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特開2024-137521車速推定装置、位置算出装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137521
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】車速推定装置、位置算出装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01P 21/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01P21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049068
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徳祥
(72)【発明者】
【氏名】牧戸 知史
(72)【発明者】
【氏名】宮島 朗
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 晨
(57)【要約】
【課題】車輪速センサを利用して算出された車両の速度を補正することで、実車速を高い精度で算出することができる車速推定装置、位置算出装置、及びプログラムを提供する。
【解決手段】車輪速センサにより車両の第1車速を算出する第1車速算出部と、測位衛星からの信号に基づき前記車両の第2車速を算出する第2車速算出部と、前記第1車速と前記第2車速との比と、前記第1車速との関係から、前記第1車速に応じたスケールファクタを推定するスケールファクタ推定部と、前記第1車速に前記スケールファクタを乗じて前記車両の実車速を推定する車速推定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪速センサにより車両の第1車速を算出する第1車速算出部と、
測位衛星からの信号に基づき前記車両の第2車速を算出する第2車速算出部と、
前記第1車速と前記第2車速との比と、前記第1車速との関係から、前記第1車速に応じたスケールファクタを推定するスケールファクタ推定部と、
前記第1車速に前記スケールファクタを乗じて前記車両の実車速を推定する車速推定部と、
を備える車速推定装置。
【請求項2】
前記スケールファクタ推定部は、車両の速度域を複数に分けて、当該速度域毎にスケールファクタを推定する請求項1に記載の車速推定装置。
【請求項3】
前記第1車速から加速度を算出する加速度算出部を備え、
前記スケールファクタ推定部では、前記第1車速と前記第2車速の比と、前記第1車速及び前記加速度との関係から、第1車速に応じたスケールファクタを推定する、請求項1又は2に記載の車速推定装置。
【請求項4】
加速度センサにより車両の加速度を算出する加速度算出部を備え、
前記スケールファクタ推定部では、前記第1車速と前記第2車速の比と、前記第1車速及び前記加速度との関係から、前記第1車速及び前記加速度に応じたスケールファクタを推定する、請求項1又は2に記載の車速推定装置。
【請求項5】
加速度センサにより車両の加速度を算出する加速度算出部と、
前記加速度を積分することで速度が変化した量である速度変化分を算出する速度変化算出部とを備え、
前記スケールファクタ推定部は、前記加速度がしきい値以下の場合に、前記第1車速と前記第2車速との比と、前記第1車速との関係から、前記第1車速に応じたスケールファクタを推定し、
前記車速推定部では、前記加速度がしきい値以下の場合に前記第1車速に応じたスケールファクタに基づき前記実車速を推定し、前記加速度がしきい値を超える場合に当該加速度に基づく前記速度変化分を前記第1車速に加算することで前記実車速を推定する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車速推定装置。
【請求項6】
加速度センサにより車両の加速度を算出する加速度算出部と、
前記加速度に対する、前記スケールファクタ推定部により前記第1車速に応じて推定されたスケールファクタにより補正した前記第1車速と前記第2車速との差から、当該第1車速と当該第2車速との時刻ずれ量を算出する時刻ずれ算出部と、を備え、
前記スケールファクタ推定部は、前記加速度がしきい値以下の場合に、前記第1車速と前記第2車速との比と、前記第1車速との関係から、前記第1車速に応じたスケールファクタを推定し、
前記車速推定部では、前記加速度がしきい値以下の場合に前記第1車速に応じたスケールファクタに基づき前記実車速を推定し、前記加速度がしきい値を超える場合に、前記時刻ずれ量に対応する分、前記第1車速を参照する時刻をずらして前記実車速を出力する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車速推定装置。
【請求項7】
車両の実車速を推定する車速推定装置と、前記車速推定装置により推定された前記実車速から前記車両の位置を算出する位置算出装置であって、
前記車速推定装置は、
車輪速センサにより前記車両の第1車速を算出する第1車速算出部と、
測位衛星からの信号に基づき前記車両の第2車速を算出する第2車速算出部と、
前記第1車速と前記第2車速との比と、前記第1車速との関係から、前記第1車速に応じたスケールファクタを推定するスケールファクタ推定部と、
