(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137534
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】圧力容器
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20240927BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F17C13/00 301Z
F16J12/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049086
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 功次郎
(72)【発明者】
【氏名】横井 孝明
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB04
3E172BA01
3E172BB05
3E172BC01
3E172BC04
3E172BC07
3E172BC08
3E172BD03
3E172DA90
3E172KA02
3J046AA14
3J046BA03
3J046BD09
3J046CA04
3J046EA02
(57)【要約】
【課題】口金での金型中芯との干渉を防止して、金型中芯の傷がライナに転写されるのを回避すること。
【解決手段】圧力容器は、ガスを貯蔵可能な内部空間を形成し、軸方向端に開口が設けられた筒状のライナと、ライナの軸方向端側に配置され、内部空間を外部に連絡すると共に開口が位置する流路貫通孔を有し、ライナと一体化される口金と、流路貫通孔に挿嵌されるバルブと、ライナの流路貫通孔内に位置する筒状部位とバルブとの間をシールするシール部材と、を備える。ライナ及び口金における流路貫通孔回りの内壁面は、流路貫通孔へのバルブの挿入方向に沿って広がり、シール部材が配置されるストレート面部と、ストレート面部の挿入方向の手前側端に連続し、ストレート面部の手前側端から挿入方向とは異なる径方向外側に向けて傾斜して広がる傾斜面部と、を有する。ライナと口金との継目は、傾斜面部に形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを貯蔵可能な内部空間を形成し、軸方向端に開口が設けられた筒状のライナと、
前記ライナの軸方向端側に配置され、前記内部空間を外部に連絡すると共に前記開口が位置する流路貫通孔を有し、前記ライナと一体化される口金と、
前記流路貫通孔に挿嵌されるバルブと、
前記ライナの前記流路貫通孔内に位置する筒状部位と前記バルブとの間をシールするシール部材と、
を備え、
前記ライナ及び前記口金における前記流路貫通孔回りの内壁面は、
前記流路貫通孔への前記バルブの挿入方向に沿って広がり、前記シール部材が配置されるストレート面部と、
前記ストレート面部の前記挿入方向の手前側端に連続し、前記ストレート面部の前記手前側端から前記挿入方向とは異なる径方向外側に向けて傾斜して広がる傾斜面部と、
を有し、
前記ライナと前記口金との継目は、前記傾斜面部に形成されている、圧力容器。
【請求項2】
前記流路貫通孔に前記バルブが挿嵌された状態で前記ライナと前記口金と前記バルブとに囲まれる隙間空間を備え、
前記傾斜面部は、前記隙間空間を区画する面の一部をなし、
前記ライナの一部は、前記隙間空間に露出している、請求項1に記載された圧力容器。
【請求項3】
前記ライナは、インサート成形により前記口金に一体化された樹脂ライナである、請求項1又は2に記載された圧力容器。
【請求項4】
請求項1に記載された圧力容器を製造する方法であって、
前記ストレート面部に対応する金型ストレート面と前記傾斜面部に対応する金型傾斜面とが径方向外面に設けられた金型中芯が前記流路貫通孔に挿入され、前記金型傾斜面の一部が前記口金の前記傾斜面部に当接され、前記ライナの形状に対応する空洞が形成される第一工程と、
前記金型傾斜面の前記挿入方向の手前側が前記口金の前記傾斜面部に当接された状態で、前記ライナの材料が前記空洞に流し込まれ、前記金型傾斜面の他部に接した前記ライナが形成される第二工程と、
前記金型中芯が前記流路貫通孔から抜かれる第三工程と、
を備える、圧力容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを高圧で充填することが可能な圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などに搭載されて水素ガスや天然ガスなどのガスを高圧で充填することが可能な圧力容器(例えば、特許文献1)が知られている。特許文献1記載の圧力容器は、容器本体である筒状のライナと、ライナの軸方向両端側それぞれに配置され、軸方向に貫通する流路貫通孔を有する口金と、流路貫通孔に挿嵌されるバルブと、口金とバルブとの間をシールするシール部材と、を備えている。
【0003】
