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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137576
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】消音器
(51)【国際特許分類】
   F01N 5/02 20060101AFI20240927BHJP
   F01N 1/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F01N5/02 C
F01N1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023064505
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 貴文
(72)【発明者】
【氏名】江崎 孝志
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004BA01
3G004CA01
3G004CA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多室構造で排熱回収器内装型の消音器において、消音機能を妨げることなく排気ガス流量に排熱回収量が影響され難い構造を提供する。
【解決手段】拡張室10に隣接する少なくとも一つの共鳴室11が二本の首管15,16にて拡張室10と連通し、首管15,16の少なくとも一本を拡張室10に開口する流入管13と対峙させ、共鳴室11内に熱交換器12を設けた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に拡張室と共鳴室を有する多室構造の消音器であって、
拡張室に隣接する少なくとも一つの共鳴室が二本の首管にて前記拡張室とのみ連通し、
前記首管の少なくとも一本を前記拡張室内に開口する流入管と対峙させ、
前記共鳴室内に熱交換器を備えた
ことを特徴とする消音器。
【請求項2】
前記熱交換器は前記共鳴室を仕切り板にて区画されて構成された
ことを特徴とする請求項1に記載の消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などの排気系に介装され排熱回収器を具備する消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
運輸機械などが搭載する内燃機関の排気系には排気騒音を低減する消音器が改装されているが、近年では排気ガスの熱を暖機や気化等に供する目的で、排熱回収器が介装される例がある。排熱回収器は、主体となる熱交換器に配管類を組み合わせた装置であり、熱交換器内を流通させる冷却媒体へ排気ガスの熱を移行させるものである。特に最近の自動車においては、搭載スペース削減や軽量化を狙って、消音器内に排熱回収器を設置することが行われる。
【0003】
自動車の消音器(メインマフラ)は通常、複数の拡張室や共鳴室などから成る複数室構造であるため、それら室間の排気流れに悪影響を与えないように熱交換器を設置することが求められる。そこで、例えば特許文献1においては、ひとつの消音室6(拡張室に相当)内に熱交換器11を配し、消音器1のハウジング2を介して冷却媒体の導入ポート16および導出ポート17を設置することで、消音器1内に排熱回収器を内装している。
【0004】
そして、排気ガス流が少ないときには排熱回収器である熱交換器11内へ排気ガス全量を流通させて、熱回収を優先させている。一方、排気ガス流が多くなる高速/高負荷運転時には熱回収よりも消音を優先させるために、排気ガスの大部分を熱交換機11を迂回させている。
【0005】
しかしながら、熱回収機能と消音機能のどちらかを優先させることは他方機能を一時的に阻害することに繋がるため、常時両立させることは難しい。また、優先の切替えのためには、開閉弁19等の特別な装置や部屋構造が必要となり、システムコストや重量の増大を招く。一方、そのような機能切替え型ではなく、排熱回収量を優先すべく常に排気ガス全量を排熱回収器へ通過させる消音器も、例えば特許文献2等で提案されている。
【0006】
特許文献2においては、ハウジング(主体1)内を複数の隔壁6、10で複数室に区画し、最上流側の部屋である加熱室8(拡張室に相当)内に、熱交換器である水管7を配している。加熱室8の下流側には拡張機能と共鳴機能を有する3室が隣接している。そして、熱交換器である水管7は、ハウジング内へ流入する全排気ガスと熱交換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-113559号公報
【特許文献2】公開実用新案 昭54-95637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、排気ガス流が少ないときの排熱回収量に合わせて設計すると、排気ガス流が多くなった際には熱回収量が過大となってしまう。一方、排気ガス流が多いときの排熱回収量に合わせて設計すると、排気ガス流が少なくなった際には熱回収量が過小となってしまう。したがって、定常運転の内燃機関には適するかもしれないが、常に運転状態すなわち排気ガス流量が変化し続ける車両の内燃機関用には適さない。
