(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137657
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電動車の充電システム
(51)【国際特許分類】
H02P 23/06 20160101AFI20240927BHJP
【FI】
H02P23/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200571
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2023045858
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179453
【弁理士】
【氏名又は名称】會田 悠介
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】久保田 芳永
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505CC04
5H505DD08
5H505EE48
5H505HA09
5H505HB01
5H505HB05
5H505LL41
(57)【要約】
【課題】駆動用のモータ及びインバータを用い、急速充電に加えて普通充電を行うことができ、それにより、車載充電器を省略できることで、充電システム全体の部品点数及びコストの低減を図ることができる電動車の充電システムを提供する。
【解決手段】電動車の駆動用のモータM及びインバータ2を用いて、外部電源4からバッテリーBに充電する電動車の充電システム1であって、制御装置3は、DC充電時に、外部電源4による直流電流を第1~第4巻線部α1、α2、β1、β2に通電させるように制御することによって、バッテリーBを充電し、AC充電時に、外部電源4を、第3巻線部β1及び/又は第4巻線部β2に電気的に接続するとともに、ロータ10を所定位置に停止させるように制御することにより、バッテリーBを充電する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車の駆動用のモータ及びインバータを用いて、外部電源からバッテリーに充電する電動車の充電システムであって、
前記モータは、
永久磁石を有するロータと、
このロータの外側に配置されたステータと、
このステータに巻き付けられ、前記ロータを間にした状態で互いに対向する第1巻線部及び第2巻線部を有する第1相の巻線と、
前記ステータに巻き付けられ、前記ロータを間にした状態で互いに対向する第3巻線部及び第4巻線部を有し、前記第1相の巻線に対して電気角で90度ずれた状態で配置された第2相の巻線と、
を有しており、
前記インバータは、
前記バッテリーに互いに接続されるとともに、前記第1相の前記第1及び第2巻線部、並びに前記第2相の前記第3及び第4巻線部にそれぞれ接続された第1~第4Hブリッジ回路と、
前記第1及び前記第2巻線部を通る双方向の電流の流れ、並びに前記第3及び前記第4巻線部を通る双方向の電流の流れをそれぞれ、オン状態又はオフ状態に切り替える第1及び第2双方向スイッチと、
を有し、
前記第1~第4Hブリッジ回路は、スイッチング素子をそれぞれ有する上アーム及び下アームが中点で互いに接続された第1及び第2レグ、第3及び第4レグ、第5及び第6レグ、並びに第7及び第8レグをそれぞれ有し、
前記第1巻線部の一端及び他端に前記第1及び第2レグの前記中点がそれぞれ接続され、前記第2巻線部の一端及び他端に前記第3及び第4レグの前記中点がそれぞれ接続され、前記第3巻線部の一端及び他端に前記第5及び第6レグの前記中点がそれぞれ接続され、前記第4巻線部の一端及び他端に前記第7及び第8レグの前記中点がそれぞれ接続されており、
前記第1~第4Hブリッジ回路、前記第1及び第2双方向スイッチ、並びに前記ロータの停止位置を制御する制御装置を、備えており、
前記制御装置は、
DC充電時に、前記外部電源による直流電流を前記第1~第4巻線部に通電させるように制御することによって、前記バッテリーを充電し、
AC充電時に、前記外部電源を、前記第3巻線部及び/又は前記第4巻線部に電気的に接続するとともに、前記ロータを、所定位置に停止させるように制御することにより、前記バッテリーを充電することを特徴とする電動車の充電システム。
【請求項2】
電動車の駆動用のモータ及びインバータを用いて、外部電源からバッテリーに充電する電動車の充電システムであって、
前記モータは、
永久磁石を有するロータと、
このロータの外側に配置されたステータと、
このステータに巻き付けられ、第1巻線部及び第2巻線部を有する第1相の巻線と、
前記ステータに巻き付けられ、第3巻線部及び第4巻線部を有し、前記第1相の巻線に対して電気角で90度ずれた状態で配置された第2相の巻線と、
を有しており、
前記インバータは、
前記バッテリーに互いに接続されるとともに、前記第1相の前記第1及び第2巻線部、並びに前記第2相の前記第3及び第4巻線部にそれぞれ接続された第1~第4Hブリッジ回路を有し、
前記第1~第4Hブリッジ回路は、スイッチング素子をそれぞれ有する上アーム及び下アームが中点で互いに接続された第1及び第2レグ、第3及び第4レグ、第5及び第6レグ、並びに第7及び第8レグをそれぞれ有し、