前記第1車速に前記スケールファクタを乗じて前記車両の実車速を推定する車速推定部と、を備える
位置算出装置。
【請求項8】
コンピュータを、
車輪速センサにより車両の第1車速を算出する第1車速算出部と、
測位衛星からの信号に基づき前記車両の第2車速を算出する第2車速算出部と、
前記第1車速と前記第2車速との比と、前記第1車速との関係から、前記第1車速に応じたスケールファクタを推定するスケールファクタ推定部と、
前記第1車速に前記スケールファクタを乗じて前記車両の実車速を推定する車速推定部と、して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車速推定装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車輪速により算出される車両の速度とGPSにより算出される車両の速度との差分と、車両の加速度との相関関係から、速度誤差を推定し、速度誤差により車輪速により算出される車両の速度を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6400450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の速度によって生じる誤差が異なることが知られており、特許文献1に記載の技術では、車両の速度によって誤差を補正することができず、推定される速度の精度が低かった。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、車輪速センサを利用して算出された車両の速度を補正することで、実車速を高い精度で算出することができる車速推定装置、位置算出装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る車速推定装置は、車輪速センサにより車両の第1車速を算出する第1車速算出部と、測位衛星からの信号に基づき前記車両の第2車速を算出する第2車速算出部と、前記第1車速と前記第2車速との比と、前記第1車速との関係から、前記第1車速に応じたスケールファクタを推定するスケールファクタ推定部と、前記第1車速に前記スケールファクタを乗じて前記車両の実車速を推定する車速推定部と、を備える。
【0007】
第1の態様の車速推定装置によれば、車輪速センサを利用して算出された車両の速度を補正することで、実車速を高い精度で算出することができる車速推定装置を提供することが可能となる。
【0008】
第2の態様に係る車速推定装置は、前記スケールファクタ推定部は、車両の速度域を複数に分けて、当該速度域毎にスケールファクタを推定する。
【0009】
第2の態様の車速推定装置によれば、スケールファクタを第1車速毎に推定する場合に比べ、スケールファクタを推定する処理を簡略化することができる車速推定装置を提供することが可能となる。
【0010】
第3の態様に係る車速推定装置は、前記第1車速から加速度を算出する加速度算出部を備え、前記スケールファクタ推定部では、前記第1車速と前記第2車速の比と、前記第1車速及び前記加速度との関係から、第1車速に応じたスケールファクタを推定する。
【0011】
第3の態様の車速推定装置によれば、車両の加速度を用いて第1車速の誤差を補正しない場合に比べ、より精度よく実車速を算出することができる車速推定装置を提供することが可能となる。
【0012】
第4の態様に係る車速推定装置は、加速度センサにより車両の加速度を算出する加速度算出部を備え、前記スケールファクタ推定部では、前記第1車速と前記第2車速の比と、前記第1車速及び前記加速度との関係から、前記第1車速及び前記加速度に応じたスケールファクタを推定する。
【0013】
第4の態様の車速推定装置によれば、車両の加速度を用いて第1車速の誤差を補正しない場合に比べ、より精度よく実車速を算出することができる車速推定装置を提供することが可能となる。
【0014】
第5の態様に係る車速推定装置は、加速度センサにより車両の加速度を算出する加速度算出部と、前記加速度を積分することで速度が変化した量である速度変化分を算出する速度変化算出部とを備え、前記スケールファクタ推定部は、前記加速度がしきい値以下の場合に、前記第1車速と前記第2車速との比と、前記第1車速との関係から、前記第1車速に応じたスケールファクタを推定し、前記車速推定部では、前記加速度がしきい値以下の場合に前記第1車速に応じたスケールファクタに基づき前記実車速を推定し、前記加速度がしきい値を超える場合に当該加速度に基づく前記速度変化分を前記第1車速に加算することで前記実車速を推定する、ことを特徴とする。
【0015】
第5の態様の車速推定装置によれば、加速度が大きい場合であってもより精度よく実車速を算出することができる車速推定装置を提供することが可能となる。
【0016】
第6の態様に係る車速推定装置は、加速度センサにより車両の加速度を算出する加速度算出部と、前記加速度に対する、前記スケールファクタ推定部により前記第1車速に応じて推定されたスケールファクタにより補正した前記第1車速と前記第2車速との差から、当該第1車速と当該第2車速との時刻ずれ量を算出する時刻ずれ算出部と、を備え、前記スケールファクタ推定部は、前記加速度がしきい値以下の場合に、前記第1車速と前記第2車速との比と、前記第1車速との関係から、前記第1車速に応じたスケールファクタを推定し、前記車速推定部では、前記加速度がしきい値以下の場合に前記第1車速に応じたスケールファクタに基づき前記実車速を推定し、前記加速度がしきい値を超える場合に、前記時刻ずれ量に対応する分、前記第1車速を参照する時刻をずらして前記実車速を出力する、ことを特徴とする。
