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特開2024-137627ポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体を主成分とする粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137627
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体を主成分とする粒子
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20240927BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240927BHJP
   C08F 8/48 20060101ALI20240927BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240927BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 201/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L23/06
C08F8/48
C08F210/02
C09D7/65
H01M50/417
H01M50/443 E
H01M50/443 C
H01M50/449
H01M50/403 D
H01M4/62 Z
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174912
(22)【出願日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2023047837
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 美月
(72)【発明者】
【氏名】今津 直樹
(72)【発明者】
【氏名】浅野 到
(72)【発明者】
【氏名】若原 葉子
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J100
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
4J002BB03X
4J002BB08W
4J002BB20W
4J002GQ00
4J002HA09
4J038BA021
4J038CB022
4J038CB062
4J038CB072
4J038EA011
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA07
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA13
4J038PA18
4J038PB09
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC06
4J038PC08
4J100AA02P
4J100AJ02Q
4J100AK32R
4J100CA04
4J100CA05
4J100CA31
4J100DA24
4J100DA42
4J100EA05
4J100HA42
4J100JA15
4J100JA43
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE04
5H021EE15
5H021EE20
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
5H050AA15
5H050BA17
5H050DA11
5H050DA19
5H050EA23
5H050EA28
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】小径で均一な粒径、かつ溶融粘度の大きいポリエチレン粒子を提供する。
【解決手段】ポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体を主成分とする粒子であり、(I)~(II)の特徴を有する粒子。
(I)粒子の数平均粒子径(D50)が0.5μm以上5.0μm以下である。
(II)粒子を構成するポリマーの190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.3g/10min以上2000g/10min以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体を主成分とする粒子であり、以下(I)~(II)の特徴を有する粒子。
(I)粒子の数平均粒子径(D50)が0.5μm以上5.0μm以下である。
(II)粒子を構成するポリマーの190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.3g/10min以上2000g/10min以下である。
【請求項2】
粒子を構成するポリマーがα,β-不飽和カルボン酸(A)由来の構造単位(X)および/またはα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)由来の構造単位(Y)を含み、その含有率の合計が、粒子を構成するポリマーの構造単位100質量%中、1質量%以上である、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
