(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137653
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】釣用仕掛け
(51)【国際特許分類】
A01K 85/16 20060101AFI20240927BHJP
A01K 85/00 20060101ALI20240927BHJP
A01K 93/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A01K85/16
A01K85/00 A
A01K93/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196134
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2023046509
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】田井中 佑基
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307AB22
2B307BA35
2B307BA42
2B307BA46
2B307BA70
2B307HB01
2B307HB03
2B307JA21
(57)【要約】
【課題】実釣時において、キャスティングした際の飛距離の向上が図れると共に、実釣時に生じる各種のトラブルが抑制される釣用仕掛けを提供する。
【解決手段】本発明に係る釣用仕掛け1は、錘5によって水中で浮遊状態に維持される浮力体10を備えた本体2と、錘5の部分を牽引する位置に固定され、リールからのラインが接続されるラインアイ7と、浮力体10に固定され、本体2から離間した位置で釣針用のハリス12を固定する固定部8を備えた硬質のワイヤ部材8Bと、を有することを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錘によって水中で浮遊状態に維持される浮力体を備えた本体と、
前記錘の部分を牽引する位置に固定され、リールからのラインが接続されるラインアイと、
前記浮力体に固定され、前記本体から離間した位置で釣針用のハリスを固定する固定部を備えた硬質のワイヤ部材と、
を有することを特徴とする釣用仕掛け。
【請求項2】
錘によって水面から一部が突出した浮遊状態に維持される浮力体を備えた本体と、
前記錘の部分を牽引する位置に固定され、リールからのラインが接続されるラインアイと、
前記浮力体に固定され、前記本体から離間した位置で釣針用のハリスを固定する固定部を備えた硬質のワイヤ部材と、
を有することを特徴とする釣用仕掛け。
【請求項3】
前記ワイヤ部材は、前記浮力体の浮遊状態で、前記浮力体の最も高い位置に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣用仕掛け。
【請求項4】
前記錘は、前記浮力体に設けられた錘アイに着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣用仕掛け。
【請求項5】
前記錘アイは、前記ラインアイと対向する側に設けられており、
前記浮力体が水中で浮遊した際、浮力体が底から離間し、前記錘アイに装着された錘が着底することを特徴とする請求項1に記載の釣用仕掛け。
【請求項6】
前記錘アイは、前記浮力体が水中で浮遊した状態で正面視した際、前記浮力体によって隠れる位置に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の釣用仕掛け。
【請求項7】
前記浮力体は、浮力が小さい部分と浮力が大きい部分を有する形状に形成されており、
前記浮力が小さい部分に前記ラインアイと錘アイが固定され、前記浮力が大きい部分に前記ワイヤ部材が固定されていることを特徴とする請求項4に記載の仕掛け。
【請求項8】
前記錘は、前記浮力体内に組み込まれて一体化されており、前記ラインアイは、前記錘が組み込まれている部分の浮力体に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣用仕掛け。
【請求項9】
前記浮力体が水中で浮遊した際、浮力体の先端が着底することを特徴とする請求項8に記載の釣用仕掛け。
【請求項10】
前記ワイヤ部材は、前記浮力体の全長の2倍以下の長さを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の釣用仕掛け。
