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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137522
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】平角線コイルの整列装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/085 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H02K15/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049069
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】308014329
【氏名又は名称】株式会社 ミタチ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 遼介
(72)【発明者】
【氏名】小俣 大将
(72)【発明者】
【氏名】村山 正和
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP12
5H615QQ12
5H615SS09
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】ステータの製造時において平角線コイルの姿勢を安定させることができる平角線コイルの整列装置を得る。
【解決手段】平角線コイルの整列装置10の備える整列治具20における貫通部34の径方向外側の部分に、複数の溝部36が形成されている。これらの溝部36は、それぞれ所定の貫通部34に対してこの貫通部34から周方向他方側に所定の間隔をあけた位置に配置されると共に、径方向外側が開放されている。そして、溝部36は、平角線コイル16の他方の脚部16Aを収容可能とされると共に、この脚部16Aの径方向内側への移動を制限可能とされている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が円形の板状とされると共に駆動されることで周方向一方側に回動可能な整列治具を備え、
前記整列治具の径方向外側の部分には、当該整列治具が当該整列治具の厚さ方向に貫通されることで設けられ、一対の脚部と、当該脚部の一方側同士を繋ぐクランク部と、を備えた平角線コイルの一方の前記脚部が挿通された状態において当該脚部を内周面内で回動可能な状態で支持可能な貫通部が前記周方向に複数形成され、
前記整列治具における前記貫通部の前記径方向外側の部分には、前記貫通部のそれぞれに対して当該貫通部から前記周方向他方側に所定の間隔をあけた位置に前記径方向外側が開放されて他方の前記脚部を収容可能とされると共に当該脚部の当該径方向内側への移動を制限可能な溝部が形成されている、
平角線コイルの整列装置。
【請求項2】
前記貫通部は、前記厚さ方向から見て円状又は円弧状とされている、
請求項1に記載の平角線コイルの整列装置。
【請求項3】
前記貫通部と前記溝部とは、前記径方向から見て一部が重なるように配置されると共に前記径方向に連通されている、
請求項2に記載の平角線コイルの整列装置。
【請求項4】
前記溝部は、当該溝部の前記径方向内側の部分を構成する第1側面部と、当該第1側面部の前記周方向一方側の周縁部から当該径方向外側に延びる第2側面部と、当該第1側面部の当該周方向他方側の周縁部から当該径方向外側に延びる第3側面部と、を含んで構成され、
前記厚さ方向から見て前記周方向において前記貫通部の中心から前記第2側面部までの距離が当該中心から前記第3側面部までの距離よりも長い距離に設定されている、
請求項3に記載の平角線コイルの整列装置。
【請求項5】
前記溝部の前記周方向一方側には、前記第2側面部の当該径方向外側の周縁部から当該径方向外側かつ当該周方向一方側に延びる第4側面部が設けられている、
請求項4に記載の平角線コイルの整列装置。
【請求項6】
前記溝部は、当該溝部の前記径方向内側の部分を構成する第1側面部と、当該第1側面部の前記周方向一方側の周縁部から当該径方向外側かつ当該周方向一方側に延びると共に当該周方向他方側に凸となる曲面状とされた第2側面部と、を含んで構成されている、
請求項3に記載の平角線コイルの整列装置。
【請求項7】
前記貫通部及び前記溝部の前記厚さ方向一方側の部分には、当該厚さ方向から見て前記貫通部の中心と重なると共に当該貫通部及び当該溝部の当該厚さ方向一方側の縁部に対して当該厚さ方向他方側に位置する位置に頂点を有する円錐面に重なるように設けられた傾斜面部が設けられている、