【0017】
第6の態様の車速推定装置によれば、加速度の大きさに関わらず、より精度よく実車速を算出することが可能となる。
【0018】
第7の態様に係る位置算出装置は、車両の実車速を推定する車速推定装置と、前記車速推定装置により推定された前記実車速から前記車両の位置を算出する位置算出装置であって、前記車速推定装置は、車輪速センサにより前記車両の第1車速を算出する第1車速算出部と、測位衛星からの信号に基づき前記車両の第2車速を算出する第2車速算出部と、前記第1車速と前記第2車速との比と、前記第1車速との関係から、前記第1車速に応じたスケールファクタを推定するスケールファクタ推定部と、前記第1車速に前記スケールファクタを乗じて前記車両の実車速を推定する車速推定部と、を備える。
【0019】
第7の態様に係る位置算出装置によれば、精度の高い車速に基づいて、精度の高い車両の位置を算出することができる位置算出装置を提供することが可能となる。
【0020】
第8の態様に係るプログラムは、コンピュータを、車輪速センサにより車両の第1車速を算出する第1車速算出部と、測位衛星からの信号に基づき前記車両の第2車速を算出する第2車速算出部と、前記第1車速と前記第2車速との比と、前記第1車速との関係から、前記第1車速に応じたスケールファクタを推定するスケールファクタ推定部と、前記第1車速に前記スケールファクタを乗じて前記車両の実車速を推定する車速推定部と、して機能させる。
【0021】
第8の態様のプログラムによれば、車輪速センサを利用して算出された車両の速度を補正することで、実車速を高い精度で算出することができるプログラムを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、車輪速センサを利用して算出された車両の速度を補正することで、実車速を高い精度で算出することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る車速推定システムの構成の一例を示したブロック図である。
図2】第1実施形態に係る車速推定装置の概略ブロック図である。
図3】第1実施形態に係る車輪速について、実車速と、スケールファクタとの関係を示す説明図である。
図4】第1実施形態に係る車速推定装置の動作の流れの一例を説明するための説明図である。
図5】第2実施形態に係る車速推定装置の動作の流れの一例を説明するための説明図である。
図6】第3実施形態に係る車速推定システムの構成の一例を示したブロック図である。
図7】第3実施形態に係る車速推定装置の動作の流れの一例を説明するための説明図である。
図8】第4実施形態に係る車速推定システムの構成の一例を示したブロック図である。
図9】第5実施形態に係る車速推定システムの構成の一例を示したブロック図である。
図10】第6実施形態に係る車速推定システムの構成の一例を示したブロック図である。
図11】第6実施形態に係る時刻ずれを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本実施形態の一例を詳細に説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の車速推定システム10のシステム構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る車速推定システム10は、車輪速センサ50、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機60、車速推定装置100、及び位置算出装置200から構成されている。
【0026】
車輪速センサ50は、車両に搭載され、単位時間あたりのタイヤの回転により発生するパルス数を検出する。そして、検出したパルス数を、第1車速算出部110に渡す。
【0027】
GNSS受信機60は、測位衛星からの信号を受信する。そして、受信した信号を、第2車速算出部120に渡す。
【0028】
車速推定装置100は、車両の速度を推定する装置である。また、車速推定装置100は、車速を推定する車両に搭載されている。なお、車速推定装置100は、構成の全てが車速を推定する車両に搭載されている場合に限定されず、車速推定装置100の構成の一部を車両とネットワーク(図示せず)で接続されている他の装置が備えていてもよい。
【0029】
位置算出装置200は、車速推定装置100により推定された車両の車速を元に、車両の位置を算出する装置である。また、位置算出装置200は、位置を算出する車両に搭載されている。なお、位置算出装置200は、車両に搭載される場合に限定されず、車両とネットワーク(図示せず)で接続されている他の装置が備えていてもよい。また、位置算出装置200は、車速推定装置100とは別の装置として設けられる場合に限定されず、その機能を車速推定装置100が備えてもよい。
【0030】
図1に示す構成の車速推定装置100及び位置算出装置200は、CPUと、RAMと、後述する各処理ルーチンを実行するためのプログラム及び各種データを記憶したROMと、を含むコンピュータで構成することができる。車速推定装置100及び位置算出装置200は、基本的には一般的なコンピュータ構成であるため、車速推定装置100を代表として説明する。
