IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 未来工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-配線ボックス 図1
  • 特開-配線ボックス 図2
  • 特開-配線ボックス 図3
  • 特開-配線ボックス 図4
  • 特開-配線ボックス 図5
  • 特開-配線ボックス 図6
  • 特開-配線ボックス 図7
  • 特開-配線ボックス 図8
  • 特開-配線ボックス 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137546
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】配線ボックス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/12 20060101AFI20240927BHJP
   H02G 3/02 20060101ALI20240927BHJP
   H01R 25/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02G3/12
H02G3/02
H01R25/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049104
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121429
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】松田 翔平
【テーマコード(参考)】
5G357
5G361
【Fターム(参考)】
5G357CA06
5G357CB02
5G357CC01
5G357CD01
5G357CF02
5G361AA02
5G361AB01
5G361AB12
5G361AC01
5G361AC13
5G361AD01
5G361AE01
(57)【要約】
【課題】少なくとも2種類の器具枠に対応して位置決めしてこれを取り付けることができる配線ボックスを提供する。
【解決手段】配線ボックスは、有底箱状をなし、配線器具20を保持した器具枠30を開口側に固定するための固定部を備え、器具枠30の透孔に入り込んで係合し開口部に対する器具枠30の位置ずれを規制する係合部10が形成されている。係合部10は、柱状を成し、透孔が部分重合するようにずれた位置に形成された2種類の器具枠30のそれぞれの透孔36a、36bの内周面において部分重合している内面に当接する当接部11a、11bが相反する外面に形成されている。これにより、係合部10は、2種類の器具枠30のいずれの透孔にも挿入されて係合するので、2種類の器具枠30に対して配線ボックスに位置決めして取り付けることができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を形成する有底箱状をなし、配線器具を保持した器具枠が有する一対のビス通孔に挿通された器具枠固定ビスにより当該器具枠を開口側に固定するために対向配置された一対一組の固定部を備えた配線ボックスであって、
前記一対のビス通孔のそれぞれの脇に形成された透孔に入り込み、前記開口部に対する前記器具枠の位置ずれを規制すべく、前記透孔と係合して位置決めする係合部が、前記一組の固定部のそれぞれの脇に形成されており、
前記係合部は、前記透孔が部分重合するようにずれた位置に形成された少なくとも2種類の前記器具枠に対応すべく、前記少なくとも2種類の器具枠のそれぞれの透孔の内周面における前記部分重合している内面に当接する当接部が相反する外面に形成された柱状を成すことを特徴する配線ボックス。
【請求項2】
前記係合部の当接部は、前記透孔の内面に沿う弧状面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線器具を保持した器具枠が固定される配線ボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線器具は、器具枠を介して配線ボックス内に埋め込まれた状態で取り付けられる。配線ボックスは、器具枠に設けられた上下一対の取付孔にビスを挿通し、これをボックス本体の上下一対のボス部に螺着することによりボックス本体の前面に器具枠が固定される。
