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特開2024-137608トタロール及びグリチルリチン酸二カリウムを含むバイオフィルム形成調節用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137608
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】トタロール及びグリチルリチン酸二カリウムを含むバイオフィルム形成調節用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240927BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240927BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/60
A61Q19/00
A61K31/05
A61K31/704
A61P31/04
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138043
(22)【出願日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】10-2023-0038406
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー・エイチアンドエイチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ヒ・ソン
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC432
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC542
4C083AC642
4C083AC712
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD302
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC02
4C083CC04
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE14
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA17
4C206KA05
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、トタロール(Totarol)及びグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))を有効成分として含む、バイオフィルム形成抑制または除去用組成物、化粧料組成物及び医薬部外品組成物を提供することである。
【解決手段】本発明の組成物は、キューティバクテリウム菌株のバイオフィルム形成を調節することにより、皮膚に安全でありながら皮膚状態改善効果に優れた化粧料組成物、医薬部外品組成物として利用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トタロール(Totarol)及びグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))を有効成分として含む、バイオフィルム形成抑制または除去用組成物。
【請求項2】
前記バイオフィルムは、キューティバクテリウム菌株(Cutibacterium sp.)のバイオフィルム形成抑制または除去することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記トタロール及びグリチルリチン酸二カリウムは、1:10~1:250濃度(w/v)%の割合で混合することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記トタロール及びグリチルリチン酸二カリウム混合物を1ppm以上で含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、剤形安定性が改善されたことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、化粧料組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、医薬部外品組成物である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トタロール(Totarol)及びグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))を有効成分として含む、バイオフィルム形成抑制または除去用組成物、化粧料組成物及び医薬部外品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物のバイオフィルムは、環境内に適応するためのそれらだけの生活様式である。微生物により形成されたバイオフィルムは、多様な表面に強く付着して除去し難く、浮遊生活をする時に比べて苛酷な環境(例えば、pH、温度、栄養分の枯渇など)と抗生剤の攻撃などに対して遥かに強い抵抗力を有するため、滅菌と消毒が困難である。
【0003】
