76は、ロータコア30の軸方向両側から第1蓋板66及び第2蓋板68によって塞がれている。
【0062】
第1バランスウェイト62、第2バランスウェイト64、及びマイナスバランス部78は、ロータ60と、シャフト22と、可動スクロール38(図31参照)とを含む回転体のアンバランスを補正するアンバランス補正部80を形成している。
【0063】
なお、図1では、便宜上、第1バランスウェイト62、第2バランスウェイト64、及びマイナスバランス部78が、ロータコア30の周方向における同じ位置に配置されているように図示されている。しかしながら、可動スクロール38によるアンバランスに対して、第1バランスウェイト62、第2バランスウェイト64、及びマイナスバランス部78によって回転体のアンバランスが補正されるように、ロータコア30の周方向における第1バランスウェイト62、第2バランスウェイト64、及びマイナスバランス部78の各位置が設定される。
【0064】
図1から図3に示す例において、マイナスバランス部78は、ロータコア30の軸方向に貫通しているが、ロータコア30の軸方向に貫通していなくてもよい。マイナスバランス部78は、シャフト挿入穴74よりもロータコア30の径方向外側かつマグネット収容穴76よりもロータコア30の径方向内側の位置に形成されている。
【0065】
図4は、本実施形態に係る第1バランスウェイト62の斜視図であり、図5は、本実施形態に係る第1バランスウェイト62の二面図である。第1バランスウェイト62は、固定部82と、軸方向延出部84と、径方向延出部86とを有する。固定部82は、本発明における「第1固定部」の一例であり、軸方向延出部84は、本発明における「第1軸方向延出部」の一例であり、径方向延出部86は、本発明における「第1径方向延出部」の一例である。
【0066】
固定部82は、ロータコア30の軸方向一方側の端面に第1蓋板66を介して固定される。軸方向延出部84は、固定部82の外周側の端部82Aからロータコア30の軸方向一方側へ延出する。径方向延出部86は、軸方向延出部84の先端側の端部84Aからロータコア30の径方向外側へ延出する。
【0067】
ロータコア30の径方向に沿った径方向延出部86の長さL1は、ロータコア30の軸方向に沿った軸方向延出部84の長さL2よりも長い。ロータコア30の軸方向に沿った固定部82の厚さT1は、ロータコア30の軸方向に沿った第2バランスウェイト64の厚さT2(図2参照)よりも薄い。
【0068】
固定部82、軸方向延出部84、及び径方向延出部86は、それぞれ矩形状に形成されている。固定部82は、シャフト挿入穴88を有する。シャフト挿入穴88は、固定部82の板厚方向(すなわち、ロータコア30の軸方向)に貫通している。シャフト挿入穴88には、シャフト22が挿入(一例として、圧入)されており、これにより、第1バランスウェイト62がロータコア30に固定されている。
【0069】
また、固定部82は、キー溝90を有する。キー溝90は、シャフト挿入穴88の周方向の一部に凹状に切り欠かれた形状に形成されている。キー溝90には、シャフト22に形成された凸部(図示省略)が嵌合され、これにより、第1バランスウェイト62がシャフト22に対して回転方向に位置決めされる。なお、固定部82には、位置決め穴92が形成されてもよい。そして、位置決め穴92にリベット(図示省略)が挿入され、リベットがロータコア30に形成されたリベット穴(図示省略)に圧入されることにより、第1バランスウェイト62がロータコア30に対して位置決めされてもよい。キー溝90及び位置決め穴92は、本発明における「位置決め部」の一例である。
【0070】
図1に示すように、第1ハウジング40には、第2軸受50を収容する軸受収容部94が形成されている。軸受収容部94は、ロータコア30の軸方向一方側の端面に対してモータ部12の軸方向に対向する底面を有する。固定部82は、ロータコア30の軸方向一方側の端面と軸受収容部94の底面との間のスペース96に配置されている。
【0071】
また、軸受収容部94は、ステータ18の内周部(具体的には、インシュレータ26の内周面)に対してモータ部12の径方向に対向する外周面を有する。軸方向延出部84は、ステータ18の内周部と軸受収容部94の外周面との間のスペース98に配置されている。ステータ18の内周部と軸受収容部94の外周面との間のスペース98は、モータ部12の径方向におけるステータ18とコンプレッサハウジング34との間に形成されたデッドスペースである。
【0072】
第1ハウジング40は、ステータ18に対してモータ部12の軸方向に対向する対向面を有する。径方向延出部86は、ステータ18と第1ハウジング40の対向面との間のスペース100に配置されている。スペース100は、モータ部12の軸方向におけるステータ18とコンプレッサハウジング34との間に形成されたデッドスペースである。
【0073】
図5に示す想像線Aは、ロータコア30の外形(すなわち、外周面)を示している。軸方向延出部84と固定部82との接続部(すなわち、固定部82の外周側の端部82A)は、ロータコア30の外形よりも内側に位置している。また、図5に示す想像線Bは、ステータコア24の外形(すなわち、外周面)を示している。径方向延出部86の外周側の端部86Aは、ステータコア24の外形よりも内側に位置している。
【0074】
