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特開2024-137538半導体装置及び半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137538
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/06 301M
H01L29/06 301V
H01L29/78 652T
H01L29/78 652J
H01L29/78 653C
H01L29/78 658J
H01L29/78 658E
H01L29/78 658G
H01L29/78 655F
H01L21/78 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049093
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】清澤 努
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA05
5F063BA13
5F063BA45
5F063CA01
5F063CA04
5F063CC10
(57)【要約】
【課題】信頼性が向上する半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態の半導体装置は、デバイス領域と、デバイス領域を囲むダイシング領域と、を備え、デバイス領域は、第1の電極と、第2の電極と、少なくとも一部が第1の電極と第2の電極との間に設けられ、第1の電極側の第1の面と、第2の電極側の第2の面と、を有する炭化珪素層と、を含み、ダイシング領域は、第1の面と、第2の面と、を有する炭化珪素層と、含み、デバイス領域の第2の面から第1の面までの、第2の面の法線方向の第1の最大距離が、ダイシング領域の第2の面から第1の面までの、法線方向の第2の最大距離よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス領域と、
前記デバイス領域を囲むダイシング領域と、を備え、
前記デバイス領域は、
第1の電極と、
第2の電極と、
少なくとも一部が前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、前記第1の電極の側の第1の面と、前記第2の電極の側の第2の面と、を有する炭化珪素層と、を含み、
前記ダイシング領域は、
前記第1の面と、前記第2の面と、を有する前記炭化珪素層を、含み、
前記デバイス領域の前記第2の面から前記第1の面までの、前記第2の面の法線方向の第1の最大距離が、
前記ダイシング領域の前記第2の面から前記第1の面までの、前記法線方向の第2の最大距離よりも大きい、半導体装置。
【請求項2】
前記第1の最大距離と前記第2の最大距離の差は0.5μm以上である、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記デバイス領域の前記炭化珪素層は、第1導電形の第1の炭化珪素領域と、前記第1の炭化珪素領域の上に設けられ、前記第1の炭化珪素領域の第1導電形不純物濃度と異なる第1導電形不純物濃度の第2の炭化珪素領域と、を含み、
前記第1の炭化珪素領域は前記ダイシング領域の前記第1の面に接する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の炭化珪素領域は、前記第1の炭化珪素領域の上に形成されたエピタキシャル成長層である、請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記デバイス領域は、第1の領域と、前記第1の領域を囲み前記ダイシング領域に沿って設けられた第2の領域を有し、
前記第2の領域の前記第2の面から前記第1の面までの、前記法線方向の最大距離は、
前記第1の領域の前記第2の面から前記第1の面までの、前記法線方向の最大距離よりも大きい、請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記デバイス領域は、前記第1の電極の上に設けられた絶縁層を、更に含み、
前記ダイシング領域の前記第1の面の側の最表面の少なくとも一部は、前記炭化珪素層である、請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
デバイス予定領域と、前記デバイス予定領域を囲むダイシング予定領域と、を有し、第1の炭化珪素層を含む炭化珪素基板の上に、マスク材を形成し、
前記デバイス予定領域の前記マスク材を除去し、
前記デバイス予定領域の前記第1の炭化珪素層の上に、エピタキシャル成長法を用いて、第2の炭化珪素層を形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記マスク材を形成する前に、前記ダイシング予定領域の前記第1の炭化珪素層の表面に、凹部又は凸部を、形成し、
前記マスク材を形成する際に、前記凹部又は前記凸部を覆う、請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記凹部又は前記凸部は、アライメントマークである、請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2の炭化珪素層の上に、電極を形成し、
前記電極の上に、絶縁層を形成し、
前記ダイシング予定領域の前記絶縁層を除去し、前記第1の炭化珪素層を露出させる、請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
デバイス予定領域と、前記デバイス予定領域を囲むダイシング予定領域と、を有し、第1の炭化珪素層を含む炭化珪素基板の上に、エピタキシャル成長法を用いて第2の炭化珪素層を形成し、
前記デバイス予定領域を覆うマスク材を形成し、
前記マスク材をマスクに、前記ダイシング予定領域の上の前記第2の炭化珪素層を除去し、前記第1の炭化珪素層を露出させる、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス用の材料として炭化珪素(SiC)がある。炭化珪素はシリコンと比較して、バンドギャップが約3倍、破壊電界強度が約10倍、熱伝導率が約3倍と優れた物性を有する。この特性を活用すれば、例えば、高耐圧、低損失かつ高温動作可能なMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を実現することができる。