前記第1巻線部の一端及び他端に前記第1及び第2レグの前記中点がそれぞれ接続され、前記第2巻線部の一端及び他端に前記第3及び第4レグの前記中点がそれぞれ接続され、前記第3巻線部の一端及び他端に前記第5及び第6レグの前記中点がそれぞれ接続され、前記第4巻線部の一端及び他端に前記第7及び第8レグの前記中点がそれぞれ接続されており、
前記第1~第4Hブリッジ回路を制御する制御装置を、備えており、
前記制御装置は、AC充電時に、前記外部電源を、前記第3巻線部及び/又は前記第4巻線部に電気的に接続するように制御することにより、前記バッテリーを充電することを特徴とする電動車の充電システム。
【請求項3】
前記制御装置は、DC充電時に、前記外部電源による直流電流を前記第1~第4巻線部に通電させるように制御することによって、前記バッテリーを充電することを特徴とする請求項2に記載の電動車の充電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、AC充電時に、前記第3及び第4Hブリッジ回路を力率改善回路として機能させるように制御するとともに、前記第1及び第2Hブリッジ回路を絶縁DC-DCコンバータとして機能させるように制御することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電動車の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車の充電システムに関し、特に、電動車の駆動用のモータ及びインバータを用いてバッテリーに充電する充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の気候変動への対策として、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化している。車両においても、CO2排出量の削減が強く要求され、動力源の電動化が急速に進行している。このような動力源として用いられる駆動用モータに電力を供給するバッテリーへの充電システムとして、従来、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この充電システムは、車両に搭載されており、モータジェネレータ、2つのバッテリー、2つのインバータ、車載充電器及び制御部を備えている。急速充電を行う場合、車両の外部に設置された急速充電器から供給される直流電力が、モータジェネレータの各相のコイル及び各インバータを通電経路として流れ、各バッテリーに充電される。一方、普通充電を行う場合、車両外部の交流電源から供給される交流電力が、車載充電器によって直流電力に変換され、その変換された直流電力が、各バッテリーに充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、上記の充電システムでは、モータジェネレータのコイル及びインバータを介して、直流電力による急速充電が行われる。しかし、普通充電を行う場合、交流電力を直流電力に変換するために、車載充電器を用いている。このため、上記の充電システムでは、車載充電器の分、部品点数が増えるとともにコスト高になり、また、車両には、車載充電器を設置するためのスペースが必要になる。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、駆動用のモータ及びインバータを用い、急速充電に加えて普通充電を行うことができ、それにより、車載充電器を省略できることで、充電システム全体の部品点数及びコストの低減を図ることができる電動車の充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、電動車の駆動用のモータ及びインバータを用いて、外部電源からバッテリーに充電する電動車の充電システムであって、モータは、永久磁石を有するロータと、このロータの外側に配置されたステータと、このステータに巻き付けられ、ロータを間にした状態で互いに対向する第1巻線部及び第2巻線部を有する第1相の巻線と、ステータに巻き付けられ、ロータを間にした状態で互いに対向する第3巻線部及び第4巻線部を有し、第1相の巻線に対して電気角で90度ずれた状態で配置された第2相の巻線と、を有しており、インバータは、バッテリーに互いに接続されるとともに、第1相の第1及び第2巻線部、並びに第2相の第3及び第4巻線部にそれぞれ接続された第1~第4Hブリッジ回路と、第1及び第2巻線部を通る双方向の電流の流れ、並びに第3及び第4巻線部を通る双方向の電流の流れをそれぞれ、オン状態又はオフ状態に切り替える第1及び第2双方向スイッチと、を有し、第1~第4Hブリッジ回路は、スイッチング素子をそれぞれ有する上アーム及び下アームが中点で互いに接続された第1及び第2レグ、第3及び第4レグ、第5及び第6レグ、並びに第7及び第8レグをそれぞれ有し、第1巻線部の一端及び他端に第1及び第2レグの中点がそれぞれ接続され、第2巻線部の一端及び他端に第3及び第4レグの中点がそれぞれ接続され、第3巻線部の一端及び他端に第5及び第6レグの中点がそれぞれ接続され、第4巻線部の一端及び他端に第7及び第8レグの中点がそれぞれ接続されており、第1~第4Hブリッジ回路、第1及び第2双方向スイッチ、並びにロータの停止位置を制御する制御装置を、備えており、制御装置は、DC充電時に、外部電源による直流電流を第1~第4巻線部に通電させるように制御することによって、バッテリーを充電し、AC充電時に、外部電源を、第3巻線部及び/又は第4巻線部に電気的に接続するとともに、ロータを、所定位置に停止させるように制御することにより、バッテリーを充電することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、電動車の駆動用のモータが、上記の第1巻線部及び第2巻線部を有する第1相の巻線、並びに上記の第3巻線部及び第4巻線部を有する第2相の巻線を有している。