図6は、本実施形態に係るロータコア30を軸方向一方側から見た図である。ロータコア30には、複数のマグネット収容穴76が形成されている。複数のマグネット収容穴76は、ロータコア30の周方向に並んで形成されている。各マグネット収容穴76は、ロータコア30の軸方向から見てロータコア30の接線方向に延びている。ロータマグネット32(図1参照)は、マグネット収容穴76に収容されることにより、マイナスバランス部78よりもロータコア30の径方向外側の位置に配置される。
【0075】
一例として、ロータコア30の軸方向から見てロータコア30を中心線により第1領域A1と第2領域A2に区分けした場合に、マイナスバランス部78は、第1領域A1に形成されている。また、マイナスバランス部78は、ロータマグネット32による磁路を避けた位置に形成されている。すなわち、想像線Cは、ロータマグネット32による磁路を避けた位置の最外径線であり、マイナスバランス部78は、想像線Cよりもロータコア30の径方向内側に形成されている。また、想像線Dは、シャフト挿入穴74に対して肉厚を確保した位置の最内径線であり、マイナスバランス部78は、想像線Dよりもロータコア30の径方向外側に形成されている。
【0076】
なお、ロータコア30には、リベット穴102が形成されている場合、マイナスバランス部78は、リベット穴102に対して肉厚を確保した位置に形成される。すなわち、想像線Eは、リベット穴102に対して肉厚を確保した位置の最外径線であり、マイナスバランス部78は、想像線Eの外側に形成されている。また、想像線Fは、磁路を確保するために肉厚を確保する必要のある部分の最外径線であり、マイナスバランス部78は、想像線Fの外側に形成されている。
【0077】
図7は、本実施形態に係る第2バランスウェイト64の厚みと回転アンバランス補正量との関係を示すグラフである。回転アンバランス補正量は、本発明における「アンバランス補正量」の一例である。アンバランス補正部80は、可動スクロール38による回転アンバランスを補うための回転アンバランス補正量として、第1バランスウェイト62による回転アンバランス補正量と、第2バランスウェイト64による回転アンバランス補正量と、マイナスバランス部78による回転アンバランス補正量とを有する。
【0078】
マイナスバランス部78による回転アンバランス補正量は、マイナスバランス部78が形成された第1領域A1とは反対側の第2領域A2による回転アンバランス補正量に相当する。ここで言う回転アンバランス及び回転アンバランス補正量は、質量と、回転軸から重心までのロータコア30の径方向に沿った距離との積によって算出される。可動スクロール38による回転アンバランスに対して、第1バランスウェイト62による回転アンバランス補正量、第2バランスウェイト64による回転アンバランス補正量、及びマイナスバランス部78による回転アンバランス補正量が釣り合うように、ロータコア30の周方向における第1バランスウェイト62、第2バランスウェイト64、及びマイナスバランス部78の各位置が設定される。
【0079】
図8に示す例では、第1バランスウェイト62による回転アンバランス補正量と、マイナスバランス部78による回転アンバランス補正量とを固定値として、第2バランスウェイト64の厚みを求めることとする。グラフG1は、第2バランスウェイト64の厚みと回転アンバランス補正量との関係を示すグラフである。可動スクロール38による回転アンバランスを成立条件(目標値)とした場合に、可動スクロール38による回転アンバランスを補うためには、グラフG1と目標値との交点に対応する厚みT2を第2バランスウェイト64が有して入ればよい。
【0080】
なお、ここでは、第2バランスウェイト64の厚みを求めたが、厚み以外の各寸法を求めてもよい。また、第1バランスウェイト62による回転アンバランス補正量と、マイナスバランス部78による回転アンバランス補正量とを固定値としたが、第2バランスウェイト64による回転アンバランス補正量と、マイナスバランス部78による回転アンバランス補正量とを固定値として、第1バランスウェイト62の各寸法を求めてもよい。また、第1バランスウェイト62による回転アンバランス補正量と、第2バランスウェイト64による回転アンバランス補正量とを固定値として、マイナスバランス部78の各寸法を求めてもよい。
【0081】
図8は、本実施形態に係る第2バランスウェイト64の厚みとモーメントアンバランス補正量との関係を示すグラフである。モーメントアンバランス補正量は、本発明における「アンバランス補正量」の一例である。アンバランス補正部80は、可動スクロール38によるモーメントアンバランスを補うためのモーメントアンバランス補正量として、第1バランスウェイト62によるモーメントアンバランス補正量と、第2バランスウェイト64によるモーメントアンバランス補正量と、マイナスバランス部78によるモーメントアンバランス補正量とを有する。
【0082】
マイナスバランス部78によるモーメントアンバランス補正量は、マイナスバランス部78が形成された第1領域A1とは反対側の第2領域A2によるモーメントアンバランス補正量に相当する。ここで言うモーメントアンバランス及びモーメントアンバランス補正量は、回転アンバランス補正量と、第1軸受48から重心までのロータコア30の軸方向に沿った距離との積によって算出される。可動スクロール38によるモーメントアンバランスに対して、第1バランスウェイト62によるモーメントアンバランス補正量、第2バランスウェイト64によるモーメントアンバランス補正量、及びマイナスバランス部78によるモーメントアンバランス補正量が釣り合うように、ロータコア30の周方向における第1バランスウェイト62、第2バランスウェイト64、及びマイナスバランス部78の各位置が設定される。