【0003】
例えば、炭化珪素を用いたMOSFETを製造する際、炭化珪素ウェハ上に形成された複数のMOSFETは、デバイス領域の周囲に設けられたダイシング領域で切断することで分離される。ダイシング領域で切断する際に、デバイス領域にクラックが入り、MOSFTの信頼性が低下するおそれがある。具体的には、例えば、クラックから水分や可動イオンがデバイス領域に侵入し、MOSFETの特性劣化やショート不良を生じさせるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-281157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、信頼性が向上する半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体装置は、デバイス領域と、前記デバイス領域を囲むダイシング領域と、を備え、前記デバイス領域は、第1の電極と、第2の電極と、少なくとも一部が前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、前記第1の電極の側の第1の面と、前記第2の電極の側の第2の面と、を有する炭化珪素層と、を含み、前記ダイシング領域は、前記第1の面と、前記第2の面と、を有する前記炭化珪素層を、含み、前記デバイス領域の前記第2の面から前記第1の面までの、前記第2の面の法線方向の第1の最大距離が、前記ダイシング領域の前記第2の面から前記第1の面までの、前記法線方向の第2の最大距離よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の半導体装置の模式図。
図2】第1の実施形態の半導体装置の模式図。
図3】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図4】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図5】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図6】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図7】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図8】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図9】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図10】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図11】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図12】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図13】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図14】第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図15】比較例の半導体装置の模式断面図。
図16】比較例の半導体装置及び半導体装置の製造方法の課題の説明図。
図17】第1の実施形態の半導体装置及び半導体装置の製造方法の作用及び効果の説明図。
図18】第1の実施形態の変形例の半導体装置の模式図。
図19】第1の実施形態の変形例の半導体装置の模式図。
図20】第1の実施形態の変形例の半導体装置及び半導体装置の製造方法の作用及び効果の説明図。
図21】第2の実施形態の半導体装置の模式図。
図22】第2の実施形態の半導体装置及び半導体装置の製造方法の作用及び効果の説明図。
図23】第3の実施形態の半導体装置の模式図。
図24】第3の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図25】第3の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
図26】第3の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する場合がある。
【0009】
また、以下の説明において、n、n、n及び、p、p、pの表記は、各導電形における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちnはnよりもn形不純物濃度が相対的に高く、nはnよりもn形不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、pはpよりもp形不純物濃度が相対的に高く、pはpよりもp形不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n形、n形を単にn形、p形、p形を単にp形と記載する場合もある。
【0010】
不純物濃度は、例えば、Secondary Ion Mass Spectrometry(SIMS)により測定することが可能である。また、不純物濃度の相対的な高低は、例えば、Scanning Capacitance Microscopy(SCM)で求められるキャリア濃度の高低から判断することも可能である。また、不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SIMSで求めることが可能である。また。不純物領域の幅や深さ等の距離は、例えば、SCMの画像やScanning Electron Microscope(SEM)の画像から求めることが可能である。
【0011】
また、半導体装置を構成する物質の厚さ、物質間の距離等は、例えば、SIMS、SEM、又はTransmission Electron Microscope(TEM)の画像上で計測することが可能である。
【0012】