【0031】
図2は、車速推定装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0032】
図2に示すように、車速推定装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、ストレージ104、入力部105、表示部106、通信部107を有する。各構成は、バス108を介して相互に通信可能に接続されている。
【0033】
CPU101は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU101は、ROM102又はストレージ104からプログラムを読み出し、RAM103を作業領域としてプログラムを実行する。CPU101は、ROM102又はストレージ104に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM102又はストレージ104には、プログラムが格納されている。
【0034】
ROM102は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM103は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ104は、HDD(Hard Disk Drive)、又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0035】
入力部105は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0036】
表示部106は、例えば、液晶ディスプレイである。表示部106は、CPU101の制御に基づき各種の情報を表示する。また、表示部106は、タッチパネル方式を採用して、入力部105として機能してもよい。
【0037】
通信部107は、車輪速センサ50、GNSS受信機60、位置算出装置200等と通信するためのものである。
【0038】
車速推定装置100は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。車速推定装置100が実現する機能構成について図1を用いて説明する。車速推定装置100は、機能的には、図1に示されるように、第1車速算出部110、第2車速算出部120、スケールファクタ推定部130、及び車速推定部140を含む。
【0039】
第1車速算出部110は、車輪速センサ50で検出したタイヤのパルス数とタイヤの周長とから車両の第1車速(以下、「車輪速」ともいう。)を算出する。そして、算出した車輪速をスケールファクタ推定部130と車速推定部140とに渡す。
【0040】
第2車速算出部120は、GNSS受信機60で受信した測位衛星からの信号に基づいて車両の第2車速(以下、「GNSS速度」ともいう。)を算出する。そして、算出したGNSS速度をスケールファクタ推定部130に渡す。ここで、測位衛星からの信号に基づいて算出されるGNSS速度は、車輪速に比べ、精度が高い。すなわち、測位衛星からの信号に基づいて算出されるGNSS速度は、車両から測位衛星の可視状態や、建物などの車両の周辺環境の影響を受けやすいが、ドップラー情報から求めた車速は、オフセット成分が小さく精度が高いことが知られている。
【0041】
スケールファクタ推定部130は、車輪速とGNSS速度との比(GNSS速度/車輪速:分子がGNSS速度で、分母が車輪速)と、車輪速との関係から、車輪速に応じたスケールファクタを推定する。具体的には、車輪速とGNSS速度との比を算出し、算出された比を図3に示す車輪速との関係から補正することで、スケールファクタを推定する。ここで、図3は、車輪速について、実車速と、スケールファクタとの関係を示す説明図である。図3の実速度は、計測器で測定した車両の速度の正しい値である。また、図3中の点が車輪速で、直線が推定されたスケールファクタである。そして、図3からは、実車速が早くなるほど、車輪速とのスケールファクタを大きくする。すなわち、車輪速が早くなるほど、実速度との差が大きくなるため、スケールファクタも大きくする必要があることが分かる。ここで、スケールファクタの推定は、最小二乗法を用いて算出した車輪速と実車速の関係などにより行われるが、これに限定されない。かかる図3に示す直線を元に傾きと軸との接点とを一次式にしたスケールファクタの関数を作成する。そして、車輪速をかかる関数に入れることでスケールファクタを推定する。なお、車輪速をタイヤの半径の変化を考慮して当該車輪速の速度に応じた補正をしてから、車輪速とGNSS速度との比を算出することでスケールファクタを推定してもよい。また、スケールファクタの関数は一次式に限定されない。
【0042】
ここで、誤差が生じる原因について説明する。タイヤの半径は、タイヤの種類、空気圧、摩耗率などで変わるため、車両に装着されているタイヤの状態からスケールファクタを推定し、車両の実速度を算出している。しかし、タイヤの半径は、遠心力や温度(空気圧)が変化することなどにより、走行中の車両の速度によって変化することが知られている。そのため、速度が速くなるほど車輪速と実車速との誤差が大きくなる。すなわち、例えば、低速域を想定したスケールファクタを高速域で使い続けると、車両の位置誤差が車両後方向へ継続的に発生することになり、位置誤差が増加する。したがって、走行中の車両の速度に応じてスケールファクタを推定することで、車両の実速度の算出の精度を高くすることが可能となる。
