(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137668
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】美容器
(51)【国際特許分類】
A45D 20/12 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A45D20/12 Z
A45D20/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207304
(22)【出願日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2023047151
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴三代
【テーマコード(参考)】
3B040
【Fターム(参考)】
3B040CH04
3B040CK00
(57)【要約】
【課題】 髪を梳かしながらイオン化された送風を行って整髪を行うことが可能であって、かつ小型化を実現した美容器を提供すること。
【解決手段】 髪を梳く複数のピンを配列したピン部と、ピン部を支持する本体部とからなる美容器であって、ピン部近傍から髪に向けて送風する送風手段と、送風手段が送風する空気をイオン化するイオン化手段とを備えたことを特徴とする美容器を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
髪を梳く複数のピンを配列したピン部と、該ピン部を支持する本体部とからなる美容器であって、
該ピン部近傍から髪に向けて送風する送風手段と、
該送風手段が送風する空気をイオン化するイオン化手段と
を備えたことを特徴とする美容器。
【請求項2】
前記イオン化手段が、プラスイオン及びマイナスイオンの両方のイオン化を行うものであり、
前記送風手段からそれぞれにイオン化された空気を送風する
請求項1に記載の美容器。
【請求項3】
前記ピン部を振動させる振動手段をさらに備えた
請求項1又は2に記載の美容器。
【請求項4】
髪に向けて送風する前記送風手段の吹出口が、
前記ピン部の周縁であって、
髪を梳く方向の下流側に設けられる
請求項1又は2に記載の美容器。
【請求項5】
髪に向けて送風する前記送風手段の吹出口が、
前記ピン部の周縁であって、
髪を梳く方向の上流側にも設けられる
請求項4に記載の美容器。
【請求項6】
前記ピン部又は前記本体部のいずれかに、
前記ピン部における少なくとも一部のピンを加熱する加熱手段をさらに備えた
請求項1又は2に記載の美容器。
【請求項7】
前記ピン部が前記本体部に対して着脱可能である
請求項1又は2に記載の美容器。
【請求項8】
前記ピンを第1の方向に配列し、隣接するピンの間の領域を髪が通過する構成において、該領域中の該第1の方向における中心点を結ぶ線が、該第1の方向に直交する第2の方向に対して傾斜している
請求項1又は2に記載の美容器。
【請求項9】
髪を梳く複数のピンを配列したピン部と、該ピン部を支持する本体部とからなる美容器であって、
該ピンを第1の方向に配列し、隣接するピンの間の領域を髪が通過する構成において、該領域中の該第1の方向における中心点を結ぶ線が、該第1の方向に直交する第2の方向に対して傾斜している
ことを特徴とする美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の髪を梳かしながら美容作用を及ぼす美容器に関する。
【背景技術】
【0002】
頭皮や頭髪に対して電流を通電することにより電極で発生したイオンを作用させるヘアケア用品が従来提案されている。
例えば、特許文献1には、電源に接続される陰極棒と陽極棒をブラシ状に多数植設した皮膚処理に用いる器具が開示されている。本器具の形状については、皮膚処理器具本体をタワシを持つ要領で手に持つような形にしたものと開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、頭皮に適正な刺激を付与する毛根刺激器が開示されている。本器具はグリップと、グリップから延びた櫛体に多数の櫛刃が配設されており、この櫛刃先端に電極を設けて電流を流すことが記載されている。
【0004】
特許文献3には、加熱した空気流を送風するとともにイオンを放出するヘアブラシや、ヘアドライヤーも開示されている。イオンを放出させるために、放電電極とグラウンド電極がケーシングの内部に設けられ、この電極間の放電作用で発生したイオンを送風と共に放出する髪ケア装置が提案されている。