請求項5又は請求項6に記載の平角線コイルの整列装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平角線コイルの整列装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、コイルセグメントの円環整列装置に関する発明が開示されている。この円環整列装置では、整列円環パレットの外周部にその周方向に沿って複数の収納溝が設けられている。そして、収納溝にステータの一部を構成するセグメントコイル(平角線コイル)の一方の脚部を挿入して、整列円環パレットを回動させることで、複数のセグメントコイルを整列させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-173357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、セグメントコイルの脚部に対して収納溝が大きいと、セグメントコイルの姿勢に影響を及ぼすことが考えられる。
【0005】
この点、上記先行技術では、複数のセグメントコイルを整列させる過程において、1つの収納溝に対して、先に挿入されたセグメントコイルの一方の脚部と、後に挿入されたセグメントコイルの他方の脚部とが収まった状態となっている。すなわち、収納溝は、2本の脚部が収まる大きさとされており、上記先行技術は、収容溝内でのセグメントコイルの姿勢を安定させるという点において改善の余地がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、ステータの製造時において平角線コイルの姿勢を安定させることができる平角線コイルの整列装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る平角線コイルの整列装置は、外周が円形の板状とされると共に駆動されることで周方向一方側に回動可能な整列治具を備え、前記整列治具の径方向外側の部分には、当該整列治具が当該整列治具の厚さ方向に貫通されることで設けられ、一対の脚部と、当該脚部の一方側同士を繋ぐクランク部と、を備えた平角線コイルの一方の前記脚部が挿通された状態において当該脚部を内周面内で回動可能な状態で支持可能な貫通部が前記周方向に複数形成され、前記整列治具における前記貫通部の前記径方向外側の部分には、前記貫通部のそれぞれに対して当該貫通部から前記周方向他方側に所定の間隔をあけた位置に前記径方向外側が開放されて他方の前記脚部を収容可能とされると共に当該脚部の当該径方向内側への移動を制限可能な溝部が形成されている。
【0008】
請求項1に記載の本発明によれば、外周が円形の板状とされると共に駆動されることでその周方向一方側に回動可能な整列治具を備えている。そして、整列治具の径方向外側の部分には、当該整列治具が当該整列治具の厚さ方向に貫通されることで貫通部が形成されており、当該貫通部は、整列治具の周方向に複数配置されている。
【0009】
このため、本発明では、貫通部に対して、一対の脚部と、当該脚部の一方側同士を繋ぐクランク部とを備えた平角線コイルの一方の脚部を挿通させると共に、整列治具をその周方向一方側に回動させるという一連の動作を繰り返すことで、複数の平角線コイルを整列治具の厚さ方向から見て円環状に整列させることができる。
【0010】
ところで、複数の平角線コイルを整列させる過程において、1つの貫通部に対して、先に挿入された平角線コイルの一方の脚部と、後に挿入された平角線コイルの他方の脚部とが収まるような構成、すなわち、1つの貫通部に対して2本の脚部が収まるような構成を採用すると、先に貫通部に挿入された脚部を有する平角線コイルの姿勢を安定させることが困難になることが考えられる。
【0011】
ここで、本発明では、整列治具の貫通部が、平角線コイルの一方の脚部が挿通された状態において当該脚部を、その内周面内で回動可能な状態で支持可能とされており、平角線コイルの一方の脚部を貫通部に挿通させたときに、当該脚部が当該内周面で支持される。
【0012】
また、本発明では、整列治具における貫通部の径方向外側の部分に、複数の溝部が形成されている。これらの溝部は、それぞれ貫通部に対して当該貫通部から整列治具の周方向他方側に所定の間隔をあけた位置に配置されると共に、整列治具の径方向外側が開放されている。そして、溝部は、平角線コイルの他方の脚部を収容可能とされると共に、当該脚部の整列治具の径方向内側への移動を制限可能とされている。
【0013】
このため、本発明では、整列治具の貫通部に平角線コイルの一方の脚部が挿通された状態において、整列治具がその周方向一方側に回動すると、平角線コイルが一方の脚部を軸として整列治具に対して相対的に回動し、平角線コイルの他方の脚部が整列治具の溝部に収容される。そして、溝部は、平角線コイルの他方の脚部が、整列治具の径方向内側へ移動することを制限する。
