(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013762
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】自動駐車表示システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240125BHJP
B60R 1/27 20220101ALI20240125BHJP
B60R 1/28 20220101ALI20240125BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/27
B60R1/28 200
H04N7/18 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116104
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 竜平
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054FD02
5C054FD07
5C054FE01
5C054FE11
5C054FE23
5C054FE24
5C054HA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切り替え回数を低減させて適時に適切な表示態様で周辺画像を表示する自動駐車表示システムを提供する。
【解決手段】車両200の自動駐車システム100において、自動駐車表示システム10は、進行方向画像を車内のモニタ24の進行表示領域に表示する進行方向表示部46と、俯瞰画像をモニタの俯瞰表示領域に表示する俯瞰表示部47と、障害物近接条件及び区画近接条件を保持する条件保持部49と、進行表示領域及び俯瞰表示領域の大きさを調整して俯瞰表示領域が進行表示領域よりも広い俯瞰優先モードと俯瞰表示領域が進行表示領域よりも広い進行優先モードとを切り替える領域調整部48と、を備える。領域調整部48は、障害物近接条件及び区画近接条件の少なくとも一方が満たされたときに俯瞰優先モードから進行優先モードに切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転機能を有する車両の自動駐車中に前記車両の進行方向を撮影した進行方向画像を車内のモニタの進行表示領域に表示する進行方向表示部と、
前記車両の上空から前記車両を含む周辺環境を俯瞰した俯瞰画像を前記モニタの俯瞰表示領域に表示する俯瞰表示部と、
前記自動駐車時に前記車両と障害物との距離が所定の第1距離以下になることを規定する障害物近接条件、及び前記自動駐車時に予定した駐車位置の駐車区画と前記車両との距離が所定の第2距離以下になることを規定する区画近接条件を保持する条件保持部と、
前記進行表示領域及び前記俯瞰表示領域の大きさを調整して前記俯瞰表示領域が前記進行表示領域よりも広い俯瞰優先モードと前記俯瞰表示領域が前記進行表示領域よりも広い進行優先モードとを切り替える領域調整部と、を備え、
前記領域調整部は、前記障害物近接条件及び前記区画近接条件の少なくとも一方が満たされたときに前記俯瞰優先モードから前記進行優先モードに切り替えることを特徴とする自動駐車表示システム。
【請求項2】
前記条件保持部は、前記障害物が前記車両の切り返しを必要とする対象物であることを規定する切返対象条件を保持し、
前記領域調整部は、前記障害物近接条件が満たされても、前記切返対象条件が満たされない場合には前記俯瞰優先モードを継続する請求項1に記載の自動駐車表示システム。
【請求項3】
前記領域調整部は、前記自動駐車の開始から最初の前記切り返しより前は、前記障害物近接条件が満たされた場合にも前記俯瞰優先モードを継続する請求項2に記載の自動駐車表示システム。
【請求項4】
前記領域調整部は、前記車両が後退入庫により前記自動駐車がなされる場合、前記後退入庫のための後進が開始されるまでは、前記障害物近接条件及び前記区画近接条件の少なくとも一方が満たされても前記俯瞰優先モードを継続する請求項1に記載の自動駐車表示システム。
【請求項5】
前記進行優先モードへの切り替え後は、前記自動駐車の終了時又は中断時まで前記進行優先モードを継続する請求項1に記載の自動駐車表示システム。
【請求項6】
前記俯瞰優先モードには、前記モニタの画像表示画面が前記俯瞰表示領域のみで構成される場合が含まれる請求項1に記載の自動駐車表示システム。
【請求項7】
前記進行優先モードには、前記モニタの画像表示画面が前記進行表示領域のみで構成される場合が含まれる請求項1に記載の自動駐車表示システム。
【請求項8】