なお、本明細書中でp形の炭化珪素領域の「p形不純物濃度」とは、当該領域のp形不純物濃度から当該領域のn形不純物濃度を引いた正味(net)のp形不純物濃度を意味する。また、n形の炭化珪素領域の「n形不純物濃度」とは、当該領域のn形不純物濃度から当該領域のp形不純物濃度を引いた正味(net)のn形不純物濃度を意味する。
【0013】
また、明細書中に別段の記述がない限り特定の領域の不純物濃度とは、当該領域の最大不純物濃度を意味するものとする。
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、デバイス領域と、デバイス領域を囲むダイシング領域と、を備える。デバイス領域は、第1の電極と、第2の電極と、少なくとも一部が第1の電極と第2の電極との間に設けられ、第1の電極の側の第1の面と、第2の電極の側の第2の面と、を有する炭化珪素層と、を含む。ダイシング領域は、第1の面と、第2の面と、を有する前記炭化珪素層を、含む。デバイス領域の第2の面から第1の面までの、第2の面の法線方向の第1の最大距離が、ダイシング領域の第2の面から第1の面までの、上記法線方向の第2の最大距離よりも大きい。
【0015】
図1及び図2は、第1の実施形態の半導体装置の模式図である。図1は、第1の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。図2は、第1の実施形態の半導体装置の上面図である。図1は、図2のAA’断面である。
【0016】
第1の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いた縦型のMOSFET100である。MOSFET100は、ゲート電極がトレンチの中に形成されたトレンチゲート型のMOSFETである。
【0017】
以下、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例に説明する。MOSFET100は、電子をキャリアとするnチャネル型のMOSFETである。
【0018】
MOSFET100は、デバイス領域100xとダイシング領域100yを備える。ダイシング領域100yは、デバイス領域100xを囲む。
【0019】
デバイス領域100xには、例えば、トランジスタが設けられる。ダイシング領域100yは、炭化珪素基板に形成された複数のMOSFET100を、ダイシングにより分割するために設けられた領域である。ダイシング領域100yは、いわゆるダイシングライン又はスクライブラインである。
【0020】
MOSFET100は、炭化珪素層10、ソース電極12、ドレイン電極14、ゲート絶縁層16、ゲート電極18、保護絶縁層20を備える。ソース電極12は、第1の電極の一例である。ドレイン電極14は、第2の電極の一例である。保護絶縁層20は、絶縁層の一例である。
【0021】
炭化珪素層10の少なくとも一部は、ソース電極12とドレイン電極14との間に設けられる。炭化珪素層10は、単結晶のSiCである。炭化珪素層10は、例えば、4H-SiCである。炭化珪素層10の厚さは、例えば、5μm以上150μm以下である。
【0022】
炭化珪素層10は、第1の面(図1中“F1”)と第2の面(図1中“F2”)とを備える。以下、第1の面を表面、第2の面を裏面と称する場合がある。なお、以下、「深さ」とは、第1の面を基準とする深さを意味する。
【0023】
第1の面F1は、炭化珪素層10のソース電極12の側の面である。第2の面F2は、炭化珪素層10のドレイン電極14の側の面である。
【0024】
第1の面F1は、例えば、(0001)面に対し0度以上8度以下傾斜した面である。また、第2の面F2は、例えば、(000-1)面に対し0度以上8度以下傾斜した面である。(0001)面はシリコン面と称される。(000-1)面はカーボン面と称される。
【0025】
デバイス領域100xには、炭化珪素層10、ソース電極12、ドレイン電極14、ゲート絶縁層16、ゲート電極18、及び、保護絶縁層20が含まれる。
【0026】
デバイス領域100xの炭化珪素層10の中には、n形のドレイン領域22、n形のドリフト領域24、p形のボディ領域26、n形のソース領域28、p形の電界緩和領域30が設けられる。
【0027】
ドリフト領域24は、n形の下部領域24a及びn形の上部領域24bを含む。下部領域24aは、第1の炭化珪素領域の一例である。また、上部領域24bは、第2の炭化珪素領域の一例である。
【0028】
また、デバイス領域100xの炭化珪素層10には、トレンチ40が含まれる。
【0029】
形のドレイン領域22は、炭化珪素層10の裏面側に設けられる。
【0030】
n形のドリフト領域24は、ドレイン領域22と第1の面F1との間に設けられる。ドリフト領域24は、ドレイン領域22の上に設けられる。
【0031】
n形の上部領域24bは、n形の下部領域24aと第1の面F1との間に設けられる。n形の上部領域24bは、n形の下部領域24aの上に設けられる。
【0032】
下部領域24aは、例えば、ドレイン領域22の上にエピタキシャル成長法を用いて形成されたエピタキシャル成長層である。また、例えば、上部領域24bは、下部領域24aの上にエピタキシャル成長法を用いて形成されたエピタキシャル成長層である。
【0033】
ドリフト領域24は、例えば、窒素(N)をn形不純物として含む。ドリフト領域24のn形不純物濃度は、ドレイン領域22のn形不純物濃度よりも低い。
【0034】
上部領域24bのn形不純物濃度は、例えば、下部領域24aのn形不純物濃度と異なる。上部領域24bのn形不純物濃度は、例えば、下部領域24aのn形不純物濃度よりも高い。
【0035】
なお、上部領域24bのn形不純物濃度は、例えば、下部領域24aのn形不純物濃度より低くすることも可能である。また、上部領域24bのn形不純物濃度は、下部領域24aのn形不純物濃度と等しくすることも可能である。
【0036】
p形のボディ領域26は、ドリフト領域24と第1の面F1との間に設けられる。ボディ領域26は、MOSFET100のチャネル領域として機能する。ボディ領域26は、例えば、アルミニウム(Al)をp形不純物として含む。
【0037】
形のソース領域28は、ボディ領域26と第1の面F1との間に設けられる。ソース領域28は、例えば、リン(P)をn形不純物として含む。ソース領域28のn形不純物濃度は、ドリフト領域24のn形不純物濃度よりも高い。
