(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137669
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】インバータベースのマイクログリッドの弱信号故障特定
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240927BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240927BHJP
【FI】
H02J13/00 301D
H02J13/00 301B
H02J13/00 311R
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023208124
(22)【出願日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】18/189,529
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SIMULINK
2.MATHWORKS
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン,ホンボー
(72)【発明者】
【氏名】カーン,イムティアジ
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン・ジン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ジエンリン
【テーマコード(参考)】
5G064
5H770
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC08
5G064BA07
5G064CB06
5G064CB10
5G064CB19
5G064DA02
5G064DA03
5G064DA06
5H770BA11
5H770DA22
5H770HA02Y
5H770HA03Y
5H770JA17Y
5H770LA05W
5H770LA06Z
5H770LB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アイランド型インバータベースのマイクログリッドにおける弱信号故障の存在、位置及びタイプを特定する方法並びにシステムを提供する。
【解決手段】方法は、マイクログリッドに設置されたインテリジェント電子デバイスから電圧及び電流の測定値を受信すると、離散ウェーブレット変換アルゴリズムを用いて、ノイズ除去された時系列の測定値に基づいて、故障の存在を検出するために変動モード分解アルゴリズムを適用し、故障の存在を検出した後で、相関ベースの行列を適用して疑わしい故障位置を特定し、次にK近傍モデルを利用して、動的時間ワーピングアルゴリズムを使用して近傍間の距離を測定することによって、それらの位置の中から故障分岐を特定し、故障位置の特定に続いて、シーケンス成分と位相ベクトル測定値とを観測し、観測入力を故障分類論理回路モデルに入力することによって、故障分類を行う。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクログリッドにおける弱信号故障の存在、位置およびタイプを特定するためのシステムであって、前記マイクログリッドは、同期発電機と等価なメイングリッドに接続され、少なくとも1つの分岐を含み、前記少なくとも1つの分岐は、2つのバス間に接続された少なくとも1つの線路区間を含み、前記2つのバスのうちの少なくとも1つは同期発電機と接続され、少なくとも1つのバスは系統形成型インバータ(grid forming inverter:GFM)と接続され、少なくとも1つのバスは系統追従型インバータ(grid following inverter:GFL)と接続され、前記少なくとも1つのバスは負荷と接続され、少なくとも2つのスイッチが前記少なくとも1つの分岐の異なる位置に接続され、前記少なくとも2つのスイッチの各々には、前記少なくとも2つのスイッチのうち接続された少なくとも1つのスイッチを監視および制御するように構成されたインテリジェント電子デバイス(intelligent electronic device:IED)が備えられ、前記マイクログリッドはアイランドモードで運転され、前記システムは、
少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサにステップを実行させる命令を格納したメモリとを備え、前記ステップは、
前記マイクログリッドに設置された少なくとも2つのIEDから、電流および電圧の時系列測定値を受信するステップと、
離散ウェーブレット変換(discrete wavelet transform:DWT)アルゴリズムによって、前記時系列測定値をノイズ除去するステップと、
変分モード分解(variational mode decomposition:VMD)アルゴリズムを用いる周波数成分分析によって、ノイズ除去された前記時系列測定値の各々が、弱信号故障が発生したと示すかどうかを検出するステップとを含み、前記弱信号故障が検出されると、前記少なくとも1つのプロセッサはさらに、
