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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137523
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電機子の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/06 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H02K15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049070
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】308014329
【氏名又は名称】株式会社 ミタチ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 遼介
(72)【発明者】
【氏名】島田 悟
(72)【発明者】
【氏名】村山 正和
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP13
5H615QQ03
5H615QQ12
5H615QQ25
5H615QQ27
5H615SS09
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】電機子の製造効率を向上させる。
【解決手段】複数のセグメントコイル20を複数の層状に重ねて円環状に整列させるためのセグメントコイル用治具である集合治具40は、複数のセグメントコイル20が挿入される複数の集合スロット44が形成された上部42と、複数の集合スロット44に挿入された複数のセグメントコイル20の脚先が突き当てられる下部48とを備える。下部48は、複数のセグメントコイル20の脚先に対して外径側及び内径側から広がり防止部52及び閉じ防止部54を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子を製造する製造装置であって、
前記複数のセグメントコイルが挿入される複数の治具スロットが形成された上部と、
前記複数の治具スロットに挿入された前記複数のセグメントコイルの脚先が突き当てられると共に、前記複数のセグメントコイルの脚先に対して外径側及び内径側の少なくとも一方から接触又は近接して対向する径方向係合部を有する下部と、
を備える前記複数のセグメントコイルを複数の層状に重ねて円環状に集合させるためのセグメントコイル用治具
を有することを特徴とする電機子の製造装置。
【請求項2】
複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子を製造する製造装置であって、
前記複数のセグメントコイルに対して内周側から接する内周側チャックと、
前記複数のセグメントコイルに対して外周側から接すると共に、前記複数のセグメントコイルの脚部間に挿入される凸部を有する外周側チャックと、
を備える円環状に整列または集合された複数のセグメントコイルを把持するためのセグメントコイル用チャック
を有することを特徴とする電機子の製造装置。
【請求項3】
複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子を製造する製造装置であって、
前記複数のセグメントコイルに対して外周側から接する外周側チャックと、
前記複数のセグメントコイルに対して内周側から接すると共に、外径を可変する可変機構を有する内周側チャックと、
を備える円環状に整列または集合された複数のセグメントコイルを把持するためのセグメントコイル用チャック
を有することを特徴とする電機子の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電機子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、複数のセグメントコイルを各層毎に円環状に整列させて整列コイルを形成する整列装置が開示されている。各層の整列コイルは、チャックに把持されて整列装置から取り出され、他の層の整列コイルと組み合わされ(集合され)、ステータコアのスロットに挿入される。
【0003】
下記特許文献2には、多数のセグメントコイルが格納されたセグメントコイル挿入部によってセグメントコイルを挿入される治具が内径側から順次せり出すことで、複数のセグメントコイルを複数の層状に一度に整列させるセグメントコイルの円環整列装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-182339号公報