【0083】
図8に示す例では、第1バランスウェイト62によるモーメントアンバランス補正量と、マイナスバランス部78によるモーメントアンバランス補正量とを固定値として、第2バランスウェイト64の厚みを求めることとする。グラフG2は、第2バランスウェイト64の厚みとモーメントアンバランスとの関係を示すグラフである。可動スクロール38によるモーメントアンバランスを成立条件(目標値)とした場合に、可動スクロール38によるモーメントアンバランスを補うためには、グラフG2と目標値との交点に対応する厚みT2を第2バランスウェイト64が有して入ればよい。
【0084】
なお、ここでは、第2バランスウェイト64の厚みを求めたが、厚み以外の各寸法を求めてもよい。また、第1バランスウェイト62によるモーメントアンバランス補正量と、マイナスバランス部78によるモーメントアンバランス補正量とを固定値としたが、第2バランスウェイト64によるモーメントアンバランス補正量と、マイナスバランス部78によるモーメントアンバランス補正量とを固定値として、第1バランスウェイト62の各寸法を求めてもよい。また、第1バランスウェイト62によるモーメントアンバランス補正量と、第2バランスウェイト64によるモーメントアンバランス補正量とを固定値として、マイナスバランス部78の各寸法を求めてもよい。
【0085】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0086】
本実施形態では、ロータコア30が、ロータコア30の軸方向一方側の端面に設けられた第1バランスウェイト62と、ロータコア30の軸方向他方側の端面に設けられた第2バランスウェイト64とを備える。したがって、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64の両方によって、ロータ60を含む回転体のアンバランスを補正することができるので、例えば、ロータコア30が第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64のうちのどちらか一方のみを備える場合に比して、回転体のアンバランスを容易に補正することができる。
【0087】
また、本実施形態では、第1バランスウェイト62が、ロータコア30の軸方向一方側の端面に固定された固定部82と、固定部82の外周側の端部82Aからロータコア30の軸方向一方側へ延出する軸方向延出部84と、軸方向延出部84の先端側の端部84Aからロータコア30の径方向外側へ延出する径方向延出部86とを有する。したがって、例えば、ロータコア30の径方向に沿った固定部82の長さ、ロータコア30の軸方向に沿った軸方向延出部84の長さ、及び、ロータコア30の径方向に沿った径方向延出部86の長さ等を調整することにより、回転体のアンバランスを補正することができる。これにより、回転体のアンバランスを容易に補正することができる。
【0088】
また、本実施形態では、ロータコア30の径方向に沿った径方向延出部86の長さL1が、ロータコア30の軸方向に沿った軸方向延出部84の長さL2よりも長い。したがって、例えば、径方向延出部86の長さL1が軸方向延出部84の長さL2よりも短い場合に比して、第1バランスウェイト62によるアンバランス補正量を大きくすることができる。
【0089】
また、本実施形態では、ロータコア30の軸方向に沿った固定部82の厚さT1が、ロータコア30の軸方向に沿った第2バランスウェイト64の厚さT2よりも薄い。したがって、例えば、固定部82の厚さT1が第2バランスウェイト64の厚さT2と同等である場合に比して、ロータ60の軸方向の長さを抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態では、固定部82、軸方向延出部84、及び径方向延出部86が板状に形成されている。したがって、ロータコア30の周辺のスペース96、98、100に応じて、固定部82、軸方向延出部84、及び径方向延出部86の形状を設定できるので、例えば、第1バランスウェイト62がブロック状に形成される場合に比して、第1バランスウェイト62の配置の自由度を高めることができる。
【0091】
また、本実施形態では、ロータコア30が、ロータコア30の中心部に形成され、シャフト22が挿入されるシャフト挿入穴74を有し、第1バランスウェイト62が、シャフト22に対して位置決めするキー溝90及び位置決め穴92を有する。したがって、キー溝90及び位置決め穴92を用いて、第1バランスウェイト62をシャフト22に対して位置決めすることができるので、例えば、キー溝90及び位置決め穴92が無い場合に比して、第1バランスウェイト62によるアンバランス補正量の精度を確保することができる。
【0092】
また、本実施形態では、ロータコア30が、ロータコア30の中心部よりもロータコア30の径方向外側の偏心した位置に空洞状に形成されたマイナスバランス部78を有する。したがって、第1ウェイトバランス及び第2バランスウェイト64に加えて、マイナスバランス部78によっても、回転体のアンバランスを補正することができる。これにより、例えば、ロータコア30がマイナスバランス部78を有しない場合に比して、第1ウェイトバランス及び第2バランスウェイト64を小型化することができる。
【0093】