特許文献1記載の圧力容器において、口金における流路貫通孔回りの内壁面は、軸方向に沿って広がるストレート面部を有し、このストレート面部にはシール部材が接して配置される。バルブは、口金に設けられた流路貫通孔にねじ込まれて口金に組み付けられる。シール部材は、口金におけるストレート面部とバルブの外面とに挟持されることにより口金とバルブとの間のシール性を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の如くシール部材が口金とバルブとの間をシールする構造に代えて、ライナをバルブのシール箇所まで延ばしたうえで、シール部材がライナとバルブとの間をシールする構造が考えられる。このシール構造において、ライナのシール面は、ライナの軸方向に沿って広がる内面である。この場合において、ライナと口金との接合面が外部に露出する継目が、ライナのシール面と同じ軸方向に沿った面上に設定されているものとすると、ライナのシール箇所よりも軸方向手前側に、口金の内壁面の一部がそのシール面と略同じ径方向位置で存在することになる。この構造では、例えばインサート成形時などの口金の流路貫通孔に金型中芯が挿入される過程でその挿入完了前に、その金型中芯がシール箇所よりも軸方向手前側で口金に干渉してその金型中芯の外面が傷つく可能性がある。
【0006】
上記の如く金型中芯の外面が傷ついたままその金型中芯の挿入が終了してライナの成形が進行すると、その金型中芯の傷が、成形されるライナに転写されることとなる。このため、ライナと口金との継目が、ライナのシール面部と同じ軸方向に沿った面上に設定されている構造では、ライナの特にシール部分に金型中芯の傷に起因する無用な隙間が形成される可能性があり、その結果として、シール部材によるシール性能が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、口金での金型中芯との干渉を防止して、金型中芯の傷がライナに転写されるのを回避することが可能な圧力容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ガスを貯蔵可能な内部空間を形成し、軸方向端に開口が設けられた筒状のライナと、前記ライナの軸方向端側に配置され、前記内部空間を外部に連絡すると共に前記開口が位置する流路貫通孔を有し、前記ライナと一体化される口金と、前記流路貫通孔に挿嵌されるバルブと、前記ライナの前記流路貫通孔内に位置する筒状部位と前記バルブとの間をシールするシール部材と、を備え、前記ライナ及び前記口金における前記流路貫通孔回りの内壁面は、前記流路貫通孔への前記バルブの挿入方向に沿って広がり、前記シール部材が配置されるストレート面部と、前記ストレート面部の前記挿入方向の手前側端に連続し、前記ストレート面部の前記手前側端から前記挿入方向とは異なる径方向外側に向けて傾斜して広がる傾斜面部と、を有し、前記ライナと前記口金との継目は、前記傾斜面部に形成されている、圧力容器である。
【0009】
この構成によれば、口金での金型中芯との干渉を防止して、金型中芯の傷がライナに転写されるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圧力容器の構成図である。
【
図2】一実施形態の圧力容器の要部の断面図である。
【
図4】
図2に示す圧力容器の要部の、バルブが流路貫通孔に挿嵌されていない状態での断面図である。
【
図5】
図2に示す圧力容器の要部の、バルブが流路貫通孔に挿嵌されている状態での断面図である。
【
図6】
図2に示す圧力容器の要部の、金型中芯が流路貫通孔に挿入されかつライナの材料が流し込まれる前の状態での断面図である。
【
図7】
図2に示す圧力容器の要部の、金型中芯が流路貫通孔に挿入されかつライナの材料が流し込まれた後の状態での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1-
図7を用いて、本発明に係る圧力容器の実施形態について説明する。
【0012】
一実施形態に係る圧力容器1は、ガスを貯蔵しかつその貯蔵したガスを放出するための容器である。圧力容器1は、貯蔵するガスを例えば燃料にして走行する車両などに搭載される。尚、圧力容器1が貯蔵するガスは、何れの種類のガスであってもよいが、水素ガスや天然ガス等の燃料ガスであることが好適である。また、圧力容器1が貯蔵可能なガスの圧力は、何れであってもよいが、高圧(例えば100MPaなど)であってもよい。すなわち、圧力容器1は、耐圧容器であってよい。
【0013】
圧力容器1は、
図1-
図7に示す如く、ライナ10と、口金20と、バルブ40(
図5参照)と、シール部材50と、隙間空間60と、補強層70と、を備えている。尚、
図1においては、圧力容器1の上部を断面図で、圧力容器1の下部を側面図で、それぞれ示している。また、
図3においては、ライナ10を半透明で示している。
【0014】
ライナ10は、ガスを貯蔵するための容器本体である。ライナ10は、筒状に形成されている。ライナ10内には、内部空間11が形成されている。すなわち、ライナ10は、内部空間11を内包している。ライナ10は、例えば、内部空間11でガスの圧力が均一に分散するように円筒状に形成されている。ライナ10は、軸の延びる方向(軸方向C)に延在している。尚、ライナ10は、円筒状に代えて正多角形筒状に形成されていてもよい。
【0015】
ライナ10は、軸方向C中央部において略同径になるようにかつ軸方向C両端部において軸方向C中央側から軸方向C端側にかけて縮径するように形成されている。以下適宜、略同径となるライナ10の軸方向C中央部を円筒部10aと、縮径するライナ10の軸方向C端部をドーム部10bと、それぞれ称す。
【0016】
内部空間11は、所定量のガスを貯蔵可能な容量を有している。ライナ10は、内部空間11に貯蔵されたガスを透過しない或いは透過し難いガスバリア性を有する材料により構成されている。尚、ライナ10の材料は、圧力容器1の使用環境等に応じて選択されればよい。
