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特開2024-137551インクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137551
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置およびインクジェット印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 209
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049110
(22)【出願日】2023-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】清水 圭吾
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA08
2C056EC79
2C056EC80
2C056FA13
(57)【要約】
【課題】千鳥状に配置された複数個の記録ヘッドを有するヘッドユニットを備えたインクジェット印刷装置に関し、印刷画像のうちヘッド重複部で印刷された部分にスジが現れることを抑制する。
【解決手段】少なくとも、下流側記録ヘッドの端部に設けられているノズルであって上流側記録ヘッドに含まれている2つのノズルからインクが吐出されることによって形成される2つのドットの双方に隣接するドットを形成するためのノズルが第1補正対象ノズルに定められる。インク量補正部155は、第1補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも多くなるように、かつ、第2補正対象ノズル(第1補正対象ノズルの隣接ノズル)から吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも多くなるように、画像データ42のデータ値を補正する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体にインクを吐出することにより印刷を行うインクジェット印刷装置であって、
前記印刷媒体を搬送する搬送機構と、
インクを吐出する複数個のノズルをそれぞれが含む複数個の記録ヘッドであって前記印刷媒体の搬送方向と直交する幅方向に千鳥状に配置された複数個の記録ヘッドを有するヘッドユニットと、
入力画像データのデータ値を補正することにより補正画像データを生成する画像データ補正部を含み、前記複数個の記録ヘッドに含まれている各ノズルから吐出されるインク量を前記補正画像データに基づいて制御する印刷制御部と
を備え、
前記ヘッドユニットは、前記複数個の記録ヘッドのうちの前記印刷媒体の搬送方向の上流側に配置されている記録ヘッドである上流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルのみからインクが吐出される先行印字部と、前記複数個の記録ヘッドのうちの前記印刷媒体の搬送方向の下流側に配置されている記録ヘッドである下流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルのみからインクが吐出される後続印字部と、前記上流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルと前記下流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルとからインクが吐出されるヘッド重複部とからなり、
前記ヘッド重複部において前記印刷媒体にインクが吐出されることによって前記印刷媒体の搬送方向に一列に形成される各ドット列は、前記上流側記録ヘッドおよび前記下流側記録ヘッドのいずれか一方に含まれている1個のノズルからインクが吐出されることによって形成され、
少なくとも、前記下流側記録ヘッドの端部に設けられているノズルであって前記上流側記録ヘッドに含まれている2つのノズルからインクが吐出されることによって形成される2つのドットの双方に隣接するドットを形成するためのノズルが第1補正対象ノズルに定められ、
前記第1補正対象ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接する2つのドットを形成するための2つのノズルのそれぞれが第2補正対象ノズルに定められ、
前記画像データ補正部は、前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量が前記入力画像データに基づくインク量よりも多くなるように、かつ、前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量が前記入力画像データに基づくインク量よりも多くなるように、前記入力画像データのデータ値を補正することを特徴とする、インクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記第1補正対象ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りの2つドットを形成するための2つのノズルのそれぞれが第3補正対象ノズルに定められ、
前記画像データ補正部は、前記第3補正対象ノズルから吐出されるインク量が前記入力画像データに基づくインク量よりも少なくなるように前記入力画像データのデータ値を補正することを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記画像データ補正部は、前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量と前記第2補正対象ノズルに定められた2つのノズルの一方から吐出されるインク量の補正による増加量と前記第2補正対象ノズルに定められた2つのノズルの他方から吐出されるインク量の補正による増加量との和と前記第3補正対象ノズルに定められた2つのノズルの一方から吐出されるインク量の補正による減少量と前記第3補正対象ノズルに定められた2つのノズルの他方から吐出されるインク量の補正による減少量との和とが等しくなるように、前記入力画像データのデータ値を補正することを特徴とする、請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項4】
前記印刷制御部は、前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量を補正するために前記入力画像データのデータ値と前記補正画像データのデータ値とを対応付けた第1の対応関係データ、前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量を補正するために前記入力画像データのデータ値と前記補正画像データのデータ値とを対応付けた第2の対応関係データ、および前記第3補正対象ノズルから吐出されるインク量を補正するために前記入力画像データのデータ値と前記補正画像データのデータ値とを対応付けた第3の対応関係データを含む変換テーブルを備え、
前記画像データ補正部は、前記変換テーブルに基づいて、前記入力画像データのデータ値を補正することを特徴とする、請求項2に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項5】
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きく、
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きく、
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第3補正対象ノズルに対応する場合における前記第3補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による減少量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第3補正対象ノズルに対応する場合における前記第3補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による減少量よりも大きいことを特徴とする、請求項4に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項6】
前記印刷制御部は、前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量を補正するために前記入力画像データのデータ値と前記補正画像データのデータ値とを対応付けた第1の対応関係データおよび前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量を補正するために前記入力画像データのデータ値と前記補正画像データのデータ値とを対応付けた第2の対応関係データを含む変換テーブルを備え、
前記画像データ補正部は、前記変換テーブルに基づいて、前記入力画像データのデータ値を補正することを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項7】
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きく、
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きいことを特徴とする、請求項6に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項8】
前記印刷制御部は、前記変換テーブルを複数備え、
前記画像データ補正部は、前記印刷媒体の種類に応じて、前記入力画像データのデータ値を補正する際に用いる変換テーブルを切り替えることを特徴とする、請求項6に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項9】
前記印刷制御部は、前記変換テーブルを複数備え、
前記画像データ補正部は、印刷モードに応じて、前記入力画像データのデータ値を補正する際に用いる変換テーブルを切り替えることを特徴とする、請求項6に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項10】
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きく、
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項11】
前記ヘッド重複部において前記下流側記録ヘッドに含まれている各ノズルを着目ノズルとして、前記ヘッド重複部において前記印刷媒体上に形成されるドットのうち前記下流側記録ヘッドに含まれているノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの割合が50%以下となる領域である下流側低密度領域の前記下流側記録ヘッドに前記着目ノズルが設けられていて、かつ、前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接する2つのドットを形成するための2つのノズルの双方が前記上流側記録ヘッドに含まれていて、かつ、前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りの2つのドットを形成するための2つのノズルのうちの少なくとも一方が前記上流側記録ヘッドに含まれていれば、前記着目ノズルが更に前記第1補正対象ノズルに定められることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項12】
前記ヘッド重複部において前記下流側記録ヘッドに含まれている各ノズルを着目ノズルとして、前記ヘッド重複部において前記印刷媒体上に形成されるドットのうち前記下流側記録ヘッドに含まれているノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの割合が50%以下となる領域である下流側低密度領域の前記下流側記録ヘッドに前記着目ノズルが設けられていて、かつ、前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接する2つのドットを形成するための2つのノズルの双方が前記上流側記録ヘッドに含まれていて、かつ、前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りの2つのドットを形成するための2つのノズルのうちの少なくとも一方が前記上流側記録ヘッドに含まれていて、かつ、前記着目ノズルを基準として前記先行印字部側および前記後続印字部側の少なくとも一方において前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りのドットを形成するためのノズルが前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接するドットを形成するためのノズルよりも前記印刷媒体の搬送方向の上流側に配置されていれば、前記着目ノズルが更に前記第1補正対象ノズルに定められることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項13】
前記印刷制御部は、前記第1補正対象ノズルに定めるノズルを特定する情報をユーザーが登録するための補正対象ノズル登録部を有することを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項14】