【0014】
このように、本発明では、複数の平角線コイルの整列時に、整列治具の貫通部と溝部とのそれぞれにおいて、平角線コイルの脚部が1本収まることとなる。その結果、複数の平角線コイルの整列時において、1つの貫通部に対して2本の脚部が収まるような構成に比し、整列治具の厚さ方向から見たときの貫通部の大きさを小さくし、貫通部に挿入された脚部が傾くことを抑制することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明に係る平角線コイルの整列装置は、請求項1に記載の発明において、前記貫通部は、前記厚さ方向から見て円状又は円弧状とされている。
【0016】
請求項2に記載の本発明によれば、整列治具の貫通部が、整列治具の厚さ方向から見て円状又は円弧状とされている。このため、上述したように、平角線コイルが貫通部に挿入された一方の脚部を軸として整列治具に対して相対的に回動するとき、平角線コイルの回動が、貫通部の内周面で阻害されることを抑制することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明に係る平角線コイルの整列装置は、請求項2に記載の発明において、前記貫通部と前記溝部とは、前記径方向から見て一部が重なるように配置されると共に前記径方向に連通されている。
【0018】
請求項3に記載の本発明によれば、整列治具の貫通部と溝部とが、整列治具の径方向から見て一部が重なるように配置されると共に、当該径方向に連通されている。このため、複数の平角線コイルが整列したときに、一方の平角線コイルの脚部と他方の平角線コイルの脚部とを整列治具の径方向において近接させることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明に係る平角線コイルの整列装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の発明において、前記溝部は、当該溝部の前記径方向内側の部分を構成する第1側面部と、当該第1側面部の前記周方向一方側の周縁部から当該径方向外側に延びる第2側面部と、当該第1側面部の当該周方向他方側の周縁部から当該径方向外側に延びる第3側面部と、を含んで構成され、前記厚さ方向から見て前記周方向において前記貫通部の中心から前記第2側面部までの距離が当該中心から前記第3側面部までの距離よりも長い距離に設定されている。
【0020】
請求項4に記載の本発明によれば、整列治具の溝部が、溝部における整列治具の径方向内側の部分を構成する第1側面部と、第1側面部における整列治具の周方向一方側の周縁部から当該径方向外側に延びる第2側面部と、第1側面部の当該周方向他方側の周縁部から当該径方向外側に延びる第3側面部とを含んで構成されている。すなわち、本発明において、上記溝部は、整列治具の厚さ方向から見て整列治具の径方向外側が開放されたU字状とされている。
【0021】
また、本発明では、整列治具の厚さ方向から見て、整列治具の周方向において、貫通部の中心から溝部の第2側面部までの距離が、当該中心から当該溝部の第3側面部までの距離よりも長い距離に設定されている。
【0022】
このため、上述したように、平角線コイルが一方の脚部を軸として整列治具に対して相対的に回動し、平角線コイルの他方の脚部が溝部に収容されるとき、当該脚部が当該溝部における第2側面部側の部分と干渉することを抑制することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明に係る平角線コイルの整列装置は、請求項4に記載の発明において、前記溝部の前記周方向一方側には、前記第2側面部の当該径方向外側の周縁部から当該径方向外側かつ当該周方向一方側に延びる第4側面部が設けられている。
【0024】
請求項5に記載の本発明によれば、溝部における整列治具の周方向一方側には、当該溝部の第2側面部における整列治具の径方向外側の周縁部から当該径方向外側かつ当該周方向一方側に延びる第4側面部が設けられている。
【0025】
このため、上述したように、平角線コイルが一方の脚部を軸として整列治具に対して相対的に回動し、平角線コイルの他方の脚部が溝部に収容されるときにおいて、当該脚部は、第4側面部に沿うように移動することとなる。その結果、本発明では、平角線コイルの他方の脚部が、溝部における第2側面部側の部分と干渉することをより抑制することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明に係る平角線コイルの整列装置は、請求項3に記載の発明において、前記溝部は、当該溝部の前記径方向内側の部分を構成する第1側面部と、当該第1側面部の前記周方向一方側の周縁部から当該径方向外側かつ当該周方向一方側に延びると共に当該周方向他方側に凸となる曲面状とされた第2側面部と、を含んで構成されている。
