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特開2024-137527電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
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  • 特開-電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137527
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/047 20060101AFI20240927BHJP
   G03G 5/14 20060101ALI20240927BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03G5/047
G03G5/14 101
G03G5/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049076
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米徳 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】河合 剛志
(72)【発明者】
【氏名】平方 昌記
(72)【発明者】
【氏名】溝口 聡
(72)【発明者】
【氏名】勝原 秀弥
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA09
2H068AA28
2H068AA29
2H068AA37
2H068AA49
(57)【要約】
【課題】表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体の提供。
【解決手段】導電性基体と、前記導電性基体上に設けられた下引層と、前記下引層上に設けられた電荷発生層と、前記電荷発生層上に設けられた電荷輸送層と、前記電荷輸送層上に設けられた表面有機保護層と、を有し、前記電荷輸送層のヤング率が、5500MPa以上である電子写真感光体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた下引層と、
前記下引層上に設けられた電荷発生層と、
前記電荷発生層上に設けられた電荷輸送層と、
前記電荷輸送層上に設けられた表面有機保護層と、
を有し、
前記電荷輸送層のヤング率が、5500MPa以上である電子写真感光体。
【請求項2】
前記電荷輸送層のヤング率が、5800MPa以上である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記電荷輸送層の厚さが、9μm以上18μm以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記電荷輸送層の厚さが、9μm以上15μm以下である請求項3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記下引層の厚さが、19μm以上31μm以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記下引層の厚さが、19μm以上24μm以下である請求項5に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記電荷輸送層の厚さと前記下引層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記下引層の厚さ)が、9/31以上18/19以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
前記電荷輸送層の厚さと前記下引層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記下引層の厚さ)が、9/24以上15/19以下である請求項7に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記表面有機保護層の厚さが、9μm以上15μm以下であり、
前記電荷輸送層の厚さが、19μm以上24μm以下であり、
前記電荷輸送層の厚さと前記表面有機保護層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記表面有機保護層の厚さ)が、9/24以上15/19以下である請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
【請求項11】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電荷像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法による画像の形成は、例えば、感光体表面を帯電させた後、この感光体表面に画像情報に応じて静電荷像を形成し、次いでこの静電荷像を、トナーを含む現像剤で現像してトナー画像を形成し、このトナー画像を記録媒体表面に転写及び定着することにより行われる。
【0003】
ここで、特許文献1には、「」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-205581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられた電荷輸送層と、電荷輸送層上に設けられた表面有機保護層と、を有する電子写真感光体において、電荷輸送層のヤング率が、5500MPa未満である場合に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、下記態様を含む。
<1>
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた下引層と、
前記下引層上に設けられた電荷発生層と、
前記電荷発生層上に設けられた電荷輸送層と、
前記電荷輸送層上に設けられた表面有機保護層と、
を有し、
前記電荷輸送層のヤング率が、5500MPa以上である電子写真感光体。
<2>
前記電荷輸送層のヤング率が、5800MPa以上である<1>に記載の電子写真感光体。
<3>
前記電荷輸送層の厚さが、9μm以上18μm以下である<1>又は<2>に記載の電子写真感光体。
<4>
前記電荷輸送層の厚さが、9μm以上15μm以下である<3>に記載の電子写真感光体。
<5>
前記下引層の厚さが、19μm以上31μm以下である<1>~<4>のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
<6>
前記下引層の厚さが、19μm以上24μm以下である<5>に記載の電子写真感光体。
<7>
前記電荷輸送層の厚さと前記下引層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記下引層の厚さ)が、9/31以上18/19以下である<1>~<6>のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
<8>
前記電荷輸送層の厚さと前記下引層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記下引層の厚さ)が、9/24以上15/19以下である<7>に記載の電子写真感光体。
<9>
前記表面有機保護層の厚さが、9μm以上15μm以下であり、
前記電荷輸送層の厚さが、19μm以上24μm以下であり、
前記電荷輸送層の厚さと前記表面有機保護層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記表面有機保護層の厚さ)が、9/24以上15/19以下である<1>~<8>のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
<10>
<1>~<9>のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
<11>
<1>~<9>のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電荷像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
<1>に係る発明によれば、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられた電荷輸送層と、電荷輸送層上に設けられた表面有機保護層と、を有する電子写真感光体において、電荷輸送層のヤング率が、5500MPa未満である場合に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制される電電子写真感光体が提供される。
<2>に係る発明によれば、電荷輸送層のヤング率が、5800MPa未満である場合に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0008】
<3>に係る発明によれば、電荷輸送層の厚さが9μm未満又は18μm超えである場合に比べ、帯電時の電流漏れ、及び表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
<4>に係る発明によれば、電荷輸送層の厚さが9μm未満又は15μm超えである場合に比べ、帯電時の電流漏れ、及び表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
<5>に係る発明によれば、下引層の厚さが19μm未満又は31μm超えである場合に比べ、針状異物の突き刺さりによる電流漏れ、及び表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
<6>に係る発明によれば、下引層の厚さが19μm未満又は24μm超えである場合に比べ、針状異物の突き刺さりによる電流漏れ、及び表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0009】
<7>に係る発明によれば、電荷輸送層の厚さと前記下引層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記下引層の厚さ)が、9/31未満又は18/19超えである場合に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