【特許文献2】特許第3975891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような先行技術では、例えば各層の整列コイルを集合させる際や、多層状に整列された複数のセグメントコイルをコアのスロットに挿入する際などに、セグメントコイル同士の位置精度が低いと、上記の集合や挿入が煩雑になる。その結果、不良品が発生する等して電機子の製造効率が悪化してしまう。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、電機子の製造効率を向上させることができる電機子の製造装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電機子の製造装置は、複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子を製造する製造装置であって、前記複数のセグメントコイルが挿入される複数の治具スロットが形成された上部と、前記複数の治具スロットに挿入された前記複数のセグメントコイルの脚先が突き当てられると共に、前記複数のセグメントコイルの脚先に対して外径側及び内径側の少なくとも一方から接触又は近接して対向する径方向係合部を有する下部と、を備える前記複数のセグメントコイルを複数の層状に重ねて円環状に集合させるためのセグメントコイル用治具を有する。
【0008】
本発明に係る電機子の製造装置は、複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子を製造する製造装置であって、前記複数のセグメントコイルに対して内周側から接する内周側チャックと、前記複数のセグメントコイルに対して外周側から接すると共に、前記複数のセグメントコイルの脚部間に挿入される凸部を有する外周側チャックと、を備える円環状に整列または集合された複数のセグメントコイルを把持するためのセグメントコイル用チャックを有する。
【0009】
また、本発明に係る電機子の製造装置は、複数のスロットが形成されたコアと、前記コアの各スロットに両脚部が挿入され、前記コアの径方向に複数の層状に重ねられて円環状に整列された複数のセグメントコイルとを備えた電機子を製造する製造装置であって、前記複数のセグメントコイルに対して外周側から接する外周側チャックと、前記複数のセグメントコイルに対して内周側から接すると共に、外径を可変する可変機構を有する内周側チャックと、を備える円環状に整列または集合された複数のセグメントコイルを把持するためのセグメントコイル用チャックを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電機子の製造装置によれば、上部の複数の治具スロットに挿入された複数のセグメントコイルの脚先が、下部に突き当てられる。この下部は、複数のセグメントコイルの脚先に対して外径側及び内径側の少なくとも一方から係合する径方向係合部を有している。これにより、セグメントコイル同士の位置精度が高くなり、複数のセグメントコイルの集合や複数のセグメントコイルをチャックでつかむことが容易になる。その結果、製造効率を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る電機子の製造装置によれば、円環状に整列された複数のセグメントコイルに対して内周側チャックが内周側から接し、外周側チャックが外周側から接する。外周側チャックは、複数のセグメントコイルの脚部間に挿入される凸部を有している。これにより、セグメントコイル同士の周方向の位置精度が高くなり、複数のセグメントコイルの集合やスロットへの挿入が容易になる。その結果、製造効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る電機子の製造装置によれば、円環状に整列された複数のセグメントコイルに対して内周側チャックが内周側から接し、外周側チャックが外周側から接する。内周側チャックは、外径を可変する可変機構を有している。これにより、内径が異なる各層のセグメントコイルを、一つのチャックで段替えすることなく把持することができる。その結果、製造効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る電機子の製造方法によって製造されるステータを示す斜視図である。
図2】ステータが備えるセグメントコイルの正面図である。
図3】実施形態に係る電機子の製造方法について説明するための説明図である。
図4】実施形態に係るセグメントコイル用治具である集合治具を示す断面図である。
図5】集合治具の上部を示す平面図である。
図6図5のF6-F6線に対応した断面図である。
図7A】実施形態に係るセグメントコイル用チャックである把持チャックによって整列治具からセグメントコイルを抜き取る際の状況を説明するための第1の断面図である。
図7B】把持チャックによって整列治具からセグメントコイルを抜き取る際の状況を説明するための第2の断面図である。
図7C】把持チャックによって整列治具からセグメントコイルを抜き取る際の状況を説明するための第3の断面図である。
図8】第1の比較例を示す断面図である。
図9A】実施形態に係る電機子の製造方法における掴み直し工程について説明するための第1の断面図である。
図9B】掴み直し工程について説明するための第2の断面図である。
図9C】掴み直し工程について説明するための第3の断面図である。
図10A】集合治具にセグメントコイルが挿入される際の状況を説明するための第1の断面図である。
