(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137606
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】二酸化炭素電解装置及び二酸化炭素電解方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/23 20210101AFI20240927BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20240927BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240927BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240927BHJP
C25B 15/029 20210101ALI20240927BHJP
C25B 15/031 20210101ALI20240927BHJP
C25B 3/03 20210101ALI20240927BHJP
C25B 3/07 20210101ALI20240927BHJP
C25B 3/26 20210101ALI20240927BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240927BHJP
C25B 11/063 20210101ALI20240927BHJP
B01D 53/32 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C25B1/23
C25B15/08 302
C25B9/23
C25B1/04
C25B15/029
C25B15/031
C25B3/03
C25B3/07
C25B3/26
C25B9/00 G
C25B9/00 Z
C25B11/063
B01D53/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134597
(22)【出願日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2023046157
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、環境省、二酸化炭素の資源化を通じた炭素循環社会モデル構築促進事業「多量CO2排出施設における人工光合成技術を用いた地域適合型二酸化炭素資源化モデルの構築実証」委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米津 麻紀
(72)【発明者】
【氏名】工藤 由紀
(72)【発明者】
【氏名】北川 良太
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 智
(72)【発明者】
【氏名】小野 昭彦
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA14
4K011AA21
4K011AA30
4K011BA04
4K011BA07
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4K021BB01
4K021BB02
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4K021BC01
4K021CA08
4K021DB31
4K021DB34
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】アノードの溶出等を抑制することにより、電解セルの特性の低下等を抑制することを可能にした二酸化炭素電解装置及び二酸化炭素電解方法を提供することにある。
【解決手段】実施形態の二酸化炭素電解装置10は、二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するためのカソード31と、水又は水酸化物イオンを酸化して酸素を生成するための、チタンを含む基材を有するアノード41と、カソード31に二酸化炭素を供給するためのカソード流路32と、アノード41に水を含む電解溶液を供給するためのアノード流路42と、アノード41とカソード31とを分離するセパレータ50とを備える電解セル2と、カソード流路32に加湿された二酸化炭素を供給するガス供給部60と、アノード流路42に電解溶液を供給する電解溶液供給部70とを具備する。電解溶液、加湿水、及び供給ガスの少なくとも1つは酸化剤を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するためのカソードと、水又は水酸化物イオンを酸化して酸素を生成するための、チタンを含む基材を有するアノードと、前記カソードに二酸化炭素を供給するためのカソード流路と、前記アノードに水を含む電解溶液を供給するためのアノード流路と、前記アノードと前記カソードとを分離するセパレータとを備える電解セルと、
前記カソード流路に二酸化炭素を供給するガス供給部と、
前記カソード流路に供給される二酸化炭素を加湿水により加湿する加湿器及び前記二酸化炭素に加湿水を加える注液部の少なくとも一方と、
前記アノード流路に前記電解溶液を供給する電解溶液供給部とを具備する二酸化炭素電解装置であって、