また、本実施形態では、マイナスバランス部78が、ロータマグネット32による磁路を避けた位置に形成されている。したがって、例えば、マイナスバランス部78の少なくとも一部が、ロータマグネット32による磁路に形成されている場合に比して、磁路の領域を確保することができる。これにより、モータ部12の特性が低下することを抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態では、径方向延出部86が、モータ部12の軸方向におけるステータ18とコンプレッサハウジング34との間のスペース100に配置されている。スペース100は、デッドスペースである。したがって、バランスウェイトを備えていても、コンプレッサ10が軸方向に大型化することを抑制することができる。
【0095】
また、本実施形態では、ロータ60が、第1バランスウェイト62、第2バランスウェイト64、及びマイナスバランス部78を含むアンバランス補正部80を備え、アンバランス補正部80が、可動スクロール38によるアンバランスを補うアンバランス補正量を有する。これにより、ロータ60及び可動スクロール38を含む回転体のアンバランスを補正することができるので、回転体の回転に伴う騒音の発生等を抑制することができる。
【0096】
また、本実施形態では、軸方向延出部84と固定部82との接続部(すなわち、固定部82の外周側の端部82A)が、ロータコア30の外形よりも内側に位置している。したがって、固定部82がロータコア30の径方向外側に配置されたステータコア24と干渉することを抑制することができる。また、径方向延出部86の外周側の端部86Aは、ステータコア24の外形よりも内側に位置している。したがって、径方向延出部86がステータコア24の径方向外側に配置されたモータハウジング16等と干渉することを抑制することができる。
【0097】
図9は、二種類のロータ60の軸長を比較する図である。図9の左側に示すロータ60では、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64がそれぞれブロック状に形成されている。また、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64は、それぞれリベット104によってロータコア30に固定されている。図9の右側に示すロータ60は、図1から図8に示すロータである。図9の右側に示すロータ60によれば、図9の左側に示すロータ60に比して、軸長Lを短くすることができる。
【0098】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0099】
図10は、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64の組み合わせの第1変形例を示す縦断面図である。図10に示す第1変形例では、第1バランスウェイト62がブロック状に形成されている。第1バランスウェイト62は、第2バランスウェイト64と同一の形状でもよく、異なる形状でもよい。
【0100】
図11は、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64の組み合わせの第2変形例を示す縦断面図である。図11に示す第2変形例では、第1バランスウェイト62から径方向延出部86が省かれており、第1バランスウェイト62が固定部82及び軸方向延出部84を有する構成となっている。
【0101】
図12は、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64の組み合わせの第3変形例を示す縦断面図である。図12に示す第3変形例では、第2バランスウェイト64が固定部112及び軸方向延出部114を有する構成となっている。固定部112は、本発明における「第2固定部」の一例であり、軸方向延出部114は、本発明における「第2軸方向延出部」の一例である。固定部112は、ロータコア30の軸方向他方側の端面に第2蓋板68を介して固定されている。軸方向延出部114は、固定部112の外周側の端部からロータコア30の軸方向他方側へ延出している。
【0102】
図13は、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64の組み合わせの第4変形例を示す縦断面図である。図13に示す第4変形例では、第1バランスウェイト62が固定部82及び軸方向延出部84を有する構成となっており、第2バランスウェイト64も、第1バランスウェイト62と同様に、固定部112及び軸方向延出部114を有する構成となっている。
【0103】
図14は、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64の組み合わせの第5変形例を示す縦断面図である。図14に示す第5変形例では、第2バランスウェイト64が径方向延出部116を有する。径方向延出部116は、本発明における「第2径方向延出部」の一例である。径方向延出部116は、軸方向延出部84の先端側の端部からロータコア30の径方向外側へ延出する。径方向延出部116は、ステータ18とモータハウジング16の底部との間のスペース106に配置されている。スペース106は、モータ部12の軸方向におけるステータ18とコンプレッサハウジング34との間に形成されたデッドスペースである。
【0104】