【0038】
形の電界緩和領域30は、ドリフト領域24とトレンチ40との間に設けられる。電界緩和領域30は、トレンチ40底部のゲート絶縁層16に印加される電界を緩和する機能を有する。
【0039】
電界緩和領域30は、例えば、アルミニウム(Al)をp形不純物として含む。電界緩和領域30のp形不純物濃度は、ボディ領域26のp形不純物濃度よりも高い。
【0040】
トレンチ40は、炭化珪素層10の第1の面F1の側に設けられる。トレンチ40は、炭化珪素層10に設けられた凹部である。トレンチ40の深さは、例えば、1μm以上3μm以下である。
【0041】
ゲート電極18は、トレンチ40の中に設けられる。ゲート絶縁層16は、ゲート電極18と炭化珪素層10との間に設けられる。
【0042】
ソース電極12は、炭化珪素層10の第1の面F1の側に設けられる。ソース電極12は、ソース領域28に接する。
【0043】
ドレイン電極14は、炭化珪素層10の第2の面F2の側に設けられる。ドレイン電極14は、ドレイン領域22に接する。
【0044】
保護絶縁層20は、ソース電極12の上に設けられる。保護絶縁層20は、絶縁層の一例である。保護絶縁層20は、デバイス領域を、例えば、機械的ストレスや水分から保護する機能を有する。
【0045】
保護絶縁層20は、例えば、酸化物、窒化物、又は、樹脂である。保護絶縁層20は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、又は、ポリイミド樹脂である。
【0046】
デバイス領域100xの第1の面F1の側の最表面は、例えば、ソース電極12又は保護絶縁層20である。
【0047】
ダイシング領域100yには、炭化珪素層10、ドレイン電極14、及び、保護絶縁層20が含まれる。
【0048】
なお、ソース電極12と第1の面F1の最表面との間、例えば、ソース電極12とゲート電極18との間には酸化シリコンなどで構成される層間絶縁膜が設けられていてもよい。また、層間絶縁膜はデバイス領域100xの第1の面F1から、ダイシング領域100yの第1の面F1まで延在して設けられていてもよい。その場合、層間絶縁膜の少なくとも一部の上に保護絶縁層20の一部が位置する。
【0049】
ダイシング領域100yの炭化珪素層10の中には、n形のドレイン領域22、n形のドリフト領域24が設けられる。
【0050】
ドリフト領域24は、n形の下部領域24aを含む。下部領域24aは、第1の炭化珪素領域の一例である。
【0051】
下部領域24aは、ダイシング領域100yの炭化珪素層10の第1の面F1に接する。
【0052】
また、ダイシング領域100yの炭化珪素層10には、例えば、アライメントマーク42が含まれる。アライメントマーク42は、MOSFET100を製造する際のフォトリソグラフィ工程において、パターン間の合わせマーク(alignment mark)として機能する。
【0053】
アライメントマーク42は、炭化珪素層10の表面に設けられた凹部又は凸部である。図1は、アライメントマーク42が凹部である場合を例示している。アライメントマーク42の深さは、例えば、0.5μm以上3μm以下である。
【0054】
デバイス領域100xの第2の面F2から第1の面F1までの、第2の面F2の法線方向の第1の最大距離(図1中のd1)は、ダイシング領域100yの第2の面F2から第1の面F1までの、第2の面F2の法線方向の第2の最大距離(図1中のd2)よりも大きい。第1の最大距離d1と第2の最大距離d2との差は、例えば、0.5μm以上3μm以下である。
【0055】
デバイス領域100xとダイシング領域100yとの間には、炭化珪素層10の表面に段差がある。デバイス領域100xとダイシング領域100yとの間には、炭化珪素層10の第1の面F1に段差が存在する。デバイス領域100xとダイシング領域100yとの間の段差の大きさは、例えば、0.5μm以上3μm以下である。
【0056】
次に、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例について、説明する。第1の実施形態の半導体装置の製造方法の一例は、デバイス予定領域と、デバイス予定領域を囲むダイシング予定領域と、を有し、第1の炭化珪素層を含む炭化珪素基板の上に、マスク材を形成し、デバイス予定領域のマスク材を除去し、デバイス予定領域の第1の炭化珪素層の上に、エピタキシャル成長法を用いて、第2の炭化珪素層を形成する。
【0057】
図3図4図5図6図7図8図9図10図11図12図13、及び図14は、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図である。図3は、第1の実施形態の半導体装置の製造方法で用いられる半導体基板の一部の上面図である。図4図14は、第1の実施形態の半導体装置の製造方法の製造途中の模式断面図である。図4図14は、図3のBB’断面である。
【0058】
最初に炭化珪素基板50を準備する(図3)。炭化珪素基板50は、例えば、炭化珪素ウェハである。
【0059】
炭化珪素基板50は、デバイス予定領域50xとダイシング予定領域50yを含む。ダイシング予定領域50yは、デバイス予定領域50xを囲む。デバイス予定領域50xは、最終的に、デバイス領域100xとなる。また、ダイシング予定領域50yの一部は、最終的に、ダイシング領域100yとなる。
【0060】
炭化珪素基板50は、n形の基板層51とn形の第1の炭化珪素層52を含む(図4)。第1の炭化珪素層52は、例えば、基板層51の上に、エピタキシャル成長法を用いて形成されたエピタキシャル成長層である。第1の炭化珪素層52は、最終的に、ドリフト領域24の下部領域24aとなる。
【0061】
次に、炭化珪素基板50のダイシング予定領域50yに、アライメントマーク42を形成する(図5)。アライメントマーク42は、第1の炭化珪素層52の表面に形成される。アライメントマーク42は、凹部の一例である。なお、アライメントマーク42を凸部とすることも可能である。
【0062】
アライメントマーク42は、例えば、図示しないパターニングされたマスク材の形成と、反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いたエッチングにより形成される。
