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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137574
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01R15/20 D
G01R15/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023064503
(22)【出願日】2023-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】595176098
【氏名又は名称】甲神電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 毅尚
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA05
2G025AA11
2G025AA15
2G025AB01
2G025AB02
2G025AC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】磁気飽和を改善し、磁性部の共用部分を有した小型の電流センサを提供する。
【解決手段】導体11~1Nは貫通スリットで分岐し、2つの電流路を形成してX-方向にN本の導体が隣接して並んでおり、N個の1対の磁電変換素子を有する磁気センサ61~6Nは、1対の磁電変換素子が導体11~1Nの導体毎に貫通スリットを挟んで対向する姿勢で配置され、磁性部41、4Nは第1の1対の延伸部を有し、導体11、1Nの隣接する導体がいない側の電流路が、第1の延伸部で形成される空隙に貫通するように配置され、N-1個の磁性部42~4(N-1)は第2の1対の延伸部と第3の1対の延伸部を有し、導体11~1NのすべてのN-1箇所の導体間に、第2の1対の延伸部と、第3の1対の延伸部で形成される2つの空隙に、導体の電流路が貫通するように配置され、隣接する磁性部同士はその延伸部の端面が対向する姿勢で、その端面間に空隙を形成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通スリットで分岐し、第1方向に延伸する2つの電流路を有し、被検出電流が印加される導体と、
延伸部の先端に端面を有する第1の1対の延伸部と、前記第1の1対の延伸部で形成される第1の空隙部を有する第1の磁性部と、
延伸部の先端に端面を有する第2の1対の延伸部と第3の1対の延伸部と、前記第2の1対の延伸部で形成される第2の空隙部と、前記第3の1対の延伸部で形成される第3の空隙部を有する第2の磁性部と、
前記導体に被検出電流が印加されることで発生する磁束の所定の感磁軸方向の磁束密度をそれぞれ検出して、検出した磁束密度量に応じた出力信号を出力する1対の磁電変換素子を有する磁気センサと、を具備し、
前記導体は、前記第1の方向に垂直方向である第2の方向に複数並んで配置され、複数の前記導体にはそれぞれ異なる被検出電流が印加されており、
前記第1の磁性部は、前記導体の第2方向に異なる導体のいない側の前記電流路がそれぞれ前記第1の空隙部を貫通するように2つ配置され、
前記第2の磁性部は、全ての前記導体間に、前記第2の空隙部と前記第3の空隙部にそれぞれ異なる前記導体の前記電流路が1つずつ貫通するように配置され、
前記磁気センサは、複数の前記導体毎に、前記貫通スリットを挟んで前記第1の方向と第2の方向の垂直方向である第3方向に対向して配置され、前記第2の方向にその感磁軸があることを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記導体の導体数は2本であり、
前記第1の磁性部と前記第2の磁性部は、前記第1の1対の延伸部の端面と前記第2の1対の延伸部の端面は対向して離間する姿勢で、
前記導体毎に配置される前記磁気センサはそれぞれ、前記1対の磁電変換素子が挟み込む前記貫通スリットを有する前記導体の2つの前記電流路が貫通する、前記第1の空隙部を有する前記第1の磁性部と、前記第2の空隙部もしくは前記第3の空隙部を有する前記第2の磁性部の、前記第1の方向の厚み寸法と、前記第2の方向の対向する延伸部の端面間寸法と、前記第3の方向の延伸部の外側端面間寸法とで区切られる領域内に、前記1対の磁電変換素子があるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記導体の導体数は3本以上であり、
前記第1の磁性部と前記第2の磁性部は、前記第1の1対の延伸部の端面と前記第2の1対の延伸部の端面は対向して離間する姿勢かつ、全ての前記導体間に配置された隣接する前記第2の磁性部同士は、前記第2の1対の延伸部の端面と、前記第3の1対の延伸部の端面が対向して離間する姿勢で、
前記導体毎に配置される前記磁気センサはそれぞれ、前記1対の磁電変換素子が挟み込む前記貫通スリットを有する前記導体の2つの前記電流路が貫通する、前記第1の空隙部を有する前記第1の磁性部と、前記第2の空隙部を有する前記第2の磁性部もしくは、
2つの前記電流路が貫通する前記第2の空隙部もしくは、前記第3の空隙部を有する隣接する前記第2の磁性部同士の、前記第1の方向の厚み寸法と、前記第2の方向の対向する延伸部の端面間寸法と、前記第3の方向の延伸部の外側端面間寸法とで区切られる領域内に、前記1対の磁電変換素子があるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記第1の空隙部と前記第2の空隙部と第3の空隙部の第3の方向の高さ寸法値が、前記対向する延伸部の端面間寸法よりも大きいことを特徴とする、請求項2と請求項3に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記導体は、前記貫通スリットを含む部分において、1回以上の屈折する形状を有することを特徴とする、請求項2と請求項3に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第2の方向に複数並んだ前記導体は、前記第3の方向の高さが等しくなるように配置されることを特徴とする、請求項2と請求項3に記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第2の方向に複数並んだ前記導体は、前記第3の方向の高さが異なるように配置されることを特徴とする、請求項2と請求項3に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型化された電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモーター駆動用インバータなどで使用される電流センサにおいて、電流センサは、被検出電流が印加される導体と、磁性材料で形成され導体が配置される中空部とギャップを有するC型もしくはU型形状の磁性部と、ギャップ内に配置される磁電変換素子を有する磁気センサと、を具備し、被検出電流が印加されることで生じる磁束を磁性部で集磁して、磁性部のギャップから漏れ出る磁束を磁電変換素子で検出し、検出した磁束密度量に応じて、磁気センサが出力信号を外部に出力することで、被検出電流の電流値の検出がなされてきた。