【0003】
ここで、器具枠には壁裏に設置される配線ボックスが傾斜、横ずれなど位置ずれして取り付けられた場合でも配線器具を壁表の所定位置に傾斜、横ずれすることなく取り付けるために、上下一対の取付孔は長孔に形成されている。ところで、配線ボックスは壁裏に設置されるものが多いが、壁表に露出するタイプの配線ボックスが設置される場合もある。この場合、配線ボックスの前面は壁表に露出していることから位置ずれすることなく固定することができるので、器具枠の取付孔は長孔である必要はなく、むしろ長孔であることにより位置ずれして取り付けられてしまうこともある。そこで、壁表に露出する配線ボックスに対しては、取付孔が長孔に形成されていない器具枠を使用するのが望ましい。
【0004】
しかし、壁裏に設置される配線ボックスに比べて設置数の少ない露出タイプの配線ボックス専用の器具枠を用意すると、コストが嵩み、部品管理も面倒になる。そこで、器具枠は、壁裏に設置される配線ボックス用のものが壁表に露出する配線ボックスに取り付ける場合にも共通して使用されることが多い。ところが、この器具枠は上下一対の取付孔が長孔で形成されているから、上述のように、配線ボックスに対して位置ずれして取り付けてしまうことがあった。また、設置後に配線器具に接続されるプラグ等に捩れ、引張り等の外力が加わると、器具枠及び配線器具が移動したり、傾斜してしまうこともあった。
【0005】
そこで、上記不具合を解消すべく、特許文献1に記載の配線ボックスが提案されている。このうち第1実施例の配線ボックスは、前方に突出する突起を設け、器具枠において化粧プレート取付枠を固定するための取付枠固定孔に前記突起を挿入することで位置合わせして、器具枠を適正位置に取り付けることができる。しかし、この配線ボックスは、器具枠の取付枠固定孔には配線ボックスの突起が挿入されることから、化粧プレート取付枠のビスを挿入することができず、したがって化粧プレート取付枠を取り付けることができなくなるため、化粧プレート取付枠を介して取り付けられる通常の化粧プレートとは異なる専用の化粧プレートを別途に用意する必要があった。
【0006】
一方、特許文献1の第2実施例の配線ボックスには、器具枠の上下端部において取付枠固定孔の脇に設けられた4個の透孔のうち対角線方向に配置された2個の透孔に係合する上下一対の係合突体が設けられている。この係合突体を器具枠の透孔に挿入することで、器具枠は配線ボックスに対して傾斜、横ずれ等に位置ずれすることなく正規の位置に固定することができる。
【0007】
この配線ボックスは、別の器具枠を取り付けるときに、その透孔と配線ボックスの係合突体との位置が一致していない場合には、係合突体を透孔に入り込ませることができないことになるが、係合突体を折り取ることによって、透孔と係合突体との位置が不一致の異なる種類の器具枠も取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-275228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の配線ボックスは、係合突体を折り取ることで、器具枠の透孔と配線ボックスの係合突体との位置が一致しない別の種類の器具枠にも対応してこれを取り付けることができるが、そうすると今度は、位置合わせのために設けた係合突体が除去されるために位置合わせできなくなる。したがって、結局は、透孔と係合突体との位置が一致している一種類の器具枠にしか対応して取り付けることができないことになるから、不便であった。
【0010】
そこで、本発明は、少なくとも2種類の器具枠に対応して位置決めしてこれを取り付けることができる配線ボックスの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の配線ボックスは、