【0005】
特許文献4には、ドライヤー本体の送風口の送風方向に頭皮マッサージアタッチメントを付設し、振動を発生して該頭皮マッサージアタッチメントを振動させるバイブレータを備えたドライヤーの構成が開示されている。
【0006】
特許文献5には、ドライヤーの乾燥・送風機能を有すると同時に、イオン導入、イオン導出といったイオンを作用させた美容効果を有するドライヤーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-262124号公報
【特許文献2】実登第3005990号公報
【特許文献3】特許第4980998号
【特許文献4】特許第6199990号
【特許文献5】特開2020-06240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術によると、髪を梳かす際に送風を行うことやその際にマイナスイオンを発生させることは開示されているが、いずれもドライヤーの先端に取り付ける大きな器具であったり、頭皮に対して美容を行うものであり、整髪に対する美容作用を主たる目的とした小型の器具は提供されていない。
【0009】
本発明はこのような従来技術に鑑みて創出されたものであり、髪を梳かしながらイオン化された送風を行って整髪を行うことが可能であって、かつ小型化を実現した美容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は次のような美容器を提供する。
すなわち、本発明の第1の実施態様によれば、髪を梳く複数のピンを配列したピン部と、ピン部を支持する本体部とからなる美容器であって、ピン部近傍から髪に向けて送風する送風手段と、送風手段が送風する空気をイオン化するイオン化手段とを備えたことを特徴とする美容器を提供する。
【0011】
本発明の第2の実施態様によれば、上記のイオン化手段が、プラスイオン及びマイナスイオンの両方のイオン化を行うものであり、上記送風手段からそれぞれにイオン化された空気を送風する構成でもよい。
【0012】
本発明の第3の実施態様によれば、上記ピン部を振動させる振動手段をさらに備えることができる。
【0013】
本発明の第4の実施態様によれば、髪に向けて送風する上記の送風手段の吹出口が、上記ピン部の周縁であって、髪を梳く方向の下流側に設けられる構成でもよい。
【0014】
本発明の第5の実施態様によれば、第4の実施態様に加えて、吹出口が、ピン部の周縁であって、髪を梳く方向の上流側にも設けられる構成でもよい。
【0015】
本発明の第6の実施態様によれば、上記ピン部又は上記本体部のいずれかに、ピン部における少なくとも一部のピンを加熱する加熱手段をさらに備えることもできる。
【0016】
本発明の第7の実施態様によれば、上記ピン部が上記本体部に対して着脱可能であってもよい。
【0017】
本発明の第8の実施態様によれば、上記ピンを第1の方向に配列し、隣接するピンの間の領域を髪が通過する構成において、領域中の第1の方向における中心点を結ぶ線が、第1の方向に直交する第2の方向に対して傾斜している構成でもよい。
【0018】
本発明の第9の実施態様によれば、髪を梳く複数のピンを配列したピン部と、ピン部を支持する本体部とからなる美容器であって、ピンを第1の方向に配列し、隣接するピンの間の領域を髪が通過する構成において、領域中の該第1の方向における中心点を結ぶ線が、第1の方向に直交する第2の方向に対して傾斜している美容器を提供することもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成により次のような効果を奏する。
ピン部近傍から髪に向けて送風する送風手段と、送風手段が送風する空気をイオン化するイオン化手段とを備え、特にプラスイオン及びマイナスイオンの両方のイオン化を行うことによって髪を梳かしながら、静電気の除去や、髪のごわつきを軽減することができる。
【0020】
また、振動手段を合わせて備えることにより、櫛かかりを補助し、摩擦を軽減することができる。ピン部が髪に正しく通ることで本発明による美容効果を高めることができる。
【0021】
本美容器に加熱手段を備えることで、髪を梳かしながら艶を与えることができ、加えて上記送風手段による冷却効果と、開いたキューティクルを閉じる作用を合わせて付与することができる。
【0022】
ピンの間の領域の中心線が上記第2の方向に対して傾斜していることによって、髪を梳く際にピンと髪との接触が増して、美容器の美容効果を十分に作用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】美容器のピンアタッチメントの構造を説明する分解図。