前記自動駐車が中断された場合、所定の第2時間の経過後に前記進行優先モードから前記俯瞰優先モードに切り替える請求項1に記載の自動駐車表示システム。
【請求項9】
前記第2距離は前記第1距離より長い請求項1に記載の自動駐車表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転機能を有する車両の自動駐車表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の自動運転の一形態として自動駐車が知られている。自動駐車は、運転者の駐車運転の操作や車両周囲の監視、衝突事故の回避を代替する。
自動駐車の運転操作時には、車載カメラで得られる撮像画像に基づいて車両の周囲の周辺画像が車室内のモニタに表示される。運転者などの乗車者は、モニタを確認することで自動運転の状況をリアルタイムで確認することができる。
【0003】
また、近年では、障害物が検知された場合に、進行方向の周辺画像であって障害物のある特定領域を含む画像を他の進行方向の周辺画像と合成してモニタに表示させる技術が開発されている。このように、自動駐車では、車両が駐車位置に近づいたときに、車両と障害物と駐車位置との相対的な位置関係を乗車者が把握できることが重要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来の技術では、障害物が多い場合に表示画面の頻繁な切り替わりが起こるおそれがあるという課題があった。表示画面の頻繁な切り替わりは、乗車者にとっては煩わしい。例えば、自動駐車において進行方向の切り返しを繰り返す場合、障害物から一旦離れると表示画面が切り替わり、再度障害物に近づくと再度表示画面が切り替わることになる。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、切り替え回数を低減させて適時に適切な表示態様で周辺画像を表示する自動駐車表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る自動駐車表示システムは、自動運転機能を有する車両の自動駐車中に前記車両の進行方向を撮影した進行方向画像を車内のモニタの進行表示領域に表示する進行方向表示部と、前記車両の上空から前記車両を含む周辺環境を俯瞰した俯瞰画像を前記モニタの俯瞰表示領域に表示する俯瞰表示部と、前記自動駐車時に前記車両と障害物との距離が所定の第1距離以下になることを規定する障害物近接条件、及び前記自動駐車時に予定した駐車位置の駐車区画と前記車両との距離が所定の第2距離以下になることを規定する区画近接条件を保持する条件保持部と、前記進行表示領域及び前記俯瞰表示領域の大きさを調整して前記俯瞰表示領域が前記進行表示領域よりも広い俯瞰優先モードと前記俯瞰表示領域が前記進行表示領域よりも広い進行優先モードとを切り替える領域調整部と、を備え、前記領域調整部は、前記障害物近接条件及び前記区画近接条件の少なくとも一方が満たされたときに前記俯瞰優先モードから前記進行優先モードに切り替えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、切り替え回数を低減させて適時に適切な表示態様で周辺画像を表示する自動駐車表示システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る自動駐車システムが適用された車両の構成を示すブロック図。
【
図2】(A)ソナーセンサの実際の検知範囲を示す図、(B)各ソナーセンサの検知範囲を結合した概形の検知範囲を示す図。
【
図4】(A),(B)俯瞰優先モードから進行優先モードへの切り替え態様の一例を示す図。
【
図5】(A),(B)俯瞰優先モードから進行優先モードへの切り替え態様の別例を示す図。
【
図6】(A),(B)俯瞰優先モードから進行優先モードへの切り替え態様の別例を示す図。
【
図7】第1実施形態に係る自動駐車表示方法を用いた動作のフローチャート。
【
図8】第2実施形態に係る自動駐車表示方法を用いた動作のフローチャート。
【
図9】第3実施形態に係る自動駐車表示方法を用いた動作のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
(第1実施形態)
<1.自動駐車システム100の関連機器>
まず、
図1を用いて、自動駐車システム(以下、単に「駐車システム」という)100と車両200内の関連機器との関係について概説する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る駐車システム100が適用された車両200の構成を示すブロック図である。
【0012】