前記弱信号故障がインバータ関連故障であるか高インピーダンス故障であるかを特定するステップを実行し、特定された前記インバータ関連故障について、対応するインバータの交流側の電流および電圧に従って故障位置が判定され、前記高インピーダンス故障について、時系列K近傍(K-nearest neighbors:KNN)モデルと動的時間ワーピング(dynamic time warping:DTW)アルゴリズムによって測定された近傍距離とを用いて前記弱信号故障を含む分岐を特定することによって、故障候補位置に基づいて、前記少なくとも1つの分岐と前記弱信号故障の前記故障位置の各々について、前記少なくとも2つのIED間のノイズ除去された前記時系列測定値の時系列成分間の相関を用いて前記故障候補位置が判定され、前記ステップはさらに、
故障期間にわたるシーケンス構成要素の変動状態および位相ベクトル測定値に従って、故障分類論理回路を使用して、判定された前記弱信号故障の故障タイプを特定するステップと、
前記故障位置と特定された前記故障タイプとを示す故障特定コマンドを生成するステップと、
前記故障特定コマンドの制御信号を前記マイクログリッドのマイクログリッドコントローラに送信することによって、前記故障特定コマンドに従って、前記マイクログリッドを分離し復旧させるステップとを含む、システム。
【請求項2】
前記インバータ関連故障である前記弱信号故障は、インバータ直流側短絡故障またはインバータトリッピング故障である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記高インピーダンス故障は、故障インピーダンスが高い地絡であり、前記地絡のタイプは、3線地絡(triple line to ground:TLG)、2線地絡(double line to ground:DLG)、または1線地絡(single line to ground:SLG)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記弱信号故障の故障タイプは故障分類論理回路によって分類され、電流の正のシーケンス成分について異常信号変動が特定され、かつ、電流の負のシーケンス成分について前記異常信号変動が特定されないか、または負のシーケンス過渡事象について前記異常信号変動が特定される場合、前記故障タイプは3線地絡(TLG)と判定され、電流の正のシーケンス成分および負のシーケンス成分について前記異常信号変動が特定される場合、前記故障タイプは2線地絡(DLG)と判定され、電流の正のシーケンス成分および負のシーケンス成分について前記異常信号変動が特定されるか、または電流の正のシーケンス成分および負のシーケンス成分について前記異常信号変動が特定されない場合、前記故障タイプは1線地絡(SLG)と判定され、インバータ交流側の電圧について前記異常信号変動が特定され、かつ、インバータ交流側の電流について前記異常信号変動が特定される場合、前記故障タイプはインバータ直流側短絡(DC side short circuit:DCSC)故障と判定され、電流の正のシーケンス成分について前記異常信号変動が特定され、かつ、インバータのPCCにおける相電流がゼロに近い場合、前記故障タイプはインバータトリッピング(inverter tripping:IT)故障と判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記時系列測定値の前記異常信号変動は、前記時系列測定値の正常信号範囲の長さに対する、前記時系列測定値の前記正常信号範囲と前記時系列測定値の異常信号範囲との間の長さの差の絶対値の比率が故障閾値よりも大きい場合に特定され、そうでない場合は特定されず、前記故障閾値は、0.15などに予め設定されており、前記正常信号範囲と前記異常信号範囲とは、1.0秒などの予め設定された長さを有する期間にわたって、前記時系列測定値の変動範囲に基づいて判定される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
2つの連続する監視時間窓のうちの第1の監視時間窓における前記時系列測定値の信号変動範囲の長さに対する、前記2つの連続する監視時間窓における前記時系列測定値の前記信号変動範囲間の長さの差の絶対値の比率が故障閾値よりも大きい場合、前記時系列測定値の異常信号変動が特定され、前記監視時間窓は、0.1秒などの同一の幅を有する時間間隔であり、前記故障閾値は、0.15などに予め設定されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記DWTアルゴリズムを用いてノイズ除去するステップはさらに、
最初に、前記時系列測定値を、予め設定されたウェーブレット関数、予め設定された分解レベル、および予め設定された信号拡張モードで、異なるウェーブレット成分に合成することと、
次に、予め設定された閾値および閾値モードで信号閾値アルゴリズムを適用することによって、ノイズ成分を圧縮することとを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記予め設定されたウェーブレット関数は、Wavelet Daubechies4関数であり、前記予め設定された分解レベルは5に設定され、前記予め設定された信号拡張モードは周期的パディングであり、前記予め設定された閾値は0.4であり、前記予め設定された閾値モードはソフト閾値処理である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