前記電解溶液及び前記加湿水の少なくとも一方は酸化剤を含む、及び前記カソード流路に供給される二酸化炭素ガスは二酸化窒素、一酸化窒素、及びオゾンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、の少なくとも1つを満足する、二酸化炭素電解装置。
【請求項2】
前記酸化剤は、酸化性の酸及び過酸化水素からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の二酸化炭素電解装置。
【請求項3】
前記酸化性の酸は、硝酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロム酸、ニクロム酸、過マンガン酸、ヒ酸、セレン酸、臭素酸、及びよう素酸からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項2に記載の二酸化炭素電解装置。
【請求項4】
前記電解溶液又は前記加湿水の少なくとも一方の前記酸化剤の濃度が0.1mM以上100mM以下である、請求項1に記載の二酸化炭素電解装置。
【請求項5】
前記二酸化炭素ガスにおける前記二酸化窒素、一酸化窒素、及びオゾンからなる群より選ばれる少なくとも1つの濃度が10ppb以上1000ppm以下である、請求項1に記載の二酸化炭素電解装置。
【請求項6】
前記電解溶液は6以上10以下のpHを有する、請求項1に記載の二酸化炭素電解装置。
【請求項7】
さらに、前記電解溶液及び前記加湿水の少なくとも一方の前記酸化剤の濃度を測定する測定部を有する、請求項1に記載の二酸化炭素電解装置。
【請求項8】
前記セパレータは多孔質膜を具備する、請求項1に記載の二酸化炭素電解装置。
【請求項9】
電解セルのカソードにカソード流路を介して加湿した二酸化炭素を供給すると共、前記電解セルのチタンを含む基材を有するアノードにアノード流路を介して電解溶液を供給する工程と、
前記カソード及び前記アノードに電流を供給し、二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成する工程とを具備する二酸化炭素電解方法であって、
前記電解溶液及び二酸化炭素の加湿に用いる加湿水の少なくとも一方に酸化剤を添加する、及び前記カソード流路に供給される二酸化炭素ガスに二酸化窒素、一酸化窒素、及びオゾンからなる群より選ばれる少なくとも1つを添加する、の少なくとも1つを満足させる、二酸化炭素電解方法。
【請求項10】
前記酸化剤は、酸化性の酸及び過酸化水素からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項9に記載の二酸化炭素電解方法。
【請求項11】
前記酸化性の酸は、硝酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロム酸、ニクロム酸、過マンガン酸、ヒ酸、セレン酸、臭素酸、及びよう素酸からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項10に記載の二酸化炭素電解方法。
【請求項12】
前記電解溶液及び前記加湿水の少なくとも一方に前記酸化剤の濃度が0.1mM以上100mM以下となるように前記酸化剤を添加する、請求項9に記載の二酸化炭素電解方法。
【請求項13】
前記二酸化炭素ガスに前記二酸化窒素、一酸化窒素、及びオゾンからなる群より選ばれる少なくとも1つの濃度が10ppb以上1000ppm以下となるように添加する、請求項9に記載の二酸化炭素電解方法。
【請求項14】
前記電解溶液は6以上10以下のpHを有する、請求項9に記載の二酸化炭素電解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は二酸化炭素電解装置及び二酸化炭素電解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー問題と環境問題の両方の観点から、太陽光等の再生可能エネルギーを電気エネルギーに変換して利用するだけでなく、それを貯蔵しかつ運搬可能な状態に変換することが望まれている。このような要望に対して、植物による光合成のように太陽光を用いて化学物質を生成するパワートゥーケミカル技術の研究開発が進められている。このような技術により再生可能エネルギーを貯蔵可能な燃料等として貯蔵することができ、工業原料となる化学物質を生成することにより価値を生み出すことが期待されている。
【0003】
太陽光等の再生可能エネルギーを用いて化学物質を生成する装置としては、例えば発電所やごみ焼却炉等から発生した二酸化炭素(CO2)を還元する電解装置が知られている。CO2電解装置は、CO2を還元して一酸化炭素(CO)等の炭素化合物を生成するカソード(還元電極)と、水(H2O)や水酸化物イオン(OH-)を酸化するアノード(酸化電極)とを具備している。このようなCO2電解装置においては、カソードとアノードとをイオン交換膜や多孔質膜等のセパレータを介して積層したセル構造(電解セル)を適用することが有効であり、CO2を電解セルのカソード触媒層に直接供給することによって、速やかにCO2の還元反応を進行させることができる。
【0004】