開口部を形成する有底箱状をなし、配線器具を保持した器具枠が有する一対のビス通孔に挿通された器具枠固定ビスにより当該器具枠を開口側に固定するために対向配置された一対一組の固定部を備えたものであって、
前記一対のビス通孔のそれぞれの脇に形成された透孔に入り込み、前記開口部に対する前記器具枠の位置ずれを規制すべく、前記透孔と係合して位置決めする係合部が、前記一組の固定部のそれぞれの脇に形成されており、
前記係合部は、前記透孔が部分重合するようにずれた位置に形成された少なくとも2種類の前記器具枠に対応すべく、前記少なくとも2種類の器具枠のそれぞれの透孔の内周面における前記部分重合している内面に当接する当接部が相反する外面に形成された柱状を成している。
【0012】
請求項2の配線ボックスは、特に、係合部の当接部が、透孔の内面に沿う弧状面に形成されている。これにより、係合部の当接部は、広い範囲で透孔の内面に沿って当接するので、係合部は透孔に安定して係合する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、透孔が部分重合するようにずれた位置に形成された少なくとも2種類の器具枠に対応すべく、係合部は、柱状を成し、少なくとも2種類の器具枠のそれぞれの透孔の内周面における前記部分重合している内面に当接する当接部が相反する外面に形成されているので、係合部は、少なくとも2種類の器具枠のいずれの透孔にも挿入して係合させることができる。このため、少なくとも2種類の器具枠に対応してこれを正規の箇所に位置決めして配線ボックスに取り付けることができる。その結果、露出ボックス専用の器具枠を別途に用意する必要がなく、コストを低減でき、部品管理も楽になる。また、配線ボックスの設置時及び設置後に、器具枠及び配線器具が位置ずれするのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の配線ボックスを示す分解斜視図である。
図2図1の配線ボックスを示し、(a)は全体斜視図、(b)は部分拡大斜視図である。
図3図1の配線ボックスの正面図である。
図4図1の器具枠を示し、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
図5】透孔の位置が異なる2種類の器具枠の正面図である。
図6図5の器具枠の透孔に配線ボックスの係合部が係合した状態を示す正面図である。
図7】壁面に固定した配線ボックスに器具枠を取り付けた状態を示す縦断面図である。
図8】別の複数種類の器具枠の透孔に配線ボックスの係合部が係合した状態を示す要部正面図である。
図9】2つの器具枠が取り付けられる配線ボックスの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の配線ボックスを図に基づいて説明する。
配線ボックスは、建物壁の表側に露出した状態で設置され、内部に配線器具が収容される。図1に示すように、配線ボックス1は、配線器具20が固定された器具枠30が開口部4側に取り付けられ、その前面側に器具枠30を化粧する化粧プレート50が化粧プレート取付枠40を介して取り付けられる。
【0016】
詳細には、配線ボックス1は、図2及び図3に示すように、底壁2と、底壁2から立設する側壁3とを備え、底壁2と対向する開口部4を形成する有底四角箱状を成し、内側に配線器具20が収容される内部空間5が形成されている。底壁2には建築物の壁面に固定するためのビスが挿通される壁固定孔6が複数設けられている。上面側及び下面側の各側壁3の中央には内周面に雌ネジを有する貫通孔7が形成されている。貫通孔7は、ケーブル60を挿通するときに使用される電線管コネクタ61が取り付けられ、ケーブル60が挿通されず電線管コネクタ61が取り付けられないときは、塵埃侵入防止のためのキャップ62が取り外し自在に取着され、あるいは図示しないが打ち抜いて開孔するノックが形成されて閉塞されている。電線管コネクタ61は、ケーブル60が貫通孔7の周縁で擦れて傷付くのを防止するとともに、貫通孔7の内周面とケーブル60との隙間から塵埃が侵入するのを防止する。
【0017】