前記印刷制御部は、
前記複数個のノズルのそれぞれが前記先行印字部、前記後続印字部、および前記ヘッド重複部のいずれに含まれているのかを示す情報を含むノズル情報を保持するノズル情報保持部と、
前記ノズル情報に基づいて各ノズルが前記第1補正対象ノズルに該当するかの判断を行い、その判断の結果を前記画像データ補正部が参照可能なように登録する補正対象ノズル登録部と
を有することを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項15】
前記ヘッド重複部では、前記印刷媒体上の所定の大きさの範囲内に形成されるドットのうち前記下流側記録ヘッドに含まれているノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの割合が、前記先行印字部側から前記後続印字部側に近づくにつれて高くなることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項16】
印刷媒体を搬送する搬送機構と、インクを吐出する複数個のノズルをそれぞれが含む複数個の記録ヘッドであって前記印刷媒体の搬送方向と直交する幅方向に千鳥状に配置された複数個の記録ヘッドを有するヘッドユニットとを備えたインクジェット印刷装置を用いて、前記印刷媒体にインクを吐出することにより印刷を行うインクジェット印刷方法であって、
前記ヘッドユニットは、前記複数個の記録ヘッドのうちの前記印刷媒体の搬送方向の上流側に配置されている記録ヘッドである上流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルのみからインクが吐出される先行印字部と、前記複数個の記録ヘッドのうちの前記印刷媒体の搬送方向の下流側に配置されている記録ヘッドである下流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルのみからインクが吐出される後続印字部と、前記上流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルと前記下流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルとからインクが吐出されるヘッド重複部とからなり、
前記ヘッド重複部において前記印刷媒体にインクが吐出されることによって前記印刷媒体の搬送方向に一列に形成される各ドット列は、前記上流側記録ヘッドおよび前記下流側記録ヘッドのいずれか一方に含まれている1個のノズルからインクが吐出されることによって形成され、
前記インクジェット印刷方法は、
前記下流側記録ヘッドの端部に設けられているノズルであって前記上流側記録ヘッドに含まれている2つのノズルからインクが吐出されることによって形成される2つのドットの双方に隣接するドットを形成するためのノズルを少なくとも含む1以上のノズルを第1補正対象ノズルとして特定する第1補正対象ノズル特定ステップと、
前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量が入力画像データに基づくインク量よりも多くなるように、かつ、前記第1補正対象ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接するドットを形成するためのノズルである第2補正対象ノズルから吐出されるインク量が前記入力画像データに基づくインク量よりも多くなるように前記入力画像データのデータ値を補正することにより補正画像データを生成する画像データ補正ステップと、
前記補正画像データにハーフトーン処理を施すことによって、前記複数個の記録ヘッドに含まれている各ノズルから吐出されるインク量を制御する吐出制御データを生成する吐出制御データ生成ステップと、
前記複数個の記録ヘッドに含まれている各ノズルが前記吐出制御データに基づいて前記印刷媒体にインクを吐出するインク吐出ステップと
を含むことを特徴とする、インクジェット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、千鳥状に配置された複数個の記録ヘッドを有するヘッドユニットを備えたインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱や圧力によってインクを印刷用紙やフィルムなどの印刷媒体に吐出することにより印刷を行うインクジェット印刷装置が広く普及している。ワンパス方式(シングルパス方式)での高速な印刷を行うインクジェット印刷装置には、例えば、インクの色毎に、印刷媒体の搬送方向とは直交する幅方向に千鳥状に配置された複数個の記録ヘッドを有するヘッドユニットが設けられている。各記録ヘッドには、インクを吐出する多数のノズルが含まれている。
【0003】
上述したように、ヘッドユニットには、複数個の記録ヘッドが千鳥状に配置されている。これに関し、印刷媒体の搬送方向の上流側に配置された記録ヘッド(以下、「上流側記録ヘッド」という。)および印刷媒体の搬送方向の下流側に配置された記録ヘッド(以下、「下流側記録ヘッド」という。)の双方からインクが吐出される部分すなわち上流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルと下流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルとからインクが吐出される部分(以下、「ヘッド重複部」という。)がある。なお、以下、ヘッドユニットに関し、上流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルのみからインクが吐出される部分を「先行印字部」といい、下流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルのみからインクが吐出される部分を「後続印字部」という。
【0004】
図28は、ヘッド重複部におけるノズルの配置について説明するための図である。なお、図28に関し、符号9を付した矢印で示す範囲部分がヘッド重複部であり、符号9Uを付した矢印で示す範囲部分が先行印字部であり、符号9Dを付した矢印で示す範囲部分が後続印字部である。また、図28では、実際にインクを吐出する有効ノズルを黒丸で示し、インクの吐出を行わない無効ノズルを白丸で示している(図5図13図22、および図31も同様)。例えば、符号93を付したノズルが有効ノズルであり、符号94を付したノズルが無効ノズルである。
【0005】
ここで、図28において符号901~905を付した矢印で示す領域に着目する。領域901については、上流側記録ヘッド91には7個の有効ノズルが存在し、下流側記録ヘッド92には1個の有効ノズルが存在する。領域902については、上流側記録ヘッド91には6個の有効ノズルが存在し、下流側記録ヘッド92には2個の有効ノズルが存在する。領域903については、上流側記録ヘッド91には4個の有効ノズルが存在し、下流側記録ヘッド92には4個の有効ノズルが存在する。領域904については、上流側記録ヘッド91には2個の有効ノズルが存在し、下流側記録ヘッド92には6個の有効ノズルが存在する。領域905については、上流側記録ヘッド91には1個の有効ノズルが存在し、下流側記録ヘッド92には7個の有効ノズルが存在する。以上のように、ヘッド重複部9では、先行印字部9U側から後続印字部9D側に近づくにつれて、下流側記録ヘッド92に有効ノズルが設けられている割合が高くなっている。このような構成を採用することによって、2つの記録ヘッド間で画像の不連続さが現れることが抑制されている。
【0006】
ところで、上記のようなインクジェット印刷装置においてインクの吐出不良が生じると、印刷画像において、吐出不良状態のノズルに対応するドット(画素)の欠落すなわちドット抜けが生じる。このようなドット抜けを目立たなくする技術が、例えば特開2015-054453号公報および特開2015-054454号公報に開示されている。特開2015-054453号公報に開示された技術によれば、第1ノズル(吐出不良状態のノズル)に隣接する第2ノズルから吐出されるインクのドットサイズが画像データに基づくドットサイズよりも大きいサイズに変更され、第3ノズル(第2ノズルに隣接するノズルのうち第1ノズルを除くノズル)から吐出されるインクのドットサイズが第2ノズルから吐出されるインクの変更後のドットサイズよりも小さいサイズに変更される。特開2015-054454号公報に開示された技術によれば、第1ノズル(吐出不良状態のノズル)により印刷されるべき第1画素に隣接する第2画素の濃度を増加させる補正および第3画素(第2画素に隣接する画素のうち第1画素を除く画素)の濃度を低下させる補正が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-054453号公報
【特許文献2】特開2015-054454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、印刷画像のうち上述したヘッド重複部9で印刷された部分において、例えば図29で符号95を付した矢印で示すようなスジが現れることがある。これについて、以下に説明する。
【0009】
ヘッド重複部9(図28参照)では、上流側記録ヘッド91に含まれている有効ノズルおよび下流側記録ヘッド92に含まれている有効ノズルからインクが吐出されるので、先行印字部9Uや後続印字部9Dに比べて、最上流側の有効ノズルからインクが吐出されてから最下流側の有効ノズルからインクが吐出されるまでの時間が長い。そのため、印刷中におけるインクの癒合に起因するインクの流動が印刷画像に大きな影響を及ぼすことがある。インクの癒合は、典型的には、インクの吐出位置が互いに隣接する2つのノズルから吐出されたインク(インク滴)間で発生する。例えば、図30のA部に示すように、或るノズルから吐出されたインク96が印刷媒体上に着弾していると仮定する。ここで、別のノズルから吐出されたインク97が図30のB部に示すように印刷媒体上に着弾すると、図30のC部に示すように、或るノズルから吐出されたインク96と別のノズルから吐出されたインク97とが癒合する。このようにして、印刷媒体上に先に着弾したインクの方へ印刷媒体上に後から着弾したインクが流動する。
【0010】
ここで、図31図33を参照しつつ、図28で符号909を付した矢印で示す領域での印刷によって生じる現象について説明する。図31は、図28の部分拡大図である。図32は、ベタ画像の印刷が行われるケースにおいて図31で符号921を付したライン上に位置するノズルからインクが4回吐出された時点における理想的な印刷画像を模式的に示した図である。図33は、ベタ画像の印刷が行われるケースにおいて図31で符号921を付したライン上に位置するノズルからインクが4回吐出された時点における上記インクの癒合を考慮した印刷画像を模式的に示した図である。なお、図31におけるライン911~913は、図32および図33におけるライン911~913に対応している。また、図31で符号921を付したライン上に位置するノズルからインクが4回吐出された時点に関し、図31におけるライン921~924は、図32および図33におけるライン921~924に対応している。上流側記録ヘッド91に含まれているノズルから吐出されて印刷媒体上に着弾したインクは、印刷媒体の搬送によって極めて短時間で下流側記録ヘッド92の位置に到達するわけではない。それ故、上流側記録ヘッド91に含まれている複数のノズルからのインクの吐出によって、印刷媒体上に先に着弾したインクの方へ印刷媒体上に後から着弾したインクが流動する。従って、図30におけるインク96が図31のノズル996から吐出されたインクであって、図30におけるインク97が図31のノズル997から吐出されたインクであると仮定すると、図31のノズル998から吐出されたインク98が印刷媒体上に着弾した時には模式的には図30のD部に示すような状態となる。図30のD部に示す状態においては、インク97とインク98とは幅方向に離隔しているので、インク97とインク98との癒合が生じない。その結果、模式的には図33に示すような印刷画像が得られる。図33から、符号90を付した矢印で示す位置にスジが生じることが把握される。
【0011】
以上のように、印刷画像のうちヘッド重複部9(特に、下流側記録ヘッド92の端部)で印刷された部分においてスジが現れることがある。この現象は、特に、インクを弾きやすい基材を印刷媒体として採用している場合に発生しやすい。それ故、スジが現れないようにするために印刷媒体として採用する基材が限定されてしまうことがある。また、下流側記録ヘッド92に含まれているノズルから吐出されるインク量が十分に多ければスジが発生しないことも考えられるが、下流側記録ヘッド92に含まれているノズルから吐出されるインク量が十分に多くてもインクの着弾位置が目標とする位置から僅かにずれただけでスジが現れることがある。スジが現れないようにするためにインクの着弾ずれを防止する必要があるが、アライメント調整(ヘッドユニットの位置の調整)や印刷媒体の搬送制御に関して高いレベルの精度が必要となり、コストアップが強いられる。
【0012】
なお、特開2015-054453号公報に開示された技術および特開2015-054454号公報に開示された技術によれば、ドット抜けによるスジの発生を抑制することはできるが、ヘッド重複部9で印刷された部分におけるスジの発生を抑制することはできない。