図10B】集合治具にセグメントコイルが挿入される際の状況を説明するための第2の断面図である。
図11】第2の比較例を示す断面図である。
図12】把持チャックが備える外周側チャックの一部を示す断面図である。
図13】第3の比較例を示す断面図である。
図14】把持チャックが備える内周側チャックの一部を示す側面図である。
図15】内周側チャックが拡径した状態を示す図14に対応した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図15を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお各図においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。図1には、本実施形態に係る電機子の製造方法によって製造されるステータ10が斜視図にて示されている。このステータ10は、ステータコア12と、多数のセグメントコイル20とを備えている。このステータ10は、例えば図示しない回転子と共に三相交流の回転電機を構成する。
【0015】
ステータコア12は、多数枚の電磁鋼板が積層されて円筒状に形成されている。ステータコア12は、ヨーク14と、多数のティース16と、多数のスロット18とを有している。多数のティース16と多数のスロット18とは、ステータコア12の内周側において周方向に交互に並んで形成されている。多数のスロット18は、軸方向の両側及び径方向の内側が開放されている。
【0016】
図2に示されるように、セグメントコイル20は、一例として銅等からなる断面矩形状の平角線が略U字状に成形されている。このセグメントコイル20は、互いに平行に延びる一対の脚部22(図示省略)と、一対の脚部22の一端部同士を接続したコイルエンド部24とを有している。このセグメントコイル20は、一対の脚部22の先端部(脚先)以外が絶縁被膜で覆われている。
【0017】
一対の脚部22は、ステータコア12の周方向に離れた異なるスロット18に対して軸方向一方側から挿入されている。各脚部22とステータコア12との間には、図示しない絶縁部材(ここでは絶縁紙)が介在している。コイルエンド部24は、ステータコア12の軸方向一方側でスロット18の外部に配置されており、一対の脚部22の基端部同士を周方向に接続している。多数のセグメントコイル20は、ステータコア12の径方向に複数層(ここでは3層)に重ねられて円環状に整列されている。各セグメントコイル20の脚部22の先端部は、ステータコア12の軸方向他方側の端面から突出しており、ツイスト加工を施され、他のセグメントコイル20の脚部22の先端部と接合されている。
【0018】
多数のセグメントコイル20は、後述する製造方法および製造装置によって、複数の層が集合された状態で、ステータコアのスロットに一括で挿入される。本実施形態では、セグメントコイル20の3つの層が形成されている。
【0019】
なお、本実施形態では、セグメントコイル20は、断面矩形状の金属線からなる平角線によって構成されているが、これに限らず、セグメントコイルは、複数の素線からなる断面矩形状の平角線によって構成されるものでもよい。また、本実施形態では、セグメントコイル20の脚部22の先端部が、他のセグメントコイル20の脚部22の先端部と接合されているが、これに限らず、セグメントコイル20は、ステータコア12のスロット18内で他のセグメントコイル20と電気的に接合されるものでもよい。また、本実施形態では、ステータコア12が積層鋼板によって構成されているが、これに限らず、ステータコア12は、少なくとも一部が圧粉磁心で構成されるものでもよい。
【0020】
図3には、本実施形態に係る電機子の製造方法について説明するための説明図が示されている。この電機子の製造方法は、整列工程と、集合工程と、挿入工程とを有している。整列工程では、各々に複数の整列スロット(図示省略)が形成された複数(ここでは3)の整列治具30を用いて、複数(ここでは3つ)の層毎に個別に複数のセグメントコイル20を円環状に整列する。この整列工程においては、複数のセグメントコイル20は、各脚部22が整列治具30の整列スロットを周方向に一つずつずらして各整列スロットに順次挿入されて一周することにより一つの層を形成する。
【0021】
集合工程では、複数の集合スロット44(治具スロット)が形成されたセグメントコイル用治具である集合治具40(図4図6参照)を用いて、上記のように複数の層毎に整列された複数のセグメントコイル20を複数の層状に重ねる。この集合工程では、例えば各層のセグメントコイル20は、外側の層から順に集合治具40の集合スロット44に挿入されて層状に重ねられる。これにより、複数のセグメントコイル20を一ヶ所に集合させ、ステータコア12に一括で挿入できる状態にする。
【0022】
挿入工程では、上記のように複数の層状に重ねられた複数のセグメントコイル20を、ステータコア12に形成された複数のスロット18に一括で挿入する。この際には、例えばステータコア12の上面にセグメントコイル20の脚部22の脚先を案内する治具を設ける。これにより、安定してステータコア12にセグメントコイル20を挿入可能となる。なお図3では、セグメントコイル20、整列治具30、集合治具40及びステータコア12を概略的に図示している。