【0003】
特許文献1に示される複数の検出相を有する電流センサ(例えば複数の三相交流電流を検出する電流センサ)において、電流検出相毎に電流センサの構成が並べられている構造が示されている。
しかしながら、被検出電流が大電流化すると、磁性部が磁気飽和して電流検出の直線性誤差が大きくなるため、磁性部の体格を大きくせざるを得ず、それに併せて電流センサの体格も大きくなり、センサの重量もまた重くなる。また隣接する電流検出相毎に磁性部を用意する必要があるため、小型化には限度がある。
【0004】
それらの問題を解決するため、特許文献2に示されている構造のように、隣接する電流検出相同士で、磁性部の一部を共用し、磁性部の体格を小さくできる構造が提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-148512
【特許文献2】特許6790774
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に示された構造は確かに電流センサの小型化に寄与するが、被検出電流が大電流化すると、磁性部が磁気飽和する事実は変わらず、磁気飽和すると電流検出の直線性誤差が大きくなる。よって被測定電流の大電流化に対応するためには、従来の電流センサと同じく磁性部の体格を大きくせざるを得ない。特に被検出電流が三相交流電流の場合、被検出電流の位相をずらしていることで、隣接する電流検出相で印加される電流の正負が逆転するため、磁性部を共用している箇所に磁束が集中するため飽和しやすい課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を鑑み、本発明における電流センサは、磁性部の磁気飽和を大幅に改善し、電流センサの体格を小さくできる電流センサ構造を提案するものである。
【0008】
本発明における電流センサは、貫通スリットで分岐し、第1方向に延伸する2つの電流路を有し、被検出電流が印加される導体と、延伸部の先端に端面を有する第1の1対の延伸部と、前記第1の1対の延伸部で形成される第1の空隙部を有する第1の磁性部と、延伸部の先端に端面を有する第2の1対の延伸部と第3の1対の延伸部と、前記第2の1対の延伸部で形成される第2の空隙部と、前記第3の1対の延伸部で形成される第3の空隙部を有する第2の磁性部と、前記導体に被検出電流が印加されることで発生する磁束の所定の感磁軸方向の磁束密度をそれぞれ検出して、検出した磁束密度量に応じた出力信号を出力する1対の磁電変換素子を有する磁気センサと、を具備し、前記導体は、前記第1の方向に垂直方向である第2の方向に複数並んで配置され、複数の前記導体にはそれぞれ異なる被検出電流が印加されており、前記第1の磁性部は、前記導体の第2方向に異なる導体のいない側の前記電流路がそれぞれ前記第1の空隙部を貫通するように2つ配置され、前記第2の磁性部は、全ての前記導体間に、前記第2の空隙部と前記第3の空隙部にそれぞれ異なる前記導体の前記電流路が1つずつ貫通するように配置され、前記磁気センサは、複数の前記導体毎に、前記貫通スリットを挟んで前記第1の方向と第2の方向の垂直方向である第3方向に対向して配置され、前記第2の方向にその感磁軸があることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、飽和特性が大幅に改善されることで磁性部の小型化が可能であり、小型化した電流センサを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に関わる電流センサの概略図であり、図1(a)は電流センサの斜視図で、図1(b)は電流センサの平面視図で、図1(c)は断面図である。
図2図1に示した電流センサの磁性部の形状と、導体の配置と形状と、磁電変換素子の配置を変えた構成例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1に関わる電流センサに被検出電流として三相交流電流を印加した場合の磁束経路を示す概略図で、図3(a)、(b)、(c)は1つの導体に最大電流値が印加された際、他の2つの導体に最大電流値×-1/2の電流値の電流が印加された際に生じる磁束経路を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1に関わる電流センサのシミュレーションに用いた構成例を示す図であり、図4(a)は電流センサの平面視図で、図4(b)は断面図である。
図5】本発明の実施の形態1に関わる電流センサのシミュレーションによりから得られた解析値から算出した、磁性部の直線性誤差を示すグラフであり、図5(a)、(b)は図4に示した構成例の直線性誤差を示す表とグラフであり、図5(c)(d)(e)(f)は従来技術で示された電流センサと直線性誤差を比較した表とグラフである。
図6】本発明の実勢の形態2に関わる電流センサの概略図であり、図6(a)は電流センサの平面視図で、図6(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100の概略図であり、図1(a)は実施の形態1に関わる電流センサ100の斜視図で、図1(b)は実施の形態1に関わる電流センサ100の平面視図で、図1(c)は図1(b)における断面B―Bの断面図である。また本発明では特に説明しない場合、被検出電流が流れる導体の幅方向をX方向、導体の厚み方向をY方向、導体の延伸方向をZ方向とし、図示矢印の方向を+(正)方向とし、実施の形態1については、各方向を同様に定義する。
【0012】