粒子を構成するポリマーがα,β-不飽和カルボン酸(A)由来の構造単位(X)および/またはα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)由来の構造単位(Y)を含み、その含有率の合計が、粒子を構成するポリマーの構造単位100質量%中、5質量%以上30質量%未満である、請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
融点が90℃以上130℃以下である、請求項1~3のいずれかに記載の粒子。
【請求項5】
粒子の10%粒子径(D10)が0.2μm以上2.5μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の粒子。
【請求項6】
粒子の数平均粒子径(D50)が0.5μm以上1.6μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の粒子。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかに記載の粒子、および溶媒を含む分散液。
【請求項8】
固形分濃度が0.1質量%超50質量%以下である、請求項7に記載の分散液。
【請求項9】
前記溶媒が水、またはアルコールのいずれか、またはそれらの混合物である、請求項7に記載の分散液。
【請求項10】
前記溶媒が水である請求項7に記載の分散液。
【請求項11】
塗材として使用される請求項7に記載の分散液。
【請求項12】
フィルムコーティング用の塗材として使用される請求項7に記載の分散液。
【請求項13】
請求項1~3のいずれかに記載の粒子を有するフィルム。
【請求項14】
請求項1~3のいずれかに記載の粒子を有するバッテリーセパレータフィルム。
【請求項15】
請求項1~3のいずれかに記載の粒子を有する電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体を主成分とする粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンを主成分とする粒子は、その熱特性や優れた耐水性および耐薬品性を活かして、コーティング剤や接着剤、樹脂添加剤等として使用されている。コーティング用途において、粒子は溶媒等と混合して分散液として使用されることが多く、金属や樹脂フィルムなど多種多様な基材に対する塗材として用いられている(例えば特許文献1および2を参照)。近年、二次電池の安全装置として、電池が異常発熱した際にセパレータフィルムの一部をセパレータフィルム全体が溶融する温度のより低温側で段階的に溶融させ、熱暴走が開始する温度領域に至る前にセパレータフィルムの孔を閉塞し電流を遮断するシャットダウン性の付与が検討されている。多孔質基材の表面にポリエチレンなどのポリオレフィンを主成分とする有機粒子をコーティングすることによりシャットダウン性を発現させる技術が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-059869号公報
【特許文献2】特開2004-051661号公報
【特許文献3】特開平9-219185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年バッテリーセパレータフィルムへの薄膜化要求が加速しており、バッテリーセパレータフィルムのコーティング層を薄膜化するために、塗材に含まれる粒子の小径化が求められている。しかしながら、一般に市販の上記粒径を満たすポリエチレン粒子分散液には微粒も含まれている。そのため、バッテリーセパレータフィルム等の多孔質フィルムへ塗工した際に表面開口部へ詰まりやすい懸念がある。また、従来の粒子では加熱溶融時に多孔質構造中へ浸透する傾向が強く、薄膜塗工時にはセパレータの孔を完全に閉塞できずにシャットダウン性能を発現できない懸念がある。したがって、本発明は、小径で均一な粒径、かつ溶融粘度の大きいポリエチレン粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の構成を有する。
(1)ポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体を主成分とする粒子であり、以下(I)~(II)の特徴を有する粒子。
(I)粒子の数平均粒子径(D50)が0.5μm以上5.0μm以下である。
(II)粒子を構成するポリマーの190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.3g/10min以上2000g/10min以下である。
(2)粒子を構成するポリマーがα,β-不飽和カルボン酸(A)由来の構造単位(X)および/またはα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)由来の構造単位(Y)を含み、その含有率の合計が、粒子を構成するポリマーの構造単位100質量%中、1質量%以上である、(1)に記載の粒子。
(3)粒子を構成するポリマーがα,β-不飽和カルボン酸(A)由来の構造単位(X)および/またはα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)由来の構造単位(Y)を含み、その含有率の合計が、粒子を構成するポリマーの構造単位100質量%中、5質量%以上30質量%未満である、(1)に記載の粒子。
