(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013763
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】下水汚泥の焼却方法
(51)【国際特許分類】
F23G 7/00 20060101AFI20240125BHJP
F23G 5/02 20060101ALI20240125BHJP
C02F 11/06 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F23G7/00 104A
F23G5/02 Z ZAB
C02F11/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116106
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 聡
【テーマコード(参考)】
3K065
3K161
4D059
【Fターム(参考)】
3K065CA04
3K161AA22
3K161BA01
3K161BA08
3K161CA01
3K161EA32
3K161JA15
4D059AA03
4D059BB01
4D059BB06
4D059DA16
4D059DA51
4D059DA54
4D059DA70
4D059EB11
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】下水汚泥の焼却炉において煙道が焼却灰により閉塞することを抑制し、下水汚泥を適切に焼却処理することを可能とした下水汚泥の焼却方法を提供する。
【解決手段】下水汚泥に少なくともアルミニウムとケイ素との何れか一方又は両方を含む添加剤を添加する工程と、添加剤が添加された下水汚泥を焼却炉1内で焼却する工程とを含む下水汚泥の焼却方法。添加剤は、ポリ塩化アルミニウム、ケイ砂、カオリン、浄水発生土の中から選ばれる少なくとも1種以上を含む。また、下水汚泥に添加剤を添加することにより、指標値が1.0以上、ゼーゲル値が添加前よりも高くなるように調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥に少なくともアルミニウムとケイ素との何れか一方又は両方を含む添加剤を添加する工程と、
前記添加剤が添加された前記下水汚泥を焼却炉内で焼却する工程とを含む下水汚泥の焼却方法。
【請求項2】
前記添加剤は、ポリ塩化アルミニウム、ケイ砂、カオリン、浄水発生土の中から選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の下水汚泥の焼却方法。
【請求項3】
前記下水汚泥に前記添加剤を添加することにより、下記式(1)に示す指標値が1.0以上となるように調整することを特徴とする請求項1に記載の下水汚泥の焼却方法。
【数1】
【請求項4】
前記下水汚泥に前記添加剤を添加することにより、下記式(2)に示すゼーゲル値が添加前よりも高くなるように調整することを特徴とする請求項1に記載の下水汚泥の焼却方法。
【数2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥の焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下水汚泥の焼却処理において、焼却炉と空気予熱器との間の煙道が焼却灰により閉塞してしまう事案が発生している。また、水処理の高度処理化により下水汚泥中のリン含有率が上昇し、焼却灰が低融点化することによって、煙道が閉塞してしまう可能性が更に高まっている(下記非特許文献1を参照。)。
【0003】
焼却灰の溶融メカニズムについては、様々な調査がなされているが、焼却灰の組成による影響が大きいと考えられている。また、合流式下水道において降雨後は晴天時よりも焼却灰の指標値及び融点が上昇することが分かっている(下記非特許文献2を参照。)。これは降雨に伴い、汚泥中の無機分が増加するためと考えられる。さらに、流入した土砂由来の高融点物質であるアルミニウム(Al)やケイ素(Si)、鉄(Fe)等を多く含有することに起因すると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「下水汚泥焼却炉の閉塞危険性評価方法及び閉塞防止方法」、下水道協会誌 Vol.53 No.647 2016/09