図1において、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、被検出電流である電流A1がZ+方向に印加され、貫通スリット2Aを有し、貫通スリット2Aで形成されるZ方向に延伸する電流路3Aと電流路3Bを有する導体1Aと、被検出電流である電流A2がZ+方向に印加され、貫通スリット2Bを有し、貫通スリット2Bで形成されるZ方向に延伸する電流路3Cと電流路3Dを有し、導体1AのX-方向に隣接して配置された導体1Bと、被検出電流である電流A3がZ+方向に印加され、貫通スリット2Cを有し、貫通スリット2Cで形成されるZ方向に延伸する電流路3Eと電流路3Fを有し、導体1BのX-方向に隣接して配置された導体1Cと、延伸部4a1と延伸部4a2と、延伸部4a1、4a2で形成される空隙部である空隙5Aを有し、電流路3Aが空隙5Aを貫通するように配置され、Z方向の厚さ寸法が寸法Ta1で、Y方向の延伸部の外側の端面寸法が寸法Ha1で、空隙部5AのY方向の高さ寸法が寸法Ha2である磁性部4Aと、延伸部4b1と延伸部4b2と延伸部4b3と延伸部4b4と、延伸部4b1、4b2で形成される空隙部である空隙5Bと、延伸部4b3、4b4で形成される空隙部である空隙5Cを有し、電流路3Bが空隙5Bを貫通し、かつ電流路3Cが空隙5Cを貫通するように配置され、Z方向の厚さ寸法が寸法Ta1で、Y方向の延伸部の外側の端面寸法である寸法Ha1で、空隙部5B,5CのY方向の高さ寸法が寸法Ha2である磁性部4Bと、延伸部4c1と延伸部4c2と延伸部4c3と延伸部4c4と、延伸部4c1、4c2で形成される空隙部である空隙5Dと、伸部4c3、4c4で形成される空隙部である空隙5Eを有し、電流路3Dが空隙5Dを貫通し、かつ電流路3Eが空隙5Eを貫通するように配置される磁性部4Bと同形状の磁性部4Cと、延伸部4d1と延伸部4d2と、延伸部4d1、4d2で形成される空隙部である空隙5Fを有し、電流路3Fが空隙5Fを貫通するように配置される磁性部4Aと同形状の磁性部4Dと、貫通スリット2Aを挟んでY方向に対向して配置され、電流A1が印加されることで生じる磁束のX方向の磁束密度量を検出する磁電変換素子である素子M1と素子M2を有する磁気センサ6Aと、貫通スリット2Bを挟んでY方向に対向して配置され、電流A2が印加されることで生じる磁束のX方向の磁束密度量を検出する磁電変換素子である素子M3と素子M4を有する磁気センサ6Bと、貫通スリット2Cを挟んでY方向に対向して配置され、電流A3が印加されることで生じる磁束のX方向の磁束密度量を検出する磁電変換素子である素子M5と素子M6を有する磁気センサ6Cと、を備え、
磁性部4A、4Bは、延伸部4a1の延伸部の端面である端面7A1と延伸部4b1の延伸部の端面である端面7B1が対向して離間する姿勢、かつ延伸部4a2の延伸部の端面である端面7A2と延伸部4b2の延伸部の端面である端面7B2が対向して離間する姿勢で、その端面間にX方向の寸法が寸法Waである空隙8Aを形成し、この時、寸法Waは寸法Ha2よりも小さい寸法値であり、
磁性部4B、4Cは、延伸部4b3の延伸部の端面である端面7B3と延伸部4c1の延伸部の端面である端面7C1が対向して離間する姿勢で、かつ延伸部4b4の延伸部の端面である端面7B4と延伸部4c2の延伸部の端面である端面7C2が対向して離間する姿勢で、その端面間にX方向の寸法が寸法Wbである空隙8Bを形成し、この時、寸法Wbは寸法Ha2よりも小さい寸法値であり、
磁性部4C、4Dは、延伸部4c3の延伸部の端面である端面7C3と延伸部4d1の延伸部の端面である端面7D1が対向して離間する姿勢、かつ延伸部4c4の延伸部の端面である端面7C4と延伸部4d2の延伸部の端面である端面7D2が対向して離間する姿勢で、その端面間にX方向の寸法が寸法Wcである空隙8Cを形成し、この時、寸法Wcは寸法Ha2よりも小さい寸法値であり、
磁気センサ6Aは、素子M1、M2が、寸法Ta1と寸法Ha1と寸法Waで区切られた領域内にあるように配置され、磁気センサ6Bは、素子M3、M4が、寸法Ta1と寸法Ha1と寸法Wbで区切られた領域内にあるように配置され、磁気センサ6Cは、素子M5、M6が、寸法Ta1と寸法Ha1と寸法Wcで区切られた領域内にあるように配置されるように構成される。
【0013】
電流センサ100は図示しない樹脂筐体と、図示しないコネクタを有するプリント基板を有し、導体1A、1B、1Cと磁性部4A、4B,4C、4Dとプリント基板は樹脂筐体に固定されており、また磁気センサ6A、6B、6Cは図示しない外部出力端子であるリードを有しており、リードを介してプリント基板に接続される。
【0014】
また磁気センサ6A、6B、6Cは図示しない磁気検出手段を有し、磁気検出手段は、素子M1、M2と、素子M3,M4と、素子M5,M6が検出した磁束密度量に応じてそれぞれ出力する出力信号を増幅し、増幅された2つの出力信号を差動演算して、その差動演算値を出力する図示しない差動演算部を有し、その差動演算値はコネクタを介して電流センサ100の外部に出力される。
【0015】
導体1A、1B、1Cは非磁性材料の銅材もしくはアルミ材等で、単一もしくは複数の材料で形成され、平板状の矩形形状断面を有し、X方向に並んで配置される。
【0016】
磁性部4A、4B、4C、4Dは磁性材料の珪素鋼板・フェライト・パーマロイ等で、単一もしくは複数の磁性材料で形成された、積層コアや巻きコア、鋳造コアであり、本実施形態においては、単一の磁性体で形成された磁性部4A、4Dは同形状であり、磁性部4B、4Cは同形状であり、4A、4B、4C、4Dは同材料で構成される。
【0017】
素子M1、M2、M3、M4、M5、M6はホール効果素子、磁気抵抗効果素子などで構成され、X方向に同極性の感磁軸を持ち、素子M1、M2は導体1Aに電流A1が印加された際に生じる磁束のX方向の磁束密度成分を検出しており、素子M3,M4は導体1Bに電流A2が印加された際に生じる磁束のX方向の磁束密度成分を検出しており、素子M5,M6は導体1Cに電流A3が印加された際に生じる磁束のX方向の磁束密度成分を検出している。また素子M1、M2、M3、M4、M5、M6の感磁極性はX+方向が+となる姿勢で配置されている。また本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100ではホール効果素子を用いる。
【0018】