上記した電解セルにおいては、その耐久性を向上させるために、電解セルの構成部材の変化(劣化)を抑制することが求められている。例えば、アノード(酸化電極)の多孔質基材には、化学反応性が低く、かつ導電性が高い材料としてチタン(Ti)が用いられている。Tiは化学反応性が低く、耐食性に優れる材料として知られているものの、アルカリ性の電解溶液と接した状態で長時間運転を継続すると、Ti製の多孔質基材に溶出が起こり、多孔質基材に孔閉塞等が生じることが明らかになりつつある。そこで、Ti製の多孔質基材の電解溶液による溶出等を抑制することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-167558号公報
【特許文献2】特開2020-062639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、アノードの溶出等を抑制することにより、電解セルの特性の低下等を抑制することを可能にした二酸化炭素電解装置及び二酸化炭素電解方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の二酸化炭素電解装置は、二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するためのカソードと、水又は水酸化物イオンを酸化して酸素を生成するための、チタンを含む基材を有するアノードと、前記カソードに二酸化炭素を供給するためのカソード流路と、前記アノードに水を含む電解溶液を供給するためのアノード流路と、前記アノードと前記カソードとを分離するセパレータとを備える電解セルと、前記カソード流路に二酸化炭素を供給するガス供給部と、前記カソード流路に供給される二酸化炭素を加湿水により加湿する加湿器及び前記二酸化炭素に加湿水を加える注液部の少なくとも一方と、前記アノード流路に前記電解溶液を供給する電解溶液供給部とを具備する二酸化炭素電解装置であって、前記電解溶液及び前記加湿水の少なくとも一方は酸化剤を含む、及び前記カソード流路に供給される二酸化炭素ガスは二酸化窒素、一酸化窒素、及びオゾンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、の少なくとも1つを満足する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の二酸化炭素電解装置の第1の例を示す図である。
【
図2】実施形態の二酸化炭素電解装置の第2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の二酸化炭素電解装置及び二酸化炭素電解方法について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、各部の厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。
【0010】
実施形態の二酸化炭素電解装置について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は実施形態の二酸化炭素(CO
2)電解装置10の第1の例を示す断面図である。
図2は実施形態の二酸化炭素(CO
2)電解装置10の第2の例を示す断面図である。
図1及び
図2に示すCO
2電解装置10は、電解セル20を具備している。電解セル20は、カソード部30とアノード部40とこれらを分離するように配置されたセパレータ50とを具備している。
【0011】
カソード部30は、金属触媒層を有する還元電極(カソード)31、カソード流路32、及びカソード集電板33を備えている。カソード流路32は、カソード31にCO2ガスを供給するガス流路であり、カソード流路板34に設けられたピット(溝)により構成されている。カソード31は、カソード流路32を流れるCO2と接するように配置されている。アノード部40は、アノード(酸化電極)41、アノード流路42、及びアノード集電板43を備えている。アノード流路42は、アノード41にアノード溶液としての電解溶液を供給する電解溶液流路であり、アノード流路板44に設けられたピット(溝)により構成されている。アノード41は、アノード流路42を流れるアノード溶液と接するように配置されている。
【0012】
CO
2電解装置10は、電解セル20にCO
2を供給するガス供給部60と、電解セル20にアノード溶液を供給するアノード溶液供給部(供給系統)70とを具備している。ガス供給部60は、CO
2ガスボンベのようなCO
2収容部61とCO
2ガスに加湿水を供給する加湿水供給部とCO
2ガスに添加ガスを添加するガス添加部63を備えている。
図1に示す電解装置10は、加湿水供給部としてCO
2ガスを加湿する加湿部62を備えている。
図2に示す電解装置10は、加湿水供給部としてCO
2ガスに加湿水を加える注液部(注液配管)65を備えている。ガス供給部60は、加湿されたCO
2ガスをガス配管64を介してカソード流路32に供給する。
【0013】
カソード流路32に供給されるCO
2ガスは、CO
2の単一ガスに限られるものではなく、CO
2を主成分とするガス(例えばCO
2を90体積%以上含むガス)であってもよい。
図1及び
図2に示す電解セル20のカソード31においては、セパレータ50を介してイオンが供給され、カソード流路32からCO
2ガスが供給される。CO
2還元生成物は、カソード流路32から主として排出される。