【
図4】ピンアタッチメントの着脱状態を示す説明図。
【
図7】本発明の第2の実施例に係る美容器の斜視図。
【
図8】本発明の第2の実施例に係る美容器の正面図及び底面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
図1は本発明に係る美容器(1)の斜視図、
図2はピンアタッチメントの構造を説明する分解図、
図3は美容器のピン部の断面図である。
図1に図示する美容器(1)は、手前側の上カバーを外して内部構造が視認できるように表示している。
【0025】
美容器(1)は、髪を梳く複数のピンを配列したピン部を有するピンアタッチメント(2)と、ピンアタッチメントを支持し、バッテリや制御回路等を内装した本体部(3)とから構成される。本実施例ではこのようにピンアタッチメント(2)と本体部(3)が着脱出来るように構成しているが、本発明はこれに限定されず、ピン部と本体部が一体化されていてもよい。
【0026】
本実施例に係る美容器は、使用者の手の平に収まる携帯式であり、本体部(3)には電源となるバッテリー(30)、送風手段であるブロアファン(31)、制御回路、イオン化手段である2つのイオナイザー(32)(32)、動作状態を操作するための2つのスイッチ(33)(33)、動作状態を表示するランプ(34)、バッテリー(30)に給電するための充電用ポート(35)、振動モータ(36)を備える。
なお、送風手段はブロアファンに限らず、送風可能な任意の手段に変更可能である。
【0027】
ピンアタッチメント(2)は、
図2に示すように櫛状のガード体(20)、ガード体(20)に挿入され、内部にフィルムヒータ(210)を内蔵するヒータピンユニット(21)、断熱材(22)、下カバー(23)とから構成される。本実施例において、ガード体(20)及びヒータピンユニット(21)が複数のピンを配列した形状を成すことにより髪を梳かすピン部(24)を構成している。
ピンアタッチメント(2)と本体部(3)との間は通電手段を有してバッテリー(30)からの電力をフィルムヒータ(210)に供給可能である。
なお、加熱手段はフィルムヒータに限らず、セラミックヒータ、MCHヒータなど任意に変更可能である。
【0028】
図4に示すように、ピンアタッチメント(2)と本体部(3)はスライドすることで着脱可能に構成されている。下カバー(23)の溝(230)(230)と、本体部(3)の装着部(37)における突起(370)(370)が係合することにより着脱自在である。
【0029】
このように着脱に際してピンアタッチメント(2)のスライド方向を、ピンの配列方向と平行にしたことで、髪を梳かす方向とは直交し、ピンアタッチメント(2)が外れにくい利点がある。
【0030】
また、ピンアタッチメント(2)に熱源となるフィルムヒータ(210)を配置する一方、本体部(3)にリチウムイオン電池などのバッテリー(30)を配置し、相互に分離できるようにしたことで、分離して航空機に持ち込むことができる利点がある。従って、熱源をピンアタッチメント(2)側に、電源を本体部(3)側に分離配置することが好ましい。
【0031】
次に本美容器の動作を詳述する。
使用者がスイッチ(33)で電源をオンにするとブロアファン(31)が駆動し、本体部(3)の背面カバー(38)に開口した吸気口(380)から空気を吸入し、装着部(37)の排気口(371)から排出する。その空気はさらにピンアタッチメント(2)内の送風経路を経てガード体(20)に開口した吹出口(200)からピン部(24)の近傍に向けて送風される。
【0032】
同時に、フィルムヒータ(210)が真鍮で形成されるヒータピンユニット(21)の基部面の略全体と直接接して加熱することで、ヒータピンユニット(21)の柱状の各ピン(211)・・に均一に熱を伝導することができる。フィルムヒータ(210)を採用したことで、各ピン(211)間の温度差が生じにくい点も本発明の特徴である。
本実施例のフィルムヒータ(210)の加熱温度は概ね90~250℃の範囲、特に140℃程度が好ましく、かつ電源のオンから1分以内には所定温度に達することが使用上便利である。
【0033】
本実施例のスイッチ(33)(33)は手で把持する本体部(3)の板状の広い側面ではなく、板状の厚み部分、かつ後方に配置している。これによって誤って操作することが防げる。また、一方のスイッチがフィルムヒータ(210)の入切、他方が振動モータ(36)の入切というように、所望の機能を切り替えて使用できるようになっている。