上面側及び下面側の各側壁3の内面における開口部側端部には、開口縁に沿って内部空間5側に立設する略凸形板状の基台8が上下方向に対向して一対設けられている。各基台8の先端凸部の中央には配線器具20を保持する器具枠30を取り付けるためのボス部からなる器具枠固定部9が設けられている。器具枠固定部9は、請求項の固定部に該当する。これら上下一対一組の器具枠固定部9,9は、ボス部の孔内面に雌ネジが形成され、器具枠30に設けられたビス通孔32を挿通した器具枠固定ビス33が壁表側から取着される。
【0018】
図2及び図3に示す基台8において、それぞれの器具枠固定部9の脇である、器具枠固定部9から側壁3の内面に向けて斜めに離間する位置には、器具枠30の後述する透孔36に挿入されて係合する係合部10が設けられている。係合部10は、柱状を成し、透孔36が部分重合するようにずれた位置に形成された少なくとも2種類の器具枠30に対応すべく、それぞれの器具枠30の透孔36の内周面37における、部分重合している内面38に当接する当接部11a及び当接部11bからなる2つの当接部11が、それぞれ相反する外面12a及び外面12bに形成されている。各当接部11の外面12は各器具枠30の透孔36の内面38に沿う弧状面に形成されている。この例では、当接部11aの外面12aは、半円弧状の弧状面に形成され、当接部11bの外面12bは当接部11aの外面12aより曲率半径が大きい円弧状の弧状面に形成されている。なお、当接部11の外面12は、透孔36の内面38に沿う弧状面に形成されていて、両外面12の曲率半径は、それぞれの器具枠30の透孔36に対応して同一の場合もあるし異なっている場合もある。
【0019】
係合部10は、器具枠固定部9の脇に設けられた貫通孔13の内部に、外面12が貫通孔13の内面からほぼ等間隔で離間して貫通孔13の軸に沿って前面側の一部が外方に突出した状態で設けられており、貫通孔13の内面とは一部肉厚の薄張りで形成された連結部14によって破断可能に連結されている。
【0020】
また、係合部10は、中央部に円柱状の凹部からなる工具掛け凹部10aが形成されている。工具掛け凹部10aは、係合部10を打ち抜くときの工具が掛けられる箇所であり、ドライバーなどの工具を挿し込んで打撃を与えることにより連結部14を破断して係合部10を打ち抜いて基台8から除去できるようになっている。
【0021】
基台8において幅方向中央の垂直線を挟んで係合部10とは反対側の部分は、貫通孔7に電線管コネクタ61を接続する操作を行う際に指を入れ易くするための操作空間15となっている。また、基台8において器具枠固定部9、係合部10及び操作空間15それぞれの側壁3に隣接する部分には、基台8の内部側に一定深さで凹んだ逃がし凹部16が形成されている。この逃がし凹部16は、器具枠30の裏面に突設された、建物の壁面に使用する際に壁面に食い込む突起との干渉を回避するために形成されたものである。
【0022】
図2(b)の拡大図で、基台8における器具枠固定部9の真下の逃がし凹部16の幅方向中央には、一定幅で外部側に僅かに突出する細長板状のセンター表示部17が垂直に設けられている。更に、係合部10及び操作空間15それぞれの真下の逃がし凹部16において、器具枠30の透孔36の中心を通る垂直線と対応する部分には、各逃がし凹部16と開口縁部との間に側壁3の内面から僅かに突出する一定幅の補助突起18が設けられている。一対の補助突起18,18は、器具枠固定部9の中央を通る垂直線を中心に左右対称位置に設けられており、このうち係合部10側の補助突起18は係合部10の中心を通る垂直線上にも位置する。基台8の左右両端部には基台8の立設状態を補強するための補強壁19が設けられている。これらの構成は図2(a)の上部側の基台8についても同じである。
【0023】
一方、器具枠30は、図4に示すように、縦長矩形板状に形成され、中央部に形成された開口31に配線器具20が挿入され取付けられており、配線ボックス1の開口部4に縦長向きに取り付けられる。配線器具20は表面側に所定厚突出し、裏面側から突出した部分は配線ボックス1内に収容される。器具枠30の上部及び下部の幅方向中間部には、器具枠30を配線ボックス1に固定するための器具枠固定ビス33が挿通されるビス通孔32が上下に一対形成されている。本実施形態の器具枠30は、壁裏に設置される配線ボックス1に使用されるものと共通するものであり、ビス通孔32は、壁裏に設置された配線ボックスが傾斜、横ずれ等に位置ずれして設置されても配線器具20を傾斜することなく正規の位置に取り付けるべく長孔に形成されている。