また、微生物は、このような生物膜の形成結果により多様な利益を得ることができるため、多くの自然及び産業環境で生物膜の形態で存在することになる。生物膜を形成する微生物は、EPS(extracellular polymeric substance;Carbohydrate,Protein,and Nucleic acid)と呼ばれる個々の微生物が外部に分泌した高分子物質で覆われて表面に固着して存在する。したがって、バイオフィルムは、細菌、酵母、真菌など微生物が特定の条件で人体(例えば、皮膚、口腔、歯など)や設備(例えば、配管、貯蔵タンクなど)などの表面にフィルムのように付着している微生物の集合体(macro colony)と言え、それ自体が微生物の生息地としても提供され、菌の生息を加速化することもある。このようなバイオフィルムの微生物は、産業界及び医学界の全般で深刻な問題を引き起こす可能性があるため、バイオフィルムの除去または形成抑制用組成物及びバイオフィルム形成を抑制または除去する方法に関する研究が求められる状況である。
【0004】
特に、多糖類の水素結合により密集しているバイオフィルム外部マトリックス(基質)は、抗菌剤などが内部に浸透することを防いで抗菌剤の作用を妨げる。したがって、バイオフィルムの除去のために、強酸/強塩基処理または物理的に直接掻き取る方法などを必要とする。しかしながら、皮膚や頭皮のような人体バイオフィルムは、上記除去方法を使用できない。また、生活で用いる製品は、安全性などの問題のため、バイオフィルムを除去できる強い化学薬品を使用できない。
【0005】
これにより、バイオフィルムを除去したり、形成を抑制するにおいて人体にとってより安全で効果的な方法を開発するために、多くの研究が進められている。
【0006】
にきびは、最も一般的な皮膚疾患であり、にきび発生の主な原因の一つであるキューティバクテリウム・アクネスは免疫に影響を及ぼすだけでなく、皮脂分泌と面皰(病変)の形成にも密接な関係がある。キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes,C.acnes)は代表的なにきび菌であり、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)とも呼ばれ、皮膚、結膜、外耳、咽頭部、女性泌尿器などに常在する菌である。顔の毛穴皮脂腺の80%以上の割合で存在する皮膚優占菌であると同時に(相利)共生菌であり(Sci Rep.2016;6:36062,Br J Dermatol.2008 Mar.158(3):442-455)、尋常性ニキビ(acne vulgaris)を引き起こす原因でもある。にきび菌のバイオフィルムはにきび患者の毛穴から発見され、にきび再発の原因でもある。
【0007】
にきび訴求製品で用いられるサリチル酸やベンゾイルペルオキシド、テトラサイクリンのようなにきび機能性素材は、共生菌と有益菌も除去してマイクロバイオーム群集崩壊/腸内細菌叢の異常(dysbiosis)の恐れがあり、抗生剤耐性問題を引き起こし、菌の再増殖を防止できず、にきび再発の恐れがある。
【0008】
このような背景下に、本発明者らは、有害菌を選択的に抑制し、にきびと関係性がない菌株は維持することにより、マイクロバイオームバランスを維持できる人体により安全で効果的な本発明を完成した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sci Rep.2016;6:36062,Br J Dermatol.2008 Mar.158(3):442-455
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、トタロール(Totarol)及びグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))を有効成分として含む、バイオフィルム形成抑制または除去用組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、トタロール(Totarol)及びグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))を有効成分として含む、バイオフィルム形成抑制または除去用化粧料組成物を提供することにある。
【0012】
本発明のまた他の目的は、トタロール(Totarol)及びグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))を有効成分として含む、バイオフィルム形成抑制または除去用医薬部外品組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これを具体的に説明すると、次の通りである。一方、本発明で開示されたそれぞれの説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用できる。即ち、本発明で開示された多様な要素のすべての組合が本発明の範疇に属する。また、下記の具体的な記述により本発明の範疇が制限されるとは見られない。
【0014】
また、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験だけを用いて本発明に記載された本発明の特定様態に対する多数の等価物を認知したり、確認することができる。また、このような等価物は、本発明に含まれることが意図される。