【0034】
ヒータピンユニット(21)は、シリコン樹脂製のガード体(20)で外周を覆われており、これにより加熱された各ピン(211)が頭皮や手などの肌と直接接しないように保護している。一方、ガード体(20)は各ピン(211)に挟まれた領域には形成されないので、髪を梳く時に各ピン(211)同士が対向する面には髪が直接接することができる。
【0035】
さらに詳しく説明すると、
図3のようにピン(211)表面とガード体(20)の内周面(201)との間には空隙(202)が設けられ、ピン(211)の熱がガード体(20)に伝わりにくくしている。このことは、ガード体(20)が高温にならないようにすると同時に、各ピン(211)の温度が低下しにくく保温する効果も奏する。
【0036】
空隙(202)は、ピン(211)の先端とガード体(20)との間は相対的に広く、ピン(211)の周側面とガード体(20)との間は相対的に狭く形成し、ピン(211)が頭皮にぶつかったときの衝撃を和らげやすく構成している。
【0037】
ここで、ヒータピンユニット(21)は本実施例のように真鍮の他、アルミニウムや胴、カーボンなど熱伝導率の高い材料で形成することが好ましい。具体的には、ヒータピンユニット(21)は1W/m・K以上、より好ましくは10W/m・K以上の材料を用いることが好ましい。
【0038】
一方、ガード体(20)は本実施例のように耐熱性に優れたシリコン樹脂が好ましいが、概ね200℃以上の耐熱樹脂や、陶器、ガラスなども適宜用いることができる。ガード体(20)の熱伝導率は低いことが好ましく、5W/m・K以下、より好ましくは0.5W/m・K以下の材料を用いることが好ましい。
【0039】
発明者の知見によれば、髪を梳かす際に髪の表面に金属の平滑な表面を直接接触させ、摺動させることで髪の色艶出しがさらに高まる。本発明では上記実施例のようにピン(211)の間に髪が通ってピン(211)の略全長に広く接触するようにしたことでこの美容効果をさらに高めることに寄与している。
【0040】
なお、上記の観点から本実施例よりもピン(211)をさらに密に設けることも好ましい。本実施例では、すべてのピン(211)をガード体(20)が覆っているが、所定の数本おきに覆う構成でもよい。また、ピン(211)とガード体(20)を別々に設け、ガード体がピン(211)と肌の接触を防ぐようにしてもよい。例えばピン(211)の間にピンの径や高さよりも大きな平板状のガード体(20)を並列させてピン(211)が肌と接触しないように構成してもよい。
【0041】
以上のように髪に熱を加えた後、吹出口(200)からピン部(24)の近傍に向けて送風することで、加熱によって開いたキューティクルを閉じる美容作用を行う。
本発明において、吹出口(200)はピンの配列方向に平行に略直線状とし、ピン部(24)の直近傍であることが好ましい。すなわち、ピン部(24)との離隔距離は1mmないし20mm、特に5mm以内の直近傍とすることにより、加熱された髪を速やかに冷却することができる。
【0042】
加えて、本発明の特徴として、イオナイザー(32)(32)でイオン化した空気を髪に当てる。このとき、従来一般的なマイナスイオンの放出だけでなく、プラスイオンの放出を行うために、2個のイオナイザー(32)(32)を設けている。
図1に示すようにブロアファン(31)の両側にイオナイザー(32)(32)を配置し、排気口(371)の両側にそれぞれの電極を配することで、省スペース化を図りながら両極のイオン化された空気を送風することができる。
【0043】
本発明を使用者が手で簡単に把持する上で、ブロアファン(31)を用いて側面から広く吸気し、90度角度を変じてピン部(24)側に送風すると共に、そのブロアファン(31)の両側に両極性のイオナイザーを配置する構造は、小型の美容器を提供するために特に好適である。
【0044】
なおイオナイザー(32)はマイナスイオンのみ、プラスイオンのみ、のいずれかの極性だけを放出するものでもよい。このときイオナイザー(32)は1個だけでもよい。
【0045】
本発明の吹出口(200)はピン部(24)におけるピンの配列の片側一方に設けられている。この場合、送風するのは髪を梳く方向の下流側、すなわちピン部(24)を通って熱せられた髪を冷却する側が好ましい。従って、上カバー(39)や下カバー(38)などに髪を梳かす方向を表示する方向表示部を設けて、使用者が正しい向きで使用することを促すようにしてもよい。
【0046】
また別の実施例として、