【0013】
そこで、本発明は、千鳥状に配置された複数個の記録ヘッドを有するヘッドユニットを備えたインクジェット印刷装置に関し、印刷画像のうちヘッド重複部で印刷された部分にスジが現れることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、印刷媒体にインクを吐出することにより印刷を行うインクジェット印刷装置であって、
前記印刷媒体を搬送する搬送機構と、
インクを吐出する複数個のノズルをそれぞれが含む複数個の記録ヘッドであって前記印刷媒体の搬送方向と直交する幅方向に千鳥状に配置された複数個の記録ヘッドを有するヘッドユニットと、
入力画像データのデータ値を補正することにより補正画像データを生成する画像データ補正部を含み、前記複数個の記録ヘッドに含まれている各ノズルから吐出されるインク量を前記補正画像データに基づいて制御する印刷制御部と
を備え、
前記ヘッドユニットは、前記複数個の記録ヘッドのうちの前記印刷媒体の搬送方向の上流側に配置されている記録ヘッドである上流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルのみからインクが吐出される先行印字部と、前記複数個の記録ヘッドのうちの前記印刷媒体の搬送方向の下流側に配置されている記録ヘッドである下流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルのみからインクが吐出される後続印字部と、前記上流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルと前記下流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルとからインクが吐出されるヘッド重複部とからなり、
前記ヘッド重複部において前記印刷媒体にインクが吐出されることによって前記印刷媒体の搬送方向に一列に形成される各ドット列は、前記上流側記録ヘッドおよび前記下流側記録ヘッドのいずれか一方に含まれている1個のノズルからインクが吐出されることによって形成され、
少なくとも、前記下流側記録ヘッドの端部に設けられているノズルであって前記上流側記録ヘッドに含まれている2つのノズルからインクが吐出されることによって形成される2つのドットの双方に隣接するドットを形成するためのノズルが第1補正対象ノズルに定められ、
前記第1補正対象ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接する2つのドットを形成するための2つのノズルのそれぞれが第2補正対象ノズルに定められ、
前記画像データ補正部は、前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量が前記入力画像データに基づくインク量よりも多くなるように、かつ、前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量が前記入力画像データに基づくインク量よりも多くなるように、前記入力画像データのデータ値を補正することを特徴とする。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
前記第1補正対象ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りの2つドットを形成するための2つのノズルのそれぞれが第3補正対象ノズルに定められ、
前記画像データ補正部は、前記第3補正対象ノズルから吐出されるインク量が前記入力画像データに基づくインク量よりも少なくなるように前記入力画像データのデータ値を補正することを特徴とする。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、
前記画像データ補正部は、前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量と前記第2補正対象ノズルに定められた2つのノズルの一方から吐出されるインク量の補正による増加量と前記第2補正対象ノズルに定められた2つのノズルの他方から吐出されるインク量の補正による増加量との和と前記第3補正対象ノズルに定められた2つのノズルの一方から吐出されるインク量の補正による減少量と前記第3補正対象ノズルに定められた2つのノズルの他方から吐出されるインク量の補正による減少量との和とが等しくなるように、前記入力画像データのデータ値を補正することを特徴とする。
【0017】
第4の発明は、第2の発明において、
前記印刷制御部は、前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量を補正するために前記入力画像データのデータ値と前記補正画像データのデータ値とを対応付けた第1の対応関係データ、前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量を補正するために前記入力画像データのデータ値と前記補正画像データのデータ値とを対応付けた第2の対応関係データ、および前記第3補正対象ノズルから吐出されるインク量を補正するために前記入力画像データのデータ値と前記補正画像データのデータ値とを対応付けた第3の対応関係データを含む変換テーブルを備え、
前記画像データ補正部は、前記変換テーブルに基づいて、前記入力画像データのデータ値を補正することを特徴とする。
【0018】
第5の発明は、第4の発明において、
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きく、
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きく、
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第3補正対象ノズルに対応する場合における前記第3補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による減少量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第3補正対象ノズルに対応する場合における前記第3補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による減少量よりも大きいことを特徴とする。
【0019】
第6の発明は、第1の発明において、
前記印刷制御部は、前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量を補正するために前記入力画像データのデータ値と前記補正画像データのデータ値とを対応付けた第1の対応関係データおよび前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量を補正するために前記入力画像データのデータ値と前記補正画像データのデータ値とを対応付けた第2の対応関係データを含む変換テーブルを備え、
前記画像データ補正部は、前記変換テーブルに基づいて、前記入力画像データのデータ値を補正することを特徴とする。
【0020】
第7の発明は、第6の発明において、
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きく、
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きいことを特徴とする。
【0021】
第8の発明は、第6の発明において、
前記印刷制御部は、前記変換テーブルを複数備え、
前記画像データ補正部は、前記印刷媒体の種類に応じて、前記入力画像データのデータ値を補正する際に用いる変換テーブルを切り替えることを特徴とする。
【0022】
第9の発明は、第6の発明において、
前記印刷制御部は、前記変換テーブルを複数備え、
前記画像データ補正部は、印刷モードに応じて、前記入力画像データのデータ値を補正する際に用いる変換テーブルを切り替えることを特徴とする。
【0023】
第10の発明は、第1の発明において、
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第1補正対象ノズルに対応する場合における前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きく、
前記入力画像データが示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、前記入力画像データが示すインク濃度が90%以上である画素が前記第2補正対象ノズルに対応する場合における前記第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きいことを特徴とする。
【0024】
第11の発明は、第1の発明において、
前記ヘッド重複部において前記下流側記録ヘッドに含まれている各ノズルを着目ノズルとして、前記ヘッド重複部において前記印刷媒体上に形成されるドットのうち前記下流側記録ヘッドに含まれているノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの割合が50%以下となる領域である下流側低密度領域の前記下流側記録ヘッドに前記着目ノズルが設けられていて、かつ、前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接する2つのドットを形成するための2つのノズルの双方が前記上流側記録ヘッドに含まれていて、かつ、前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りの2つのドットを形成するための2つのノズルのうちの少なくとも一方が前記上流側記録ヘッドに含まれていれば、前記着目ノズルが更に前記第1補正対象ノズルに定められることを特徴とする。
【0025】
第12の発明は、第1の発明において、
前記ヘッド重複部において前記下流側記録ヘッドに含まれている各ノズルを着目ノズルとして、前記ヘッド重複部において前記印刷媒体上に形成されるドットのうち前記下流側記録ヘッドに含まれているノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの割合が50%以下となる領域である下流側低密度領域の前記下流側記録ヘッドに前記着目ノズルが設けられていて、かつ、前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接する2つのドットを形成するための2つのノズルの双方が前記上流側記録ヘッドに含まれていて、かつ、前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りの2つのドットを形成するための2つのノズルのうちの少なくとも一方が前記上流側記録ヘッドに含まれていて、かつ、前記着目ノズルを基準として前記先行印字部側および前記後続印字部側の少なくとも一方において前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りのドットを形成するためのノズルが前記着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接するドットを形成するためのノズルよりも前記印刷媒体の搬送方向の上流側に配置されていれば、前記着目ノズルが更に前記第1補正対象ノズルに定められることを特徴とする。
【0026】
第13の発明は、第1の発明において、
前記印刷制御部は、前記第1補正対象ノズルに定めるノズルを特定する情報をユーザーが登録するための補正対象ノズル登録部を有することを特徴とする。
【0027】
第14の発明は、第1の発明において、
前記印刷制御部は、
前記複数個のノズルのそれぞれが前記先行印字部、前記後続印字部、および前記ヘッド重複部のいずれに含まれているのかを示す情報を含むノズル情報を保持するノズル情報保持部と、
前記ノズル情報に基づいて各ノズルが前記第1補正対象ノズルに該当するかの判断を行い、その判断の結果を前記画像データ補正部が参照可能なように登録する補正対象ノズル登録部と
を有することを特徴とする。
【0028】
第15の発明は、第1から第14までのいずれかの発明において、
前記ヘッド重複部では、前記印刷媒体上の所定の大きさの範囲内に形成されるドットのうち前記下流側記録ヘッドに含まれているノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの割合が、前記先行印字部側から前記後続印字部側に近づくにつれて高くなることを特徴とする。
【0029】
第16の発明は、印刷媒体を搬送する搬送機構と、インクを吐出する複数個のノズルをそれぞれが含む複数個の記録ヘッドであって前記印刷媒体の搬送方向と直交する幅方向に千鳥状に配置された複数個の記録ヘッドを有するヘッドユニットとを備えたインクジェット印刷装置を用いて、前記印刷媒体にインクを吐出することにより印刷を行うインクジェット印刷方法であって、
前記ヘッドユニットは、前記複数個の記録ヘッドのうちの前記印刷媒体の搬送方向の上流側に配置されている記録ヘッドである上流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルのみからインクが吐出される先行印字部と、前記複数個の記録ヘッドのうちの前記印刷媒体の搬送方向の下流側に配置されている記録ヘッドである下流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルのみからインクが吐出される後続印字部と、前記上流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルと前記下流側記録ヘッドに含まれている複数個のノズルとからインクが吐出されるヘッド重複部とからなり、