【0015】
上記目的を達成するための一つの様態は、トタロール(Totarol)及びグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))を有効成分として含む、バイオフィルム形成抑制または除去用組成物を提供する。
【0016】
本発明の用語「トタロール(Totarol)」は植物由来のジテルペン化合物であり、ニュージーランドで発見される針葉樹であるPodocarpus totaraの芯材から初めて分離された。トタロールは腐敗復原力に優れ、天然防腐剤として注目されている。また、トタロールは、抗酸化作用を通じて腐敗に対する強い抵抗力を有しており、化粧料組成物としても用いられるが、水溶性が低いため高濃度で適用時に、分散安定性及び透明性に良くない問題点が存在するだけでなく、安定した効能効果を奏し難い。
【0017】
本発明の用語「グリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))」は、甘草根から抽出されるグリチルリチン酸(Glycyrrhizic Acid)を水に溶解しやすいようにDipotassium塩にしたものであり、一般に、甘草酸塩とも呼ばれる。甘味が砂糖の30~50倍に達し、各種飲食品に甘味料として用いられ、腎臓のステロイド代謝に関与することが知られている。本発明においてトタロール及びD.P.Gを混合して用いる場合、キューティバクテリウム・アクネスのバイオフィルムを形成抑制または除去することができるが、これに制限されない。
【0018】
本発明においてトタロール及びグリチルリチン酸二カリウムは、1:10~1:250、具体的には1:25~1:200、より具体的には1:30~1:150の濃度(w/v)%の割合で混合するものであってもよい。
【0019】
本発明の一実施例においては、トタロール:D.P.Gの比率を1:30~1:150の濃度(w/v)%で混合した場合、トタロールまたはD.P.G単独比バイオフィルム生成量が顕著に減少することを確認でき、上記範囲でバイオフィルム形成抑制または除去にシナジー効果があることを確認した(表3)。また、皮膚適用製品群(化粧品、生活用品)と関連が高い菌6種(C.acnes,S.aureus,E.coli,P.aeruginosa,C.albicans及びA.brasiliensis)を選定した後、菌の生長率を確認した結果、C.acnes以外の他の菌株では生長率が減少していないか、増加した一方、C.acnes菌株はトタロール:D.P.Gの比率を1:25~1:200で混合して処理した場合、対照群またはトタロール単独処理比生長率が顕著に減少することを確認し、本発明のトタロール及びD.P.Gは、上記範囲でC.acnes菌株のバイオフィルム形成抑制または除去にシナジー効果があることを確認した(表7)。
【0020】
本発明においてトタロール及びグリチルリチン酸二カリウム混合物を1ppm以上、具体的には3ppm以上、より具体的には5ppm以上で含むものであってもよい(表5~6)。
【0021】
本発明の一実施例においては、トタロール及びD.P.Gを共に処理した場合、C.acnes菌株のみでcolony形成が抑制されることを確認した。
【0022】
本発明においてトタロール(Totarol)及びグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))を有効成分として含む組成物は、キューティバクテリウム菌株(Cutibacterium sp.)のバイオフィルムを形成抑制または除去するものであってもよい。
【0023】
本発明の用語、「キューティバクテリウム(Cutibacterium sp.)」は、グラム陽性、無酸素性の不規則な形状の細菌属である。本発明の「キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes,C.acnes)」はプロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)と呼ばれ、嫌気性あるいは耐酸素性(aerotolerant)であり、運動性がなく、炭水化物の発酵が可能な菌である。毛包の皮脂腺から分泌される脂肪酸を分解して生き、一般に、若者のにきびの原因となったり、日和見感染菌として作用する。
【0024】
本発明においてキューティバクテリウム・アクネスは、にきび菌の標準型として知られているキューティバクテリウム・アクネスATCC6919菌株であってもよいが、これに制限されない。
【0025】
本発明において用語「バイオフィルム(Biofilm)」は、微生物により形成された膜状構造体で、表面に連結された微生物細胞層からなるよく構成された微生物系であり、複雑な構造的機能的特徴を有している。生体膜は、微生物の代謝過程に影響を及ぼす物理化学的勾配を有する。バイオフィルムを形成する細胞は、浮遊細胞より抗生剤に対する抵抗性が1000倍以上高く、バイオフィルムの形成は、種々の疾病の発病(pathogenesis)に重要な役割をすることが報告される。バイオフィルムは、微生物の集合体(macro colony)と言え、細菌が出すEPSを意味することができ、さらに細菌が表面に付着して集落を形成した状態を意味することもできる。
【0026】