【請求項11】
前記ワイヤ部材は、前記浮力体の全長の2倍以下の長さを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の釣用仕掛け。
【請求項12】
前記ワイヤ部材は、湾曲形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣用仕掛け。
【請求項13】
前記ラインアイは、リールからのラインが挿通されるように、開口が前記本体に対して直交する方向となるように浮力体に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣用仕掛け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りに際して用いられる釣用仕掛けに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャスティングして水底にいる魚を釣る際に用いられる釣用仕掛けとして、例えば、特許文献1に開示されているようなルアータイプの構成が知られている。このような釣用仕掛けは、魚の形態を模したルアー本体の先端にリップを取着し、リップの上面にリールからのラインを接続するラインアイを設けている。また、ルアー本体の後端には、フック取付部を設けて釣針(フック)を取り付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した公知の釣用仕掛けは、ルアー本体の前側に取り付けられたリップがキャスティング時に抵抗となってしまい、飛距離が伸びないという問題がある。また、水底に石、牡蠣等の殻が堆積している部分では、仕掛けが引っ掛かり易く抜け難いという問題がある。更に、リップがあることで、釣糸の巻き取り操作をした際にリップが抵抗となって、ルアー本体が振動したり揺れてしまう。このため、魚のアタリに併せてフッキングし、釣糸を巻き取ると、手元には振動が伝わるものの、その振動が魚によるものか、或いは、ルアー本体が振動したことで生じているかを判別することができない。すなわち、魚が釣れたものと思ってリーリングして仕掛けを手繰り寄せても、実際には魚が掛かっておらず、期待感を裏切る結果になることがある。
【0005】
また、餌釣りすることを考慮して、ルアー本体の後端に、生き餌やワーム等を取り付けた釣針のハリスを接続した際、ハリスや釣針がルアー本体に近いため、糸絡み等のトラブルが生じ易い。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、実釣時において、キャスティングした際の飛距離の向上が図れると共に、実釣時に生じる各種のトラブルが抑制される釣用仕掛けを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣用仕掛けは、錘によって水中で浮遊状態に維持される浮力体を備えた本体と、前記錘の部分を牽引する位置に固定され、リールからのラインが接続されるラインアイと、前記浮力体に固定され、前記本体から離間した位置で釣針用のハリスを固定する固定部を備えた硬質のワイヤ部材と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記した釣用仕掛けの本体は、錘によって水中で浮遊状態に維持される浮力体を備えているため、浮力体が軽量であっても、前記錘の重さによりキャスティング時に飛距離の向上が図れる。また、水底の障害物に、沈下した状態にある錘が引っ掛かる可能性が高いものの、前記ラインアイに接続された釣糸を巻き上げる(リーリングする)と、錘の部分が牽引されて仕掛け全体が障害物から外れ易くなる。更に、水底部分で本体が安定すると、錘が着底した状態で浮力体が浮遊し、この浮遊した状態の浮力体に釣針用のハリスを固定するワイヤ部材が設けられているため、釣針と本体との間の距離、更には、障害物に引っ掛かる部分との距離が確保され、糸絡み等することが抑制される。
【0009】
上記した構成において、本体とは、錘と浮力体が一体化さている構成、及び、それぞれが別体となって、浮力体に錘が接続された構成が含まれる。また、本体は、重量のある錘が着底した状態で、浮力体が水中で浮遊した状態となれば良い。この場合、前記浮力体は、水中に完全に沈んだ状態で浮遊していても良いし、一部が水面から突出して浮遊した状態となるようにしても良い。すなわち、錘の重さ、浮力体の形状、浮力によって、浮力体の浮遊状態については適宜、変更することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、実釣時において、キャスティングした際の飛距離の向上が図れると共に、実釣時に生じる各種のトラブルが抑制される釣用仕掛けが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る釣用仕掛けの第1の実施形態を示す斜視図。