前記ヘッド重複部において前記印刷媒体にインクが吐出されることによって前記印刷媒体の搬送方向に一列に形成される各ドット列は、前記上流側記録ヘッドおよび前記下流側記録ヘッドのいずれか一方に含まれている1個のノズルからインクが吐出されることによって形成され、
前記インクジェット印刷方法は、
前記下流側記録ヘッドの端部に設けられているノズルであって前記上流側記録ヘッドに含まれている2つのノズルからインクが吐出されることによって形成される2つのドットの双方に隣接するドットを形成するためのノズルを少なくとも含む1以上のノズルを第1補正対象ノズルとして特定する第1補正対象ノズル特定ステップと、
前記第1補正対象ノズルから吐出されるインク量が入力画像データに基づくインク量よりも多くなるように、かつ、前記第1補正対象ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接するドットを形成するためのノズルである第2補正対象ノズルから吐出されるインク量が前記入力画像データに基づくインク量よりも多くなるように前記入力画像データのデータ値を補正することにより補正画像データを生成する画像データ補正ステップと、
前記補正画像データにハーフトーン処理を施すことによって、前記複数個の記録ヘッドに含まれている各ノズルから吐出されるインク量を制御する吐出制御データを生成する吐出制御データ生成ステップと、
前記複数個の記録ヘッドに含まれている各ノズルが前記吐出制御データに基づいて前記印刷媒体にインクを吐出するインク吐出ステップと
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
上記第1の発明によれば、下流側記録ヘッドの端部に存在しスジを生じやすいノズルが第1補正対象ノズルに定められ、第1補正対象ノズルから吐出されるインク量が入力画像データに基づくインク量よりも多くなるように入力画像データのデータ値が補正される。また、第1補正対象ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接するドットを形成するためのノズルである第2補正対象ノズルから吐出されるインク量についても入力画像データに基づくインク量よりも多くなるように入力画像データのデータ値が補正される。そして、入力画像データのデータ値を補正することによって生成される補正画像データに基づいて、各ノズルから吐出されるインク量が制御される。これにより、第1補正対象ノズルおよび第2補正対象ノズルからは本来よりも多くの量のインクが吐出されるので、印刷画像中にスジが現れにくい。以上のように、千鳥状に配置された複数個の記録ヘッドを有するヘッドユニットを備えたインクジェット印刷装置に関し、印刷画像のうちヘッド重複部で印刷された部分にスジが現れることが抑制される。
【0031】
上記第2の発明によれば、第1補正対象ノズルおよび第2補正対象ノズルから吐出されるインク量を本来よりも増加させる旨の補正を行うことに起因する濃度ムラの発生が抑制される。また、第3補正対象ノズル(第1補正対象ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りのドットを形成するためのノズル)から吐出されるインク量が本来よりも少なくなることによって、インクの癒合に起因するインクの流動が抑制されるので、スジの発生も効果的に抑制される。
【0032】
上記第3の発明によれば、補正によるインク量の増加量の総和と補正によるインク量の減少量の総和とが等しくなるので、濃度ムラの発生を効果的に抑制しつつ印刷画像のうちヘッド重複部で印刷された部分にスジが現れることを抑制することが可能となる。
【0033】
上記第4の発明によれば、インク量を細かく制御することが可能となるので、印刷画像のうちヘッド重複部で印刷された部分にスジが現れることが効果的に抑制される。
【0034】
上記第5の発明によれば、各濃度域において最適な量の補正を実行することが可能となる。
【0035】
上記第6の発明によれば、インク量を細かく制御することが可能となるので、印刷画像のうちヘッド重複部で印刷された部分にスジが現れることが効果的に抑制される。
【0036】
上記第7の発明によれば、各濃度域において最適な量の補正を実行することが可能となる。
【0037】
上記第8の発明によれば、印刷媒体の種類を考慮してインク量を補正することが可能となるので、より効果的に、印刷画像のうちヘッド重複部で印刷された部分にスジが現れることが抑制される。
【0038】
上記第9の発明によれば、印刷モードを考慮してインク量を補正することが可能となるので、より効果的に、印刷画像のうちヘッド重複部で印刷された部分にスジが現れることが抑制される。
【0039】
上記第10の発明によれば、各濃度域において最適な量の補正を実行することが可能となる。
【0040】
上記第11の発明によれば、さらに、下流側記録ヘッドの下流側低密度領域(ヘッド重複部において印刷媒体上に形成されるドットのうち下流側記録ヘッドに含まれているノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの割合が50%以下となる領域)に存在しスジを生じやすいノズルが第1補正対象ノズルに定められる。これにより、下流側記録ヘッドの下流側低密度領域に存在するノズルからのインクの吐出に起因するスジの発生が抑制される。
【0041】
上記第12の発明によれば、上記第11の発明と同様の効果が得られる。
【0042】
上記第13の発明によれば、印刷結果を考慮して、吐出するインク量を補正するノズルを定めることが可能となる。
【0043】
上記第14の発明によれば、各ノズルが第1補正対象ノズルに該当するか否かの判断が印刷制御部内で行われる。
【0044】
上記第15の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【0045】
上記第16の発明によれば、上記第1の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。
図2】上記実施形態におけるインクジェット印刷装置の一構成例を示す模式図である。
図3】上記実施形態における印刷部の一構成例を示す平面図である。
図4】上記実施形態における1つのヘッドユニットの一構成例を示す平面図である。
図5】上記実施形態において、ヘッド重複部におけるノズルの配置例を示す模式図である。
図6】上記実施形態において、ヘッド重複部におけるノズルの配置例を示す模式図である。
図7】上記実施形態における印刷制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8】上記実施形態において、印刷制御装置の制御部の概略機能構成を示すブロック図である。
図9】上記実施形態において、印刷制御部の詳細な機能構成を示すブロック図である。
図10】上記実施形態において、インク量補正処理の概略について説明するための図である。
図11】上記実施形態において、隣接ノズルおよび近接ノズルについて説明するための図である。
図12】上記実施形態において、補正前のデータ値と補正後のデータ値とを対応付けた変換テーブルに保持されたデータをグラフの形式で表した図である。
図13】上記実施形態において、第1補正対象ノズルの特定について説明するための図である。
図14】上記実施形態において、第1補正対象ノズルの特定について説明するための図である。
図15】上記実施形態において、第1補正対象ノズルの特定について説明するための図である。
図16】上記実施形態において、下流側低密度領域について説明するための図である。
図17】上記実施形態において、第1補正対象ノズルの特定について説明するための図である。
図18】上記実施形態において、第1補正対象ノズルの特定について説明するための図である。
図19】上記実施形態において、第1補正対象ノズルの特定について説明するための図である。
図20】上記実施形態において、第1補正対象ノズルの特定について説明するための図である。
図21】上記実施形態において、第1補正対象ノズルの特定について説明するための図である。
図22】上記実施形態において、第1補正対象ノズルの特定について説明するための図である。
図23】上記実施形態において、全面ベタ画像の印刷が行われる場合の各ノズルから吐出されるインク量について説明するための図である。
図24】上記実施形態において、全面ベタ画像の印刷が行われる場合の各ノズルから吐出されるインク量について説明するための図である。
図25】上記実施形態において、全面ベタ画像の印刷が行われる場合の各ノズルから吐出されるインク量について説明するための図である。
図26】上記実施形態における全体の処理手順を示すフローチャートである。
図27】上記実施形態の第2の変形例において、全面ベタ画像の印刷が行われる場合の各ノズルから吐出されるインク量について説明するための図である。
図28】ヘッド重複部におけるノズルの配置について説明するための図である。
図29】スジを含む印刷画像の一例を示す図である。
図30】インクの癒合について説明するための図である。
図31図28の部分拡大図である。
図32】ベタ画像の印刷に関し、印刷途中の理想的な印刷画像の一例を模式的に示した図である。
図33】ベタ画像の印刷に関し、インクの癒合を考慮した印刷画像(印刷途中の印刷画像)の一例を模式的に示した図である。
図34】上記実施形態において、第1上流側記録ヘッドと第1下流側記録ヘッドとの重複部分を主に示す模式図である。
図35】上記実施形態におけるノズル情報保持部が記憶しているノズル情報の概念図である。
図36】上記実施形態において、第1補正対象ノズルの特定および第1補正対象ノズルの情報の登録についての詳細な手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
【0048】
<1.印刷システムの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システムの全体構成図である。この印刷システムは、インクジェット印刷装置10と印刷データ生成装置30とによって構成されている。インクジェット印刷装置10と印刷データ生成装置30とはLAN4によって互いに接続されている。印刷データ生成装置30は、PDFファイルなどの入稿データに対してラスタライズ処理(RIP処理)を施すことによってビットマップ形式のデータ(以下、「RIPデータ」という。)を生成する。印刷データ生成装置30で生成されたRIPデータは、LAN4を介してインクジェット印刷装置10に送信される。インクジェット印刷装置10は、印刷版を用いることなく、印刷データ生成装置30から送信されたRIPデータに基づいて、印刷用紙やフィルムなどの印刷媒体に印刷画像を出力する。インクジェット印刷装置10は、印刷機本体200と、印刷機本体200の動作を制御する印刷制御装置100とによって構成されている。
【0049】
<2.インクジェット印刷装置の構成>
図2は、インクジェット印刷装置10の一構成例を示す模式図である。上述したように、このインクジェット印刷装置10は、印刷制御装置100と印刷機本体200とによって構成されている。
【0050】
印刷機本体200は、印刷用紙やフィルムなどの印刷媒体(この例では、ロール状の印刷媒体)5を供給する送出部21と、印刷媒体5への印刷を行う印刷機構20と、印刷後の印刷媒体5をロール状に巻き取る巻取部28とを備えている。印刷機構20は、印刷媒体5を内部へと搬送するための第1の駆動ローラ22と、印刷機構20の内部で印刷媒体5を搬送するための複数個の支持ローラ23と、印刷媒体5にインクを吐出する印刷部24と、印刷後の印刷媒体5を乾燥させる乾燥部25と、印刷画像(印刷後の印刷媒体5)を撮像するコンタクトイメージセンサ(CIS)などの撮像部26と、印刷媒体5を印刷機構20の内部から出力するための第2の駆動ローラ27とを備えている。
【0051】
印刷制御装置100は、以上のような構成の印刷機本体200の動作を制御する。印刷制御装置100に印刷出力の指示コマンドが与えられると、印刷制御装置100は、印刷媒体5が送出部21から巻取部28へと搬送されるよう、印刷機本体200の動作を制御する。そして、まず印刷部24から印刷媒体5に対してインクが吐出されることによって印刷媒体5への印刷が行われ、次に乾燥部25によって印刷媒体5の乾燥が行われ、最後に必要に応じて撮像部26による印刷画像の撮像が行われる。なお、撮像部26による印刷画像の撮像によって得られた撮像データDcは印刷制御装置100に送られる。
【0052】
図3は、印刷部24の一構成例を示す平面図である。図3に示すように、印刷部24は、K色(黒色)用のヘッドユニット240KとC色(シアン色)用のヘッドユニット240CとM色(マゼンタ色)用のヘッドユニット240MとY色(黄色)用のヘッドユニット240Yとによって構成されている。ヘッドユニット240K、ヘッドユニット240C、ヘッドユニット240M、およびヘッドユニット240Yは、印刷媒体5の搬送方向に列置されている。各ヘッドユニット240は、印刷媒体5の搬送方向と直交する幅方向に千鳥状に配置された複数個(図3に示す例では、5個)の記録ヘッド241によって構成されている。各記録ヘッド241には、インクを吐出する多数のノズルが含まれている。ヘッドユニット240Kに含まれている記録ヘッド241の各ノズルはK色のインクを吐出し、ヘッドユニット240Cに含まれている記録ヘッド241の各ノズルはC色のインクを吐出し、ヘッドユニット240Mに含まれている記録ヘッド241の各ノズルはM色のインクを吐出し、ヘッドユニット240Yに含まれている記録ヘッド241の各ノズルはY色のインクを吐出する。各ノズルからインクが吐出されることによって、印刷媒体5上にドットが形成される。