(4)融点が90℃以上130℃以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の粒子。
(5)粒子の10%粒子径(D10)が0.2μm以上2.5μm以下である、(1)~(4)のいずれかに記載の粒子。
(6)粒子の数平均粒子径(D50)が0.5μm以上1.6μm以下である、(1)~(5)のいずれかに記載の粒子。
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の粒子、および溶媒を含む分散液。
(8)固形分濃度が1質量%超50質量%以下である、(7)に記載の分散液。
(9)前記溶媒が水、またはアルコールのいずれか、またはそれらの混合物である、(7)または(8)に記載の分散液。
(10)前記溶媒が水である、(7)~(9)のいずれかに記載の分散液。
(11)塗材として使用される、(7)~(10)のいずれかに記載の分散液。
(12)フィルムコーティング用の塗材として使用される、(7)~(11)のいずれかに記載の分散液。
(13)(1)~(6)のいずれかに記載の粒子を有するフィルム。
(14)(1)~(6)のいずれかに記載の粒子を有するバッテリーセパレータフィルム。
(15)(1)~(6)のいずれかに記載の粒子を有する電極。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粒子は、粒子の粒径が小さく均一であるため、各種基材上へのコーティングにより均一な薄膜を作製することが可能である。さらに、本発明の粒子をコーティングした多孔質フィルムを加熱すると、孔の無い均一な薄膜を多孔フィルム上に形成することが可能である。そのため、バッテリーセパレータフィルムへコーティングすることにより、シャットダウン性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0008】
(1)粒子の構成ポリマー
本発明の粒子は、ポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体を主成分とする。本明細書において主成分とは、当該材質を構成する成分のうち80質量%以上含有される成分を指す。
【0009】
本発明の粒子は、α,β-不飽和カルボン酸(A)由来の構造単位(X)および/またはα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)由来の構造単位(Y)を1質量%以上含むことが好ましい。
【0010】
構造単位(X)とは、α,β-不飽和カルボン酸(A)由来の構造単位であり、下記一般式(1)で表される。
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)中、R、R、Rは水素またはメチル基またはカルボキシル基であり、R、R、Rのいずれか一つがカルボキシル基である場合、残る二つはカルボキシル基ではない。aは重合度を表す。)
式(1)において、R、R、Rは水素またはメチル基またはカルボキシル基であり、R、R、Rのいずれか一つがカルボキシル基である場合、残る二つはカルボキシル基ではない。α,β-不飽和カルボン酸(A)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、シトラコン酸、などが挙げられる。
【0013】
構造単位(Y)とは、α,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)由来の構造単位であり、下記一般式(2)で表される。
【0014】
【化2】
【0015】
(式(2)中、R、Rは水素またはメチル基である。bは重合度を表す。)
式(2)において、R、Rは水素またはメチル基である。α,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
構造単位(X)と構造単位(Y)の含有率の合計の上限は好ましくは30質量%未満、より好ましくは25質量%未満、さらに好ましくは20質量%未満、いっそう好ましくは15質量%未満である。構造単位(X)と構造単位(Y)の含有率の合計の下限値は、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上、いっそう好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。上記が市販品として入手性に優れ使用しやすい。構造単位(X)と構造単位(Y)の合計量が上記上限値未満であることにより、電解液中で粒子が膨潤しにくいため、バッテリーセパレータフィルムへ塗布した粒子が電池の中でも剥がれにくい。構造単位(X)と構造単位(Y)の含有率の合計が上記下限値以上であることにより、粒子に極性基が付与され、無極性の多孔質フィルムであるバッテリーセパレータフィルムとの親和性が低くなり、粒子が溶融した際にバッテリーセパレータフィルムへ浸透しにくくなることから、粒子溶融時に基材の孔を閉塞しやすくなる。
【0016】