【0043】
車速推定部140は、車輪速にスケールファクタを乗じて車両の実車速を推定する。
【0044】
車両の実車速の算出について具体例を挙げて説明する。例えば、車輪速が25m/s、GNSS速度が26m/sの場合は、車輪速とGNSS速度との比は1.04となる。スケールファクタの関数から、25m/sの時の車輪速スケールファクタが、例えば0.998の場合は、車輪速とGNSS速度との比を車輪速スケールファクタで補正すると1.04×0.998=1.03792となる。かかる値がスケールファクタ推定部130により推定されるスケールファクタとなる。スケールファクタを車輪速25m/sに乗算すると25m/s×1.07676=25.948となる。かかる値が車速推定部140で推定される実車速となる。
【0045】
位置算出装置200は、車速推定装置100により算出された実車速に基づき車両の位置を算出する。すなわち、車輪速を利用して車両の速度を算出する推測航法において、車輪速でどこまで進んだかで車両の道のり方向の位置を算出する。
【0046】
つぎに、車速推定装置100の作用について説明する。
【0047】
図4は、第1実施形態の車速推定装置100のCPU101による動作の流れの一例を示す説明図である。
【0048】
まず、ステップS100において、第1車速算出部110が車輪速センサ50から受信したタイヤのパルス数とタイヤの周長とから車両の車輪速を算出し、第2車速算出部120がGNSS受信機60で受信した測位衛星からの信号に基づいて車両のGNSS速度を算出する。そして、次のステップS102に進む。
【0049】
ステップS102において、第2車速算出部120がGNSS速度の有効性を判定する。例えば、DOP(Dilution Of Precision)や残差などからGNSS速度の精度を判定する。GNSS速度が有効であると判定した場合は、次のステップS104に進む。一方、GNSS速度が有効であると判定しない場合は、再度、上述したステップS100に戻る。
【0050】
ステップS104において、第1車速算出部110が車輪速の有効性を判定する。例えば、加速度がしきい値以下であることや、車輪速がしきい値以上であるかを判定する。加速度がしきい値を超える場合や、車輪速がしきい値未満の場合は、車輪速が有効であると判定しない。車輪速が有効であると判定した場合は、次のステップS106に進む。一方、車輪速が有効であると判定しない場合は、再度、上述したステップS100に戻る。
【0051】
ステップS106において、車輪速とGNSS速度との比や、上述したスケールファクタの関数を推定又は更新する。そして、次のステップS108に進む。
【0052】
ステップS108において、車輪速からスケールファクタの関数を用いてスケールファクタを推定する。そして、次のステップS110に進む。
【0053】
ステップS110において、車輪速にスケールファクタを乗じて車両の実車速を推定する。そして、かかる処理を繰り返す。
【0054】
なお、かかる処理は、常時繰り替えされてもよいし、又、様々な契機で開始されてもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、車輪速センサ50を利用して算出された車両の速度を補正することで、実車速を高い精度で算出することができる。すなわち、車両の速度によって変動するタイヤの半径の変化を考慮に入れて精度の高い実車速を算出することができる。そして、算出した精度の高い実車速を元に車両の位置を算出することができる。
【0056】
[第2実施形態]
つぎに、第2実施形態について図5を用いて説明する。
上述した第1実施形態では、スケールファクタ推定部130が車輪速毎にスケールファクタを推定しているが、第2実施形態では、スケールファクタ推定部130が、速度域毎にスケールファクタを推定する点で異なっている。なお、上述した第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、重複する部分については説明を簡略又は省略する。
【0057】
スケールファクタ推定部130は、複数に分割された速度域におけるスケールファクタを推定する。例えば、図示しないが、速度域を3つ、0m/s以上10m/s未満の低速域、10m/s以上20m/s未満の中速域、20m/s以上の高速域に分割する。そして、スケールファクタ推定部130は、各速度域の1つの速度におけるスケールファクタを推定する。ここで、1つの速度は、各速度域の中心点などが含まれる。各速度域のスケールファクタを近似直線で結び、当該近似直線を元にスケールファクタの関数を作成する。そして、様々な車輪速からスケールファクタを推定可能にする。なお、速度域は3つに分割される場合に限定されず、2以上であればよい。
【0058】
つぎに、車速推定装置100の作用について説明する。
【0059】
図5は、第2実施形態の車速推定装置100のCPU101による動作の流れの一例を示す説明図である。
【0060】
まず、ステップS200において、第1車速算出部110が車輪速センサ50から受信したタイヤのパルス数とタイヤの周長とから車両の車輪速を算出し、第2車速算出部120がGNSS受信機60で受信した測位衛星からの信号に基づいて車両のGNSS速度を算出する。そして、次のステップS202に進む。