このように構成されていると、例えば、ロータコア30の径方向に沿った固定部112の長さ、ロータコア30の軸方向に沿った軸方向延出部114の長さ、及び、ロータコア30の径方向に沿った径方向延出部116の長さ等を調整することにより、回転体のアンバランスを補正することができる。これにより、回転体のアンバランスを容易に補正することができる。
【0105】
図15は、第1バランスウェイト62の形状の第1変形例を示す縦断面図である。図15に示す第1変形例では、シャフト挿入穴88の代わりに、シャフト22が挿入される切欠き120が半円状に形成されている。第1バランスウェイト62は、位置決め穴92にリベット(図示省略)が挿入され、リベットがロータコア30に形成されたリベット穴に圧入されることにより、ロータコア30に固定されてもよい。
【0106】
図16は、第1バランスウェイト62の形状の第2変形例を示す縦断面図である。図16に示す第2変形例では、固定部82が円形状に形成されている。また、軸方向延出部84及び径方向延出部86が、それぞれロータコア30の周方向に沿う円弧状に形成されている。このように構成されていると、例えば、軸方向延出部84及び径方向延出部86が矩形状に形成される場合に比して、軸方向延出部84及び径方向延出部86の大きさを大きくすることができる。これにより、第1バランスウェイト62によるアンバランス補正量を大きくすることができる。なお、径方向延出部86を切り起こし片によって形成するために、径方向延出部86の適宜箇所に切り込みが形成されていてもよい。
【0107】
図17は、第1バランスウェイト62の形状の第3変形例を示す縦断面図である。図17に示す第3変形例では、図16に示す第2変形例に対して、固定部82が半円状に形成されている。また、固定部82には、シャフト挿入穴88の代わりに、シャフト22が挿入される切欠き120が半円状に形成されている。
【0108】
図18は、第1バランスウェイト62の形状の第4変形例を示す縦断面図である。図18に示す第4変形例では、第1バランスウェイト62から径方向延出部86が省かれており、第1バランスウェイト62が固定部82及び軸方向延出部84を有する構成となっている。
【0109】
図19は、第1バランスウェイト62の形状の第5変形例を示す縦断面図である。図19に示す第5変形例では、図18に示す第4変形例に対して、固定部82には、シャフト挿入穴88の代わりに、シャフト22が挿入される切欠き120が半円状に形成されている。
【0110】
図20は、第1バランスウェイト62の形状の第6変形例を示す縦断面図である。図20に示す第6変形例では、図16に示す第2変形例に対して、第1バランスウェイト62から径方向延出部86が省かれており、第1バランスウェイト62が固定部82及び軸方向延出部84を有する構成となっている。なお、軸方向延出部84を切り起こし片によって形成するために、軸方向延出部84の適宜箇所に切り込みが形成されていてもよい。
【0111】
図21は、第1バランスウェイト62の形状の第7変形例を示す縦断面図である。図21に示す第7変形例では、図20に示す第6変形例に対して、固定部82が半円状に形成されている。また、固定部82には、シャフト挿入穴88の代わりに、シャフト22が挿入される切欠き120が半円状に形成されている。
【0112】
図22は、マイナスバランス部78の構成の変形例を示す縦断面図である。図22に示す変形例では、マイナスバランス部78が、ロータコア30の軸方向一方側の端面に開口する第1マイナスバランス部122と、ロータコア30の軸方向他方側の端面に開口する第2マイナスバランス部124とを有する。
【0113】
第1マイナスバランス部122と第2マイナスバランス部124とは、ロータコア30の軸方向における同じ位置で終端しており、第2マイナスバランス部124の深さYは、ロータコア30の軸長Zから第1マイナスバランス部122の深さXを減算した値に設定されている。なお、第1マイナスバランス部122と第2マイナスバランス部124とは、ロータコア30の軸方向における異なる位置で終端していてもよい。また、第1マイナスバランス部122及び第2マイナスバランス部124は、それぞれロータコア30の軸方向に貫通していてもよい。
【0114】
このように構成されていると、第1マイナスバランス部122及び第2マイナスバランス部124の両方によって、回転体のアンバランスを補正することができる。これにより、例えば、マイナスバランス部78が第1マイナスバランス部122及び第2マイナスバランス部124のうちのどちらか一方のみを備える場合に比して、回転体のアンバランスを容易に補正することができる。
【0115】
図23は、第1マイナスバランス部122の深さXと回転アンバランス補正量との関係を示すグラフである。図23に示す例では、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64による回転アンバランス補正量を固定値として、第1マイナスバランス部122の深さXを求めることとする。グラフG3及びグラフG4は、第1バランスウェイト62の深さXとマイナスバランス部78による回転アンバランス補正量との関係を示すグラフである。ロータコア30は、複数のコアシートが積層された構成であり、グラフG3は、第1マイナスバランス部122が形成されたコアシートを転積しない場合を示し、グラフG4は、第1マイナスバランス部122が形成されたコアシートを転積した場合を示す。
【0116】