ノイズ除去された前記時系列測定値の限定された数の固有モード関数(intrinsic mode function:IMF)が、故障の存在を検出するために使用され、IMFの数は、たとえば約5などに予め設定されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記インバータの交流側で測定された前記電流および電圧について異常な信号変動が特定される場合、前記インバータ関連故障が特定され、かつ、前記時系列測定値の正常信号範囲の長さに対する、前記時系列測定値の前記正常信号範囲と前記時系列測定値の異常信号範囲との間の長さの差の絶対値の比率が故障閾値よりも大きい場合、時系列測定値の異常信号変動が特定され、前記故障閾値は、約0.15などに予め設定され、前記正常信号範囲と前記異常信号範囲とは、約1.0秒などの予め設定された長さを有する期間にわたって、前記時系列測定値の変動範囲に基づいて判定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記インバータの交流側で測定された前記電流および電圧について異常な信号変動が特定される場合、前記インバータ関連故障が特定され、2つの連続する監視時間窓のうちの第1の監視時間窓における時系列測定値の信号変動範囲の長さに対する、前記2つの連続する監視時間窓における前記時系列測定値の前記信号変動範囲間の長さの差の絶対値の比率が故障閾値よりも大きい場合、前記時系列測定値の異常信号変動が特定され、前記監視時間窓は、約0.1秒などの同一の幅を有する時間間隔であり、前記故障閾値は、約0.15などに予め設定されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記分岐に沿って設置されたすべてのIEDの電流のノイズ除去された前記時系列測定値の正のシーケンス成分を用いて、分岐ごとに相関行列が作成され、対応する相関が相関閾値より小さい場合、前記分岐における2つのIED間で故障候補位置が特定され、前記相関閾値は、約0.9から約0.98の間で予め設定されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記時系列KNNモデルは、訓練ケースのセットについて、入力としてノイズ除去された分岐電力消費データと、出力として故障のラベル付けされたデータとを用いて訓練され、前記訓練ケースは、故障していないケースと故障したケースとを含み、前記故障したケースは、分岐について異なる故障タイプ、異なる故障インピーダンス、および異なる故障位置を含み、KNNの近傍数は、約3から約5の間で設定されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
マイクログリッドにおける弱信号故障の存在、位置、およびタイプを特定するための方法であって、前記マイクログリッドは同期発電機に等価なメイングリッドに接続され、少なくとも1つの分岐を含み、各分岐は2つのバス間に接続された少なくとも1つの線路区間を含み、少なくとも1つのバスは同期発電機と接続され、少なくとも1つのバスは系統形成型インバータ(grid forming inverter:GFM)と接続され、少なくとも1つのバスは系統追従型インバータ(grid following inverter:GFL)と接続され、少なくとも1つのバスが負荷と接続され、少なくとも2つのスイッチが同一の分岐の異なる位置に設置され、各スイッチには、接続された前記スイッチを監視および制御するインテリジェント電子デバイス(intelligent electronic device:IED)が備えられ、前記マイクログリッドはアイランドモードで運転され、前記弱信号故障は、インバータ関連故障、または高インピーダンス故障である可能性があり、前記方法は、
少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサにステップを実行させる命令が格納されたメモリとを使用することを備え、前記ステップは、
前記マイクログリッドに設置された少なくとも2つのIEDから、電流および電圧の時系列測定値を受信するステップと、
離散ウェーブレット変換(discrete wavelet transform:DWT)アルゴリズムによって、前記時系列測定値をノイズ除去するステップと、
変分モード分解(variational mode decomposition:VMD)アルゴリズムを用いる周波数成分分析によって、ノイズ除去された前記時系列測定値の各々が、弱信号故障が発生したと示すかどうかを検出するステップとを含み、前記弱信号故障が検出されると、前記少なくとも1つのプロセッサはさらに、