【
図2】
図1に示す釣用仕掛けを示しており、(a)は側面図、(b)は平面図。
【
図3】
図1に示す釣用仕掛けの海中における浮力体の浮遊状態を説明する図。
【
図5】
図1に示す釣用仕掛けを示しており、ラインアイに接続されたラインに引張力が作用した状態を説明する図。
【
図6】
図1に示す釣用仕掛けの水底での動作を説明する図。
【
図7】本発明に係る釣用仕掛けの第2の実施形態を示す図。
【
図8】
図7に示す釣用仕掛けの海中での状態を示す図。
【
図9】本発明に係る釣用仕掛けの第2の実施形態の変形例を示す図。
【
図10】本発明に係る釣用仕掛けの第3の実施形態を示す図。
【
図11】本発明に係る釣用仕掛けの第4の実施形態を示す図。
【
図12】本発明に係る釣用仕掛けの第5の実施形態を示す図。
【
図13】
図12に示す釣用仕掛けにおいて、浮力体の浮遊状態を示す図。
【
図14】(a)は、
図12に示す釣用仕掛けをキャスティングした際の空中での姿勢を示す図、(b)は、着水したときの状態を示す図。
【
図15】
図12に示す釣用仕掛けにおいて、錘アイに錘を装着してキャスティングした際の空中での姿勢を示す図。
【
図16】
図12に示す釣用仕掛けにおいて、ハリスの接続位置を変えてキャスティングした際の空中での姿勢を示す図。
【
図18】(a)~(c)は、それぞれ浮力体の表面形状の概念を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る釣用仕掛けの実施形態について説明する。
図1から
図5は、本発明に係る釣用仕掛けの第1の実施形態を示す図であり、
図1は、斜視図、
図2は、
図1に示す釣用仕掛けを示しており、(a)は側面図、(b)は平面図、
図3は、
図1に示す釣用仕掛けの海中における浮遊状態を説明する図、
図4は、
図3に示す釣用仕掛けの正面図、そして、
図5は、
図1に示す釣用仕掛けのラインアイに接続されたラインに引張力が作用した状態を説明する図である。
【0013】
本発明に係る釣用仕掛け1は、基本構造として、錘5と浮力体10を備えた本体2を備えている。本体2を構成する錘5と浮力体10は、本実施形態では、別体として構成されているが、後述する第2の実施形態のように、一体化される構成であっても良い。
また、以下の説明において、釣用仕掛けの方向性を特定するに際しては、釣人がリトリーブ操作した際に本体2が進行する方向を先端側(先端部、前側、前方など)と定義し、その反対側を後端側(後端部、後側、後方など)と定義する。また、この状態での水面側を上(上方)、水底側を下(下方)と定義し、前後方向及び上下方向と直交する方向を幅方向(左右方向)と定義する。
【0014】
本実施形態の釣用仕掛け1は、海で使用されることを想定したものであり、
図1に示すような形態の浮力体10を備えている。前記浮力体10は、海中(水中)で浮く構成であれば材料については限定されることはなく、比重が軽い材料で構成されたもの、或いは、比重が重い材料であっても内部に空洞が形成されて浮くように構成されたものであっても良い。また、前記釣用仕掛けは、主に、サーフ、河口、防波堤等、陸からキャスティングして魚を釣るのに適した構成となっているが、河川、湖、管理釣り場のような淡水領域においても使用することが可能である。
【0015】
本実施形態の浮力体10は、略球状に大きく膨らんだ部分(以下、後部10Aと称する)と、後部10Aの前側で略円筒状に膨らんだ部分(以下、前部10Bと称する)とを備えており、前部10Bよりも後部10Aの浮力が大きい形態を備えている。すなわち、
図1に示すように、後部10Aと前部10Bは、共に表面が膨らんだ湾曲状に構成されており、両方の表面は、面一状に構成されている。
なお、ここでの面一状とは、リトリーブした際に、本体2を揺動等させるような突出部材(リップ等)が設けられていない構成を意味する。
【0016】
前記浮力体10は、
図2(a)(b)に示されるように、前後で外形状が異なっており、後部10Aの上下方向の最大高さH、及び、左右方向における最大幅Wが、前部10Bの最大高さ、及び、最大幅よりも大きい形状に形成されている。したがって、このような外形状では、浮力体10の後部10Aは、前部10Bと比較すると容積が大きいため、後部側の浮力が大きく前部側の浮力が小さい構造となる。