<8>に係る発明によれば、電荷輸送層の厚さと前記下引層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記下引層の厚さ)が、9/24未満又は15/19超えである場合に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0010】
<9>に係る発明によれば、表面有機保護層の厚さが9μm未満若しくは15μm超え、電荷輸送層の厚さが19μm未満若しくは24μm超え、又は電荷輸送層の厚さと前記表面有機保護層の厚さとの比(電荷輸送層の厚さ/表面有機保護層の厚さ)が9/24未満若しくは15/19超えである場合に比べ、帯電時の電流漏れ、針状異物の突き刺さりによる電流漏れ、及び表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0011】
<10>、又は<11>に係る発明によれば、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられた電荷輸送層と、電荷輸送層上に設けられた表面有機保護層と、を有する電子写真感光体において、電荷輸送層のヤング率が、5500MPa未満である電子写真感光体を備える場合に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制される電電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。これらの説明及び実施例は本発明を例示するものであり、本発明を制限するものではない。
【0014】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0015】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0016】
本明細書において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり
、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0017】
本明細書において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0018】
本明細書において「電子写真感光体」を「感光体」とも称する。
【0019】
<電子写真感光体>
本実施形態に係る感光体は、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられた電荷輸送層と、電荷輸送層上に設けられた表面有機保護層と、を有する。
そして、本実施形態に係る感光体は、電荷輸送層のヤング率が、5500MPa以上である。
【0020】
本実施形態に係る感光体は、上記構成により、表面有機保護層の欠陥が抑制される。その理由は次の通り推測される。
【0021】
従来、表面の摩耗を低減し、長寿命化を図る目的で、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられた電荷輸送層と、を有する感光体において、電荷輸送層上に、さらに表面有機保護層を設けた感光体が知られている。
しかし、繰り返しの画像形成により、表面有機保護層が摩耗し、薄くなると、表面有機保護層の剥れを伴う欠陥が生じることがある。表面有機保護層が薄くなると、例えば、感光体と、中間転写体、接触型の帯電部材等との間に、トナー粒子、キャリア等の介在物が介在すると、介在物により、応力を受け感光体表面が大きく凹みやすくなる。それにより、電荷輸送層と表面有機保護層との間の界面に応力集中が生じ、電荷輸送層との界面で表面有機保護層と剥れると考えられる。
【0022】
それに対して、電荷輸送層のヤング率を5500MPa以上と高めると、摩耗により表面有機保護層が薄くなっても、介在物により受け感光体表面が大凹み難くなる。そのため、電荷輸送層と表面有機保護層との間の界面に応力集中が生じ難くなる。
【0023】
以上から、本実施形態に係る感光体は、表面有機保護層の欠陥が抑制されると推測される。
【0024】
以下、本実施形態に係る感光体の詳細について、説明する。
【0025】
(電荷輸送層のヤング率)
電荷輸送層のヤング率は、5500MPa以上であるが、表面有機保護層の欠陥が抑制の観点から、6300MPa以上が好ましく、6500MPa以上がより好ましい。
【0026】
電荷輸送層のヤング率を上記範囲にする手段としては、電荷輸送層及び下引層の厚さを調整する方法が挙げられる。具体的には次の通りである。
電荷輸送層の厚さは、9μm以上18m以下が好ましく、9μm以上15μm以下がより好ましく、10μm以上13μm以下がさらに好ましい。特に、電荷輸送層の厚さが9μm以上(又は10μm)であると、帯電漏れも抑制される易くなる。
下引層の厚さは、19μm以上31μm以下が好ましく、19μm以上24μmがより好ましく、20μm以上24μm以下がさらに好ましい。特に、下引層の厚さが19μm以上(又は20μm)であると、針状異物の突き刺さりによる電流漏れも抑制され易くなる。
電荷輸送層の厚さと下引層の厚さとの比(電荷輸送層の厚さ/下引層の厚さ)は、9/31以上18/19以下が好ましく、9/24以上15/19以下がより好ましい。
電荷輸送層の厚さと下引層の厚さとの合計は、28μm以上49μm以下が好ましく、28μm以上39μm以下が好ましい。
【0027】
特に、表面有機保護層の厚さが、9μm以上15μm以下であり、電荷輸送層の厚さが、9μm以上24μm以下であり、電荷輸送層の厚さと前記表面有機保護層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記表面有機保護層の厚さ)が、9/24以上15/19以下であると、表面有機保護層の欠陥が抑制され易くなる。
【0028】
ここで、電荷輸送層のヤング率は、導電性基体上に、下引層、電荷発生層、及び電荷輸送層がこの順で設けられた状態で、測定される値である。
具体的な電荷輸送層のヤング率の測定方法は、次の通りである。
まず、測定対象の感光体から、基材から表面有機保護層までを含む試料を採取する。なお、表面有機保護層がないサンプルを別途作製し、測定してもよい。
次に、温度23℃、30%RHの環境下において、試料をフィッシャー・インストルメンツ社製の測定装置(PICODENTOR HM500)にセットする。そして、試料に設けられた状態の電荷輸送層表面に対してビッカース圧子を用いて連続的に荷重を増加させ、35mNで押し込む。そして、圧子を押し込んだとき、押込み深さ-荷重曲線を測定し、負荷を最大押込み深さで与え、続いて除荷をした場合の除荷曲線の傾きをヤング率として求める。ここで測定している値は、一般的な材料固有のヤング率のことではない。
測定箇所は、感光体の両端から40mmの位置、80mmの位置、及び中央部の5箇所の試料を採取し、5箇の試料における測定値の平均値を算出する。
【0029】
<感光体の各層の構成>
以下、本実施形態に係る感光体の各層について詳細に説明する。
【0030】
(導電性基体)
導電性基体としては、例えば、金属(アルミニウム、銅、亜鉛、クロム、ニッケル、モリブデン、バナジウム、インジウム、金、白金等)又は合金(ステンレス鋼等)を含む金属板、金属ドラム、及び金属ベルト等が挙げられる。また、導電性基体としては、例えば、導電性化合物(例えば導電性ポリマー、酸化インジウム等)、金属(例えばアルミニウム、パラジウム、金等)又は合金を塗布、蒸着又はラミネートした紙、樹脂フィルム、ベルト等も挙げられる。ここで、「導電性」とは体積抵抗率が1013Ωcm未満であることをいう。
【0031】
導電性基体の表面は、電子写真感光体がレーザプリンタに使用される場合、レーザ光を照射する際に生じる干渉縞を抑制する目的で、中心線平均粗さRaで0.04μm以上0.5μm以下に粗面化されていることが好ましい。なお、非干渉光を光源に用いる場合、干渉縞防止の粗面化は、特に必要ないが、導電性基体の表面の凹凸による欠陥の発生を抑制するため、より長寿命化に適する。
【0032】
粗面化の方法としては、例えば、研磨剤を水に懸濁させて導電性基体に吹き付けることによって行う湿式ホーニング、回転する砥石に導電性基体を圧接し、連続的に研削加工を行うセンタレス研削、陽極酸化処理等が挙げられる。
【0033】
粗面化の方法としては、導電性基体の表面を粗面化することなく、導電性又は半導電性粉体を樹脂中に分散させて、導電性基体の表面上に層を形成し、その層中に分散させる粒子により粗面化する方法も挙げられる。
【0034】
陽極酸化による粗面化処理は、金属製(例えばアルミニウム製)の導電性基体を陽極とし電解質溶液中で陽極酸化することにより導電性基体の表面に酸化膜を形成するものである。電解質溶液としては、例えば、硫酸溶液、シュウ酸溶液等が挙げられる。しかし、陽極酸化により形成された多孔質陽極酸化膜は、そのままの状態では化学的に活性であり、汚染され易く、環境による抵抗変動も大きい。そこで、多孔質陽極酸化膜に対して、酸化膜の微細孔を加圧水蒸気又は沸騰水中(ニッケル等の金属塩を加えてもよい)で水和反応による体積膨張でふさぎ、より安定な水和酸化物に変える封孔処理を行うことが好ましい。
【0035】
陽極酸化膜の膜厚は、例えば、0.3μm以上15μm以下が好ましい。この膜厚が上記範囲内にあると、注入に対するバリア性が発揮される傾向があり、また繰り返し使用による残留電位の上昇が抑えられる傾向にある。
【0036】
導電性基体には、酸性処理液による処理又はベーマイト処理を施してもよい。
酸性処理液による処理は、例えば、以下のようにして実施される。先ず、リン酸、クロム酸及びフッ酸を含む酸性処理液を調製する。酸性処理液におけるリン酸、クロム酸及びフッ酸の配合割合は、例えば、リン酸が10質量%以上11質量%以下の範囲、クロム酸が3質量%以上5質量%以下の範囲、フッ酸が0.5質量%以上2質量%以下の範囲であって、これらの酸全体の濃度は13.5質量%以上18質量%以下の範囲がよい。処理温度は例えば42℃以上48℃以下が好ましい。被膜の膜厚は、0.3μm以上15μm以下が好ましい。
【0037】
ベーマイト処理は、例えば90℃以上100℃以下の純水中に5分から60分間浸漬すること、又は90℃以上120℃以下の加熱水蒸気に5分から60分間接触させて行う。被膜の膜厚は、0.1μm以上5μm以下が好ましい。これをさらにアジピン酸、硼酸、硼酸塩、燐酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の被膜溶解性の低い電解質溶液を用いて陽極酸化処理してもよい。
【0038】
(下引層)
下引層は、例えば、無機粒子と結着樹脂とを含む層である。
【0039】