【0023】
上記のように、整列工程と、集合工程と、挿入工程とに工程を分けることで、並列稼働が可能となり、1つのワークあたりの総合的なマシンタイムを短くすることができる。特に、整列工程では、各層のセグメントコイル20の整列を、順次実施するよりも、並行して実施することにより、製造時間の大幅な短縮が可能となる。さらに製造時間の効率化を図るのであれば例えば、整列工程から集合工程に移行する際に複数のセグメントコイル20を把持する把持チャックと、集合工程から挿入工程に移行する際に複数のセグメントコイル20を把持する把持チャックとを分けることで、並列稼働が可能となり、各工程でのセグメントコイル20の円環形状に把持チャックの形状を合わせやすくなる。
【0024】
図4に示されるように、集合工程で用いられる集合治具40は、リング状に形成された上部42と、円板状に形成された下部48とを有している。上部42と下部48とは、同軸上に配置されており、複数の支柱56(図7A図7C参照;図4では図示省略)によって互いに連結されている。
【0025】
図5及び図6に示されるように、上部42には、複数のセグメントコイル20の脚部22が挿入される複数のスロットである集合スロット44が形成されており、下部48には、複数の集合スロット44に挿入された複数のセグメントコイル20の脚部22の下端部が突き当てられる。なお、図5及び図6において46は、支柱56を締結固定するための締結孔である。
【0026】
集合スロット44は、ステータコア12に形成されたスロット18よりも幅及び長さの少なくとも一方(ここでは両方)が大きく設定されている。具体的には、集合スロット44は、絶縁部材である絶縁紙が挿入された状態のスロット18よりも間口が広くなっており、集合治具40にセグメントコイル20の脚部22を挿入する際の脚先精度を緩和している。
【0027】
これにより、ステータコア12に直接セグメントコイル20の脚部22を挿入するよりも、一旦集合治具40に集合させる方が挿入の作業が容易になる。また、各層のセグメントコイル20を外側の層から順に集合治具40に挿入する際に、先に挿入された層のセグメントコイル20が、後から挿入されるセグメントコイル20の邪魔にならないようにすることが容易である。
【0028】
また、図5及び図6に示されるように、集合治具40の集合スロット44は、上端の開口に向かってテーパー状に拡大するテーパー部44Aを有している。このテーパー部44Aによってセグメントコイル20の脚部22を集合スロット44内に案内することができるので、集合治具40にセグメントコイル20の脚部22を挿入する際の脚先精度をさらに緩和することができる。
【0029】
図7A図7Cには、円環状に整列された複数のセグメントコイル20を把持するためのセグメントコイル用チャックである把持チャック66が示されている。この把持チャック66は、一例として複数のセグメントコイル20を内周側及び外周側から把持する上側把持部68Uと、上側把持部68Uの下方に配置され、複数のセグメントコイル20を内周側及び外周側から把持する下側把持部68Lと、上側把持部68Uと下側把持部68Lとを上下方向に相対移動させる相対移動機構70と、を備えている。この把持チャック66は、例えば図示しないロボットマニピュレータ等の搬送装置によって移動される。
【0030】
上側把持部68U及び下側把持部68Lは、複数のセグメントコイル20に対して内周側から接する内周側チャック72と、複数のセグメントコイル20に対して外周側から接する外周側チャック74とを有している。外周側チャック74は、例えば複数のセグメントコイル20を内周側チャック72側へ押圧するエアシリンダ等の駆動源を含んでいる。相対移動機構70は、上側把持部68Uと下側把持部68Lとを上下方向に相対移動させるエアシリンダ等の駆動源を含んでいる。
【0031】
上記構成の把持チャック66では、例えば図7Aに示されるように、複数のセグメントコイル20を整列治具30から抜き取る際には、上側把持部68Uと下側把持部68Lとが接近した状態で上側把持部68Uにより複数のセグメントコイル20の上部を把持する。次いで図7Bに示されるように、上側把持部68Uを下側把持部68Lに対して上昇させ、複数のセグメントコイル20の下部を下側把持部68Lの高さに配置させる。次いで、図7Cに示されるように、下側把持部68Lにより複数のセグメントコイル20の下部を把持し、その状態で把持チャック66の全体を上昇させる。これにより、整列治具30から複数のセグメントコイル20が抜き取られる。なお、集合治具40から複数のセグメントコイル20を抜き取る場合にも上記と同様に行われる。
【0032】