【0017】
このような構造では、海中で前部10Bが下側になり、後部10Aが上側となって浮遊した状態(起立状態とも称する)に維持され、浮遊状態の安定化が図れる。すなわち、本実施形態の浮力体10は、浮力が小さい部分と大きい部分を備えた異なる形状の複合体で構成されており、浮遊状態では、前部10Bが沈下側、後部10Aが浮上側となる。
【0018】
なお、前記浮力体10の大きさについては限定されることはないが、一例として、全長Lが40~45mm程度、後部10Aにおける上下方向の最大高さHが20~25mm程度、最大幅Wが15~20mm程度で形成されている。
【0019】
また、本実施形態の浮力体10は、後部10Aと前部10Bとの間の海底側(下方側)が窪むことで凹部10Cが形成されており、この凹部10C部分で後部10Aと前部10Bが区分けされている。すなわち、凹部10Cよりも前方側が前部10B、その後方側が後部10Aとなっている。この後部10Aの前後方向の長さについては、安定した浮遊状態で、十分な浮力が得られるように前部10Bの前後方向長さよりも長い形状とされる。
【0020】
本実施形態では、前記凹部10Cに錘アイ6が固定されており、この錘アイ6に前記錘5が着脱可能に装着される。前記錘アイ6は、例えば、基端部6aが浮力体10に固定され、基端部6aから先が螺旋状に巻回されて先端部6bが中間部分から離間するように形成されたものが用いられており、治具などを用いることなく、錘5の着脱操作を容易にできる構造のものが用いられている。
この場合、前記錘アイ6には、錘5のリング部5Aを取り付けることで、錘5が装着された状態となる。また、前記錘アイ6は、以下のラインアイ7と同一の構成であっても良い。
【0021】
前記錘5については、浮力体10との関係で、キャスティングした後に、海底に当接(着底)できる重量を備えたものが使用される。これにより、浮力体10は、錘5が着底した状態で、前部10Bが沈下し、後部10Aが浮上した浮遊状態となる(
図3参照)。
なお、海中では、海流が生じていることもあるが、本発明に係る釣用仕掛けの構成を説明する上では、そのような海流が無い状態として説明する。
【0022】
図3に示すように、浮力体10の前端側(前部10B)が錘5の重量によって沈下すると、後端側(後部10A)は浮上する。本実施形態では、上記したように、浮力体10の先端側の凹部10Cに設けられた錘アイ6に錘5が装着されるようになっており、錘アイ6の位置は、浮力体10が浮遊状態になった際、装着された錘5が、浮力体10の先端縁10aよりも海底側となるように設定されている。このため、浮力体10は、錘5が海底100に着底した状態で、浮力体10の先端縁10aが海底100から離間した浮遊状態に維持される(浮力体10が揺動可能な浮遊状態となる)。
【0023】
前記凹部10C内に固定される錘アイ6については、
図4に示すように、前記浮力体10が海中で浮遊した状態で正面視した際、浮力体10によって隠れる位置に設けられていることが好ましい。本実施形態では、前記錘アイ6は、凹部10Cの底(最も深い位置)に固定されており、前記前部10Bによって、正面から見ても錘アイ6が見えないように構成されている。
【0024】
このように、前記錘アイ6の固定位置を特定することで、正面側から糸絡み、障害物と絡み易い部分が露出しなくなり、引っ掛かりを抑制することが可能となる。
【0025】
なお、錘アイ6の位置については、浮力体10の先端縁10aから前方に飛び出てしまうと障害物に引っ掛かり易くなってしまう。逆に、浮力体10の後端側に移行し過ぎてしまうと全体として重心が上がって、海中で安定した起立状態を維持することができなくなってしまう。このため、錘アイ6は、浮力体10の先端縁10aの最先部における接線E1と、錘アイ6の先端で前記接線E1と平行となる接線E2との間の長さL2が、0≦L2≦Lの範囲で浮力体10に固定されていることが好ましい(
図2(a)参照)。
【0026】
また、前記錘5については、予め錘アイ6に取り付けられた状態で販売されるもの、錘アイ6に錘が装着されていない状態で、ユーザが任意の重さの錘5を取り付けることができるように、錘無しの状態で販売されるものであっても良い。すなわち、本発明に係る釣用仕掛け1は、使用時に
図3に示すような態様になれば良い。
【0027】
前記浮力体10の先端側(前部)10Bには、ラインアイ7が固定されている。このラインアイ7は、リール側からのライン90が接続される部分であり、前部10Bの表面との間で略リング状に閉じた開口7aが形成されている。本実施形態のラインアイ7は、