無機粒子としては、例えば、粉体抵抗(体積抵抗率)10Ωcm以上1011Ωcm以下の無機粒子が挙げられる。
これらの中でも、上記抵抗値を有する無機粒子としては、例えば、酸化錫粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ジルコニウム粒子等の金属酸化物粒子がよく、特に、酸化亜鉛粒子が好ましい。
【0040】
無機粒子のBET法による比表面積は、例えば、10m/g以上がよい。
無機粒子の体積平均粒径は、例えば、50nm以上2000nm以下(好ましくは60nm以上1000nm以下)がよい。
【0041】
無機粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上80質量%以下である。
【0042】
無機粒子は、表面処理が施されていてもよい。無機粒子は、表面処理の異なるもの、又
は、粒子径の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0043】
表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0044】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
シランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤と他のシランカップリング剤とを併用してもよい。この他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
表面処理剤による表面処理方法は、公知の方法であればいかなる方法でもよく、乾式法又は湿式法のいずれでもよい。
【0047】
表面処理剤の処理量は、例えば、無機粒子に対して0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0048】
ここで、下引層は、無機粒子と共に電子受容性化合物(アクセプター化合物)を含有することが、電気特性の長期安定性、キャリアブロック性が高まる観点からよい。
【0049】
電子受容性化合物としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン等のフルオレノン化合物;2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(4-ジエチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物;キサントン系化合物;チオフェン化合物;3,3’,5,5’-テトラ-t-ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物;ベンゾフェノン化合物;等の電子輸送性物質等が挙げられる。
特に、電子受容性化合物としては、アントラキノン構造を有する化合物が好ましい。アントラキノン構造を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン化合物、アミノアントラキノン化合物、アミノヒドロキシアントラキノン化合物等が好ましく、具体的には、例えば、アントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0050】
電子受容性化合物は、下引層中に無機粒子と共に分散して含まれていてもよいし、無機粒子の表面に付着した状態で含まれていてもよい。
【0051】
電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着させる方法としては、例えば、乾式法、又は
、湿式法が挙げられる。
【0052】
乾式法は、例えば、無機粒子をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接又は有機溶媒に溶解させた電子受容性化合物を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させて、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。電子受容性化合物の滴下又は噴霧するときは、溶剤の沸点以下の温度で行うことがよい。電子受容性化合物を滴下又は噴霧した後、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に制限されない。
【0053】
湿式法は、例えば、攪拌、超音波、サンドミル、アトライター、ボールミル等により、無機粒子を溶剤中に分散しつつ、電子受容性化合物を添加し、攪拌又は分散した後、溶剤除去して、電子受容性化合物を無機粒子の表面に付着する方法である。溶剤除去方法は、例えば、ろ過又は蒸留により留去される。溶剤除去後には、更に100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けは電子写真特性が得られる温度、時間であれば特に限定されない。湿式法においては、電子受容性化合物を添加する前に無機粒子の含有水分を除去してもよく、その例として溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法が挙げられる。
【0054】
なお、電子受容性化合物の付着は、表面処理剤による表面処理を無機粒子に施す前又は後に行ってよく、電子受容性化合物の付着と表面処理剤による表面処理と同時に行ってもよい。
【0055】
電子受容性化合物の含有量は、例えば、無機粒子に対して0.01質量%以上20質量%以下がよく、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下である。
【0056】
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の公知の高分子化合物;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。
下引層に用いる結着樹脂としては、例えば、電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂、導電性樹脂(例えばポリアニリン等)等も挙げられる。
【0057】
これらの中でも、下引層に用いる結着樹脂としては、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が好適であり、特に、尿素樹脂、フェノール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と硬化剤との反応により得られる樹脂が好適である。
これら結着樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0058】
下引層には、電気特性向上、環境安定性向上、画質向上のために種々の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合
物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が挙げられる。シランカップリング剤は前述のように無機粒子の表面処理に用いられるが、添加剤として更に下引層に添加してもよい。
【0059】
添加剤としてのシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピル-トリス(2-メトキシエトキシ)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0060】
ジルコニウムキレート化合物としては、例えば、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセト酢酸エチル、ジルコニウムトリエタノールアミン、アセチルアセトネートジルコニウムブトキシド、アセト酢酸エチルジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムホスホネート、オクタン酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、ラウリン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、イソステアリン酸ジルコニウム、メタクリレートジルコニウムブトキシド、ステアレートジルコニウムブトキシド、イソステアレートジルコニウムブトキシド等が挙げられる。
【0061】
チタニウムキレート化合物としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等が挙げられる。
【0062】
アルミニウムキレート化合物としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート、モノブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムブチレート、ジエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が挙げられる。
【0063】
これらの添加剤は、単独で、又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0064】
下引層は、ビッカース硬度が35以上であることがよい。
下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)は、モアレ像抑制のために、使用される露光用レーザ波長λの1/(4n)(nは上層の屈折率)から1/2までに調整されていることがよい。
表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子等を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が挙げられる。また、表面粗さ調整のために下引層の表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が挙げられる。
【0065】
下引層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた下引層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。
【0066】
下引層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、公知の有機溶剤、例えば、アルコール系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素溶剤、ケトン系溶剤、ケトンアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