【0014】
電解溶液供給部70は、アノード溶液タンク71とポンプ72とアノード溶液濃度測定部73と酸化剤供給部74とを備え、アノード溶液タンク71からポンプ72及び電解溶液配管75を介してアノード流路42にアノード溶液を供給する。アノード溶液は、アノード流路42及び電解溶液配管75を循環している。CO2電解装置10におけるカソード集電板33及びアノード集電板43は、電源80に接続されている。アノード流路42を構成するアノード流路板44、及びカソード流路32を構成するカソード流路板34には、化学反応性が低く、かつ導電性が高い材料を用いることが好ましい。そのような材料としては、TiやSUS等の金属材料、カーボン等が挙げられる。
【0015】
電解セル20は、一般に、一対の支持板(図示せず)で挟み込まれ、さらにボルト等で締め付けられている。カソード集電板33及びアノード集電板43に接続された電源80は、通常の商用電源や電池等に限られるものではなく、再生可能エネルギーを電気エネルギーに変換して供給する電源であってもよい。このような電源の例としては、風力、水力、地熱、潮汐力等の運動エネルギーや位置エネルギーを電気エネルギーに変換する電源、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子等の太陽電池のような電源、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する燃料電池や蓄電池等の電源、音等の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する装置等の電源が挙げられる。再生可能エネルギーを用いると、二酸化炭素の有効利用という点も合わせて環境上好ましい。
【0016】
カソード31は、二酸化炭素(CO2)の還元反応を生起し、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、エチレングリコール(C2H6O2)等の炭素化合物を生成する電極(還元電極)である。カソード31においては、二酸化炭素(CO2)の還元反応と同時に、水(H2O)の還元反応により水素(H2)を発生する副反応が生起される場合がある。カソード31は、セパレータ50と接する第1の面と、カソード流路32に面する第2の面とを有している。カソード31の第1の面は、セパレータ50の一方の面と接している。
【0017】
CO2を含むガス(以下、CO2ガスとも記す。)の流路であるカソード流路32は、カソード流路板34に設けられたピット(溝部/凹部)により構成されている。カソード流路板34には、図示を省略したガスの導入口及び排出口が設けられている。ガス導入口又はガス排出口を介して、ガス供給部60からCO2ガスが導入される。さらに、ガス導入口又はガス排出口を介して、COやH2等を含む反応生成物ガスが排出され、排出されたガスは図示しない有価物製造部に送られたり、あるいは生成物回収部に回収される。カソード流路板34及びそれに設けられたカソード流路32は、カソード31のセパレータ50と接する第1面とは反対側の第2面と接するように設けられている。
【0018】
カソード31は、セパレータ50とカソード流路32との間でイオンや水を移動させることが可能な構造、例えばメッシュ材、パンチング材、多孔体、金属繊維焼結体等の多孔質構造を有している。カソード触媒材料は、還元反応を高める上でナノ粒子、ナノ構造体、ナノワイヤ等を有していてもよい。ナノ構造体とは、触媒材料等の表面にナノスケールの凹凸を有する構造体である。カソード31は、例えば多孔質なガス拡散基材と多孔質なカソード触媒層とを有している。ガス拡散基材とカソード触媒層との間には、ガス拡散基材より緻密な多孔質層(ガス拡散層)を配置してもよい。ガス拡散基材はカソード流路32側に配置され、カソード触媒層はセパレータ50側に配置される。カソード触媒層は、ガス拡散層の中に入り込んでいてもよい。このように、カソード31は多孔質構造を有している。
【0019】
カソード触媒層は、触媒ナノ粒子や触媒ナノ構造体等を有することが好ましい。ガス拡散基材は、例えばカーボンペーパーやカーボンクロス等により構成され、撥水処理が施されていることが好ましい。カソード触媒層には、セパレータ50を介してアノード41からイオンが供給される。ガス拡散基材においては、カソード流路32からCO2ガスが供給され、CO2ガスの還元反応の生成物が排出される。CO2の還元反応は、カソード触媒層の三相界面で生起し、ガス状の生成物はカソード流路32から排出される。
【0020】
カソード31のカソード触媒層は、CO2を還元して炭素化合物を生成することが可能で、そのような反応の過電圧を減少させることが可能な触媒材料(カソード触媒材料)で構成することが好ましい。カソード触媒材料としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、鉛(Pb)、錫(Sn)等の金属、それらの金属を少なくとも1つ含む合金や金属間化合物等の金属材料、炭素(C)、グラフェン、CNT(カーボンナノチューブ)、フラーレン、ケッチェンブラック等の炭素材料、Ru錯体やRe錯体等の金属錯体が挙げられる。カソード触媒層には、板状、メッシュ状、ワイヤ状、粒子状、多孔質状、薄膜状、島状等の各種形状を適用することができる。
【0021】