図2は別の磁性部の形状と、別の導体の配置と形状と、別の磁電変換素子の配置を図1(b)B-B断面図に相当する図で示すものであり、図2(a)は、図1に示した電流センサ100の磁性部4A、4Dの形状を変えた構成例を示す図であり、図2(b)は、図1に示した電流センサ100の導体1Bの配置を変えた構成例を示す図であり、図2(c)は、図1に示した電流センサ100の導体1A、1B、1Cの形状を変えた構成例を示す図であり、図2(d)は素子M1、M2、M3、M4、M5、M6の配置を変えた構成例を示す図である。
【0019】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、磁性部4A、4B、4C、4Dをそれぞれ単一の磁性体で形成して配置したが、その限りではなく、図2(a)に示すように、磁性部4Aaを磁性部4A1と磁性部4A2で形成し、磁性部4Daを磁性部4D1と磁性部4D2で形成するように、複数の磁性部で形成してもよい。(磁性部4B、4Cも同様である。)
【0020】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、導体1A、1B、1CはY方向に同じ高さで、Z方向に直線的に延伸して配置されているが、その限りではなく、図2(b)に示すように、磁性部4Bと同様に延伸部4b1、4b2,4b3,4b4と、延伸部4b1、4b2で形成される空隙部5Bと、延伸部4b3、4b4で形成される空隙部5Cを有し、延伸部4b1、4b2のY方向の延伸部の外側の端面間寸法が寸法Ha1で、延伸部4b3、4b4のY方向の延伸部の外側の端面間寸法が寸法Hb1で、空隙部5Bの高さ寸法がHa1で、空隙部5Cの高さ寸法が寸法Hb1である磁性部4Baと、磁性部4Cと同様に延伸部4c1、4c2,4c3,4c4と、延伸部4c1、4c2で形成される空隙部5Dと、延伸部4c3、4c4で形成される空隙部5Eを有し、延伸部4c1、4c2のY方向の延伸部の外側の端面間寸法が寸法Hb1で、延伸部4c3、4c4のY方向の延伸部の外側の端面間寸法が寸法Ha1で、空隙部5Dの高さ寸法がHb1で、空隙部5Eの高さ寸法が寸法Ha1であり、磁性部4Baと同形状で、Y軸方向で180°回転させた磁性部4Caを用いてY方向の高さが違うように配置されてもよい。この時、磁気センサ6Bは、磁気センサ6Bは、素子M3、M4が、寸法Ta1と寸法Hb1と寸法Wbで区切られた領域内にあるように配置され、また寸法Wbは寸法Hb2よりも小さい寸法値である。
【0021】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100はZ方向に直線的に延伸して配置されているが、その限りではなく、図2(c)に示すように、電流センサ101は貫通スリット2Aa、2Ba、2Caをそれぞれ含む部分において導体1Aa、1Ba,1Caを2回屈折(90度曲げ)したものであり、各導体は1回以上屈折した形状を用いてもよい。導体を屈折することで、電流センサ101において磁性部4A、4B、4C、4DのY方向の外形寸法が、Z方向の外形寸法より小さい場合は、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100における図1(a)の構成例に比べ、Y方向において低背化が可能である。
【0022】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は、素子M1、M2は寸法Ta1と寸法Ha1と寸法Waで区切られた領域内にあり、なおかつZ方向から見た際に寸法Ha2にも重複する領域内に配置され、素子M3、M4は寸法Ta1と寸法Ha1と寸法Waで区切られた領域内にあり、なおかつZ方向から見た際に寸法Ha2にも重複する領域内に配置され、素子M5、M6は寸法Ta1と寸法Ha1と寸法Waで区切られた領域内にあり、なおかつZ方向から見た際に寸法Ha2にも重複する領域内に配置されているが、その限りではなく、図2(d)に示すように貫通スリット2A、2B,2Cを挟んでY方向に対向して配置され、感磁極性はX+方向が+となる姿勢であれば、素子M1、M2はそれぞれY+方向と、Y-方向の異なる空隙部8A内に配置されてもよく、素子M3、M4はそれぞれY+方向と、Y-方向の異なる空隙部8B内に配置されてもよく、素子M5、M6はそれぞれY+方向と、Y-方向の異なる空隙部8C内に配置されてもよい。好適には、素子M1、M2の離間するY方向の距離と、素子M3、M4の離間するY方向の距離と、素子M5,M6が離間するY方向の距離が小さい方が、素子M1、M2、M3、M4、M5、M6が磁気センサ6A,6B,6C内部で接続している図示しない半導体チップのサイズを小さくすることができるため、コストメリットが生じる。
【0023】
図2に示した磁性部の形状と、導体の配置と形状と、磁電変換素子の配置は、本発明の実施形態における形状例であり、本発明の構成を限定するものではない。
【0024】
電流A1、A2、A3はそれぞれ異なる被検出電流であり、例えば三相交流電流のそれぞれ異なる3つの被検出電流である。
【0025】
前記のように構成された実施の形態1に関わる電流センサ100は、導体1Aに電流A1を印加した場合、電流路3Aと電流路3Bに分流して電流が流れ、この時、電流路3Aと電流路3Bに流れる電流量の総和は、導体1Aに印加された電流A1の電流量と等しく、導体1Bに電流A2を印加した場合、電流路3Cと電流路3Dに分流して電流が流れ、この時、電流路3Cと電流路3Dに流れる電流量の総和は、導体1Bに印加された電流A2の電流量と等しく、導体1Cに電流A3を印加した場合、電流路3Eと電流路3Fに分流して電流が流れ、この時、電流路3Eと電流路3Fに流れる電流量の総和は、導体1Cに印加された電流A3の電流量と等しい。
【0026】
ここでは導体1A、1B、1Cに電流A1、A2、A3が印加された場合の、電流路3A、3B、3C、3D、3E、3Fに流れる電流により生じる磁束について説明する。また実施の形態1に関わる電流センサ100に印加される電流A1、A2、A3は三相交流電流である。
【0027】
図3は、図1に示した電流センサ100に印加される三相交流電流である電流A1、A2、A3において、いずれかの電流値が最大電流値で電流印加された場合に、その他の電流値は周波数が120degずれている電流値、すなわち最大電流値×-1/2の電流値が電流印加される場合の磁束の経路を示す図1(b)B-B断面図に相当する図で示すもので、図3(a)はA1が最大電流値で電流印加された場合に、電流A2、A3が最大電流値×-1/2の電流値の電流印加されている際の生じる磁束の経路を示すものであり、図3(b)はA2が最大電流値で電流印加された場合に、電流A1、A3が最大電流値×-1/2の電流値の電流印加されている際の生じる磁束の経路を示すものであり、図3(c)はA3が最大電流値で電流印加された場合に、電流A1、A2が最大電流値×-1/2の電流値の電流印加されている際の生じる磁束の経路を示すものである。