これらの溶剤として具体的には、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等の通常の有機溶剤が挙げられる。
【0067】
下引層形成用塗布液を調製するときの無機粒子の分散方法としては、例えば、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカー等の公知の方法が挙げられる。
【0068】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、例えば、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0069】
(中間層)
図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。
中間層は、例えば、樹脂を含む層である。中間層に用いる樹脂としては、例えば、アセタール樹脂(例えばポリビニルブチラール等)、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、カゼイン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂等の高分子化合物が挙げられる。
中間層は、有機金属化合物を含む層であってもよい。中間層に用いる有機金属化合物としては、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、ケイ素等の金属原子を含有する有機金属化合物等が挙げられる。
これらの中間層に用いる化合物は、単独で又は複数の化合物の混合物若しくは重縮合物として用いてもよい。
【0070】
これらの中でも、中間層は、ジルコニウム原子又はケイ素原子を含有する有機金属化合物を含む層であることが好ましい。
【0071】
中間層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた中間層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0072】
中間層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上3μm以下の範囲に設定される。なお、中間層を下引層として使用してもよい。
【0073】
(電荷発生層)
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂とを含む層である。また、電荷発生層は、電荷発生材料の蒸着層であってもよい。電荷発生材料の蒸着層は、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro-Luminescence)イメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合に好適である。
【0074】
電荷発生材料としては、ビスアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料;ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;ペリレン顔料;ピロロピロール顔料;フタロシアニン顔料;酸化亜鉛;三方晶系セレン等が挙げられる。
【0075】
これらの中でも、近赤外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、金属フタロシアニン顔料、又は無金属フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニン;クロロガリウムフタロシアニン;ジクロロスズフタロシアニン;チタニルフタロシアニンがより好ましい。
【0076】
一方、近紫外域のレーザ露光に対応させるためには、電荷発生材料としては、ジブロモアントアントロン等の縮環芳香族顔料;チオインジゴ系顔料;ポルフィラジン化合物;酸化亜鉛;三方晶系セレン;ビスアゾ顔料等が好ましい。
【0077】
450nm以上780nm以下に発光の中心波長があるLED,有機ELイメージアレー等の非干渉性光源を用いる場合にも、上記電荷発生材料を用いてもよいが、解像度の観点より、感光層を20μm以下の薄膜で用いるときには、感光層中の電界強度が高くなり、基体からの電荷注入による帯電低下、いわゆる黒点と呼ばれる画像欠陥を生じやすくなる。これは、三方晶系セレン、フタロシアニン顔料等のp-型半導体で暗電流を生じやすい電荷発生材料を用いたときに顕著となる。
【0078】
これに対し、電荷発生材料として、縮環芳香族顔料、ペリレン顔料、アゾ顔料等のn-型半導体を用いた場合、暗電流を生じ難く、薄膜にしても黒点と呼ばれる画像欠陥を抑制し得る。
なお、n-型の判定は、通常使用されるタイムオブフライト法を用い、流れる光電流の極性によって判定され、正孔よりも電子をキャリアとして流しやすいものをn-型とする。
【0079】
電荷発生層に用いる結着樹脂としては、広範な絶縁性樹脂から選択され、また、結着樹脂としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリシラン等の有機光導電性ポリマーから選択してもよい。
結着樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂(ビスフェノール類と芳香族2価カルボン酸の重縮合体等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0080】
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、質量比で10:1から1:10までの範囲内であることが好ましい。
【0081】
電荷発生層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0082】
電荷発生層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱することで行う。なお、電荷発生層の形成は、電荷発生材料の蒸着により行ってもよい。電荷発生層の蒸着による形成は、特に、電荷発生材料として縮環芳香族顔料、ペリレン顔料を利用する場合に好適である。
【0083】
電荷発生層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n-ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、クロロベンゼン、トルエン等が挙げられる。これら溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いる。
【0084】
電荷発生層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、例えば、高圧状態で分散液を液-液衝突や液-壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式等が挙げられる。
なお、この分散の際、電荷発生層形成用塗布液中の電荷発生材料の平均粒径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下にすることが有効である。
【0085】
電荷発生層形成用塗布液を下引層上(又は中間層上)に塗布する方法としては、例えばブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0086】
電荷発生層の膜厚は、例えば、好ましくは0.1μm以上5.0μm以下、より好ましくは0.2μm以上2.0μm以下の範囲内に設定される。
【0087】
(電荷輸送層)
電荷輸送層は、例えば、電荷輸送材料と結着樹脂とを含む層である。電荷輸送層は、高分子電荷輸送材料を含む層であってもよい。
【0088】
電荷輸送材料としては、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。これらの電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び下記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体が好ましい。
【0090】
【化1】
【0091】
構造式(a-1)中、ArT1、ArT2、及びArT3は、各々独立に置換若しくは無置換のアリール基、-C-C(RT4)=C(RT5)(RT6)、又は-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)を示す。RT4、RT5、RT6、RT7、及びRT8は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0092】
【化1】
【0093】
構造式(a-2)中、RT91及びRT92は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のアルコキシ基を示す。RT101、RT102、RT111及びRT112は各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは無置換のアリール基、-C(RT12)=C(RT13)(RT14)、又は-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)を示し、RT12、RT13、RT14、RT15及びRT16は各々独立に水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。Tm1、Tm2、Tn1及びTn2は各々独立に0以上2以下の整数を示す。
上記各基の置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基が挙げられる。また、上記各基の置換基としては、炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基も挙げられる。
【0094】
ここで、構造式(a-1)で示されるトリアリールアミン誘導体、及び前記構造式(a-2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「-C-CH=CH-CH=C(RT7)(RT8)」を有するトリアリールアミン誘導体、及び「-CH=CH-CH=C(RT15)(RT16)」を有するベンジジン誘導体が、電荷移動度の観点で好ましい。
