(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137599
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
B01J 20/30 20060101AFI20240927BHJP
B01D 53/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B01J20/30
B01D53/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023119093
(22)【出願日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2023-0037593
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】317015331
【氏名又は名称】ジーティーサイエン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン ヨンキュン
(72)【発明者】
【氏名】ソ ムンサム
(72)【発明者】
【氏名】ユ ユンサン
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA10
4D012CB11
4G066AA05C
4G066AA13B
4G066AA20C
4G066AA50B
4G066AA61C
4G066BA09
4G066BA20
4G066CA29
4G066CA31
4G066DA02
4G066FA03
4G066FA12
4G066FA17
4G066FA21
4G066FA33
4G066FA34
4G066FA37
4G066FA38
4G066FA39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法およびその装置を提供する。
【解決手段】含浸段階および乾燥段階が同じ反応槽内でのバッチ(batch)システムで行われると共に、反応槽の温度制御が前記反応槽の周囲を取り囲むヒーティング用オイルジャケットにより行われ、均一に撹拌され、多様な形態のカートリッジフィルターに適用される化学吸着剤を化学廃水の発生なしに環境に優しく製造することができ、吸着剤に化学薬品を添着させるに際して、含浸および乾燥段階を工程間移送なしに高い空間活用性で1つの装置中で効率的かつ効果的に行うことができ、吸着剤を化学薬品水溶液中に完全に沈積した後に乾燥させることによって、添着の制御が容易かつ簡単であり、化学薬品の余剰使用量を最小化することによって、作業者に対する有害因子露出を減少させて、安全保健環境の構築に寄与することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の段階を含む有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法:
(A)吸着剤としての担体100重量部に対して、有害ガスの中和または酸化還元反応用化学薬品5~20重量部と精製水120~150重量部の混合物である化学薬品水溶液を準備する段階;
(B)前記担体を反応槽の前記化学薬品水溶液中に沈積し、前記反応槽の温度を60~95℃に維持しつつ、結果混合物を1~5hr、50~100rpmで撹拌し、かつ前記結果混合物は前記化学薬品水溶液内に担体を沈積することによって獲得される合浸段階;および
(C)前記化学吸着剤の含水率が5~25%となるまで前記反応槽の前記温度を105~130℃に維持しつつ、前記化学吸着剤を4~10hr、100~300rpmで撹拌し、かつ前記化学吸着剤は前記結果混合物を1~5hr、50~100rpmで撹拌を完了した後に獲得される乾燥段階。
【請求項2】
前記吸着剤は、直径が1~7mm、長さが最大7mmのペレット、フレーク、グラニュール、または球体形態の有機、無機、または有・無機担体である、請求項1に記載の有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥段階と同時に、または前記乾燥段階の中間進行時点で乾燥空気を6~9kgf/cm2の圧力で供給する、請求項1に記載の有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法。
【請求項4】
前記反応槽の温度制御が前記反応槽の周囲を取り囲むヒーティング用オイルジャケットにより行われる、請求項1に記載の有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法。