【0024】
上部のビス通孔32の真上の端部及び下部のビス通孔32の真下の端部は、表面側に台形状に切起こし成形された突出平面部34が設けられており、その中央には、化粧プレート取付枠40を固定するための化粧プレート取付枠固定孔35が形成されている。化粧プレート取付枠固定孔35の内周面は、化粧プレート取付枠40を取り付けるためのビス44が取着されるよう雌ネジに形成されている。更に、各化粧プレート取付枠固定孔35の両側方には、位置決めのための配線ボックス1の係合部10が挿入可能な丸孔からなる透孔36が設けられている。
【0025】
器具枠30は、透孔36が部分重合するように互いにずれた位置に形成された複数種類が存在する。例えば、図5に示すように、2つの器具枠30A、30Bは上部及び下部それぞれの水平方向の透孔36間のピッチは互いに同一であるが、左側の器具枠30Aは、上部2箇所の透孔36a及び下部2箇所の透孔36aが、それぞれ右側の器具枠30Bの上部2箇所の透孔36b及び下部2箇所の透孔36bより距離Lだけ上下方向にずれており、器具枠30Aの上下の透孔36a間のピッチP1は、器具枠30Bの上下の透孔36b間のピッチP2に比べて距離L×2だけ小さい。2種類の器具枠30の透孔36の位置ずれを模式的に示すと、図6に示すように、上下方向で部分重合する2つの円になり、実線の円は器具枠30Aの透孔36aの内周面37aを示し、二点鎖線の円は器具枠30Bの透孔36bの内周面37bを示す。なお、複数種類の器具枠30間の透孔36の位置ずれは、この例のように透孔36間のピッチが互いにずれて生じる場合もあるし、透孔36間のピッチは同一でも斜め方向に互いにずれることによって生じる場合もある。
【0026】
次に、化粧プレート取付枠40は、図1に示すように、矩形枠板状に形成され、中央に配線器具20を挿入可能な矩形状の開口41が形成されている。化粧プレート取付枠40は、外周縁に配線ボックス1の開口部4の周縁に当接するフランジ42が形成され、外形が化粧プレート50と同一の大きさ、形状に形成されている。化粧プレート取付枠40の幅方向中間の上端部及び下端部にはビス挿通孔43が上下に一対設けられており、上下一対のビス挿通孔43,43の間隔は、器具枠30の上下一対の化粧プレート取付枠固定孔35,35の間隔と同一に形成されている。ビス挿通孔43には器具枠30の化粧プレート取付枠固定孔35に取着されるビス44が挿通される。化粧プレート取付枠40の周縁部4箇所には、化粧プレート50の係合爪52が挿入され係合する被係合孔45が設けられている。
【0027】
化粧プレート50は、矩形枠板状に形成され、裏面において化粧プレート取付枠40の被係合孔45と対応する位置の4箇所には、化粧プレート取付枠40側に突出する係合片51が形成され、その先端には化粧プレート取付枠40の被係合孔45と係合する係合爪52が形成されている。化粧プレート50の中央部には配線器具20の前面側が挿入される開口53が形成されており、その開口53は配線器具20の外形と同一の大きさ、形状に形成され、設置後は、配線器具20の前面のみが壁表側に僅かな高さだけ露出する。
【0028】
次に、上記のように構成された本実施形態の配線ボックス1を建物の壁表面Wに設置し、配線器具20を取り付ける方法を図7に基づいて説明する。
最初に、直状管63を壁面に沿って固定する。次いで、直状管63の端部外面に接着剤を塗布してここに電線管コネクタ61を接続し固定する。次に、貫通孔7を閉塞しているキャップ62を取り外し、あるいは図示しないが貫通孔7に設けられたノックを打ち抜いて、その開孔に電線管コネクタ61を取り付ける。そして、配線ボックス1の底壁2の壁固定孔6にビスを挿通し壁表面Wに取着して配線ボックス1を壁表側に露出する状態で固定する。その後、ケーブル60を直状管63内に配線し、配線ボックス1の内部空間5内に引き出す。そして、ケーブル60の端部を配線ボックス1の開口部4から壁表側に引き出して配線器具20に接続する。なお、上記手順で、壁面への直状管63の固定と配線ボックス1の固定とは逆の順であってもよい。