また、インバータが、上記の第1~第4Hブリッジ回路、並びに上記の第1及び第2双方向スイッチを有している。第1~第4Hブリッジ回路がそれぞれ、第1及び第2レグ、第3及び第4レグ、第5及び第6レグ、並びに第7及び第8レグを有している。そして、第1~第4巻線部の一端及び他端が、上記のように、第1~第8レグの中点にそれぞれ接続されている。
【0009】
第1~第4Hブリッジ回路、第1及び第2双方向スイッチ、並びにロータの停止位置を制御する制御装置により、DC充電時及びAC充電時に、以下のように制御される。具体的には、DC充電時には、外部電源による直流電流を第1~第4巻線部に通電させるように制御し、それにより、バッテリーに充電する。一方、AC充電時には、外部電源を、第3巻線部及び/又は第4巻線部に電気的に接続するとともに、ロータを、所定位置、例えば第1相と第2相とが互いに磁気干渉しない位置に停止するように制御し、それにより、バッテリーを充電する。このように、本発明によれば、駆動用のモータ及びインバータを用い、DC充電による急速充電に加えて、AC充電による普通充電を行うことができ、それにより、従来と異なり、車載充電器を省略できることで、充電システム全体の部品点数及びコストの低減を図ることができる。なお、AC充電時に第3巻線部又は第4巻線部の一端が外部電源に接続される際には、上記一端がインバータのレグから切り離された状態で、外部電源に接続される。
【0010】
請求項2に係る発明は、電動車の駆動用のモータ及びインバータを用いて、外部電源からバッテリーに充電する電動車の充電システムであって、モータは、永久磁石を有するロータと、このロータの外側に配置されたステータと、このステータに巻き付けられ、第1巻線部及び第2巻線部を有する第1相の巻線と、ステータに巻き付けられ、第3巻線部及び第4巻線部を有し、第1相の巻線に対して電気角で90度ずれた状態で配置された第2相の巻線と、を有しており、インバータは、バッテリーに互いに接続されるとともに、第1相の第1及び第2巻線部、並びに第2相の第3及び第4巻線部にそれぞれ接続された第1~第4Hブリッジ回路を有し、第1~第4Hブリッジ回路は、スイッチング素子をそれぞれ有する上アーム及び下アームが中点で互いに接続された第1及び第2レグ、第3及び第4レグ、第5及び第6レグ、並びに第7及び第8レグをそれぞれ有し、第1巻線部の一端及び他端に第1及び第2レグの中点がそれぞれ接続され、第2巻線部の一端及び他端に第3及び第4レグの中点がそれぞれ接続され、第3巻線部の一端及び他端に第5及び第6レグの中点がそれぞれ接続され、第4巻線部の一端及び他端に第7及び第8レグの中点がそれぞれ接続されており、第1~第4Hブリッジ回路を制御する制御装置を、備えており、制御装置は、AC充電時に、外部電源を、第3巻線部及び/又は第4巻線部に電気的に接続するように制御することにより、バッテリーを充電することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、電動車の駆動用のモータが、上記の第1巻線部及び第2巻線部を有する第1相の巻線、並びに上記の第3巻線部及び第4巻線部を有する第2相の巻線を有している。また、インバータが、上記の第1~第4Hブリッジ回路、並びに上記の第1及び第2双方向スイッチを有している。第1~第4Hブリッジ回路がそれぞれ、第1及び第2レグ、第3及び第4レグ、第5及び第6レグ、並びに第7及び第8レグを有している。そして、第1~第4巻線部の一端及び他端が、上記のように、第1~第8レグの中点にそれぞれ接続されている。
【0012】
第1~第4Hブリッジ回路を制御する制御装置により、AC充電時には、外部電源を、第3巻線部及び/又は第4巻線部に電気的に接続するように制御することにより、バッテリーを充電する。このように、本発明によれば、駆動用のモータ及びインバータを用い、AC充電による普通充電を行うことができ、それにより、従来と異なり、車載充電器を省略できることで、充電システム全体の部品点数及びコストの低減を図ることができる。なお、AC充電時に第3巻線部又は第4巻線部の一端が外部電源に接続される際には、上記一端がインバータのレグから切り離された状態で、外部電源に接続される。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の電動車の充電システムにおいて、制御装置は、DC充電時に、外部電源による直流電流を第1~第4巻線部に通電させるように制御することによって、バッテリーを充電することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、制御装置は、DC充電時に、外部電源による直流電流を第1~第4巻線部に通電させるように制御し、それにより、バッテリーを充電する。