本発明において用語「バイオフィルム形成抑制」は、微生物のバイオフィルムの生成をこれ以上生成しないように防止または遅延させるあらゆる行為を意味し、「バイオフィルムの除去」は、微生物のバイオフィルム量が基準となる微生物のバイオフィルムの一定基準以下となることを意味し、具体的には、バイオフィルムの抑制や除去は、微生物のバイオフィルム量が基準となる微生物のバイオフィルム比1%以上に抑制または除去、抑制率/除去率が30%以上、具体的には50%以上、より具体的には70%以上になるようにすることを意味する。バイオフィルムは菌が作る一種の保護膜であり、このようなバイオフィルム形成の調節は、菌の生存と直接的な関係がある。
【0027】
一般に、抗菌活性を有する成分であるとしても、群集を形成してバイオフィルムが形成された菌に対しては、バイオフィルムの除去及び生成を抑制するのが容易でない。本発明のトタロール及びD.P.Gは、C.acnesが群集を形成してもバイオフィルムの形成を抑制し、除去できるだけでなく、C.acnes特異的に作用できる長所を有する。
【0028】
本発明の一実施例においては、C.acnes菌株にトタロール及びD.P.Gを混合して処理してバイオフィルム形成の有無を観察した結果、D.P.G単独、トタロール単独比C.acnesバイオフィルム生成抑制の効果が顕著に増加することを確認しただけでなく(表1)、C.acnes菌株を培養した後、形成されたバイオフィルムにトタロール及びD.P.Gを混合して処理した場合、すでに強固に形成されたバイオフィルムが顕著に減少し、本発明のトタロール及びD.P.GはC.acnesバイオフィルムの除去効果も顕著に増加することを確認した(表2)。
【0029】
液体培地で培養した浮遊微生物の一定濃度を寒天培地で播種して生成されたmacro colonyをバイオフィルムと見られるため、寒天培地でトタロール及びD.P.Gを共に処理した後、macro colonyの形成を確認した結果、トタロール単独処理比C.acnes菌株の生長及びmacro colonyの形成が大きく減少することを確認した(図5)。
【0030】
また、本発明のバイオフィルムの抑制または制御効果は、D.P.G抗菌力によるものではないことが分かり(表8)、MIC値以下の濃度でバイオフィルム形成抑制または除去実験を行い、トタロールが抗菌力を出す範囲の以下でも、トタロール及びD.P.Gは、C.acnes菌株の生長抑制、コロニー形成抑制、バイオフィルム形成抑制または除去にシナジー効果を示すことを確認した。
【0031】
本発明においてトタロール及びグリチルリチン酸二カリウムを有効成分として含む、バイオフィルム形成抑制または除去用組成物は、剤形透明度及び/又は剤形安定性が改善されたものであってもよい。
【0032】
本発明の一実施例においては、剤形安定性を確認した結果、トタロール及びD.P.Gを並行使用時に透明度を維持することを確認し、本発明の組成物は、分散安定性と透明性に優れることが分かった(表9)。
【0033】
本発明のもう一つの様態は、トタロール(Totarol)及びグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))を有効成分として含む、バイオフィルム形成抑制または除去用化粧料組成物を提供する。
【0034】
本発明においてバイオフィルムは、キューティバクテリウム菌株(Cutibacterium sp.)のバイオフィルムを形成抑制または除去するものであってもよい。
【0035】
上記「トタロール」、「グリチルリチン酸二カリウム」、「キューティバクテリウム」、「バイオフィルム形成抑制」、「バイオフィルムの除去」は、前述した通りである。
【0036】
本発明の用語「化粧料組成物」は、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、香水、パック、柔軟水、乳液、メイクアップベース、エッセンス、石鹸、液体洗浄料、入浴剤、サンスクリーンクリーム、サンオイル、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パッチ及びスプレーで構成される群から選択される剤形であってもよいが、これに制限されない。
【0037】
本発明の化粧料組成物は、一般の皮膚化粧料に配合される化粧品学的に許容可能な担体を1種以上さらに含んでもよく、通常の成分として、例えば、油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などを適切に配合してもよいが、これに制限されない。
【0038】
本発明の化粧料組成物に含まれる化粧品学的に許容可能な担体は、上記化粧料組成物の剤形によって多様である。
【0039】
本発明の化粧料剤形が、軟膏、ペースト、クリーム、またはゲルである場合には、担体成分として動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛などが用いられてもよいが、これに制限されない。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。
【0040】
本発明の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として溶媒、可溶化剤または乳化剤などが用いられてもよく、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカルボナート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイルなどが用いられてもよく、特に、綿実油、ピーナッツオイル、トウモロコシ胚芽油、オリーブオイル、ヒマシ油及びゴマ油、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコールまたはソルビタンの脂肪酸エステルが用いられてもよいが、これに制限されない。これらは単独で使用しても2種以上使用してもよい。