駐車システム100は、CPU、RAM及びROMなどを備えたコンピュータであり、車両200の例えばECU(Electronic Control Unit)210に搭載される。
駐車システム100は、
図1に示されるように、車両200を駆動するためのアクセル装置11、ブレーキ装置12、ステアリング装置13及びシフト装置14のそれぞれに通信可能に接続され、これらの駆動系統11~14を制御する。
【0013】
また、駐車システム100は、走行用各種センサ15(16~20)、操作入力部21、周辺環境撮像部22、ソナーセンサ23及びモニタ24にも通信可能に接続される。
走行用各種センサ15は、例えば、車速センサ16、加速度センサ17、アクセル開度センサ18、ブレーキセンサ19及び操舵角センサ20である。これらの走行用各種センサ15からの情報により、駐車システム100は車両200の走行状態を把握して駆動系統11~14を制御する。
操作入力部21は、運転者や助手席座者などのユーザから自動駐車の開始の指示を受け付ける例えば自動駐車ボタンや車両200の次の動作を選択するための動作選択ボタンである。操作入力部21は、ハードスイッチであってもモニタ24の画面を構成するタッチパネル上のアイコンであってもよい。自動駐車ボタンが押下されると、自動駐車が開始される。
【0014】
周辺環境撮像部22(25~28)は、車両200の後端に取り付けられる後方カメラ26、車両200の前端に取り付けられる前方カメラ25、及び左右のサイドミラーに取り付けられる左側方カメラ27及び右側方カメラ28など、車両200に搭載された複数の撮像カメラで構成される。
周辺環境撮像部22のそれぞれのカメラ25~28は、レンズ及び撮像素子により、電子的な車両200の周囲環境画像を取得する。
【0015】
ソナーセンサ23は、パーキングセンサとも呼ばれ、例えば自動駐車時に超音波を発信して反射した超音波を感知して障害物29(
図3)の方角や距離を特定する。ソナーセンサ23は、車両200の前方部に設けられて前方に超音波を発信する前方ソナーセンサ23aと、車両200の後方部に設けられて後方に超音波を発信する後方ソナーセンサ23bと、車両200の側方部に設けられて側方に超音波を発信する側方ソナーセンサ23cと、で構成される。
【0016】
前方ソナーセンサ23aは、車両200の前方部の複数個所に設けられる。
ここで、
図2(A)はソナーセンサ23a~23cの実際の検知範囲33を示す図である。また、
図2(B)は各ソナーセンサ23a~23cの検知範囲を結合した概形の検知範囲33aを示す図である。
【0017】
複数台で構成される前方ソナーセンサ23aは、
図2(A)に示されるように、各前方ソナーセンサ23aの取り付け位置から照射方向へ向けて検知距離が長く、照射方向に垂直な方向では検知距離が短いという特性を有する。そして、前方ソナーセンサ23aによる検知範囲33aは、
図2(B)に示されるように、これらの各々の前方ソナーセンサ23aの検知範囲33の和となる。この前方ソナーセンサ23aの検知範囲33に側方ソナーセンサ23cの検出範囲33が重なる。この結果、ソナーセンサ23a,23cによる車両前方部の検知範囲33aは、車両200の前部から扇形を描くような概形を有する。
【0018】
また、後方ソナーセンサ23bについても同様である。つまり、後方ソナーセンサ23bの検知範囲33aは、車両200の後方部の複数個所に設けられた複数台の後方ソナーセンサ23bの各々の後方ソナーセンサ23bの検知範囲33の和となる。この後方ソナーセンサ23bの検知範囲33に側方ソナーセンサ23cの検出範囲33が重なる。この結果、ソナーセンサ23b,23cによる車両後方部の検知範囲33aは、車両200の後部から扇形を描くような概形を有する。
【0019】
モニタ24は、例えばインストルメントパネル上の運転席と助手席との間に設置される。モニタ24には、自動駐車中以外では、カーナビゲーション画面や音楽再生画面などの画面がユーザの操作で表示される。また、自動駐車中には、後に詳述するように、モニタ24に周辺環境撮像部22で撮像された周辺環境の様子を表す画像が表示される。
なお、モニタ24は、操作入力部21としてユーザの操作を受け付けるタッチパネルであってもよい。
【0020】
<2.自動駐車システム100及び自動駐車表示システム10>
次に、駐車システム100について、
図1に加えて
図3を用いて説明する。
図3はモニタ24に表示されるモニタ画面59の一例を示す図である。
【0021】
駐車システム100は、駐車区画認識部41と、駐車位置設定部42と、障害物検知部43と、経路算出部44と、駐車操作部45と、を備える。