これにより、駆動用のモータ及びインバータを用い、AC充電による普通充電に加えて、DC充電による急速充電を行うことができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載の電動車の充電システムにおいて、制御装置は、AC充電時に、第3及び第4Hブリッジ回路を力率改善回路として機能させるように制御するとともに、第1及び第2Hブリッジ回路を絶縁DC-DCコンバータとして機能させるように制御することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、制御装置により、AC充電時に、第3及び第4Hブリッジ回路を力率改善回路として機能させるので、外部電源による交流電流の高調波成分を低減し、基調波の正弦波に近づけることができる。また、AC充電時に、第1及び第2Hブリッジ回路を絶縁DC-DCコンバータとして機能させるので、力率改善回路としての第3及び第4Hブリッジ回路からの直流電流を所定電圧に変換し、効率良くバッテリーに充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による電動車の充電システムの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図2】モータの構成、及びモータの巻線と電力供給・充電回路との接続関係を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による電動車の充電システムの電力供給・充電回路を示す回路図である。
【
図4】直列巻線モードにおける電力供給・充電回路の動作を示す図である。
【
図5】並列巻線モードにおける電力供給・充電回路の動作を示す図である。
【
図6】普通充電(AC充電)時における電力供給・充電回路と外部電源(交流)との接続状態、及びロータの角度位置を例示する図である。
【
図7】急速充電(DC充電・400V)時における電力供給・充電回路(直列パターン)と外部電源(直流)との接続状態、及びロータの角度位置を例示する図である。
【
図8】
図7の急速充電時における電力供給・充電回路の動作を示す図である。
【
図9】急速充電(DC充電・400V)時における電力供給・充電回路(並列パターン)と外部電源(直流)との続状態を示す図である。
【
図10】
図9の急速充電時における電力供給・充電回路の動作を示す図である。
【
図11】急速充電(DC充電・400V)時における電力供給・充電回路(並列パターン)と外部電源(直流)との他の接続状態を示す図である。
【
図12】
図11の急速充電時における電力供給・充電回路の動作を示す図である。
【
図13】超急速充電(DC充電・800V)時における電力供給・充電回路と外部電源(直流)との接続状態を示す図である。
【
図14】
図13の超急速充電時における電力供給・充電回路の動作を示す図である。
【
図15】
図2と同様の図であり、第1巻線部と第2巻線部を共通のティースに巻き付けるとともに、第3巻線部と第4巻線部を共通のティースに巻き付けた状態を示す。
【
図16】AC充電時における外部電源の入出力端子の接続状態の変形例を示す図である。
【
図17】超急速充電時における電力供給・充電回路の動作を示す図である。
【
図18】第1双方向スイッチ及び第2双方向スイッチを拡大して示す図であり、(a)は各電力供給・充電回路で用いたスイッチング回路、(b)は他のスイッチング回路である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1に示すように、本発明を適用した充電システム1は、電動車に適用されるものであり、駆動用のモータMと、モータMに電力を供給するとともに、このモータMを介してバッテリーBに充電する電力供給・充電回路2(インバータ)と、この電力供給・充電回路2を制御する制御装置3とを備えている。充電の際には、電力供給・充電回路2が、DC充電及びAC充電可能な外部電源4に接続され、充電システム1に電力が供給される。
【0019】
図2に示すように、モータMは、永久磁石を有するロータ10と、その外周側に配置されたステータ11と、ステータ11に巻かれたα相(第1相)の巻線及びβ相(第2相)の巻線とを備える2相の同期モータであり、例えばブラシレスモータで構成されている。α相の巻線とβ相の巻線(以下、それぞれ単に「巻線α」、「巻線β」という)は、電気角で90度ずれた状態で配置されている。巻線αは、第1巻線部α1及び第2巻線部α2を有し、巻線βは、第3巻線部β1及び第4巻線部β2を有している。第1~第4巻線部α1、α2、β1、β2のそれぞれの巻き数は、互いに等しくなっている。
【0020】
図1に示すように、電力供給・充電回路2は、モータMの駆動時に、直流のバッテリーBからの入力電力を交流に変換してモータMに供給するとともに、バッテリーBの充電時に、外部電源4からの交流又は直流の電力を、モータMを介して、昇圧及び/又は直流に変換してバッテリーBに充電するインバータ回路で構成されている。また、この電力供給・充電回路2は、
図3に示すように、バッテリーBに接続されるとともに、モータMの巻線α(第1巻線部α1及び第2巻線部α2)に接続された第1回路6と、バッテリーBに第1回路6と並列に接続されるとともに、モータMの巻線β(第3巻線部β1及び第4巻線部β2)に接続された第2回路7とを備えている。