アノード41は、アノード溶液中の水(H2O)の酸化反応を生起し、酸素(O2)や水素イオン(H+)を生成したり、もしくはカソード部30で生じた水酸化物イオン(OH-)の酸化反応を生起し、酸素や水を生成する電極(酸化電極)である。アノード41は、セパレータ50とアノード流路42との間に、それらと接するように配置されている。より詳細には、アノード41は、セパレータ50と接する第1の面と、アノード流路42に面する第2の面とを有している。アノード41の第1の面は、セパレータ50と密着している。アノード流路板44には、溶液導入口と溶液導出口(いずれも図示せず)が接続されており、これら溶液導入口及び溶液導出口を介して、ポンプ72によりアノード溶液が導入及び排出される。アノード溶液は、アノード41と接するようにアノード流路42内を流通する。アノード集電板43は、アノード流路42を構成するアノード流路板44のアノード41とは反対側の面と電気的に接している。
【0022】
アノード溶液として電解質の水溶液を用いる場合、アノード41は水(H2O)を酸化して酸素や水素イオンを生成したり、もしくは水酸化物イオン(OH-)を酸化して水や酸素を生成することが可能で、そのような反応の過電圧を減少させることが可能な触媒材料(アノード触媒材料)で主として構成されることが好ましい。そのような触媒材料としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)等の金属、それらの金属を含む合金や金属間化合物、酸化マンガン(Mn-O)、酸化イリジウム(Ir-O)、酸化ニッケル(Ni-O)、酸化コバルト(Co-O)、酸化鉄(Fe-O)、酸化スズ(Sn-O)、酸化インジウム(In-O)、酸化ルテニウム(Ru-O)、酸化リチウム(Li-O)、酸化ランタン(La-O)等の二元系金属酸化物、Ni-Co-O、Ni-Fe-O、La-Co-O、Ni-La-O、Sr-Fe-O等の三元系金属酸化物、Pb-Ru-Ir-O、La-Sr-Co-O等の四元系金属酸化物、Ru錯体やFe錯体等の金属錯体が挙げられる。
【0023】
アノード41は、セパレータ50とアノード流路42との間でアノード溶液やイオンを移動させることが可能な構造、例えばメッシュ材、パンチング材、多孔質焼結体等の多孔質構造を有する基材(多孔質基材)を備えている。多孔質基材は、反応性の低いTiやTi合金で構成されていることが好ましい。アノード触媒材料として酸化物を用いる場合には、上記したTiを含む金属材料からなる多孔質基材の表面に、アノード触媒材料を付着もしくは積層して触媒層を形成することが好ましい。アノード触媒材料は、酸化反応を高める上でナノ粒子、ナノ構造体、ナノワイヤ等の形状を有することが好ましい。ナノ構造体とは、触媒材料の表面にナノスケールの凹凸を有する構造体である。
【0024】
アノード溶液としては、任意の電解質を含む水溶液を用いることができる。電解質を含む水溶液としては、例えばリン酸イオン(PO4
2-)、ホウ酸イオン(BO3
3-)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、リチウムイオン(Li+)、セシウムイオン(Cs+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、塩化物イオン(Cl-)、炭酸水素イオン(HCO3
-)、炭酸イオン(CO3
2-)等を含む水溶液が挙げられる。アノード溶液のpHは、特に限定されるものではないが、使用環境を考慮すると6以上10以下であることが好ましい。さらに、アノード溶液は、HCO3
-、CO3
2-、LiHCO3、NaHCO3、KHCO3等を含むアルカリ性水溶液であることがより好ましい。
【0025】
セパレータ50は、アノード41とカソード31との間でイオンを移動させることができ、かつアノード部40とカソード部30とを分離することが可能な材料、例えば有機高分子材料の多孔質膜やイオン交換膜等で構成される。セパレータ50に用いられる多孔質膜を構成する有機材料としては、特に限定されるものではないが、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の炭化水素ポリマー、セルロース等が挙げられる。イオン交換膜としては、例えばナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)等のカチオン交換膜、ネオセプタ(登録商標)、セレミオン(登録商標)、サステニオ(登録商標)、PiperION(登録商標)等のアニオン交換膜が挙げられる。
【0026】
供給するCO2ガスは乾燥状態で供給されてもよいが、加湿されている方がより好ましい。これによって、セパレータ50にイオン交換膜を用いた場合には、膜の乾燥を防ぐことができる。また、有機高分子材料の多孔質膜をセパレータ50に用いた場合、加湿状態のCO2ガスを使用することによって、有機高分子材料の多孔質膜にウエットシールが形成される。このようなウエットシールは、アノード部40とカソード部30との間におけるクロスオーバー、すなわちアノード部40とカソード部30間でのガスや液体の行き来やそれによるガス同士の反応を防止することができる。
【0027】
CO
2ガスを加湿するためには、加湿部を設け、ガス中に水蒸気を含ませることによりガスを加湿してもよいし、加湿用の注液部を設け、ガスに注水することによりガスを加湿してもよいし、定期的にガスにリンス液を導入するようにしてもよい。例えば、