前記弱信号故障がインバータ関連故障であるか高インピーダンス故障であるかを特定するステップを実行し、特定された前記インバータ関連故障について、対応するインバータの交流側の電流および電圧に従って故障位置が判定され、前記高インピーダンス故障について、時系列K近傍(K-nearest neighbors:KNN)モデルと動的時間ワーピング(dynamic time warping:DTW)アルゴリズムによって測定された近傍距離とを用いて前記弱信号故障を含む分岐を特定することによって、故障候補位置に基づいて、前記少なくとも1つの分岐と前記弱信号故障の前記故障位置の各々について、前記少なくとも2つのIED間のノイズ除去された前記時系列測定値の時系列成分間の相関を用いて前記故障候補位置が判定され、前記ステップはさらに、
故障期間にわたるシーケンス構成要素の変動状態および位相ベクトル測定値に従って、故障分類論理回路を使用して、判定された前記弱信号故障の故障タイプを特定するステップと、
前記故障位置と特定された前記故障タイプとを示す故障特定コマンドを生成するステップと、
前記故障特定コマンドの制御信号を前記マイクログリッドのマイクログリッドコントローラに送信することによって、前記故障特定コマンドに従って、前記マイクログリッドを分離し復旧させるステップとを含む、方法。
【請求項15】
前記インバータ関連故障である前記弱信号故障は、インバータ直流側短絡故障またはインバータトリッピング故障である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記高インピーダンス故障は、故障インピーダンスが高い地絡であり、前記地絡のタイプは、3線地絡(triple line to ground:TLG)、2線地絡(double line to ground:DLG)、または1線地絡(single line to ground:SLG)である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記弱信号故障の故障タイプは故障分類論理回路によって分類され、電流の正のシーケンス成分について異常信号変動が特定され、かつ、電流の負のシーケンス成分について前記異常信号変動が特定されないか、または負のシーケンス過渡事象について前記異常信号変動が特定される場合、前記故障タイプは3線地絡(TLG)と判定され、電流の正のシーケンス成分および負のシーケンス成分について前記異常信号変動が特定される場合、前記故障タイプは2線地絡(DLG)と判定され、電流の正のシーケンス成分および負のシーケンス成分について前記異常信号変動が特定されるか、または電流の正のシーケンス成分および負のシーケンス成分について前記異常信号変動が特定されない場合、前記故障タイプは1線地絡(SLG)と判定され、インバータ交流側の電圧について前記異常信号変動が特定され、かつ、インバータ交流側の電流について前記異常信号変動が特定される場合、前記故障タイプはインバータ直流側短絡(DC side short circuit:DCSC)故障と判定され、電流の正のシーケンス成分について前記異常信号変動が特定され、かつ、インバータのPCCにおける相電流がゼロに近い場合、前記故障タイプはインバータトリッピング(inverter tripping:IT)故障と判定される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記時系列測定値の前記異常信号変動は、前記時系列測定値の正常信号範囲の長さに対する、前記時系列測定値の前記正常信号範囲と前記時系列測定値の異常信号範囲との間の長さの差の絶対値の比率が故障閾値よりも大きい場合に特定され、そうでない場合は特定されず、前記故障閾値は、0.15などに予め設定されており、前記正常信号範囲と前記異常信号範囲とは、1.0秒などの予め設定された長さを有する期間にわたって、前記時系列測定値の変動範囲に基づいて判定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
2つの連続する監視時間窓のうちの第1の監視時間窓における前記時系列測定値の信号変動範囲の長さに対する、前記2つの連続する監視時間窓における前記時系列測定値の前記信号変動範囲間の長さの差の絶対値の比率が故障閾値よりも大きい場合、前記時系列測定値の異常信号変動が特定され、前記監視時間窓は、0.1秒などの同一の幅を有する時間間隔であり、前記故障閾値は、0.15などに予め設定されている、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記DWTアルゴリズムを用いてノイズ除去するステップはさらに、
最初に、前記時系列測定値を、予め設定されたウェーブレット関数、予め設定された分解レベル、および予め設定された信号拡張モードで、異なるウェーブレット成分に合成することと、
次に、予め設定された閾値および閾値モードで信号閾値アルゴリズムを適用することによって、ノイズ成分を圧縮することとを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記マイクログリッドに設置された前記少なくとも2つのIEDから、予め設定された正常信号範囲を示す前記電流および電圧の時系列測定値、または前記故障位置および特定された前記故障タイプを示す故障特定コマンドを受信しつつ、正常状態コマンドを生成することと、