図2(a)に示すように、開口7aが前後方向に沿った状態となるように浮力体10に取り付けられている(このような状態を縦アイとも称する)。具体的には、浮力体10の前部10Bから後部10Aにかけての上面は湾曲形状に面一状に形成されており、前記ラインアイ7は、前部10Bの上面(背中)の先端に固定されている。これにより、浮力体10には、前部(沈下側)10Bを挟んで、ラインアイ7と対向する側に前記錘アイ6が設けられた状態となっている。このような配置構成では、浮力体10が浮遊した状態でラインアイ7に接続されたライン90に引張力Tが作用すると、錘5が装着された部分の動きは、浮力体10の後端側の動きと異なるようにすることができる。
【0028】
すなわち、
図5に示すように、浮力体10の前端側(前部10B)は、リールを巻き取り操作する等、ライン90に引張力Tが作用すると、ライン90の引張に伴って、ラインアイ7と対向する側に固定された錘アイ6は同様な方向に引張作用を受けるようになり、矢印D1方向(時計回り方向)に回動しようとする。これに対して、浮力体10の後端側(後部10A)は、その反力によって矢印D2方向(反時計回り方向)に回動しようとする。この場合、ライン90に対する引張力Tが無くなると、浮力体10は、錘5の重さ、及び、後部10Aの浮力によって、上記した回動方向と逆向きに回動しようとする。
【0029】
なお、ラインアイ7を、浮力体10の先端縁10aに固定すると、ライン90に引張力Tが作用した際、接続したライン90が海底と接触して傷付くこともあることから、上記のように、前部10Bの上面(背中)の先端側に固定することが好ましい。
【0030】
前記ライン90から浮力体10に作用する引張力の方向については、水深やキャスティングした距離によって変化する。例えば、水深が深いと、リールを巻き取り操作した際、
図5のT1で示す方向に引張力が作用し、水深が浅いと、
図5のT2で示す方向に引張力が作用するようになる。この場合、ラインアイ7は、接続されたライン90に引張力が作用した際、浮力体10の両端が互いに反対方向に回動する位置(錘5の部分を牽引して浮上させ、その反対側の端部を沈下させるような位置)に設けておくことが好ましい。
【0031】
すなわち、ラインアイ7と錘5は、ライン90に引張力が作用した際、浮力体の一端側(錘が装着されている側である前部10B)が矢印D1方向(時計回り方向)に回動しようとし、かつ、他端側(後部10A)が、その反力によって矢印D1と反対側の矢印D2方向(反時計回り方向)に回動するような関係となっている。このような構成では、ライン90に対する引張力Tが無くなると、浮力体10は、錘5の重さ、及び、後部10Aの浮力によって、上記した回動方向と逆向きに回動する。
【0032】
本実施形態の釣用仕掛け1は、実際の餌(ゴカイ、イソメなど)やワームなどの疑似餌(以下、エサと称する)を釣針に取り付け、これを水中に垂らすことで水底の魚を釣るように構成されている。
【0033】
前記浮力体10には、前記本体2から離間した位置で釣針用のハリス12を固定する固定部8を備えた硬質のワイヤ部材8Aが固定されている。前記ワイヤ部材8Aは、浮力が大きい後部10Aの後部に、後方に向けて突出しているので、ハリス12や釣針13は、浮遊した状態の本体2から離間し、ハリス12や釣針13が本体2、特にラインアイ部分や錘アイ部分と絡むことが防止される。
【0034】
前記固定部8は、前記本体2から離間する位置にあれば良く、釣針13、及び、釣針13のチモトに取り付けられたハリス12を、前記錘アイ6及びラインアイ7から離間させて糸絡み等を生じ難くするようにしている。これにより、前記浮力体10は、海中に浮遊した状態で、前記ラインアイ7と錘アイ6が下、前記固定部8が上となった状態が維持される。
【0035】
前記固定部8は、本体2に取り付けられる硬質なワイヤ部材8Aの先端部に設けられており、前記ワイヤ部材8Aは、直線構造、湾曲構造、或いは、これらの複合構造にすることが可能である。このようなワイヤ部材8Aの固定部8にハリス12を接続すると、
図3に示すように、釣針13は、ハリス12によって上方から垂れ下がる状態となる。上述したように、前記浮力体10は、錘5が着底している状態で揺動可能に浮遊することから、釣針13に取り付けたエサが揺動し、魚に対するアピール力を高めることができる。
【0036】