図1ではガス供給部60はガス配管64を流れるCO
2ガスを加湿する加湿部62を備えている。加湿部(加湿装置)62は、例えば加湿水タンクを備え、加湿水を超音波発振子等を用いて蒸気化することによりCO
2ガスを加湿するように構成されている。また、CO
2ガスを加湿水タンク内にバブリングして通過させることにより加湿するようにしてもよい。
図2ではガス供給部60はガス配管64を流れるCO
2ガスに加湿水を加える注液部(注液配管)65を備えている。
【0028】
次に、
図1及び
図2に示す二酸化炭素電解装置10の動作について説明する。ここでは、炭素化合物として一酸化炭素(CO)を生成する場合について、主として説明する。ただし、二酸化炭素の還元生成物としての炭素化合物は一酸化炭素に限られるものではなく、メタン(CH
4)、エタン(C
2H
6)、エチレン(C
2H
4)、メタノール(CH
3OH)、エタノール(C
2H
5OH)、エチレングリコール(C
2H
6O
2)等であってもよく、さらに還元生成物である一酸化炭素をさらに還元し、上記した有機化合物を生成してもよい。
【0029】
まず、主に水(H2O)を酸化して水素イオン(H+)を生成する場合の反応過程について述べる。アノード41とカソード31との間に電源80から電流を供給すると、アノード溶液と接するアノード41で水(H2O)の酸化反応が生じる。具体的には、下記の(1)式に示すように、アノード溶液中に含まれるH2Oが酸化されて、酸素(O2)と水素イオン(H+)とが生成する。
2H2O → 4H++O2+4e- …(1)
【0030】
アノードで生成されたH+は、アノード41内に存在する電解溶液やセパレータ50内を移動し、カソード31付近に到達する。電源80からカソード31に供給される電流に基づく電子(e-)とカソード31付近に移動したH+とによって、二酸化炭素(CO2)の還元反応が生じる。具体的には、下記の(2)式に示すように、カソード流路32からカソード31に供給されたCO2が還元されてCOが生成される。また、下記の(3)式に示すように、水素イオン(H+)が電子を受け取ることにより水素が生成される。このとき、水素は一酸化炭素と同時に生成されてもよい。
2CO2+4H++4e- → 2CO+2H2O …(2)
2H++2e- → H2 …(3)
【0031】
次に、主に二酸化炭素(CO2)を還元して水酸化物イオン(OH-)を生成する場合の反応過程について述べる。アノード41とカソード31との間に電源80から電流を供給すると、カソード31付近において、下記の(4)式に示すように、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)が還元されて、一酸化炭素(CO)と水酸化物イオン(OH-)とが生成する。また、下記の式(5)に示すように、水が電子を受け取ることにより水素が生成する。このとき、水素は一酸化炭素と同時に生成されてもよい。これらの反応により生成した水酸化物イオン(OH-)はアノード41付近に拡散し、下記の(6)式に示すように、水酸化物イオン(OH-)が酸化されて酸素(O2)が生成する。
2CO2+2H2O+4e- → 2CO+4OH- …(4)
2H2O+2e- → H2+2OH- …(5)
4OH- → 2H2O+O2+4e- …(6)
【0032】
このような実施形態の二酸化炭素電解装置10は、二酸化炭素の還元のみに特化されるものではなく、例えば一酸化炭素と水素を1:2で生成し、その後の化学反応でメタノールを製造する等の任意の割合で、二酸化炭素還元物と水素を製造することができる。水素は水の電解や化石燃料から安価かつ入手しやすい原料であるため、水素の比率が大きい必要はない。これらの観点から一酸化炭素の水素に対する比率が少なくとも1以上、望ましくは1.5以上であると経済性や環境性の観点から好ましい。
【0033】
上記した実施形態の二酸化炭素電解装置10において、アノード41の多孔質基材にはTiやTi合金が用いられている。Tiを含む金属材料は化学反応性が低く、耐食性に優れる材料として知られている。しかしながら、アノード溶液としてアルカリ性電解溶液を使用して、二酸化炭素電解装置10の長時間運転を継続すると、Tiを含む金属材料製の多孔質基材にアルカリ性電解溶液による溶出等が生じやすくなる。多孔質基材のTiが溶出すると、多孔質基材の細孔に閉塞が生じる。これは、アノード41内におけるガスや電解溶液の通過やそれに基づく反応を妨げることになる。アルカリ性電解溶液によるTiの溶出は、アノード41の特性、さらには電解セル20の特性を低下させる要因となる。
【0034】
そこで、実施形態の二酸化炭素電解装置10においては、アノード41の構成材料の一部であるTiのアルカリ性電解溶液等による溶出を防ぐため、以下に示す構成(1)、構成(2)、及び構成(3)から選ばれる少なくとも1つを適用している。この際、構成(1)、構成(2)、及び構成(3)のいずれか1つを適用してもよいし、もしくはそれらの2つ以上を組み合わせて適用してもよい。
構成(1):アノード溶液に酸化剤を添加する。
構成(2):CO2ガスを加湿する加湿水に酸化剤を添加する。
構成(3):CO2ガスに二酸化窒素(NO2)、一酸化窒素(NO)、及びオゾン(O3)からなる群より選ばれる少なくとも1つを添加する。