図5に示すようにブロアファン(31)からの送風を上下両面の排気口(372)(373)から排気して、ガード体(20)の上下両面に設けた吹出口(203)(204)からピン部(24)に向けて送風するように構成してもよい。
この場合、髪を梳く方向の上流側、すなわちピン部(24)に通る前の髪と、下流側、すなわちピン部(24)を通った後の髪の両方にイオン化された風を当てることができるので、向きに留意することなく使用することができる。
【0047】
ここで、髪を梳く方向の上流側に送風することによって静電気を抑えることができるので、両側に送風することも美容作用として効果的である。
【0048】
ただし、省電力や、主目的が梳かした後の髪にイオンを当てることにあるので、任意の方法で下流側のみ送風するようにしてもよい。例えば、それぞれの吹出口にモータを備え、センサ手段によって梳いている方向を感知した上で、下流側のみ送風するようにモータを制御してもよい。
【0049】
また、一般的に梳く方向が上から下に向かっていることに鑑み、吹出口に回動する開閉扉(205)(206)を設け、開閉扉の自重で上側(205)が開き、下側(206)が閉じるなどの方法をとることもできる。センサ手段も美容器の上下方向だけを感知する簡易な方法でもよい。
【0050】
さらに、本体部(3)に振動モータ(36)が内蔵されている。振動モータ(36)で発生した振動をピンアタッチメント(2)に伝動し、櫛かかりを補助し、髪を梳かす際の摩擦を軽減することができる。振動と加熱とを組み合わせることによって髪の色艶だしがさらに効果的に行える。
【0051】
なお、振動手段は、一般的で低価格な偏心回転質量振動モータのほか、一軸方向だけに振動するリニア振動モータを用いることもできる。一軸方向を櫛の配列と平行に設計することにより、髪を梳く方向に対して直角に、すなわち左右に掻き分けるように振動させることで細かな絡みをほぐしながらケアすることができる。
また、振動の態様として、音波振動や超音波振動として、対応する振動手段を用いることもできる。
【0052】
振動手段は本体部(3)ではなくピンアタッチメント(2)に備えてもよい。この場合、本体部(3)の振動を抑え、ピン部(24)の振動を効率よく行うことができる。
【0053】
本実施例に係る美容器(1)は、上記のように櫛として形成されているが、ピンが複数の列に配列されたブラシとして提供してもよい。例えばピンの配列がピンの先端側から見て円形や楕円形、矩形となるように多数植設された構成でもよい。この場合、植設されたピン部の周縁に沿うように上記の吹出口を配置することができる。例えば長楕円の場合に長手方向の両側に沿って、2つの吹出口を設けることもできる。
【0054】
図6は、本美容器(1)に用いるキャップ(4)の構造を説明する図である。キャップ(4)はピンアタッチメント(2)を囲むカバー部(40)が形成され、ピンアタッチメント(2)に着脱可能に係合する。ピンアタッチメント(2)の先端は高温に対応して内部の耐熱スポンジ(41)に当接する。
キャップ(4)を取り付けた場合には、電源がオンにならない検知スイッチを設けるか、キャップが電源ボタン自体を隠すように構成して、安全性を高めることが好ましい。
【0055】
本発明の実施例は以上の通りであるが、本発明では振動手段や加熱手段は必ずしも備えなくてもよく、イオン化された空気を送風する機能だけを備えた櫛、又はブラシとして提供することもできる。特に、実施例で示したような手の平に収まるような小型の櫛にイオン化された空気を送風する簡易な製品として提供すれば、通常の櫛の持ち運びの便利さに、新しい付加機能を有する製品が実現できる。
【0056】
また、本美容器(1)は単体で提供されるだけでなく、さらに別の器具に接続されるアタッチメントとして提供されてもよい。例えば、出願人による特許第7074935号に開示されるブラシ状の美容器のアタッチメントや、特許第6199990号に開示されるドライヤーのアタッチメントとして新たな機能を提供する美容器を提供してもよい。
【0057】
本発明に適用するとさらに好適な付加機能を挙げる。
第1に、送風される空気の温度をさらに下げるために、本体部にペルチェ素子などの熱電素子を備え、ブロアファン(31)からの排気を冷却することもできる。あるいは送風経路のいずれかに放熱板を配置して、送風温度を下げることもできる。
【0058】
第2に、イオナイザー(32)を用いてイオン化した空気はオゾン臭が生じ、頭髪に使用することに抵抗感を抱かせる場合がある。そこで、送風経路のいずれかにアロマオイル等の香料を蒸発させる領域を設け、送風される空気に香りを付けることもできる。
【0059】
