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特開2024-137583ソーラーモジュール用長繊維複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137583
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ソーラーモジュール用長繊維複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20240930BHJP
【FI】
C08J5/04 CES
C08J5/04 CFG
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087535
(22)【出願日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】112111309
(32)【優先日】2023-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】廖徳超
(72)【発明者】
【氏名】許漢チン
(72)【発明者】
【氏名】陳春來
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA08
4F072AB09
4F072AB14
4F072AD04
4F072AD44
4F072AE10
4F072AK16
4F072AL11
(57)【要約】
【課題】本発明は、ソーラーモジュール用長繊維複合材料を提供する。
【解決手段】ソーラーモジュール用長繊維複合材料は、(a)ポリプロピレン又はナイロンであるプラスチックペレット35wt%~55wt%と、(b)ガラス長繊維30wt%~65wt%と、(c)紫外線吸収剤0.1wt%~1wt%と、(d)光安定剤0.1wt%~1wt%と、を含む。プラスチックペレットとガラス長繊維との重量比(プラスチックペレット:ガラス長繊維)は、90:10~35:65である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレン又はナイロンであるプラスチックペレット35wt%~55wt%と、
(b)ガラス長繊維30wt%~65wt%と、
(c)紫外線吸収剤0.1wt%~1wt%と、
(d)光安定剤0.1wt%~1wt%と、を含み、
前記プラスチックペレットと前記ガラス長繊維との重量比(前記プラスチックペレット:前記ガラス長繊維)は、90:10~35:65であることを特徴とする、ソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤の含有量は、0.4wt%~0.8wt%である、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項3】
前記光安定剤の含有量は、0.4wt%~0.8wt%である、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項4】
前記長繊維複合材料の密度は、1.12g/cm~1.56g/cmである、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項5】
前記プラスチックペレットのメルトインデックスは、0.5~30である、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項6】
前記ガラス長繊維の繊維長さは、5μm~25μmである、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項7】
強靭化剤0.5wt%~10wt%を更に含む、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項8】
相溶化剤0.5wt%~10wt%を更に含む、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項9】
酸化防止剤0.1wt%~0.6wt%を更に含む、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項10】
滑剤0.1wt%~2wt%を更に含む、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長繊維複合材料に関し、特に、ソーラーモジュール用長繊維複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラーモジュールは、主に太陽電池パネルの構造をブラケットで支持するが、従来技術のブラケットは通常、アルミニウム合金またはステンレス鋼で作られているため、ブラケットの総重量が重く、建設が困難である。また、アルミニウム合金やステンレス鋼などの金属材料は雨水で腐食しやすく、ガルバニック腐食を引き起こし、ブラケットの寿命を縮めることがある。
【0003】