さらに駐車システム100は、自動駐車表示システム(以下、単に「表示システム」という)10を構成する進行方向表示部46と、俯瞰表示部47と、領域調整部48と、条件保持部49と、を備える。駐車システム100は、各種機能部41~49の機能を発揮することで自動又は半自動で車両200を所望の駐車位置36に駐車する。
駐車システム100のこれらの機能部41~48の機能は、所定のプログラムに従ってCPUが演算処理を行うことで実行される。また、条件保持部49は、RAM又はROMで構成される。
【0022】
駐車区画認識部41は、
図3に示されるように、ユーザである乗車者の操作により操作入力部21から駐車の指示があった場合に、車両200の駐車区画38を認識する。駐車区画認識部41は、例えば、周辺環境撮像部22で取得された周辺画像に基づいて、白線又は駐車中の自動車の車間距離に基づいて駐車区画38を認識する。
駐車位置設定部42は、駐車区画38に基づいて車両200の駐車位置36を設定する。
【0023】
障害物検知部43は、例えばソナーセンサ23を利用して、車両200の周辺の障害物29を検知する。
経路算出部44は、車両200を駐車位置36に駐車するまでの経路を算出する。車両200の進行方向Ωの切り返し箇所及び切り返し経路も経路に含める。また、経路算出部44は、自動運転の途中で障害物検知部43から障害物29の位置を新たに取得した場合、経路を修正する。
【0024】
駐車操作部45は、アクセル装置11、ステアリング装置13、ブレーキ装置12及びシフト装置14を操作して経路に従い運転して車両200を駐車位置36に駐車する。ただし、シフト装置14のシフトポジションを運転者が手動で操作する半自動駐車の場合、シフト装置14は駐車システム100による制御を受けないこともある。また、自動駐車中であっても、運転者はブレーキ装置12を発動して車両200を強制的に停止させることができる。
【0025】
表示システム10は、全体として進行方向画像31及び俯瞰画像32を適時にモニタ画面59上のそれぞれ割り当てられた表示領域51,52に表示する。表示システム10は、進行方向表示部46、俯瞰表示部47、領域調整部48及び条件保持部49で構成される。
【0026】
次に、表示システム10の各構成を説明する。
条件保持部49は、障害物近接条件及び区画近接条件を保持する。
障害物近接条件とは、自動駐車中すなわち駐車操作部45による駐車操作時に車両200と障害物29との距離が所定の第1距離以下になることである。第1距離は、例えばソナーセンサ23の検知範囲33である、車両200の中央から0.5~1.5m程度の範囲に設定される。第1距離は、車両200からの一律の距離ではなく、
図2(A),(B)に示されるような車両200の前端又は後端から扇形状を描く線と車両200の前端又は後端とを結ぶ距離である。
また、区画近接条件とは、自動駐車中に車両200と駐車位置36の駐車区画38との距離が所定の第2距離以下になることである。第2距離は例えば車両200の中央から約2mである。つまり、障害物近接条件及び区画近接条件は、いずれも、乗車者にとって自車付近の周辺環境をより詳しく確認したい状況を規定した条件である。
【0027】
進行方向表示部46は、
図3に示されるように、車両200の進行方向を撮影した進行方向画像31をモニタ24の進行表示領域52に表示する。
進行方向表示部46は、まず、複数台のカメラ25~28で同時に取得された車両前方又は車両後方のいずれかの複数の撮影画像を1枚の結合画像に結合する。そして、進行方向表示部46は、この結合画像に歪み補正、拡大縮小及び切り出しをして進行方向画像31としてモニタ24に表示する。進行方向表示部46は、車両200が前進している時には、前方カメラ25、左側方カメラ27及び右側方カメラ28で撮像した車両200の前方の周辺画像を進行方向画像31とする。また、進行方向表示部46は、車両200が後進している時には、後方カメラ26、左側方カメラ27及び右側方カメラ28で撮像した車両200の後方の周辺画像を進行方向画像31とする。
【0028】
進行方向画像31では、後述する俯瞰画像32と比較して進行方向にある表示物が拡大して表示されることになる。よって、進行方向画像31の表示は、進行方向にある障害物29や駐車位置36の位置を詳細に把握したいときに有効である。
また、モニタ画面59には、進行表示領域52の下側に進行方向画像31及び後述の俯瞰画像32のモニタ画面59上での表示態様を切り替える複数の切り替えボタン56がタッチパネルのアイコンとして表示される。また、切り替えボタン56で選択された表示を中止するための中止ボタン54もアイコンとして切り替えボタン56に並んで表示される。
【0029】
俯瞰表示部47は、
