(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137601
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】緩み防止ナット
(51)【国際特許分類】
F16B 39/18 20060101AFI20240927BHJP
F16B 39/282 20060101ALI20240927BHJP
F16B 39/284 20060101ALI20240927BHJP
F16B 37/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16B39/18
F16B39/282 C
F16B39/284 Z
F16B37/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125991
(22)【出願日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】2023102847346
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523277150
【氏名又は名称】▲陳▼ 榕
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 榕
(57)【要約】
【課題】安定的で信頼性のある緩み防止ナットを提供する。
【解決手段】各々ねじ穴3が螺設され、ボルト7と螺合する第1ナット1及び第2ナット2と、第1ナット1の下面に形成された傾斜歯4と、第2ナット2の上面に形成され、第1ナット1の傾斜歯4と歯合することで第1ナット1がボルト7から脱落することを防止する傾斜歯4と、第2ナット2の上面のねじ穴3の縁部に設けられ、上端が内側に傾斜する傾斜爪5と、第1ナット1の下面に形成され、第1ナット1と第2ナット2が近接した際に傾斜爪5をボルト7に押し付け、傾斜爪5がボルト7を把持するようにする爪押し溝6とを備える緩み防止ナット。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々ねじ穴が螺設され、ボルトと螺合する第1ナット及び第2ナットと、
前記第1ナットの下面に形成された傾斜歯と、
前記第2ナットの上面に形成され、前記第1ナットの傾斜歯と歯合することで前記第1ナットが前記ボルトから脱落することを防止する傾斜歯と、
前記第2ナットの上面のねじ穴の縁部に設けられ、上端が内側に傾斜する傾斜爪と、
前記第1ナットの下面に形成され、該第1ナットと前記第2ナットが近接した際に前記傾斜爪を前記ボルトに押し付け、前記傾斜爪が前記ボルトを把持するようにする爪押し溝とを備えることを特徴とする緩み防止ナット。
【請求項2】
前記第2ナットと前記傾斜爪は一体に形成され、前記第1ナットと前記爪押し溝が一体に形成されることを特徴とする請求項1に記載の緩み防止ナット。
【請求項3】
前記傾斜爪と前記爪押し溝はしまりばめであることを特徴とする請求項1又は2に記載の緩み防止ナット。
【請求項4】
前記傾斜爪の内側面は刃面であり、前記爪押し溝が前記傾斜爪を前記ボルトに押圧した際に、該刃面が前記ボルトのねじ部に切り込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の緩み防止ナット。
【請求項5】
前記傾斜爪は前記ボルトから抜け出す方向に回転する側面が斜面に形成され、該斜面は前記第2ナットが前記ボルトから緩んで抜け出す際に、前記ボルトのねじ部に切り込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の緩み防止ナット。
【請求項6】
前記傾斜爪は前記第2ナットとは別体として形成され、前記第2ナットの上面から下面に貫通する溝部、又は前記第2ナットの上面から下面に貫通しない凹部に収容されることを特徴とする請求項1又は2に記載の緩み防止ナット。
【請求項7】
前記傾斜爪の内側にはねじ部が形成されることを特徴とする請求項6に記載の緩み防止ナット。
【請求項8】
前記傾斜爪の底部は前記溝部又は凹部に挿入固定されることを特徴とする請求項6に記載の緩み防止ナット。
【請求項9】
前記溝部又は凹部は各々2つ、3つ又は4つ形成されることを特徴とする請求項6に記載の緩み防止ナット。
【請求項10】