【0029】
続いて、配線器具20が取り付けられている器具枠30を配線ボックス1の前面に当接し、配線器具20とケーブル60の端部とを配線ボックス1の内部空間5内に収容する。収容後の状態を図7に示す。図7は、図3のB-B切断線で切断した部分の断面図である。ここで、器具枠30を配線ボックス1の前面に当接するとき、配線ボックス1の上下一対の係合部10,10は、器具枠30の4箇所の透孔36のうち配線ボックス1の係合部10と対応する対角線方向の2箇所の透孔36に、すなわち図4(b)の器具枠30において上部においては右側の透孔36に、下部においては左側の透孔36に挿入する。このとき、係合部10の外面は、透孔36とほぼ一致する大きさの真円状のものではなく、外面12が2種類の器具枠30のそれぞれの透孔36の内周面37における部分重合している内面38に当接する当接部11aと当接部11bとに形成されているから、係合部10は透孔36の周縁と干渉することなく透孔36内に挿入することができる。
【0030】
係合部10を透孔36に挿入した後の係合状態を図6に示す。図6において、係合部10の当接部11aは、器具枠30Aの実線で示す透孔36aの内周面37aのうち、器具枠30Aの透孔36aに対して器具枠30Bの二点鎖線で示す透孔36bがずれた側の内面38aに当接し、係合部10の当接部11bは、器具枠30Bの透孔36bの内周面37bのうち、器具枠30Bの透孔36bに対して器具枠30Aの透孔36aがずれた側の内面38bに当接する。
【0031】
このようにして係合部10と透孔36とが係合すると、器具枠30は配線ボックス1に対して正規の箇所に位置決めされる。そこで、この状態で、器具枠30のビス通孔32に器具枠固定ビス33を挿通し、配線ボックス1の器具枠固定部9にねじ込む。これにより、器具枠30は、配線ボックス1に対して傾斜、横ずれ等に位置ずれすることなく正規の位置に固定される。
【0032】
この後は、器具枠30の前面側から化粧プレート取付枠40の上下一対のビス挿通孔43,43にビス44を挿通し、器具枠30の上下一対の化粧プレート取付枠固定孔35,35にねじ込んで化粧プレート取付枠40を取り付ける。最後に、その前面側から化粧プレート取付枠40に対して化粧プレート50を押し付け、裏面側の係合爪52を化粧プレート取付枠40の被係合孔45に係合して取り付ける。これにより、配線器具20の前面部のみが露出した状態で配線ボックス1及び器具枠30の前面側が化粧プレート50で覆われる。
【0033】
ここで、係合部10と各透孔36との係合において、係合部10の外面12は各透孔36の内周面37より小さいので、係合後、各透孔36の内周面37においては係合部10との間に若干の隙間を生じる。しかし、器具枠30の4箇所に設けられている透孔36は、通常、上下左右対称位置に設けられており、上下一対の透孔36,36は、器具枠30の高さ方向の中間を通る水平線を軸に上下対称位置に設けられ、また、左右一対の透孔36,36は、器具枠30の幅方向の中間を通る垂直線を軸に左右対称位置に設けられている。
【0034】
このため、例えば、図6の器具枠30の場合、上側の係合部10は、器具枠30Aの透孔36aの内周面37aのうち、器具枠30Aの透孔36aに対して器具枠30Bの透孔36bがずれた上側の内面38aに当接し、一方、下側の係合部10は、反対に、器具枠30Aの透孔36aの内周面37aのうち、器具枠30Aの透孔36aに対して器具枠30Bの透孔36bがずれた下側の内面38aに当接する。すなわち、器具枠30Aの場合、係合部10は、上下一対の透孔36a,36aにおいて互いに外方に離間する上下反対側の内面38aに当接する。また、器具枠30Bの場合、係合部10は、上下一対の透孔36b,36bにおいて逆に互いに内方に近接した上下反対側の内面38bに当接する。このため、器具枠30A、30Bいずれにおいても、各係合部10が透孔36内で隙間側に移動するのが規制される。その結果、各透孔36が係合部10に対して移動することがなく器具枠30は一定位置に安定して保持される。
【0035】
次に、本実施形態の配線ボックス1の作用を説明する。