粒子を構成するポリマーの構造単位中のα,β-不飽和カルボン酸(A)由来の構造単位(X)やα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)由来の構造単位(Y)の含有率は、公知の方法を用いて測定することができる。例えばコートフィルムから測定する場合、まず水またはアルコールなどの有機溶媒を用いて、支持体からコート層を脱離させ、水およびアルコールなどの有機溶媒を十分に乾燥させてコート層を得る。得られたコート層に有機樹脂成分を溶解する有機溶媒を添加して有機樹脂成分のみを溶解する。続いて、有機樹脂成分が溶解した溶液から有機溶媒を乾燥させ、有機樹脂成分のみを抽出する。得られた有機樹脂成分を用いて、核磁気共鳴法(H-NMR、13C-NMR)、赤外吸収分光法(IR)、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(熱分解GC/MS)などにより、算出することができる。特に熱分解GC/MSによってα,β-不飽和カルボン酸(A)および/またはα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)の存在有無を確認した後、赤外吸収分光法(IR)によって、粒子を構成するポリマーの構造単位中のα,β-不飽和カルボン酸(A)および/またはα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)由来の構造単位の含有率を求めることができる。
【0017】
本発明の粒子を構成するポリマーの構造単位中のα,β-不飽和カルボン酸(A)由来の構造単位(X)とα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)由来の構造単位の含有率(Y)の合計を上記範囲内にするため、市販されている、エチレンとα,β-不飽和カルボン酸(A)および/またはα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)の共重合体を粒子の原料として使用することができる。
【0018】
市販されている、エチレンとα,β-不飽和カルボン酸(A)および/またはα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)の共重合体としては、例えば、ニュクレル(三井・ダウ ポリケミカル社製)、フサボンド(ダウ・ケミカル社製)、ボンダイン(アルケマ社製)、などが挙げられる。粒子の原料としてこれらの樹脂を単独で使用しても良く、他のポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体と混合して使用しても良い。
【0019】
本明細書におけるポリエチレンとは、エチレンのみを重合して得られる樹脂および、その樹脂を変性させたものである。例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。
【0020】
ポリエチレンとしては、従前公知の方法で製造されたものや市販品を使用することができる。
【0021】
具体的な市販されているポリエチレンとしては、例えば、エボリュー(三井化学社製)、エボリューH(三井化学社製)、ハイゼックスミリオン(三井化学社製)、リュブマー(三井化学社製)、サンワックス(三洋化成社製)、スミカセン(住友化学社製)、スミカセン-L(住友化学社製)、スミカセン-E(住友化学社製)、スミカセン-EP(住友化学社製)、エクセレン(住友化学社製)等が挙げられる。
【0022】
本明細書におけるポリエチレン共重合体とは、エチレンと他の単量体成分との共重合体であり、他の単量体成分としては、αオレフィン、不飽和カルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらから選ばれる2種類以上を組み合わせて重合することも可能である。本発明の粒子の構造単位(X)と構造単位(Y)の含有率の合計が上記範囲内である限り、いずれの単量体成分を含んでもよい。α-オレフィンとしては、エチレンと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ペンテン、1-ヘプテンなどが挙げられる。不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタアクリル酸2-エチルヘキシル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、などが挙げられる。
【0023】
ポリエチレン共重合体としては、市販品を使用することができる。具体的な市販されているポリエチレン共重合体としては、例えば、アドマー(三井化学社製)、ボンドファースト(住友化学社製)、アクリフト(住友化学社製)、ロタダー(アルケマ社製)、エバフレックス(三井・ダウ ポリケミカル社製)などが挙げられる。
【0024】
本発明において、粒子を構成するポリマーの190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートは、0.3g/10min以上2000g/10min以下である。メルトフローレートが0.3g/10min未満であると、粒子溶融時の流動性が不足し多孔質基材上に孔の無い薄層を形成することができない。メルトフローレートが2000g/10minを超えると、粒子溶融時に多孔質基材への浸透性が高く、基材の孔を完全に閉塞することができない。メルトフローレートの上限値は、好ましくは1000g/10min以下、より好ましくは500g/10min以下である。メルトフローレートの下限値は、好ましくは10g/10min以上、より好ましくは50g/10min以上、さらに好ましくは100g/10min以上、いっそう好ましくは200g/min以上である。メルトフローレートを上記範囲にすることにより、粒子の溶融時の流動性と多孔質基材への浸透性のバランスが良くなる。メルトフローレートは、粒子を構成するポリマーの分子量や構造を適宜調整することで制御できる。