図3に示されるように、車両200を含む車両200の周辺環境を上空から俯瞰した俯瞰画像32をモニタ画面59上の俯瞰表示領域51に表示する。俯瞰表示領域51は、例えば、モニタ画面59上の進行方向領域52の右隣り又は左隣りである。つまり、進行方向画像31及び俯瞰画像32は左右に並べて表示される。ただし、進行方向画像31及び俯瞰画像32のモニタ画面59上での表示位置はこれに限定されない。
【0030】
俯瞰表示部47は、前方カメラ25、後方カメラ26、左側方カメラ27及び右側方カメラ28で同時に撮像された複数の画像から結合画像を合成する。さらに、俯瞰表示部47は、この結合画像に歪み補正、拡大縮小及び切り出しをする。そして、俯瞰表示部47は、この結合画像に基づいて、車両200の周囲の上空からみた車両200の周囲の領域を示す俯瞰画像32を生成する。俯瞰画像32の視野範囲は、例えば車両200の前端及び後端から視野範囲のそれぞれ前端辺及び後端辺までの長さが1.5~2車両分程度の長さとなる範囲である。車両200の乗車者は、このように表示される進行方向画像31及び俯瞰画像32によって、車両200の周囲の様子をほぼリアルタイムに把握することができる。
【0031】
領域調整部48は、進行表示領域52及び俯瞰表示領域51の大きさを調整して俯瞰優先モードと進行優先モードとを相互に切り替える。
俯瞰優先モードとは、俯瞰画像32を表示するために割り当てられた俯瞰表示領域51が進行方向画像31を表示するために割り当てられた進行表示領域52よりも広い配置態様をいう。この俯瞰優先モードには、モニタ画面59が俯瞰表示領域51のみで構成される配置態様が含まれる。
また、進行優先モードとは、反対に、進行表示領域52が俯瞰表示領域51よりも広い配置態様をいう。進行優先モードにも同様に、モニタ画面59が進行表示領域52のみで構成される配置態様が含まれる。
【0032】
ここで、
図4(A),(B)~
図6(A),(B)は、俯瞰優先モードから進行優先モードに切り替える切り替え前後のパターンを示す図である。
例えば、
図4(A)に示されるように、俯瞰優先モードでは、俯瞰表示領域51が大きく進行表示領域52が小さくされる。そして、領域調整部48による進行優先モードへの切り替え後では、
図4(B)に示されるように、俯瞰表示領域51が小さく進行表示領域52が大きくされる。このパターンでは、進行優先モードへの切り替え前後で双方の領域51,52が確保されているが、それぞれの大小関係が逆転している。よって、表示領域の切り替え前後で進行方向画像31と俯瞰画像32の双方を確認しながら周辺状況の確認することができる。進行方向画像31の表示により、車両200と障害物29又は駐車位置36との位置関係が分かりやすく恐怖感を拭うことができる。
【0033】
また、別のパターンでは、
図5(A)に示されるように、俯瞰優先モードでは、俯瞰表示領域51のみが確保される。そして、領域調整部48による進行優先モードへの切り替え後では、
図5(B)に示されるように、俯瞰表示領域51が縮小、進行表示領域52が俯瞰表示領域51以上の大きさで確保される。
【0034】
また、別のパターンでは、
図6(A)に示されるように、俯瞰優先モードでは、俯瞰表示領域51のみが確保される。そして、領域調整部48による進行優先モードへの切り替え後では、
図6(B)に示されるように、俯瞰表示領域51は消滅して、進行表示領域52のみが確保される。これら3つの切り替えパターンは、駐車システム100が適用される車種に応じていずれかが選択される。
【0035】
領域調整部48は、これらいずれかの切り替えパターンで、例えば障害物近接条件及び区画近接条件の少なくとも一方が満たされたときに俯瞰優先モードから進行優先モードに切り替える。なお、俯瞰画像32の表示視野は、俯瞰表示領域51のサイズ変更の前後で同一に維持されることが望ましい。俯瞰画像32は乗車者に広域な周辺環境を把握させるものであるためである。
【0036】
なお、進行優先モードに切り替える閾値を車両200の駐車区画38までの距離で規定した第2距離は、進行優先モードに切り替える閾値を車両200の障害物29までの距離で規定した第1距離より長く設定することが望ましい。一度車両200が駐車区画38に近づくと、それ以降の車両200の移動範囲は小さくなるため、俯瞰優先モードで表示する必要性が低下するためである。この結果、車両200が駐車区画38に接近すると、車両200と障害物29との距離が第2距離以下になる前に進行優先モードに切り替えられ、駐車位置36付近の障害物29も僅かに早期に確認することができる。
【0037】
ただし、第1距離及び第2距離の規定の仕方は自由であり、ソナーセンサ23の検出範囲内で、このような距離以外の距離として規定することもできる。