【0095】
高分子電荷輸送材料としては、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等の電荷輸送性を有する公知のものが用いられる。特に、ポリエステル系の高分子電荷輸送材は特に好ましい。なお、高分子電荷輸送材料は、単独で使用してよいが、結着樹脂と併用してもよい。
【0096】
電荷輸送層に用いる結着樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの中でも、結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂が好適である。これらの結着樹脂は1種を単独で又は2種以上で用いる。
なお、電荷輸送材料と結着樹脂との配合比は、質量比で10:1から1:5までが好ましい。
【0097】
電荷輸送層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0098】
電荷輸送層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥、必要に応じて加熱することで行う。
【0099】
電荷輸送層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状又は直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
【0100】
電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層の上に塗布する際の塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0101】
(表面有機保護層)
表面有機保護層は、例えば、帯電時の感光層の化学的変化を防止したり、感光層の機械的強度をさらに改善する目的で設けられる。
そのため、表面有機保護層は、硬化膜(架橋膜)で構成された層を適用することがよい。これら層としては、例えば、下記1)又は2)に示す層が挙げられる。
【0102】
1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり当該反応性基含有電荷輸送材料の重合体又は架橋体を含む層)
2)非反応性の電荷輸送材料と、電荷輸送性骨格を有さず、反応性基を有する反応性基含有非電荷輸送材料と、を含む組成物の硬化膜で構成された層(つまり、非反応性の電荷輸送材料と、当該反応性基含有非電荷輸送材料の重合体又は架橋体と、を含む層)
【0103】
反応性基含有電荷輸送材料の反応性基としては、連鎖重合性基、エポキシ基、-OH、-OR[但し、Rはアルキル基を示す]、-NH、-SH、-COOH、-SiRQ1 3-Qn(ORQ2Qn[但し、RQ1は水素原子、アルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表し、RQ2は水素原子、アルキル基、トリアルキルシリル基を表す
。Qnは1~3の整数を表す]等の周知の反応性基が挙げられる。
【0104】
連鎖重合性基としては、ラジカル重合しうる官能基であれば特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも炭素二重結合を含有する基を有する官能基である。具体的には、ビニル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基等が挙げられる。なかでも、その反応性に優れることから、連鎖重合性基としては、ビニル基、スチリル基(ビニルフェニル基)、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びそれらの誘導体から選択される少なくとも一つを含有する基であることが好ましい。
【0105】
反応性基含有電荷輸送材料の電荷輸送性骨格としては、電子写真感光体における公知の構造であれば特に限定されるものではなく、例えば、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の含窒素の正孔輸送性化合物に由来する骨格であって、窒素原子と共役している構造が挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン骨格が好ましい。
【0106】
これら反応性基及び電荷輸送性骨格を有する反応性基含有電荷輸送材料、非反応性の電荷輸送材料、反応性基含有非電荷輸送材料は、周知の材料から選択すればよい。
【0107】
反応性基含有電荷輸送材料は、反応性基として連鎖重合性基を有する反応性基含有電荷輸送材料(以下、「特定の反応性基含有電荷輸送材料(a)」ともいう。)であってもよい。反応性基含有非電荷輸送材料は、1種単独で用いても、2種以上を併用していてもよい。
【0108】
特定の反応性基含有電荷輸送材料(a)としては、下記一般式(A)で表される化合物であることが、電荷輸送性に優れることから、好ましい。
【0109】
【化1】
【0110】
前記一般式(A)中、Ar乃至Arはそれぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示し、Arは置換若しくは未置換のアリール基、又は、置換若しくは未置換のアリーレン基を表し、Dは連鎖重合性基を有する有機基を表し、c1乃至c5はそれぞれ独立に、0以上2以下の整数を表し、kは0又は1を表し、dは0以上5以下の整数を表し、eは0又は1を示し、Dの総数は4以上である。
【0111】
一般式(A)において、Ar乃至Arはそれぞれ独立に、置換若しくは未置換のアリール基を示す。Ar乃至Arは、それぞれ、同一でもあってもよいし、異なっていてもよい。
ここで、置換アリール基における置換基としては、D:連鎖重合性基を有する有機基以外のものとして、炭素数1乃至4のアルキル基若しくはアルコキシ基、炭素数6以上10以下の置換若しくは未置換のアリール基等が挙げられる。
Ar乃至Arとしては、下記式(1)乃至(7)のうちのいずれかであることが好ましい。なお、下記式(1)乃至(7)は、Ar乃至Arの各々に連結され得る「-(D)C1」乃至「-(D)C4」を総括的に示した「-(D)」と共に示す。
【0112】
【化2】
【0113】
前記式(1)乃至(7)中、Rは、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルキル基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基及び炭素数7以上10以下のアラルキル基よりなる群から選ばれる1種を表し、R乃至Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基及
びハロゲン原子よりなる群から選ばれる1種を表し、Arは置換又は未置換のアリーレン基を表し、Dは連鎖重合性基を有する有機基を表し、cは1又は2を表し、sは0又は1を表し、tは0以上3以下の整数を表す。
【0114】
ここで、式(7)中のArとしては、下記構造式(8)又は(9)で表されるものが好ましい。
【0115】
【化3】
【0116】
前記式(8)及び(9)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基及びハロゲン原子よりなる群から選ばれる1種を表し、t’はそれぞれ0以上3以下の整数を表す。
【0117】
また、前記式(7)中、Z’は2価の有機連結基を示すが、下記式(10)乃至(17)のうちのいずれかで表されるものが好ましい。また、前記式(7)中、sはそれぞれ0又は1を表す。
【0118】
【化4】
【0119】
前記式(10)乃至(17)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数1以上4以下のアルコキシ基若しくは炭素数1以上4以下のアルコキシ基で置換されたフェニル基、未置換のフェニル基、炭素数7以上10以下のアラルキル基及びハロゲン原子よりなる群から選ばれる1種を表し、Wは2価の基を表し、q及びrはそれぞれ独立に、1以上10以下の整数を表し、t”はそれぞれ独立に、0以上3以下の整数を表す。
【0120】
前記式(16)乃至(17)中のWとしては、下記式(18)乃至(26)で表される2価の基のうちのいずれかであることが好ましい。ただし、式(25)中、uは0以上3以下の整数を表す。
【0121】
【化5】
【0122】
また、一般式(A)中、Arは、kが0の時は置換若しくは未置換のアリール基であり、このアリール基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基と同様のものが挙げられる。また、Arは、kが1の時は置換若しくは未置換のアリーレン基であり、このアリーレン基としては、Ar乃至Arの説明で例示されたアリール基から、-N(Ar-(D)C3)(Ar-(D)C4)が置換する位置の水素原子を1つ除いたアリーレン基が挙げられる。
【0123】
反応性基含有電荷輸送材料の含有量は、表面有機保護層を形成する際に用いられる組成物(固形分)に対して30質量%以上100質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以上100質量%以下、更に好ましくは50質量%以上100質量%以下である。この範囲とすることで、硬化膜の電気特性に優れ、硬化膜を厚膜化し得る。
【0124】
非反応性の電荷輸送材料としては、例えば、p-ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物;テトラシアノキノジメタン系化合物;2,4,7-トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物;キサントン系化合物;ベンゾフェノン系化合物;シアノビニル系化合物;エチレン系化合物等の電子輸送性化合物が挙げられる。電荷輸送材料としては、トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物等の正孔輸送性化合物も挙げられる。非反応性の電荷輸送材料は、1種単独で用いても、2種以上を併用していてもよい。
【0125】
反応性基含有非電荷輸送材料としては、熱硬化性樹脂、硬化剤等が挙げられる。反応性基含有非電荷輸送材料は、1種単独で用いても、2種以上を併用していてもよい。
熱硬化性樹脂としては、グアナミン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。
硬化剤としては、グアナミン構造を有する化合物(以下、「グアナミン化合物」とも称する。)及びメラミン構造を有する化合物(以下、「メラミン化合物」とも称する。)等が挙げられる。