2種類の器具枠30において、配線ボックス1の係合部10が係合するそれぞれの透孔36の位置が互いにずれているときに、係合部10の外面が透孔36とほぼ一致する大きさの真円の柱形状のものであると、係合部10は、一方の器具枠30の透孔36には挿入できるが、他方の透孔36に対しては透孔36の周縁と干渉して挿入できないために、1種類の器具枠30しか配線ボックス1に取り付けることはできない。しかし、本実施形態の配線ボックス1は、透孔36が部分重合するように互いにずれた位置に形成された少なくとも2種類の器具枠30に対応すべく、係合部10は、少なくとも2種類の器具枠30のそれぞれの透孔36の内周面37における前記部分重合している内面38に当接する当接部11が相反する外面12に形成されているので、少なくとも2種類の器具枠30のいずれの透孔36にも挿入して係合させることができる。このため、少なくとも2種類の器具枠30に対応してこれを正規の箇所に位置決めして配線ボックス1に取り付けることができる。
【0036】
また、係合部10の当接部11は、器具枠30の透孔36の内面38に沿う弧状面に形成されている。これにより、係合部10の当接部11は、広い範囲で透孔36の内面38に沿って当接するので、係合部10と透孔36とはより安定して係合する。
【0037】
加えて、係合部10と透孔36とが係合して器具枠30は正規の箇所に安定して保持されるので、設置後に、配線器具20に接続されるプラグ等に捩れ、引張り等の外力が加わったときに、器具枠30及び配線器具20が移動したり、傾斜したりするのが防止される。
【0038】
次に、透孔36が部分重合するように互いにずれた位置に形成された別の複数種類の器具枠30に対応して、係合部10を透孔36に係合させて位置決めする例を図8に示す。図8では、図5に示す器具枠30Aの透孔36aと、別の器具枠30において透孔36aに対して部分重合するようにずれた位置に形成されている各種透孔と、の間での係合部10の係合状態を示す。なお、図8では、各器具枠30の中間部は省略してあり、上部及び下部のみを示す。
【0039】
図8(a)は、3種類の器具枠30に対応する場合を示す。図8(a)の拡大図に示した3種類の透孔36は、図5に示した互いに透孔36が上下方向にずれている2種類の器具枠30A、30Bのそれぞれの透孔36a、36bに対して、更に別の器具枠30の透孔36cが部分重合するようにずれた三重円になっている。三重円において透孔36cは一点鎖線で示されており、器具枠30aの透孔36aより小さくその内部に収まっている。この場合、係合部10は、透孔36cについては、その内周面37cのうち、器具枠30の透孔36cに対して器具枠30Bの透孔36bがずれた側の内面38cに当接する。なお、この例の係合部10は、図2(b)に示した係合部10と同様の形状になっている。
【0040】
図8(b)は、2種類の器具枠30が使用される場合であって、器具枠30Aの透孔36aに対して別の器具枠30の透孔36dが部分重合するように水平方向にずれた位置に形成されている例を示す。なお、この例では、係合部10は、各器具枠30の2つの透孔36が同一の大きさであるから、相反する外面12に形成された2つの当接部11の各外面12は同一曲率半径の弧状面になっており、反対称形状になっている。
【0041】
図8(c)は、器具枠30Aの透孔36aに対して別の器具枠30の透孔36eが部分重合するように斜め方向にずれた位置に形成されている例を示す。この場合、係合部10が、図6図8(a)、(b)の例と同様に、対角線方向の2箇所のみに設けられていると、係合部10の外面12と各透孔36の内周面37との間には若干の隙間を生じているので、器具枠30をその中心を軸に図8(c)の左方向に回動させると、器具枠30は左方向に少しだけ傾く。そこで、図8(c)に示すように、配線ボックス1に係合部10が4箇所設けられていると、器具枠30は左右いずれの方向への回動も規制され、係合部10は各透孔36内で移動することなく器具枠30は一定位置に安定して保持される。なお、この例の場合は、図2に示す上下一対の基台8,8には操作空間15は設けられておらず、この部分にも係合部10が形成されている。但し、係合部10の外面12と透孔36の内周面37との隙間が小さくて器具枠30の位置決めにはほとんど影響しない場合は、前記各例と同様に、係合部10は対角線方向の2箇所のみに設けてもよい。