【0025】
本発明において、粒子を構成するポリマーの融点の下限値は80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、95℃以上であることがさらに好ましい。上限値は、130℃以下であることが好ましく、125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましく、115℃以下であることがいっそう好ましい。ポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体の融点を上記範囲とすることにより、粒子を加熱した際に溶融し孔の無い薄層を形成する温度を制御しやすくなる。ここで融点とは、後述する示差走査熱量測定(DSC)の1st Runで溶融/急冷した後に測定される、2nd Run昇温過程において検出される融点ピークトップの温度を指す。
【0026】
粒子を構成するポリマーの重量平均分子量(Mw)の下限値は10,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましく、100,000以上であることがさらに好ましい。上限値は、1,000,000以下であることが好ましい。重量平均分子量を上記範囲とすることにより、粒子の溶融時の多孔質基材への浸透性を制御しやすくなる。
【0027】
(2)粒子の特性
本発明の粒子の形状は特に限定されないが、塗膜の平滑性の観点から真球状であることが好ましい。
【0028】
本発明の粒子の数平均粒子径(D50)は0.5μm以上5.0μm以下である。D50が5.0μmを超えると、粒子を多孔質基材上に5μm以下の薄膜に塗工することができない。D50が0.5μm未満であると、粒子が凝集しやすくなる。下限は好ましくは0.7μm以上、より好ましくは0.9μm以上であり、上限は好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2.0μm以下、さらに好ましくは、1.6μm以下、いっそう好ましくは1.4μm以下であり、特に好ましくは1.2μm以下であり、最も好ましくは1.0μm以下である。数平均粒子径を上記範囲内とすることにより、粒子をより薄く高密度に塗工できるようになり、バッテリーセパレーターのシャットダウン性が向上する。
【0029】
また、後述する測定方法により求められる粒径の個数分布における10%粒子径(D10)の下限値は、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.2μm以上である。D10の上限値は、好ましくは2.5μm以下であり、より好ましくは1.4μm以下であり、さらに好ましくは1.2μm以下であり、いっそう好ましくは1.0μm以下であり、特に好ましくは0.8μm以下である。D10が上記範囲内であることにより、本粒子を多孔質基材上へ塗工した際に開口部の詰まり発生を抑制できる。
【0030】
上記の範囲のD50およびD10を有する粒子は、例えば、溶融させた樹脂を溶媒中で乳化させる方法などで作製することができる。
(3)分散液
本発明の一態様として、前記粒子と溶媒を含む分散液を挙げることができる。
【0031】
本明細書における溶媒は、ポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体を主成分とする粒子の分散媒として成り立てばよく、粒子を構成するポリマーが溶解せず、膨潤しにくい溶媒であればよい。例えば、水、アルコール、ケトン、DMSO、DMFなどが挙げられ、中でも、水、および/またはアルコール類を用いると、分散液中の粒子が膨潤せず粒子同士の接着を防止できることから好ましい。さらに、溶媒が水単独である場合、この分散液を塗材として使用する場合に有機溶剤の揮発が無いことから環境への負荷が小さくなるため、最も好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタパノールなどが挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールは大気圧下での沸点が100℃以下のため、本発明の分散液を塗材として使用する場合に乾燥時間が短くなることから好ましい。溶媒は単独の溶媒であっても混合溶媒であってもよく、2種類以上の溶媒を混合して用いる場合、その混合比率に制限はないが、水の割合が高いほど好ましい。
【0032】
本発明の粒子を含む分散液の溶媒が水である場合、分散液のpHの下限値は、好ましくは5.0以上、より好ましくは6.0以上、さらに好ましくは7.0以上である。上限値は好ましくは10.0以下、より好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.0以下である。分散液のpHが上記範囲内であることにより、分散安定性を改善できるほか、分散液を塗工する際に使用する設備の腐食を防ぐことができる。分散液のpH調整に用いる化合物は特に問わないが、分散液の塗工時に揮発除去できることから、アンモニア水や、沸点が100℃以下の有機アミン化合物が好ましい。
【0033】