前記第2ナットはフランジナットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の緩み防止ナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結手段の技術分野に属し、特に緩み防止ナットに関する。
【背景技術】
【0002】
ナットはねじ付きの締結部品で、その主な利点は取り外しと再利用が可能であることである。通常、ナットはボルトの外側のねじ部に締めて部品を締結するために使用する。しかし、現実的な利用状況では、部品の振動や外力の影響で、ナットがボルトのねじを自ら緩めてしまうことが頻繁に生じ、これによって締結された部品が緩んだり脱落する。
【0003】
新エネルギー自動車、電車、鉄道、橋の鉄骨、石油掘削プラットフォーム等は、安全性能が高く、安定した信頼性のある締結部品が必要である。そのためには、緩みを防止することのできるナットとボルト等が必要であり、安定的で信頼性のある緩み防止ナット等が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、既存のナットが緩みやすいという問題を解決するためになされたものであり、安定的で信頼性のある緩み防止ナットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、緩み防止ナットであって、各々ねじ穴が螺設され、ボルトと螺合する第1ナット及び第2ナットと、前記第1ナットの下面に形成された傾斜歯と、前記第2ナットの上面に形成され、前記第1ナットの傾斜歯と歯合することで前記第1ナットが前記ボルトから脱落することを防止する傾斜歯と、前記第2ナットの上面のねじ穴の縁部に設けられ、上端が内側に傾斜する傾斜爪と、前記第1ナットの下面に形成され、該第1ナットと前記第2ナットが近接した際に前記傾斜爪を前記ボルトに押し付け、前記傾斜爪が前記ボルトを把持するようにする爪押し溝とを備えることを特徴とする。
【0006】
前記緩み防止ナットにおいて、前記第2ナットと前記傾斜爪を一体に形成し、前記第1ナットと前記爪押し溝を一体に形成することができる。
【0007】
また、前記傾斜爪と前記爪押し溝をしまりばめとすることができる。
【0008】
前記傾斜爪の内側面を刃面とし、前記爪押し溝が前記傾斜爪を前記ボルトに押圧した際に、該刃面が前記ボルトのねじ部に切り込むようにしてもよい。
【0009】
また、前記傾斜爪の前記ボルトから抜け出す方向に回転する側面を斜面とし、該斜面は前記第2ナットが前記ボルトから緩んで抜け出す際に、前記ボルトのねじ部に切り込むようにしてもよい。
【0010】
前記傾斜爪を前記第2ナットとは別体として形成し、前記第2ナットの上面から下面に貫通する溝部、又は前記第2ナットの上面から下面に貫通しない凹部に収容してもよい。
【0011】
前記傾斜爪の内側にねじ部を形成してもよく、前記傾斜爪の底部を前記溝部又は凹部に挿入固定してもよい。また、前記溝部又は凹部を各々2つ、3つ又は4つ形成してもよい。
【0012】
さらに、前記第2ナットをフランジナットとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る緩み防止ナットを使用するときには、一体型の傾斜爪と第2ナットの場合、まずボルト内にばね座金を嵌め、次に選択的に平座金を配置し、その後第2ナットをボルトにねじ込み、第2ナットの位置合わせをした後、第1ナットをねじ込む。第1ナットが第2ナットに近づく過程で、傾斜爪が徐々に爪押し溝に挿入され、爪押し溝が徐々に傾斜爪をボルトのねじ部に押し付け、第1ナットと第2ナットの傾斜歯が互いに噛み合うまで、傾斜爪がボルトのねじ部を強固に保持する。傾斜爪の内側面を刃面とし、爪押し溝が前記傾斜爪をボルトに押圧した際に、刃面がボルトのねじ部に切り込むようにすると、傾斜爪がボルトのねじに固定され、より良い緩み防止効果が得られる。傾斜爪のボルトから抜け出す方向に回転する側面を斜面とし、第2ナットが前記ボルトから緩んで抜け出す際に、斜面がボルトのねじ部に切り込むようにすることで、第2ナットがボルトから緩んで回転しようとすると、斜面がボルトのねじに切り込むことで第2ナットがボルトに固定され、第2ナットの緩み防止効果がさらに向上する。
【0014】