【0027】
請求項6に記載の本発明によれば、整列治具の溝部が、溝部における整列治具の径方向内側の部分を構成する第1側面部と、第1側面部における整列治具の周方向一方側の周縁部から当該径方向外側かつ当該周方向一方側に延びると共に当該周方向他方側に凸となる曲面状とされた第2側面部とを含んで構成されている。
【0028】
このため、上述したように、平角線コイルが一方の脚部を軸として整列治具に対して相対的に回動し、平角線コイルの他方の脚部が溝部に収容されるとき、当該脚部が当該溝部における第2側面部側の部分と干渉しても、当該第2側面部が当該脚部の変位を妨げることを抑制することができる。
【0029】
請求項7に記載の発明に係る平角線コイルの整列装置は、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の発明において、前記貫通部及び前記溝部の前記厚さ方向一方側の部分には、当該厚さ方向から見て前記貫通部の中心と重なると共に当該貫通部及び当該溝部の当該厚さ方向一方側の縁部に対して当該厚さ方向他方側に位置する位置に頂点を有する円錐面に重なるように設けられた傾斜面部が設けられている。
【0030】
請求項7に記載の本発明によれば、整列治具における貫通部及び溝部の整列治具の厚さ方向一方側の部分に傾斜面部が設けられている。この傾斜面部は、整列治具の厚さ方向から見て、貫通部の中心と重なると共に当該貫通部及び当該溝部の当該厚さ方向一方側の縁部に対して当該厚さ方向他方側に位置する位置する位置に頂点を有する円錐面に重なるように設けられている。このため、本発明では、平角線コイルの一方の脚部を、整列治具の厚さ方向一方側から貫通部に挿入するときに、傾斜面部を当該脚部のガイドとして用いることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明に係る平角線コイルの整列装置では、ステータの製造時において平角線コイルの姿勢を安定させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態に係る平角線コイルの整列装置を用いて製造されるステータの製造途中の状態を模式的に示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る平角線コイルの整列装置を用いて製造されるステータの一部を構成する平角線コイルの構成を模式的に示す平面図である。
図3】本実施形態に係る平角線コイルの整列装置を用いて製造されるステータの一部を構成する平角線コイルの構成を模式的に示す平面図である。
図4】本実施形態に係る平角線コイルの整列装置の構成を模式的に示す正面図である。
図5】本実施形態に係る平角線コイルの整列装置の構成を模式的に示す平面図である。
図6】本実施形態に係る平角線コイルの整列装置の一部を構成する整列治具の構成を模式的に示す平面図である。
図7】本実施形態に係る平角線コイルの整列装置の一部を構成する整列治具の要部の構成を模式的に示す拡大平面図である。
図8】本実施形態に係る平角線コイルの整列装置による平角線コイルの整列工程を模式的示す図であり、(A)は平角線コイルを整列治具に挿入した直後の状態を示しており、(B)は平角線コイルの移動状態を示しており、(C)は平角線コイルの位置決め状態を示している。
図9】本実施形態の第1変形例に係る平角線コイルの整列装置の一部を構成する整列治具の要部の構成を模式的に示す拡大平面図である。
図10】本実施形態の第2変形例に係る平角線コイルの整列装置の一部を構成する整列治具の要部の構成を模式的に示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図1図10を用いて、本発明に係る平角線コイルの整列装置の実施形態の一例について説明する。まず、本実施形態に係る「平角線コイルの整列装置10(以下、整列装置10と称する)」で、製造工程の一部が行われるステータ12の構成について説明する。
【0034】
ステータ12は、図示しないロータ等と共にモータの一部を構成しており、図1に示されるように、そのベースとなるステータコア14と、複数の「平角線コイル16」とを備えている。
【0035】
ステータコア14は、複数枚の電磁鋼板が積層されることで円筒状に構成されており、ステータコア14の内周部には、複数のスロット18が形成されている。これらのスロット18は、ステータコア14の軸方向及びステータコア14の径方向内側に開放された溝部とされている。なお、以下では、特に断りのない限り、ステータコア14の軸方向を単に軸方向と称し、ステータコア14の径方向を単に径方向と称し、ステータコア14の周方向を単に周方向と称することとする。