【0028】
導体1Aに電流A1が最大電流値となる電流を印加した場合、導体1B、1Cには電流A2、A3が最大電流値×-1/2の電流値の電流が印加される。この時、図3(a)に示すように、導体1Aに電流A1がZ+方向に印加されると、電流路3A、3Bに分流して流れる電流量に応じて、各電流路に流れる電流から磁束が発生するが、磁性部4A、4Bはそれぞれ電流路3A、3Bが空隙部5A、5Bを貫通するように配置され、また寸法Waは寸法Ha2よりも小さい寸法値であることから、空隙8A側の磁気抵抗が小さくなるため、各電流路に流れる電流から発生した磁束は、磁性部4A、4Bに集磁され、発生した磁束は磁束9Aのように磁性部4A、4Bを図示矢印方向に通過する。
【0029】
この時、導体1Bには最大電流値×-1/2の電流A2がZ+方向に印加され、電流路3C、3Dに分流して流れる電流量に応じて、各電流路に流れる電流から磁束が発生するが、磁性部4B、4Cはそれぞれ電流路3C、3Dが空隙部5C、5Dを貫通するように配置され、また寸法Wbは寸法Ha2よりも小さい寸法値であることから、空隙8B側の磁気抵抗が小さくなるため、各電流路に流れる電流から発生した磁束は、磁性部4B、4Cに集磁され、発生した磁束は磁束9bのように磁性部4B、4Cを図示矢印方向に通過する。また導体1Cには最大電流値×-1/2の電流A3がZ+方向に印加され、電流路3E、3Fに分流して流れる電流量に応じて、各電流路に流れる電流から磁束が発生するが、磁性部4C、4Dはそれぞれ電流路3E、3Fが空隙部5E、5Fを貫通するように配置され、また寸法Wcは寸法Ha2よりも小さい寸法値であることから、空隙8C側の磁気抵抗が小さくなるため、各電流路に流れる電流から発生した磁束は、磁性部4C、4Dに集磁され、発生した磁束は磁束9cのように磁性部4C、4Dを図示矢印方向に通過する。
【0030】
図3(a)において、図示Y+方向側の磁束9AはX+方向の磁束であり、図示Y-方向側の磁束9Aは逆のX-方向の磁束であり、素子M1、M2の感磁軸はX方向で感磁極性はX+方向が+となる姿勢で配置されているので、素子M1が検出するX方向の磁束密度量は正の値で、素子M2が検出するX方向の磁束密度量は負の値である。磁気センサ6Aは、素子M1,M2が検出した磁束密度量に応じて出力信号が出力なされ、出力された出力信号は磁気センサ6Aの有する図示しない増幅回路により増幅され、増幅された2つの出力信号は図示しない差動演算部により差動演算され、その差動演算値はコネクタを介して電流センサ100の外部に出力される。この時、素子M1が検出するX方向の磁束密度量は正の値で、素子M2が検出するX方向の磁束密度量は負の値であることから、差動演算により両者が加算された磁束密度量が検出できる。
【0031】
この際、図3(a)に示す磁性部4Bの共用部10Aにおいて、磁束9Aと磁束9bの磁束方向は同一方向であることから、磁束が集中し、磁性部4Bにて最も磁気飽和しやすいポイントとなる。しかしながら、磁性部4A、4Bはその磁気回路内に2つの空隙8Aを有していることから、磁性部4A、4Bからの漏れ磁束が多く、従来技術のコア形状よりも磁気飽和が起こりにくい特徴を有する。
【0032】
また素子M1、M2は寸法Ta1と寸法Ha1と寸法Waで区切られた領域内にあるように配置されていることで、磁性部4A、4B内に生じる磁束9Aを検出することが可能であり、素子M1、M2が空隙部8A側に近づくように配置すると、より大きな磁束密度量を検出することが可能であり、磁気センサ6Aの出力信号の増幅率を低下させることが可能となり、外乱磁場などの影響を低減することが可能である。
【0033】
導体1Bに電流A2が最大電流値となる電流を印加した場合、導体1A、1Cには電流A1、A3が最大電流値×-1/2の電流値の電流が印加される。この時、図3(b)に示すように、導体1Bに電流A2がZ+方向に印加されると、電流路3C、3Dに分流して流れる電流量に応じて、各電流路に流れる電流から磁束が発生するが、磁性部4B、4Cはそれぞれ電流路3C、3Dが空隙部5C、5Dを貫通するように配置され、また寸法Wbは寸法Ha2よりも小さい寸法値であることから、空隙8B側の磁気抵抗が小さくなるため、各電流路に流れる電流から発生した磁束は、磁性部4B、4Cに集磁され、発生した磁束は磁束9Bのように磁性部4B、4Cを図示矢印方向に通過する。
【0034】
この時、導体1Aには最大電流値×-1/2の電流A1がZ+方向に印加され、電流路3A、3Bに分流して流れる電流量に応じて、各電流路に流れる電流から磁束が発生するが、磁性部4A、4Bはそれぞれ電流路3A、3Bが空隙部5A、5Bを貫通するように配置され、また寸法Waは寸法Ha2よりも小さい寸法値であることから、空隙8A側の磁気抵抗が小さくなるため、各電流路に流れる電流から発生した磁束は、磁性部4A、4Bに集磁され、発生した磁束は磁束9aのように磁性部4B、4Cを図示矢印方向に通過する。また導体1Cには最大電流値×-1/2の電流A3がZ+方向に印加され、電流路3E、3Fに分流して流れる電流量に応じて、各電流路に流れる電流から磁束が発生するが、磁性部4C、4Dはそれぞれ電流路3E、3Fが空隙部5E、5Fを貫通するように配置され、また寸法Wcは寸法Ha2よりも小さい寸法値であることから、空隙8C側の磁気抵抗が小さくなるため、各電流路に流れる電流から発生した磁束は、磁性部4C、4Dに集磁され、発生した磁束は磁束9cのように磁性部4C、4Dを図示矢印方向に通過する。
【0035】
図3(b)において、図示Y+方向側の磁束9BはX+方向の磁束であり、図示Y-方向側の磁束9Bは逆のX-方向の磁束であり、素子M3、M4の感磁軸はX方向で感磁極性はX+方向が+となる姿勢で配置されているので、素子M3が検出するX方向の磁束密度量は正の値で、素子M4が検出するX方向の磁束密度量は負の値である。磁気センサ6Bは、素子M3,M4が検出した磁束密度量に応じて出力信号が出力なされ、出力された出力信号は磁気センサ6Bの有する図示しない増幅回路により増幅され、増幅された2つの出力信号は図示しない差動演算部により差動演算され、その差動演算値はコネクタを介して電流センサ100の外部に出力される。この時、素子M3が検出するX方向の磁束密度量は正の値で、素子M4が検出するX方向の磁束密度量は負の値であることから、差動演算により両者が加算された磁束密度量が検出できる。