表面有機保護層が、例えば、反応性基含有電荷輸送材料と、熱硬化性樹脂(より好ましくはグアナミン樹脂、メラミン樹脂等)、グアナミン化合物及びメラミン化合物から選択される少なくとも1種との架橋体(架橋物)を含んで構成される硬化膜である場合、熱硬化性樹脂(より好ましくはグアナミン樹脂、メラミン樹脂等)、グアナミン化合物及びメラミン化合物を含まない場合に比べて、硬化度の高い硬化膜が得られやすく、耐摩耗性により優れる。
【0126】
表面有機保護層は、前記1)及び2)に示す層の中でも、前記1)反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の硬化物から構成されていることが好ましい。表面有機保護層が、前記1)に示す層であると、前記2)に示す層に比べ、表面有機保護層の硬度がより高くなり、耐摩耗性に優れる傾向にある。
【0127】
-フッ素樹脂粒子-
表面有機保護層は、フッ素樹脂粒子を更に含んでいてもよい。
フッ素樹脂粒子を更に含むと、表面有機保護層の外周面に適度に凹凸が形成され、耐摩耗性により優れる。
表面有機保護層には、表面有機保護層の全固形分に対し、フッ素樹脂粒子が5質量%以上15質量%以下の含有量で含有されている。
フッ素樹脂粒子の含有量は、層全構成成分(固形分全量)に対して、5質量%以上15質量%以下が望ましく、より望ましくは7質量%以上12質量%以下である。
【0128】
フッ素樹脂粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、別名「4フッ化エチレン樹脂」)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体などの粒子が挙げられる。
【0129】
中でも、電子写真感光体の耐摩耗性とクリーニング性の観点から、ポリテトラフルオロエチレン、及びテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体が望ましい。
フッ素樹脂粒子は、1種を単独でまたは2種以上を併用してもよい。
【0130】
フッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂の重量平均分子量は、例えば、3000以上500万以下がよい。
【0131】
フッ素樹脂粒子の平均一次粒径は、例えば、0.05μm以上10μm以下であることが望ましく、より望ましくは0.1μm以上5μm以下である。
なお、フッ素樹脂粒子の平均一次粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置L
A-920(堀場製作所製)を用いて、フッ素樹脂粒子が分散された分散液と同じ溶剤に
希釈した測定液を屈折率1.35で測定した値をいう。
【0132】
フッ素樹脂粒子の市販品としては、例えば、ルブロン(登録商標)シリーズ(ダイキン工業株式会社製)、テフロン(登録商標)シリーズ(デュポン社製)、ダイニオンシリーズ(住友3M製)等が挙げられる。
【0133】
表面有機保護層には、その他、周知の添加剤が含まれていてもよい。
【0134】
表面有機保護層の形成は、特に制限はなく、周知の形成方法が利用されるが、例えば、上記成分を溶剤に加えた表面有機保護層形成用塗布液の塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥し、必要に応じて加熱等の硬化処理することで行う。
【0135】
表面有機保護層形成用塗布液を調製するための溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いる。
なお、表面有機保護層形成用塗布液は、無溶剤の塗布液であってもよい。
【0136】
表面有機保護層形成用塗布液を感光層(例えば電荷輸送層)上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が挙げられる。
【0137】
保護層の膜厚は、例えば、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下の範囲内に設定される。
【0138】
<画像形成装置/プロセスカートリッジ>
本実施形態に係る画像形成装置は、感光体と、感光体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電荷像を現像してトナー像を形成する現像装置と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備える。
【0139】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置は、感光体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;感光体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前に感光体の表面に除電光を照射して除電する除電装置を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写装置は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、感光体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写装置と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写装置と、を有する構成が適用される。
【0140】
本実施形態に係る画像形成装置は、乾式現像方式の画像形成装置、湿式現像方式(液体現像剤を利用した現像方式)の画像形成装置のいずれであってもよい。
【0141】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、感光体を備える部分が、画像形成装置に対して着脱されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る感光体を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。なお、プロセスカートリッジには、電子写真感光体以外に、例えば、帯電装置、静電荷像形成装置、現像装置、転写装置からなる群から選択される少なくとも一つを備えてもよい。
【0142】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0143】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置10には、図1に示すように、例えば、感光体12が設けられている。感光体12は、円柱状とされ、モータ等の駆動部27にギア等の駆動力伝搬部材(不図示)を介して連結されており、当該駆動部27により、黒点で示す回転軸の周りに回転駆動される。図1に示す例では、矢印A方向に回転駆動される。
【0144】
感光体12の周辺には、例えば、帯電装置15、静電荷像形成装置16(静電荷像形成装置の一例)、現像装置18(現像装置の一例)、転写装置31(転写装置の一例)、及びクリーニング装置22(清掃装置の一例)が、感光体12の回転方向に沿って順に配設されている。そして、画像形成装置10には、定着部材26Aと、定着部材26Aに接触して配置される加圧部材26Bと、を有する定着装置26も配設されている。また、画像形成装置10は、各装置(各部)の動作を制御する制御装置36を有している。なお、感光体12、帯電装置15、静電荷像形成装置16、現像装置18、転写装置31、クリーニング装置22を含むユニットが画像形成ユニットに該当する。
【0145】
画像形成装置10において、少なくとも感光体12は、他の装置と一体化したプロセスカートリッジとして備えてもよい。
【0146】
以下、画像形成装置10の各装置(各部)の詳細について説明する。
【0147】
[感光体]
感光体12は、本実施形態に係る感光体が適用される。
【0148】
[帯電装置]
帯電装置15は、感光体12の表面を帯電する。帯電装置15は、例えば、感光体12表面に接触又は非接触で設けられ、感光体12の表面を帯電する帯電部材14、及び帯電部材14に帯電電圧を印加する電源28(帯電部材用の電圧印加部の一例)を備えている。電源28は、帯電部材14に電気的に接続されている。
【0149】
帯電装置15の帯電部材14としては、例えば、導電性の帯電ロール、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触方式の帯電器が挙げられる。また、帯電部材14としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器又はコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる
【0150】
[静電荷像形成装置]
静電荷像形成装置16は、帯電された感光体12の表面に静電荷像を形成する。具体的には、例えば、静電荷像形成装置16は、帯電部材14により帯電された感光体12の表面に、形成する対象となる画像の画像情報に基づいて変調された光Lを照射して、感光体12上に画像情報の画像に応じた静電荷像を形成する。
【0151】
静電荷像形成装置16としては、例えば、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を像様に露光する光源を持つ光学系機器等が挙げられる。
【0152】
[現像装置]
現像装置18は、例えば、静電荷像形成装置16による光Lの照射位置より感光体12の回転方向下流側に設けられている。現像装置18内には、現像剤を収容する収容部が設けられている。この収容部には、トナーを有する静電荷像現像剤が収容されている。トナーは、例えば、現像装置18内で帯電された状態で収容されている。
【0153】
また、図1に示す画像形成装置では、現像装置18内に収容される現像剤(そのトナー)に、脂肪酸金属塩の粒子が添加されており、つまり現像装置18が、感光体12の表面とクリーニングブレード22Aとの接触部に脂肪酸金属塩を供給する供給装置を兼ねている。
なお、現像剤(そのトナー)に添加され脂肪酸金属塩の粒子の詳細については、後述する。
【0154】
現像装置18は、例えば、トナーを含む現像剤により、感光体12の表面に形成された静電荷像を現像する現像部材18Aと、現像部材18Aに現像電圧を印加する電源32と、を備えている。この現像部材18Aは、例えば、電源32に電気的に接続されている。
【0155】