なお、乗車者が表示態様の切り替わりを予測できるように、進行方向画像31上には、切り返し線39が表示される。障害物29が切り返し線39に到達したときに車両200の進行方向Ωが切り返されて、俯瞰優先モードが進行優先モードに切り替わる。
【0038】
ところで、必要以上の頻度で進行優先モードに切り替えると、乗車者は煩わしさを感じる。そこで、進行優先モードへの切り替えのタイミングが早すぎないような処理をすることが望ましい。例えば、ある構造物がソナーセンサ23の検知範囲33に入った場合でも、その構造物が車両200の切り返しを発生させる障害物29ではないときには、進行優先モードにする必要性は低い。
【0039】
そこで、条件保持部49に、さらに障害物29が切り返しのための対象物であることを規定する切返対象条件を保持させることが望ましい。そして、領域調整部48は、障害物近接条件が満たされても、切返対象条件が満たされない場合には俯瞰優先モードを継続することが望ましい。切返対象条件を課すことで、乗車者が確認する必要性の高いときにのみ、俯瞰優先モードが進行優先モードに切り替えられる。ただし、切返対象条件を満たさない障害物29であっても、その障害物29が車両200からさらに短い第3距離以内にある場合には、進行優先モードに切り替えてもよい。
【0040】
<3.自動駐車表示方法>
次に、
図7のフローチャートを用いて、本発明の第1実施形態における自動駐車表示方法について説明する。なお、フローチャートには、理解を助けるため、自動駐車の表示動作に加えユーザの動作及び自動駐車動作も含めて示している。なお、以下では、少なくとも一度は進行方向Ωの切り返し(ステップS14)をする例で説明する。また、ステップS11は「S11」と略記する。他のステップにおいても同様に略記する。
【0041】
まず、運転者が自動駐車スイッチをONにして、駐車システム100の制御による自動駐車を開始する(S11)。
ところで、大型店舗の駐車場や公共の駐車場では、駐車場への進入時には既に障害物29としての多数の自動車が駐車されていることがある。また、フェンスや電柱が駐車場の入口付近にあり車両200に近接することもある。このように、自動駐車の開始時点で既に障害物近接条件を満たす障害物29が既に存在する場合がある。
【0042】
しかし、駐車場への進入時点では、車両200の駐車位置36までの距離が長いため、通常、侵入後の車両200の移動量が大きくなる。このような場合に障害物近接条件を満たすような障害物29があることを理由に俯瞰優先モードを進行優先モードにすると、乗車者は視野を狭められた状態で長距離を監視しなければならない。前述のように、周辺環境を乗車者が詳細に確認して把握することが必要のないタイミングで進行優先モードに切り替えると、乗車者は煩わしさを感じる。よって、進行優先モードが求められるまでは、俯瞰優先モードに維持される。
【0043】
このような方針に基づき、自動駐車の開始時には、障害物29の有無にかかわらず(S12においてYES又はNO)、モニタ画面59には、俯瞰優先モードで表示される(S13)。つまり、領域調整部48は、自動駐車の開始から最初の進行方向Ωの切り返しより前は、障害物近接条件が満たされた場合にも俯瞰優先モードを継続する(S12,S13,S14)。
そして、車両200が経路算出部44で算出された進行方向Ωの切り返しポイントに到達すると、駐車操作部45は、最初の進行方向Ωの切り返しをする(S14)。
このとき、領域調整部48は、切り返し時に周囲に障害物29がない場合、俯瞰優先モードを維持する(S15においてNOの場合S17へ進む)。
【0044】
また、初回の切り返し時に障害物29があっても、この障害物29が切返対象条件を満たさない場合、領域調整部48は、俯瞰優先モードを維持する(S15においてYES、かつS16においてNOの場合S17へ進む)。
一方、初回の切り返し時に切返対象条件を満たす障害物29がある場合、領域調整部48は、俯瞰優先モードから進行優先モードに切り替える(S15においてYES、かつS16においてYESの場合S23へ進む)。なお、表示態様の切り替え頻度を低減させる観点から、進行優先モードへの切り替え後は、自動駐車の終了時又は中断時まで俯瞰優先モードに戻さずに、進行優先モードを継続することが望ましい。車両200の自動駐車は事前に経路算出部44で算出した経路に沿って駐車操作部45で駐車する。よって、進行優先モードへの切り替え後の車両200の移動範囲は小さいと考えられるため、進行優先モードでも乗車者に与える不安感は極めて限定的と考えられる。
【0045】
その後、障害物29がない場合、俯瞰優先モードに維持される(S18においてNOの場合S21へ)。