前記正常状態コマンドまたは前記故障特定コマンドを示す運転状態信号をネットワークを介して外部システムに送信して、前記外部システムの表示モニタに前記マイクログリッドの運転状態を表示させることとをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電力システムに関し、より特定的には、インバータベースのマイクログリッドの弱信号故障特定に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクログリッドは、再生可能エネルギーを意識した社会の発展に伴い、近年さらに注目を集めている。マイクログリッドは、従来の送電網から切り離されて自律的に運転可能であり、送電網の信頼性を強化し、送電網の障害を緩和することができる局所的な送電網である。マイクログリッドの運用は、系統連系モードでもアイランドモードでも運転できるという点で非常に柔軟である。しかしながら、インバータベースの分散型発電機の故障レベルおよび制御戦略といったマイクログリッドの特性は、異なる運転モードでは大きく異なる可能性がある。したがって、従来の故障保護方式は、アイランド型マイクログリッドには適用できない可能性がある。
【0003】
マイクログリッドにおける故障電流は、分散型発電機のタイプ、動作条件、およびネットワークトポロジによって異なる。その結果、従来の過電流リレーは信頼できるものでなくなる。故障が弱信号故障である場合、問題はさらにいっそう複雑になる。配電網で発生する高インピーダンス故障、インバータ直流側短絡故障、およびインバータトリッピング故障などの弱信号故障は大きさが小さすぎるため、検出されずに従来のリレーをバイパスしてしまうことが多い。検出されない弱信号故障は、人命および送電網に対する安全保障上の脅威となる。高インピーダンス故障を例にとると、地面に接触している通電導体は、動植物にとって危険であり、損失を引き起こす。弱信号故障は一般的なものであり、分散型発電の発展および必要性は、このような低電流故障の発生を増大させるだけである。したがって、系統電力供給を回復し、周辺地域の安全を確保するためには、故障検出、位置特定および分類を含む、迅速かつ信頼性の高い故障特定が必要である。
【0004】
マイクログリッドの弱信号故障特定では、関連研究がいくつか存在する。この研究の例は、2020 IEEE International Conference on Power Electronics,Smart Grid and Renewable Energy (PESGRE2020),2020,pp.1-6に掲載された「High Impedance Fault detection in Low Voltage Distribution Systems Using Wavelet and Harmonic Fault Indices(ウェーブレットおよび高調波故障指標を用いた低電圧配電系統における高インピーダンス故障検出)」という題名のVineethおよびP.Sreejayaによって執筆された論文において見ることができる。この論文では、著者らは多重解像度ウェーブレット分析を用いて、故障によって中性電流に生じる障害を検出した。しかしながら、適切なマザーウェーブレット関数をどのように選択するかは、実用化のために解決されなければならない重要な課題である。
【0005】
他の例は、IEEE Transactions on Smart Grid,vol.6,no.2,pp.894-902,March2015に掲載された「Detection and Location of High Impedance Faults in Multiconductor Overhead Distribution Lines Using Power Line Communication Devices(電力線通信装置を用いた多導電体架空配電線における高インピーダンス故障の検出および位置特定)」という題名の論文でA.N.Milioudis,G.T.AndreouおよびD.P.Labridisが提案した、電力線通信(power line communication:PLC)装置の使用による高インピーダンス故障の検出および故障位置の判定である。提案された方法は、電力線に沿って設置されたすべてのPLC装置のインパルス注入の応答に基づいて、故障している線の故障位置を導出する。この方法の主な制限は、PLC装置の利用可能性にある。
【0006】
さらに他の例は、Proc.IEEE Int.Conf.on Computer Science,Artificial Intelligence and Electronic Engineering(CSAIEE),2021,pp.324-327に掲載した「power grid fault location method based on pretraining of Convolutional Autoencoder(畳み込みオートエンコーダの事前訓練に基づく送電網故障位置特定方法)」という題名の論文でL.Zheng,P.XuおよびJ.Baiが提案した、畳み込みオートエンコーダのような機械学習を使用して、電力網の故障位置を特定することである。この方法では、畳み込みオートエンコーダを使用することによって多くのサンプルを事前学習し、次に分類器を用いてバランスの取れた小ロットのサンプルの微調整を行う。しかしながら、このよう方法は、グリッドのトポロジおよび機器の状態に大きく依存し、計算の複雑さも増大する。