【0035】
構成(1)及び構成(1)で使用する酸化剤としては、酸化性の酸及び過酸化水素が挙げられる。酸化性の酸としては、硝酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロム酸、ニクロム酸、過マンガン酸、ヒ酸、セレン酸、臭素酸、及びよう素酸から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。これらは、接する部材を酸化する能力を有することから、例えばTiを含むアノード41がアルカリ性電解溶液と接する際にTiの溶出を防ぐことができる。過酸化水素(H2O2)も同様であり、その酸化性能に基づいてTiを含むアノード41のアルカリ性電解溶液によるTiの溶出を防ぐことができる。
【0036】
Tiの溶出防止は、アノード溶液や加湿水のような液体に酸化性の酸や過酸化水素のような液体状の酸化剤を添加することに限らず、構成(3)に示すように、CO2ガスにNO2、NO、O3のようなガスを添加してもよい。NO2やNOは、CO2ガスに添加された際に酸化性の硝酸(NHO3)に変換される。O3はそれ自体が酸化性能を有している。このような酸化性のガスもしくは酸化性のガスに変換されるガスを添加したCO2ガスを使用することによっても、CO2ガスの反応時に酸化性のガスや液体がカソード31からアノード41に浸透することによって、Tiを含むアノード41のアルカリ性電解溶液によるTiの溶出を防ぐことができる。
【0037】
構成(1)及び構成(2)において、アノード溶液や加湿水に添加する酸化剤の濃度は0.1mM以上100mM(ミリモル毎リットル)以下であることが好ましい。酸化剤の濃度が0.1mM未満であると、Tiの溶出を防ぐ効果を十分に得ることができないおそれがある。また、酸化剤の濃度が100mMを超えると、アノード溶液や加湿水の本来の特性に悪影響を及ぼすおそれがある。酸化剤の濃度は0.1mM以上50mM以下であることがより好ましい。電解溶液や加湿水中の酸化剤の濃度は、例えば溶液のイオンクロマトグラフィーにより、各種酸の種類、濃度を測定することができる。測定対象が電解溶液の場合も、加湿水の場合も同様に測定が可能である。
【0038】
構成(3)を適用する場合、CO2ガスにおけるNO2、NO、及びO3の少なくとも1つのガス濃度は10ppb以上1000ppm以下が好ましい。上記したガス濃度は10ppb未満であると、Tiの溶出を防ぐ効果を十分に得ることができないおそれがある。また、上記したガス濃度は1000ppmを超えると、CO2ガスの特性に悪影響を及ぼすおそれがある。CO2ガスにおける上記したガスの濃度は100ppb以上100ppm以下であることがより好ましい。ガス中のNO2、NO、NOxの含有量は、例えば減圧式化学発光法を用いたサーモフィッシャーサイエンス社製の高感度大気用NOx計(Model 42i-TL)等により、NO、NO2の微量測定ができる。セル導入前の調整ガスを袋に捕集し、装置に導入して濃度測定することも可能であるし、配管の途中からガスを分岐して測定することも可能である。ガス中のオゾンの濃度測定は、例えば紫外線吸収法を用いた高精度オゾンガス濃度計、オゾンメイド(OZG-3300/3500)等により、ガス中のオゾン濃度を測定することが可能である。
【0039】
上記した構成(1)を適用するにあたって、アノード溶液中の酸化剤の濃度が上記した範囲を満足させるように、電解溶液供給部70に設けられたアノード溶液濃度測定部73でアノード溶液中の酸化剤の濃度を測定し、その測定結果に基づいて酸化剤供給部74から酸化剤をアノード溶液を添加するようにすることが好ましい。これによって、アノード溶液を循環させる際に減少増加する酸化剤の濃度を維持することができる。構成(2)を適用するにあたって、加湿水中の酸化剤の濃度が上記した範囲を満足するように、必要に応じて設置した加湿水濃度測定部の測定結果に基づいて加湿水に酸化剤を添加する。加湿水は運転中に減少するために補充が必要であり、補充の際に酸化剤濃度を調整した加湿水を足してもよいし、アノード溶液濃度測定部73で濃度を測定して酸化剤導入量を調整してもよい。構成(3)を適用する際には、CO2ガス流量に対する酸化性ガスの量が上記した範囲を満足するように、酸化性ガスの添加流量によりCO2ガスの流量に対する酸化性ガスの添加量を制御することができる。
【0040】
上述したように、構成(1)を適用する場合、電解溶液供給部70に設けられたアノード溶液濃度測定部73と酸化剤供給部74を用いることによって、アノード溶液の酸化剤濃度を調整することができる。構成(2)を適用する場合、必要に応じて設置した加湿水濃度測定部によりCO2ガスに添加する加湿水の酸化剤濃度を調整することができる。あるいは、補充する加湿水の酸化剤濃度を予め調整しておけばよい。この際、加湿水濃度測定部は有ってもよいし無くてもよい。構成(3)を適用する場合、酸化性ガスの添加流量を調整することができるため、CO2ガスにおける酸化性ガスの濃度測定部は無くてもよく、また必要に応じて設置してもよい。構成(1)や構成(3)を適用する際において、場合によってはCO2ガスに加湿水を添加しない構成を適用することも考えられる。そのような場合には、加湿水供給部として加湿部62や注液部(注液配管)65を備えていないガス供給部60を適用してもよい。