本発明に係る緩み防止ナットを使用するときには、分離型の傾斜爪と第2ナットの場合、まずボルト内にばね座金を嵌め、次に選択的に平座金を配置し、その後第2ナットをボルトにねじ込み、第2ナットの位置合わせをした後、傾斜爪を配置し、その後第1ナットをねじ込む。第1ナットが第2ナットに近づく過程で、傾斜爪が徐々に爪押し溝に挿入され、爪押し溝が徐々に傾斜爪をボルトのねじ部に押し付け、第1ナットと第2ナットの傾斜歯が互いに噛み合うまで傾斜爪がボルトのねじ部を強固に保持する。緩み防止ナットが緩む際には、第1ナットが先にボルトから外れる方向に回転しようとするが、第1ナットと第2ナットは傾斜歯で相互に係合しているため、第1ナットの回転は第2ナットに阻まれ、第2ナットも一緒に回転しなければならないが、第2ナットが回転しようとすると、溝部又は凹部の傾斜爪に阻まれる。傾斜爪は第1ナットによって押さえられ、ボルトを強固に保持しているので、第2ナットが緩むことはない。これにより、第1ナット、第2ナット、そして傾斜爪の三者が相互に連結され、緩むことはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る緩み防止ナットの第1実施形態を示す図である。
【
図4】本発明に係る緩み防止ナットの第1実施形態の使用状態を示す図である。
【
図5】本発明に係る緩み防止ナットの第2実施形態における第2ナットの上面図である。
【
図6】本発明に係る緩み防止ナットの第3実施形態における第2ナットの上面図である。
【
図7】本発明に係る緩み防止ナットの第4実施形態を示す図である。
【
図8】本発明に係る緩み防止ナットの第4実施形態における第2ナットの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照しながら本発明の実施形態について明確かつ完全に説明する。当然ながら、述べられる実施形態は本発明の一部であり、全てではない。本発明の実施形態に基づき、一般的な技術者が創造的な労働を行わない前提で得られる他の全ての実施形態も本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0017】
図1乃至
図4に示すように、本発明の第1実施形態に係る緩み防止ナットは、第1ナット1と第2ナット2からなる。第1ナット1と第2ナット2の間には軸方向にねじ穴3が螺設されている。第1ナット1の下面と第2ナット2の上面には、各々全周にわたって傾斜歯4が形成されている。傾斜歯4は第1ナット1がボルト方向に回転するのを防ぐためのものである。また、第2ナット2の上面には間隔を置いて傾斜爪5が固定されている。傾斜爪5はねじ穴3の端に位置しており、傾斜爪5の外側面51は上端が内側に傾斜した傾斜面になっている。また、第1ナット1の下面には1つの爪押し溝6がある。爪押し溝6の側面61は傾斜爪5に対応する傾斜面になっており、爪押し溝6は傾斜爪5をボルト7に押し当てて、傾斜爪5がボルト7を強固に保持する。
【0018】
さらに、技術的な解決策として、第2ナット2と傾斜歯4は1つの金型で一体成型され、第1ナット1と爪押し溝6も同様に1つの金型で一体成型されており、迅速かつ容易に製造することができる。さらに、傾斜爪5と爪押し溝6はしまりばめにより互いに嵌合する。
【0019】
使用時には、まずボルト内に1つのばね座金を嵌め、次に必要に応じて平座金を置き、その後第2ナット2を先にボルト7にねじ込む。第2ナット2の位置決めが完了したら、第1ナット1をねじ込む。第1ナット1が第2ナット2に近づく過程で、傾斜爪5が徐々に爪押し溝6に挿入され、爪押し溝6は徐々に傾斜爪5をボルト7のねじ部に押し付け、傾斜爪5がボルト7のねじ部8を強固に保持する。これによって、第1ナット1と第2ナット2の傾斜歯4が互いに係合し、第2ナット2の傾斜爪5は爪押し溝6の圧力によってボルト7を強固に保持して緩むことはない。ボルト7から傾斜爪5を離すためには、第1ナット1がまずボルト7から緩められなければならない。しかし、第1ナット1と第2ナット2は傾斜歯4で互いに係合しているため、第1ナット1をボルト7から緩めるためには、第2ナット2が第1ナット1の回転方向と反対の方向に回転するのを阻止する必要がある。すなわち、第2ナット2も第1ナット1と一緒に回転させる必要があるが、第2ナット2はボルト7を強固に保持しているため、第2ナット2が緩むことはない。これにより、第1ナット1と第2ナット2の相互係止が形成され、第1ナット1及び第2ナット2が緩むことはない。
【0020】
次に、本発明の第2実施形態について