【0061】
ステップS202において、第2車速算出部120がGNSS速度の有効性を判定する。例えば、DOP(Dilution Of Precision)や残差などからGNSS速度の精度を判定する。GNSS速度が有効であると判定した場合は、次のステップS204に進む。一方、GNSS速度が有効であると判定しない場合は、再度、上述したステップS200に戻る。
【0062】
ステップS204において、第1車速算出部110が車輪速の有効性を判定する。例えば、加速度がしきい値以下であることや、車輪速がしきい値以上であるかを判定する。加速度がしきい値を超える場合や、車輪速がしきい値未満の場合は、車輪速が有効であると判定しない。車輪速が有効であると判定した場合は、次のステップS206に進む。一方、車輪速が有効であると判定しない場合は、再度、上述したステップS200に戻る。
【0063】
ステップS206において、上述したステップS200で算出した車輪速毎に、低速域、中速域又は高速域に処理を分岐する。そして、それぞれステップS208、ステップS210又はステップS212に進む。
【0064】
ステップS208、ステップS210及びステップS212では、車輪速とGNSS速度との比を推定又は更新する。そして、次のステップS214に進む。
【0065】
ステップS214において、スケールファクタの関数を推定又は更新する。そして、次のステップS216に進む。
【0066】
ステップS216において、車輪速からスケールファクタの関数を用いてスケールファクタを推定する。そして、次のステップS218に進む。
【0067】
ステップS218において、車輪速にスケールファクタを乗じて車両の実車速を推定する。そして、かかる処理を繰り返す。
【0068】
本実施形態では、このように構成することで、スケールファクタを車輪速毎に推定する場合に比べ、スケールファクタを推定する処理を簡略化することが可能となる。
【0069】
[第3実施形態]
つぎに、第3実施形態について図6及び図7を用いて説明する。
【0070】
上述した第1実施形態では、スケールファクタ推定部130がスケールファクタの推定に車両の加速度(前後加速度)を考慮していないが、第3実施形態では、スケールファクタ推定部130が、加速度を考慮してスケールファクタを推定する点で異なっている。なお、上述した第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、重複する部分については説明を簡略又は省略する。
【0071】
車速推定装置100は、機能的には、図6に示すように、加速度算出部150を含む。
【0072】
加速度算出部150は、車輪速から加速度(前後加速度)を算出する。加速度の算出は、既知の技術を用いて行われる。例えば、車輪速の時差分あるいは時系列データから速度変化の傾きを推定することで算出する。
【0073】
スケールファクタ推定部130では、車輪速とGNSS速度の比と、車輪速及び加速度との関係から、車輪速に応じたスケールファクタを推定する。ここで、車輪速の誤差は加速度に比例して負の相関を有している。すなわち、加速度が大きくなると誤差が大きくなる。また、誤差は車輪速に比例して変化する。すなわち、そこで、スケールファクタ推定部130は、以下の式によって車輪速の誤差を推定する。そして、加速度によって生じる誤差を補正した補正後の車輪速でスケールファクタを推定する。
【0074】
【数1】

【数2】
【0075】
ここで、V1は補正前の車速パルス速度であり、xは車両の加速度であり、αは係数である。また、eは車輪速の誤差の推定値であり、αは係数αの推定値である。推定値αは、例えば、式(1)に最小二乗法を適用して推定される。最小二乗法を用いることにより、推定値αを求めるための処理時間を短くすることができる。かかる誤差の推定値を車輪速から減算することで補正後の車輪速が算出される。
【0076】
ここで、加速度に依存して誤差が生じる原因について説明する。タイヤの半径は、車両の加速又は減速時には、タイヤ荷重やスリップ率の変化などにより変動することが知られている。そのため、加速度によって車輪速と実車速との差がでてくる。また、タイヤの半径が変動しなくても、車輪速と実車速(誤差推定の場合は参照するGNSS速度を実車速とみなす)との間で時刻ずれが起きている場合、速度が変化するタイミングがずれるため、見かけ上、加速度に比例した速度誤差が生じる。そのため、加速度を想定していないで推定されたスケールファクタを用いるよりも、想定して推定されたスケールファクタを用いた方が実車速の算出の精度を高くすることが可能となる。
【0077】
つぎに、車速推定装置100の作用について説明する。
【0078】
図7は、第3実施形態の車速推定装置100の動作の流れの一例を示す説明図である。
【0079】
まず、ステップS300において、第1車速算出部110が車輪速センサ50から受信したタイヤのパルス数とタイヤの周長とから車両の車輪速を算出し、第2車速算出部120がGNSS受信機60で受信した測位衛星からの信号に基づいて車両のGNSS速度を算出する。そして、次のステップS302に進む。
【0080】
ステップS302において、加速度算出部150が車輪速から加速度を算出する。そして、次のステップS304に進む。
【0081】