【0007】
他の例が、電圧の大きさおよび位相角の測定値の相対的な挙動を使用してパワーグリッド内の弱信号故障を分類した、「Fault Type Classification in Microgrids Including Photovoltaic DGs(太陽光発電DGを含むマイクログリッドにおける故障タイプの分類)」という題名の論文で示されている。この論文は、A.Hooshyar,E.F.El-SaadanyおよびM.Sanaye-Pasandが執筆し、IEEE Transactions on Smart Grid,vol.7,no.5,pp.2218-2229,Sept.2016に掲載された。しかしながら、負荷、線路容量、またはスイッチの動作の変化により、電圧の大きさおよび角度が故障と同様の挙動を示す可能性があるため、このような方法は誤判定のケースを引き起こす可能性がある。
【0008】
したがって、インバータベースのマイクログリッドにおける弱信号故障を特定するために、より正確な方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、アイランド型インバータベースのマイクログリッドのための、弱信号故障検出、位置特定、および分類を組み合わせた方法を提供する。開示される方法は、マイクログリッド内に設置されたインテリジェント電子デバイス(intelligent electronic device:IED)から収集された電圧、電流および電力の時系列測定値を使用して、弱信号故障を特定する。弱信号故障は、インバータ関連故障、または高インピーダンス故障である可能性がある。インバータ関連の弱信号故障は、インバータ直流側短絡故障またはインバータトリッピング故障である。高インピーダンス故障は、故障インピーダンスの高い地絡であり、地絡のタイプは、3線地絡、2線地絡、または1線地絡である。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態は、弱信号故障検出のための2ステップ方式を提供する。この方式では、まず、離散ウェーブレット変換(discrete wavelet transform:DWT)を使用した再構成によって測定値がノイズ除去され、次に、ノイズ除去された測定値を使用して変分モード分解(variational mode decomposition:VMD)によって生成された周波数成分の分析によって、弱信号故障の存在が検出される。この2ステップ方式の性能は、DWTによって再構成されたノイズ除去済みのデータを用いて弱信号故障を分析するため、ノイズの影響を受けにくい。これは、ノイズの多いデータとノイズのないデータとの両方に対する実験テストによって検証される。一方、この2ステップの故障検出方式は、グリッド構成に関係なく、より大規模なシステムに拡張可能である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態は、故障の存在が検出された後に故障位置を判定するハイブリッド方法を提供する。この方法では、まず、2つの連続するIED間の時系列電流成分間の相関が、疑わしい故障位置を特定するために利用され、次に、動的時間ワープ(dynamic time warping:DTW)によって測定された近傍距離を有する時系列K近傍(K-nearest neighbors:KNN)モデルを使用して故障を含む分岐を特定することによって、最終的な故障位置が確認される。開示されたハイブリッドモデルは誤判定ケースの削減に重点を置いているため、相関閾値および最近傍の数のハイパーパラメータを適切に調整した後で、弱信号故障の位置特定についてほぼ完全な精度を達成することができる。
【0012】
本発明の他のいくつかの実施形態は、論理回路ベースの故障分類法を提供する。この方法では、故障タイプを伴う電圧および電流の位相ベクトル測定値と共に、電流のシーケンス成分間の関係が利用される。この試験によって、開示された方法は、2線地絡と1線地絡との間の不確実性は例外として、高インピーダンス故障、インバータ直流側短絡、およびインバータトリッピングを100%の精度で分類できることが示されている。また、この故障分類は、系統構成に関係なく、より大規模なシステムに拡張可能である。
【0013】
添付の図面を参照して、現在開示されている実施形態をさらに説明する。示された図面は、必ずしも縮尺通りではなく、一般に、現在開示されている実施形態の原理を説明することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本開示の実施形態に係る、インバータベースのマイクログリッドの弱信号故障を検出し、位置を特定し、分類するための方法を示すブロック図である。
【
図1B】本開示の実施形態に係る、インバータベースのマイクログリッドの弱信号故障を検出し、位置を特定し、分類する構成要素およびステップを示す概略図である。
【
図1C】本発明のいくつかの実施形態に係る、インバータベースのマイクログリッドにおける弱信号故障を検出し、位置を特定し、分類するための故障特定・制御システムを示すブロック図である。
【
図2A】本開示の実施形態に係る、インバータベースのマイクログリッドを示す概略図である。
【