【0063】
次に、炭化珪素基板50のデバイス予定領域50xに、p形の第1のSiC領域53を形成する(図6)。第1のSiC領域53は、第1の炭化珪素層52の表面に形成される。第1のSiC領域53は、例えば、アルミニウムのイオン注入によって形成される。第1のSiC領域53は、最終的に、p形の電界緩和領域30となる。
【0064】
次に、ダイシング予定領域50yのアライメントマーク42を覆うマスク材54を形成する(図7)。マスク材54は、例えば、化学気相成長法(CVD法)により形成する。マスク材54は、例えば、カーボン、又は、窒化シリコンである。より好ましくは、マスク材54は後述するエピタキシャル成長法で使用されるガス(SiH、C、H、N、トリメチルアルミニウムなど)やエピタキシャル成長炉の部材(カーボン、ポリSiCなど)の構成元素から構成される。
【0065】
次に、デバイス予定領域50xのマスク材54を除去する(図8)。デバイス予定領域50xのマスク材54は、例えば、フォトリソグラフィ法とウェットエッチング法又はドライエッチング法を用いたパターニングにより除去する。ダイシング予定領域50yの表面の少なくともアライメントマーク42の上のマスク材54は、残存する。
【0066】
次に、第1の炭化珪素層52の上に第2の炭化珪素層55を形成する(図9)。第2の炭化珪素層55は、第1の炭化珪素層52の上に、エピタキシャル成長法を用いて形成される。第2の炭化珪素層55は、エピタキシャル成長層である。
【0067】
第2の炭化珪素層55は、第1の炭化珪素層52がマスク材54で覆われたダイシング予定領域50yには形成されない。第2の炭化珪素層55は、デバイス予定領域50xの上に選択的に形成される。第2の炭化珪素層55の一部は、最終的に、ドリフト領域24の上部領域24bとなる。
【0068】
次に、ダイシング予定領域50yのマスク材54を除去する。ダイシング予定領域50yのマスク材54は、例えば、ウェットエッチング法又はドライエッチング法により除去する。
【0069】
次に、例えば、アルミニウムのイオン注入を用いて、p形の第2のSiC領域56を形成する。また、例えば、リンのイオン注入を用いて、n形の第3のSiC領域57を形成する(図10)。
【0070】
第2のSiC領域56は、最終的に、p形のボディ領域26となる。また、第3のSiC領域57は、最終的に、n形のソース領域28となる。
【0071】
次に、第3のSiC領域57、及び第2のSiC領域56を貫通し、第1のSiC領域53に達するトレンチ40を形成する(図11)。トレンチ40は、例えば、CVD法によるマスク材の成膜、フォトリソグラフィ法とRIE法によるマスク材のパターニング、及び、RIE法を用いた炭化珪素層のエッチングにより形成する。
【0072】
次に、公知のプロセス技術を用いて、デバイス予定領域50xにゲート絶縁層16、ゲート電極18、及び、ソース電極12を形成する(図12)。
【0073】
次に、公知のプロセス技術を用いて、デバイス予定領域50xのソース電極12(電極)の上、及び、第2の炭化珪素層55の上に、保護絶縁層20を形成する。また、ダイシング予定領域50yの第1の炭化珪素層52の上、アライメントマーク42の上に、保護絶縁層20を形成する(図13)。その後、公知のプロセス技術を用いて、ドレイン電極14を形成する。
【0074】
次に、ダイシング予定領域50yを、例えば、ダイシングブレード60を用いて切断し、炭化珪素基板50が複数のMOSFET100に分割される(図14)。
【0075】
以上の製造方法により、図1及び図2に示すMOSFET100が形成される。
【0076】
次に、第1の実施形態の半導体装置及び半導体装置の製造方法の作用及び効果について説明する。
【0077】
図15は、比較例の半導体装置の模式断面図である。図15は、第1の実施形態の図1に対応する図である。
【0078】
比較例の半導体装置は、炭化珪素を用いた縦型のMOSFET900である。比較例のMOSFET900は、デバイス領域の第2の面F2から第1の面F1までの、第2の面F2の法線方向の第1の最大距離(図15中のd1)は、ダイシング領域の第2の面F2から第1の面F1までの、第2の面F2の法線方向の第2の最大距離(図15中のd2)と等しい点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。
【0079】
図16は、比較例の半導体装置及び半導体装置の製造方法の課題の説明図である。
【0080】
図16は、比較例のMOSFET900のダイシング予定領域を、例えば、ダイシングブレード60を用いて切断する場合の説明図である。図16は、第1の実施形態の図14に対応する図である。
【0081】
比較例のMOSFET900の製造方法は、ダイシング予定領域にも第2の炭化珪素層55が形成される点で、第1の実施形態のMOSFET100の製造方法と異なる。ダイシング予定領域にもエピタキシャル成長層である第2の炭化珪素層55が存在することになる点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。
【0082】
第1の実施形態のMOSFET100の製造方法と同様の製造方法において、ダイシング予定領域にマスク材54を形成しないことで、ダイシング予定領域にもエピタキシャル成長層である第2の炭化珪素層55を成長させることができる。
【0083】
結果的に、図15及び図16に示されるように、デバイス領域とダイシング領域との間には、炭化珪素層10の表面に段差が存在しない。デバイス領域とダイシング領域との間には、炭化珪素層10の第1の面F1に段差が存在しない。
【0084】
比較例のMOSFET900では、ダイシング予定領域をダイシングブレード60を用いて切断する際に、図16に示すように、機械的ストレスにより保護絶縁層20の中にクラック62が形成されるおそれがある。保護絶縁層20の中に形成されたクラック62が、ダイシング領域からデバイス領域へと延びると、MOSFET900の動作中に水分や可動イオンがクラック62を通って、デバイス領域に侵入する。デバイス領域に侵入した水分や可動イオンは、例えば、MOSFET900の特性劣化やショート不良を生じさせるおそれがある。したがって、MOSFET900の信頼性が低下するおそれがある。