故に、材料の配合を改良することにより、プラスチック材料で軽量ソーラーブラケットを製造することによって、金属ブラケットが腐食しやすく且つ重量が高い欠点を克服することは、本事業の解決しようとする重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、ソーラーモジュール用長繊維複合材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記ソーラーモジュール用長繊維複合材料は、(a)ポリプロピレン又はナイロンであるプラスチックペレット35wt%~55wt%と、(b)ガラス長繊維30wt%~65wt%と、(c)紫外線吸収剤0.1wt%~1wt%と、(d)光安定剤0.1wt%~1wt%と、を含む。前記プラスチックペレットと前記ガラス長繊維との重量比(前記プラスチックペレット:前記ガラス長繊維)は、90:10~35:65である。
【0006】
一つの実施形態において、前記紫外線吸収剤の含有量は、0.4wt%~0.8wt%である。
【0007】
一つの実施形態において、前記光安定剤の含有量は、0.4wt%~0.8wt%である。
【0008】
一つの実施形態において、前記長繊維複合材料の密度は、1.12g/cm~1.56g/cmである。
【0009】
一つの実施形態において、前記プラスチックペレットのメルトインデックスは、0.5~30である。
【0010】
一つの実施形態において、前記ガラス長繊維の繊維長さは、5μm~25μmである。
【0011】
一つの実施形態において、長繊維複合材料は、強靭化剤0.5wt%~10wt%を更に含む。
【0012】
一つの実施形態において、前記長繊維複合材料は、相溶化剤0.5wt%~10wt%を更に含む。
【0013】
一つの実施形態において、前記長繊維複合材料は、酸化防止剤0.1wt%~0.6wt%を更に含む。
【0014】
一つの実施形態において、前記長繊維複合材料は、滑剤0.1wt%~2wt%を更に含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有利な効果として、本発明に係るソーラーモジュール用長繊維複合材料は、「ガラス長繊維30wt%~65wt%を含む」及び「前記プラスチックペレットと前記ガラス長繊維との重量比(プラスチックペレット:ガラス長繊維)は、90:10~35:65である」といった技術特徴によって、ソーラーブラケットの重量を低減すると共に、ソーラーブラケットの耐食性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明を参照されたい。しかし、提供される詳細な説明は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0017】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明に係る「ソーラーモジュール用長繊維複合材料」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0018】
本発明の第一実施形態は、(a)ポリプロピレン又はナイロンであるプラスチックペレット35wt%~55wt%と、(b)ガラス長繊維30wt%~65wt%と、(c)紫外線吸収剤0.1wt%~1wt%と、(d)光安定剤0.1wt%~1wt%と、を含む、ソーラーモジュール用長繊維複合材料を提供する。
【0019】
ポリプロピレンの密度は、約0.89g/cm~0.91g/cmである。本発明に係る長繊維複合材料において、プラスチックペレットを用いることで、密度が1.12g/cm~1.56g/cmの長繊維複合材料を製造することによって、ソーラーブラケットの必要に応じて、ソーラーブラケットの重量を低減することができる。又、ポリプロピレンは、リサイクルプラスチック材料であり、アメリカのプラスチック産業会に基準とする樹脂識別コードは5である。このように、本発明の長繊維複合材料は、リサイクル特性を有する。
【0020】
例えば、本発明で用いたポリプロピレンは、ホモポリプロピレン(PP-H)、ランダム共重合ポリプロピレン(PP-R)又はブロックコポリマーポリプロピレン(PP-B)であってもよい。プラスチックペレットの加工特性を考量すると、メルトインデックスが0.5~30であるプラスチックペレットを用いる。プラスチックペレットのメルトインデックスが0.5未満であると、流動性が不良で加工しにくくなる。プラスチックペレットのメルトインデックスが30を超えると、プラスチック材料を溶融した後の粘度が低く、成形加工を行うことが困難となる。
【0021】
特筆すべきことは、プラスチックペレットの剛性が低くてソーラーブラケットの製造に不利となる。本発明において、プラスチックペレットの剛性を向上するために、ガラス長繊維を更に添加する。長繊維複合材料の総重量に基づいて、ガラス長繊維の添加量は30wt%~65wt%であり、30wt%~60wt%であることが好ましい。ガラス長繊維の添加量が30wt%未満であると、長繊維複合材料の剛性が不足となる。ガラス長繊維の添加量が65wt%を超えると、長繊維複合材料の耐衝撃性が低下となる。このように、長繊維複合材料の剛性及び耐衝撃性を両立するために、プラスチックペレットとガラス長繊維との重量比(プラスチックペレット:ガラス長繊維)は、90:10~35:65であり、75:25~40:60であることが好ましい。