【0053】
各ヘッドユニット240には、例えば図4に示すように、複数個の上流側記録ヘッド241Uと複数個の下流側記録ヘッド241Dとが含まれている。図4では、符号247を付した矢印で示す範囲部分が上述した先行印字部であり、符号248を付した矢印で示す範囲部分が上述した後続印字部であり、符号249を付した矢印で示す範囲部分が上述したヘッド重複部である。ヘッド重複部249におけるノズルの配置は、図5に示すようなものとなっている。図5図28との比較から把握されるように、本実施形態においても、従来例と同様、ヘッド重複部249では先行印字部247側から後続印字部248側に近づくにつれて、下流側記録ヘッド241Dに有効ノズルが設けられている割合が高くなっている。換言すれば、ヘッド重複部249では、印刷媒体5上の所定の大きさの範囲内に形成されるドットのうち下流側記録ヘッド241Dに含まれているノズル(有効ノズル)からインクが吐出されることによって形成されるドットの割合が、先行印字部247側から後続印字部248側に近づくにつれて高くなっている。また、ヘッド重複部249では印刷媒体5の搬送方向に延びる1つの直線上に2つのノズル(上流側記録ヘッド241Uに設けられているノズルおよび下流側記録ヘッド241Dに設けられているノズル)が存在するが、それら2つのノズルのうちの一方のみが有効ノズルである。すなわち、ヘッド重複部249において印刷媒体5にインクが吐出されることによって印刷媒体5の搬送方向に一列に形成される各ドット列は、上流側記録ヘッド241Uおよび下流側記録ヘッド241Dのいずれか一方に含まれている1個のノズルからインクが吐出されることによって形成される。
【0054】
なお、無効ノズルを備えていない図6に示すような構成の記録ヘッド(上流側記録ヘッド241Uおよび下流側記録ヘッド241D)を採用することもできる。また、図5に示す構成から一部の無効ノズルのみを取り除いた構成の記録ヘッド(上流側記録ヘッド241Uおよび下流側記録ヘッド241D)を採用することもできる。
【0055】
<3.印刷制御装置>
<3.1 ハードウェア構成>
図7は、印刷制御装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。図7に示すように、印刷制御装置100は、本体110、補助記憶装置121、光ディスクドライブ122、表示部123、キーボード124、およびマウス125などを備えている。本体110は、CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、および通信インタフェース部117を含んでいる。CPU111、メモリ112、第1ディスクインタフェース部113、第2ディスクインタフェース部114、表示制御部115、入力インタフェース部116、および通信インタフェース部117は、システムバスを介して互いに接続されている。第1ディスクインタフェース部113には補助記憶装置121が接続されている。第2ディスクインタフェース部114には光ディスクドライブ122が接続されている。表示制御部115には、表示部(表示装置)123が接続されている。入力インタフェース部116には、キーボード124およびマウス125が接続されている。通信インタフェース部117には、通信ケーブルを介して印刷機本体200が接続されている。また、通信インタフェース部117はLAN4に接続されている。補助記憶装置121は磁気ディスク装置などである。光ディスクドライブ122には、CD-ROMやDVD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体としての光ディスク6が挿入される。表示部123は液晶ディスプレイなどである。表示部123は、オペレータが所望する情報を表示するために使用される。キーボード124およびマウス125は、この印刷制御装置100に対してオペレータが指示を入力するために使用される。
【0056】
補助記憶装置121には、印刷制御プログラム(印刷機本体200による印刷処理の実行を制御するためのプログラム)Pが格納されている。CPU111は、補助記憶装置121に格納された印刷制御プログラムPをメモリ112に読み出して実行することにより、印刷制御装置100の各種機能を実現する。メモリ112は、RAMおよびROMを含んでいる。メモリ112は、補助記憶装置121に格納された印刷制御プログラムPをCPU111が実行するためのワークエリアとして機能する。なお、印刷制御プログラムPは、上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一過性の記録媒体)に格納されて提供される。すなわち、ユーザーは、例えば、印刷制御プログラムPの記録媒体としての光ディスク6を購入して光ディスクドライブ122に挿入し、光ディスク6から印刷制御プログラムPを読み出して補助記憶装置121にインストールする。
【0057】
<3.2 機能的構成>
図8は、印刷制御装置100で印刷制御プログラムPが実行されることによって実現される制御部101の概略機能構成を示すブロック図である。制御部101は、概略的には、搬送制御部140と印刷制御部150と乾燥制御部160と検査制御部170とを含んでいる。搬送制御部140は、搬送機構210が印刷媒体5を搬送する速度(搬送速度)を制御する。なお、本実施形態においては、送出部21と第1の駆動ローラ22と複数個の支持ローラ23と第2の駆動ローラ27と巻取部28とによって搬送機構210が実現される(図2参照)。印刷制御部150は、印刷部24を構成する各ヘッドユニット240に含まれている各記録ヘッド241の各ノズルからのインクの吐出を制御する。例えば、インクの吐出タイミングやインク量(インクの吐出量)の制御が行われる。乾燥制御部160は、乾燥部25が印刷媒体5を乾燥させる際の温度(乾燥温度)を制御する。検査制御部170は、撮像部26による印刷画像の撮像タイミングを制御する。
【0058】
<3.3 印刷制御部>
図9は、印刷制御部150の詳細な機能構成を示すブロック図である。但し、図9には、本発明に関連する構成要素のみを示している。図9に示すように、印刷制御部150には、ノズル情報保持部151とレイアウト設定部152と補正データ保持部153と補正対象ノズル登録部154とインク量補正部155とハーフトーン処理部156とデータ分配部157とが含まれている。本実施形態においては、インク量補正部155によって画像データ補正部が実現される。
【0059】
ノズル情報保持部151には、各ヘッドユニット240を構成する各記録ヘッド241に含まれている各ノズルの位置を示す情報などのノズル情報41が保持される。
【0060】
レイアウト設定部152は、印刷データ生成装置30から送信されたRIPデータ40とノズル情報保持部151に保持されているノズル情報41とに基づいて、印刷媒体5上での印刷画像の配置を決定し、印刷画像を構成する各画素のデータ値(階調値あるいは濃度値に相当する値)を示す画像データ42を生成する。
【0061】
補正データ保持部153には、後述するインク量補正処理の実行に必要なデータが保持される。具体的には、画像データに関して補正前のデータ値と補正後のデータ値とを対応付けた変換テーブル43と、吐出するインク量の補正対象となるノズルを特定する補正対象ノズル特定情報44とが補正データ保持部153に保持される。なお、変換テーブル43についての詳しい説明は後述する。
【0062】
補正対象ノズル登録部154は、吐出するインク量の補正対象となるノズルを一意に特定するためのノズル番号等の入力用画面を表示部123に表示し、オペレータによる入力を受け付ける。そして、補正対象ノズル登録部154は、オペレータによって入力されたノズル番号等の情報を補正対象ノズル特定情報44として補正データ保持部153に格納する。なお、補正対象となるノズルを特定するためのノズル番号等の情報については、オペレータにより入力する代わりに、上述した撮像部26が出力する撮像データDcから自動的に作成するようにしてもよい。また、各ノズルが補正対象となるか否かの判断をノズル情報41に基づいて補正対象ノズル登録部154が行ってその判断の結果をインク量補正部155が参照可能となるように補正対象ノズル登録部154が補正データ保持部153に登録するようにしてもよい。
【0063】
インク量補正部155は、ヘッド重複部249で印刷された部分の印刷画像にスジが現れることが抑制されるよう、ノズル情報41を参照しつつ、画像データ42に関して補正対象ノズル特定情報44によって特定されるノズルに対応する画素のデータ値を変換テーブル43に基づいて補正するインク量補正処理を行う。これにより、補正対象ノズル特定情報44によって特定されるノズルから吐出されるインク量が補正される。なお、インク量補正処理についての詳しい説明は後述する。
【0064】
ハーフトーン処理部156は、インク量補正処理によって得られた画像データ45に対してノズル情報41を参照しつつハーフトーン処理を施すことによって、各画素のドットサイズを示す情報を含むハーフトーン画像データ46を生成する。このハーフトーン画像データ46は、各ヘッドユニット240を構成する複数個の記録ヘッド241に含まれている各ノズルから吐出されるインク量を制御するデータである。なお、ハーフトーン処理の具体的な手法については、特に限定されず、例えば誤差拡散法やディザ法などの公知の手法を採用することができる。
【0065】
データ分配部157は、ハーフトーン画像データ46をインクの色毎のデータに分割し、K色用ハーフトーン画像データ46Kをヘッドユニット240Kに与え、C色用ハーフトーン画像データ46Cをヘッドユニット240Cに与え、M色用ハーフトーン画像データ46Mをヘッドユニット240Mに与え、Y色用ハーフトーン画像データ46Yをヘッドユニット240Yに与える。これにより、各ノズルから、対応する色用のハーフトーン画像データ46に基づくサイズのドットが印刷媒体5上に形成されるようにインクが吐出される。これに関し、インクのドットサイズとしては例えば3段階のサイズ(Lサイズ,Mサイズ,Sサイズ)が用意されており、各ノズルからは、いずれかのサイズでインクが吐出される。
【0066】
なお、本実施形態においては、インク量補正部155に入力される画像データ42が入力画像データに相当し、インク量補正部155から出力される画像データ45が補正画像データに相当し、ハーフトーン画像データ46(K色用ハーフトーン画像データ46K、C色用ハーフトーン画像データ46C、M色用ハーフトーン画像データ46Mをヘッドユニット240M、およびY色用ハーフトーン画像データ46Y)が吐出制御データに相当する。
【0067】
<4.インク量補正処理>
インク量補正部155で行われるインク量補正処理について説明する。
【0068】
<4.1 補正の内容>
インク量補正処理では、ヘッド重複部249で印刷された部分の印刷画像にスジが現れることが抑制されるよう、ノズルから吐出されるインク量の補正が行われる(詳しくは、ノズルから吐出されるインク量が補正されるよう画像データのデータ値に補正が施される)。ここで、インク量補正処理を行わなければ図10に模式的に示すように符号50を付した矢印で示す部分にスジが現れると仮定する。このような場合、本実施形態においては、インク量補正処理によって、符号51を付した矢印で示すドット列を形成するためのノズルおよび符号52を付した矢印で示すドット列を形成するためのノズルから本来よりも多量のインクが吐出されるように(画像データ42に基づくインク量よりも多い量のインクが吐出されるように)インク量の補正が行われる。これにより、インク量補正処理を行わなければスジが現れる部分にもインクが与えられ、スジの発生が抑制される。但し、インク量を本来よりも増加させる旨の補正だけが行われた場合には濃度ムラが引き起こされるので、本実施形態においては、符号53を付した矢印で示すドット列を形成するためのノズルからは本来よりも少量のインクが吐出されるように(画像データ42に基づくインク量よりも少ない量のインクが吐出されるように)インク量の補正が行われる。
【0069】
なお、以下においては、或る1つのノズルを「着目ノズル」としたとき、着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに上記幅方向に隣接するドットを形成するためのノズルを「隣接ノズル」といい、隣接ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに上記幅方向に隣接するドットを形成するためのノズルのうち着目ノズルを除くノズルを「近接ノズル」という。例えば、印刷媒体5上に図11に示すようにドットが形成される場合において符号54を付したドットを形成するためのノズルを着目ノズルとすると、符号55を付したドットを形成するための2つのノズルが隣接ノズルであり、符号56を付したドットを形成するための2つのノズルが近接ノズルである。
【0070】