【0021】
第1回路6は、第1~第4レグL1~L4と、第1双方向スイッチSWαと、平滑コンデンサC1とを有しており、これらの第1~第4レグL1~L4及び第1平滑コンデンサC1は、バッテリーBに対して互いに並列に接続されている。
【0022】
第1~第4レグL1~L4は、互いに同じ構成を有している。具体的には、第1レグL1は、例えば、互いに並列のスイッチング素子と還流ダイオードでそれぞれ構成された2組の回路が互いに並列接続された上アームAH1と、2つのスイッチング素子と還流ダイオードで、上記の上アームAH1と同様に構成され、上アームAH1に中点P1を介して直列接続された下アームAL1とを有している。第2レグL2は、第1レグL1と同じ構成の上アームAH2及び下アームAL2を有し、下アームAL2が、上アームAH2に中点P2を介して直列接続されている。第3レグL3は、第1レグL1と同じ構成の上アームAH3及び下アームAL3を有し、下アームAL3が、上アームAH3に中点P3を介して直列接続されている。第4レグL4は、第1レグL1と同じ構成の上アームAH4及び下アームAL4を有し、下アームAL4が、上アームAH4に中点P4を介して直列に接続されている。
【0023】
そして、
図2に示すように、モータMの第1巻線部α1の一端は、第1引出線F1を介して、第1レグL1の中点P1に、第1巻線部α1の他端は、第2引出線F2を介して、第2レグL2の中点P2にそれぞれ接続されている。また、モータMの第2巻線部α2の一端は、第3引出線F3を介して、第3レグL3の中点P3に、第2巻線部α2の他端は、第4引出線F4を介して、第4レグL4の中点P4に、それぞれ接続されている。
【0024】
以上の構成から明らかなように、第1レグL1の上下のアームAH1、AL1と、第2レグL2の上下のアームAH2、AL2は、第1Hブリッジ回路HC1を構成しており、それらのスイッチング素子のオン/オフ状態を適宜、切り替えることによって、第1巻線部α1を流れる電流の向きが切り替えられる。同様に、第3レグL3の上下のアームAH3、AL3と第4レグL4の上下のアームAH4、AL4は、第2Hブリッジ回路HC2を構成しており、それらのスイッチング素子のオン/オフ状態を適宜、切り替えることによって、第2巻線部α2を流れる電流の向きが切り替えられる。
【0025】
第1双方向スイッチSWαは、互いに並列のスイッチング素子とダイオードでそれぞれ構成された2組の回路を、互いに逆向きに直列接続(ダイオードの順方向同士又は逆方向同士を接続)したものであり、2組のスイッチング素子の切替制御によって、第1双方向スイッチSWαを通る双方向の電流の流れを、オン状態とオフ状態に切り替えることが可能である。この第1双方向スイッチSWαは、上述した第1Hブリッジ回路HC1と第2Hブリッジ回路HC2の間、より具体的には、第2レグL2の中点P2と、第3レグL3の中点P3との間に配置されている。
【0026】
なお、第1Hブリッジ回路HC1の第2レグL2と、第2Hブリッジ回路HC2の第3レグL3との間には、両レグL2、L3の接続をオン/オフ状態に切替可能なコンタクタ8、8が設けられている。なお、これらのコンタクタ8、8は、以下のように、上記接続をオン/オフ状態に切り替える。すなわち、モータMの駆動時には、駆動通電のために、上記接続をオン状態に切り替える。また、急速充電(DC充電)時には、充電通電のために、上記接続をオン状態に切り替える。さらに、普通充電(AC充電)時には、絶縁のために、上記接続をオフ状態に切り替える。
【0027】
第2回路7は、上述した第1回路6と同様に構成されているので、以下、簡潔に説明する。
図3に示すように、第2回路7は、第5~第8レグL5~L8と、第2双方向スイッチSWβと、第2平滑コンデンサC2とを有している。第5~第8レグL5~L8及び第2平滑コンデンサC2は、バッテリーBに対して互いに並列に接続されている。
【0028】
第5~第8レグL5~L8は、互いに同じ構成を有しており、例えば、互いに並列のスイッチング素子と還流ダイオードで構成された2組の回路が互いに並列接続された上アームAH5~AH8と、これらと同様に構成され、上アームAH5~AH8に中点P5~P8をそれぞれ介して直列接続された下アームAL5~AL8を、それぞれ有している。
【0029】
図2に示すように、モータMの第3巻線部β1の一端は、第5引出線F5を介して、第5レグL5の中点P5に、第3巻線部β1の他端は、第6引出線F6を介して、第6レグL6の中点P6に、それぞれ接続されている。また、モータMの第4巻線部β2の一端は、第7引出線F7を介して、第7レグL7の中点P7に、第4巻線部β2の他端は、第8引出線F8を介して、第8レグL8の中点P8に、それぞれ接続されている。
【0030】
また、第5レグL5の上下のアームAH5、AL5と、第6レグL6の上下のアームAH6、AL6は、第3Hブリッジ回路HC3を構成しており、それらのスイッチング素子のオン/オフ状態を適宜、切り替えることによって、第3巻線部β1を流れる電流の向きが切り替えられる。同様に、第7レグL7の上下のアームAH7、AL7と、第8レグL8の上下のアームAH8、AL8は、第4Hブリッジ回路HC4を構成しており、それらのスイッチング素子のオン/オフ状態を適宜、切り替えることによって、第4巻線部β2を流れる電流の向きが切り替えられる。