なお、ロータコア30の軸方向一方側において、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64による回転アンバランス補正量と、マイナスバランス部78による回転アンバランス補正量との間に差が生じているのは、キー溝90によるものである。
【0117】
グラフG3で示すように、コアシートを転積しない場合には、第1マイナスバランス部122の深さXとマイナスバランス部78による回転アンバランス補正量が比例する。一方、グラフG4で示すように、コアシートを転積した場合には、第1マイナスバランス部122の深さXが増加するに従って、極小値を有するようにマイナスバランス部78による回転アンバランス補正量が変化する。このように、コアシートを転積することで、マイナスバランス部78による回転アンバランス補正量を調整することが可能である。
【0118】
図24は、第1マイナスバランス部122の深さXとモーメントアンバランス補正量との関係を示すグラフである。図24に示す例では、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64によるモーメントアンバランス補正量を固定値として、第1マイナスバランス部122の深さXを求めることとする。グラフG5及びグラフG6は、第1バランスウェイト62の深さXとマイナスバランス部78によるモーメントアンバランス補正量との関係を示すグラフである。グラフG5は、第1マイナスバランス部122が形成されたコアシートを転積しない場合を示し、グラフG6は、第1マイナスバランス部122が形成されたコアシートを転積した場合を示す。
【0119】
なお、ロータコア30の軸方向一方側において、第1バランスウェイト62及び第2バランスウェイト64によるモーメントアンバランス補正量と、マイナスバランス部78によるモーメントアンバランス補正量との間に差が生じているのは、キー溝90の影響によるものである。
【0120】
グラフG5で示すように、コアシートを転積しない場合には、第1マイナスバランス部122の深さXとマイナスバランス部78によるモーメントアンバランス補正量が比例する。一方、グラフG6で示すように、コアシートを転積した場合には、第1マイナスバランス部122の深さXが増加するに従って、極小値を有するようにマイナスバランス部78によるモーメントアンバランス補正量が変化する。このように、コアシートを転積することで、マイナスバランス部78によるモーメントアンバランス補正量を調整することが可能である。
【0121】
図25は、マイナスバランス部78の形状の第1変形例を示す縦断面図である。図25に示す変形例では、マイナスバランス部78の一部78Aは、ロータマグネット32(換言すれば、マグネット収容穴76)の横幅方向の中央部と対応する位置に形成されている。ロータマグネット32の横幅方向は、ロータコア30の接線方向に沿う方向である。マイナスバランス部78の一部78Aは、凹状に形成されている。マイナスバランス部78の一部78Aは、ロータマグネット32による磁路を避けた位置に形成されている。
【0122】
このように構成されていると、マイナスバランス部78の一部78Aが、ロータマグネット32による磁路に形成されることを回避しつつ、マイナスバランス部78の一部78Aをよりロータコア30の径方向外側に位置させることができる。これにより、マイナスバランス部78によるアンバランス補正量を大きくすることができる。
【0123】
なお、マイナスバランス部78の全部がロータマグネット32の横幅方向の中央部と対応する位置に形成されていてもよい。
【0124】
図26は、マイナスバランス部78の形状の第2変形例を示す縦断面図である。図26に示す変形例では、マイナスバランス部78の一部78Aは、隣り合うロータマグネット32(換言すれば、隣り合うマグネット収容穴76)の間と対応する位置に形成されている。マイナスバランス部78の一部78Aは、凹状に形成されている。マイナスバランス部78の一部78Aは、ロータマグネット32による磁路を避けた位置に形成されている。想像線Hは、ロータマグネット32による磁路を避けた位置の最外径線であり、マイナスバランス部78は、想像線Hよりもロータコア30の径方向内側に形成されている。
【0125】
このように構成されていると、マイナスバランス部78の一部78Aが、ロータマグネット32による磁路に形成されることを回避しつつ、マイナスバランス部78の一部78Aをよりロータコア30の径方向外側に位置させることができる。これにより、マイナスバランス部78によるアンバランス補正量を大きくすることができる。
【0126】
なお、マイナスバランス部78の全部が隣り合うロータマグネット32の間と対応する位置に形成されていてもよい。
【0127】
図27は、第1バランスウェイト62の固定部82の第1変形例を示す図である。図27に示す第1変形例では、マグネット収容穴76を塞ぐ位置に配置された固定部82が、マグネット冷却穴126Aを有する。マグネット冷却穴126Aは、ロータコア30の軸方向から見てロータマグネット32と隣接する位置に形成されており、固定部82の板厚方向に貫通している。一例として、マグネット冷却穴126Aは、ロータマグネット32の横幅方向の端部に隣接する位置に形成されている。なお、図示を省略するが、固定部82とロータコア30との間に配置された第1蓋板66(図1等参照)にも、マグネット冷却穴126Aと連通するマグネット冷却穴が形成されていてもよい。このように構成されていると、マグネット冷却穴126Aに流体が流入することにより、ロータマグネット32を冷却することができる。