現像装置18の現像部材18Aとしては、現像剤の種類に応じて選択されるが、例えば、磁石が内蔵された現像スリーブを有する現像ロールが挙げられる。
【0156】
現像装置18(電源32を含む)は、例えば、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、現像部材18Aに現像電圧を印加する。現像電圧を印加された現像部材18Aは、現像電圧に応じた現像電位に帯電される。そして、現像電位に帯電された現像部材18Aは、例えば、現像装置18内に収容された現像剤を表面に保持して、現像剤に含まれるトナーを現像装置18内から感光体12表面へと供給する。トナーが供給された感光体12表面では、形成された静電荷像がトナー画像として現像される。
【0157】
[転写装置]
転写装置31は、例えば、現像部材18Aの配設位置より感光体12の回転方向下流側に設けられている。転写装置31は、例えば、感光体12の表面に形成されたトナー画像を記録媒体30Aへ転写する転写部材20と、転写部材20に転写電圧を印加する電源30と、を備えている。転写部材20は、例えば、円柱状とされており、感光体12との間で記録媒体30Aを挟んで搬送する。転写部材20は、例えば、電源30に電気的に接続されている。
【0158】
転写部材20としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムクリーニングブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器又はコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の非接触型転写帯電器が挙げられる。
【0159】
転写装置31(電源30を含む)は、例えば、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、転写部材20に転写電圧を印加する。転写電圧を印加された転写部材20は、転写電圧に応じた転写電位に帯電される。
【0160】
転写部材20の電源30から転写部材20に、感光体12上に形成されたトナー画像を
構成するトナーとは逆極性の転写電圧が印加されると、例えば、感光体12と転写部材20との向かい合う領域(図1中、転写領域32A参照)には、感光体12上のトナー画像を構成する各トナーを静電力により感光体12から転写部材20側へと移動させる電界強度の転写電界が形成される。
【0161】
記録媒体30Aは、例えば、図示を省略する収容部に収容されており、この収容部から図示を省略する複数の搬送部材によって搬送経路34に沿って搬送され、感光体12と転写部材20との向かい合う領域である転写領域32Aに到る。図1中に示す例では、矢印B方向に搬送される。転写領域32Aに到った記録媒体30Aは、例えば、転写部材20に転写電圧が印加されることにより該領域に形成された転写電界によって、感光体12上のトナー画像が転写される。すなわち、例えば、感光体12表面から記録媒体30Aへのトナーの移動により、記録媒体30A上にトナー画像が転写される。そして、感光体12上のトナー画像は、転写電界により記録媒体30A上に転写される。
【0162】
[クリーニング装置]
クリーニング装置22は、転写領域32Aより感光体12の回転方向下流側に設けられている。クリーニング装置22は、トナー画像を記録媒体30Aに転写した後に、感光体12に付着した残留トナーをクリーニング(清掃)する。クリーニング装置22では、残留トナー以外にも、紙粉等の付着物をクリーニングする。
【0163】
クリーニング装置22は、クリーニングブレード22Aを有し、クリーニングブレード22Aの先端を感光体12の回転方向と対向する方向に向けて接触させて感光体12の表面の付着物を除去するものである。
【0164】
[定着装置]
定着装置26は、例えば、転写領域32Aより記録媒体30Aの搬送経路34の搬送方向下流側に設けられている。定着装置26は、定着部材26Aと、定着部材26Aに接触して配置される加圧部材26Bと、を有し、定着部材26Aと加圧部材26Bとの接触部で記録媒体30A上に転写されたトナー画像を定着する。具体的には、例えば、定着装置26は、画像形成装置10に設けられた制御装置36に電気的に接続されており、制御装置36により駆動制御されて、記録媒体30A上に転写されたトナー画像を熱及び圧力によって記録媒体30Aに定着する。
【0165】
定着装置26としては、それ自体公知の定着器、例えば熱ローラ定着器、オーブン定着器等が挙げられる。
具体的には、例えば、定着装置26は、定着部材26Aとして、定着ロール又は定着ベルトと、加圧部材26Bとして、加圧ロール又は加圧ベルトとを備える周知の定着装置が適用される。
【0166】
ここで、搬送経路34に沿って搬送されて感光体12と転写部材20との向かい合う領域(転写領域32A)を通過することによりトナー画像を転写された記録媒体30Aは、例えば、図示を省略する搬送部材によってさらに搬送経路34に沿って定着装置26の設置位置に到り、記録媒体30A上のトナー画像の定着が行われる。
【0167】
トナー画像の定着によって画像形成された記録媒体30Aは、図示を省略する複数の搬送部材によって画像形成装置10の外部へと排出される。
【0168】
[画像形成装置の動作]
本実施形態に係る画像形成装置10の動作の一例について説明する。なお、画像形成装置10の各種動作は、制御装置36において実行する制御プログラムにより行われる。
【0169】
画像形成装置10の画像形成動作について説明する。
まず、感光体12の表面が帯電装置15により帯電される。静電荷像形成装置16は、帯電された感光体12の表面を画像情報に基づいて露光する。これにより、感光体12上に画像情報に応じた静電荷像が形成される。現像装置18では、トナーを含む現像剤により、感光体12の表面に形成された静電荷像が現像される。これにより、感光体12の表面に、トナー画像が形成される。また、現像装置18に収容される現像剤(そのトナー)には脂肪酸金属塩の粒子が添加されており、感光体12の表面にはトナーと共に脂肪酸金属塩の粒子も供給される。
転写装置31では、感光体12の表面に形成されたトナー画像が記録媒体30Aへ転写される。記録媒体30Aに転写されたトナー画像は、定着装置26により定着される。
一方、トナー画像を転写した後の感光体12の表面が、クリーニング装置22におけるクリーニングブレード22Aによりクリーニング(清掃)される。なお、現像装置18において感光体12表面に供給された脂肪酸金属塩の粒子の一部は、転写装置31によるトナー画像の転写後にも感光体12表面に残り、クリーニングブレード22Aと感光体12との接触位置に供給される。
そのため、クリーニングブレード22Aと感光体12との接触位置に脂肪酸金属塩が介在することで、クリーニングブレード22Aによる高い清掃性能が発揮される。
【実施例0170】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0171】
<実施例1>
(下引層の形成)
酸化亜鉛(平均粒子径70nm:テイカ社製:比表面積値15m/g)100質量部をトルエン500質量部と攪拌混合し、シランカップリング剤(KBM503:信越化学工業社製)1.3質量部を添加し、2時間攪拌した。その後トルエンを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面処理を施した酸化亜鉛を得た。表面処理を施した酸化亜鉛110質量部を500質量部のテトラヒドロフランと攪拌混合し、アリザリン0.6質量部を50質量部のテトラヒドロフランに溶解させた溶液を添加し、50℃にて5時間攪拌した。その後、減圧ろ過にてアリザリンを付与させた酸化亜鉛をろ別し、更に60℃で減圧乾燥を行い、アリザリンを付与させた酸化亜鉛を得た。
このアリザリンを付与させた酸化亜鉛:60質量部と、硬化剤(ブロック化イソシアネート、スミジュール3175、住友バイエルンウレタン社製):13.5質量部と、ブチラール樹脂(エスレックBM-1、積水化学工業社製):15質量部と、をメチルエチルケトン85質量部に混合した液38質量部とメチルエチルケトン:25質量部とを混合し、直径1mmφのガラスビーズを用いてサンドミルにて2時間の分散を行い、分散液を得た。得られた分散液に触媒としてジオクチルスズジラウレート:0.005質量部、及びシリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製):40質量部を添加し、下引層形成用塗布液を得た。この下引層形成用塗布液を浸漬塗布法にて表1に示す肉厚のアルミニウムの導電性基材上に塗布し、170℃、40分の乾燥硬化を行い、厚さ18μmの下引層を得た。
【0172】
(電荷発生層の形成)
電荷発生材料として、Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.5゜、16.3゜、25.0゜、28.3゜の位置に回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンを用意した。ヒドロキシガリウムフタロシアニン15質量部、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニ
カー社製)10質量部及びn-酢酸ブチル200質量部を混合した混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散した。得られた分散液にn-酢酸ブチル175質量部及びメチルエチルケトン180質量部を添加し、攪拌して電荷発生層形成用の塗布液を得た。この塗布液を下引層上に浸漬塗布し、150℃下で10分間乾燥して、厚さ0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0173】
(電荷輸送層の形成)
電荷輸送剤(HT-1)38質量部と、電荷輸送剤(HT-2)10質量部と、ポリカーボネート(A)(粘度平均分子量4.8万)52質量部とをテトラヒドロフラン800質量部に加えて溶解し、電荷輸送層形成用の塗布液を得た。この塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、140℃下で40分間乾燥して、厚さ11μmの電荷輸送層を形成した。
【0174】
【化8】
【0175】
【化9】
【0176】
(表面有機保護層の形成)
反応性基及び電荷輸送性骨格を同一分子内に有する反応性基含有電荷輸送材料を含む組成物の熱硬化膜で構成される表面有機保護層を以下のようにして形成した。
【0177】