【0017】
例えば、ガスが水素であるときは、ライナ10の材料は、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等である。尚、ライナ10の内部は、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のガスバリア性に優れる材料でコートされていてもよい。また、圧力容器1が住宅用に用いられるときなど、圧力容器1の質量が大きくてもよいときは、ライナ10の材料は、アルミニウムやステンレススチール等の金属材料であってもよい。
【0018】
尚、ライナ10は、複数の分体により形成されていてよく、それら複数の分体が溶着や溶接などにより接続されて一体化されることにより形成されていてよい。例えばライナ10は、一つの円筒状の円筒分体と二つのドーム状のドーム分体とにより形成されていてよい。この場合、ライナ10は、軸方向C一端側から軸方向C他端側にかけて一方のドーム分体→円筒分体→他方のドーム分体の順に分体が並んだ状態で構成されていてよい。
【0019】
ライナ10は、開口12を有している。開口12は、ライナ10(具体的には、ドーム部10b)の軸方向C両端それぞれに設けられている。ドーム部10bは、口金20の後述するフランジ部22に対向して接していると共に、口金20の後述するボス部21に対向して接している。開口12は、口金20の後述するボス部21の内側に位置しており、例えば円形状に形成されている。
【0020】
口金20は、ライナ10内側の内部空間11と外部との間でガスを出入りさせる部材である。すなわち、口金20は、ライナ10の外部から内部空間11へのガスの導入に用いられると共に、内部空間11からライナ10の外部へのガスの放出に用いられる。口金20は、ライナ10の軸方向C端側に配置されている。口金20は、剛性確保などのため例えばアルミニウムやステンレススチール等の金属により形成されている。口金20は、ボス部21と、フランジ部22と、を有している。
【0021】
ボス部21は、軸方向Cに延在する筒状に形成された軸部位である。ボス部21は、例えば円柱状に形成されている。ボス部21は、流路貫通孔21aを有している。流路貫通孔21aは、ライナ10の内部空間11を外部に連通させる通路である。流路貫通孔21aは、断面が例えば円形となる形状に形成されている。流路貫通孔21aは、ボス部21の軸心部に設けられており、軸方向Cに沿って貫通している。流路貫通孔21aは、バルブ40が挿嵌されてガス導入時及びガス放出時にガスが流れる流路となる。
【0022】
尚、圧力容器1は、軸方向両側の口金20のうち双方でガスを出し入れさせるものであってもよいし、或いは、それら二つの口金20の何れか一方だけでガスを出し入れさせると共に他方に栓が装着されたものであってもよい。
【0023】
フランジ部22は、ボス部21から径方向外側に延びる部位である。フランジ部22は、ボス部21の全周に亘って形成されており、例えば円盤状に形成されている。フランジ部22の径方向外端の形状は、例えば円形である。フランジ部22は、ボス部21に一体成形されている。尚、フランジ部22は、ボス部21側から径方向外側にかけてライナ10のドーム部10bの外面に沿うように湾曲していてもよい。
【0024】
ライナ10と口金20とは、厚さ方向で互いに重なる部位を有している。具体的には、口金20は、ライナ10のドーム部10bに対して厚さ方向に重なる重なり部23を有している。口金20の重なり部23は、
図1及び
図3に示す如く、口金20のフランジ部22及びボス部21を含む。尚、重なり部23は、ボス部21を含まず、フランジ部22の一部又は全部だけであってもよい。
【0025】
ライナ10は、インサート成形により口金20に一体化されている。ライナ10は、例えば、インサート成形により口金20に一体化された樹脂ライナである。尚、ライナ10が複数の分体により形成される構造では、軸方向両側それぞれの口金20にライナ10の各分体がインサート成形により一体化され、その後に、両ライナ分体が溶着などで接続されてよい。また、ライナ10が唯一つの構造体により形成される構造では、軸方向両側の口金20に一つのライナ10がインサート成形により一体化されてよい。
【0026】
ライナ10のドーム部10bは、口金20のフランジ部22よりも軸方向C中央側を通りかつ口金20のボス部21の流路貫通孔21a回りの内壁面よりも軸心側を通って連続しており、ボス部21の軸方向C中間部辺りまで至っている。ライナ10の開口12は、口金20のボス部21の軸方向C中間部(すなわち、流路貫通孔21a)に位置している。
【0027】
ドーム部10bは、口金20の流路貫通孔21aに対応する筒状部位13を有している。筒状部位13は、口金20とライナ10とが互いに一体化された状態で流路貫通孔21a内に位置する部位のことである。筒状部位13は、口金20における流路貫通孔21a回りの内壁面に接するように、径方向外面が例えば円形となる形状に形成されている。筒状部位13は、ボス部21における流路貫通孔21a回りの内壁面の一部である軸方向C奥側のみに径方向で対向して接合している。
【0028】
筒状部位13には、口金20の流路貫通孔21aと一体となる流路貫通孔13aが形成されている。流路貫通孔13aは、断面が例えば円形となる形状に形成されている。流路貫通孔13aは、口金20の流路貫通孔21aのうち筒状部位13の配置されていない軸方向C手前側に連通して、その流路貫通孔21aと一体となってライナ10の内部空間11を外部に連通させる通路となる。流路貫通孔13a,21aは、互いに一体化されたライナ10及び口金20を軸方向Cに貫通する。