上記のように抜き取られた複数のセグメントコイル20は、把持チャック66の下側把持部68Lによって下部(脚先)を把持されるので、脚先の位置精度が向上する。その結果、ステータコア12にセグメントコイル20の脚部22を挿入し易くなり、ステータ10の製造効率が向上する。なお、セグメントコイル20がそれ程長くない場合においては、把持チャック67の一つの把持部68によってセグメントコイル20のコイルエンド側を把持することで問題ないが、図8に示される比較例のようにセグメントコイルの全長が特に長い場合は、セグメントコイル20が傾きやすくなる。この場合、脚先の位置を規制するものが無いため、脚先の位置が安定しなくなる。その結果、複数のセグメントコイル20の集合時や挿入時に、治具やコアのスロットに対して脚先の狙いが付けづらく、ワーク作製の難易度が高くなってしまう。この点、上記の把持チャック66では、複数のセグメントコイル20の脚先が下側把持部68Lによって把持されるため、脚先の位置が安定する。そのため上記の集合時や挿入時にスロットに対して脚先の狙いが付けやすくなり、ワーク作製が簡単になるため、不良品の発生数も減らすことができる。
【0033】
なお、図9A図9Cに示されるように、セグメントコイル20の全長が特に長い場合であって把持チャック67が一つの把持部68しか有していない場合でも、掴み直し工程を実施することで、把持チャック66を用いる場合と同程度の脚先精度を確保することができる。この掴み直し工程では、把持チャック67によって複数のセグメントコイル20を治具から抜き取った後、図9Aに示されるように、複数のセグメントコイル20の下端(脚先)を何らかの土台76に突き当てる。次いで、図9Bに示されるように、把持部68を少し緩め、複数のセグメントコイル20の脚先側へ把持部68をズラす。その後、図9Cに示されるように、把持部68によって複数のセグメントコイル20を再度把持し直す。これにより、複数のセグメントコイル20の脚先の位置が安定するため、集合時や挿入時にスロットに対して脚先の狙いが付けやすくなり、ワーク作製が容易になる。
【0034】
また、図4に示されるように、集合治具40の下部48は、円板状のベース部50と、ベース部50の上面の外周側に固定された広がり防止部52と、ベース部50の上面の中央側に固定された閉じ防止部54とを有している。これらの閉じ防止部54及び広がり防止部52は「径方向係合部」に相当する。広がり防止部52は、最外側の層のセグメントコイル20の脚部22に対して外径側から係合(接触又は近接して対向)する。閉じ防止部54は、段付きの円柱状をなしており、各層のセグメントコイル20の脚部22に対して内径側から係合(接触又は近接して対向)する。
【0035】
図10A及び図10Bに示されるように、各層のセグメントコイル20が外側の層から順に集合治具40に挿入される際には、広がり防止部52及び閉じ防止部54によって各層のセグメントコイル20の姿勢が安定する。これにより、各層のセグメントコイル20を集合治具40に集合させる作業が容易になる。つまり、例えば図11に示される比較例のように、セグメントコイル20の全長が特に長くセグメントコイル20が倒れやすい場合に、外側の層のセグメントコイル20の姿勢が安定しないと、内側の層のセグメントコイル20を集合治具40に挿入し難くなるが、これを回避することができる。また、集合治具40を用いて複数層に重ねられたセグメントコイル20をステータコア12に一括挿入する際にも、脚部22の脚先精度が高くなっているため、挿入作業が容易になる。
【0036】
図12に示されるように、把持チャック66、67の外周側チャック74は、複数のセグメントコイル20の脚部22間に挿入される凸部74Aを有している。これにより、複数のセグメントコイル20が周方向にズレること(図13参照)を防止又は抑制できるため、セグメントコイル20同士の周方向の位置精度が高くなり、これよっても脚先精度が向上する。その結果、複数のセグメントコイル20のスロットへの挿入が容易になり、ステータ10の製造効率が向上する。
【0037】
また、図14及び図15に示されるように、把持チャック66、67の内周側チャック72は、外径を可変する可変機構78を有している。この可変機構78では、中央のバー80が図示しない駆動源によって上下方向に移動されると、バー80の端部が傾斜溝82に挿入された一対の可動部84が径方向に移動される。例えばロボシリンダーなどの位置を数値制御できる駆動源を用いることで、任意の径に内周側チャック72を固定できる。これにより、内径が異なる状態に整列された各層のセグメントコイル20を、一つのチャックで段替えすることなく把持することができる。その結果、ステータ10の製造効率を向上させることができる。
【0038】
なお、内径が異なる状態に整列された各層のセグメントコイル20を把持するために、内周側チャック72の外径が異なる複数の把持チャックを用いてもよい。その場合、上記の可変機構78が不要になる。
【0039】
また、上記実施形態では、固定子であるステータが製造される場合について説明したが、回転子であるロータの製造に対しても本発明を適用可能である。
【0040】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
20 セグメントコイル
40 集合治具(セグメントコイル用治具)
42 上部
44 集合スロット(治具スロット)
48 下部
67 把持チャック(セグメントコイル用チャック)
72 内周側チャック
74 外周側チャック
74A 凸部
78 可変機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15