着目ノズル、隣接ノズル、および近接ノズルという用語を用いて、インク量補正処理でどのような補正が行われるのかについて更に詳しく説明する。本実施形態においては、スジを生じやすいノズル(例えば、図10で符号51を付した矢印で示すドット列を形成するためのノズル)が第1補正対象ノズルとして予め特定され、第1補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも多くなるように画像データ42のデータ値が補正される。また、第1補正対象ノズルを着目ノズルとしたときの隣接ノズル(例えば、図10で符号52を付した矢印で示すドット列を形成するためのノズル)が第2補正対象ノズルとして定められ、第2補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも多くなるように画像データ42のデータ値が補正される。換言すれば、第1補正対象ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接する2つのドットを形成するための2つのノズルのそれぞれが第2補正対象ノズルに定められ、第2補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも多くなるように画像データ42のデータ値が補正される。さらに、第1補正対象ノズルを着目ノズルとしたときの近接ノズル(例えば、図10で符号53を付した矢印で示すドット列を形成するためのノズル)が第3補正対象ノズルとして定められ、第3補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも少なくなるように画像データ42のデータ値が補正される。換言すれば、第1補正対象ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りの2つのドットを形成するための2つのノズルのそれぞれが第3補正対象ノズルに定められ、第3補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも少なくなるように画像データ42のデータ値が補正される。
【0071】
なお、インクジェット印刷装置10ではノズル毎のインクの吐出量のばらつきに起因する印刷画像の濃度ムラを抑制するために各ノズルからのインクの吐出量を調整する濃度均一化処理が一般に行われているが、その濃度均一化処理とインク量補正処理とをまとめて行う(濃度均一化処理の中にインク量補正処理を含める)ようにしても良い。
【0072】
また、第3補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも少なくなるように画像データ42のデータ値を補正することによって、インク量を本来よりも増加させる旨の補正を行ったことに起因する濃度ムラの発生が抑制される。このように濃度ムラの発生が抑制されることを考慮すると、インク量補正処理を行わなかった場合に実際に印刷画像にスジが現れるか否かに関わらず、所定の条件を満たすノズルを第1補正対象ノズルに定めた状態で印刷の際に常にインク量補正処理を実行することができる。
【0073】
<4.2 変換テーブル>
本実施形態においては、上記のようなデータ値の補正を実現するために、上述したように、画像データに関して補正前のデータ値と補正後のデータ値とを対応付けた変換テーブル43(画像データ42のデータ値と画像データ45のデータ値とを対応付けた変換テーブル43)が補正データ保持部153に保持される。変換テーブル43を構成するデータをグラフの形式で表すと図12に示すようなものとなる。但し、図12に示す例は一例であって、これには限定されない。符号61を付した太実線は、第1補正対象ノズルに対応する画素についての補正前のデータ値と補正後のデータ値との関係を表している。符号62を付した太点線は、第2補正対象ノズルに対応する画素についての補正前のデータ値と補正後のデータ値との関係を表している。符号63を付した点線は、第3補正対象ノズルに対応する画素についての補正前のデータ値と補正後のデータ値との関係を表している。本実施形態においては、符号61を付した太実線に相当するデータによって第1の対応関係データが実現され、符号62を付した太点線に相当するデータによって第2の対応関係データが実現され、符号63を付した点線に相当するデータによって第3の対応関係データが実現される。
【0074】
なお、符号60を付した実線は、第1~第3補正対象ノズルのいずれにも該当しないノズルに対応する画素についての補正前のデータ値と補正後のデータ値との関係を表している。これに関し、図12で符号64を付した部分に着目すると、補正前のデータ値:100%は、補正後のデータ値:95%に対応している。これは、データ値が100%付近の高濃度域においてもプラス側の補正を可能とするための設定であって、95%を印刷画像の最大濃度とし、印刷可能な100%までのマージン部分も補正後のデータ値として用いられている。
【0075】
ところで、第1補正対象ノズルから吐出されるインク量のこの変換テーブル43に基づく補正による増加量は、高濃度領域においてよりも中間濃度領域において大きい。同様に、第2補正対象ノズルから吐出されるインク量のこの変換テーブル43に基づく補正による増加量は、高濃度領域においてよりも中間濃度領域において大きい。また、第3補正対象ノズルから吐出されるインク量のこの変換テーブル43に基づく補正による減少量は、高濃度領域においてよりも中間濃度領域において大きい。
【0076】
具体的には、画像データ42が示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が第1補正対象ノズルに対応する場合における第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、画像データ42が示すインク濃度が90%以上である画素が第1補正対象ノズルに対応する場合における第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きく、画像データ42が示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が第2補正対象ノズルに対応する場合における第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量は、画像データ42が示すインク濃度が90%以上である画素が第2補正対象ノズルに対応する場合における第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きく、画像データ42が示すインク濃度が40%以上80%以下である画素が第3補正対象ノズルに対応する場合における第3補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による減少量は、画像データ42が示すインク濃度が90%以上である画素が第3補正対象ノズルに対応する場合における第3補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による減少量よりも大きい。
【0077】
<4.3 第1補正対象ノズルの特定方法>
次に、第1補正対象ノズルに定めるノズルをどのようにして決定するのかについて説明する。本実施形態においては、ヘッド重複部249において下流側記録ヘッド241Dに含まれている各有効ノズルを着目ノズルとし、以下の第1条件および第2条件の双方が満たされるときに、当該着目ノズルが第1補正対象ノズルに定められる。
第1条件:着目ノズルが下流側記録ヘッド241Dの端部に設けられている。
第2条件:着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接する2つのドットを形成するための2つのノズル(すなわち、2つの隣接ノズル)の双方が上流側記録ヘッド241Uに含まれている。
【0078】
換言すれば、下流側記録ヘッド241Dの端部に設けられているノズルであって上流側記録ヘッド241Uに含まれている2つのノズルからインクが吐出されることによって形成される2つのドットの双方に隣接するドットを形成するためのノズルが第1補正対象ノズルに定められる。
【0079】
第2補正対象ノズルは第1補正対象ノズルを着目ノズルとしたときの隣接ノズルであって、第3補正対象ノズルは第1補正対象ノズルを着目ノズルとしたときの近接ノズルである。従って、第1補正対象ノズルが定まると、必然的に、第2補正対象ノズルおよび第3補正対象ノズルが定まる。
【0080】
図13に示す例では、ノズル401を着目ノズルとすると、着目ノズル401は下流側記録ヘッド241Dの端部に設けられている。また、隣接ノズル402および隣接ノズル403の双方が上流側記録ヘッド241Uに含まれている。以上より、第1条件および第2条件の双方が満たされている。従って、着目ノズル401は第1補正対象ノズルに定められる。このとき、隣接ノズル402および隣接ノズル403は第2補正対象ノズルに定められ、近接ノズル404および近接ノズル405は第3補正対象ノズルに定められる。なお、近接ノズル404および近接ノズル405の双方が上流側記録ヘッド241Uに含まれているが、このことは着目ノズル401を第1補正対象ノズルに定めるか否かの判断には影響を及ぼさない。
【0081】
図14に示す例では、ノズル411を着目ノズルとすると、着目ノズル411は下流側記録ヘッド241Dの端部に設けられている。また、隣接ノズル412および隣接ノズル413の双方が上流側記録ヘッド241Uに含まれている。以上より、第1条件および第2条件の双方が満たされている。従って、着目ノズル411は第1補正対象ノズルに定められる。このとき、隣接ノズル412および隣接ノズル413は第2補正対象ノズルに定められ、近接ノズル414および近接ノズル415は第3補正対象ノズルに定められる。なお、近接ノズル415が下流側記録ヘッド241Dに含まれているが、このことは着目ノズル411を第1補正対象ノズルに定めるか否かの判断には影響を及ぼさない。
【0082】
図15に示す例では、ノズル421を着目ノズルとすると、着目ノズル421は下流側記録ヘッド241Dの端部に設けられている。また、隣接ノズル422は上流側記録ヘッド241Uに含まれているが、隣接ノズル423は下流側記録ヘッド241Dに含まれている。以上より、第1条件は満たされているが、第2条件は満たされていない。従って、着目ノズル421は第1補正対象ノズルに定められない。なお、近接ノズル424および近接ノズル425の双方が上流側記録ヘッド241Uに含まれているが、このことは着目ノズル421を第1補正対象ノズルに定めるか否かの判断には影響を及ぼさない。
【0083】
ところで、本実施形態においては、下流側記録ヘッド241Dの端部に設けられているノズル以外のノズル(有効ノズル)も第1補正対象ノズルに定められ得る。具体的には、ヘッド重複部249において下流側記録ヘッド241Dに含まれている各有効ノズルを着目ノズルとし、以下の第3条件、第4条件、および第5条件の全てが満たされるときに、当該着目ノズルが第1補正対象ノズルに定められる。
第3条件:着目ノズルが後述する下流側低密度領域の下流側記録ヘッド241Dに設けられている。
第4条件:着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接する2つのドットを形成するための2つのノズル(すなわち、2つの隣接ノズル)の双方が上流側記録ヘッド241Uに含まれている。
第5条件:着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りのドットを形成するための2つのノズル(すなわち、2つの近接ノズル)の少なくとも一方が上流側記録ヘッド241Uに含まれている。
【0084】
ここで、下流側低密度領域について説明する。本実施形態においては、ヘッド重複部249の上記幅方向についての一定距離の領域に着目したときに、当該領域に存在する有効ノズルのうち下流側記録ヘッド241Dに存在する有効ノズルの割合が50%以下であれば、当該領域を「下流側低密度領域」と定義する。換言すれば、ヘッド重複部249において印刷媒体5上に形成されるドットのうち下流側記録ヘッド241Dに含まれているノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの割合が50%以下となる領域を「下流側低密度領域」と定義する。例えば、図16において符号57を付した矢印で表される領域に着目すると、当該領域に存在する8個の有効ノズルのうちの2個の有効ノズルだけが下流側記録ヘッド241Dに存在している。従って、符号57を付した矢印で表される領域は下流側低密度領域である。また、例えば、図16において符号58を付した矢印で表される領域に着目すると、当該領域に存在する8個の有効ノズルのうちの6個の有効ノズルが下流側記録ヘッド241Dに存在している。従って、符号58を付した矢印で表される領域は下流側低密度領域ではない。
【0085】
図17に示す例では、符号61を付した矢印で表される領域に存在する5個の有効ノズル431~435のうちの1個の有効ノズル431だけが下流側記録ヘッド241Dに存在している。従って、符号61を付した矢印で表される領域は下流側低密度領域である。すなわち、ノズル431を着目ノズルとすると、着目ノズル431は下流側低密度領域の下流側記録ヘッド241Dに設けられている。また、隣接ノズル432および隣接ノズル433の双方が上流側記録ヘッド241Uに含まれている。さらに、近接ノズル434および近接ノズル435の双方が上流側記録ヘッド241Uに含まれている。以上より、第3条件、第4条件、および第5条件の全てが満たされている。従って、着目ノズル431は第1補正対象ノズルに定められる。このとき、隣接ノズル432および隣接ノズル433は第2補正対象ノズルに定められ、近接ノズル434および近接ノズル435は第3補正対象ノズルに定められる。