【0041】
上述したように、実施形態の二酸化炭素電解装置10によれば、アノード溶液に酸化剤を添加する、CO2ガスを加湿する加湿水に酸化剤を添加する、又はCO2ガスにNO2、NO、及びO3からなる群より選ばれる少なくとも1つを添加することによって、Tiを含むアノード41がアルカリ性電解溶液と接する際にTiの溶出を防ぐことができる。従って、アノード41のTiを含む多孔質基材が溶出することによる細孔の閉塞、それによるアノード41の特性低下、さらには電解セル20特性低下を抑制することが可能になる。電解セル20の特性を長時間に渡って維持することができる。
【実施例0042】
次に、実施例及びその評価結果について述べる。
【0043】
(実施例1)
まず、カソード触媒層の構成材料として、カーボン粒子に平均直径が2nmのAuナノ粒子(金属触媒)を担持させた触媒粒子と、イオン伝導性物質(イオン交換樹脂)としてナフィオン溶液(商品名、デュポン社製)とを準備した。これらと純水とイソプロパノールとを所定の割合で混合して触媒塗布液を調製した。
【0044】
電極基材としてマイクロポーラス層を有する拡散層付きカーボンペーパーを用意した。上記した触媒塗布液をスプレーノズルに充填し、加熱したホットプレート上に配置したカーボンペーパー上に噴射してスプレー塗布を行った。触媒塗布液のスプレー塗布は、カソードの厚さが55μmとなるように行った。また、触媒層の単位面積当たりの金属触媒の質量は0.15mg/cm2に設定した。これを4×4cmの大きさに切り出してカソード(電極面積:16cm2)とした。
【0045】
アノードには、Ti不織布上に触媒となるIrO2ナノ粒子を塗布した電極を用いた。このIrO2/Ti不織布を4×4cmに切り出してアノードとした。セパレータには、ポリエーテルスルホンの多孔質膜を用いた。
【0046】
次に、
図1に示した電解セルを作製した。電解セルは、上からカソード集電板、CO
2ガス流路、カソード、セパレータ、アノード、アノード溶液流路、アノード集電板の順で積層し、図示しない支持板により挟み込み、さらにボルトで締め付けて作製した。アノード集電板とカソード集電板を外部電源に繋ぎ、アノード溶液流路には硝酸を3ミリモル毎リットル(mM)添加した電解液(測定開始時の電解液pHは7.5~8.5であった)を流し、カソードガス流路にはCO
2ガスを流して、
図1に示した二酸化炭素電解装置を作製した。
【0047】
(実施例2)
実施例1の電解装置のカソードガス流路の前段に設置した加湿水供給装置を用いて、加湿水中に硝酸を10ミリモル毎リットル(mM)添加し、電解液には硝酸を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして
図1に示した電解セルおよび電解装置を作製した。
【0048】
(実施例3~9)
表1に示す条件(添加剤を添加した箇所、添加剤種と添加量、開始時の電解液のpH)をそれぞれ適用する以外は、実施例1と同様にして
図1又は
図2に示した電解セルおよび電解装置を作製した。
【0049】
次に、実施例1~9の電解装置を以下に示す条件で運転した。CO2ガス流路にCO2又はCO2に表1に示した添加物を加えたガスを、水又は表1に示した添加物を加えた水により加湿し、所定量供給すると共に、アノード溶液流路に電解液(濃度0.1Mの炭酸水素ナトリウム水溶液)又は電解液に表1に示した添加物を加えた液体を供給した。アノードとカソードとの間に200mA/cm2の定電流を連続的に印加して1000時間運転した。1000時間運転後のセパレータを取り出し、XRF(蛍光X線分析)によりチタンを分析したところ、実施例においてはほとんどチタンが検出されなかった。1000時間運転後のCOのファラデー効率も80%以上を維持していた。
【0050】
(比較例1)
実施例1の電解液に硝酸を添加しない以外は、実施例1と同様にして
図1に示した電解セル及び電解装置を作製した。
【0051】
(比較例2、3)
表1に示す条件を適用する以外は、実施例1と同様の条件で、電解セル及び電解装置を作製した。
【0052】
比較例1~3の電解装置を、実施例1と同一条件で運転試験を行い、同様にXRFによりセパレータのチタンを分析したところ、比較例1、2においてはランド部分からチタン元素が検出され、アノードからチタンが溶出し、セパレータに拡散していることが分かった。比較例3においては、電解液の酸濃度が高いことによるセルの劣化が発生し、1000時間の長時間運転が出来なかった。
【0053】
【0054】
なお、各実施形態の構成は、それぞれ組合せて適用することができ、また一部置き換えることも可能である。ここでは、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図するものではない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10…二酸化炭素電解装置、20…電解セル、30…カソード部、31…カソード、32…カソード流路、40…アノード部、41…アノード、42…アノード流路、50…セパレータ、60…ガス供給部、61…CO2収容部、62…加湿部、63…ガス添加部、65…注液部(注液配管)、70…アノード溶液供給部、71…アノード溶液タンク、72…ポンプ、73…アノード溶液濃度測定部、74…酸化剤供給部、80…電源。