【請求項5】
前記含浸段階および乾燥段階が同じ反応槽内でのバッチ(batch)システムで行われる、請求項1に記載の有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法。
【請求項6】
外部にヒーティング用オイルジャケットが形成された反応槽と、
前記反応槽内に位置し、多数のエアーノズルが所定間隔で形成されている撹拌軸の下端部に設置されるインペラーと、
前記撹拌軸に連結されるモーターおよびエアコンプレッサーと、を含み、
請求項1に記載の製造方法を行うための、有害ガス除去用化学吸着剤の製造装置。
【請求項7】
前記反応槽の傾斜を可能にする回転手段が設置されている、請求項6に記載の有害ガス除去用化学吸着剤の製造装置。
【請求項8】
前記撹拌軸に形成された多数のエアーノズルの間の上下間隔は、50~150mmであり、撹拌軸の中心から反応槽の内周面までの距離は、450~650mmであり、最下部のノズルから反応槽の底面までの距離は、最大300mmであり、
前記エアーノズルは、撹拌軸の同じ高さに複数個形成されている、請求項6に記載の有害ガス除去用化学吸着剤の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法およびその装置に関し、より詳細には、研究室や実験室または産業現場で発生する有害化学ガスを安全かつ効果的に処理するための多様な形態のカートリッジフィルターに適用される化学吸着剤の効果的かつ効率的であり、特に化学廃水の発生がなく、環境に優しい製造方法およびこれを効果的に適用できる製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活性炭やアルミナ、またはゼオライトなどの運搬体に化学薬品を含浸させて化学吸着剤を製造する技術が広く知られているが、ほとんどの常用される含浸法を用いた化学吸着剤の製造技術は、化学廃水を発生させて二次環境汚染源を作るという問題を有している。
【0003】
発生した化学廃水は、関連法規によって指定された処理方法によって処理しなければならず、この過程でさらなる化学薬品の使用とそれによる費用が発生する。また、化学廃水の集水および保管、移動や運送過程での漏出による二次事故が発生するおそれもある。
【0004】
このような化学物質漏出事故の発生時に環境を汚染させることはもちろん、国民の財産と人命被害を引き起こすので、化学吸着剤の一連の製造において環境汚染源を最小化できる方法および装置の開発が当業界に要求されてきた。
【0005】
近年、産業安全保健法、大気環境保全法、水質環境保全法など環境に関連した法規が強化され、研究室安全環境の構築に関する法律の制定と重大災害処罰法の施行など一般産業現場はもちろん、実験室における有害ガス浄化に対する需要が急増する傾向にある。このような有害ガス浄化に対する需要の増加に伴い、従来の吸着剤の使用はもちろん、高性能かつ経済的な有害ガス除去用化学吸着剤に対する要求も増加している。
【0006】
一般的に、添着活性炭の製造方法は、特定の化学薬品を水に溶解させた水溶液を活性炭に添着コーティングする方法によって、活性炭に化学薬品水溶液を噴射して化学薬品を添着した後、流動しつつ乾燥する噴射法、化学薬品水溶液に活性炭を完全に沈積、含浸して乾燥する含浸法、および、化学薬品を加熱した空気で蒸気化して、活性炭に添着して乾燥する蒸気法などに分類することができ、主に噴射法と含浸法が広く用いられている。
【0007】
噴射法は、主に流動層乾燥機を利用し、前記流動層乾燥機は、活性炭注入口を介して活性炭貯蔵筒に貯蔵された活性炭を注入し、流動層乾燥機の内部にある分散板の上部に活性炭を一定量充填した後、流動層乾燥機の上部にある化学薬品水溶液噴射口を介して化学薬品水溶液貯蔵筒に貯蔵された水溶液を活性炭に噴射させて一定時間添着工程を行う。所定の添着時間が経過した後、流動層乾燥機の下部から熱風機により加熱した熱風を供給し、噴射板の上部に添着してぬれている活性炭を乾燥し、乾燥過程で圧縮空気を吹き込み、偏流を防止する。
【0008】
しかしながら、この方法は、流動層乾燥機の内部にある分散板の上部に一定高さで積まれている活性炭に流動層乾燥機の上部から水溶液を噴射させるので、上方にある活性炭は、十分な量の化学薬品水溶液を含むが、下方にある活性炭は、そうでない恐れがあり、したがって、充填されている活性炭に化学薬品水溶液を均一に含ませるためには、適正量の水溶液を噴射しなければならないが、活性炭の密度、水分含有量、気温、湿度などによって使用すべき化学薬品水溶液の量が変わるので、その制御がかなり難しいという問題点がある。