【0086】
図18に示す例では、符号62を付した矢印で表される領域に存在する5個の有効ノズル441~445のうちの2個の有効ノズル441,445だけが下流側記録ヘッド241Dに存在している。従って、符号62を付した矢印で表される領域は下流側低密度領域である。すなわち、ノズル441を着目ノズルとすると、着目ノズル441は下流側低密度領域の下流側記録ヘッド241Dに設けられている。また、隣接ノズル442および隣接ノズル443の双方が上流側記録ヘッド241Uに含まれている。さらに、近接ノズル445は下流側記録ヘッド241Dに含まれているが、近接ノズル444は上流側記録ヘッド241Uに含まれている。以上より、第3条件、第4条件、および第5条件の全てが満たされている。従って、着目ノズル441は第1補正対象ノズルに定められる。このとき、隣接ノズル442および隣接ノズル443は第2補正対象ノズルに定められ、近接ノズル444および近接ノズル445は第3補正対象ノズルに定められる。ここで、ノズル445を着目ノズルとすると、着目ノズル445は下流側低密度領域の下流側記録ヘッド241Dに設けられている。また、隣接ノズル443および隣接ノズル446の双方が上流側記録ヘッド241Uに含まれている。さらに、近接ノズル441は下流側記録ヘッド241Dに含まれているが、近接ノズル447は上流側記録ヘッド241Uに含まれている。以上より、第3条件、第4条件、および第5条件の全てが満たされている。従って、着目ノズル445も第1補正対象ノズルに定められることが可能である。
【0087】
図19に示す例では、符号63を付した矢印で表される領域に存在する5個の有効ノズル451~455のうちの2個の有効ノズル451,453だけが下流側記録ヘッド241Dに存在している。従って、符号63を付した矢印で表される領域は下流側低密度領域である。すなわち、ノズル451を着目ノズルとすると、着目ノズル451は下流側低密度領域の下流側記録ヘッド241Dに設けられている。また、隣接ノズル452は上流側記録ヘッド241Uに含まれているが、隣接ノズル453は下流側記録ヘッド241Dに含まれている。それ故、第4条件が満たされていない。従って、着目ノズル451は第1補正対象ノズルに定められない。
【0088】
図20に示す例では、符号64を付した矢印で表される領域に存在する7個の有効ノズル461~467のうちの3個の有効ノズル461,464,および465だけが下流側記録ヘッド241Dに存在している。従って、符号64を付した矢印で表される領域は下流側低密度領域である。すなわち、ノズル461を着目ノズルとすると、着目ノズル461は下流側低密度領域の下流側記録ヘッド241Dに設けられている。また、隣接ノズル462および隣接ノズル463の双方が上流側記録ヘッド241Uに含まれている。しかしながら、近接ノズル464および近接ノズル465は、いずれも下流側記録ヘッド241Dに含まれている。それ故、第5条件が満たされていない。従って、着目ノズル461は第1補正対象ノズルに定められない。
【0089】
以上のように、本実施形態においては、上記第1条件および上記第2条件の双方を満たす着目ノズルに加えて上記第3条件、上記第4条件、および上記第5条件の全てを満たす着目ノズルが第1補正対象ノズルに定められる。但し、本発明はこれに限定されない。上記第1条件および上記第2条件の双方を満たす着目ノズルのみが第1補正対象ノズルに定められるようにしても良い。すなわち、少なくとも、下流側記録ヘッド241Dの端部に設けられているノズルであって上流側記録ヘッド241Uに含まれている2つのノズルからインクが吐出されることによって形成される2つのドットの双方に隣接するドットを形成するためのノズルが第1補正対象ノズルに定められると良い。また、上記第1条件および上記第2条件の双方を満たす着目ノズルに加えて他の所定の条件を満たす着目ノズルが第1補正対象ノズルに定められるようにしても良い。さらに、テスト画像などの印刷結果に基づいて、スジを引き起こしていると考えられるノズルを第1補正対象ノズルに定めるようにしても良い。この場合、オペレータが表示部123、キーボード124、およびマウス125などのインタフェース装置を介した操作を行うことにより、スジを引き起こしていると考えられるノズルのノズル番号等を補正対象ノズル登録部154が補正データ保持部153に登録する。
【0090】
また、上記第3条件、上記第4条件、および上記第5条件の全てを満たす着目ノズルに代えて上記第3条件、上記第4条件、上記第5条件、および下記の第6条件の全てを満たす着目ノズルが第1補正対象ノズルに定められるようにしても良い。
第6条件:着目ノズルを基準として先行印字部247側および後続印字部248側の少なくとも一方において着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットの2つ隣りのドットを形成するためのノズル(すなわち、近接ノズル)が着目ノズルからインクが吐出されることによって形成されるドットに隣接するドットを形成するためのノズル(すなわち、隣接ノズル)よりも印刷媒体5の搬送方向の上流側に配置されている。
【0091】
図21に示す例では、符号65を付した矢印で表される領域においてノズル471を着目ノズルとすると、第3条件、第4条件、および第5条件が満たされている。また、近接ノズル473は隣接ノズル472よりも印刷媒体5の搬送方向の上流側に配置されている。以上より、第3条件、第4条件、第5条件、および第6条件の全てが満たされている。従って、着目ノズル471は第1補正対象ノズルに定められる。
【0092】
図22に示す例では、符号66を付した矢印で表される領域においてノズル481を着目ノズルとすると、第3条件、第4条件、および第5条件が満たされている。しかしながら、近接ノズル483は隣接ノズル482よりも印刷媒体5の搬送方向の下流側に配置されている。それ故、第6条件が満たされていない。従って、着目ノズル481は第1補正対象ノズルに定められない。
【0093】
<4.4 補正例>
上述したように、本実施形態においては、第1補正対象ノズル(スジを生じやすいノズル)および第2補正対象ノズル(第1補正対象ノズルの隣接ノズル)から吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも多くなるよう、かつ、第3補正対象ノズル(第1補正対象ノズルの近接ノズル)から吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも少なくなるよう、画像データ42のデータ値が補正される。これに関し、全面ベタ画像の印刷が行われる場合、インク量補正処理によって各ノズルから吐出されるインク量は、例えば図23に示すようなものとなる。図23に関し、横軸はノズルの位置を表し、縦軸はインク量を表し、符号70を付した位置は第1補正対象ノズルの位置を表している(図24図25、および図27も同様)。図23に示す例では、各第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量と各第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量とは同じである。但し、これには限定されず、各第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量が各第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも大きくても良いし、各第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量が各第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量よりも少なくても良い。
【0094】
ところで、上述したインク量補正処理に起因する濃度ムラの発生を効果的に抑制するためには、補正によるインク量の増加量と補正によるインク量の減少量とが等しいことが好ましい。補正によるインク量の増加量と補正によるインク量の減少量とを等しくした場合の各ノズルから吐出されるインク量は、例えば図24に示すようなものとなる。図24において符号701を付した矢印で示す範囲に着目すると、符号70を付した位置にある第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量と符号71を付した位置にある第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量と符号72を付した位置にある第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量との和は、符号73を付した位置にある第3補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による減少量と符号74を付した位置にある第3補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による減少量との和に等しい。このように、第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量と2つの第2補正対象ノズルのうちの一方から吐出されるインク量の補正による増加量と当該2つの第2補正対象ノズルのうちの他方から吐出されるインク量の補正による増加量との和は、2つの第3補正対象ノズルのうちの一方から吐出されるインク量の補正による減少量と当該2つの第3補正対象ノズルのうちの他方から吐出されるインク量の補正による減少量との和に等しい。
【0095】
なお、図25に示すケースのように、或る第1補正対象ノズルの近接ノズルと別の第1補正対象ノズルの近接ノズルとが同じノズルとなるケースがある。このようなケースでは、図25において符号701を付した矢印で示す範囲に関し、符号70を付した位置にある第1補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量と符号75を付した位置にある第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量と符号76を付した位置にある第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による増加量との和と、符号77を付した位置にある第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による減少量の2分の1と符号78を付した位置にある第2補正対象ノズルから吐出されるインク量の補正による減少量との和が等しい。
【0096】
以上のように、第1補正対象ノズルおよび第2補正対象ノズルからは、画像データ42に基づくインク量よりも多量のインクが吐出され、第3補正対象ノズルからは、画像データ42に基づくインク量よりも少量のインクが吐出される。但し、個々のノズルから吐出されるインク量が変換テーブル43(図12参照)における「補正前のデータ値に対する補正後のデータ値の割合」に基づいて増減するわけではない。何故ならば、上述したように、インクのドットサイズとしては例えば3段階のサイズ(Lサイズ,Mサイズ,Sサイズ)が用意されており、各ノズルからは、いずれかのサイズでインクが吐出されるからである。従って、実際には、補正後の画像データ45に基づいてハーフトーン処理が行われることによって、第1補正対象ノズルから吐出されるインク量および第2補正対象ノズルから吐出されるインク量が変換テーブル43における「補正前のデータ値に対する補正後のデータ値の割合」に基づいて平均的に増加し、第3補正対象ノズルから吐出されるインク量が変換テーブル43における「補正前のデータ値に対する補正後のデータ値の割合」に基づいて平均的に減少する。
【0097】
<5.全体の処理手順>
以上を踏まえ、本実施形態における全体の処理手順を図26に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0098】
まず、上述したようにして、第1補正対象ノズルの特定が行われる(ステップS10)。本実施形態においては、ヘッド重複部249において下流側記録ヘッド241Dに含まれている各有効ノズルを着目ノズルとして、上記第1条件および上記第2条件の双方を満たす着目ノズルと上記第3条件、上記第4条件、および上記第5条件の全てを満たす着目ノズルとが第1補正対象ノズルとして特定される。そして、オペレータが表示部123、キーボード124、およびマウス125などのインタフェース装置を介した操作を行うことにより、ステップS10で特定された第1補正対象ノズルのノズル番号等を補正対象ノズル登録部154が補正データ保持部153に登録する(ステップS20)。
【0099】
その後、オペレータによって、印刷出力の指示が行われる(ステップS30)。これにより、印刷制御部150(図9参照)において、RIPデータ40に基づく印刷出力のための処理が開始される。
【0100】