【0085】
また、比較例のMOSFET900を製造する際に、ダイシング予定領域に設けられたアライメントマーク42の上にも、エピタキシャル成長層である第2の炭化珪素層55が形成される。アライメントマーク42は、凹部又は凸部であるため、アライメントマーク42の上部のエピタキシャル成長層の結晶性が低下する。例えば、図16に示すように、アライメントマーク42の上部のエピタキシャル成長層に結晶欠陥64が形成される。
【0086】
比較例のMOSFET900では、ダイシング予定領域をダイシングブレード60を用いて切断する際に、図16に示すように、結晶欠陥64を起点として、機械的ストレスにより炭化珪素層の中にクラック62が形成されるおそれがある。炭化珪素層の中に形成されたクラック62が、ダイシング領域からデバイス領域へと延びると、MOSFET900の動作中に水分や可動イオンがクラック62を通って、デバイス領域に侵入する。デバイス領域に侵入した水分や可動イオンは、MOSFET900の特性劣化を生じさせるおそれがある。したがって、MOSFET900の信頼性が低下するおそれがある。
【0087】
図17は、第1の実施形態の半導体装置及び半導体装置の製造方法の作用及び効果の説明図である。図17は、第1の実施形態の図14に対応する図である。
【0088】
第1の実施形態のMOSFET100は、デバイス領域100xとダイシング領域100yとの間の炭化珪素層10の表面に段差が存在する。
【0089】
第1の実施形態のMOSFET100においても、ダイシング予定領域をダイシングブレード60を用いて切断する際に、図17に示すように、機械的ストレスにより保護絶縁層20の中にクラック62が形成されるおそれがある。しかしながら、炭化珪素層10の表面に段差が存在するため、図17に示すように、クラック62がダイシング領域100yからデバイス領域100xへと延びることが抑制される。
【0090】
また、例えば、クラック62の端部まで侵入した水分や可動イオンが、更にデバイス領域100xの内側まで、保護絶縁層20を通って侵入するための経路(図17中の黒矢印)が、段差の存在により、実効的に長くなる。
【0091】
したがって、第1の実施形態のMOSFET100によれば、水分や可動イオンのデバイス領域100xへの侵入が抑制される。よって、MOSFET100の信頼性が向上する。
【0092】
また、ソース電極12と第1の面F1の最表面との間、例えば、ソース電極12とゲート電極18との間には酸化シリコンなどで構成される層間絶縁膜を設け、層間絶縁膜はデバイス領域100xの第1の面F1から、ダイシング領域100yの第1の面F1まで延在して設けられていてもよい。その場合、層間絶縁膜の少なくとも一部の上に保護絶縁層20が位置することとなり、水分や可動イオンのデバイス領域100xへの侵入をより抑制できる。よって、MOSFET100の信頼性が向上する。
【0093】
また、第1の実施形態のMOSFET100を製造する際には、ダイシング予定領域に設けられたアライメントマーク42の上には、エピタキシャル成長層である第2の炭化珪素層55は形成されない。したがって、比較例のMOSFET900で顕在化するエピタキシャル成長層の結晶欠陥64に起因する問題は抑制される。したがって、MOSFET100の信頼性が向上する。
【0094】
第1の実施形態のMOSFET100において、クラック62がデバイス領域100xへ延びることを抑制する観点から、第1の最大距離d1と第2の最大距離d2との差は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることが更に好ましい。
【0095】
上述のように、比較例のMOSFET900では、アライメントマーク42の上にエピタキシャル成長層である第2の炭化珪素層55が形成される。このため、図15に示すように、アライメントマーク42の形状がエピタキシャル成長層の形成前の形状から変化するおそれがある。アライメントマーク42の形状が変化すると、フォトリソグラフィ工程におけるパターン間の合わせ精度が低下するおそれがある。
【0096】
第1の実施形態のMOSFET100では、アライメントマーク42の上にエピタキシャル成長層である第2の炭化珪素層55が形成されない。このため、アライメントマーク42の形状が変化しない。したがって、フォトリソグラフィ工程におけるパターン間の合わせ精度が低下することが抑制される。
【0097】
(変形例)
第1の実施形態の変形例の半導体装置は、デバイス領域は、第1の領域と、第1の領域を囲みダイシング領域に沿って設けられた第2の領域を有し、第2の領域の第2の面から第1の面までの、法線方向の最大距離は、第1の領域の第2の面から第1の面までの、上記法線方向の最大距離よりも大きい点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。
【0098】
図18及び図19は、第1の実施形態の変形例の半導体装置の模式図である。図18は、第1の実施形態の変形例の半導体装置の一部の模式断面図である。図19は、第1の実施形態の変形例の半導体装置の上面図である。図18は、図19のAA’断面である。
【0099】
第1の実施形態の変形例の半導体装置は、炭化珪素を用いた縦型のMOSFET110である。
【0100】
MOSFET110は、デバイス領域110xとダイシング領域110yを備える。ダイシング領域110yは、デバイス領域110xを囲む。
【0101】
デバイス領域110xは、平坦領域110x1と凸領域110x2を有する。平坦領域110x1は、第1の領域の一例である。凸領域110x2は、第2の領域の一例である。
【0102】
凸領域110x2は、平坦領域110x1を囲む。凸領域110x2は、ダイシング領域110yに沿って設けられる。凸領域110x2は、デバイス領域110xの端部に沿って設けられる。
【0103】
デバイス領域110xは、凸領域110x2を備えることで、ダイシング領域110yに向かって、炭化珪素層10の厚さが厚くなる。
【0104】
凸領域110x2の第2の面F2から第1の面F1までの、第2の面F2の法線方向の最大距離(図18中のd1y)は、平坦領域110x1の第2の面F2から第1の面F1までの、第2の面F2の法線方向の最大距離(図18中のd1x)よりも大きい。最大距離d1yと最大距離d1xとの差は、例えば、0.2μm以上1μm以下である。