図2B】本開示の実施形態に係る、マイクログリッドにおいて使用される系統形成型インバータを示す概略図である。
【
図2C】本開示の実施形態に係る、マイクログリッドにおいて使用される系統追従型インバータを示す概略図である。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態に係る、固有モード機能(intrinsic mode function:IMF)モード1の3線地絡(triple line to ground:TLG)の電流波形を示す概略図である。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態に係る、IMFモード1の2線地絡(double line to ground:DLG)の電流波形を示す概略図である。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態に係る、IMFモード2のDLG故障の電流波形を示す概略図である。
【
図6】本開示のいくつかの実施形態に係る、IMFモード2のインバータ直流側短絡(DC-side short-circuit:DCSC)故障の電流波形を示す概略図である。
【
図7】本開示のいくつかの実施形態に係る、IMFモード2のインバータトリッピング(inverter tripping:IT)故障の電流波形を示す概略図である。
【
図8】本開示のいくつかの実施形態に係る、故障前後の電流変動を示す概略図である。
【
図9】本開示のいくつかの実施形態に係る、分岐1の相関行列を概略的に示す表である。
【
図10】本開示のいくつかの実施形態に係る、分岐2の相関行列を概略的に示す表である。
【
図11】本開示のいくつかの実施形態に係る、分岐3の相関行列を概略的に示す表である。
【
図12】本開示のいくつかの実施形態に係る、K近傍(KNN)モデルの精度を概略的に示す表である。
【
図13】本開示のいくつかの実施形態に係る、開示された方法の有効性を概略的に示す表である。
【
図14】本開示のいくつかの実施形態に係る、故障分類に使用される論理回路を示す概略図である。
【
図15】本開示のいくつかの実施形態に係る、
図14によって示される、開示された論理回路を使用する実際の故障タイプおよび分類結果の比較を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概要
本開示は、一般に電力システムに関し、より特定的には、インバータベースのマイクログリッドの弱信号故障特定に関する。
【0016】
以下の説明は、例示的な実施形態のみを提供し、本開示の範囲、適用性、または構成を限定することを意図するものではない。むしろ、例示的な実施形態の以下の説明は、1つまたは複数の例示的な実施形態を実現するための可能な説明を当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に規定されるように開示された主題の精神および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置において行われ得るさまざまな変更が考えられる。
【0017】
具体的な詳細が、実施形態の完全な理解を提供するために以下の説明で与えられる。しかしながら、当業者であれば、これらの具体的な詳細がなくても実施形態が実施され得ることを理解できる。たとえば、開示された主題におけるシステム、プロセス、および他の要素は、不必要な詳細で実施形態を不明瞭にしないために、ブロック図の形式で構成要素として示されてもよい。他の例では、周知のプロセス、構造、および技術は、実施形態を不明瞭にしないために、不必要な詳細なしに示されてもよい。さらに、さまざまな図面における同様の参照番号および名称は、同様の要素を示す。
【0018】
本開示は、系統形成型および系統追従型制御戦略を有するインバータベースの発電機と、従来の同期発電機との両方を含み、マイクログリッドオペレータに忠実度が高い波形測定値を提供するために切替可能なデバイスにインテリジェント電子デバイス(IED)が設置されている、アイランド型インバータベースのマイクログリッドの故障特定を対象としている。弱信号故障には、高インピーダンス地絡、インバータ直流側短絡故障、およびインバータトリッピング故障が含まれる。弱信号故障の特定は、3つの段階に分けて解決される。第1の段階では、離散ウェーブレット変換(DWT)と変動モード分解(VMD)とを組み合わせた方法で、弱信号故障の存在を検出する。第2の段階では、検出された弱信号故障の故障位置を、相関行列をK近傍(KNN)モデルと組み込むことによって判定する。第3の段階では、シーケンス構成要素および位相ベクトル測定値の相対的な挙動を利用して定義された論理回路モデルを使用して、故障タイプを判定する。
【0019】
図1Aは、本開示の実施形態に係る、インターフェイス153と、スイッチ制御デバイス157と、ハードウェアプロセッサ155と、ハードウェアプロセッサに方法100Bのステップを実行させる命令を格納したメモリとを使用して、アイランド型インバータベースのマイクログリッドの弱信号故障を検出し、位置を特定し、分類するための方法(すなわち、コンピュータによって実現される方法)100Bを示すブロック図である。
【0020】