【0029】
ライナ10及び口金20における流路貫通孔13a,21a回りの内壁面は、第一ストレート面部31と、傾斜面部32と、第二ストレート面部33と、を有している。第一ストレート面部31、傾斜面部32、及び第二ストレート面部33は、流路貫通孔13a,21aの軸方向C奥側から軸方向C手前側にかけてその順に連続して設けられている。第一ストレート面部31、傾斜面部32、及び第二ストレート面部33は、軸心回りに環状に形成されている。
【0030】
第一ストレート面部31は、流路貫通孔13a,21aへのバルブ40の挿入方向(具体的には、軸方向C)に沿って広がる壁面である。第一ストレート面部31は、流路貫通孔13a,21aの軸方向C奥側に設けられている。第一ストレート面部31は、ライナ10の筒状部位13に形成されている。
【0031】
図5に示す如く、第一ストレート面部31には、シール部材50が配置される。シール部材50は、ライナ10の筒状部位13とバルブ40との間をシールする部材である。シール部材50は、ライナ10の内部空間11から外部へのガスの漏出を防止するために設けられている。シール部材50は、ライナ10の筒状部位13の流路貫通孔13a回りの内壁面とバルブ40の径方向外面とに径方向で挟まれるように環状に形成されている。シール部材50は、例えばOリングである。
【0032】
尚、シール部材50は、バルブ40の径方向外面(具体的には、後述の小径面部43のストレート部位43b)に径方向内側へ凹んで形成されたシール溝41に嵌るように配置されていてよい。そして、シール部材50は、シール溝41にそのシール部材50が配置されたバルブ40が、互いに一体化されたライナ10及び口金20の流路貫通孔13a,21aに挿入される際に、ライナ10とバルブ40との間に介在するものとすればよい。
【0033】
傾斜面部32は、第一ストレート面部31の軸方向C手前側端からバルブ40の挿入方向とは異なる径方向外側に向けて傾斜して広がる壁面である。具体的には、傾斜面部32は、流路貫通孔13a,21aの軸方向C手前側から軸方向C奥側にかけて径方向内側に傾斜して広がっている。傾斜面部32は、
図4に示す如く、軸方向Cに対して所定角度αをなしている。所定角度αは、例えば10°~30°の範囲内であって、好ましくは20°程度である。
【0034】
傾斜面部32は、流路貫通孔13a,21aの軸方向C中間部、すなわち、第一ストレート面部31よりも流路貫通孔13a,21aの軸方向C手前側に設けられている。傾斜面部32は、第一ストレート面部31の軸方向C手前側端に連続しており、ライナ10の筒状部位13及び口金20のボス部21に形成されている。傾斜面部32には、ライナ10と口金20との境界面である接合面が隙間空間60に露出する継目Pが形成されている。
【0035】
第二ストレート面部33は、流路貫通孔13a,21aへのバルブ40の挿入方向(具体的には、軸方向C)に沿って広がる壁面である。第二ストレート面部33は、流路貫通孔13a,21aの軸方向C手前側に設けられている。第二ストレート面部33は、傾斜面部32の軸方向C手前側端に連続しており、口金20のボス部21に形成されている。第二ストレート面部33の径方向位置は、第一ストレート面部31の径方向位置よりも径方向外側である。
【0036】
口金20における流路貫通孔21a回りの内壁面は、流路貫通孔21aの軸方向C手前側から軸方向C奥側にかけて第二ストレート面部33と傾斜面部32と接合面部29とがその順に連続して一体化するように形成されている。接合面部29は、ライナ10の筒状部位13の径方向外面が接するように対向する面である。尚、接合面部29は、軸方向Cに沿って広がっていてもよいし、また、軸方向Cに対して傾斜していてもよい。また、接合面部29は、傾斜面部32側の部位において流路貫通孔13a,21aの軸方向C手前側から軸方向C奥側にかけて径方向外側に傾斜して広がる壁面を有していてもよい。
【0037】
筒状部位13の径方向外面は、口金20の接合面部29に接するように対向する面である。ライナ10の径方向外面は、接合面部29の形状に合わせて形成されている。ライナ10(具体的には、筒状部位13)における流路貫通孔13a回りの内壁面は、流路貫通孔13aの軸方向C手前側から軸方向C奥側にかけて傾斜面部32と第一ストレート面部31とがその順に連続して一体化するように形成されている。
【0038】
図4に示す如く、ライナ10の筒状部位13は、所定の径方向厚さtを有している。所定の径方向厚さtは、例えば0.5mm~2mmの範囲内であって、好ましくは1mm程度である。筒状部位13の傾斜面部32は、口金20の傾斜面部32と同様に軸方向Cに対して所定角度αをなしており、所定の径方向幅wを有している。また、所定の径方向幅wは、例えば0.1mm~0.5mmの範囲内である。尚、筒状部位13は、所定の径方向幅wが所定の径方向厚さt以下であるように形成されていることが好ましい。また、筒状部位13は、径方向厚さtが一定であるように形成されていてもよいが、径方向厚さtが軸方向C部位に応じて変化するように形成されていてもよい。
【0039】