【0036】
一方、平角線コイル16は、図2に示されるように、銅等からなる平角線がU字状に折り曲げられて成形されており、互いに対して平行に延在する一対の「脚部16A」と、脚部16Aの延在方向一方側同士を繋ぐ「クランク部16B」とを備えている。
【0037】
より詳しくは、脚部16Aは軸方向に直線的に延在しており、クランク部16Bは図3にも示されるように、全体としては周方向に沿うように延在しているものの、周方向一方側の半分程度の部分が、周方向他方側の半分程度の部分に対して径方向内側に位置している。すなわち、周方向一方側の脚部16Aは、周方向他方側の脚部16Aに対して径方向内側に位置している。
【0038】
図1に戻り、平角線コイル16は、その脚部16Aがステータコア14の各スロット18に対して軸方向の一方側からそれぞれ挿入されると共に、周方向及び径方向において複数連なるように配置されている。そして、複数の平角線コイル16は、ステータコア14に配置された状態において、軸方向から見て円環状に整列された状態となっている。
【0039】
具体的には、複数の平角線コイル16は、軸方向から見て径方向外側に凸とされた状態で、一方の平角線コイル16の一方の脚部16Aと、他方の平角線コイル16の一方の脚部16Aとが径方向に隣り合うように周方向に連なって配置されることで、軸方向から見て円環状の1つの層を構成している。
【0040】
そして、本実施形態では、ステータコア14に平角線コイル16の挿入が行われる前に、整列装置10で円環状に整列された平角線コイル16の組体が構成されるようになっており、複数の平角線コイル16は、組体の状態でステータコア14に取り付けられるようになっている。以下、整列装置10の構成について詳細に説明することとする。
【0041】
整列装置10は、図4に示されるように、一対の「整列治具20」、連結軸部22、駆動軸部24、駆動部26、ガイド筒部28、支持台30及びコイル挿入部32を備えている。
【0042】
整列治具20は、図5に示されるように、その概形が、外周が円形の板状とされており、その厚さ方向を整列装置10の高さ方向とされて配置されている。そして、整列治具20の径方向外側の部分には、平角線コイル16の脚部16Aを挿入可能な複数の「貫通部34」及び複数の「溝部36」が形成されている。なお、以下では、特に断りのない限り、整列装置10の高さ方向を単に高さ方向と称し、整列治具20の厚さ方向を単に厚さ方向と称し、整列治具20の径方向を単に径方向と称し、整列治具20の周方向を単に周方向と称することとする。また、厚さ方向一方側は、高さ方向上側と一致している。
【0043】
詳しくは、貫通部34は、互いに対して周方向に所定の間隔をあけて配置されており、整列治具20が厚さ方向に貫通されることで設けられている。なお、貫通部34は、厚さ方向から見て円形とされている。この貫通部34は、図7にも示されるように、脚部16Aが挿通された状態において、その「内周面34A」に脚部16Aの一部が接触するようになっている。すなわち、貫通部34は、内周面34Aで脚部16Aを支持可能とされている。なお、ここでいう脚部16Aが貫通部34で支持されている状態には、平角線コイル16の回動や整列に問題が生じない限りにおいて、貫通部34内において脚部16Aが高さ方向に対して傾いている状態も含まれる。
【0044】
一方、溝部36は、整列治具20における貫通部34の径方向外側の周縁部に設けられており、厚さ方向に延在している。この溝部36は、溝部36における径方向内側の部分を構成する「第1側面部36A」と、第1側面部36Aにおける周方向一方側の周縁部から径方向外側に延びる「第2側面部36B」と、第1側面部36Aの周方向他方側の周縁部から径方向外側に延びる「第3側面部36C」とを含んで構成されている。すなわち、溝部36は、厚さ方向から見て径方向外側が開放されたU字状とされている。そして、溝部36の幅は、径方向から見て貫通部34の大部分が収まる長さに設定されている。
【0045】
また、厚さ方向から見て、貫通部34の内周面34Aと、溝部36の第1側面部36Aとは、交わっており、この部分には、厚さ方向に延在するスリット部36A1が設けられている。つまり、貫通部34と溝部36とは、径方向に連通された状態となっており、貫通部34の厚さ方向から見た形状は、円弧状と見なすこともできる。
【0046】
なお、スリット部36A1は、平角線コイル16の脚部16Aの通過を制限可能な大きさとされており、本実施形態では、脚部16Aの溝部36から径方向内側すなわち貫通部34側への移動が制限されるようになっている。