【0041】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として水、エタノールまたはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガーまたはトラガカントなどが用いられてもよいが、これに制限されない。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。
【0042】
本発明の剤形が石鹸である場合には、担体成分として脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸ヘミエステル塩、脂肪酸タンパク質加水分解物、イセチオネート、ラノリン誘導体、脂肪族アルコール、植物性油、グリセロール、糖などが用いられてもよいが、これに制限されるものではない。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。
【0043】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、ケイ酸カルシウム、ポリアミドパウダーまたはこれらの混合物が用いられてもよく、特に、スプレーである場合には、追加的にクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進剤を含むことができる。
【0044】
一方、本発明に記載されたすべての成分が、好ましくは、化粧品安全基準などに関する規定及び中国「化粧品安全・技術規範」で規定した最大使用値を超過しない範囲内で本発明の組成物に含まれてもよい。
【0045】
本発明においてトタロール及びグリチルリチン酸二カリウムを有効成分として含む、キューティバクテリウム菌株バイオフィルム形成抑制または除去用化粧料組成物は、剤形透明度が改善されたものであってもよい。
【0046】
本発明の一実施例においては、化粧料組成物として適法かどうかを確認するために剤形安定性を確認した結果、トタロール及びD.P.Gを並行使用時に透明度を維持することを確認し、本発明の化粧料組成物は、分散安定性と透明性に優れていることが分かった(表9)。
【0047】
本発明のもう一つの様態は、トタロール(Totarol)及びグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))を有効成分として含む、バイオフィルム形成抑制または除去用医薬部外品組成物を提供する。
【0048】
本発明においてバイオフィルムは、キューティバクテリウム菌株(Cutibacterium sp.)のバイオフィルムを形成抑制または除去するものであってもよい。
【0049】
上記「トタロール」、「グリチルリチン酸二カリウム」、「キューティバクテリウム」、「バイオフィルム形成抑制」、「バイオフィルムの除去」は、前述した通りである。
【0050】
本発明の用語「医薬部外品」とは、ヒトや動物の疾病を診断、治療、改善、軽減、処置または予防する目的で用いられる物品中、医薬品より作用が軽微な物品を意味する。例えば、薬事法による医薬部外品は、医薬品の用途として用いられる物品を除いたものであり、ヒト/動物の疾病治療や予防に使われる製品、人体に対する作用が軽微であるか、直接作用しない製品などが含まれる。
【0051】
具体的には、上記医薬部外品は、皮膚外用剤及び個人衛生用品を含むことができる。より具体的には、手指消毒剤、シャワーフォーム、口内洗浄液、ウェットティッシュ、洗剤石鹸、ハンドウォッシュ、または軟膏剤であってもよいが、これに制限されない。
【0052】
本発明による上記組成物を医薬部外品添加物として用いる場合、上記組成物をそのまま添加したり、他の医薬部外品または医薬部外品成分と共に使用してもよく、常法により適切に使用してもよい。有効成分の混合量は、使用目的に応じて適するように決定されることができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明は、トタロール(Totarol)及びグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))を有効成分として含む組成物に関し、上記組成物は、キューティバクテリウム菌株のバイオフィルム形成を調節することにより、皮膚に安全でありながら皮膚状態改善効果に優れた化粧料組成物、医薬部外品組成物として利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】トタロール及びD.P.Gのバイオフィルム形成抑制効果を示したグラフである。
図2】トタロール及びD.P.Gの形成されたバイオフィルムの除去効果を示したグラフである。
図3】トタロール及びD.P.Gの条件別のバイオフィルム形成抑制効果を示したグラフである。
図4】macro colony形成評価のためのagar plateを区分したことを示した図である。
図5】6種の菌の固体培地におけるmacro colony形成を評価した結果である。