【0009】
すなわち、使用する化学薬品水溶液の量が少ない場合には、活性炭に均一に添着しない恐れがあり、反対に、その使用量が多い場合には、分散板に多数形成された孔を介して化学薬品水溶液が流れてしまい、化学廃水による処理問題を引き起こすという問題点がある。
【0010】
なお、含浸法は、活性炭を化学薬品水溶液中に沈積して含浸させた後、一定時間放置し、化学薬品を活性炭に添着させた後、別途の乾燥装置に移動させて乾燥する。この方法は、含浸工程と乾燥工程が分離していて、工程効率性が低いという短所があり、特に含浸工程の終了後、排水、脱水過程で多量の化学廃水が発生するという深刻な問題点がある。また、含浸工程後に、反応槽の下部から熱風を供給したり、または移送し、オーブン乾燥や流動層乾燥を実施する別途の乾燥工程を経なければならない。
【0011】
その結果として、前記噴射法と含浸法は、いずれも、化学廃水が発生し、環境への優しさおよび作業者の安全性の管点から十分に満足せず、化学廃水の処理に手間がかかるという共通の問題点を有している。
【0012】
特に、有害ガス除去のための化学吸着剤を工業的に大量で製造する場合には、一般的に含浸法を使用しているが、含浸法は、やむをえず過量の化学薬品が含まれた多量の化学廃水を発生させ、そのため、化学廃水を運搬処理する過程が必要であり、当該過程で環境安全事故の恐れがあることはもちろん、さらに手間がかかるという問題点がある。
【0013】
また、加熱空気を利用して化学薬品を蒸気化して活性炭に添着させる蒸気法は、過飽和スチーム発生装置を必要とし、蒸気化する化学薬品量の制御が容易でないため、装置の構成が非常に複雑になり、スチームの短時間大量発生による化学薬品の大気流出が起こる恐れがあるという問題点がある。
【0014】
化学吸着剤を製造するための従来の典型的な公知技術としては、下記のものが挙げられる。
【0015】
韓国登録特許第10-0993807号(2010年11月05日登録)は、従来の噴射法と含浸法の問題点を同時に共に解決するために、円筒形回転体反応槽で含浸と乾燥が同時に行われ得るように構成された小容量の簡単な添着活性炭製造装置を開示しており、これは、含浸液の供給は、回転軸方向に配置される1つの噴射管を用いて添着液を噴射し、ヒーティング装置で加熱した熱風を胴体内に引き込ませる引込管と排出する流出管を設け、乾燥時に過熱を防止することができる。
【0016】
しかしながら、前記従来技術は、本質的に熱風乾燥によるものであるから、熱風生成のためのエネルギー費用が多くかかり、噴射管を介した添着液の十分な含浸量を制御することが困難であり、産業的規模の大容量化が容易でないという問題点がある。
【0017】
また、韓国登録特許第10-2413214号(2022年06月21日登録)は、活性炭を担体としてリン酸由来化合物を添着した有害ガス除去用化学吸着剤、製造方法およびこれを含むフィルターを開示しているが、これは、添着物の種類が特定されているだけで、従来の含浸法と本質的に同一なので、化学廃水の発生が避けられないという問題点がある。
【0018】
また、韓国登録特許第10-0374691号(2003年02月20日登録)は、水酸化ナトリウムとジエタノールアミンが一定の割合で混合された溶液に活性炭を同時添着させる硫化水素ガスを除去するための化学吸着剤の製造方法に関するが、添着過程で2つの物質を同時に添着させるという点を除いて、従来の含浸法と本質的に同一なので、同様に化学廃水が発生するという問題点がある。
【0019】
また、韓国公開特許第10-2022-0146938号(2022年11月02日公開)は、金属前駆体溶液と活性炭を混合して含浸し、乾燥過程において真空処理および乾燥後に焼成段階まで含む製造方法を提示しているが、焼成段階を含むという点から、本発明とは関係がない。
【0020】
なお、韓国登録特許第10-2472749号(2022年11月28日登録)は、有害ガス除去および抗菌脱臭機能を含有する吸着素材の製造方法を開示しており、液状原料と粉末原料を混合した後、押出成形機で化学吸着剤を剤形化する技術であり、本発明において提案する化学吸着剤とは全く関係がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0993807号公報(2010年11月05日登録)
【特許文献2】韓国登録特許第10-2413214号公報(2022年06月21日登録)
【特許文献3】韓国登録特許第10-0374691号公報(2003年02月20日登録)