前記ハリス12の長さを所望の状態となるように調整することで、釣針13の海底での状態を変更することが可能となる。或いは、ワイヤ部材8Aの長さを変えることで、浮力体10から釣針13までの距離を適宜、調整することが可能である。この場合、ワイヤ部材8Aを浮力体10に対して、交換可能な着脱構造(例えば、螺子構造を用いた着脱構造)にすることで、必要に応じて釣針13の位置を変えることも可能である。
【0037】
前記ワイヤ部材8Aの突出方向の長さL1については、長くし過ぎると仕掛けが長くなり過ぎて、キャスト性やバランスが悪くなってしまい、短すぎるとハリス12を長くした際、絡み易くなってしまう。このため、前記浮力体10の全長をLとした場合、突出方向の長さL1は、0.5L≦L1≦2Lの範囲にすることが好ましい(
図2参照)。
【0038】
また、前記ワイヤ部材8Aは、浮力体10の浮遊状態で、浮力体10の最も高い位置に固定されていることが好ましい。本実施形態では、後部10Aの浮力が大きく、後部10Aの後端(尾部)が持ち上がることから、
図2に示すように、後部10Aの後端にワイヤ部材8Aを固定することで、浮力体10が水中に浮遊した際、
図3に示すように、ワイヤ部材8Aの固定位置が最も高くなる。したがって、キャスティングして錘5と共に浮力体10が沈下する際、エサを高い位置から水底に落下させることが可能となる。また、このような取り付け位置にすることで、ライン90との距離が大きくなるため、ラインとの間で糸絡みすることが抑制される。
【0039】
前記ワイヤ部材8Aの固定部8は、前記ハリス12を挟持する公知のハリス止めを備えたもので構成することが可能である(
図1,2参照)。このようなハリス止めを用いることで、容易に釣針13や、ハリス12の太さを変更することが可能となる。
また、前記固定部(ハリス止め)8については、1本のワイヤ部材8Aの先端部に、方向性を変えて複数個設けた構成であっても良い。
【0040】
次に、
図6を参照して、本実施形態の釣用仕掛け1の使用態様について説明する。
本実施形態の釣用仕掛け1は、根魚の一例であるハゼに適した構造となっており、
図6は、海底に生息するハゼを対象魚として上記した構成の釣用仕掛け1を用いた例を示している。
【0041】
前記釣用仕掛け1は、キャスティング操作等によって、所望の位置に投げ込まれる。この際、浮力体10は、表面形状が面一状となっており、リップのような突出部がないことに加え、錘5の重さによって飛距離が低下するようなことはない(表面形状が面一状とは、従来の仕掛けのように、キャスティング時に抵抗となるリップが存在しないものを意味する)。また、使用するラインの太さ、キャスティングしたい距離に応じて、錘5を交換することが可能となる
【0042】
前記本体2が海底に着底すると、浮力体10は、先端側に装着された錘5の重さによって、錘5が着底すると共に、浮力体10の先端縁10aが海底100から離間した状態で浮遊する(起立状態が維持される)。この状態では、釣針13に取り付けられたエサ15は、浮力体10の後端部から後方に突出するワイヤ部材8Aの先端の固定部8に挟持されたハリス12によって、海底付近で浮遊するような動きを呈するようになる。すなわち、釣人のリトリーブ操作、釣竿のあおり操作、浮力体10の揺動、更には、ワイヤ部材8Aの撓み等によって、エサ15を海底付近で浮遊させるように動かすことができ、魚に対するアピール力を高めることができる。
【0043】
また、海底100には、石、岩、貝殻等が堆積して凹凸状態(障害物110)になっていることがあり、前記浮力体10の前端領域や錘5の部分が障害物110に引っ掛かることもあるが、
図3に示したように、浮力体10にライン90からの引張力Tが作用すると、浮力体10はD1方向に回動しようとするため、障害物110から離脱し易くなり、釣用仕掛け1が障害物110に引っ掛かることが抑制される。この場合、釣針13のハリス12については、前記ワイヤ部材8Aの先端から垂れ下がるような状態となっており(海底に沿って漂っていない)、かつ、ワイヤ部材8Aの長さL1によって浮力体10との距離も確保されているので、糸絡みによる引っ掛かりも効果的に防止することができる。
【0044】
また、前記錘アイ6については、
図4に示すように、前記浮力体10が海中で浮遊した状態で正面視した際、浮力体10によって隠れる位置に設けられており、しかも凹部10C内に位置していることから、ライン90やハリス12が糸絡みし難くなる。
【0045】
次に、本発明の釣用仕掛けの別の実施形態について説明する。
なお、以下に説明する実施形態では、前記第1の実施形態と同様な構成を有する部分については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0046】