また、障害物29があるとき、この障害物29が障害物近接条件を満たさないときは、俯瞰優先モードが継続される(S18においてYES、かつS19においてNOの場合S21へ進む)。
また、この障害物29が障害物近接条件を満たす場合でも切返対象条件を満たさない場合には、俯瞰優先モードに維持される(S18においてYES、かつS19においてYES、かつS20においてNOの場合S21へ進む)。
一方、この障害物29が障害物近接条件及び切返対象条件の両方を満たす場合には、俯瞰優先モードは進行優先モードに切り替えられる(S18においてYES、かつS19においてYES、かつS20においてYESの場合S23へ進む)。
【0046】
そして、車両200が駐車区画38に近づくと区画近接条件が自然に満たされる(S22)。よって、領域調整部48は、俯瞰優先モードを進行優先モードに切り替える(S22,S23)。つまり、直前の表示態様が俯瞰優先モードか進行優先モードかに関わらず、車両200が駐車区画38に近づくと俯瞰優先モードは進行優先モードとなる。
駐車位置36の付近では、障害物29の多くが駐車に関係のあるものとなる。よって、駐車位置36の付近で進行方向画像31の表示により周辺環境が拡大表示されると、駐車位置36の障害物29も少し早めに詳細に確認することができることになる。
【0047】
この進行優先モードは車両200が駐車位置36に停止後から所定の第1時間、例えば数秒から数分、が経過するまで継続される(S24においてNOの場合S23へ進む)。
停止直後から一定時間は、乗車者が車両200と近接する障害物29との距離を詳細に把握するための確認作業をすることが多いためである。そして、停止後から所定の第1時間が経過すると、進行優先モードは終了する(S24においてYESの場合S25へ進む,END)。進行優先モードを終了した後は、俯瞰優先モードに戻してもよいし、モニタ画面59をOFFにしてもよい。なお、進行優先モードの終了のタイミングは、第1時間経過時ではなく、シフトポジションがニュートラルに切り替えられてかつパーキングブレーキが入れられたタイミングであってもよい。
【0048】
以上のように、第1実施形態に係る表示システム10によれば、切り替え回数を低減させて適時に適切な表示態様で俯瞰画像32及び進行方向画像31を表示することできる。
【0049】
(第2実施形態)
第2実施形態では、
図8のフローチャートを用いて、進行優先モードによる表示後に自動駐車を中断した場合の動作手順について説明する。
図8は、第2実施形態における自動駐車表示方法を用いた動作のフローチャートである。
図8のサブルーチンS100は、
図7のフローチャートのステップS11の自動駐車スイッチの押下からステップS23の進行優先モードへの切り替えまでのサブルーチンである。つまり、第2実施形態では、第1実施形態においてステップS23の進行優先モードがなされた後に自動駐車が中断された場合の動作を説明する。
【0050】
自動駐車中には、障害物29の突発的な出現や、運転者がブレーキ装置12を踏むことで自動駐車が中断されることがある。また、駐車をやめて新たな目的地に進路を変更する場合にも自動駐車が中断される。第2実施形態では、このような自動駐車の中断がなされた際の、モニタ画面59の表示態様を説明する。
【0051】
自動駐車が中断されると(S31)、駐車操作部45はユーザから次の動作選択を受け付ける(S32)。次に選択可能な動作とは、例えば、自動駐車の再開、現在位置からの離脱である自動離脱、開始時の位置に復帰させる自動復帰、自動駐車のキャンセルなどがある。
駐車操作部45が中断開始から所定の第2時間経過しても次の動作選択がなされなかった場合、俯瞰表示部47は進行優先モードを終了して俯瞰優先モードで表示する(S32においてNO,S34へ,END)。
【0052】
乗車者が次の操作を選択する際、周辺環境を加味した適切な選択をする観点から、広範囲を表示できる俯瞰画像32を拡大して表示する俯瞰優先モードにすることが望ましい。俯瞰画像32は進行方向画像31と比較して車両200を含む全体像が把握しやすく、自動離脱位置や復帰位置などもより確認しやすいためである。また、第2時間経過しても次の動作が選択されない場合は、進行方向画像31には、自動離脱位置や復帰位置などが含まれておらず、乗車者が位置を把握できていない可能性もある。そこで、第2時間経過の後は表示態様を俯瞰優先モードに戻して乗車者に車両200を含む広域の周辺環境を把握させる。第2時間は、例えば数十秒から数分である。
【0053】
一方、障害物29の検知により自動駐車が中断された場合、乗車者は、多くの場合車両200と障害物29との位置関係を把握する動作をする。よって、進行優先モードが第2時間だけ維持されることで、乗車者は降車前に車両200と隣接する障害物29との詳細な位置関係を把握することができる。