【非特許文献2】「示差熱分析及び成分分析から見た焼却炉施設の閉塞についての一考察」、N-10-4-2 第57回下水道研究発表会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、下水汚泥の焼却処理において煙道が焼却灰により閉塞することを抑制した下水汚泥の焼却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 下水汚泥に少なくともアルミニウムとケイ素との何れか一方又は両方を含む添加剤を添加する工程と、
前記添加剤が添加された前記下水汚泥を焼却炉内で焼却する工程とを含む下水汚泥の焼却方法。
〔2〕 前記添加剤は、ポリ塩化アルミニウム、ケイ砂、カオリン、浄水発生土の中から選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする前記〔1〕に記載の下水汚泥の焼却方法。
〔3〕 前記下水汚泥に前記添加剤を添加することにより、下記式(1)に示す指標値が1.0以上となるように調整することを特徴とする前記〔1〕に記載の下水汚泥の焼却方法。
【数1】
〔4〕 前記下水汚泥に前記添加剤を添加することにより、下記式(2)に示すゼーゲル値が添加前よりも高くなるように調整することを特徴とする前記〔1〕に記載の下水汚泥の焼却方法。
【数2】
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、下水汚泥の焼却処理において煙道が焼却灰により閉塞することを抑制した下水汚泥の焼却方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る下水汚泥の焼却システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】煙道の閉塞が無かった焼却炉の焼却灰と、煙道が閉塞に至った焼却炉の焼却灰との指標値とゼーゲル値との関係をグラフである。
【
図3】(A)煙道の閉塞が無かった焼却炉の焼却灰の顕微鏡写真(1000倍)、(B)煙道が閉塞に至った焼却炉の焼却灰の顕微鏡写真(1000倍)である。
【
図6】試料1~3のAlの添加による面積収縮率と圧壊強度との測定結果を示すグラフである。
【
図7】試料1~3のSiの添加による面積収縮率と圧壊強度との測定結果を示すグラフである。
【
図8】試料1~3のカオリンの添加による面積収縮率と圧壊強度との測定結果を示すグラフである。
【
図9】試料1~3の浄水発生土の添加による面積収縮率と圧壊強度との測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(下水汚泥の焼却システム)
先ず、本発明の一実施形態として、例えば
図1に示す下水汚泥の焼却システム100について説明する。
なお、
図1は、焼却システム100の構成を示すブロック図である。
【0010】
本実施形態の焼却システム100は、
図1に示すように、焼却炉1と、空気予熱器2と、熱交換器3と、集塵装置4と、排煙処理塔5とを備えている。
【0011】
焼却炉1は、脱水した下水汚泥(脱水ケーキ)と燃料と空気とを炉内に供給し、炉内で下水汚泥を燃焼(加熱)させながら焼却するためのものである。焼却炉1は、煙道6を介して空気予熱器2と接続されている。
【0012】
空気予熱器2は、煙道6を通して焼却炉1から排出された燃焼排ガス(煤煙)との熱交換により、焼却炉1に供給される空気を予熱するためのものである。空気予熱器2で予熱された空気は、ブロワ7により圧送されながら、焼却炉1へと供給される。空気予熱器2は、煙道8を介して熱交換器3と接続されている。
【0013】
熱交換器3は、白煙防止のため、煙道8を通して排出される燃焼排ガスと、ブロワ9を介して供給される空気との熱交換により、燃焼排ガスを加温及び希釈し、燃焼排ガス中の水蒸気を希釈して大気に放出される燃焼排ガスの白煙を防止するためのものである。熱交換器3は、煙道15を介して排煙処理塔5の出口と接続されている。
【0014】
集塵装置4は、煙道10を通して排出される燃焼排ガス中に含まれる煤塵等を捕集して除去するためのものである。集塵装置4は、煙道11を介して排煙処理塔5と接続されている。煤塵等が除去された燃焼排ガスは、煙道11に設けられたブロワ12により排煙処理塔5へと圧送される。