図7及び
図8は、本発明に係る釣用仕掛けの第2の実施形態を示す図である。
この実施形態では、第1実施形態と同様な表面面一状の浮力体10に錘アイ6を固定しておらず、浮力体10の先端側の内部に錘25を設けており、本体2は、浮力体10と錘25が一体化された構成となっている。このため、浮力体10が海中で浮遊する(起立する)と、浮力体10の先端縁10aが着底する状態となり、浮力体10が直接着底することで障害物に絡み難く、糸絡みする可能性が低減される。
【0047】
このような構成では、
図8に示すように、錘25の位置にラインアイ7を固定することで、ラインアイ7に接続されたライン90に引張力が作用すると、錘25に直接、引張力を作用させることができる。したがって、浮力体10の先端部分は、
図5で示した矢印D1方向に回動し易くなり、釣用仕掛け1が障害物に引っ掛かっても、より容易に離脱させることが可能となる。また、浮力体10の先端が直接、着底するので、浮力体の浮遊状態が安定するようになる。
【0048】
なお、浮力体10の表面には、印刷、シール(ホログラムシール等を含む)の貼付、ホットスタンプ等、各種の公知の手法によって模様(目の模様2A、更には、鱗模様等)を形成しても良く、これにより、対象魚に対するアピール力を高めることができる。また、ワイヤ部材8Aの先端に設けられる固定部8については、リング部として構成し、この部分にハリスを直接接続したり、スナップ等を介してハリスを取り付ける構成であっても良い。
【0049】
図9は、
図7及び
図8に示す第2の実施形態の変形例を示す図である。
この変形例では、
図7に示した浮力体10に、別途、錘5が装着できるように、第1の実施形態と同様、錘アイ6を固定した構造にしている。このような構成では、ユーザの好みに応じて、本体2の重量を更に重くすることができるので、遠方にキャスティングし易くなり、また、ワイヤ部材8Aを更に短くすることで、よりキャスティングし易くすることができる。
【0050】
図10は、本発明に係る釣用仕掛けの第3の実施形態を示す図である。
この実施形態では、浮力体10(後部10A)の後端部に、複数の固定部8を設けた例を示している。具体的には、浮力体10の後端部から、左右方向及び後方向に略90°間隔で3本のワイヤ部材8Aを突出するように固定しており、それぞれの先端に固定部8(ハリス止め)を設けている。
【0051】
このような構成によれば、釣果の向上が期待できると共に、異なるタイプの釣針、異なる太さのハリス、異なるタイプのエサを装着することができ、魚の掛かり具合によって最適な構成(釣針、ハリス、エサの種類)を選択し易くなる。
【0052】
図11は、本発明に係る釣用仕掛けの第4の実施形態を示す図である。
この実施形態の浮力体10は、上記した各実施形態の浮力体10の形状とは異なり、前部10Bを、後部10Aよりも外形状が大きくなるように構成している。また、錘アイ6については、前部10Bの下端位置で、ラインアイ7と近接する位置に固定している。
【0053】
このように、浮力体10の全体形状については、適宜、変形することが可能である。
本実施形態では、前部10Bの容積を後部10Aの容積よりも大きくしており、全体として浮力体10の浮遊高さを抑えるようにしている。このような構成では、錘5(内部に設けられる錘であっても良い)の重量を大きく設定することで、浮力体10浮遊状態を低く維持させることが可能となる。また、錘アイ6とラインアイ7の固定位置については、ラインアイ7に接続されたラインに引張力が作用した際、錘5が装着された部分が、浮力体10の後端部に対して、動きの方向が変わるように構成されていれば良い。
【0054】
図12から
図14は、本発明に係る釣用仕掛けの第5の実施形態を示す図である。
この実施形態では、前記浮力体10の浮力と、浮力体10の先端側の内部に設けられる錘25の重さのバランスを、水面上で後部10Aが水面Pから上方に突出するように設定されている。
【0055】
このような構成の浮力体10は、後部10Aが視認可能な浮きとしての機能を果たすことが可能となる。また、ワイヤ部材8Bの先端側に設けられた固定部8に接続されるハリス12が水面の上方から垂れ下がって、釣針13に取り付けられたエサ15を水面付近で漂わせることが可能となる。
このため、水面付近を泳ぐ魚(鯉などの表層魚)を釣るのに適した構造となり、魚が釣針13に掛かると、後部10Aが水中に沈むことから、魚がかかったことを容易に把握することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態の固定部8は、ワイヤ部材8Bの先端に設けられたリング部8Cと、このリング部8Cに、リング部18aとハリス止め18bを備えたスイベル18とを備えた構成となっている。
