(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137572
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】変流器及び零相変流器
(51)【国際特許分類】
H01F 38/30 20060101AFI20240927BHJP
G01R 15/18 20060101ALI20240927BHJP
H01H 83/02 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
H01F38/30
G01R15/18 B
H01H83/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023064501
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】595176098
【氏名又は名称】甲神電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉川 徹
【テーマコード(参考)】
2G025
5E081
5G030
【Fターム(参考)】
2G025AA02
2G025AB14
2G025AC01
5E081AA06
5E081CC30
5E081DD01
5E081DD15
5E081EE07
5E081FF06
5G030YY13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コイルおよびリード線を個別に外ケースへ組み付けた後にからげはんだを施し電気的に接続する変流器及び零相変流器を提供する。
【解決手段】変流器及び零相変流器100において、外ケース1の底面側からリード線5を挿入して組み付けることができ、天面側にスライドさせることでからげはんだ部11を露出させることが可能な構造のリード線保持部を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い比透磁率特性を有する環状磁心に巻線を施したコイルを、底面及び二重円筒状壁を有するケースに収納し、加熱流動化した成形樹脂を成形金型注入口から前記ケースに注ぎ込み前記コイルと一体に加圧成形した変流器及び零相変流器であって、
前記ケースは、前記二重円筒状壁の少なくとも一方の外周部において、ケースの底面側からリード線を挿入して組み付けることができ、リード線を天面方向にスライドさせることで、はんだ部を天面側から露出させることが可能なリード線保持部を備えることを特徴とする変流器及び零相変流器。
【請求項2】
前記リード線保持部は、L字状リード線のスライドを妨げないようにするためのスリットを底面から天面方向に有することを特徴とする請求項1記載の変流器及び零相変流器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電流または、直流が重畳した交流電流を計測するための変流器、もしくは漏洩電流を計測するための零相変流器に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の一般的な変流器を示す概略図である。従来の変流器は、環状の磁心20からなる閉磁路に2次巻線25が巻回されており、計測対象の電流の流れる1次巻線23が閉磁路の中央開口を貫通している。その動作は、1次巻線23に1次電流22が流れると、電磁誘導によって1次電流22の大きさに対応した2次電流24が2次巻線25に発生する。このとき2次巻線25に負荷抵抗を接続することによって、電圧信号が出力され、その結果、1次巻線23に流れる1次電流22を電圧信号として計測することが可能になる。
【0003】
また従来の変流器の製造方法としては、金属の型を用意し、少なくとも一つの巻線を備えた磁心すなわちコイルを外ケースに組み込んだ状態で型内に挿入し、型を閉鎖して、加熱流動化した成形樹脂を加圧下で型に充填することにより、加圧成形し一体に封止成形する方法がある。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4は従来の変流器の加圧成型時における構造図であり、
図4(a)はアイソメ図、
図4(b)は上面図、
図4(c)は加圧成型直前の変流器の分解図を示す。
図4(a)、
図4(b)に示すように、外ケース21にコイル12及びコイル12に電気的に接続されたリード線5を組み付けたものを下型18にセットして上型17を閉じて固定し、ゲート9から熱可塑性樹脂を注ぎ込み封止している。この際、過剰な樹脂はオーバーフロー8を通して外部に排出される。
【0006】
前記構造の変流器では、
図4(c)に示すようにリード線5のからげはんだ部11は周囲を側壁で囲まれた外ケース21の底面に位置するため、あらかじめコイル12とリード線5をからげはんだにより接続しておく必要があり、外ケース21への組付け作業が複雑化し手作業が必要となるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における変流器及び零相変流器は、高い比透磁率特性を有する環状磁心に巻線を施したコイルを底面及び二重円筒状壁を有するケースに収納し、加熱流動化した成形樹脂を成形金型注入口からケースに注ぎ込みコイルと一体に加圧成形する構造であって、ケースのリード線保持部にリード線を底面側から挿入し、はんだ部を天面側から露出可能とすることでコイルおよびリード線の組み付け後にからげはんだを施すことを可能にする構造を設ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明は前記の通り、コイルおよびリード線をケースに組み付けた後においても、リード線のはんだ部をケース外に露出させることができ、コイルとのからげはんだを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】 本発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器を示す図である。
【
図2】 本発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器に用いる外ケース構造を示す図である。
【
図4】 一般的な変流器および加圧成形方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器100で、
図1(a)は平面図、
図1(b)はアイソメ図、
図1(c)は正面図、
図1(d)はA-A線断面図、
図1(e)はコイル12のアイソメ図である。
図1(e)にて示したコイル12は集磁のためのトロイダル形状の磁心15(
図1(d)に示す)と磁心15を収めるためのトロイダル形状のケース14(
図1(d)に示す)と、磁心15を収めたケース14に巻き付けられた磁心15内における磁束の変化を電流に変換するための巻線13により構成される。5は巻線13から引き出した余長線16をからげられ電気的に接続された引き出し用リード線である。
図1(a)において、1はコイル12及びリード線5の一部を収納する外ケースで、10は加圧充填されたコイル12を封止する成形樹脂である。
【0011】
図2は本発明の実施の形態1における変流器及び零相変流器100に用いる内側円筒2および外側円筒3を有した2重円筒状の外ケース1で、
図2(a)は平面図、
図2(b)はアイソメ図、
図2(c)は正面図、
図2(d)は
図2(a)に示した外ケース1のB-B線断面図、
図2(e)、
図2(f)は外ケース1にリード線5およびコイル12を組み付けた状態のアイソメ図である。
図2(a)においてリード線挿入部4はケースの底面から天面まで貫通し、リード線5を底面から挿入することで、からげはんだ部11を外ケース1の天面側へ向けることができる。リード線スライド用スリット6はリード線5のL字形状を保ちつつ外ケース1の天面方向へスライドさせ、からげはんだ部11を露出させるためのスリットであり、底面から先端までの深さは少なくともリード線の屈曲部からはんだ部までの長さX(
図1(e)に示す)以上とする。
図2(d)において、余長線通過用スリット7はリード線にからげた巻線13の余長線16をケース外に露出することなく通過させるためのスリットであり、耐電圧特性を確保させるためにケース底面からスリット先端までの側壁高さは5mm以上とする。
【0012】
図2(e)で示すように、外ケース1の底面から天面側へリード線5をスライドさせることで、はんだ部を露出させることができ、組み付け後も容易にからげはんだを施すことができる。また、からげはんだの際、対象のリード線5を露出させ、もう一方はケース1内部に収めることで、対象外のリード線との干渉を防ぐことができる。
図2(f)で示すようにコイルを成形樹脂10により封止する際は、リード線5を両方外ケース1の底面側にスライドさせて、はんだ部を外ケース1内に収めるようにする。
【符号の説明】
【0013】
1 外ケース(実施の形態1)
2 内側円筒
3 外側円筒
4 リード線挿入部
5 リード線
6 リード線スライド用スリット
7 余長線通過用スリット
8 オーバーフロー(成形樹脂排出用)
9 ゲート(成形樹脂充填用)
10 成形樹脂
11 からげはんだ部
12 コイル
13 巻線
14 ケース(磁心保持用)
15 磁心
16 余長線
17 金型(上型)
18 金型(下型)
20 環状の鉄心
21 外ケース(従来の変流器)
22 1次電流
23 1次巻線
24 2次電流
25 2次巻線
100 変流器及び零相変流器