【0105】
例えば、MOSFET110は、第1の実施形態のMOSFET100と同様の製造方法で製造することが可能である。第1の炭化珪素層52の上に、エピタキシャル成長法を用いて第2の炭化珪素層55を形成する際の成膜条件を制御することで、デバイス予定領域の端部に形成される第2の炭化珪素層55の厚さを厚くして、凸領域110x2を形成することが可能である。
【0106】
図20は、第1の実施形態の変形例の半導体装置及び半導体装置の製造方法の作用及び効果の説明図である。図20は、第1の実施形態の図17に対応する図である。
【0107】
第1の実施形態の変形例のMOSFET110は、デバイス領域110xとダイシング領域110yとの間の炭化珪素層10の表面に段差が存在する。さらに、デバイス領域110xの端部に、凸領域110x2が設けられることで、例えば、第1の実施形態のMOSFET100と比較して、段差が大きくなっている。
【0108】
第1の実施形態の変形例のMOSFET110においても、ダイシング予定領域をダイシングブレード60を用いて切断する際に、図20に示すように、機械的ストレスにより保護絶縁層20の中にクラック62が形成されるおそれがある。しかしながら、炭化珪素層10の表面に大きな段差が存在するため、図20に示すように、クラック62がダイシング領域110yからデバイス領域110xへと延びることが効果的に抑制される。
【0109】
また、例えば、クラック62の端部まで侵入した水分や可動イオンが、更にデバイス領域110xの内側まで、保護絶縁層20を通って侵入するための経路(図中黒矢印)が、大きな段差の存在により、実効的に長くなる。
【0110】
したがって、第1の実施形態の変形例のMOSFET110によれば、水分や可動イオンのデバイス領域100xへの侵入が抑制される。よって、MOSFET110の信頼性が向上する。
【0111】
以上、第1の実施形態及び変形例によれば、信頼性が向上する半導体装置及び半導体装置の製造方法が実現できる。
【0112】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、デバイス領域は、第1の電極の上に設けられた絶縁層を、更に含み、ダイシング領域の第1の面の側の最表面の少なくとも一部は、炭化珪素層である点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。
【0113】
また、第2の実施形態の半導体装置の製造方法は、第2の炭化珪素層の上に、電極を形成し、電極の上に、絶縁層を形成し、ダイシング予定領域の絶縁層を除去し、第1の炭化珪素層を露出させる点で、第1の実施形態の半導体装置の製造方法と異なる。
【0114】
以下、第1の実施形態の半導体装置、又は、半導体装置の製造方法と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0115】
図21は、第2の実施形態の半導体装置の模式図である。図21は、第2の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。図21は、第1の実施形態の図1に対応する図である。
【0116】
第2の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いた縦型のMOSFET200である。MOSFET200は、ゲート電極がトレンチの中に形成されたトレンチゲート型のMOSFETである。
【0117】
MOSFET200では、図21に示すように、ダイシング領域の側の最表面の少なくとも一部の上には、保護絶縁層20が存在しない。MOSFET200では、ダイシング領域の側の最表面の少なくとも一部は、炭化珪素層10である。MOSFET200では、ダイシング領域の側の最表面の少なくとも一部は、炭化珪素層10の第1の面F1である。
【0118】
MOSFET200では、ダイシング領域の少なくとも一部に、ドリフト領域24の下部領域24aが露出している。MOSFET200では、例えば、アライメントマーク42が表面に露出している。
【0119】
MOSFET200では、デバイス領域の第1の面F1の側の最表面は、例えば、ソース電極12又は保護絶縁層20である。一方、ダイシング領域の第1の面F1の側の最表面の少なくとも一部は、炭化珪素層10である。
【0120】
例えば、MOSFET200は、第1の実施形態のMOSFET100と同様の製造方法で製造することが可能である。ただし、ソース電極12の上に保護絶縁層20を形成した後に、ダイシング予定領域の保護絶縁層20を除去する。
【0121】
図22は、第2の実施形態の半導体装置及び半導体装置の製造方法の作用及び効果の説明図である。図22は、第1の実施形態の図17に対応する図である。
【0122】
第2の実施形態のMOSFET200は、ダイシング領域の側の最表面の少なくとも一部の上には、保護絶縁層20が存在しない。例えば、ダイシング予定領域のダイシングブレード60が接触する領域には、保護絶縁層20が存在しない。したがって、ダイシング予定領域をダイシングブレード60を用いて切断する際に、保護絶縁層20にクラックが入ることが抑制される。
【0123】
したがって、第2の実施形態のMOSFET200によれば、水分や可動イオンのデバイス領域への侵入が抑制される。よって、MOSFET200の信頼性が向上する。
【0124】
以上、第2の実施形態によれば、信頼性が向上する半導体装置及び半導体装置の製造方法が実現できる。
【0125】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置の製造方法は、デバイス予定領域と、デバイス予定領域を囲むダイシング予定領域と、を有し、第1の炭化珪素層を含む炭化珪素基板の上に、エピタキシャル成長法を用いて第2の炭化珪素層を形成し、デバイス予定領域を覆うマスク材を形成し、マスク材をマスクに、ダイシング予定領域の上の第2の炭化珪素層を除去し、第1の炭化珪素層を露出させる。第3の実施形態の半導体装置の製造方法は、ダイシング予定領域の上に第2の炭化珪素層を形成した後、ダイシング予定領域の上の第2の炭化珪素層を除去する点で、第1の実施形態の半導体装置の製造方法と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0126】