【0031】
第2双方向スイッチSWβは、第1双方向スイッチSWαと同様、例えば、互いに並列のスイッチング素子とダイオードでそれぞれ構成された2組の回路を、互いに逆向きに直列接続したものである。2組のスイッチング素子の切替制御によって、第2双方向スイッチSWβを通る双方向の電流の流れを、オン状態とオフ状態に切り替えることが可能である。第2双方向スイッチSWβは、第3Hブリッジ回路HC3と第4Hブリッジ回路HC4の間、より具体的には、第6レグL6の中点P6と、第7レグL7の中点P7との間に配置されている。
【0032】
制御装置3は、CPU、RAM、ROM、及び入出力インターフェース(いずれも図示せず)などを有するマイクロコンピュータで構成されている。この制御装置3によって、電力供給・充電回路2の第1~第4Hブリッジ回路HC1~HC4、第1及び第2双方向スイッチSWα、SWβ、及びモータMのロータ10の停止位置などが制御される。
【0033】
上記のように構成された電力供給・充電回路2では、バッテリーBによるモータMの駆動時に、第1及び第2双方向スイッチSWα、SWβのオン/オフ状態を切り替えることによって、モータMの巻線α、βの接続モードが、以下のような直列巻線モードと並列巻線モードに切り替えられる。
【0034】
・直列巻線モード
図4に示すように、直列巻線モードでは、第1及び第2双方向スイッチSWα、SWβをいずれもオン状態にするとともに、第1レグL1、第4レグL4、第5レグL5及び第8レグL8のスイッチング制御により、互いに直列の巻線αの第1巻線部α1及び第2巻線部α2と、互いに直列の巻線βの第3巻線部β1及び第4巻線部β2に、電力を供給する。これにより、この直列巻線モードでは、巻き数がより多い直列巻線に電流が流れることによって、より小さい電流でトルクを効率良く発生させることができ、低回転域において高いトルク性能を得ることができる。
【0035】
・並列巻線モード
図5に示すように、並列巻線モードでは、第1及び第2双方向スイッチSWα、SWβをいずれもオフ状態にするとともに、第1~第8レグL1~L8のスイッチング制御により、互いに並列の巻線αの第1巻線α1及び第2巻線α2と、互いに並列の巻線βの第3巻線β1及び第4巻線β2に、それぞれ電力を供給する。これにより、この並列巻線モードでは、一対の並列巻線にそれぞれ電流が流れることによって、全体として大きい電流でより大きい出力を発生させることができ、高回転域において高い出力性能を得ることができる。
【0036】
次に、
図6~
図14を参照して、充電システム1による充電動作について説明する。
図6は、普通充電(AC充電)時における電力供給・充電回路2と外部電源4との接続状態、及びモータMにおけるロータ10の角度位置を示している。同図(a)に示すように、普通充電時には、外部電源4の2つの入出力端子4a、4aが電線Wを介して第6レグL6の中点P6及び第7レグL7の中点P7に接続される。
【0037】
また、モータMのロータ10は、その磁極の方向が巻線α又は巻線βと一致する角度位置で停止するように制御される。具体的には、例えば、ロータ10の磁極の方向を、
図6(b)に示すように、第1巻線α1及び第2巻線α2を有する巻線αに一致させたり、同図(c)に示すように、第3巻線β1及び第4巻線β2を有する巻線βに一致させたりするよう、ロータ10の角度位置が制御される。そして、相互インダクタンスを、充電方式によって制御することで充電特性が向上する。例えば、
図6及び
図16のAC充電時には第3巻線β1及び第4巻線β2は力率改善回路として活用し、第1巻線α1及び第2巻線α2は絶縁双方向DC-DCコンバータとして機能させるため、α相とβ相の相互インダクタンスを小さくする方が磁気干渉によるリプル電流が低減するため充電効率が向上する。
【0038】
また、普通充電時には、第1及び第2双方向スイッチSWα、SWβをいずれもオフ状態にするとともに、第2レグL2と第3レグL3との間の両コンタクタ8、8をいずれもオフ状態にする。
【0039】
そして、普通充電時には、制御装置3により、上記の状態で、第1~第4Hブリッジ回路HC1~HC4のスイッチング素子のオン/オフ状態の切替制御を実行する。この場合、第3及び第4Hブリッジ回路HC3、HC4の第2回路7が、力率改善回路(PFC回路)として機能する一方、第1及び第2Hブリッジ回路HC1、HC2の第1回路6が絶縁DC-DCコンバータとして機能する。上記の第2回路7がPFC回路として機能することにより、外部電源4による交流電流の高調波成分を低減し、基調波の正弦波に近づけることができる。また、上記の第1回路6が絶縁DC-DCコンバータとして機能することにより、第2回路7からの直流電流を所定電圧に変換し、効率良くバッテリーBに充電することができる。
【0040】
図7は、急速充電(DC充電・400V)時における直列パターンの電力供給・充電回路2と外部電源4との接続状態、及びモータMにおけるロータ10の角度位置を示している。同図(a)に示すように、この急速充電時には、外部電源4の入出力端子4aが、電線Wを介して、第4レグL4の中点P4及び第8レグL8の中点P8にそれぞれ接続され、外部電源4の入出力端子4aが、電線Wを介して、第5レグL5の第5下アームAL5と第6レグL6の第6下アームAL6との間の所定点Q1に接続される。