【0036】
この際、図3(b)に示す磁性部4Bの共用部10Aにおいて、磁束9aと磁束9Bの磁束方向は同一方向であり、また図3(b)に示す磁性部4Cの共用部10Bにおいて、磁束9Bと磁束9cの磁束方向は同一方向であることから、共用部10A、10Bに磁束が集中し、磁性部4B、4Cにて最も磁気飽和しやすいポイントとなる。しかしながら、磁性部4B、4Cはその磁気回路内に2つの空隙8Bを有していることから、磁性部4B、4Cからの漏れ磁束が多く、従来技術のコア形状よりも磁気飽和が起こりにくい特徴を有する。
【0037】
また素子M3、M4は寸法Ta1と寸法Ha1と寸法Wbで区切られた領域内にあるように配置されていることで、磁性部4B、4C内に生じる磁束9Bを検出することが可能であり、素子M3、M4が空隙部8B側に近づくように配置すると、より大きな磁束密度量を検出することが可能であり、磁気センサ6Bの出力信号の増幅率を低下させることが可能となり、外乱磁場などの影響を低減することが可能である。
【0038】
導体1Cに電流A3が最大電流値となる電流を印加した場合、導体1A、1Bには電流A1、A2が最大電流値×-1/2の電流値の電流が印加される。この時、図3(c)に示すように、導体1Cに電流A3がZ+方向に印加されると、電流路3E、3Fに分流して流れる電流量に応じて、各電流路に流れる電流から磁束が発生するが、磁性部4C、4Dはそれぞれ電流路3E、3Fが空隙部5E、5Fを貫通するように配置され、また寸法Wcは寸法Ha2よりも小さい寸法値であることから、空隙8C側の磁気抵抗が小さくなるため、各電流路に流れる電流から発生した磁束は、磁性部4C、4Dに集磁され、発生した磁束は磁束9Cのように磁性部4C、4Dを図示矢印方向に通過する。
【0039】
この時、導体1Aには最大電流値×-1/2の電流A1がZ+方向に印加され、電流路3A、3Bに分流して流れる電流量に応じて、各電流路に流れる電流から磁束が発生するが、磁性部4A、4Bはそれぞれ電流路3A、3Bが空隙部5A、5Bを貫通するように配置され、また寸法Waは寸法Ha2よりも小さい寸法値であることから、空隙8A側の磁気抵抗が小さくなるため、各電流路に流れる電流から発生した磁束は、磁性部4A、4Bに集磁され、発生した磁束は磁束9aのように磁性部4B、4Cを図示矢印方向に通過する。また導体1Bには最大電流値×-1/2の電流A2がZ+方向に印加され、電流路3C、3Dに分流して流れる電流量に応じて、各電流路に流れる電流から磁束が発生するが、磁性部4B、4Cはそれぞれ電流路3C、3Dが空隙部5C、5Dを貫通するように配置され、また寸法Wbは寸法Ha2よりも小さい寸法値であることから、空隙8B側の磁気抵抗が小さくなるため、各電流路に流れる電流から発生した磁束は、磁性部4B、4Cに集磁され、発生した磁束は磁束9bのように磁性部4B、4Cを図示矢印方向に通過する。
【0040】
図3(c)において、図示Y+方向側の磁束9CはX+方向の磁束であり、図示Y-方向側の磁束9Cは逆のX-方向の磁束であり、素子M5、M6の感磁軸はX方向で感磁極性はX+方向が+となる姿勢で配置されているので、素子M5が検出するX方向の磁束密度量は正の値で、素子M6が検出するX方向の磁束密度量は負の値である。磁気センサ6Cは、素子M5,M6が検出した磁束密度量に応じて出力信号が出力なされ、出力された出力信号は磁気センサ6Cの有する図示しない増幅回路により増幅され、増幅された2つの出力信号は図示しない差動演算部により差動演算され、その差動演算値はコネクタを介して電流センサ100の外部に出力される。この時、素子M5が検出するX方向の磁束密度量は正の値で、素子M6が検出するX方向の磁束密度量は負の値であることから、差動演算により両者が加算された磁束密度量が検出できる。
【0041】
この際、磁性部4Cの共用部10Bにおいて、磁束9bと磁束9Cの磁束方向は同一方向であることから、磁束が集中し、磁性部4Cにて最も磁気飽和しやすいポイントとなる。しかしながら、磁性部4C、4Dはその磁気回路内に2つの空隙8Cを有していることから、磁性部からの漏れ磁束が多く、従来技術のコア形状よりも磁気飽和が起こりにくい特徴を有する。
【0042】
また素子M5、M6は寸法Ta1と寸法Ha1と寸法Wcで区切られた領域内にあるように配置されていることで、磁性部4C、4D内に生じる磁束9Cを検出することが可能であり、素子M5、M6が空隙部8B側に近づくように配置すると、より大きな磁束密度量を検出することが可能であり、磁気センサ6Cの出力信号の増幅率を低下させることが可能となり、外乱磁場などの影響を低減することが可能である。
【0043】
ここでは本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100の磁性部の飽和特性に関して、シミュレーションを用いて説明を行う。図4はシミュレーションに用いた本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100の構成を示す概略図であり、図4(a)は本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100の寸法を示す平面視図で、図4(b)は図4(a)の断面C-Cの断面図で、図5図4で示した本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100のシミュレーションにより得られた結果を示すものあり、図5(a)は本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100のシミュレーションにより得られた検出相U相、V相、W相の直線性誤差を示す表で、図5(b)はその直線性誤差のグラフを示すものであり、図5(c)は本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100と、同じ占有面積の磁性部を有する従来技術で示されたセンサのシミュレーションにより得られた直線性誤差を示す表で、図5(d)~(f)はその直線性誤差を、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100と電流検出相毎に比較したグラフを示すものである。
【0044】