図23は、第3の実施形態の半導体装置の模式図である。図23は、第3の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。図23は、第1の実施形態の図1に対応する図である。
【0127】
第3の実施形態の半導体装置は、炭化珪素を用いた縦型のMOSFET300である。MOSFET300は、ゲート電極がトレンチの中に形成されたトレンチゲート型のMOSFETである。
【0128】
MOSFET300では、図23に示すように、デバイス領域の第2の面F2から下部領域24aと上部領域24bの境界までの、第2の面F2の法線方向の距離(図23中のdx)は、ダイシング領域の第2の面F2から第1の面F1までの、第2の面F2の法線方向の第2の最大距離(図23中のd2)よりも大きい点で、第1の実施形態のMOSFET100と異なる。MOSFET300の、その他の構造は、第1の実施形態のMOSFET100と同様である。
【0129】
図24図25、及び、図26は、第3の実施形態の半導体装置の製造方法の説明図である。図24図26は、第3の実施形態の半導体装置の製造方法の製造途中の模式断面図である。
【0130】
最初に炭化珪素基板50を準備し、炭化珪素基板50のデバイス予定領域に、p形の第1のSiC領域53を形成するまでは、第1の実施形態のMOSFET100の製造方法と同様である。
【0131】
次に、第1の炭化珪素層52の上に第2の炭化珪素層55を形成する(図24)。第2の炭化珪素層55は、第1の炭化珪素層52の上に、エピタキシャル成長法を用いて形成される。第2の炭化珪素層55は、エピタキシャル成長層である。
【0132】
ダイシング予定領域の上にも第2の炭化珪素層55が形成され、アライメントマーク42の形状は、第2の炭化珪素層55の表面に転写される。
【0133】
次に、デバイス予定領域を覆うマスク材66を形成する(図25)。マスク材66は、例えば、窒化シリコンである。
【0134】
マスク材66は、例えば、CVD法による成膜、フォトリソグラフィ法、及びRIE法を用いて形成する。
【0135】
次に、マスク材66をマスクに、ダイシング予定領域の第2の炭化珪素層55をエッチングし、凹領域68を形成する(図26)。凹領域68は、例えば、第1の炭化珪素層52に達する。アライメントマーク42の形状は、凹領域68の底面に転写される。
【0136】
その後、マスク材66を、例えば、ウェットエッチング法を用いて除去する。そして、第1の実施形態のMOSFET100の製造方法と同様の方法で、p形のボディ領域26、n形のソース領域28、トレンチ40、ゲート絶縁層16、ゲート電極18、ソース電極12、保護絶縁層20、及び、ドレイン電極14、を形成する。
【0137】
次に、ダイシング予定領域を、例えば、ダイシングブレードを用いて切断し、炭化珪素基板50が複数のMOSFET300に分割される。
【0138】
以上の製造方法により、図23に示すMOSFET300が形成される。
【0139】
第3の実施形態のMOSFET300の製造方法によれば、第1の実施形態のMOSFET100と同様、ダイシング領域とデバイス領域との間の炭化珪素層10の表面に段差が存在する。したがって、保護絶縁層20に形成されるクラックが、ダイシング領域からデバイス領域へと延びることが抑制される。よって、MOSFET300の信頼性が向上する。
【0140】
第3の実施形態のMOSFET300の製造方法では、ダイシング予定領域の上にもエピタキシャル成長層である第2の炭化珪素層55が形成される。このため、アライメントマーク42の上部の第2の炭化珪素層55の結晶性が低下するおそれがある。
【0141】
しかし、アライメントマーク42の上部の第2の炭化珪素層55は、凹領域68を形成することで除去される。したがって、ダイシング予定領域をダイシングブレードを用いて切断する際に、結晶欠陥を起点として、炭化珪素層10の中にクラックが形成されることは抑制される。よって、MOSFET300の信頼性が向上する。
【0142】
以上、第3の実施形態によれば、信頼性が向上する半導体装置及び半導体装置の製造方法が実現できる。
【0143】
第1ないし第3の実施形態では、SiCの結晶構造として4H-SiCの場合を例に説明したが、本発明は6H-SiC、3C-SiC等、その他の結晶構造のSiCを用いたデバイスに適用することも可能である。また、炭化珪素層10の表面に(0001)面以外の面を適用することも可能である。
【0144】
第1ないし第3の実施形態では、第1導電形がn形、第2導電形がp形の場合を例に説明したが、第1導電形をp形、第2導電形をn形とすることも可能である。
【0145】
第1ないし第3の実施形態では、半導体装置がトレンチゲート型のMOSFETである場合を例に説明したが、半導体装置はトレンチゲート型のMOSFETに限定されない。例えば、半導体装置は、プレーナゲート型のMOSFET、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)、又は、ダイオードであっても構わない。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0147】
10 炭化珪素層
12 ソース電極(第1の電極、電極)
14 ドレイン電極(第2の電極)
20 保護絶縁層(絶縁層)
24a 下部領域(第1の炭化珪素領域)
24b 上部領域(第2の炭化珪素領域)
50 炭化珪素基板
50x デバイス予定領域
50y ダイシング予定領域
52 第1の炭化珪素層
54 マスク材
55 第2の炭化珪素層
66 マスク材
100 MOSFET(半導体装置)
100x デバイス領域
100y ダイシング領域
110x1 平坦領域(第1の領域)
110x2 凸領域(第2の領域)
200 MOSFET(半導体装置)
300 MOSFET(半導体装置)
d1 第1の最大距離
d2 第2の最大距離
F1 第1の面
F2 第2の面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26