図5を参照しながら説明する。この実施形態と実施形態1の違いは、傾斜爪5の内側面が刃面52であり、傾斜爪5がボルト7に押し付けられる際に、刃面52がボルト7のねじ部8に切り込むことで、第2ナット2の緩みを防ぐことができることである。傾斜爪5の内側面は刃面52であり、爪押し溝6が傾斜爪5をボルト7に押し付けるとき、ボルト7のねじ部8に切り込む。これにより、傾斜爪5はボルト7のねじ部8に固定され、第2ナット2が緩まないようになる。これにより、緩み防止効果が向上する。
【0021】
次に、本発明の第3実施形態について
図6を参照しながら説明する。この第3実施形態と第1実施形態の違いは、傾斜爪5がボルト7から離れる方向に回転する側面が斜面53に形成され、第2ナット2がボルト7から緩む際に、斜面53がボルト7のねじ部8に切り込むことで、第2ナット2の緩みを防ぐ点である。傾斜爪5がボルト7から離れる方向に回転する側面は斜面53であり、第2ナット2がボルト7から緩む際には、斜面53がボルト7のねじ部8に切り込み、固定される。これにより、緩み防止効果が向上する。
【0022】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、緩み防止ナットは、第1ナット1と第2ナット2を含む。
図7及び
図8に示すように、第1ナット1と第2ナット2の間には軸方向にねじ穴3が設けられており、第1ナット1の下面と第2ナット2の上面には、各々全周にわたって傾斜歯4が設けられている。傾斜歯4は、第2ナット2が第1ナット1のボルト7からの離脱方向の回転を阻止するために用いる。さらに、第1ナット1と第2ナット2の間には傾斜爪5が設けられており、傾斜爪5はねじ穴3の端に位置する。傾斜爪5はねじ穴の側面に設けられた開口部9を介して第2ナット2に接続され、傾斜爪5の外側面51は上端が内側に傾斜した面である。第1ナット1の下面には爪押し溝6が設けられており、爪押し溝6の側面61は傾斜爪5に適合する斜面である。爪押し溝6は傾斜爪5をボルト7に押し付けて、傾斜爪5がボルト7を強固に保持する。開口部9は、第2ナット2の上面から下面に貫通する開口部9が形成され、開口部9に傾斜爪5が収容される。傾斜爪5は第1ナット1に押さえられ、ボルト7を強固に保持し、緩むことはない。これにより、第1ナット1、第2ナット2及び傾斜爪5が相互に係合し、緩むことはない。
【0023】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態と第4実施形態との違いは、第2ナット2の上面から下面に貫通する開口部9に代えて、上面から下面に貫通しない凹溝が設けられている点である。
【0024】
上記傾斜爪5の内面にはねじ部54が螺設され、傾斜爪5の底部には、凹溝9に合う挿入部55が固定接続されている。開口部9又は凹溝は、各々2つ、3つ、又は4つ形成することができる。また、第2ナットをフランジナットとすることができる。
【0025】
使用する際には、まずボルト7にばね座金を嵌め、次に選択的に平座金を置き、その後に第2ナット2をボルト7にねじ込む。第2ナット2の開口部9の位置に合わせて傾斜爪5を差し込み、次に第1ナット1をねじ込む。第1ナット1が第2ナット2に近づく過程で、傾斜爪5が徐々に爪押し溝6に差し込まれ、爪押し溝6が傾斜爪5をボルト7のねじ部8に押し付け、傾斜爪5がボルト7のねじ部8を強固に保持するようになり、第1ナット1と第2ナット2の傾斜歯4が互いに嵌合する。緩める場合は、第1ナット1を先にボルト7から外さなければならない。しかし、第1ナット1と第2ナット2が傾斜歯4で互いに係合しているため、第1ナット1をボルト7から緩めるためには、第2ナット2が第1ナット1の回転方向と反対の方向に回転するのを阻止する必要がある。すなわち、第2ナット2も第1ナット1と一緒に回転させる必要があるが、第2ナット2はボルト7を強固に保持しているため、第2ナット2が緩むことはない。これにより、第1ナット1と第2ナット2の相互係止が形成され、第1ナット1及び第2ナット2が緩むことはない。
【0026】
本発明の精神と原則に基づいて行われる任意の変更、等価交換、改良等はすべて、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0027】
1 第1ナット
2 第2ナット
3 ねじ穴
4 傾斜歯
5 傾斜爪
51 外側面
52 刃面
53 斜面
54 ねじ部
55 挿入部
6 爪押し溝
61 側面
7 ボルト
8 ねじ部
9 開口部