図4はシミュレーションに用いた本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100の概略図であり、図4(a)~(b)に示すように、電流A1が印加される導体1Aの電流検出相を検出相U相、電流A2が印加される導体1Bの電流検出相を検出相V相、電流A3が印加される導体1Cの電流検出相を検出相W相とし、導体1A、2A、3AのX方向の幅寸法である寸法BW1、寸法BW2、寸法BW3は12.0mmで、導体1A、2A、3AはY方向の厚み寸法は同じ寸法値であり、その厚み寸法である寸法BH1は1.5mmで、貫通スリット2A、2B、2CのX方向の幅寸法である寸法SW1、寸法SW2、寸法SW3は6.2mmで、図示しない寸法SW1、SW2、SW3の中心線は、図示しない寸法BW1、BW2、BW3の中心線と同一直線上にあり、磁性部4Aの延伸部4a1、4a2のX方向の延伸寸法である寸法X1は5.4mmで、磁性部4AのX方向の幅寸法である寸法X2は9.4mmで、磁性部4Bの延伸部4b1、4b2のX方向の延伸寸法である寸法X3は5.4mmで、磁性部4Bの延伸部4b3、4b4のX方向の延伸寸法である寸法X4は5.4mmで、磁性部4BのX方向の幅寸法である寸法X5は9.4mmで、磁性部4Cの延伸部4c1、4c2のX方向の延伸寸法である寸法X6は5.4mmで、磁性部4Cの延伸部4c3、4c4のX方向の延伸寸法である寸法X7は5.4mmで、磁性部4CのX方向の幅寸法である寸法X8は9.4mmで、磁性部4Dの延伸部4d1、4d2のX方向の延伸寸法である寸法X9は5.4mmで、磁性部4DのX方向の幅寸法である寸法X10は9.4mmで、磁性部4A、4B、4C、4DのY方向の高さ寸法であるHa1は12.5mmで、磁性部4A、4B、4C、4DのZ方向の厚み寸法であるTa1は3.0mmで、空隙部5A、5B、5C、5DのY方向の高さ寸法であるHa2は4.5mmで、空隙部8AのX方向の幅方向である寸法Waは4.2mmで、空隙部8BのX方向の幅方向である寸法Wbは4.2mmで、空隙部8CのX方向の幅方向である寸法Wcは4.2mmで、空隙部8A、8B、8CのY方向の高さ寸法であるY1は4.0mmで、素子M1、M2の離間距離は2.6mmで、寸法Ta1と寸法Waの図示しない中心線上かつ、寸法BH1の図示しない中心線に対して対称になる配置であり、素子M3、M4の離間距離は2.6mmで、寸法Ta1と寸法Wbの図示しない中心線上かつ、寸法BH1の図示しない中心線に対して対称になる配置であり、素子M5、M6の離間距離は2.6mmで、寸法Ta1と寸法Wcの図示しない中心線上かつ、寸法BH1の図示しない中心線に対して対称になる配置で構成し、導体1A、1B、1Cは銅材の材料設定で、磁性部4A、4B、4C、4Dはケイ素鋼板の材料設定とし、周辺空気の比透磁率は1.0で、磁気センサ6A、6B、6Cは一般的に非磁性の材料が用いられるため、シミュレーションでは周辺空気と同じく比透磁率は1.0とした。
【0045】
また本シミュレーションは有限要素法電磁場解析ソフトを用いて行い、導体1A、1B、1Cに印加される電流は三相交流電流で、シミュレーションを行う電流検出相の導体に被検出電流の電流値が最大電流値で印加される場合を想定し、その他の導体には周波数が120degずれている電流値、すなわち最大電流値×-1/2の電流値を印加した。またシミュレーションで導体1A、1B、1Cに印加する電流値は、0A~1100Aとし、0A~300A印加した際に、素子M1、M2と、素子M3、M4と、素子M5、M6が検出するX方向の磁束密度量から差分値を算出し、その差分値から最小二乗法により直線性の推定値を求め、推定値に対する直線性誤差を算出した。
【0046】
図5図4で示した本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100のシミュレーションにより得られた結果を示す表とグラフであり、図5(a)(b)に図4で示した本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100のシミュレーション結果を示す。モーター駆動用インバータなどで使用される電流センサにおいて、被検出電流の最大電流値に対して、求められる直線性誤差は1.0%であることが一般的であることから、本シミュレーションの直線性誤差の閾値を1.0%としてシミュレーション結果を確認すると、検出相U相は1000A、検出相V相は1000A、検出相W相は900Aまで直線性誤差は1.0%以下である結果が得られ、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は900Aまで測定可能な電流センサという結果が得られた。
【0047】
図5(c)~(f)は図4に示した本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100の磁性部4A、4B,4C、4Dにおいて、Y-方向の空隙部8A、8B、8Cで磁性部4A、4B,4C、4Dを全てつなげて単一の磁性部として、1つの磁電変換素子を有する3つ磁気センサを、Y+方向の空隙部8A、8B、8CのX方向とY方向とZ方向の中央部に磁電変換素子があるようにそれぞれ配置させ、導体1A、1B、1Cの貫通スリット2A、2B、2Cを廃止して、平板の矩形形状の導体とした従来技術で示された図示しない電流センサを構成して、同様にシミュレーションした結果と、図4で示した本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100のシミュレーションにより得られた結果を比較した結果を示す表である。(本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100と、同じ占有体積の磁性部を有する従来技術にて示された電流センサ構成と直線性誤差の比較を行った。)またシミュレーションに用いた図示しない従来技術で示された電流センサの電流検出相は便宜上、検出相U相に相当する電流検出相を検出相U1相、検出相V相に相当する電流検出相を検出相V1相、検出相W相に相当する電流検出相をW1相と呼称し、図5(c)は検出相U1相、V1相、W1相の直線性誤差を示すグラフで、図5(d)は検出相U相、U1相の直線性誤差を比較したグラフで、図5(e)は検出相V相、V1相の直線性誤差を比較したグラフで、図5(f)は検出相W相、W1相の直線性誤差を比較したグラフである。
【0048】