【0022】
本発明の一つの実施形態において、長繊維複合材料(Long Glass Fiber,LGF)の繊維長さは5μm~25μmである。繊維長さが5μm未満であると、長繊維複合材料の剛性を向上する効果を果たせない。繊維長さが25μmを超えると、ガラス長繊維の長繊維複合材料での分散性に影響して、成形加工性及び製品の使用機能に影響する。
【0023】
又、ポリプロピレンは、耐紫外線性を有しないため、紫外線で長い時間で照射すると、機械的性質が劣化し、老化による変色、ひび割れ、または表面の白亜化に繋がる。よって、本発明に係る長繊維複合材料は、ソーラーブラケットの製造に適するために、紫外線吸収剤0.1wt%~1wt%を添加してもよい。紫外線吸収剤の添加量が0.1wt%未満であると、ブラケット表面の白亜化が発生すると共に、強度が低下となる。紫外線吸収剤の添加量が1wt%を超えると、材料の無駄となる。
【0024】
例えば、本発明に係る紫外線吸収剤として、サリチル酸フェニル、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、モノ安息香酸レゾルシノール、2-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-2’-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールの中の一種以上であってもよい。好ましくは、紫外線吸収剤は、Cytec Industries製の紫外線吸収剤(Cyasorb UV 531)であってもよい。
【0025】
更に説明すると、本発明の紫外線吸収剤と光安定剤とを組み合わせることによって、光安定効果を更に向上させて、太陽光による長繊維複合材料の傷害を低減させることができる。具体的に説明すると、優れた光安定効果を達成するために、本発明に係る長繊維複合材料は、光安定剤0.1wt%~1wt%を含む。光安定剤の添加量が0.1wt%未満であると、ブラケット表面の白亜化が発生すると共に、強度が低下となる。光安定剤の添加量が1wt%を超えると、材料の無駄となる。
【0026】
例えば、本発明に係る光安定剤は、2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノキシ)ニッケル、2,4,6-トリス(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、トリス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジニル)ホスファイト(tris(1,2,2,6,6-pentamethyl-piperidyl)phosphite)、コハク酸と4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジノールとのポリマー、ヘキサメチルリン酸トリアミド、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、及びヒンダードフェノールの中の一種以上であってもよい。好ましくは、光安定剤は、BASF社製のChimassorb(登録商標)2020である。
【0027】
本発明の一つの実施形態において、長繊維複合材料は、長繊維複合材料の耐衝撃性を向上するために、強靭化剤0.5wt%~10wt%を更に含んでもよい。長繊維複合材料に含まれた強靭化剤の含有量が0.5wt%未満であると、長繊維複合材料の耐衝撃性が不足となる。長繊維複合材料に含まれた強靭化剤の含有量が10wt%を超えると、引張強度及び曲げ強度が低下となる。
【0028】
例えば、強靭化剤は、ポリオレフィンエラストマー(POE)であってもよい。ポリオレフィンエラストマー(POE)は、エチレンと、プロピレン又は他のα-オレフィン(例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなど)とを共重合してなるポリオレフィン様材料(polyolefin-like material)である。ポリオレフィンプラスチックに比べて、前記ポリオレフィン様材料の分子鎖における共重合モノマー量が比較的に高く、密度が低く、軽量化ソーラーブラケットの製造に適する。
【0029】
ポリオレフィンエラストマーは主に、エチレンプロピレン共重合体及びエチレン/α-オレフィン共重合体の二種を含む。エチレンプロピレン共重合体エラストマーは、エチレンプロピレンゴム(EPM)及びエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)の二種を含む。エチレン/α-オレフィン共重合体エラストマーは主に、エチレン/α-オレフィンランダム共重合体(POE)及びエチレン/α-オレフィンブロック共重合体(OBC)の二種を含む。
【0030】
本発明の一つの実施形態において、長繊維複合材料は、相溶化剤0.5wt%~10wt%を更に含んでもよい。長繊維複合材料の相溶化剤の含有量が0.5wt%未満であると、相溶性が不足で物理的及び機械的特性が低下となる。長繊維複合材料の相溶化剤の含有量が10wt%を超えると、プラスチック合金の耐熱温度の低下及び押し出し加工性の低下に繋がる。