バルブ40は、口金20の流路貫通孔21a及びライナ10の流路貫通孔13aに挿嵌される部材である。バルブ40は、圧力容器1の内部空間11の内部側と外部側との間におけるガスの流れを制御する機能を有している。バルブ40は、流路貫通孔13a,21aを開閉させ、内部空間11へのガスの導入と内部空間11でのガスの保持と内部空間11からのガスの排出との状態切り替えを行うべく開閉動作する。
【0040】
バルブ40は、径方向外面が流路貫通孔13a,21aに対応した形状になるように筒状に形成されている。バルブ40は、軸方向C手前側で口金20のボス部21の流路貫通孔21a回りの内壁面のうち軸方向C手前側に接していると共に、軸方向C奥側でライナ10の筒状部位13の流路貫通孔13a回りの内壁面に接している。バルブ40の径方向外面は、大径面部42と、小径面部43と、を有している。大径面部42及び小径面部43は、軸方向C手前側から軸方向C奥側にかけてその順に連続して設けられている。大径面部42及び小径面部43は、軸心回りに環状に形成されている。
【0041】
大径面部42は、径方向位置が径方向外側にある部位のことである。大径面部42は、軸方向Cに沿って広がっている。大径面部42は、第二ストレート面部33に対向して接しており、口金20のボス部21の流路貫通孔21aに嵌る。小径面部43は、径方向位置が大径面部42の径方向位置よりも径方向内側にある部位のことである。
【0042】
小径面部43は、傾斜部位43aと、ストレート部位43bと、を有している。傾斜部位43aは、バルブ40の軸方向C手前側において軸方向C手前側から軸方向C奥側にかけて径方向内側に傾斜して広がっている。傾斜部位43aは、傾斜面部32の軸方向C手前側の部位に対して径方向内側に離れて配置されている。ストレート部位43bは、バルブ40の軸方向C奥側において軸方向Cに沿って広がっている。ストレート部位43bは、傾斜面部32の軸方向C奥側の部位に対して径方向内側に離れて配置されていると共に、第一ストレート面部31に接するように対向している。
【0043】
尚、傾斜部位43aが軸方向Cに対してなす角度βは、口金20及びライナ10の傾斜面部32が軸方向Cに対してなす所定角度αよりも大きいことが好ましい。すなわち、α<β<90°が成立することが好ましい。また、小径面部43は、傾斜部位43aを有することなく、ストレート部位43bのみを有するものとしてもよい。
【0044】
バルブ40がライナ10及び口金20の流路貫通孔13a,21aに挿嵌された状態では、
図5に示す如く、流路貫通孔13a,21a内に隙間空間60が形成される。隙間空間60は、ライナ10と口金20とバルブ40とに囲まれる空間である。隙間空間60は、少なくとも傾斜面部32とバルブ40の小径面部43とにより区画されている。すなわち、傾斜面部32は、隙間空間60を区画する面の一部をなす。尚、隙間空間60は、傾斜面部32と第二ストレート面部33とバルブ40の小径面部43とにより区画されていてもよい。隙間空間60は、軸心回りに環状に形成されている。
【0045】
内部空間11は、ガス導入時にバルブ40を介してガス供給源に接続される。また、内部空間11は、ガス放出時にバルブ40を介してガスを燃料とするガス供給先に接続される。バルブ40は、ガス導入時及びガス放出時に流路貫通孔13a,21aを開放させ、一方、それ以外では流路貫通孔13a,21aを閉塞させる。
【0046】
尚、軸方向C両側の口金20同士は、シャフト部材を介して互いに接続されていてもよい。このシャフト部材は、ライナ10の内部空間11に配置されて軸方向Cに直線的に延在し口金20同士を連結する。
【0047】
口金20の重なり部23は、
図2及び
図3に示す如く、貫通孔24を有している。貫通孔24は、口金20の厚さ方向へ貫通する孔である。貫通孔24は、フランジ部22に形成されている。貫通孔24は、フランジ部22の径方向最外位置よりも径方向内側に設けられている。貫通孔24は、フランジ部22の厚さ方向である軸方向Cへ貫通している。貫通孔24は、例えば断面円形に形成されている。尚、貫通孔24は、断面円形に代えて断面多角形状に形成されていてもよい。
【0048】
尚、貫通孔24は、フランジ部22においてボス部21の軸心回りに複数設けられていることが好ましい。そして、複数の貫通孔24が設けられる場合は、貫通孔24が軸対称に配置されていることが好ましく、更に、貫通孔24が軸回りに等間隔に配置されていることが好ましい。
【0049】
ライナ10は、表側対向部14と、裏側対向部15と、孔挿入部16と、を有している。表側対向部14、裏側対向部15、及び孔挿入部16は、ドーム部10bに形成されている。
【0050】
表側対向部14は、口金20の重なり部23に対して表側に配置される部位である。表側対向部14は、重なり部23の表面に接するように対向している。表側対向部14は、口金20のフランジ部22の一部である径方向外端部に厚さ方向(具体的には、軸方向C)で対向している。裏側対向部15は、口金20の重なり部23に対して裏側に配置される部位である。裏側対向部15は、重なり部23の裏面に接するように対向している。裏側対向部15は、口金20のフランジ部22の全部及びボス部21の一部に厚さ方向で対向している。表側対向部14と裏側対向部15とは、口金20の重なり部23(具体的には、フランジ部22)を挟み込むように形成されている。
【0051】