第3に、ピン(211)やガード体(20)のピン部(24)に電極領域を設け、EMS(Electrical Muscle Stimulation)のための電流を通電し、頭髪だけでなく頭皮に対するマッサージ機能を付加してもよい。
【0060】
第4に、ピン(211)やガード体(20)のピン部(24)において、2極以上の電極を設けて、ピン間で通電する構成としてもよい。このとき、EMSの他、RF周波数によって肌に対して温感作用を及ぼしてもよい。
【0061】
第5に、ピン(211)やガード体(20)のピン部(24)に電極領域を設けると共に、本体部(3)に人体と接触する電極を設け、それらの電極間でイオン導入、イオン導出の美容を行ってもよい。
【0062】
(第2実施例)
図7は本発明の第2の実施例に係る美容器の斜視図、
図8は同、正面図及び底面図である。
本実施例の美容器(100)は、ピンアタッチメント(102)、本体部(103)を含む。本体部(103)の内部には上記実施例と同様に、バッテリー、ブロアファン、イオナイザー、振動モータなどの機器を備えることができる。
【0063】
本体部(103)は側面視で略半円形で上面(103a)はやや平坦とし、正面視では左右がほぼ直線で立ち上がり上端付近が略半円形である。そして、正面側から左右のそれぞれ側面に向かって親指と残りの手指が嵌まる凹部(103b)が形成されている。
凹部(103b)は左右側面の略中央まで設けられ、美容器(100)を把持したときにちょうど親指が嵌まる程度の長さとなっている。
【0064】
さらに凹部(103b)の後方にはブロアファンが空気を吸入する小孔群(103c)が配置される。凹部(103b)とずらした位置に小孔群(103c)を設けたことで吸入孔を塞ぐことなく、効率良く送風を行うことができる。
【0065】
ピンアタッチメント(102)には上記実施例と同様にピン部(110)が備えられ、ピン部(110)には美容器(100)の前後方向(第1の方向L1)に沿って複数のピン(111)・・が配列している。
【0066】
ここで、本実施例のピン(111)・・は、第1の方向L1に直交する第2の方向L2に対して、所定角度α傾斜して配置されている。より詳しく説明すると、
図9(a)のように、隣接するピン(111)(111)の間の領域(A1)を髪が通過する構成において、領域(A1)中の第1の方向L1における中心点を結ぶ線(中心線C1)が、第1の方向L1に直交する第2の方向L2に対してα度傾斜している。
本図においてピンは断面が平行四辺形であるが、ピンの形状は任意である。
【0067】
例えば
図9(b)のように断面が正方形のピン(112)・・についても、隣接するピン(112)(112)の間の領域(A2)を髪が通過する構成において、領域(A2)中の中心線C2が、第1の方向L1に直交する第2の方向L2に対してα度傾斜している。
【0068】
また、
図9(c)のように断面が長楕円のピン(113)・・の場合は、ピン(113)とピン(113)の間の距離が場所によって変化するが、この場合でも間の領域(A3)中の第1の方向L1における中心点を結ぶ中心線C3が、第1の方向L1に直交する第2の方向L2に対してα度傾斜させることができる。
【0069】
このように ピンの間の領域の中心線を第2の方向L2に対して傾斜していることによって、髪を梳く際にピンと髪との接触が増して、美容器の美容効果を十分に作用することができる。
特に、上記ヒータピンユニット(21)を備える場合、髪がヒータピンユニット(21)とより接触しやすくなり、美容効果を高めることができる。
【0070】
本実施例では傾斜角度αは10度である。αの好適な範囲としては5度ないし20度である。この範囲よりも小さい場合には傾斜させる効果が認められにくく、一方この範囲より大きい場合には髪が巻き付いて櫛通りが悪くなるだけでなく、髪がカールしてしまうなど、クセを付けてしまう恐れがある。このような観点からこの傾斜角度の範囲が最適である。
【符号の説明】
【0071】
1 美容器
2 ピンアタッチメント
20 ガード体
200 吹出口
21 ヒータピンユニット
22 断熱材
23 下カバー
24 ピン部
3 本体部
30 バッテリー
31 ブロアファン
32 イオナイザー
33 スイッチ
34 ランプ
35 充電用ポート
36 振動モータ
4 キャップ
100 美容器
102 ピンアタッチメント
103 本体部
103a 上面
103b 凹部
103c 孔群
110 ピン部
111 ピン
112 ピン
113 ピン
A1 領域
A2 領域
A3 領域
C1 中心線
C2 中心線
C3 中心線
L1 第1の方向
L2 第2の方向