【0128】
図28は、第1バランスウェイト62の固定部82の第2変形例を示す縦断面図である。図28に示す第2変形例では、マグネット収容穴76を塞ぐ位置に配置された固定部82が、マグネット冷却穴126Aに加えて、マグネット冷却穴126Bを有する。マグネット冷却穴126Bは、ロータコア30の軸方向から見てロータマグネット32と隣接する位置に形成されており、固定部82の板厚方向に貫通している。一例として、マグネット冷却穴126Bは、ロータマグネット32の横幅方向の中央部に隣接する位置に形成されている。なお、図示を省略するが、固定部82とロータコア30との間に配置された第1蓋板66(図1等参照)にも、マグネット冷却穴126Bと連通するマグネット冷却穴が形成されていてもよい。このように構成されていると、マグネット冷却穴126Bに流体が流入することにより、ロータマグネット32を冷却することができる。
【0129】
図29は、ロータ60の構成の第1変形例を示す分解斜視図である。図29に示す第1変形例では、第2バランスウェイト64が第1バランスウェイト62の軸方向延出部84及び径方向延出部86と同じ側に配置されており、マイナスバランス部78が第1バランスウェイト62の軸方向延出部84及び径方向延出部86とは反対側に形成されている。
【0130】
図29に示す例は、一例であり、可動スクロール38によるアンバランスに対して、第1バランスウェイト62によるアンバランス補正量、第2バランスウェイト64によるアンバランス補正量、及びマイナスバランス部78によるアンバランス補正量が釣り合うように、ロータコア30の周方向における第1バランスウェイト62、第2バランスウェイト64、及びマイナスバランス部78の各位置が設定される。
【0131】
図30は、ロータ60の構成の第2変形例を示す斜視図である。図30に示す第2変形例では、第1バランスウェイト62がブロック状に形成されている。第1バランスウェイト62は、第2バランスウェイト64と同一の形状でもよく、異なる形状でもよい。一例として、第1バランスウェイト62は、第2バランスウェイト64とは反対側に配置されている。図30に示す例において、マイナスバランス部78は、第1バランスウェイト62と同じ側に配置されてもよく、第2バランスウェイト64と同じ側に配置されてもよい。
【0132】
なお、上記実施形態では、ロータ60が、第1バランスウェイト62、第2バランスウェイト64、及びマイナスバランス部78を有するが、第1バランスウェイト62、第2バランスウェイト64、及びマイナスバランス部78のうちの何れか一つ又は二つが省かれてもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、第1バランスウェイト62、第2バランスウェイト64、及びマイナスバランス部78を有するロータ60が、コンプレッサ10に適用されているが、コンプレッサ10以外に適用されてもよい。
【0134】
また、上記複数の変形例のうち、組み合わせ可能な変形例は、適宜組み合わされて実施されてもよい。
【0135】
+
以上、本実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0136】
以下、本実施形態に関して、付記を示す。
(付記1)
ロータコアと、
前記ロータコアの軸方向一方側の端面に設けられた第1バランスウェイトと、
前記ロータコアの軸方向他方側の端面に設けられた第2バランスウェイトと、
を備えるロータ。
(付記2)
前記第1バランスウェイトは、
前記ロータコアの軸方向一方側の端面に固定された第1固定部と、
前記第1固定部の外周側の端部から前記ロータコアの軸方向一方側へ延出する第1軸方向延出部と、
を有する、
付記1に記載のロータ。
(付記3)
前記第1バランスウェイトは、前記第1軸方向延出部の先端側の端部から前記ロータコアの径方向外側へ延出する第1径方向延出部を有する、
付記2に記載のロータ。
(付記4)
前記ロータコアの径方向に沿った前記第1径方向延出部の長さは、前記ロータコアの軸方向に沿った前記第1軸方向延出部の長さよりも長い、
付記3に記載のロータ。
(付記5)
前記ロータコアの軸方向に沿った前記第1固定部の厚さは、前記ロータコアの軸方向に沿った前記第2バランスウェイトの厚さよりも薄い、
付記2から付記4の何れか一つに記載のロータ。
(付記6)
前記第1固定部及び前記第1軸方向延出部は、板状に形成されている、
付記2から付記5の何れか一つに記載のロータ。
(付記7)
前記第1固定部、前記第1軸方向延出部、及び前記第1径方向延出部は、板状に形成されている、
付記3、付記4、及び付記3に従属する付記5又は付記6の何れか一つに記載のロータ。
(付記8)
前記第1軸方向延出部は、前記ロータコアの周方向に沿う円弧状に形成されている、
付記2から付記7の何れか一つに記載のロータ。
(付記9)
前記第1軸方向延出部及び前記第1径方向延出部は、それぞれ前記ロータコアの周方向に沿う円弧状に形成されている、
付記3、付記4、及び付記3に従属する付記5から付記7の何れか一つに記載のロータ。
(付記10)
前記ロータコアは、前記ロータコアの中心部に形成され、シャフトが挿入されるシャフト挿入穴を有し、
前記第1バランスウェイトは、前記シャフトに対して位置決めする位置決め部を有する、
付記1から付記9の何れか一つに記載のロータ。
(付記11)
前記ロータコアは、ロータコアの中心部よりも前記ロータコアの径方向外側の偏心した位置に空洞状に形成されたマイナスバランス部を有する、