図6】C.acnes菌の固体培地におけるmacro colony形成を評価した結果である。
図7】剤形安定性を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0055】
以下、本発明を実施例及び実験例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例及び実験例は、本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例及び実験例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1.バイオフィルム形成抑制効果の検定
実施例1-1.キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes,C.acnes)菌株培養及び試料準備
C.acnes中にきび誘発と関連性があるATCC6919菌株(Cutibacterium acnes ATCC6919,にきび菌標準型)を選定した。選定されたC.acnes菌株を嫌気性条件で滅菌(高圧滅菌器(Autoclave)で121℃、2気圧、15分間)させたRCM液体培地で培養した。培養した菌株を、OD値を0.1に合わせるために、培養物が0.1のOD600となるように菌を希釈させ、24well plateに希釈菌株をそれぞれ0.9mlずつ分注(seeding)し、試験群試料0.1mlを添加して最終ボリュームが1mlとなるようにした。
【0057】
試験群試料(トタロールTotarol)及び/又はグリチルリチン酸二カリウム(Dipotassium glycyrrhizate(D.P.G))は、重量(g)で計量して混合し、滅菌精製水(DW)に試料を混合し、voltexingで均質化した。その後、試験群であるトタロールは、0.01%試料を0.1mlずつ分注して試験群の最終適用濃度が0.001%となるようにし、D.P.Gは1%試料を0.1mlずつ分注して試験群の最終適用濃度が0.1%となるようにした。トタロール及びD.P.G混合試料は、トタロール0.02%試料を0.05mlとD.P.G 2%試料0.05mlを適用して試験群の適用用量が0.1mlとなるようにした。対照群は、試料の代わりに滅菌精製水(DW)を0.1mlずつ分注した。菌株と試料を混合するために、振盪培養器(shaking incubator)で300rpmの条件で30分間行った。その後、72~84時間嫌気条件密閉容器で培養した。
【0058】
実施例1-2.バイオフィルム形成抑制効果の検定
plate底にバイオフィルムが形成されるため、plateから上層液除去し、1回滅菌精製水で洗浄(washing)した。0.05%CV染料(クリスタルバイオレット、crystal violet)1mlをロードして20分間反応させてバイオフィルムを染色した。染料除去後、1回滅菌精製水で洗浄し、CV染料の溶出目的で10%酢酸(acetic acid)1mlをロードし、振盪培養器で300rpmの条件で30分間行った。分光光度計(Spectrophotometer)を利用して545nmで吸光度(OD545)を測定してCV染料の溶出量を定量し、対照群と実験群の吸光度値を計算してバイオフィルム形成抑制を評価/比較した(表1)。
【0059】
【表1】
【0060】
上記の表1で示されるように、D.P.G 0.1%をC.acnesに適用時に、対照群(バイオフィルム形成率100%)とバイオフィルム形成率が類似しており、トタロール0.001%をC.acnesに適用時に、バイオフィルム形成率が減少し、バイオフィルム生成が抑制されたことを確認した。D.P.G 0.1%及びトタロール0.001%をC.acnesに適用時に、D.P.G単独比約71%以上、トタロール単独比約41%以上でバイオフィルム形成率が減少することにより、顕著なC.acnesバイオフィルム生成が抑制されたことを確認した(図1)。
【0061】
これを通じてD.P.Gは、C.acnesのバイオフィルム生成抑制には影響を及ぼさないことを確認し、D.P.G 0.1%及びトタロール0.001%のC.acnesバイオフィルム生成抑制の効果は、コルビーの式(COLBY S.R.、1967)で導出した予測値に比べて顕著に高いことを確認し、これは、D.P.G単独、トタロール単独比C.acnesバイオフィルム生成抑制の効果に優れることが分かった。
【0062】
実施例2.バイオフィルムの除去効果の検定
実施例2-1.キューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes,C.acnes)菌株培養及び試料準備
バイオフィルムの除去効果の検定実験は、C.acnes菌株を培養して形成されたバイオフィルムに試験群試料を処理してバイオフィルムが除去されるかを確認した。具体的には、実施例1-1.の方法と同様にC.acnes菌株を選定し、培養した菌株を、OD値を0.1に合わせるために、培養物が0.1のOD600となるように菌を希釈させ、24well plateにそれぞれ1mlずつ分注(seeding)した。その後、72~84時間嫌気条件の密閉容器で培養した。
【0063】
試験群試料(トタロール及び/又はグリチルリチン酸二カリウム)は、重量(g)で計量して混合し、滅菌精製水(DW)に試料を混合し、voltexingで均質化した。その後、試験群の最終適用濃度は、D.P.Gは0.5%、トタロールは0.005%となるようにし、対照群は、試料の代わりに滅菌精製水(DW)を1mlずつ分注した。