【特許文献4】韓国公開特許第10-2022-0146938号公報(2022年11月02日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、本発明の第一の目的は、研究室や実験室または産業現場で発生する有害化学ガスを安全かつ効果的に処理するための多様な形態のカートリッジフィルターに適用される化学吸着剤を化学廃水の発生なしに環境に優しく製造できる、有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法を提供することにある。
【0023】
本発明の第二の目的は、吸着剤に化学薬品水溶液を含浸して添着させるに際して、含浸および乾燥段階を1つの装置中で移送が不要なバッチ(batch)システムによって効率的かつ効果的に行うことができる有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法を提供することにある。
【0024】
本発明の第三の目的は、吸着剤を化学薬品水溶液中に完全に沈積した後、乾燥させることによって、添着の制御が容易かつ簡単であり、化学薬品の余剰使用量を最小化し、作業者に対する有害因子露出を減少させて、安全保健環境の構築に資することができる有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法を提供することにある。
【0025】
本発明の第四の目的は、前述した諸般目的による製造方法を円滑に効率的に行うことができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記した本発明の第一から第三の目的は、吸着剤としての担体100重量部に対して、有害ガスの中和または酸化還元反応用化学薬品5~20重量部と精製水120~150重量部の混合物である化学薬品水溶液を準備する段階と、前記担体を反応槽の前記化学薬品水溶液中に沈積し、前記反応槽の温度を60~95℃に維持しつつ、結果混合物を1~5hr、50~100rpmで撹拌し、かつ前記結果混合物は前記化学薬品水溶液内に前記担体を沈積することによって獲得される合浸段階と、前記化学吸着剤の含水率が5~25%となるまで前記反応槽の前記温度を105~130℃に維持しつつ、前記化学吸着剤を4~10hr、100~300rpmで撹拌し、かつ前記化学吸着剤は前記結果混合物を1~5hr、50~100rpmで撹拌を完了した後に獲得される乾燥段階と、を含む有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法によって円滑に達成することができる。
【0027】
本発明の上記した第四の目的は、外部にヒーティング用オイルジャケットが形成された反応槽と、前記反応槽内に位置し、多数のエアーノズルが所定間隔で形成されている撹拌軸の下端部に設置されるインペラーと、前記撹拌軸に連結されるモーターおよびエアコンプレッサーと、を含む前述した製造方法を行うための有害ガス除去用化学吸着剤の製造装置によって円滑に達成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明による有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法およびその装置によれば、多様な形態のカートリッジフィルターに適用される化学吸着剤を化学廃水の発生なしに環境に優しく製造することができ、吸着剤に化学薬品を添着させるに際して、含浸および乾燥段階を工程間の移送なしに高い空間活用性で1つの装置中で効率的かつ効果的に行うことができ、吸着剤を化学薬品水溶液中に完全に沈積した後に乾燥させることによって、添着の制御が容易かつ簡単であり、化学薬品の余剰使用量を最小化することによって、作業者に対する有害因子露出を減少させて安全保健環境の構築に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】
図2は、本発明による装置の概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の装置における反応槽の部分を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の製造方法によって製造された化学吸着剤の例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照して本発明を具体的に説明する。
下記の説明は、本発明の具体的な例示を挙げて記述するものと理解すべきであり、本発明の技術的思想が下記の説明に限定されるものではない。なお、添付の図面は、本発明の理解を助けるために提供されるものであり、本発明の技術的思想が添付の図面に限定されるものではない。