図5(c)~(f)に示すように検出相U1相は450A、検出相V1相は450A、検出相W1相は450Aまで、直線性誤差は1.0%以下である結果となり、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100の有する磁性部4A,4B,4C,4Dと同じ占有体積を有する磁性部で構成された従来技術で示された電流センサでは450Aまで想定可能な電流センサという結果が得られ、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は同じ占有体積でありながら、約2倍大きな被検出電流を検出可能であることが確認できた。本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100が約2倍大きな被検出電流を測定可能な理由は、磁性部4A、4B,4C、4Dの配置において、空隙部8A、8B、8Cを2つずつ有することで、磁性部4A、4B,4C、4Dから漏れる磁束が多く、磁気飽和が発生しづらいことが要因となっている。
【0049】
また一般的には漏れ磁束が大きくなると、電流検出相同士で相互に影響しあい、隣相影響による電流検出誤差が大きくなるが、本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100は1対の磁電変換素子で差動演算していることから、その隣相影響を打ち消すことが可能であり、その電流検出に検出誤差が生じにくい。また同様の理由から、電流センサの使用環境下で生じる、外乱磁場の影響も低減することが可能である。
【0050】
本発明の実施の形態1に関わる電流センサ100では被検出電流が流れる導体は導体1A,1B,1Cの3本で構成されているが、導体の数は2本、もしくは3本以上で構成されていても同様の効果を有する。
【0051】
図6は本発明の実施の形態2に関わる電流センサ200の概略図であり、図6(a)は導体数がN本の場合の形状の平面視図であり、図6(b)は図6(a)における断面D-Dの断面図である。
【0052】
図6(a)において、電流センサ200はN本の導体11~1Nを有し、磁性部41と磁性部4Nと、N-1個の磁性部42~4(N-1)と、N個の磁気センサ61~6Nと、を具備し、導体11~1Nは、導体1A、1B,1Cと同形状であり、貫通スリットを有し、貫通スリットにより電流路を形成してX-方向にN本の導体が隣接して並んでおり、磁性部41、4Nは磁性部4A、4Dと同形状であり、磁性部4A、4Dのように隣接する導体がいない導体11、1Nの、隣接する導体がいない側の電流路が、延伸部で形成される空隙に貫通するように配置され、磁性部42~4(N-1)は、磁性部4B、4Cと同形状であり、磁性部4B、4Cのように導体11~1NのすべてのN-1箇所の導体間に、延伸部で形成される2つの空隙に、それぞれ異なる導体の電流路が貫通するように配置される。
【0053】
全ての磁性部41~4Nは、磁性部4A,4B,4C、4Dのように、隣接する磁性部の延伸部の端面が対向する姿勢で配置されており、その端面間に空隙を形成し、N個の磁気センサ61~6Nは磁気センサ6A、6B、6Cと同様の配置で構成される。このように配置された電流センサ102は、被検出電流が例えば1つの三相交流電流の内2つの被検出電流を検出する場合はN=2であり、被検出電流が例えば1つの三相交流電流と1つの直流電流である場合はN=4であり、被検出電流が例えば2つの三相交流電流と1つの直流電流であればN=7であり、被検出電流が例えば3つの三相交流電流と2つの直流電流であればN=11本で構成される。
【0054】
またN本の導体は最低でもN=2本以上、かつ整数の本数であれば、本発明の効果を有する複数の電流検出相を有する電流センサの構成が可能であり、磁性部の大幅な小型化が実現し、併せて小型化された電流センサの提供が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1A 導体
1B 導体
1C 導体
1Aa 導体
1Ba 導体
1Ca 導体
11 導体
12 導体
13 導体
14 導体
1(N-1) 導体
1N 導体
2A 貫通スリット
2B 貫通スリット
2C 貫通スリット
2Aa 貫通スリット
2Ba 貫通スリット
2Ca 貫通スリット
3A 電流路
3B 電流路
3C 電流路
3D 電流路
3E 電流路
3F 電流路
3Aa 電流路
3Ba 電流路
3Ca 電流路
3Da 電流路
3Ea 電流路
3Fa 電流路
4A 磁性部
4B 磁性部
4C 磁性部
4D 磁性部
4Aa 磁性部
4A1 磁性部
4A2 磁性部
4Ba 磁性部
4Ca 磁性部
4Da 磁性部
4D1 磁性部
4D2 磁性部
41 磁性部
42 磁性部
43 磁性部
44 磁性部
45 磁性部
4(N-2) 磁性部
4(N-1) 磁性部
4N 磁性部
4a1 延伸部
4a2 延伸部
4b1 延伸部
4b2 延伸部
4b3 延伸部
4b4 延伸部
4c1 延伸部
4c2 延伸部
4c3 延伸部
4c4 延伸部
4d1 延伸部
4d2 延伸部
5A 空隙部
5B 空隙部
5C 空隙部
5D 空隙部
5E 空隙部
5F 空隙部
6A 磁気センサ
6Aa 磁気センサ
6B 磁気センサ
6Ba 磁気センサ
6C 磁気センサ
6Ca 磁気センサ
61 磁気センサ
62 磁気センサ
63 磁気センサ
64 磁気センサ
6(N-1) 磁気センサ
6N 磁気センサ
7A1 端面
7A2 端面
7B1 端面
7B2 端面
7B3 端面
7B4 端面
7C1 端面
7C2 端面
7C3 端面
7C4 端面
7D1 端面
7D2 端面
8A 空隙部
8B 空隙部
8C 空隙部
8D 空隙部
9a 磁束
9A 磁束
9b 磁束
9B 磁束
9c 磁束
9C 磁束
10A 共用部
10B 共用部
A1 電流
A2 電流
A3 電流
BH1 寸法
Ha1 寸法
Ha2 寸法
Hb1 寸法
Hb2 寸法
M1 素子
M2 素子
M3 素子
M4 素子
M5 素子
M6 素子
SWa 寸法
SWb 寸法
SWc 寸法
Ta1 寸法
U相 検出相
U1相 検出相
V相 検出相
V1相 検出相
W相 検出相
W1相 検出相
Wa 寸法
Wb 寸法
Wc 寸法
X1 寸法
X2 寸法
X3 寸法
X4 寸法
X5 寸法
X6 寸法
X7 寸法
X8 寸法
X9 寸法
X10 寸法
Y1 寸法
100 電流センサ
101 電流センサ
200 電流センサ
図1
図2
【図
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6