【0047】
また、本実施形態では、厚さ方向から見て、周方向において、貫通部34の「中心C1」から溝部36の第2側面部36Bまでの距離D1が、中心C1から溝部36の第3側面部36Cまでの距離D2よりも長い距離に設定されている。
【0048】
さらに、本実施形態では、溝部36における周方向一方側に、溝部36の第2側面部36Bにおける径方向外側の周縁部から径方向外側かつ周方向一方側に延びる第4側面部としての「ガイド面部40」が設けられている。
【0049】
一方、貫通部34及び溝部36の厚さ方向一方側の部分には、厚さ方向から見て貫通部34の中心C1と重なると共に貫通部34及び溝部36の厚さ方向一方側の縁部に対して厚さ方向他方側に位置する位置に頂点を有する円錐面に重なるように設けられた「傾斜面部42」が設けられている。
【0050】
連結軸部22は、図4に示されるように、高さ方向に延在すると共に、高さ方向に所定の間隔をあけて配置された一対の整列治具20間に介在しており、これらの整列治具20に対して図示しない取付部材で固定されている。そして、一対の整列治具20は、連結軸部22で連結されることで、高さ方向から見て、高さ方向一方側の整列治具20の中心C2と高さ方向他方側の整列治具20の中心C2(図5参照)が一致すると共に、高さ方向一方側の整列治具20における貫通部34の中心C1と高さ方向他方側の整列治具20における貫通部34の中心C1とが一致するように位置決めされている。
【0051】
駆動軸部24は、高さ方向上方側の端部が、高さ方向下側の整列治具20に図示しない取付部材で固定されており、高さ方向下方側の端部が駆動部26の図示しない動力軸部に図示しない取付部材で取り付けられている。
【0052】
駆動部26は、図示しないモータと図示しないギアボックスとを備えており、図示しない電源から電力を供給されると共に、図示しない制御部で制御されることで駆動するようになっている。そして、整列治具20は、制御部で制御された駆動部26によって駆動されることで、後述するように、周方向一方側に間欠的に回動するようになっている。
【0053】
ガイド筒部28は、図5に示されるように、全体的には整列治具20の外周を囲む円筒状とされているものの、高さ方向に延在するスリット部28Aが設けられており、高さ方向から見てC字状に構成されている。そして、径方向外側からスリット部28Aを見たとき、スリット部28Aからは、複数本(本実施形態では一例として7本)の溝部36が露出した状態となっている。なお、ガイド筒部28の周方向の一端部すなわちスリット部28Aの周方向一方側の部分を構成する部分は、ガイド筒部28の周方向の他端部すなわちスリット部28Aの周方向他方側の部分を構成する部分に向かって縮幅された先細り形状とされている。
【0054】
図4に戻り、支持台30は、ガイド筒部28の高さ方向下側に配置されており、ガイド筒部28を高さ方向下側から支持している。また、支持台30は、図示しない軸受け部を介して駆動軸部24と連結されており、支持台30は、軸受け部を介して駆動軸部24、連結軸部22及び整列治具20を高さ方向下側から支持している。なお、支持台30の高さ方向下側には、駆動部26が配置されている。
【0055】
一方、コイル挿入部32は、複数の平角線コイル16が仮置きされる架台部44と、平角線コイル16から平角線コイル16を高さ方向に移動させて平角線コイル16の一方の脚部16Aを貫通部34に挿入する図示しないコイル移動装置を備えている。
【0056】
そして、コイル移動装置を制御する図示しない制御部は、駆動部26の制御部と統合制御されている。詳しくは、整列治具20の初期位置は、貫通部34が挿入位置すなわちコイル移動装置で平角線コイル16の一方の脚部16Aを貫通部34に挿入可能な位置となる位置に設定されている。そして、駆動部26の制御部は、架台部44から平角線コイル16を取得したコイル移動装置が、平角線コイル16を整列治具20に設置する間、駆動部26を停止させる。一方、整列治具20に平角線コイル16を設置したコイル移動装置が、架台部44から平角線コイル16を取得する取得位置に戻る間、駆動部26の制御部は、駆動部26を駆動させて、脚部16Aが挿入された貫通部34の周方向他方側に隣接する貫通部34が挿入位置となるまで整列治具20を周方向一方側に回動させる。
【0057】
また、本実施形態では、平角線コイル16の一方の脚部16Aがコイル移動装置で整列治具20の貫通部34に挿入された直後において、平角線コイル16の他方の脚部16Aは、ガイド筒部28の外周側に位置している。一方、平角線コイル16の整列治具20への位置決めが完了した状態では、図6に示されるように、他方の脚部16Aは、一方の脚部16Aが挿入されている貫通部34と径方向に隣接する溝部36から周方向他方側に数えて6番目の溝部36に収容されるようになっている。なお、一方の脚部16Aが収容される溝部36と他方の脚部16Aが収容される溝部36との相対位置関係は、平角線コイル16や駆動部26の仕様等に応じて適宜調整される。