口金20のフランジ部22は、ライナ10に対向する部位を有している。フランジ部22は、表側において軸心側を残して円環状に切り欠かれた形状に形成されている。フランジ部22は、ライナ10の表側対向部14の径方向内側端面14aに対向する環状壁面部25を有している。環状壁面部25は、フランジ部22の表側における貫通孔24の径方向位置よりも径方向内側の位置に配置されている。すなわち、貫通孔24は、フランジ部22における環状壁面部25の径方向位置よりも径方向外側の薄肉箇所に配置されている。環状壁面部25は、径方向外側に向いており、ボス部21の外面を囲うように環状に形成されている。
【0052】
ライナ10の表側対向部14は、環状壁面部25に径方向で対向する径方向内側端面14aを有している。径方向内側端面14aは、径方向内側に向いており、環状に形成されている。口金20のフランジ部22の環状壁面部25とライナ10の表側対向部14の径方向内側端面14aとは、互いに径方向で対向している。環状壁面部25の厚さ方向(具体的には、軸方向C)の厚さと径方向内側端面14aの厚さ方向(具体的には、軸方向C)の厚さとは、等しい。
【0053】
ライナ10の孔挿入部16は、口金20の貫通孔24に挿入される部位である。孔挿入部16は、貫通孔24に配置されており、口金20の貫通孔24回りの内壁面に嵌まっている。孔挿入部16は、表側対向部14と裏側対向部15との間で棒状に延びている。孔挿入部16は、貫通孔24に対応した形状(例えば、断面円柱状や断面多角柱状)に形成されている。
【0054】
尚、孔挿入部16ひいては貫通孔24については、口金20からライナ10への回転トルクの伝達を実現するうえでは体格が大きいことや数が多いことが好ましい。孔挿入部16は、表側対向部14及び裏側対向部15と一体化されている。孔挿入部16は、ライナ10と口金20とがインサート成形されることにより形成される。
【0055】
尚、口金20は、熱伝導材により形成されていてもよい。すなわち、口金20は、圧力容器1の温度調整のため、熱交換媒体が循環する熱交換器として機能してもよい。尚、軸方向両側の口金20が熱交換器として機能することが好適であるが、軸方向両側の口金20のうちの何れか一方が熱交換器として機能するものであってもよい。例えば、ガスの出入りが一方の口金20で行われる場合は、その口金20とは軸方向反対側の他方の口金20が熱交換器として機能してもよい。
【0056】
補強層70は、ライナ10の外面(すなわち、径方向外側に向いた面)を被覆してライナ10を補強する層である。補強層70は、線状や帯状の繊維状部材がライナ10の外面に巻回されることにより形成されている。尚、補強層70は、繊維状部材がフープ巻きされたフープ層や繊維状部材がヘリカル巻きされたヘリカル層であってよい。補強層70を構成する繊維状部材は、例えば、樹脂を含浸した高強度繊維(すなわち、FRP)であって、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等である。
【0057】
尚、補強層70は、繊維状部材が直接的にライナ10の外面に巻回されることに代えて、繊維状部材を用いてシート状に形成されたヘリカル層やフープ層がライナ10の外面に貼り付けられることにより形成されてもよい。また、補強層70は、繊維状部材に樹脂が含浸された状態で形成されてよく、例えば、ヘリカル層やフープ層の形成後に樹脂が加熱硬化されたものであってもよい。この繊維状部材に含浸される樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂などである。
【0058】
また、圧力容器1は、ライナ10内の内部空間11の全部や一部に、ガスを吸蔵可能かつ放出可能である貯蔵材を収容するものであってもよい。この貯蔵材の断面形状は、ライナ10の断面形状に合わせて例えば円形状や正六角形などの正多角形状であってよい。また、貯蔵材は、貯蔵対象のガスの種類に応じた材料により形成されてよく、この材料は、例えば、カーボンナノチューブ等の多孔性の炭素材料、多孔性の金属錯体(すなわちMOF)、ゼオライト、水素吸蔵合金、金属水素化物などであってよい。
【0059】
次に、圧力容器1を組み立てる製造手順の一例を説明する。圧力容器1の組み立て製造は、製造装置により後述の手順に従って行われる。
【0060】
上記の製造装置は、口金20とライナ10とをインサート成形するための金型と、その金型にインサート品としての口金20がセットされた状態でライナ10の樹脂材料などを流し込むゲートと、を有している。尚、このゲートは、口金20のボス部21における流路貫通孔21a回りの内壁面すなわちライナ10の筒状部位13を形成する部位近傍に設けられていることが好ましい。
【0061】
上記の金型は、口金20のボス部21の流路貫通孔21aに挿入される金型中芯(
図6及び
図7参照)80を有している。金型中芯80は、口金20のボス部21の流路貫通孔21a回りの内壁面にライナ10の筒状部位13を接合させるのに用いる金型である。金型中芯80は、径方向外面が第一ストレート面部31及び傾斜面部32に対応した形状になるように柱状又は筒状に延びている。
【0062】
金型中芯80の径方向外面には、金型ストレート面81と金型傾斜面82とが設けられている。金型ストレート面81及び金型傾斜面82は、軸方向C奥側から軸方向C手前側にかけてその順に連続して設けられている。金型ストレート面81及び金型傾斜面82は、軸心回りに環状に形成されている。金型ストレート面81は、第一ストレート面部31に対応しており、軸方向Cに沿って広がっている。金型傾斜面82は、傾斜面部32に対応しており、軸方向C手前側から軸方向C奥側にかけて径方向内側に傾斜して広がっている。金型傾斜面82が軸方向Cに対してなす角度は、傾斜面部32のなす所定角度αである。