本発明の粒子を含む分散液には、上記の粒子および溶媒以外にも、本発明の課題を解決するのに支障のない範囲であれば、界面活性剤や無機粒子などの他の成分を含んでいてもよい。特に、この分散液をバッテリーセパレータフィルムの塗材として使用した際に、電池のイオン透過性に影響を及ぼさない範囲であることが好ましい。
【0034】
本発明の粒子を含む分散液の固形分濃度の下限は、好ましくは0.1質量%超、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、いっそう好ましくは10質量%以上である。固形分濃度が前記下限値以上であることにより、分散液を塗工する際の乾燥時間が短縮できる。固形分濃度の上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。固形分濃度が前記上限値以下であることにより、分散液中の粒子の融着を抑制できる。
【0035】
固形分濃度は、JIS K5601-1-2:2008に従い、分散液1.0gを140℃で加熱した残分から算出する。
【0036】
<粒子の製造>
本発明の粒子の製造方法は特に問わないが、例えば、乳化重合法、晶析、溶融させた樹脂を溶媒中で乳化させる方法、などが挙げられる。
【0037】
溶融させた樹脂を溶媒中で乳化させる方法としては、例えば、原料樹脂と界面活性剤と水とを耐圧容器に入れ、原料樹脂の融点以上に加熱撹拌し乳化させたのち、原料樹脂の結晶化温度以下に冷却して粒子を固化させる方法などが挙げられる。
【0038】
上記の方法などにより分散液状態で粒子を得た場合、濾過、遠心分離、加熱濃縮などの公知の固液分離方法によりポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体粒子のウェットケークを得た後、乾燥させることで粒子粉末を得ることができる。
【0039】
また、上記の方法で得たウェットケークを再分散工程へ供することもできる。固液分離と分散工程の繰り返しにより、分散液の溶媒を任意の溶媒へ置換することができる。
【0040】
<粒子の用途>
本発明の粒子を含む分散液は、塗材として好適に用いられる。木材、金属、セラミック、炭素材料、ガラス、プラスチック等の基材に塗布し塗膜を形成することにより、表面特性を改質することができる。例えば、防錆、防水、耐溶剤性、を付与でき、フィルムの塗材として特に好適に用いられる。また、本発明の粒子を含む分散液は、薄膜塗工可能であり、加熱時の造膜性と基材層への浸透抑制のバランスに優れることから、バッテリーセパレータフィルムへ塗工してシャットダウン性能を向上させることができる。
【0041】
本発明の一態様として、本発明の粒子を含む分散液を多孔質基材に塗工して塗工層を設けたフィルムを挙げることができる。かかるフィルムにおいては、塗工層の厚みが薄くとも良好な透気度を有するためバッテリーセパレータフィルムとして好適に用いることができる。かかるフィルムにおいて塗工層の厚みは5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。また、かかるフィルムは、後述する測定方法により求められる25℃における透気度(G25)が、200分/100mL以下であり、かつ120℃で熱処理した後の透気度(G120)が5万分/100mL以上であると、シャットダウン性に優れるため好ましい。より好ましくは、G25は、150分/100mL以下であることがより好ましく、135分/100mL以下であることがさらに好ましい。またG120は、8万分/100mL以上であることがより好ましく、9万分/100mL以上であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の粒子は、バッテリーセパレータフィルム以外の電池材料にも好ましく使用することができる。具体的には、電極のバインダー樹脂として好適に用いることができる。ここで、電極とは、一例としてはリチウムイオン2次電池の正極または負極である。すなわち、本発明の電極は、バインダー樹脂を含む材料が集電体上に積層された電極であって、該バインダー樹脂に本発明の粒子を有する電極である。
【実施例0043】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらの例のみに本発明が限定されるものではない。先ず、測定方法について説明する。
【0044】
(1)数平均粒子径(D50)
走査型電子顕微鏡(FE-SEM、日本電子株式会社製JSM-6301NF)を用いて粒子を観察し、100個の粒子についてその直径(粒子径)を測長した算術平均値を50%粒子径(D50)として求めた。具体的には、粒子径のバラつきを反映した正確な数平均粒子径を求めるために、1枚の画像に2個以上100個未満の微粒子が写るような倍率で観察し、粒子径を測長した。続いて、100個の微粒子の粒子径につき、その算術平均を求めることで数平均粒子径を算出した。そのようなFE-SEMの倍率としては、粒子の粒子径が0.1μm未満の場合は30,000倍、0.1μm以上1μm未満の場合は10,000倍、1μm以上3μm未満の場合は5,000倍、3μm以上5μm未満の場合は3,000倍以上、5μm以上10μm未満の場合は1,000倍以上、10μm以上50μm未満の場合は500倍以上、50μm以上100μm未満の場合は250倍以上、100μm以上200μm以下の場合は100倍以上とした。なお、画像上で粒子が真円状でない場合(例えば楕円状のような場合)は、その最長径を粒子径として測定した。
【0045】
(2)10%粒子径(D10)