【0031】
例えば、相溶化剤は、メタクリル酸グリシジルをグラフトしたエチレンプロピレンジエンモノマー(ethylene-propylene-diene monomer(EPDM) grafted with glycidyl methacrylate(GMA);EPDM-g-GMA又はEPDM-GMA)、メタクリル酸グリシジルをグラフトしたポリエチレン-オクテン(Poly(ethylene octene) grafted with glycidyl methacrylate;POE-g-GMA又はPOE-GMA)、エチレンプロピレンジエンモノマー(ethylene-propylene-diene monomer;EPDM)、スチレンブタジエンスチレン共重合体(Styrene-butadiene-styrene copolymer;SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(styrene-ethylene-butylene-styrene copolymer;SEBS)、ポリオレフィンエラストマー(Polyolefin elastomer;POE)、無水マレイン酸をグラフトしたポリオレフィンエラストマー(Polyolefin elastomer grafted with maleic anhydride;POE-g-MA又はPOE-MA)であってもよい。
【0032】
本発明の一つの実施形態において、長繊維複合材料は、酸化防止剤0.1wt%~0.6wt%を更に含んでもよい。長繊維複合材料の酸化防止剤の含有量が0.1wt%未満であると、熱分解に関する問題が発生する。長繊維複合材料の酸化防止剤の含有量が0.6wt%を超えると、材料の無駄になる。例えば、酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト及び3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリルの中の一種、若しくはそれらの一種以上で混合してなるものであってもよい。
【0033】
本発明の一つの実施形態において、長繊維複合材料は、滑剤0.1wt%~2wt%を更に含んでもよい。長繊維複合材料の滑剤の含有量が0.1wt%未満であると、押し出し加工の潤滑性の不足によるせん断熱が発生して分解されることがある。長繊維複合材料の滑剤の含有量が2wt%を超えると、滑剤が析出すること及び押し出しの滑りに繋がる。例えば、滑剤は、炭化水素系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、高級脂肪酸系滑剤、エステル系滑剤、アルコール系滑剤、金属石鹸系滑剤、及び複合系滑剤からなる群から選択される少なくとも1つであってもよいが、上述した具体例はあくまでも実施可能な例であり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0034】
本発明の一つの実施形態において、長繊維複合材料を用いて異型押出しにより、サイズが6.0cm(高さ)×4.2cm(幅)、若しくは2.0cm(高さ)×3.0cm(幅)のソーラーブラケットを製造するが、ソーラーブラケットの長さは、必要に応じて調整することができる。
【0035】
[実施例1]
本発明の実施例1に係る長繊維複合材料は、プラスチックペレット45wt%と、ガラス長繊維50wt%と、紫外線吸収剤1wt%と、光安定剤0.5wt%と、強靭化剤1wt%と、相溶化剤1wt%と、滑剤1wt%と、を含んだ。その後、異型押出により、6.0cm(高さ)×4.2cm(幅)のソーラーブラケットを製造した。
【0036】
[比較例1-1]
第1の実施例と同一の長繊維複合材料を用いて、異型押出により、2.0cm(高さ)×3.0cm(幅)のソーラーブラケットを製造した。
【0037】
[比較例1-2]
アルミニウム合金T-6061を用いて、2.0cm(高さ)×3.0cm(幅)のソーラーブラケットを製造した。
【0038】
[金型流動解析ソフトウェアのモデル分析]
本発明において、金型流動解析ソフトウェアのモデル分析により、本願の実施例及び比較例に対するひずみを評価し、製品の設計の信頼性を向上させる。ここで、降伏強度は、材料の靱性を示すものであると共に、延性材料が弾性限界を超えた荷重に対して、応力ひずみ比が繰り返し変化する状態を示し、さらにわずかに荷重を増やすと破断が発生する応力値とする。ここで、長繊維複合材料は鋼性材料であるため、降伏強度を有しない。破断強度は、材料を破断させるために必要な引張荷重と断面積との比であり、即ち、応力である。伸長率は、試料を引っ張って破断させた後のゲージ部分の総変形量と、ゲージ部分の元の長さとの比である。ヤング率は、等方性エラストマーの剛性(stiffness)を評価するものであり、フックの法則に適用する範囲において、単軸応力と単軸変形との比である。ポアソン比(Poisson’s ratio)は、材料を引っ張られる力又は圧縮される力による材料の変形が発生する際に、材料の幅方向の歪みと材料の縦方向の歪みとの比である。最大トルクは、ブラケットにかかる最大の力であり、即ち、最大の力とは、17レベルの風をシミュレートする際にかかるブラケットが耐える力である。最大応力は、ブラケットが耐える応力である。実験結果は、表1に示すとおりである。