印刷出力の指示が行われると、レイアウト設定部152によるレイアウト設定の処理(RIPデータ40とノズル情報41とに基づいて印刷媒体5上での印刷画像の配置を決定して画像データ42を生成する処理)が行われる(ステップS40)。
【0101】
次に、インク量補正部155によるインク量補正処理が行われる(ステップS50)。これに関し、第1補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも多くなるように、画像データ42中の第1補正対象ノズルに対応するデータ値がインク量補正部155によって補正される。また、第2補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも多くなるように、画像データ42中の第2補正対象ノズルに対応するデータ値がインク量補正部155によって補正される。さらに、第3補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも少なくなるように、画像データ42中の第3補正対象ノズルに対応するデータ値がインク量補正部155によって補正される。
【0102】
次に、インク量補正処理によって得られた画像データ45に対してハーフトーン処理部156がハーフトーン処理を施すことによって、ハーフトーン画像データ46が生成される(ステップS60)。
【0103】
次に、データ分配部157によって、ハーフトーン画像データ46がインクの色毎のデータに分割される(ステップS70)。これによって得られた各色用のハーフトーン画像データ46が、対応するヘッドユニット240に与えられる。そして、各ノズルから、対応する色用のハーフトーン画像データ46に基づいてインクが吐出される(ステップS80)。
【0104】
なお、印刷出力に先立ってステップS10およびステップS20の処理を毎回実行するという必要性はなく、ステップS10およびステップS20の処理を一度実行すれば、ステップS30以降の処理を繰り返し実行することができる。
【0105】
本実施形態においては、ステップS10によって第1補正対象ノズル特定ステップが実現され、ステップS50によって画像データ補正ステップが実現され、ステップS60によって吐出制御データ生成ステップが実現され、ステップS80によってインク吐出ステップが実現されている。
【0106】
<6.効果>
本実施形態によれば、スジを生じやすいノズルが第1補正対象ノズルとして特定され、第1補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも多くなるように画像データ42のデータ値が補正される。また、第1補正対象ノズルの隣接ノズルである第2補正対象ノズルから吐出されるインク量についても画像データ42に基づくインク量よりも多くなるように画像データ42のデータ値が補正される。そして、補正後の画像データ45に対してハーフトーン処理が施されることによって生成されるハーフトーン画像データ46に基づいて、各ノズルから吐出されるインク量が制御される。これにより、第1補正対象ノズルおよび第2補正対象ノズルからは本来よりも多くの量のインクが吐出されるので、印刷画像中にスジが現れにくい。すなわち、従来と比較して印刷品質が向上する。以上のように、千鳥状に配置された複数個の記録ヘッド241を有するヘッドユニット240を備えたインクジェット印刷装置10に関し、印刷画像のうちヘッド重複部249で印刷された部分にスジが現れることが抑制される。
【0107】
また、ヘッド重複部249で印刷された部分におけるスジはインクを弾きやすい基材が印刷媒体5に採用されているときに発生しやすいが、本実施形態によれば、インクを弾きやすい基材が印刷媒体5に採用されていてもスジの発生が抑制される。すなわち、印刷品質の低下を引き起こすことなく、インクを弾きやすい基材を印刷媒体5として採用することが可能となる。
【0108】
さらに、従来においてはスジの発生を抑制するためにアライメント調整(ヘッドユニット240の位置の調整)や印刷媒体5の搬送制御に関して高いレベルの精度が必要とされていたが、本実施形態によれば、スジの発生の抑制に必要とされるそれらの精度のレベルを従来よりも低くすることが可能となる。従って、インクジェット印刷装置10に関して動作の安定性やコストダウンが実現されるという効果が得られる。
【0109】
さらにまた、本実施形態によれば、第1補正対象ノズルの近接ノズルである第3補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも少なくなるように画像データ42のデータ値が補正される。これにより、第1補正対象ノズルおよび第2補正対象ノズルから吐出されるインク量を本来よりも増加させる旨の補正を行うことに起因する濃度ムラの発生が抑制される。また、第3補正対象ノズルから吐出されるインク量が本来よりも少なくなることによって、インクの癒合に起因するインクの流動が抑制されるので、スジの発生も効果的に抑制される。
【0110】
<7.変形例>
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0111】
<7.1 第1の変形例>
上記実施形態においては、第1補正対象ノズルから吐出されるインク量および第2補正対象ノズルから吐出されるインク量を画像データ42に基づくインク量よりも多くすることに起因する濃度ムラの発生を抑制するために、第3補正対象ノズルから吐出されるインク量が画像データ42に基づくインク量よりも少なくなるように画像データ42のデータ値が補正されていた。これに対して、本変形例においては、第1補正対象ノズルから吐出されるインク量および第2補正対象ノズルから吐出されるインク量については上記実施形態と同様に画像データ42に基づくインク量よりも多くなるように補正が施されるが、第3補正対象ノズルからの吐出されるインク量については補正が施されない。
【0112】
本変形例においては、全面ベタ画像の印刷が行われる場合、インク量補正処理によって各ノズルから吐出されるインク量は、図27に示すようなものとなる。図27から、第1補正対象ノズルおよび第2補正対象ノズルのそれぞれから吐出されるインク量のみがそれら以外のノズルから吐出されるインク量よりも多いことが把握される。
【0113】
本変形例によれば、インク量補正処理に起因する濃度ムラが発生するおそれはあるが、印刷画像のうちヘッド重複部249で印刷された部分にスジが現れることは抑制される。
【0114】
<7.2 第2の変形例>
上記実施形態においては1つの変換テーブル43が補正データ保持部153に保持されていることを想定しているが、本発明はこれに限定されない。本変形例においては、予め複数の変換テーブル43が補正データ保持部153に保持され、インク量補正部155によって、画像データ42のデータ値を補正する際に用いる変換テーブル43の切り替えが行われる。これに関し、印刷媒体5の種類に応じて変換テーブル43の切り替えが行われるようにしても良いし、印刷モードに応じて変換テーブル43の切り替えが行われるようにしても良い。また、例えばテスト画像の印刷結果に基づいてオペレータが複数の変換テーブル43のうちの1つを選択するようにしても良い。
【0115】
本変形例によれば、インク量補正処理に用いる変換テーブル43を印刷出力が実行される際の条件に応じて切り替えることが可能となる。従って、より効果的に、印刷画像のうちヘッド重複部249で印刷された部分にスジが現れることが抑制される。
【0116】
<8.補足>
以下、図26を用いて説明した「第1補正対象ノズルの特定」(S10)および「第1補正対象ノズルの情報の登録」(S20)の詳細の一例について、図9および図34図36を参照しつつ説明する。
【0117】
図34は、第1上流側記録ヘッド241U1と第1下流側記録ヘッド241D1との重複部分を主に示す模式図である。第1上流側記録ヘッド241U1には複数のノズルN1、N2、N3、...、N97、N98、N100が配列され、第1下流側記録ヘッド241U1には複数のノズルN99、N101、N102、...、N199、N201、N202が配列されている。これら複数のノズルN1~N202のノズル番号は印刷媒体5の幅方向の座標位置に対応している。すなわち、印刷媒体5の幅方向の最も上流側(図34における左側)のノズルから下流側(図34における右側)のノズルに向かうにつれて番号が増加するように、ノズル番号が設定されている。
【0118】
第1上流側記録ヘッド241U1と第1下流側記録ヘッド241D1との関係では、先行印字部247に第1上流側記録ヘッド241U1のノズルN97が位置し、ヘッド重複部249に第1上流側記録ヘッド241U1のノズルN98およびノズルN100と第1下流側記録ヘッド241D1のノズルN99およびノズルN101とが位置し、後続印字部248に第1下流側記録ヘッド241D1のノズルN102が位置している。
【0119】
このようなノズル群N1~N202に関して、図35に示すようなノズル情報41がノズル情報保持部151(図9参照)に記憶されている。
【0120】
図35は、ノズル情報保持部151が記憶しているノズル情報41の概念図である。ノズル情報41は、ノズル番号と、各ノズルN1~N202が属する記録ヘッド241の名称と、先行印字部247・後続印字部248・ヘッド重複部249の区別を示す情報(位置情報)と、各ノズルN1~N202の有効ノズル・無効ノズルの区別を示す情報とを対応付けた情報である。
【0121】
図36は、「第1補正対象ノズルの特定」(図26のステップS10)および「第1補正対象ノズルの情報の登録」(図26のステップS20)についての詳細な手順を説明するためのフローチャートである。
【0122】
まず、複数のノズルのうちの1つが注目ノズルに設定される(ステップS101)。例えば、ノズル番号として「N1」が付与されているノズルが注目ノズルに設定される。
【0123】
次に、注目ノズルに係るノズル情報41が参照される(ステップS102)。ノズル情報41が参照されることにより、「ノズルN1は、第1上流側記録ヘッド241U1に属し、先行印字部247に含まれ、ノズルN2に隣接し、有効ノズルである」ということが把握される。
【0124】
次に、ステップS102で取得されたノズル情報41に基づいて、補正対象ノズル登録部154が注目ノズルの分類を決定する(ステップS103)。具体的には、注目ノズルが「第1補正対象ノズル」、「第2補正対象ノズル」、「第3補正対象ノズル」、および「その他のノズル」のいずれであるのかが決定される。
【0125】
次に、処理はステップS20に進み、補正対象ノズル登録部154が、ステップS103で決定されたノズルの分類をインク量補正部155が参照可能なように登録する(具体的には、補正データ保持部153に登録する)。
【0126】
次に、分類の処理が行われていない残りノズルが存在するか否かの確認が行われる(ステップS104)。その結果、残りノズルが存在すれば処理はステップS101に戻り、残りノズルが存在しなければ処理は図26のステップS30に進む。
【0127】
図34に示す例の場合、ノズルN99は第1下流側記録ヘッド241D1に属しているノズルの中の最小のノズル番号を有するノズルであるので、当該ノズルN99は第1下流側記録ヘッド241D1の端部に位置することが把握される。従って、第1条件が満たされている。また、印刷媒体5の幅方向にノズルN99に隣接するノズルN98およびノズルN100はいずれも第1上流側記録ヘッド241U1に属しているので第2条件が満たされている。このように、第1条件および第2条件の双方が満たされているので、ノズルN99は第1補正対象ノズルに定められる。
【0128】
第3~第5条件のそれぞれが満たされているか否かについても、図35に示すようなノズル情報41を参照することによって判断することができる。
【0129】
なお、記録ヘッド241はヘッドユニット240に対して交換可能に取り付けられることがある。記録ヘッド241を交換した際、新しい記録ヘッド241に対応するようノズル情報41を更新することが望ましい。
【0130】
<9.その他>
本発明は、上記実施形態(変形例を含む)に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態ではカラー印刷を行うインクジェット印刷装置の構成を例示したが、モノクロ印刷を行うインクジェット印刷装置が採用されている場合にも本発明を適用することができる。また、例えば、上記実施形態では印刷部24が4色のヘッドユニット240によって構成されている例を挙げて説明したが、印刷部24が5色以上のヘッドユニット240によって構成されている場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0131】
10…インクジェット印刷装置
24…印刷部
42…画像データ(インク量補正部による補正前の画像データ)
43…変換テーブル
45…画像データ(インク量補正部による補正後の画像データ)
100…印刷制御装置
101…制御部
150…印刷制御部
151…ノズル情報保持部
152…レイアウト設定部
153…補正データ保持部
154…補正対象ノズル登録部
155…インク量補正部
156…ハーフトーン処理部
157…データ分配部
200…印刷機本体
240…ヘッドユニット
241…記録ヘッド
241D…下流側記録ヘッド
241U…上流側記録ヘッド
247…先行印字部
248…後続印字部
249…ヘッド重複部
図1
図2
図3
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