ステップS304において、第2車速算出部120がGNSS速度の有効性を判定する。例えば、DOP(Dilution Of Precision)や残差などからGNSS速度の精度を判定する。GNSS速度が有効であると判定した場合は、次のステップS306に進む。一方、GNSS速度が有効であると判定しない場合は、再度、上述したステップS300に戻る。
【0082】
ステップS306において、第1車速算出部110が車輪速の有効性を判定する。例えば、加速度がしきい値以下であることや、車輪速がしきい値以上であるかを判定する。加速度がしきい値を超える場合や、車輪速がしきい値未満の場合は、車輪速が有効であると判定しない。車輪速が有効であると判定した場合は、次のステップS308に進む。一方、車輪速が有効であると判定しない場合は、再度、上述したステップS300に戻る。
【0083】
ステップS308において、車輪速とGNSS速度との比や、上述したスケールファクタの関数を推定又は更新する。そして、次のステップS310に進む。
【0084】
ステップS310において、車輪速からスケールファクタの関数を用いてスケールファクタを推定する。そして、次のステップS312に進む。
【0085】
ステップS312において、車輪速にスケールファクタを乗じて車両の実車速を推定する。そして、かかる処理を繰り返す。
【0086】
本実施形態では、このように構成することにより、より精度よく実車速を算出することが可能となる。すなわち、車両が加速又は減速することにより、車輪速センサ50のパルス数を元にした車輪速に誤差が生じることが分かっているが、誤差を補正してスケールファクタを推定することで、誤差を補正しない場合に比べ、より精度よく実車速を算出することができる。
【0087】
[第4実施形態]
つぎに、第4実施形態について図8を用いて説明する。
上述した第3実施形態では、加速度算出部150が加速度を推定していたが、第4実施形態では、加速度センサを用いて加速度を算出する点で異なっている。なお、上述した第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、重複する部分については説明を簡略又は省略する。
【0088】
車速推定システム10は、さらに、加速度センサ70を備える。
【0089】
加速度センサ70は、車両に搭載され、車両の加速度(前後加速度)を検出する。そして、検出した加速度を加速度算出部150に渡す。
【0090】
加速度算出部150は、加速度センサ70で検出した加速度(前後加速度)を取得する。
【0091】
スケールファクタ推定部130では、上述した第3実施形態と同様に、車輪速とGNSS速度の比と、車輪速及び加速度との関係から、車輪速に応じたスケールファクタを推定する。
【0092】
[第5実施形態]
つぎに、第5実施形態について図9を用いて説明する。
上述した第3実施形態や第4実施形態では、加速度を考慮してスケールファクタを推定しているが、第5実施形態では、加速度がしきい値以下の場合は、第1実施形態と同様にスケールファクタを推定して実車速を推定するが、しきい値を超える場合は、スケールファクタを用いずに、加速度による速度変化分から実車速を推定する点で異なっている。なお、上述した実施形態と異なる部分を中心に説明し、重複する部分については説明を簡略又は省略する。
【0093】
車速推定装置100は、機能的には、図9に示すように、速度変化算出部160を含む。
【0094】
速度変化算出部160は、加速度を積分することで速度が変化した量である速度変化分を算出する。
【0095】
スケールファクタ推定部130は、加速度算出部150により算出した加速度がしきい値以下の場合に、上述した第1実施形態と同様、車輪速とGNSS速度との比と、車輪速との関係から、車輪速に応じたスケールファクタを推定する。すなわち、加速度が小さい場合は加速度を無視してスケールファクタを推定し、加速度が大きい場合はスケールファクタを推定しない。ここで、加速度のしきい値は、概ね定速走行と見なせるほど加速度が小さい値であることが望ましい。
【0096】
車速推定部140では、加速度がしきい値以下の場合にスケールファクタ推定部130が推定した車輪速に応じたスケールファクタに基づき実車速を推定する。すなわち、無視できるほど小さい加速度の場合は、第1実施形態と同様、スケールファクタを用いて実車速を推定する。
【0097】
また、車速推定部140は、加速度がしきい値を超える場合に当該加速度に基づく速度変化分を車輪速に加算することで実車速を推定する。すなわち、加速度がしきい値を超えた場合のスケールファクタに基づいて推定した実車速を初期値として、速度変化分を加算することで車速を推定する。
【0098】
本実施形態では、このように構成することにより、加速度が大きい場合であってもより精度よく実車速を算出することが可能となる。
【0099】
[第6実施形態]
つぎに、第6実施形態について図10及び図11を用いて説明する。
第6実施形態では、加速度がしきい値以下の場合は、第1実施形態と同様に速度を考慮してスケールファクタを推定して実車速を推定するが、しきい値を超える場合は、車輪速とGNSS速度の時刻ずれの大きさを推定して、車輪速を参照する時刻を補正する点で異なっている。なお、上述した実施形態と異なる部分を中心に説明し、重複する部分については説明を簡略又は省略する。
【0100】
車速推定装置100は、機能的には、図10に示すように、時刻ずれ算出部170を含む。