【0009】
上記のような課題に鑑み、本発明は、消音機能を妨げることなく排気ガス流量に排熱回収量が影響され難い、排熱回収器内装型の消音器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の消音器は、ハウジング内に拡張室と共鳴室を有する多室構造あって、拡張室に隣接する少なくとも一つの共鳴室が二本の首管にて拡張室と連通し、首管の少なくとも一本を拡張室内に開口する流入管と対峙させ、共鳴室内に熱交換器を備えたものである。
【0011】
熱交換器は前記共鳴室を仕切り板にて区画され構成されるようにしても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、消音機能を妨げることなく排気ガス流量に排熱回収量が影響され難い、排熱回収器内装型の消音器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る消音器の断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る消音器の変形例の断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る消音器の断面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係る消音器の断面図である。
図5】本発明の第4実施形態に係る消音器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の望ましい実施形態について図1図5を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の第1の実施形態に係る消音器1の全体を断面図で示している。消音器1は筐体であるハウジング2内に複数室を有する、多室構造である。ハウジング2は金属製の筒状体であるシェル3の両端開口を、金属製の端板4、5によって気密に閉塞固定する構造が一般的であるが、シェル3および端板4、5を適宜一体化および分割化したプレス半体同士を溶接接合して組み上げても良い。
【0016】
そしてシェル3内には、複数の室を画定する第1隔壁6、第2隔壁7、第3隔壁8がそれぞれ内装固定され、画定された各室間の気密を担保している。なお、隔壁は、セパレータと称されることもある。各室は上流側(図の左方)から順に、端板4と第1隔壁とシェル3によって画定された室が第1共鳴室9、第1隔壁と第2隔壁7とシェル3によって画定された室が拡張室10、第2隔壁7と端板5とシェル3によって画定された室が第2共鳴室11である。そして、第2共鳴室11内において、第2隔壁7と第3隔壁8とシェル3によって画定された室が排熱回収器12である。すなわち本実施形態においては、第2共鳴室11の一部が熱交換器12に占められた形であるが、これに限らず第2共鳴室11と熱交換器12とを別体で形成し、気密・液密に接合しても構わない。
【0017】
最上流側(図左方)に位置する第1共鳴室9は、積極的に排気ガスが流れない閉塞した室であり、インレットパイプ13とイアウトレットパイプ14が貫通している。インレットパイプ13の上流端13aから排気ガスが流入し、消音器1内でエネルギー減衰すなわち消音されてアウトレットパイプ14の上流端14aから排出される。
【0018】
そして、インレットパイプ13とイアウトレットパイプ14にはそれぞれ小径の貫通孔17が複数穿設されている。両パイプ内を流れる排気ガスの圧力が貫通孔17を介して第1共鳴室9内と連通することで、中高周波の消音がされるように設定されている。
【0019】
第1共鳴室9の下流側に隣接した拡張室10には、インレットパイプ13の下流端13bとアウトレットパイプ14の上流端14bが、それぞれ開口している。そして、後述する第1首管15および第2首管16が、それぞれインレットパイプ13およびイアウトレットパイプ14と対峙する形で配されている。本実施形態における対峙とは、インレットパイプ13の下流端13bと第1首管15の上流端15aとが、一定距離を保って同軸状か偏芯状に対向している状態、および、アウトレットパイプ14の上流端14bと第2首管の上流端16aとが一定距離を保って同軸状か偏芯状に対向している状態、のことである。どちらの場合においても、各軸の方向に投影すると管同士がラップしている状態となる。
【0020】
拡張室10の下流側に隣接して、排熱回収器12が設けられている。熱交換器12は、第2隔壁7と第3隔壁8とシェル3によって画定された室と、該室を貫通する第1首管15および第2首管16とで構成される。この熱交換器12に、冷却媒体(水やLLCなど)を室へ導入・排出させる導入管19および排出管18を加えた装置が、根排熱回収器12を形成する。
【0021】
以上のような構成において、排気ガスの流れを説明する。上流端13aから流入した排気ガスは多孔17にて圧力交換(共鳴によるエネルギー減衰)しつつインレットパイプ13内を流下し、下流端13bにて拡張室10内へ拡散放出されるが、このときの拡張により大きくエネルギー減衰される。その後排気ガスは、主にはアウトレットパイプ14の上流端14bへ流れ込み、このときの縮小により再度大きくエネルギー減衰される。加えて、第2共鳴室11は2つの首管を有するヘルムホルツレゾネータを形成しているので、中低周波の特定周波数付近の消音に寄与する。したがって、これら共鳴、拡張、縮小を経た結果、アウトレットパイプ13の下流端14aから吐出される排気ガスは、所望量の消音が達成される。