【0058】
すなわち、本実施形態では、周方向に所定の間隔をあけて配置された貫通部34と溝部36との組み合わせによって、1つの平角線コイル16が位置決めされるようになっている。
【0059】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0060】
本実施形態では、図5に示されるように、外周が円形の板状とされると共に駆動されることでその周方向一方側に回動可能な整列治具20を備えている。そして、径方向外側の部分には、整列治具20が厚さ方向に貫通されることで貫通部34が形成されており、貫通部34は、周方向に複数配置されている。
【0061】
このため、本実施形態では、貫通部34に対して、平角線コイル16の一方の脚部16Aを挿通させると共に、整列治具20を周方向一方側に回動させるという一連の動作を繰り返すことで、複数の平角線コイル16を厚さ方向から見て円環状に整列させることができる。
【0062】
ところで、複数の平角線コイル16を整列させる過程において、1つの貫通部34に対して、先に挿入された平角線コイル16の一方の脚部16Aと、後に挿入された平角線コイル16の他方の脚部16Aとが収まるような構成、すなわち、1つの貫通部34に対して2本の脚部16Aが収まるような構成を採用すると、先に貫通部34に挿入された脚部16Aを有する平角線コイル16の姿勢を安定させることが困難になることが考えられる。
【0063】
ここで、本実施形態では、貫通部34が、平角線コイル16の一方の脚部16Aが挿通された状態においてこの脚部16Aを、その内周面34Aで支持可能とされており、平角線コイル16の一方の脚部16Aを貫通部34に挿通させたときに、この脚部16Aが内周面34Aで支持される。
【0064】
また、本実施形態では、整列治具20における貫通部34の径方向外側の部分に、複数の溝部36が形成されている。これらの溝部36は、それぞれ所定の貫通部34に対してこの貫通部34から周方向他方側に所定の間隔をあけた位置に配置されると共に、径方向外側が開放されている。そして、溝部36は、平角線コイル16の他方の脚部16Aを収容可能とされると共に、この脚部16Aの径方向内側への移動を制限可能とされている。
【0065】
このため、本実施形態では、図8(A)に示されるように、貫通部34に平角線コイル16の一方の脚部16Aが挿通された状態において、図8(B)に示されるように、整列治具20が周方向一方側に回動すると、平角線コイル16が一方の脚部16Aを軸として整列治具20に対して慣性によって相対的に回動する。そして、図8(C)に示されるように、平角線コイル16の他方の脚部16Aが溝部36に収容される。なお、整列治具20の回動のみで平角線コイル16の他方の脚部16Aが溝部36に完全に収まっていなくても、他方の脚部16Aは、ガイド筒部28の内周面に沿って移動することで溝部36に収まるようになっている。また、溝部36は、平角線コイル16の他方の脚部16Aが、整列治具20の径方向内側へ移動することを制限する。
【0066】
このように、本実施形態では、複数の平角線コイル16の整列時に、整列治具20の貫通部34と溝部36とのそれぞれにおいて、平角線コイル16の脚部16Aが1本収まることとなる。その結果、複数の平角線コイル16の整列時において、1つの貫通部34に対して2本の脚部16Aが収まるような構成に比し、厚さ方向から見たときの貫通部34の大きさを小さくし、貫通部34に挿入された脚部16Aが傾くことを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、図7に示されるように、整列治具20の貫通部34が、その厚さ方向から見て円状又は円弧状とされている。このため、上述したように、平角線コイル16が貫通部34に挿入された一方の脚部16Aを軸として整列治具20に対して相対的に回動するとき、平角線コイル16の回動が、貫通部34の内周面34Aで阻害されることを抑制することができる。
【0068】
また、本実施形態では、整列治具20の貫通部34と溝部36とが、径方向から見て一部が重なるように配置されると共に、径方向に連通されている。このため、複数の平角線コイル16が整列したときに、一方の平角線コイル16の脚部16Aと他方の平角線コイル16の脚部16Aとを径方向において近接させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、整列治具20の溝部36が、溝部36における径方向内側の部分を構成する第1側面部36Aと、第1側面部36Aにおける周方向一方側の周縁部から径方向外側に延びる第2側面部36Bと、第1側面部36Bの周方向他方側の周縁部から径方向外側に延びる第3側面部36Cとを含んで構成されている。