【0064】
実施例2-2.形成されたバイオフィルムの除去効果の検定
菌を培養したplate底にバイオフィルムが形成されるため、plateから上層液(菌株及び培養液)を除去し、1回滅菌精製水で洗浄(washing)した。その後、試験群の試料を各wellに1mlずつロードし、対照群は、滅菌精製水をロードして20分間反応させた。反応後に試料を除去し、滅菌精製水を利用して1回洗浄した。
【0065】
その後、形成されたバイオフィルムが除去されたかを確認するために、0.05%のCV染料1mlをロードして20分間反応させてバイオフィルムを染色した。染料除去後に1回滅菌精製水で洗浄し、CV染料の溶出目的で10%の酢酸1mlをロードし、振盪培養器で300rpmの条件で30分間行った。分光光度計を利用して545nmで吸光度(OD545)を測定してCV染料の溶出量を定量し、対照群と実験群の吸光度値を計算し、バイオフィルムが除去されずに残っている量(バイオフィルム残余量)を比較した(表2)。
【0066】
【表2】
【0067】
上記の表2で示されるように、D.P.G0.5%をC.acnesに適用時に、対照群(バイオフィルム形成率100%)よりバイオフィルム形成率が減少したが、有意な差がなく、トタロール0.005%をC.acnesに適用時に、かえってバイオフィルム量が増加することを確認した。しかし、D.P.G 0.5%及びトタロール0.005%をC.acnesに適用時に、対照群比約67%以上減少し、D.P.Gまたはトタロール単独比約27.6~72.3%以上減少することを確認した(図2)。
【0068】
これを通じて、D.P.G及びトタロールは、バイオフィルム抑制効果だけでなく、形成されたバイオフィルムの除去効果もあることが分かり、本発明のD.P.G及びトタロールは、C.acnes菌株により強固に形成されたバイオフィルムの除去効果も優れることが分かった。
【0069】
実施例3.トタロール及びグリチルリチン酸二カリウム(D.P.G)の条件別のバイオフィルム形成抑制効果の検定
実施例1-1.の方法と同様にキューティバクテリウム・アクネス(Cutibacterium acnes,C.acnes)菌株の培養及び試料を準備した。トタロールが0.0001%(1ppm)である時、D.P.Gの比率を1:30、1:50、1:100、1:150の濃度(w/v)%で混合して実施例1-2.の方法と同様な方法でバイオフィルム形成が抑制されたかどうかを評価/比較した(表3)。
【0070】
【表3】
【0071】
上記の表3で示されるように、トタロール:D.P.G比率が1:30~1:150の場合、トタロールまたはD.P.G単独比バイオフィルム生成量が顕著に減少することを確認でき、1:30~1:150の混合範囲でバイオフィルム形成抑制にシナジー効果があることが分かった(図3)。
【0072】
実施例4.トタロール及びグリチルリチン酸二カリウム(D.P.G)のキューティバクテリウム・アクネス(C.acnes)菌株に対するバイオフィルム抑制効果の検定
実施例4-1.菌株選定及び培養
皮膚適用製品群(化粧品、生活用品)と関連が高い菌6種を選定(表4)して培養し、トタロール及びD.P.GのC.acnes菌株に対するバイオフィルム抑制効果、即ち、macro colony抑制効果を評価した。
【0073】
【表4】
【0074】
実施例4-2.6種菌のmacro colony形成抑制の評価
試験群(#1~5)と対照群(#1~7)試料と6種の菌(Cutibacterium acnes,Staphylococcus aureus,Escherichia coli,Pseudomonas aeruginosa,Candida albicans,Aspergillus brasiliensis、10 CFU/ml)を液体培地で培養した後、均質に混合して各菌別成長培地(argar plate)に液体培養した菌を一滴(10ul)ずつ分注後、一定時間培養した後、argar培地(寒天培地)におけるmacro colony形成を確認し、菌密度、macro colonyのマトリックス密度を肉眼で観察した。各菌の培養法は、表4で示した通り、菌別通常の培養条件に応じて培養した。
【0075】
具体的には、C.acnes菌株は嫌気性条件のRCM-agar培地、37℃で4日間培養した後に観察し、S.aureusは好気性条件のTSA培地、37℃で3日間培養した後に観察し、E.coli,P.aeruginosaは好気性条件のTSA培地、37℃で1日間培養した後に観察し、C.albicans,A.brasiliensisは好気性条件のPO-agar培地、30℃で3日間培養した後に観察した。
【0076】
その後、agar plateを9領域に区分(図4)し、無処理(対照群#1)、トタロール単独処理(対照群#2)、D.P.G単独処理(対照群#3~#7)、トタロール及びD.P.Gを各濃度別に混合して処理(実験群#1~#5)した後、菌のcolony形成の有無(colony biofilm)を確認した(表5:トタロール10ppm、0.001%;表6:トタロール5ppm、0.005%)。
【0077】
Macro colonyマトリックスの密度を肉眼で判別し、その結果を表7に示した。上記6種の菌に対してトタロール単独処理(対照群#2)、D.P.G単独処理(対照群#3~#7)比トタロール及びD.P.Gを各濃度別混合して処理した群(実験群#1~#5)においてcolonyマトリックスが減少した菌は、C.acens菌が唯一であった。(図5