【0042】
なお、以上の各例では、係合部10の外面12は、透孔36の内面38に沿う弧状面に形成されているが、本発明の係合部10の外面12は、必ずしも透孔36の内面38に沿う弧状面に形成されたものでなくてもよい。また、係合部10の外面12は、弧状面に形成しなくてもよく、例えば、図8(d)に示す例のように、断面矩形の柱状に形成してもよい。
【0043】
次に、上記実施形態では、係合部10と器具枠30の透孔36とを係合させて器具枠30を位置決めしているが、これに加えて更に補助的に位置決め手段を設けてもよい。例えば、図2及び図3に示すように、配線ボックス1の上下一対の基台8,8には、それぞれ幅方向中間位置にセンター表示部17が設けられており、化粧プレート取付枠固定孔35から覗き込んで、この固定孔の位置とセンター表示部17の位置とを目視で一致させ、これにより、より確実かつ正確に器具枠30を位置決めして配線ボックス1に固定することもできる。
【0044】
また、図2及び図3に示すように、上下一対の基台8,8の各端縁部には補助突起18が左右一対設けられており、これに器具枠30の上端面あるいは下端面をあてがいまたは近接させることにより位置決め操作を補助してもよい。
【0045】
なお、上記実施形態では、化粧プレート50は、化粧プレート取付枠40を介して配線ボックス1に取り付けているが、図示しないが、配線ボックス1の開口部4の周縁部の複数個所に内部空間5側に突出する被係合体を設けてこれに化粧プレート50の裏面に設けた係合爪52を係合させることにより、化粧プレート取付枠40を介することなく直接配線ボックス1に取り付けるものとしてもよい。
【0046】
ところで、上記実施形態の配線ボックス1は、1つの器具枠30を取り付けるものであるが、2つ以上の器具枠30が取り付けられるものとすることもできる。図9は2つの器具枠30を横に並列に取り付けるものを示し、この場合も、本発明を同様に適用することができる。
【0047】
また、上記実施形態では、係合部10は器具枠30の対角線方向の2つの透孔36に係合させているので安定して位置決めできるが、これに限られるものではなく、上部または下部の水平方向に位置する同じ側の2つの透孔36のみに係合させたり、右側または左側の上下方向に位置する同じ側の2つの透孔36のみに係合させることを妨げるものではない。
【0048】
更には、配線ボックス1の基台8には電線管コネクタ61を操作する際に指を入れ易くするための操作空間15を形成しているが、操作空間15を形成せず、この部分にも係合部10を設け、図8(c)の例で述べたように計4個の係合部10を設けて、係合部10と透孔36とを4箇所で係合させてもよく、この場合は、より確実かつ安定して位置決めすることができる。
【0049】
なお、上記各実施形態の係合部10は、上記各器具枠30とは別の特定の器具枠30を使用したときに、その器具枠30が係合部10と干渉して取り付けできない場合は、打ち抜いて除去することができる。
【0050】
また、係合部10と透孔36との係合により器具枠30を位置決めするのではなく、係合部10を打ち抜いて除去し、配線ボックス1の前面に器具枠30の周縁と当接して取付位置を規制する突起片等を複数設けるなどして別の手段により器具枠30を位置決めすることができる場合にも、係合部10は打ち抜いて除去することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:配線ボックス、4:開口部、9:器具枠固定部(固定部)、10:係合部、11、11a、11b:当接部、12、12a、12b:外面、20:配線器具、30、30A、30B:器具枠、32:ビス通孔、33:器具枠固定ビス、36、36a、36b、36c、36d、36e:透孔、37、37a、37b、37c:内周面、38、38a、38b、38c:内面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9