【0015】
排煙処理塔5は、ポンプ13により塔内で循環水を循環させながら、燃焼排ガス中に含まれる酸性ガス類の除去等を行ってから、燃焼排ガスを大気中に放出するためのものである。また、排煙処理塔5では、ポンプ14により塔内に苛性ソーダ(NaOH)を供給することで、循環水の中和を行っている。循環水は、排煙処理塔5の上部から濾過水を供給し、排煙処理塔5の下部から廃液として排出される。
【0016】
(下水汚泥の焼却方法)
次に、上記焼却システム100を用いた下水汚泥の焼却方法について説明する。
本発明を適用した下水汚泥の焼却方法は、下水汚泥に少なくともアルミニウム(Al)とケイ素(Si)との何れか一方又は両方を含む添加剤を添加する工程と、添加剤が添加された下水汚泥を焼却炉1内で焼却する工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
添加剤としては、少なくともAlとSiとの何れか一方又は両方を含むものであればよく、その中でも、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ケイ砂、カオリン、浄水発生土の中から選ばれる少なくとも1種以上を好適に用いることが可能である。
【0018】
下水汚泥に添加剤を添加する工程では、下水汚泥に添加剤を添加することにより、下記式(1)に示す閉塞抑制指標値(以下、「指標値」という。)が1.0以上となるように調整することが好ましい。
【0019】
【0020】
上記式(1)中において、Fe2O3[%]は焼却灰の酸化鉄(III)分析値、Al2O3[%]は焼却灰の酸化アルミニウム分析値、CaO[%]は焼却灰の酸化カルシウム分析値、MgO[%]は焼却灰の酸化マグネシウム分析値、P2O5[%]は焼却灰の五酸化二リン分析値、M(i)[g/mol]は化合物iの分子量を表す。
【0021】
上記式(1)で表される指標値は、煙道6の焼却灰による閉塞の可能性を判断する指標であり、この指標値が1.0以上であると、「閉塞の危険性あり」と判断される。
【0022】
なお、本実施形態では、脱水ケーキを600℃で加熱し灰化して有機分を除去した試料から各成分の分析値を算出した。また、本実施形態では、蛍光X線装置(XRF)にて試料の組成を分析(酸化物換算で計測)した後、上記式(1)に代入することによって、指標値を算出した。
【0023】
また、下水汚泥に添加剤を添加する工程では、下水汚泥に添加剤を添加することにより、下記式(2)に示すゼーゲル値が添加前よりも高くなるように調整することが好ましい。
【0024】
【0025】
上記式(2)中において、RO,R2Oは塩基性酸化物(酸化カルシウム(CaO)、酸化カリウム(K2O)、酸化ナトリウム(Na2O)等)、a,b,x,yは各物質のモル比を表す。a+b=1となるように式全体を除する。x+y(中性酸化物と酸性酸化物とのモル比の和)を「ゼーゲル値」とする。
【0026】
上記式(2)で表されるゼーゲル値は、窯業の世界で一般的に使用されているゼーゲル式を用いて算出される値であり、高融点のアルミナ(酸化アルニウム(Al2O3):中性酸化物)やケイ素(二酸化ケイ素(SiO2):酸性酸化物)を融解させるために添加する木灰や石灰(塩基性酸化物)の量の指標となっている。また、このx+yの値(ゼーゲル値)が大きいほど溶けにくいとされる。
【0027】
本実施形態では、蛍光X線装置(XRF)にて試料の組成を分析(酸化物換算で計測)した後、塩基性酸化物、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素の分析値(%)を分子量で除して、それぞれの物質のモル比を算出する。さらに、a+bが1となるように、塩基性酸化物の合計モル比で全物質のモル比を除することによって、x+yの値(ゼーゲル値)を算出した。
【0028】
本実施形態の下水汚泥の焼却方法では、上述した添加剤を下水汚泥に添加することで、この添加剤が添加された下水汚泥を焼却炉1で焼却した際の焼却灰の溶融が抑制される。これにより、煙道6が焼却灰により閉塞することを抑制することが可能である。
【実施例0029】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0030】