【0039】
【表1】
【0040】
不良解析において、ブラケットの最大応力は、材料自体の破断強度より大きくなると、フェイルにする。例えば、比較例1-1のブラケットの最大応力である289.69MPaは、材料の破断強度である100MPaより大きいため、不良解析でフェイルとして評価した。それに比べて、実施例1のブラケットの応力は100.91MPaであり、材料の破断強度である100MPaに近いため、不良解析でパスとして評価した。比較例1-2のブラケットの最大応力である253.42MPaは、材料の破断強度である313MPaより小さいため、不良解析でパスとして評価した。表1の結果に示す通り、長繊維複合材料の破断強度、伸長率及びヤング率はアルミニウム合金より低いが、構造の改良によって、ブラケットのシミュレーション試験においてソーラーブラケットの要求を満たすことができる。
【0041】
[耐候性測定]
プラスチックの耐候性を評価するには、自然暴露法や人工加速試験法などの方法が主に採用されている。ただし、自然暴露法は、自然環境において直接又は間接的に暴露させる方法であるため、時間がかかるし、環境の要素による影響が大きいので、再現性が低い。よって、プラスチックの耐候性を評価する方法は主に人工老化試験であり、最も一般的な方法は光老化試験である。ポリプロピレン(PP)及び低密度ポリエチレン(LDPE)などのプラスチック、ゴム製品は、長い時間でUV光の照射によると、プラスチックが老化することがあり、例えば、もろさ、変色、弾力性の低下などが挙げられ、一方、金属にはこの現象がない。
【0042】
本発明において、異なる材料を用いて、30mm(高さ)×30mm(幅)×2.0mm(厚み)のソーラーブラケットを製造し、耐候性測定を行った。試験方法として、ランプ光源UVB(波長313nm)を4000時間照射し、0時間、1200時間、2400時間、3000時間、4000時間における機械的強度を測定し、維持率を算出した。実験材料と結果は、表2に示す通りである。
【0043】
【表2】
*SMC:ガラス繊維で強化された熱硬化性プラスチックであるシート成形コンパウンド(Sheet molding compound)
【0044】
表2に示すように、実施例2-1でポリエチレン(PE)を採用し、実施例2-2でPPを採用し、UV光によって1200時間照射された後に、実施例2-1及び実施例2-2の引張強度はそれぞれ、元(0時間測定)の31%及び22%に低下し、紫外線吸収剤が添加されていないPP及びPEの耐候性が不良であることを示した。実施例2-3及び実施例2-4によれば、PPにガラス長繊維複合材料を添加して得た耐候性は、PEにガラス長繊維複合材料を添加して得た耐候性より優れており、具体的に、UV光によって2400時間照射された後でも、PPに長繊維複合材料を添加した実施例2-4の引張強度は依然として、元の80%を維持することができる。更に、実施例2-5及び実施例2-6によれば、ガラス長繊維で強化されたPE及びPPに0.5%紫外線吸収剤を添加する場合に、耐候性を向上する効果が優れたことを示した。好ましくは、ガラス長繊維で強化されたPPに0.5%紫外線吸収剤を添加する場合に、UV光によって4000時間照射された後でも、その引張強度は依然として、元の92%を維持することができ、即ち屋外の太陽光に20年間耐えることができると推定されており、ソーラーモジュールの要求を満たしている。
【0045】
[上側への引張試験]
上側への引張試験について、M8ねじ止めで実施されたが、材料が破壊されている過程で既に弾性範囲を超えているため、シミュレーション分析で破壊の開始点を定義することは難しく、応力解析は不正確になりやすい。したがって、試験方法はひずみ解析を採用し、最大ひずみの発生を実験の終点とした。実験結果については、表3に示す通りである。
【0046】
【表3】
【0047】
最大の上側への引張力は、約7000Nに達し、このためにソーラーブラケットとして使用するには十分であることが示された。表3に示すように、比較例で採用されたアルミニウム合金の最大ひずみは、最大の上側への引張力が9000Nである際に発生した。実施例3-2の最大ひずみは、最大の上側への引張力が1500Nである際に発生したが、構造の改良によってその幅を増加すると、その最大の上側への引張力(N)が7000Nに達したことができる。説明すべきことは、長繊維複合材料の密度が比較的に低いため、幅が増加してもソーラーブラケットの重量を過度に増加することがない。
【0048】
[各材料の機能比較]
比強度は、引張強度を密度で除算した値であり、比曲げ弾性率は、曲げ弾性率を密度で除算した値である。比強度及び比曲げ弾性率は、材料単位重量の特性を示したものである。本発明に係る塩水噴霧試験において、5%塩化ナトリウム(NaCl)の標準溶液を用いて、腐食性の高い環境をシミュレートした。各材料の機能の比較は、表4に示す通りである。
【0049】
【表4】
*耐塩水噴霧性がISO 9223の腐食環境分類C3レベルを満たす場合は良好と評価され、そうでなければ不良と評価された。