走査型電子顕微鏡(FE-SEM、日本電子株式会社製JSM-6301NF)を用いて粒子を観察し、100個の粒子についてその直径(粒子径)を測長した頻度の累積が10%となる粒子径を10%粒子径(D10)として求めた。具体的には、粒子径のバラつきを反映した正確な数平均粒子径を求めるために、1枚の画像に2個以上100個未満の粒子が写るような倍率で観察し、粒子径を測長した。続いて、100個の微粒子の粒子径につき、その直径(粒子径)を測長した頻度の累積が10%となる粒子径をD10として求めた。なお、画像上で粒子が真円状でない場合(例えば楕円状のような場合)は、その最長径を粒子径として測定した。
【0046】
(3)メルトフローレート(MFR)
メルトインデクサ(東洋精機社製F-B01)を用いて、測定温度190℃、2160g荷重とし、JIS K7210-2014に準ずる方法で粒子を構成するポリマーのMFRを測定した。MFRが2000g/10minを超える場合は正確な測定が困難なため、測定不可とした。
【0047】
(4)粒子の融点
粒子を7mg秤量し、JIS K7121-1987に記載の手法に従って示差走査熱量計で測定した。室温から150℃まで昇温速度10℃/分で昇温し(1st Run)、150℃から室温まで降温速度10℃/分で降温したのち、室温から150℃まで昇温速度10℃/分で昇温した(2nd Run)。2nd Runの昇温測定で得られたDSCチャートから融解の吸熱ピークのピークトップ温度(℃)を融点として読み取った。
【0048】
(5)粒子を含む分散液の固形分濃度
JIS K5601-1-2:2008に従い、粒子分散液1.0gを140℃で加熱した残分を測定し、粒子の濃度を算出した。
【0049】
(6)多孔質基材への塗工
ポリエチレンおよび/またはポリエチレン共重合体を主成分とする粒子を15質量部、カルボキシメチルセルロース(ダイセルミライズ(株)製、高分子量タイプ)を0.2質量部、2-プロパノールを0.9質量部含む水分散液を調製し、塗液とした。この塗液を4時間攪拌した後にバーコーターを用いてオレフィン多孔膜 ”SETELA”(登録商標)(東レ社製、融点:135℃、厚み:9μm、透気抵抗:60s/100ml)に塗布し、50℃で1分間乾燥させて、表1に記載の塗工厚みを有する塗工層を積層した多孔性フィルムを得た。
【0050】
(7)多孔性フィルムの塗工層厚み
マイクロメーター(ミツトヨ社製)で測定した塗工後の厚みから基材厚みを引いて算出した値を、そのサンプルの塗工層厚みとした。塗工厚みは薄いほど好ましく、以下の4つの基準(SS:3μm以下、S:3μm超5μm以下、A:5μm超10μm以下、B:10μm超)で判定した。
【0051】
(8)熱処理
外寸140mm×140mm、内寸100mm×100mm、厚み2mmのSUS製の金枠を準備した。この金枠の4辺すべてに日東電工社製の両面テープ(No.501F)を添付し、多孔性フィルムを金枠にたるみなく貼り付けた。この金枠に貼り付けた試料を熱風オーブンにて120℃に昇温完了した後10分加熱し、取り出したのち冷却して金枠の内寸に沿って熱処理後の多孔性フィルムを切り出してサンプルとした。
【0052】
(9)多孔性フィルムの透気度
未処理の多孔性フィルムの任意の箇所で100mm×100mmサイズの試料を切り出し25℃の環境下でn=5で透気度(分/100mL)を評価しG25とした。また、(8)の120℃で熱処理したサンプルについてもn=5で同様に評価を行い、G120を求めた。G25は小さいほど好ましく、以下の4つの基準(SS:135分/100mL以下、S:135分/100mL超150分/100mL以下、A:150分/100mL超200分/100mL以下、B:200分/100mL超)で判定した。また、G120は大きいほど好ましく、以下の4つの基準(SS:9万分/100mL以上、S:8万分/100mL以上9万分/100mL未満、A:5万分/100mL以上8万分/100mL未満、B:5万分/100mL未満)で判定した。
【0053】
(10)粒子を構成するポリマーの構造単位中のα,β-不飽和カルボン酸(A)由来の構造単位(X)やα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)由来の構造単位(Y)の含有率
粒子粉末を、前処理用アクセサリ(ダイヤモンドEXプレス(2.0mmΦ))を用いて加工し測定試料とした。赤外顕微鏡システム(パーキンエルマージャパン社製 SpectrumSpotlight200)を用いて、透過法でIR測定を行った。1770~1610cm-1のピーク/1530~1420cm-1のピークの面積比を下記式で換算し、α,β-不飽和カルボン酸(A)由来の構造単位(X)とα,β-不飽和ジカルボン酸の無水物(B)由来の構造単位(Y)の含有率の合計を求めた。
【0054】
((X)と(Y)の含有率の合計)=11.19×(面積比)―4.55
(実施例1)
エチレン-メタクリル酸共重合体(三井・ダウ ポリケミカル社製、MFR:100g/10mL、融点:95℃、メタクリル酸含有率11%)90.0g、ノニオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(ADEKA社製、融点:56℃、エチレンオキシド比率80質量%)27.0g、イオン性界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム4.5g、水328.5gを耐圧容器に入れ、160℃で30分間攪拌した。その後、室温まで放冷した。得られた粒子のD50は1.4μm、D10は0.8μmであった。また、得られた分散液を用いて上記(6)の方法で多孔質基材へ塗工し、上記(7)~(9)の評価を行った結果は表1に示す通りであった。なお、表1における各成分の略称は、それぞれ以下の意味である。