付記1から付記10の何れか一つに記載のロータ。
(付記12)
前記ロータは、前記マイナスバランス部よりも前記ロータコアの径方向外側の位置に設けられたロータマグネットを有し、
前記マイナスバランス部は、前記ロータマグネットによる磁路を避けた位置に形成されている、
付記11に記載のロータ。
(付記13)
前記ロータは、前記マイナスバランス部よりも前記ロータコアの径方向外側の位置に設けられたロータマグネットを有し、
前記マイナスバランス部の少なくとも一部は、前記ロータマグネットの横幅方向の中央部と対応する位置に形成されている、
付記11又は付記12に記載のロータ。
(付記14)
前記ロータは、前記マイナスバランス部よりも前記ロータコアの径方向外側の位置に設けられた複数のロータマグネットを有し、
前記複数のロータマグネットは、前記ロータの周方向に並んで配置されており、
前記マイナスバランス部の少なくとも一部は、隣り合う前記ロータマグネットの間と対応する位置に形成されている、
付記11から付記13の何れか一つに記載のロータ。
(付記15)
前記マイナスバランス部は、
前記ロータコアの軸方向一方側の端面に開口する第1マイナスバランス部と、
前記ロータコアの軸方向他方側の端面に開口する第2マイナスバランス部と、
を有する、
付記11から付記14の何れか一つに記載のロータ。
(付記16)
前記ロータコアは、前記ロータコアの軸方向一方側の端面に開口し、ロータマグネットを収容するマグネット収容穴を有し、
前記マグネット収容穴は、前記第1固定部によって塞がれており、
前記第1固定部は、前記ロータコアの軸方向から見て前記ロータマグネットと隣接する位置に形成されたマグネット冷却穴を有する、
付記2に従属する付記3から付記15の何れか一つに記載のロータ。
(付記17)
前記第2バランスウェイトは、
前記ロータコアの軸方向他方側の端面に固定された第2固定部と、
前記第2固定部の外周側の端部から前記ロータコアの軸方向他方側へ延出する第2軸方向延出部と、
前記第2軸方向延出部の先端側の端部から前記ロータコアの径方向外側へ延出する第2径方向延出部と、
を有する、
付記1から付記16の何れか一つに記載のロータ。
(付記18)
モータ部と、
前記モータ部の軸方向一方側に設けられたコンプレッサ部と、
を備え、
前記モータ部は、
モータハウジングと、
前記モータハウジングの内側に固定されたステータと、
前記ステータの内側に回転可能に設けられたロータと、
前記ロータの中心部に設けられたシャフトと、
を備え、
前記コンプレッサ部は、
前記モータハウジングに対して組み付けられたコンプレッサハウジングと、
前記コンプレッサハウジングの内側に固定された固定スクロールと、
前記シャフトに対して偏芯した状態で固定され、前記固定スクロールに対して旋回可能に設けられた可動スクロールと、
を備え、
前記ロータは、
ロータコアと、
前記ロータコアの軸方向一方側の端面に設けられたバランスウェイトと、
を備え、
前記バランスウェイトは、
前記ロータコアの軸方向一方側の端面に固定された第1固定部と、
前記第1固定部の外周側の端部から前記ロータコアの軸方向一方側へ延出する軸方向延出部と、
前記軸方向延出部の先端側の端部から前記ロータコアの径方向外側へ延出する径方向延出部と、
を有し、
前記径方向延出部は、前記モータ部の軸方向における前記ステータと前記コンプレッサハウジングとの間のスペースに配置されている、
コンプレッサ。
(付記19)
前記ロータは、前記バランスウェイトを含むアンバランス補正部を備え、
前記アンバランス補正部は、前記可動スクロールによるアンバランスを補うアンバランス補正量を有する、
付記18に記載のコンプレッサ。
(付記20)
前記ステータは、前記ロータコアの径方向外側に配置されたステータコアを有し、
前記軸方向延出部と前記第1固定部との接続部は、前記ロータコアの外形よりも内側に位置しており、
前記径方向延出部の外周側の端部は、前記ステータコアの外形よりも内側に位置している、
付記18又は付記19に記載のコンプレッサ。
【符号の説明】
【0137】
10…コンプレッサ、12…モータ部、14…コンプレッサ部、16…モータハウジング、18…ステータ、20…ロータ、22…シャフト、24…ステータコア、26…インシュレータ、28…巻線、30…ロータコア、32…ロータマグネット、34…コンプレッサハウジング、36…固定スクロール、38…可動スクロール、40…第1ハウジング、42…第2ハウジング、44…吸入口、46…吐出口、48…第1軸受、50…第2軸受、52…偏芯シャフト、54…第3軸受、60…ロータ、62…第1バランスウェイト、64…第2バランスウェイト、66…第1蓋板、68…第2蓋板、70…シャフト挿入穴、72…シャフト挿入穴、74…シャフト挿入穴、76…マグネット収容穴、78…マイナスバランス部、80…アンバランス補正部、82…固定部、84…軸方向延出部、86…径方向延出部、88…シャフト挿入穴、90…キー溝、92…位置決め穴、94…軸受収容部、96…スペース、98…スペース、100…スペース、102…リベット穴、104…リベット、106…スペース、112…固定部、114…軸方向延出部、116…径方向延出部、122…第1マイナスバランス部、124…第2マイナスバランス部、126A…マグネット冷却穴、126B…マグネット冷却穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31