【0031】
本発明の製造方法による有害ガス除去用化学吸着剤は、酸性または塩基性有・無機化学物質、またはこれらの任意の混合化学物質から発生しうる有害ガスを物理的吸着および、中和反応や酸化還元反応のような化学反応によって除去可能な汎用の化学吸着剤である。
【0032】
本発明による化学吸着剤の担体としては、石炭系、ヤシ系、木質系(ピッチ系)および高分子樹脂物質を炭化活性化して得た有機物担体と、アルミナ、ゼオライトなど無機担体を基盤とし、これらの混合物であってもよい。
【0033】
化学吸着剤の含浸水溶液の製造において化学薬品の選定は、中和反応や、酸化還元反応を介して無害な物質を生成することである。例として塩酸(HCl)ヒューム除去用化学吸着剤の製造の場合には、塩酸と反応して無害な塩を生成する塩基性薬品を選定し、代表的には、水酸化ナトリウム(NaOH)、または水酸化カルシウム(KOH)である。化学吸着時の反応は、次の通りである。
【0034】
HCl+KOH→KCl+H2O
【0035】
また、塩基性ガスとして代表的なアンモニア(NH4)ヒューム除去用化学吸着剤の製造の場合には、リン酸(H3PO4)が代表的に最も広く使用されており、化学吸着時の反応は、次の通りである。
【0036】
3NH4OH+H3PO4→(NH4)33PO4+3H2O
【0037】
前記含浸水溶液は、吸着担体100重量部に対して、精製水120~150重量部と化学薬品(試薬)5~20重量部の混合物からなる。
【0038】
従来の湿式含浸法に使用される化学薬品水溶液は、吸着担体100重量部に対して精製水150~200重量部と化学薬品(試薬)10~50重量部の混合物からなる。
【0039】
本発明の製造方法は、従来技術に比べて適用される化学薬品の使用量が少ない理由は、従来技術による湿式含浸法では、化学廃水が発生し、この化学廃水には、使用された化学薬品が過量含まれて排出されるのに対し、本発明では、化学廃水に捨てられる化学薬品がないので、化学薬品の使用量が顕著に減少するためである。
【0040】
より詳細には、従来湿式含浸法で化学吸着剤を製造する場合、投入された含浸水溶液の40~60重量%は、化学廃水に排出され、60~40重量%のみが吸着担体に含有され、乾燥過程を経ることにより、担体に含有された水分が蒸発する。
【0041】
本発明による有害ガス除去用化学吸着剤の製造方法は、
図1に示されたように、下記の段階を含む。
(A)準備段階:
吸着剤としての担体100重量部に対して、有害ガスの中和または酸化還元反応用化学薬品5~20重量部と精製水120~150重量部の混合物からなる化学薬品水溶液を準備する。
(B)含浸段階:
担体を反応槽の前記化学薬品水溶液中に沈積し、前記反応槽の温度を60~95℃に維持しつつ、結果混合物を1~5hr、50~100rpmで撹拌する。前記結果混合物は、前記化学薬品水溶液内に前記担体を沈積することによって獲得される。
(C)乾燥段階:
化学吸着剤の含水率が5~25%となるまで前記反応槽の前記温度を105~130℃に維持しつつ、前記化学吸着剤を4~10hr、100~300rpmで撹拌する。前記化学吸着剤は、結果混合物を50~100rpmで1~5hr撹拌した後に獲得される。
【0042】
ここで、使用される吸着剤としての担体は、
図4に示されたように、直径が1~7mm、長さが最大7mmであるペレット、フレーク、グラニュール、または球体形態であってもよく、前記担体は、有機、無機、または有・無機混合担体であってもよい。
【0043】
具体的には、
図4において、dは、直径2mmのペレット状アンモニア除去用化学吸着剤(添着活性炭)であり、eは、直径3mmのペレット状二酸化硫黄除去用化学吸着剤(添着活性炭)であり、fは、直径4~6mmの球体状硫化水素除去用化学吸着剤(添着アルミナ)である。
【0044】
なお、前記乾燥段階では、開始と同時に、または前記乾燥段階が半分が進行された中間進行時点でエアコンプレッサーによる圧縮乾燥空気を多数のエアーノズルが形成された撹拌軸を介して6~9kgf/cm2の圧力で供給することができる。
【0045】
本発明による製造方法において、反応槽の温度制御をヒーティング用オイルジャケットにより行い、乾燥段階は、反応槽の加温と共に、圧縮乾燥空気の注入によって行われる。
【0046】
注入された圧縮空気は、インペラーの回転によって化学薬品水溶液に含浸した吸着担体と十分に接触した後、上方に排出され、一部の化学薬品と多量の水分を含む排出空気は、適切な公知のフィルター手段により浄化した後、最終的に大気中に放出する。
【0047】