【0063】
尚、
図6及び
図7に示す如く、金型中芯80の径方向外面には、第二金型ストレート面83が含まれてもよい。この第二金型ストレート面83は、軸方向Cに沿って広がっていてもよいし、或いは、軸方向Cに対して傾斜していてもよい。第二金型ストレート面83は、金型ストレート面81よりも軸方向C手前側かつ金型傾斜面82よりも軸方向C手前側に設けられている。第二金型ストレート面83の径方向位置は、金型ストレート面81の径方向位置よりも径方向外側である。但し、金型中芯80と口金20との干渉を避けるため、第二金型ストレート面83の径方向位置は、ボス部21の流路貫通孔21a回りの内壁面の径方向位置よりも径方向内側であるのが好適である。
【0064】
圧力容器1の組み立て製造では、まず、口金20とライナ10とがインサート成形されて互いに一体化される。具体的には、最初に、成形完了した口金20が準備されてその口金20が金型にセットされる。特に、金型中芯80が口金20のボス部21の流路貫通孔21aに軸方向C手前側から軸方向C奥側へ挿入され、金型中芯80の金型傾斜面82の一部である軸方向C手前側が口金20の傾斜面部32に当接される。
【0065】
上記の如く金型中芯80の金型傾斜面82が口金20の傾斜面部32に当接された状態では、ライナ10(特に、筒状部位13)の形状に対応する空洞90が形成される(
図6に示す状態;第一工程)。この空洞90は、口金20のボス部21と金型中芯80の金型ストレート面81とその金型傾斜面82の他部である軸方向C奥側とにより区画される空間である。尚、この空洞90は、口金20のフランジ部22と内部空間11内に配置される金型とにより区画される空間に連続して一体化されていてよい。
【0066】
上記の如く口金20が金型にセットされて空洞90が形成されると、次に、ゲートからその空洞90を含めた空間へライナ10の材料が流し込まれる。かかる流し込みが完了すると、金型傾斜面の他部である軸方向C奥側に接したライナ10が形成される(
図7に示す状態;第二工程)。そして、ライナ10が硬化され、その後、金型中芯80が流路貫通孔13a,21aから引き抜かれる(
図4に示す状態;第三工程)。これにより、口金20とライナ10とがインサート成形されて互いに一体化される。
【0067】
次に、口金20とライナ10とのインサート成形後、そのインサート成形されたサブアッシーに対して、フィラメントワインディング(FW)法でライナ10の外面に補強層70が被覆される。具体的には、ライナ10が一体化された軸方向C両側の口金20が軸回りに回転されながら、補強層70となる繊維状部材がライナ10の外面に巻回される。また、補強層70の被覆後又は被覆前において、バルブ40が流路貫通孔13a,21aに挿嵌される。これにより、圧力容器1は、組み立て製造される。
【0068】
尚、口金20のフランジ部22には軸方向Cへ貫通する貫通孔24が設けられており、その貫通孔24にはライナ10の孔挿入部16が挿入されている。この構造においては、口金20とライナ10とが径方向で対向する径方向端面部位の形状が、軸回りの相対回転を許容する円形であったとしても、口金20とライナ10との相対回転を規制することができる。このため、FW法による補強層70の被覆時において口金20を軸回りに回転させた回転トルクを十分にライナ10に伝達することができるので、FWにより補強層70をライナ10の外面に適切に被覆することができる。
【0069】
また、口金20とライナ10との相対回転を規制するうえで、口金20とライナ10とが径方向で対向する径方向端面部位の形状を凹凸構造とすることは不要であるので、口金20とライナ10とを一体で回転させるための形状や構造を簡素化することができる。従って、圧力容器1によれば、簡易な構造で口金20とライナ10との相対回転を規制することができ、これにより、加工費などの高騰を抑えて、製造コストの低減を図ることができる。
【0070】
次に、圧力容器1の動作及び作用について説明する。
組み立て製造が完了した圧力容器1においては、軸方向C両側のうち一方の口金20側の流路貫通孔21a,13aがバルブ40により閉じられた状態で他方の口金20側の流路貫通孔21a,13aを介してガスがライナ10の内部空間11へ供給されると、その内部空間11にガスが流入する。そして、内部空間11へのガス流入後、他方の流路貫通孔21a,13aがバルブ40により閉じられると、内部空間11にガスが充填される。
【0071】
また、圧力容器1へのガスの充填後は、例えば一方の流路貫通孔21a,13aがバルブ40により開放されると、内部空間11内のガスがその流路貫通孔21a,13aを介して外部に放出される。
【0072】
従って、圧力容器1によれば、内部空間11にガスを充填することができると共に、その充填したガスを外部に放出することができる。
【0073】
圧力容器1において、口金20は、ライナ10の内部空間11を外部に連絡する流路貫通孔21aを有している。この流路貫通孔21aには、ライナ10の開口12が位置しており、ライナ10は、口金20の流路貫通孔21a内に位置する筒状部位13を有している。流路貫通孔21aには、バルブ40が挿嵌されている。ライナ10の筒状部位13とバルブ40とは、シール部材50によりシールされている。ライナ10及び口金20における流路貫通孔21a回りの内壁面は、流路貫通孔13a,21aへのバルブ40の挿入方向(具体的には、軸方向C)に沿って広がり、シール部材50が配置される第一ストレート面部31と、第一ストレート面部31の軸方向C手前側端に連続し、第一ストレート面部31の軸方向C手前側端からバルブ40の挿入方向とは異なる径方向外側に向けて傾斜して広がる傾斜面部32と、を有する。そして、ライナ10と口金20との継目Pは、傾斜面部32に形成されている。