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
より詳しくは、トタロールはグラム陽性菌であるC.acnesとS.aureusのみでcolonyが形成されていないことを確認し(図5、黄色点線ボックス)、グラム陰性菌であるE.coli,P.aeruginosaと真菌類であるC.albicans,A.brasiliensisのcolony形成に影響を及ぼさないことを確認した(図5)。
【0082】
また、トタロール単独あるいはD.P.G単独処理比トタロール及びD.P.Gを共に処理した場合、C.acnes菌株のmacro colony形成が大きく減少することを確認し、トタロール及びD.P.Gを共に処理すれば、シナジー効果があることが分かり、これは、macro colony抑制のシナジー効果であることを確認した(図5、赤色実線ボックス)。
【0083】
一方、S.aureusは、トタロール5ppmでD.P.G混合の有無と関係なくS.aureus生育及びcolony形成が抑制されることを確認した。
【0084】
これを通じて、トタロール及びD.P.Gは、群集を形成したC.acnes菌のバイオフィルムの除去及び生成抑制の効果に優れていることを確認した。
【0085】
実施例5.安定性の評価
実施例5-1.キューティバクテリウム・アクネス(C.acnes)菌株に対する安定性の評価
にきび菌の標準型であるATCC6919菌株を用いた。ATCC6919菌株を液体培地で培養した後、培養物が0.05のOD600となるような菌を希釈させて菌数は10CFU/mlとなるようにした。その後、96well plateに菌株をそれぞれ100ulずつ分注(seeding)した後、試料は1/2ずつ希釈(serial dilution)し、72~82時間嫌気条件の密閉容器で培養した。
【0086】
アラマーブルー染料分析(Alamar blue assay)方法を用いて細胞生存率を測定した。具体的には、96wellに200ulとなるように上記培養した菌株と試験群を処理して共に培養した後、96wellに試料のserial dilutionを行った。アラマーブルーを各20uずつ(培養液の1/10)分注した後、1~4時間後に色相変化を観察した。初期色はパープル/ブルーを帯び、菌株の生長が抑制されると、パープル/ブルー、菌株が生長した場合、ピンク/イエローに色相が変化し、色相がパープル/ブルーからピンク/イエローに変わる試料の濃度を確認し、どの濃度値で生長が抑制されるか、MIC(少なくとも生長抑制濃度)値を決定した(表8)。
【0087】
【表8】
【0088】
表8で示されるように、D.P.G比トタロールのMIC濃度が低いことを確認し、トタロール及びD.P.Gはトタロール単独とMIC濃度が同一であることを確認した。
【0089】
これを通じて、トタロールにD.P.Gを混合してもトタロール単独とMIC濃度が同一であり、本発明のバイオフィルム抑制または制御効果は、D.P.G抗菌力によることではないことが分かった。
【0090】
実施例5-2.剤形安定性の評価
トタロール0.1%及びD.P.G 10%を化粧水原料(透明低粘度のスキンタイプ、アルコール5%、PEG-40水添ヒマシ油0.24%、オクチルドデセス-16 0.16%、アルギン0.03%、ジプロピレングリコール3%、グリセリン0.5%、パンテノール0.5%、ベタイン0.5%、1,2-ヘキサンジオール1%、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー0.03%、トロメタミン0.03%及び精製水UP TO 100)と混合し、剤形(あるいは溶媒)に最大使用濃度を適用後、ガラスバイアルに入れて80℃ 4hr、8hr熱湯加温して剤形安定性を評価するために、加温前/後の色相(懸濁度)を肉眼で観察し、透明度は吸光度を測定して比較/評価した(表9)。
【0091】
【表9】
【0092】
表9で示されるように、化粧水にトタロールのみを適用時に吸光度が0.11で懸濁されることを確認し、熱湯加温後に吸光度が約3.45倍以上増加し、安定性が悪くなったことを確認した。これとは異なって、D.P.Gを共に適用時に懸濁度が改善され、剤形が透明であることを確認し、熱湯加温後にも透明度を維持することを確認した(図7)。
【0093】
一般に、効能物質は、消費者が使用するまで剤形内の安定性を維持し、均質によく分散されてこそ、消費者が使用時に初めてその効能をよく発揮することができる。特に、水溶性が低く安定性が不安な場合、経時により同じ物性の物質同士が凝集して分散安定性が低下することもある。トタロールの場合、水溶性が低い物質で高温経時加速化実験時に互いに凝集して分散安定性が低下することを懸濁度が増加することから推測することができた。
【0094】
これを通じて、トタロール単独では安定性が良くない一方、本発明のトタロール及びD.P.Gを並行使用時に分散安定性と透明性が増加し、トタロール単独比安定性が顕著に改善されることが分かった。
【0095】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は上記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7