【0070】
また、本実施形態では、厚さ方向から見て、周方向において、貫通部34の中心C1から第2側面部36Bまでの距離D1が、中心C1から第3側面部36Cまでの距離D2よりも長い距離に設定されている。
【0071】
このため、上述したように、平角線コイル16が一方の脚部16Aを軸として整列治具20に対して相対的に回動し、平角線コイル16の他方の脚部16Aが溝部36に収容されるとき、この脚部16Aが溝部36における第2側面部36B側の部分と干渉することを抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、溝部36における周方向一方側には、第2側面部36Bにおける径方向外側の周縁部から径方向外側かつ周方向一方側に延びるガイド面部40が設けられている。
【0073】
このため、上述したように、平角線コイル16が一方の脚部16Aを軸として整列治具20に対して相対的に回動し、平角線コイル6の他方の脚部16Aが溝部36に収容されるときにおいて、この脚部16Aは、ガイド面部40に沿うように移動することとなる。その結果、本実施形態では、平角線コイル16の他方の脚部16Aが、溝部36における第2側面部36B側の部分と干渉することをより抑制することができる。
【0074】
加えて、本実施形態では、整列治具20における貫通部34及び溝部36の厚さ方向一方側の部分に傾斜面部42が設けられている。この傾斜面部42は、厚さ方向から見て、貫通部34の中心C1と重なると共に貫通部34及び溝部36の厚さ方向一方側の縁部に対して厚さ方向他方側に位置する位置する位置に頂点を有する円錐面に重なるように設けられている。このため、本実施形態では、平角線コイル16の一方の脚部16Aを、厚さ方向一方側から貫通部34に挿入するときに、傾斜面部42をこの脚部16Aのガイドとして用いることができる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る整列装置10では、ステータ12の製造時において平角線コイル16の姿勢を安定させることができる。
【0076】
<第1変形例>
次に、図9を用いて、上述した実施形態の第1変形例について説明する。この第1変形例は、基本的に上述した実施形態と同様の構成とされているものの、整列治具20にガイド面部40及び傾斜面部42が設けられていない。
【0077】
このような構成によれば、整列治具20の構成を簡略化することができ、整列装置10の製造コストの低減に寄与する。
【0078】
また、本変形例では、第2側面部36Bが、第1側面部36Aの周方向一方側の周縁部から径方向外側かつ周方向一方側に延びると共に周方向他方側に凸となる曲面状とされていてもよい。
【0079】
このような構成によれば、平角線コイル16が一方の脚部16Aを軸として整列治具20に対して相対的に回動し、平角線コイル16の他方の脚部16Aが溝部36に収容されるとき、脚部16Aが溝部36における第2側面部36B側の部分と干渉しても、第2側面部36Bが脚部16Aの変位を妨げることを抑制することができる。
【0080】
<第2変形例>
次に、図10を用いて、上述した実施形態の第2変形例について説明する。この第1変形例は、基本的に上述した実施形態と同様の構成とされているものの、整列治具20にガイド面部40及び傾斜面部42が設けられていない。また、貫通部34と溝部36とが連通されておらず、これらが独立して設けられている。
【0081】
このような構成によれば、整列治具20の構成を簡略化し、さらに、整列治具20における貫通部34周辺の剛性を確保することができる。
【0082】
なお、上述した実施形態では、整列治具20が2つ配置されていたが、整列装置10の仕様等に応じて、例えば、整列治具20を2倍の厚さとして、整列装置10に整列治具20を1つ設ける構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 平角線コイルの整列装置
16 平角線コイル
16A 脚部
16B クランク部
20 整列治具
34 貫通部
34A 内周面
36 溝部
36A 第1側面部
36B 第2側面部
36C 第3側面部
40 ガイド面部(第4側面部)
42 傾斜面部
C1 貫通部の中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10