【0054】
また、駐車操作部45が次の動作選択を受け付けた場合、俯瞰表示部47は進行優先モードを終了して俯瞰優先モードで表示する(S32においてYESの場合S34,END)。次の動作が選択された場合、通常、選択された動作に従って車両200は大きく移動するため、広い範囲で周辺環境を把握することができる俯瞰画像32が重要になるためである。
【0055】
なお、自動駐車に中断が発生した場合の動作以外、第2実施形態に係る表示システム10及び駐車システム100は第1実施形態と同様の動作を有する。よって、重複するステップには同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
以上のように、第2実施形態に係る表示システム10によれば、一旦進行優先モードにされた表示態様を適切なタイミングで俯瞰優先モードに戻すことができる。よって、乗車者は適切なタイミングで周辺環境を広範囲で把握することができる。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態では、
図9のフローチャートを用いて、後退入庫で自動駐車をする場合の動作手順について説明する。
図9は、第3実施形態における自動駐車表示方法を用いた動作のフローチャートである。
図9のサブルーチンS200は、
図7のフローチャートにおけるステップS18の障害物29の有無による分岐からステップS25の進行優先モードの終了までのサブルーチンである。
【0058】
第3実施形態では、まず、第1実施形態で説明した動作と同様に、運転者が自動駐車スイッチをONにする(S31)。
このとき、後退入庫で車両200を駐車することが選択される(S32)。後退入庫とする決定は、運転者の選択によってもよいし、駐車位置設定部42又は経路算出部44の決定によってもよい。そして、駐車操作部45による駐車操作が開始される。
後退入庫で駐車をする場合、後退入庫のための後進が開始されるまでは、障害物29の有無及び切り返しの有無にかかわらず、モニタ24の表示態様は俯瞰優先モードとなる(S33においてYES及びNO,S34においてYES及びNO,S35,S36においてNOの場合S33へ進む)。
乗車者にとって確認しづらいのは、後退入庫における後進中の車両後方の周辺環境である。よって、第3実施形態では、後退入庫に直接関係のない単なる進行方向の切り返しなどでは、障害物近接条件や切返対象条件が満たされても、俯瞰優先モードは継続される。よって、乗車者は、後退入庫のための後進が開始するまでは、大きいサイズで俯瞰画像32を確認して広視野で周辺環境を把握することができる。
【0059】
そして、車両200の後進が開始されると、サブルーチンS200に従って進行優先モードに切り替えられる(S36においてYESの場合S200へ進む)。
つまり、車両200の後進が開始された後から、障害物近接条件、切返対象条件または区画近接条件が満たされた場合に
図7のステップS18~ステップS25に従って適時に進行優先モードに切り替えられる(S200,END)。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0061】
例えば、実施形態では、障害物をソナーセンサで検知する例で説明したが、周辺環境撮像部が取得した画像からAI技術等を利用して障害物の位置を特定してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…自動駐車表示システム(表示システム)、11…アクセル装置、12…ブレーキ装置、13…ステアリング装置、14…シフト装置、15(16~20)…走行用各種センサ、16…車速センサ、17…加速度センサ、18…アクセル開度センサ、19…ブレーキセンサ、20…操舵角センサ、21…操作入力部、22…周辺環境撮像部、23(23a,23b,23c)…ソナーセンサ(前方ソナーセンサ,後方ソナーセンサ,側方ソナーセンサ)、24…モニタ、25…前方カメラ、26…後方カメラ、27…左側方カメラ、28…右側方カメラ、29…障害物、31…進行方向画像、32…俯瞰画像、33…検知範囲、33a…検知範囲、36…駐車位置、38…駐車区画、39…切り返し線、41…駐車区画認識部、42…駐車位置設定部、43…障害物検知部、44…経路算出部、45…駐車操作部、46…進行方向表示部、47…俯瞰表示部、48…領域調整部、49…条件保持部、51…俯瞰表示領域、52…進行表示領域、54…中止ボタン、56…切り替えボタン、59…モニタ画面、100…自動駐車システム(駐車システム)、200…車両、Ω…進行方向。