【0041】
また、モータMのロータ10の角度位置は特に限定されないが、例えばロータ10の磁極の方向が、巻線αと巻線βの間に位置する角度位置で停止するように制御される(
図7(b)、(c)参照)。さらに、この急速充電では、第1及び第2双方向スイッチSWα、SWβをいずれもオン状態にするとともに、第2レグL2と第3レグL3との間の両コンタクタ8、8をオン状態にする。
【0042】
そして、制御装置3により、上記の状態で、第1~第4Hブリッジ回路HC1~HC4のスイッチング素子のオン/オフ状態の切替制御を実行する。
図8は、
図7の急速充電時における電力供給・充電回路2の動作を示している。
図8に示すように、この急速充電時には、外部電源4からの直流電流が破線矢印のように流れるよう、各スイッチング素子のオン/オフ状態が切替制御され、それにより、インダクタとしての巻線αの第1及び第2巻線部α1、α2、並びに巻線βの第3及び第4巻線部β1、β2に電流が貯まる。そして、所定のスイッチング素子を切り替えることにより、昇圧された電流が
図8の実線矢印のように流れ、バッテリーBが充電される。なお、この場合、巻線α及びβに電流が流れるため、鉄損が発生するものの、モータMの大きなインダクタンスを使用することができるため、電流リプルを低減することができる。
【0043】
図9は、急速充電(DC充電・400V)時における並列パターンの電力供給・充電回路2と外部電源4との接続状態を示している。同図に示すように、この急速充電時には、外部電源4の入出力端子4aが電線Wを介して、第1及び第2双方向スイッチSWα、SWβに接続されている。具体的には、両双方向スイッチSWα、SWβにおいて、それぞれの2つのスイッチング素子間に、外部電源4の入出力端子4aが接続される。なお、外部電源4の他の入出力端子4aが、第7レグL7の第7下アームAL7と第8レグL8の第8下アームAL8との間の所定点Q2に電線Wを介して接続される。
【0044】
また、モータMのロータ10の角度位置は、前述した
図7の急速充電時と同様、特に限定されない。さらに、この急速充電では、第1及び第2双方向スイッチSWα、SWβをいずれもオン状態にするとともに、第2レグL2と第3レグL3との間の両コンタクタ8、8をオン状態にする。
【0045】
そして、制御装置3により、上記の状態で、第1~第4Hブリッジ回路HC1~HC4のスイッチング素子のオン/オフ状態の切替制御を実行する。
図10は、
図9の急速充電時における電力供給・充電回路2の動作を示している。
図10に示すように、この急速充電時には、外部電源4からの直流電流が破線矢印のように流れるよう、各スイッチング素子のオン/オフ状態が切替制御され、それにより、インダクタとしての巻線αの第1及び第2巻線部α1、α2、並びに巻線βの第3及び第4巻線部β1、β2に電流が貯まる。そして、所定のスイッチング素子を切り替えることにより、昇圧された電流が
図10の実線矢印のように流れ、バッテリーBに充電される。なお、この場合、巻線αの第1巻線部α1と第2巻線部α2、及び巻線βの第3巻線β1と第4巻線β2では、互いに逆向きの電流が流れるため、モータM内で生じる磁束が打ち消され、鉄損を大幅に低減することができる。また、上記の手法は、磁気結合されていない、モータの漏れインダクタンス部で昇圧する仕組みである。
【0046】
図11は、急速充電(DC充電・400V)時における他の並列パターンの電力供給・充電回路2と外部電源4との接続状態を示している。同図に示すように、この急速充電時には、外部電源4の入出力端子4aが電線Wを介して、巻線αの第1巻線部α1及び第2巻線部α2、並びに巻線βの第3巻線部β1及び第4巻線部β2の一端部に接続されている。具体的には、第2レグL2の中点P2、第4レグL4の中点P4、第6レグL6の中点P6、及び第8レグL8の中点P8に、外部電源4の入出力端子4aが接続される。なお、外部電源4の他の入出力端子4aが、第7レグL7の第7下アームAL7と第8レグL8の第8下アームAL8との間の所定点Q2に電線Wを介して接続される。
【0047】
また、モータMのロータ10の角度位置は、前述した
図7の急速充電時と同様、特に限定されない。さらに、この急速充電では、第1及び第2双方向スイッチSWα、SWβをいずれもオフ状態にするとともに、第2レグL2と第3レグL3との間の両コンタクタ8、8をオン状態にする。
【0048】
そして、制御装置3により、上記の状態で、第1~第4Hブリッジ回路HC1~HC4のスイッチング素子のオン/オフ状態の切替制御を実行する。
図12は、
図11の急速充電時における電力供給・充電回路2の動作を示している。
図12に示すように、この急速充電時には、外部電源4からの直流電流が破線矢印のように流れるよう、各スイッチング素子のオン/オフ状態が切替制御され、それにより、インダクタとしての巻線αの第1及び第2巻線部α1、α2、並びに巻線βの第3及び第4巻線部β1、β2に電流が貯まる。そして、所定のスイッチング素子を切り替えることにより、昇圧された電流が
図12の実線矢印のように流れ、バッテリーBに充電される。
【0049】
図13は、超急速充電(DC充電・800V)時における電力供給・充電回路2と外部電源4との接続状態を示している。同図に示すように、この超急速充電時には、前述した