(1.指標値とゼーゲル値との関係について)
本実施例では、先ず、煙道の閉塞が無かった焼却炉の焼却灰と、煙道が閉塞に至った焼却炉の焼却灰とをそれぞれ分析し、上記式(1)に示す指標値と上記式(2)に示すゼーゲル値とを算出した。そして、これら指標値とゼーゲル値との関係を
図2のグラフに示す。
【0031】
図2に示すように、煙道が閉塞に至った焼却炉の焼却灰は、煙道の閉塞が無かった焼却炉の焼却灰に比べて、指標値及びゼーゲル値が比較的低い領域に多く存在していることが分かる。
【0032】
以上のことから、Al及びSiが焼却灰の融点の上昇等に大きく関わっており、両物質の添加による煙道閉塞の抑制効果が期待できる。
【0033】
そこで、本実施例では、Al及びSiの両物質の下水汚泥への添加、並びに加熱実験を行うと共に、両物質を含有する物質の選定とその抑制効果について検証した。
【0034】
(2.実験概要)
本実験では、煙道の閉塞が無かった焼却炉の焼却灰と、煙道が閉塞に至った焼却炉の焼却灰とを電子顕微鏡で観察した。その顕微鏡写真を
図3(A),(B)に示す。なお、
図3(A)は、煙道の閉塞が無かった焼却炉の焼却灰の顕微鏡写真(1000倍)であり、
図3(B)は、煙道が閉塞に至った焼却炉の焼却灰の顕微鏡写真(1000倍)である。
【0035】
図3(A)に示す煙道の閉塞が無かった焼却炉の焼却灰では、微細な粒子が確認できるのに対して、
図3(B)に示す煙道が閉塞に至った焼却炉の焼却灰では、部分的に溶解・焼結していることが分かる。
【0036】
このとき、溶解した閉塞物は、下記表1に示すように、強度が増し、収縮が起こることがこれまでの実験から分かっている。一方、焼却炉内の閉塞物の脆弱化(見かけ比重と強度の低下)が剥離性の改善に繋ったという報告もある(非特許文献3:「石炭ボイラのクリンカ脆弱化薬剤の検討」、中部電力(株)技術開発ニュース、2014年3月(150号)を参照。)。
【0037】
【0038】
そこで、本実験では、煙道閉塞の抑制効果の指標として、試料の収縮及び硬化の低減という観点から、
図4に示す加熱による収縮の割合(面積収縮率)と、
図5に示す加熱後の試料の圧壊強度との算出を以下のとおり実施した。また、本実験では、試料の収縮及び硬化の低減効果を「抑制効果」とする。
【0039】
本実験では、以下の3段階に分けて実験を実施した。
(1)Al,Siの添加による抑制効果の確認。
(2)Al,Siを高含有率で含む物質の選定。
(3)選定した物質の抑制効果の確認。
【0040】
また、各試料に対する添加剤及び加熱の実験条件については、以下のとおりである。
実験試料:灰化脱水汚泥(脱水汚泥を600℃で強熱したもの)
試料1:指標値0.96、ゼーゲル値0.79
試料2:指標値0.99、ゼーゲル値0.88
試料3:指標値1.26、ゼーゲル値0.99
添加剤の割合:無添加、5wt%、10wt%、20wt%、30wt%
【0041】
加熱条件:試料に各添加剤を添加して、外径Φ5mmの白金製容器に充填し、900℃で1時間加熱した後、面積収縮率を算出した。焼却炉の設定温度は850℃であるが、十分に強度が発現しなかったため、900℃を加熱温度とした。
【0042】
また、加熱した試料が完全に崩壊する荷重F[N]及び圧壊強度σ[N/mm2]をフォースゲージ(IMADA製、DST-500N)で計測した。
【0043】
(3.実験結果)
(3-1-1)Alの添加による抑制効果の確認
各試料1~3に対して、添加剤として乾燥させたPAC(Alとして90.5%含有)を添加した後、各試料1~3の加熱を行い、添加率毎の面積収縮率及び圧壊強度を測定した。その測定結果をまとめたグラフを
図6に示す。なお、
図6に示すグラフでは、無添加の測定値を100%とした相対値を表している。
【0044】
図6に示すように、PACを添加した試料1~3は、無添加の試料1~3と比較して、面積収縮率及び圧壊強度が共に低下した。また、PACを5wt%添加した場合、無添加の場合に比べて、面積収縮率が13~17%低下し、圧壊強度が最大で60%以上低下した。一方、30wt%超えてPACを添加すると、何れの試料1~3においても粉体に近く、加熱による強度の上昇は殆ど無かった。
【0045】
(3-1-2)Siの添加による抑制効果の確認