・LDPE:低密度ポリエチレン
・PE-WAX:ポリエチレンワックス
・E-MAA:エチレン-メタクリル酸共重合体
(実施例2)
粒子の原料をエチレン-メタクリル酸共重合体(三井・ダウ ポリケミカル社製、MFR:500g/10mL、融点:95℃、メタクリル酸含有率10%)90.0gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして粒子分散液を得た。得られた粒子のD50は0.9μm、D10は0.6μmであった。得られた分散液を用いて、上記(6)の方法で多孔質基材へ塗工し、上記(7)~(9)の評価を行った結果は表1に示す通りであった。
【0055】
(実施例3)
ノニオン性界面活性剤をポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(三洋化成社製、融点62℃、エチレンオキシド比率80質量%)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして粒子分散液を得た。得られた粒子のD50は0.7μm、D10は0.5μmであった。得られた分散液を用いて、上記(6)の方法で多孔質基材へ塗工し、上記(7)~(9)の評価を行った結果は表1に示す通りであった。
【0056】
(実施例4)
粒子の原料を、エチレン-メタクリル酸共重合体(三井・ダウ ポリケミカル社製、MFR:100g/10mL、融点:95℃、メタクリル酸含有率11%)とエチレン-メタクリル酸共重合体(三井・ダウ ポリケミカル社製、MFR:500g/10mL、融点:95℃、メタクリル酸含有率10%)の1対1(質量比)混合物に変更したこと以外は、実施例1と同様にして粒子分散液を得た。得られた粒子のD50は1.2μm、D10は0.7μmであった。得られた分散液を用いて、上記(6)の方法で多孔質基材へ塗工し、上記(7)~(9)の評価を行った結果は表1に示す通りであった。
【0057】
(実施例5)
粒子の原料を、エチレン-メタクリル酸共重合体(三井・ダウ ポリケミカル社製、MFR:60g/10mL、融点:90℃、メタクリル酸含有率15%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして粒子分散液を得た。得られた粒子のD50は1.3μm、D10は0.7μmであった。得られた分散液を用いて、上記(6)の方法で多孔質基材へ塗工し、上記(7)~(9)の評価を行った結果は表1に示す通りであった。
【0058】
(実施例6)
粒子の原料を、エチレン-メタクリル酸共重合体(三井・ダウ ポリケミカル社製、MFR:100g/10mL、融点:95℃、メタクリル酸含有率11%)と低密度ポリエチレン(住友化学社製、MFR:200g/10mL、融点:104℃、酸含有率0%)の3対1(質量比)混合物に変更したこと以外は、実施例1と同様にして粒子分散液を得た。得られた粒子のD50は1.8μm、D10は1.1μmであった。得られた分散液を用いて、上記(6)の方法で多孔質基材へ塗工し、上記(7)~(9)の評価を行った結果は表1に示す通りであった。
【0059】
(実施例7)
粒子の原料を、エチレン-メタクリル酸共重合体(三井・ダウ ポリケミカル社製、MFR:100g/10mL、融点:95℃、メタクリル酸含有率11%)と低密度ポリエチレン(住友化学社製、MFR:200g/10mL、融点:104℃、酸含有率0%)の55対45(質量比)混合物に変更したこと以外は、実施例1と同様にして粒子分散液粒子のD50は2.2μm、D10は1.3μmであった。得られた分散液を用いて、上記(6)の方法で多孔質基材へ塗工し、上記(7)~(9)の評価を行った結果は表1に示す通りであった。
【0060】
(比較例1~2)
ポリエチレンワックス粒子の分散液(三井化学社製、固形分濃度:40質量%、D50:0.2μm、融点:87℃および107℃)を用いて、上記(6)の方法で多孔質基材へ塗工し、上記(7)~(9)の評価を行った結果は表1に示す通りであった。粒子を構成するポリマーのMFRが大きい場合、薄膜塗工では多孔質基材の孔を完全に閉塞できないことが分かる。
【0061】
(比較例3~4)
低密度ポリエチレン粒子(住友精化社製、D50:6.6μm、融点:107℃)を用いて、上記(6)の方法で多孔質基材へ塗工し、上記(7)~(9)の評価を行った結果は表1に示す通りであった。なお、粒子のD50が5μm超で大きいため、5μm以下の薄膜に塗工することはできなかった。さらに、10μmに塗工しても基材の孔を完全に閉塞できないことが分かる。
【0062】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の粒子は、各種基材上へのコーティングにより均一な薄膜を作製することが可能である。さらに、本発明の粒子をコーティングした多孔質フィルムを加熱すると、孔の無い均一な薄膜を多孔フィルム上に形成することが可能である。そのため、特にリチウムイオン電池に用いられるバッテリーセパレータフィルムの表面にシャットダウン層を形成するための塗材として適用することで、電池の高安全化への貢献が期待できる。