下記に示す反応性基含有電荷輸送材料である構造式で表される化合物(2)70質量部、下記に示す反応性基含有電荷輸送材料である構造式で表される化合物(3)15質量部、及び反応性基含有非電荷輸送材料である硬化性樹脂:ベンゾグアナミン樹脂(三和ケミカル社製ニカラックBL-60;既述の(H)-17)4.4質量部を、2-プロパノー
ル220質量部に加え、混合して溶解させた後、硬化触媒としてNACURE5225(キングインダストリー社製)0.1部質量を加えて、表面有機保護層形成用塗布液を得た。
この表面有機保護層形成用塗布液を電荷輸送層の上に浸漬塗布し、室温(25℃)で30分風乾した後、窒素気流下、酸素濃度110ppmで、室温から表1に示す加熱温度(到達温度)まで加熱し、これを表1に示す加熱時間(保持時間)で保持して加熱処理し、硬化させた。そして、膜厚が7μmの表面有機保護層を形成した。
【0178】
【化10】
【0179】
以上の工程を経て、感光体を得た。
【0180】
<実施例2~12、比較例1>
表2に従って、下引層、及び電荷輸送層の厚さを変更した以外は、実施例1と同様にして、各例の感光体を得た。
【0181】
<電荷輸送層能ヤング率の測定>
各例の感光体の、電荷輸送層能ヤング率を既述の方法に従って測定した。
【0182】
<評価>
各例の感光体を、画像形成装置(富士フイルムビジネスイノベーション社製「DocuCentreVC2263」)に装着した。なお、画像形成装置における、帯電ロールに印加する直流電圧を-900V(感光体の表面電位が絶対値で400Vとなる電圧)に設定した。
この画像形成装置を用いて、次の評価を実施した。
【0183】
(表面有機保護層の欠陥評価)
A4紙に、濃度30%のハーフトーン画像を、700,000枚出力した。その後、装置から感光体を取り出し、表面有機保護層の剥がれ度合について評価した。評価基準は、次の通りである。
A: 剥がれ無し
B: 剥がれたように見える(30μm未満の剥がれ)が、実使用上問題ない
C: 剥がれた欠陥(30μm以上100μm以下の剥がれ)があり、実使用上問題となる。
D: 剥がれた欠陥(100μm以上の剥がれ)があり、実使用上問題となる。
【0184】
(電流リーク(つまり電流漏れ)の評価)
電流漏れは、次の通り評価した。
プロセスカートリッジの帯電ロールに、帯電電圧1.5kVをかけて30min経過した際に、感光体にリーク(感光層1点に放電し、ピンホールが空く)の発生有無を確認した。評価基準は、次の通りである。
A: リーク無
B: リーク有
【0185】
(カーボンファイバーリーク(つまり針状異物の突き刺さりによる電流漏れ)の評価)
カーボンファイバーリークは、次の通り評価した。
現像剤にカーボンファイバー(平均径7μm、平均長50μmのカーボンファイバー)を濃度0.1質量%になる量混ぜ、濃度20%の画像をA4紙で2万枚連続出力した。次いで、濃度20%の画像をA4紙で10枚出力した。10枚目の画像における点状の画像欠陥の有無を目視で観察し、画像欠陥の程度を下記のA~Cに分類した。評価基準は、次の通りである。
A 点状の画像欠陥がない。
B 点状の画像欠陥が15個未満で、実使用許容できる。
C 点状の画像欠陥が15個以上で、実使用上問題となる
【0186】
【表1】
【0187】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制されることがわかる。
また、本実施例では、下引層及び電荷輸送層の厚さを適切な範囲に制御すると、電流リーク(つまり電流漏れ)、及びカーボンファイバーリーク(つまり針状異物の突き刺さりによる電流漏れ)も抑制されることがわかる。
【0188】
本実施形態は、下記態様を含む。
(((1)))
導電性基体と、
前記導電性基体上に設けられた下引層と、
前記下引層上に設けられた電荷発生層と、
前記電荷発生層上に設けられた電荷輸送層と、
前記電荷輸送層上に設けられた表面有機保護層と、
を有し、
前記電荷輸送層のヤング率が、5500MPa以上である電子写真感光体。
(((2)))
前記電荷輸送層のヤング率が、5800MPa以上である(((1)))に記載の電子写真感光体。
(((3)))
前記電荷輸送層の厚さが、9μm以上18μm以下である(((1)))又は(((2)))に記載の電子写真感光体。
(((4)))
前記電荷輸送層の厚さが、9μm以上15μm以下である(((3)))に記載の電子写真感光体。
(((5)))
前記下引層の厚さが、19μm以上31μm以下である(((1)))~(((4)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
(((6)))
前記下引層の厚さが、19μm以上24μm以下である(((5)))に記載の電子写真感光体。
(((7)))
前記電荷輸送層の厚さと前記下引層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記下引層の厚さ)が、9/31以上18/19以下である(((1)))~(((6)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
(((8)))
前記電荷輸送層の厚さと前記下引層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記下引層の厚さ)が、9/24以上15/19以下である(((7)))に記載の電子写真感光体。
(((9)))
前記表面有機保護層の厚さが、9μm以上15μm以下であり、
前記電荷輸送層の厚さが、19μm以上24μm以下であり、
前記電荷輸送層の厚さと前記表面有機保護層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記表面有機保護層の厚さ)が、9/24以上15/19以下である(((1)))~(((8)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
(((10)))
(((1)))~(((9)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体を備え、
画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジ。
(((11)))
(((1)))~(((9)))のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電した前記電子写真感光体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成装置と、
トナーを含む現像剤により、前記電子写真感光体の表面に形成された静電荷像を現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、
を備える画像形成装置。
【0189】
上記態様の効果は、次の通りである。
(((1)))に係る発明によれば、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられた電荷輸送層と、電荷輸送層上に設けられた表面有機保護層と、を有する電子写真感光体において、電荷輸送層のヤング率が、5500MPa未満である場合に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制される電電子写真感光体が提供される。
(((2)))に係る発明によれば、電荷輸送層のヤング率が、5800MPa未満である場合に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0190】
(((3)))に係る発明によれば、電荷輸送層の厚さが9μm未満又は18μm超えである場合に比べ、帯電時の電流漏れ、及び表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、電荷輸送層の厚さが9μm未満又は15μm超えである場合に比べ、帯電時の電流漏れ、及び表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
(((5)))に係る発明によれば、下引層の厚さが19μm未満又は31μm超えである場合に比べ、針状異物の突き刺さりによる電流漏れ、及び表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
(((6)))に係る発明によれば、下引層の厚さが19μm未満又は24μm超えである場合に比べ、針状異物の突き刺さりによる電流漏れ、及び表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0191】
(((7)))に係る発明によれば、電荷輸送層の厚さと前記下引層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記下引層の厚さ)が、9/31未満又は18/19超えである場合に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
(((8)))に係る発明によれば、電荷輸送層の厚さと前記下引層の厚さとの比(前記電荷輸送層の厚さ/前記下引層の厚さ)が、9/24未満又は15/19超えである場合に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0192】
(((9)))に係る発明によれば、表面有機保護層の厚さが9μm未満若しくは15μm超え、電荷輸送層の厚さが19μm未満若しくは24μm超え、又は電荷輸送層の厚さと前記表面有機保護層の厚さとの比(電荷輸送層の厚さ/表面有機保護層の厚さ)が9/24未満若しくは15/19超えである場合に比べ、帯電時の電流漏れ、針状異物の突き刺さりによる電流漏れ、及び表面有機保護層の欠陥が抑制される電子写真感光体が提供される。
【0193】
(((10)))、又は(((11)))に係る発明によれば、導電性基体と、導電性基体上に設けられた下引層と、下引層上に設けられた電荷発生層と、電荷発生層上に設けられた電荷輸送層と、電荷輸送層上に設けられた表面有機保護層と、を有する電子写真感光体において、電荷輸送層のヤング率が、5500MPa未満である電子写真感光体を備える場合に比べ、表面有機保護層の欠陥が抑制される電電子写真感光体を備えるプロセスカートリッジ、又は画像形成装置が提供される。
【符号の説明】
【0194】
10 画像形成装置
12 感光体
14 接触方式の帯電部材
15 帯電装置
16 静電荷像形成装置
18 現像装置
20 転写部材
22 クリーニング装置
22A クリーニングブレード
26 定着装置
30A 記録媒体
31 転写装置
36 制御装置
図1