本発明による製造方法は、前記含浸段階および乾燥段階が同じ反応槽内でのバッチ(batch)システムで行われるので、高い空間活用性を有する。
【0048】
なお、上記した本発明による製造方法を円滑に行うための本発明による装置1は、
図2および
図3に示されたように、外部にヒーティング用オイルジャケット105が形成された反応槽100と、前記反応槽100内に位置し、多数のエアーノズル108が所定間隔で形成されている撹拌軸101の下端部に設置されるインペラー103と、前記撹拌軸101に連結されるモーター102およびエアコンプレッサー200と、を含む。
【0049】
本発明による装置1は、化学吸着剤の製造完了時にこれを排出するために、反応槽100が正方向90度回転傾斜が可能に回転軸を有する回転手段106が設置される。
【0050】
前記撹拌軸101に形成された多数のエアーノズル108の間の上下間隔は、50~150mm(
図3のa)であり、撹拌軸101の中心から反応槽100の内周面までの距離は、450~650mm(
図3のb)であり、最下部のノズル108から反応槽100の底面までの距離は、最大300mm(
図3のc)である。
【0051】
また、前記エアーノズル108は、撹拌軸101の同じ高さに十字状、放射状、三角分岐状などで複数個形成されてもよい。
【0052】
図面において、未説明の参照符号104は、制御盤であり、107は、移動式キャスターである。
【0053】
実施例1:アンモニアガス除去用化学吸着剤の製造
化学吸着剤の担体として直径3mmのペレット状活性炭を使用し、活性炭100重量部に対して、精製水150重量部および化学薬品(試薬)としてのリン酸(純度85%-食品添加用)10重量部の混合物からなる化学薬品水溶液を準備した。
反応温度60℃、撹拌速度50rpmの条件で4時間含浸させた後、乾燥温度105℃、撹拌速度300rpmの条件で8時間乾燥させるものの、4時間乾燥後にはエアーノズル一体型撹拌軸を介して7kgf/cm2の圧力で乾燥空気を供給した。
上記のようにして製造されたアンモニアガス除去用化学吸着剤は、水分含有量15%となるように乾燥して製造した。
【0054】
実施例2:アンモニアガス除去用化学吸着剤の製造
化学吸着剤の担体として直径3mmのペレット状活性炭を使用し、活性炭100重量部に対して、精製水150重量部および化学薬品(試薬)としてのリン酸(純度85%-食品添加用)20重量部の混合物からなる化学薬品水溶液を準備した。
反応温度60℃、撹拌速度50rpmの条件で4時間含浸させた後、乾燥温度105℃、撹拌速度300rpmの条件で8時間乾燥させるものの、4時間乾燥後にはエアーノズル一体型撹拌軸を介して7kgf/cm2の圧力で乾燥空気を供給した。
上記のようにして製造されたアンモニアガス除去用化学吸着剤は、水分含有量15%となるように乾燥して製造した。
【0055】
実施例3:二酸化硫黄ガス除去用化学吸着剤の製造
化学吸着剤の担体として直径3mmのペレット状活性炭を使用し、活性炭100重量部に対して、精製水150重量部および化学薬品(試薬)としての水酸化カリウム(純度95%)10重量部の混合物からなる化学薬品水溶液を準備した。
反応温度90℃、撹拌速度50rpmの条件で4時間含浸させた後、乾燥温度105℃、撹拌速度300rpmの条件で8時間乾燥させるものの、4時間乾燥後にはエアーノズル一体型撹拌軸を介して7kgf/cm2の圧力で乾燥空気を供給した。
上記のようにして製造された二酸化硫黄ガス除去用化学吸着剤は、水分含有量15%となるように乾燥して製造した。
【0056】
実施例4:硫化水素ガス除去用化学吸着剤の製造
化学吸着剤の担体として粒径4~6mmの球体状活性アルミナを使用し、活性炭100重量部に対して、精製水120重量部および化学薬品(試薬)としての過マンガン酸カリウム(純度99w/w%)10重量部の混合物からなる化学薬品水溶液を準備した。
反応温度65℃、撹拌速度50rpmの条件で2時間含浸させた後、乾燥温度120℃、撹拌速度300rpmの条件で6時間乾燥させるものの、2時間乾燥後にはエアーノズル一体型撹拌軸を介して7kgf/cm2の圧力で4時間乾燥空気を供給した。
上記のようにして製造された硫化水素ガス除去用化学吸着剤は、水分含有量5%となるように乾燥して製造した。
【0057】
比較例1:従来含浸法によるアンモニアガス除去用化学吸着剤の製造
化学吸着剤の担体として直径3mmのペレット状活性炭を使用し、活性炭100重量部に対して、精製水200重量部および化学薬品(試薬)としてのリン酸(純度85%-食品添加用)40重量部の混合物からなる化学薬品水溶液を準備した。