このような構成では、ハリス止め18bにハリス12を止めても良いし、大型の魚を対象とする場合、リング部8Cに直接、ハリス12を接続することもできる。
【0057】
前記ワイヤ部材8Bについては、湾曲形状に形成することが好ましい。具体的には、前記錘(錘5又は錘25)の装着位置と、前記ワイヤ部材の固定位置は、前記本体2の両端側で対向する位置となっており、この配置関係で、ワイヤ部材8Bの先端側の固定部8は、矢印で示すキャスティング方向に対して反対側に湾曲する形状にすることが好ましい。
【0058】
このような湾曲形状のワイヤ部材8Bによれば、釣用仕掛け1をキャスティングすると、
図14(a)に示すように、キャスティング方向(矢印方向)に向けて錘25が前方側に位置し、ワイヤ部材8Bの固定部8が後方側に位置した状態となる。このため、ハリス12とワイヤ部材8Bが絡み難くなり、安定して釣用仕掛け1をキャスティングすることができる。また、ハリス12も浮力体10に掛かり難くなるため、飛距離が低下することもない。
【0059】
そして、浮力体10が着水すると、
図14(b)に示すように、後部10Aが慣性によって錘25を中心に前方側に回動するため、ワイヤ部材8Bも同様に回動し、そのままハリス12が固定部8から水面側に垂れ下がって
図13に示した状態で安定化する。
【0060】
上記した構成の釣用仕掛けは、
図15に示すように、本体2の内部に組み込まれた錘25以外にも、前記錘アイ6にユーザの好みに応じて錘5を装着しても良い。この場合、錘5の部分に対してハリス12が絡み易くなるが、上記したように、ワイヤ部材8Bが湾曲形状を有することで、ハリスの絡みを抑制することができる。
【0061】
また、
図16に示すように、固定部8は、ワイヤ部材8Bの端部に設けられたリング部8Cで構成しても良い。対象魚が大きくなると、上記したハリス止めにハリス12を挟持すると、切れたり外れてしまうことがあるが、リング部8Cに直接ハリス12を連結することで、大きい魚に対応することが可能となる。なお、
図15に示したように、リング部18aにハリス止め18bを備えたままであっても良い。
【0062】
図17は、
図12に示す釣用仕掛け1の別の使用例を示す図である。
図12に示した釣用仕掛け1のラインアイ7Aは、開口が左右方向(本体2に対して直交する方向;横アイと称する)に沿うように浮力体10に取り付けられている。
【0063】
このため、リールからのライン90をラインアイ7Aに挿通させるとともに、ハリス12をワイヤ部材8Bの固定部8Cに挿通させ、その中間部で、それぞれをスイベル30の各固定リング30a,30bに接続して使用することができる。
【0064】
このような使用方法では、魚の食い付き状況に応じて、本体2を前記実施形態とは異なる状態で揺動させることが可能となる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々、変形することが可能である。例えば、前記浮力体10の外形状や表面の状態については限定されるものではなく、浮力体10が水中や水面付近で浮遊できれば、その形状については、適宜、変形することが可能である。
【0066】
また、前記浮力体の外形状(形態)としては、
図18(a)~(c)に例示されるように、例えば、ナス型形状40に基づくもの、楕円型形状41に基づくもの、球体型形状42に基づくもの、或いは、これらを組み合わせる等、適宜変形することが可能である。このような浮力体に対しては、錘を外付けしたり、その内部に錘を収容して、その錘の部分に直接、引張力を作用させるようにラインアイを固定し、その対向側にワイヤ部材を固定しても良い。
【0067】
また、上述した浮力体については、実際の生物の形態を模したもの等で構成しても良く、浮力体の構成(大きさ、材質、アイの個数等)、及び、装着される錘の構成についても、適宜変形することが可能である。さらに、前記釣用仕掛け1を構成する上述したそれぞれの構成要素(ラインアイ、錘、錘アイ、ワイヤ部材、固定部など)については、適宜、組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 釣用仕掛け
2 本体
2A 後部
2B 前部
5,25 錘
6 錘アイ
7,7A ラインアイ
8 固定部
8A,8B ワイヤ部材
10 浮力体
12 ハリス
13 釣針
90 ライン