【0101】
時刻ずれ算出部170は、加速度に対する、速度に応じたスケールファクタにより補正した車輪速とGNSS速度との差から、車輪速とGNSS速度との時刻ずれ量を算出する。
【0102】
スケールファクタ推定部130は、第5実施形態と同様である。
【0103】
車速推定部140では、スケールファクタ推定部130が推定した車輪速に応じたスケールファクタに基づき実車速を推定する。また、図11に示すように、時刻t0の時の車速として、時刻ずれ算出部170が推定した時刻ずれ量に対応する分、車輪速を参照する時刻をずらして実車速を出力する。
【0104】
ここで、時刻ずれが生じる原因について説明する。車輪速とGNSS速度とが誤差がなく全く同じ速度とした場合でも、車輪速センサ50やGNSS受信機60内の処理遅延等により両者の間に時刻ずれが発生する場合がある。一般にGNSS速度には元々GNSSが持つ高精度な時刻情報が付与されている。一方で、車輪速センサ50、加速度センサ70には時刻情報が付与されていないため、処理を行うためのセンサ遅延等を考慮して時刻情報を付与する。そのため、GNSS速度とは僅かではあるが時刻ずれが発生する可能性がある。
【0105】
図11に、速度に応じたスケールファクタで補正した車輪速とGNSS速度との間に時刻ずれがある場合の、加速度に対する速度誤差についての関係を示す。図11(A)は、車輪速が遅れの場合であり、図11(B)は、車輪速が進みの場合である。図11に示すように、時刻ずれの大きさをΔTとした場合、ΔTが十分小さく加速度xが一定値と見なせる時には、速度誤差はΔT・xとなる。そして、時刻ずれの進み又は遅れでΔTの正負が変わり、速度誤差の傾きはΔTに比例する(図11(A)右図及び図11(B)右図の実線参照)。ここで、図11(A)の右図及び図11(B)の右図の実線は、時刻ずれのある場合の「加速度に対する速度誤差」を表している。また、破線は、ΔT前もしくは後の車輪速を使用した場合の「加速度に対する速度誤差」を示している。なお、ΔTの間に加速度が一定値と見なせないほど変化する場合は、速度誤差はΔT・xではなく、ΔTの時間区間で加速度を積分した量に対応する。
【0106】
時刻ずれの大きさΔTの算出については、以下の手順で求められる。
まず、スケールファクタ推定部130が、上述した第5実施形態と同様に、加速度がしきい値以下の場合にのみ、速度に応じたスケールファクタを推定する。次に、時刻ずれ算出部170は、加速度がしきい値を超える場合に、速度誤差あるいはスケールファクタが正負のどちらに変化するかを観測し、最小二乗法を適用することで加速度に対する傾きを求める。この傾きが時刻ずれの大きさΔTとなる。また、傾きの正負が時刻ずれの進み又は遅れに対応する。
【0107】
ここで加速度に応じた誤差を直接スケールファクタの変化に反映させて速度を推定すると、第3・4実施形態と同様になる。一方、第6実施形態では、時刻ずれの大きさΔTを求めて、時刻ずれを補正することで、結果的に加速度に依存する誤差が低減される点が異なる。
【0108】
図11では、現在参照しているGNSS速度の時刻をt0で示してあり、車輪速の時刻がΔTだけずれている場合である。図11(A)では、車輪速が遅れているため、時刻t0のGNSS速度と同じ時刻の速度としては、ΔTだけ後の車輪速を時刻t0における車輪速として参照すれば良い。また、図11(B)では、車輪速が進んでいるため、ΔTだけ前の車輪速を同様に時刻t0における車輪速として参照すれば良い。
また、参照する時刻をずらす時間区間において加速度を積分して元の車輪速に加算すれば、参照時刻をずらすのと同様の効果が得られる。
【0109】
本実施形態では、このように構成することにより、加速度の大きさに関わらず、より精度よく実車速を算出することが可能となる。
【0110】
なお、時刻ずれの補正については、車輪速を参照する時刻を直接ずらしても良いし、時刻ずれの時間区間において加速度を積分して得られる速度変化量を加算して車速を推定しても、同様の効果が得られる。
【0111】
以上、実施形態に係る車速推定装置100及び位置算出装置200を例示して説明した。実施形態は、車速推定装置100及び位置算出装置200が備える各部の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態とされてもよい。実施形態は、これらのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体の形態とされてもよい。
【0112】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0113】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例である。したがって、上記実施形態においては、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0115】
10 車速推定システム
50 車輪速センサ
60 GNSS受信機
100 車速推定装置
110 第1車速算出部
120 第2車速算出部
130 スケールファクタ推定部
140 車速推定部
200 位置算出装置
70 加速度センサ
150 加速度算出部
160 速度変化算出部
170 時刻ずれ算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11