*UVで4000時間照射した後に、引張強度が元の80%以上維持される場合は「良好」と評価され、元の50~80%を維持する場合は「まずまず」と評価され、元の50%以下しか維持されない場合は「不良」と評価された。
【0050】
表4によれば、亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金、アルミニウム合金T-6061及びSS302ステンレス鋼は塩霧耐性において劣り、50%LGF-PP及び50%LGFナイロン6は塩分が含まれる雨水による電位腐食に対して耐性があり、長繊維材料とポリプロピレンとの複合材料は、電位腐食に対する耐性及び耐UV照射を両立した。
【0051】
[材料の価格比較]
LFT基準単価については、2022/3に基づいてコスト単価を見積もりし、且つ押し出しの歩留まりを95%にすることに基づいて推算された。
【0052】
【表5】
【0053】
表5に示したように、50%LGF PPは、最も小さい密度を有するため、重量が軽いソーラーブラケットを製造することに有利となる。又、原料のコストが低く、フロン処理料金が必要ないので、環境にやさしく、且つ経済的なソーラーブラケットを製造することができる。
【0054】
[LFTで合金に代わる場合の利点・欠点の比較]
【0055】
【表6】
【0056】
表6に示すように、長繊維複合物の密度が低いため、ソーラーブラケットを製造する場合、比較的に軽い重量を有する。コストから考量すると、長繊維材料とポリプロピレンとの複合物は、コンパウンドの方が経済的である。
【0057】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係るソーラーモジュール用長繊維複合材料は、「ガラス長繊維30wt%~65wt%を含む」及び「プラスチックペレットとガラス長繊維との重量比(プラスチックペレット:ガラス長繊維)は、90:10~35:65である」といった技術特徴によって、ソーラーブラケットの重量を低減すると共に、ソーラーブラケットの耐食性を向上させる。
【0058】
更に説明すると、本発明に係る長繊維複合材料において、プラスチック材料で金属材料に代わるため、フロン処理料金に必要がなく、環境にやさしいソーラーブラケットを製造することができる。また、長繊維材料とポリプロピレンとの複合物を採用すると、プラスチックペレットの製造コストをさらに低減することができる。
【0059】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレン又はナイロンであるプラスチックペレット35wt%~55wt%と、
(b)ガラス長繊維30wt%~65wt%と、
(c)紫外線吸収剤0.1wt%~1wt%と、
(d)光安定剤0.1wt%~1wt%と、を含み、
前記プラスチックペレットと前記ガラス長繊維との重量比(前記プラスチックペレット:前記ガラス長繊維)は、5530~35:65であることを特徴とする、ソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤の含有量は、0.4wt%~0.8wt%である、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項3】
前記光安定剤の含有量は、0.4wt%~0.8wt%である、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項4】
前記長繊維複合材料の密度は、1.12g/cm~1.56g/cmである、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項5】
前記プラスチックペレットのメルトインデックスは、0.5~30である、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項6】
前記ガラス長繊維の繊維長さは、5μm~25μmである、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項7】
強靭化剤0.5wt%~10wt%を更に含む、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項8】
相溶化剤0.5wt%~10wt%を更に含む、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項9】
酸化防止剤0.1wt%~0.6wt%を更に含む、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【請求項10】
滑剤0.1wt%~2wt%を更に含む、請求項1に記載のソーラーモジュール用長繊維複合材料。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本発明の一つの実施形態において、ガラス長繊維(Long Glass Fiber,LGF)の繊維長さは5μm~25μmである。繊維長さが5μm未満であると、長繊維複合材料の剛性を向上する効果を果たせない。繊維長さが25μmを超えると、ガラス長繊維の長繊維複合材料での分散性に影響して、成形加工性及び製品の使用機能に影響する。