各試料1~3に対して、添加剤として粉砕したケイ砂(Siとして89.7%含有)を添加した後、各試料1~3の加熱を行い、添加率毎の面積収縮率及び圧壊強度を測定した。その測定結果をまとめたグラフを
図7に示す。なお、
図7に示すグラフでは、無添加の測定値を100%とした相対値を表している。
【0046】
図7に示すように、ケイ砂を添加した試料1~3は、無添加の試料1~3と比較して、面積収縮率及び圧壊強度が共に低下した。また、ケイ砂を5wt%添加した場合、無添加の場合に比べて、面積収縮率の低下が6.5~12%程度に留まり、圧壊強度の低下も最大で36%であった。一方、何れの添加率においても、Al(PAC)を添加した場合と比較して、抑制効果が低い結果となった。
【0047】
(3-2)Al,Siを高含有率で含む物質の選定
次に、Al,Siの両物質を豊富に含有する物質として、カオリン(Alとして18.5%含有、Siとして77.7%含有)を選定した。カオリンは、陶器の材料として知られる粘土質の鉱石で、試薬として販売されている。また、カオリンは、鉱物の一種であり、化学組成はAl4Si4O10(OH)8、粘土鉱物の一種で高陵石ともいう。
【0048】
(3-2-1)カオリンの添加による抑制効果の確認
各試料1~3に対して、添加剤としてカオリンを添加した後、各試料1~3の加熱を行い、添加率毎の面積収縮率及び圧壊強度を測定した。その測定結果をまとめたグラフを
図8に示す。なお、
図8に示すグラフでは、無添加の測定値を100%とした相対値を表している。
【0049】
図8に示すように、Al(PAC)を添加した場合ほどの抑制効果は見られなかった。一方、Si(ケイ砂)を添加した場合と比較して、抑制効果はカオリンがほぼ上回った。
【0050】
上記の結果から、カオリンの閉塞抑制に対する一定の効果が確認されたが、カオリンの単価は400,000~1,000,000円/t程度であるため、コスト面において課題がある。
【0051】
(3-3)浄水発生土の適用可能性について
そこで、Al,Siの両物質を豊富に含有する添加剤として、産業廃棄物である浄水発生土の適用可能性について検討した。
【0052】
浄水発生土とは、浄水場において、処理工程のひとつである凝集沈殿により除去された原水中の汚濁物質や処理に用いられた薬品類(凝集剤)などの沈殿物を脱水処理したものである。
【0053】
本実験にあたって、浄水場の浄水発生土を乾燥し、粉砕した後に、無機成分の測定を行った結果、Alとして36.4%、Siとして34.6%含有し、何れも高い含有率を示したことから、浄水発生土を試料1~3に添加して抑制効果を確認した。
【0054】
(3-3-1)カオリンの添加による抑制効果の確認
各試料1~3に対して、添加剤として浄水発生土を添加した後、各試料1~3の加熱を行い、添加率毎の面積収縮率及び圧壊強度を測定した。その測定結果をまとめたグラフを
図9に示す。なお、
図9に示すグラフでは、無添加の測定値を100%とした相対値を表している。
【0055】
図9に示すように、面積収縮率については、ケイ砂、カオリンを添加した場合と同程度であったが、圧壊強度については、5wt%以上の添加により40%程度の低下が確認できた。
【0056】
一方、脱水機投入汚泥に浄水発生土を添加する場合では、固形分3%、無機分20%の汚泥に対して、0.03wt%の浄水発生土の添加で煙道閉塞の抑制効果があることが分かった。
【0057】
(4.まとめ)
本実験により、Al,Si共に灰化脱水汚泥に対する収縮・硬化の抑制効果を確認できた。特に、Alが5wt%における圧壊強度の低減効果が大きく、最大で60%以上であった。
【0058】
また、Al,Siの両物質を豊富に含有するカオリン及び浄水発生土の添加においても、高い抑制効果が確認された。特に、浄水発生土の添加においては、5wt%以上の添加で40%以上の圧壊強度の低下を確認できた。
【0059】
本実験から、下水汚泥への浄水発生土の添加による焼却炉の煙道閉塞の抑制対策の可能性が見出せた。これは、大半を埋立て処分している浄水発生土の有効利用の一助となるものと考えられる。
100…焼却システム 1…焼却炉 2…空気予熱器 3…熱交換器 4…集塵装置 5…排煙処理塔 6…煙道 7…ブロワ 8…煙道 9…ブロワ 10…煙道 11…煙道 12…ブロワ 13…ポンプ 14…ポンプ