【0058】
反応温度25℃で4時間含浸させた後、脱水し、温度105℃の熱風を利用して12時間乾燥し、水分含有量15w/w%となるようにした。
【0059】
比較例2:従来含浸法による二酸化硫黄ガス除去用化学吸着剤の製造
化学吸着剤の担体として直径3mmのペレット状活性炭を使用し、活性炭100重量部に対して、精製水150重量部および化学薬品(試薬)としての水酸化カリウム(純度95%)20重量部の混合物からなる化学薬品水溶液を準備した。
反応温度25℃で4時間含浸させた後、脱水し、温度105℃の熱風を利用して12時間乾燥し、水分含有量15w/w%となるようにした。
【0060】
比較例3:従来含浸法による硫化水素ガス除去用化学吸着剤の製造
化学吸着剤の担体として粒子サイズ4~6mmの活性アルミナを使用し、活性炭100重量部に対して、精製水150重量部および化学薬品(試薬)としての過マンガン酸カリウム(純度99w/w%)10重量部の混合物からなる化学薬品水溶液を準備した。
反応温度25℃で2時間含浸させた後、脱水し、温度120℃の熱風を利用して8時間乾燥し、水分含有量5%となるようにした。
【0061】
前記本発明による実施例1~4は、前述したように、化学廃水の発生および別途の移送工程なしに製造し、比較例1~3の従来の含浸法は、別途の脱水工程による化学廃水の発生があり、常用される化学吸着剤の含浸法に基づくものである。
【0062】
試験例1:化学吸着剤1g当たりの有害ガス除去率
前記実施例1~4および比較例1~3で製造した化学吸着剤の1g当たりの有害ガス除去率を測定し、その結果を下記の表1に示す。
【0063】
【0064】
前記表1を参照すると、本発明によるアンモニアガス除去用化学吸着剤の実施例1および従来含浸法によるアンモニアガス除去用化学吸着剤の比較例1において同一試験条件でのアンモニアガス除去性能は、実験誤差の範囲内で大きな差を示さず、実施例1および比較例1から本発明による製造方法と製造装置を使用して化学吸着剤を製造する場合、含浸水溶液を製造するときに投入される化学薬品の量を減らすことができ、工程移動がなく、廃水の発生がないので、工程を簡素化し、環境影響性を低減することができた。
【0065】
前記表1から、実施例1および実施例2から含浸水溶液の濃度が高まるほど(化学薬品の使用量が多いほど)、アンモニア有害ガス除去性能が高まることが分かった。また、実施例2および比較例1から、同一の化学薬品の使用量であっても、従来の含浸法は、廃水の発生によって、廃水に含まれた薬品が捨てられるので、実際化学吸着剤担体に使用されずに捨てられることを確認することができた。
【0066】
前記表1から、実施例3と比較例2、実施例4と比較例3から従来の含浸法と比べて化学薬品の使用量が少なくなっても、同じ化学吸着力を有することができる製法と装置を本発明によって提供することを確認することができた。
【0067】
また、アンモニア除去用常用化学吸着剤は、従来の特許技術および使用される市販の吸着剤の含浸量から最大リン酸薬品の使用量が担体重量に対して最大70重量%まで使用されていることが分かり、主な生産品は、平均40重量%を使用している。
【0068】
様々な他の化学吸着剤も、化学吸着剤の製造工程において含浸法を用いた化学吸着剤が過量の化学薬品の使用と化学廃水の発生によって環境影響性が高いのに対し、本発明による製造方法と製造装置は、環境影響性を最小化することができる。
【0069】
したがって、化学吸着剤の製造時に化学薬品の過剰使用は、従来含浸技術の限界点である廃水に捨てられる薬品に起因するものであり、本発明による製造方法と製造装置を使用する場合、従来より少ない量の化学薬品を使用しても、現在常用される化学吸着剤の要求性能を示すことができることを確認した。
【0070】
以上、本発明を実施例および比較例と試験例に基づいて説明したが、当業者なら本発明の本質的な特性を逸脱しない範囲内に様々な変更および修正を容易に実施することができる。したがって、開示された実施例は、限定的な観点でなく、説明的な観点から考慮すべきであり、本発明の真の範囲は、前述した説明でなく、特許請求範囲に示されており、それと同等な範囲内にあるすべての相違点は、本発明に含まれたものと解すべきである。
【符号の説明】
【0071】
1 本発明による化学吸着剤の製造装置
100 反応槽
101 撹拌軸(空気注入一体型)
102 モーター
103 インペラー(impeller)
104 制御盤
105 オイルジャケット(oil jacket)
106 回転手段
107 移動式キャスター(caster)
108 エアーノズル
200 エアコンプレッサー