【0074】
この構成においては、ライナ10とバルブ40との間のシール面が第一ストレート面部31であると共に、ライナ10と口金20との継目Pが表出する面が傾斜面部32である。第一ストレート面部31は軸方向Cに沿って広がっている一方、傾斜面部32は軸方向Cに対して傾斜して広がっている。このため、ライナ10とバルブ40との間のシール面とライナ10と口金20との継目Pが表出する面とは、同一面でない。
【0075】
この構造によれば、流路貫通孔13a,21aにバルブ40が挿嵌された状態では、ライナ10と口金20との継目Pがバルブ40(具体的には、小径面部43のストレート部位43b)の径方向外面から径方向外側に離れたものとなる。また、ライナ10が口金20にインサート成形される直前は、シール部材50によるシール箇所よりも軸方向C手前側に、口金20のボス部21の流路貫通孔21a回りの内壁面がそのシール面と略同じ径方向位置で存在せず、そのボス部21の内壁面がシール面の径方向位置よりも径方向外側の径方向位置で存在することになる。この場合は、金型中芯80が流路貫通孔13a,21aに挿入された際に、金型中芯80(具体的には、金型ストレート面81)の径方向外面と口金20のボス部21の内壁面(具体的には、口金20における傾斜面部32の最内径部位)との間に径方向隙間が形成されることになる。
【0076】
この構成においては、金型中芯80が流路貫通孔13a,21aに挿入される過程で、その金型中芯80の金型ストレート面81が、口金20のボス部21の内壁面から径方向内側に離れた箇所を通過する。このため、金型中芯80の金型ストレート面81がシール箇所よりも軸方向手前側で口金20に干渉するのを防止することができる。
【0077】
上記の如く金型中芯80が口金20に干渉するのを防止できれば、金型中芯80の外面が傷つくのを防止することができ、金型中芯80の傷がライナ10に転写されるのを回避することができ、ライナ10の特にシール部分に金型中芯80の傷に起因する無用な隙間が形成されるのを回避することができる。従って、圧力容器1によれば、シール部材50がライナ10とバルブ40との間をシールする構造においてシール性能の低下を防止することができる。
【0078】
また、圧力容器1において、流路貫通孔13a,21aに金型中芯80が挿入された状態では、金型中芯80の径方向外面と口金20のボス部21の内壁面との間に径方向隙間が形成され、流路貫通孔13a,21aにバルブ40が挿嵌された状態では、ライナ10と口金20とバルブ40とに囲まれる隙間空間60が形成される。そして、傾斜面部32は、隙間空間60を区画する面の一部をなしており、ライナ10と口金20との継目Pひいてはライナ10の一部は、隙間空間60に露出している。
【0079】
この構成においては、ライナ10が樹脂ライナである場合、圧力容器1に例えば燃焼などが生じてそのライナ10を構成する樹脂が溶け出したときに、その溶け出した樹脂ひいては内部空間11内のガスを、隙間空間60に流入させその後に口金20のボス部21の流路貫通孔21a回りの内壁面とバルブ40の大径面部42との隙間から圧力容器1外へ放出させることが可能である。従って、口金20とバルブ40との間の隙間空間60に溶栓弁の役割を付与することができ、これにより、バルブ40自体に溶栓弁の機能を搭載させるのを不要とすることができる。
【0080】
ところで、上記の実施形態においては、第一ストレート面部31が特許請求の範囲に記載した「ストレート面部」に相当している。
【0081】
尚、上記の実施形態においては、ライナ10及び口金20の流路貫通孔13a,21aが軸方向Cに沿って貫通し、流路貫通孔13a,21aへのバルブ40の挿入方向が軸方向Cであるものとし、第一ストレート面部31が軸方向Cに沿って広がり、傾斜面部32が流路貫通孔13a,21aの軸方向C手前側から軸方向C奥側にかけて径方向内側に傾斜するものとしている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも、第一ストレート面部31が流路貫通孔13a,21aへのバルブ40の挿入方向に沿って広がり、傾斜面部32が第一ストレート面部31の挿入方向手前端からその挿入方向に対してその挿入方向とは異なる径方向外側に向けて傾斜するものとすればよい。
【0082】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。また、本明細書は、出願当初に各請求項に記載された引用関係で示される技術思想を開示するだけでなく、各請求項に記載された事項を適宜組み合わせた技術思想を開示するものである。
【符号の説明】
【0083】
1:圧力容器、10:ライナ、10a:円筒部、10b:ドーム部、11:内部空間、12:開口、13:筒状部位、13a:流路貫通孔、20:口金、21:ボス部、21a:流路貫通孔、22:フランジ部、23:重なり部、31:第一ストレート面部、32:傾斜面部、33:第二ストレート面部、40:バルブ、42:大径面部、43:小径面部、50:シール部材、60:隙間空間、70:補強層、80:金型中芯、81:金型ストレート面、82:金型傾斜面、90:空洞、P:継目。