【0022】
拡張室10内へ拡散放出された排気ガスは主にアウトレットパイプ14の上流端14bへ流れ込むが、一部は慣性によって真っすぐ流下して、アウトレットパイプ14と対峙し配置される第1首管15の上流開口15aから第1首管15内へ流れ込む。そして、下流開口15bで拡張し第2首管16の上流開口16bへ縮小しつつ流れ込み、下流開口16aから拡張室10内へ拡散放出されるので、この過程においてもエネルギー減衰される。そして、ヘルムホルツ共鳴器本来の、特定周波数付近のエネルギー減衰も同時に奏する。
【0023】
上記のように、閉塞型の共鳴器ではあるが第2共鳴室11内に少量の排気ガス流通が生じることによって、第1首管15内および第2首管16内を排気ガスが流れ、その過程で熱交換器12において冷却媒体との熱交換が行われる。そして、第2共鳴室11内への排気ガス流通量は慣性によるため上流の主排気ガス流通量に比べて少なく、運転状態に伴う流量の増減が少ない。また、主排気ガスの流通に影響を与えるものでもない。したがって、排気ガス量が変化しても熱回収量の増減が少ない定常的な熱交換すなわち排熱回収が可能となる。而して、消音機能を妨げることなく排気ガス流量に排熱回収量が影響され難い、排熱回収器内装型の消音器が実現できる。
【0024】
なお、第1首管15内および第2首管16内に、適宜薄板から成るフィン15Cおよび16C(図における横線ハッチング)を挿入固定して、熱交換面積を広げることにより熱交換効率を向上させても良い。フィンは、波板の巻回体や、星形断面などの押出成形品などが考えられるが、適宜選択すれば良い。また、設置しなくても良い。
【0025】
図2は本発明の第1の実施形態に係る変形例である消音器20の全体を断面図で示している。以下、図2乃至図5においては、第1実施形態である図1の構成品と異なる構成品のみ構成品番を付す。本変形例においては、アウトレットパイプ21の形状及び排出方向が、第1実施形態と異なる。アウトレットパイプ21は、第1共鳴室9内でUターンし、端板26を貫通し排気ガスを排出する。そのような形状に応じて、第1隔壁23、第2隔壁24,第3隔壁25が貫通孔の位置が異なるため、第1の実施形態と異なるが、機能的には差異はない。
【0026】
このように、車両への搭載要件、消音要件、熱回収要件に応じて、適宜アウトレットパイプ21の形状や長さをチューニングすれば良い。
【0027】
図3は本発明の第2の実施形態に係る消音器30の全体を断面図で示している。本実施形態においては、アウトレットパイプ31及び第2首管32の位置が第1実施形態と異なる。第1実施形態に対し、アウトレットパイプ31がインレットパイプ13寄りに移設され、第2首管32は第1首管15から離隔する方向へ移設されている。そのような形状に応じて、第1隔壁33、第2隔壁34,第3隔壁35の貫通孔の位置が異なる。
【0028】
第2の実施形態に係る消音器30においては、アウトレットパイプ31と第2首管32とオフセット量を大きくとることによって消音量を稼ぐことができるが、背圧が増大する懸念が有るので、最適位置を見出すことが肝要である。
【0029】
図4は本発明の第3の実施形態に係る消音器40の全体を断面図で示している。本実施形態においては、第1首管41及び第2首管32の太さ(径)が第1実施形態と異なる。第1実施形態に対し、第1首管41が大径で第2首管42が細径になっている。このような設定により、慣性で第1首管41へ流入する排気ガス量を増やし熱交換量の増大が期待される。一方、二本の首管の径が変わることにより共鳴周波数および排気ガス流量も変化するので、それを勘案した設定が必要となる。
【0030】
図5は本発明の第4の実施形態に係る消音器50の全体を断面図で示している。本実施形態においては、第1首管51がインレットパイプ13とオフセットして対峙していることが、第1実施形態と異なる。したがって、第2隔壁52,第3隔壁53も異なる。このようにインレットパイプ13と第1首管51のオフセット量を適宜設定することで、排気ガスの慣性による流入量を調整できるので、搭載要件、消音要件、熱回収要件に応じて適宜チューニングすることができる。
【0031】
以上、本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱し範囲の変更があっても本発明に包含される。対象の内燃機関はガソリンエンジンやディーゼルエンジンに限らず、水素燃料や脱炭素合成燃料などを使用する内燃機関であっても良いし、それら燃料の気化のために本発明品で回収される熱を供しても良い。
【符号の説明】
【0032】
1、20、30、40、50 消音機
2 ハウジング
3 シェル
4、5、26 端板
6、23,33 第1隔壁
7、24,34,43,52 第2隔壁
8、25、35、44、53
9 第1共鳴室
10 拡張室
11 第2拡張室
12 熱交換器
13 インレットパイプ
14 アウトレットパイプ
15、41、51 第1首管
15C フィン
16、22、32、42 第2首管
16C フィン
17 開孔
18 排出管
19 導入管
図1
図2
図3
図4
図5