図7の急速充電時と同様、外部電源4の入出力端子4aが、電線Wを介して、第4レグL4の中点P4及び第8レグL8の中点P8にそれぞれ接続され、外部電源4の他の入出力端子4aが、電線Wを介して、第5レグL5の第5下アームAL5と第6レグL6の第6下アームAL6との間の所定点Q1に接続される。
【0050】
また、モータMのロータ10の角度位置は、前述した
図7の急速充電時と同様、特に限定されない。さらに、この超急速充電では、第1及び第2双方向スイッチSWα、SWβをいずれもオン状態にするとともに、第2レグL2と第3レグL3との間の両コンタクタ8、8をオン状態にする。
【0051】
そして、制御装置3により、上記の状態で、第1~第4Hブリッジ回路HC1~HC4のスイッチング素子のオン/オフ状態の切替制御を実行する。
図14は、
図13の超急速充電時における電力供給・充電回路2の動作を示している。
図14に示すように、この超急速充電時には、外部電源4がバッテリーBの電圧よりも高くなっており、それにより、外部電源4からの電流が実線矢印のように流れ、バッテリーBに充電される。なお、
図14に代えて、
図17に示すように、外部電源4からの電流を流すようにしてもよい。
【0052】
以上のように、本実施形態の充電システム1によれば、電動車に搭載される駆動用のモータM、及びインバータとしての電力供給・充電回路2を用い、DC充電による急速充電に加えて、AC充電による普通充電を行うことができる。それにより、充電システム1では、従来と異なり、車載充電器を省略できることで、充電システム全体の部品点数及びコストの低減を図ることができる。
【0053】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0054】
図15は、第1巻線部α1と第2巻線部α2を、ステータ11の共通のティースに巻き付けるとともに、第3巻線部β1と第4巻線部β2を、ステータ11の共通のティースに巻き付けた状態を示している。同図に示す状態は、前述した
図2と等価であり、また、モータMは、巻線αと巻線βの位相角が電気角で90度であれば、どのような構造でもよい。また、実施形態では、巻線方式について、1極対分の集中巻きであるが、これに代えて分布巻としてもよい。
【0055】
また、普通充電の際に、
図16に示すように、外部電源4と電力供給・充電回路2の第2回路7とを接続してもよい。同図に示すように、具体的には、外部電源4の入出力端子4a、4aを、実線で示す電線W1を介して、第2回路7における第5レグL5の中点P5、及び第3巻線部β1の中点P5側の端部に接続してもよい。なおこの場合には、上記中点P5と第3巻線部β1の上記端部との間に、コンタクタ8aを設け、普通充電の際に、コンタクタ8aにより、第3巻線部β1が第5レグL5の中点P5に対して取り外された状態となる。
【0056】
さらに、上記に代えて、外部電源4の入出力端子4a、4aを、二点鎖線で示す電線W2を介して、第2回路7における第7レグL7の中点P7、及び第4巻線部β2の中点P7側の端部に接続してもよい。なお、この場合には、上記中点P7と第4巻線部β2の上記端部との間に、コンタクタ8bを設け、普通充電の際に、コンタクタ8bにより、第4巻線部β2が第7レグL7の中点P7に対して取り外された状態となる。
【0057】
前述した
図6の普通充電時では、第3巻線部β1と第4巻線部β2のインダクタンスを使用する第2回路7をPFC回路として、第5レグL5及び第8レグL8を用いて、外部電源4からの交流を直流に変換するものである。しかし、第6レグL6や第7レグL7においてダイオードを介して電流が流れることで、制御性の悪化や無駄な電流が流れるおそれがある。そこで、このような不具合を解消するために、上述した
図16の外部電源4と第2回路7との接続により、普通充電時において、第4巻線部β2又は第3巻線部β1を使用せず、第2回路7をPFC回路として機能させてもよい。
【0058】
また、電力供給・充電回路2で用いた第1及び第2双方向スイッチSWα及びSWβについては、
図18(a)に示すように、互いに並列のスイッチング素子とダイオードで構成された2組の回路を、ダイオードの順方向同士が接続されるようにしたが、同図(b)に示すように、ダイオードの逆方向同士が接続されるようにすることも可能である。
【0059】
さらに、上述した電力供給・充電回路2では、第1及び第2双方向スイッチSWα及びSWβを用いたが、これらの双方向スイッチSWα及びSWβを省略した電力供給・充電回路を採用することも可能である。
【0060】
また、実施形態で示した充電システム1の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 充電システム
2 電力供給・充電回路(インバータ)
3 制御装置
4 外部電源
4a 入出力端子
6 第1回路
7 第2回路
8 コンタクタ
10 ロータ
11 ステータ
M モータ
B バッテリー
W 電線
W1 電線
W2 電線
α1 第1巻線部
α2 第2巻線部
β1 第3巻線部
β2 第4巻線部
SWα 第1双方向スイッチ
SWβ 第2双方向スイッチ
HC1~HC4 第1~第4Hブリッジ回路
AH1~AH8 第1~第8上アーム
AL1~AL8 第1~第8下アーム
L1~L8 第1~第8レグ
P1~P8 第1~第8レグの中点