方法100Bは、インターフェイス153を使用して、通信ネットワークを介してマイクログリッドに設置されたインテリジェント電子デバイス(IED)から、電流および電圧の時系列データを受信するステップ125を含む。
【0021】
方法100Bは、ハードウェアプロセッサ155を使用して、離散ウェーブレット変換を用いて、IEDごとに受信された時系列の電流および電圧をノイズ除去するステップ130を含む。
【0022】
なお
図1Aのステップ132を参照して、ハードウェアプロセッサ155は、ノイズ除去された時系列からVMDによって生成されたIMF成分を用いて、弱信号故障の存在を検出し、インバータ関連の弱信号故障が検出された場合、故障位置を判定する。ステップ132によって、弱信号故障はさらに、検出された場合、インバータ関連故障または高インピーダンス故障として分類される。特定されたインバータ関連故障について、対応するインバータの交流側の電流および電圧に従って故障位置が判定され、次にステップ138に進み、さらに故障タイプが分類される。高インピーダンス故障の場合、次のステップに進んで、故障位置を判定する。
【0023】
ステップ134では、ハードウェアプロセッサ155を使用して、検出された故障が高インピーダンス故障である場合、電流の相関行列を用いて、弱信号故障のマイクログリッド内の疑わしい位置を判定する。
【0024】
ステップ136では、ハードウェアプロセッサ155を使用して、時系列電力プロファイルを用いて時系列KNNモデルを適用することによって、故障位置を判定し、直接測定されない場合は、時系列の電流および電圧データを用いて電力プロファイルを導出することができる。
【0025】
ステップ138では、ハードウェアプロセッサ155を使用して、論理回路モデルと、電流および電圧シーケンスの成分ならびに位相ベクトルとを用いて、故障タイプを特定する。
【0026】
なお
図1Aのステップ140を参照して、方法100Bは、通信ネットワークを介してコンピューティングデバイス157を用いて接続されたスイッチのスイッチング動作をアクティブにすることによって、故障した線路区間を分離することを含む。
【0027】
図1Bは、本開示の実施形態に係る、アイランド型インバータベースのマイクログリッドの弱信号故障を検出し、位置を特定し、分類する構成要素およびステップを示す概略図である。
【0028】
図1Bは、入力インターフェイス135、メモリ137と通信するハードウェアプロセッサ155と、インターフェイス153と、コンピューティングデバイス157とを含み得る。コンピューティングデバイス157は、マイクログリッド115に設置されたスイッチ110のセットに接続することができる。マイクログリッドは、マイクログリッド115の状態情報を監視および収集するためのインテリジェント電子デバイス(IED)145のセットを含み得る。状態情報は、IED145によって測定された電流および電圧の時系列測定値である。各IEDは、スイッチング可能なデバイス110に対応する。方法100Bで実現される故障特定・制御システムは、スイッチ110のセットを制御できるだけでなく、情報を送受信することもできる。ハードウェアプロセッサ155は、特定のアプリケーションの要件に応じて、2つ以上のハードウェアプロセッサを含み得ると考えられる。当然のことながら、入力インターフェイス、出力インターフェイスおよびトランシーバを含む他の構成要素を方法100Bに組み込むことができる。
【0029】
なお
図1Bを参照して、システム100Bの態様は、インターフェイス153を使用して、通信ネットワークを介してマイクログリッドのIEDから電流および電圧の時系列データを受信するステップ125を含む。
【0030】
方法100Bは、ハードウェアプロセッサ155を使用して、マイクログリッド内のIEDごとに、離散ウェーブレット変換を用いて受信された時系列電流および電圧をノイズ除去するステップ130を含む。
【0031】
ステップ132は、VMDによって生成されたIMF成分を用いて弱信号故障の存在を検出し、インバータ関連故障が検出された場合に故障位置を判定することを含む。ステップ132はさらに、検出された弱信号故障がインバータ関連故障または高インピーダンス故障であると特定する。インバータ関連故障について、対応するインバータの交流側の電流および電圧に従って故障位置が判定された後、ステップ138に移行する。そうでない場合、検出された故障がインバータ関連故障でない場合、次のステップ134に移行する。
【0032】
ステップ134では、検出された故障が高インピーダンス故障である場合、電流の相関行列を用いて弱信号故障の疑わしい位置を判定する。
【0033】
ステップ136は、時系列電力プロファイルを用いて時系列KNNモデルを適用することによって、故障位置を判定することを含む。
【0034】
ステップ138は、論理回路モデルと、電流および電圧シーケンスの成分ならびに位相ベクトルとを使用して、故障タイプを特定することを含む。
【0035】
方法100Bは、通信ネットワークを介してコンピューティングデバイス157を使用して接続されたスイッチのスイッチング動作をアクティブにすることによって、故障した線路区間を隔離するステップ140を含む。
【0036】
図1Cは、本発明のいくつかの実施形態に係る、アイランド型インバータベースのマイクログリッドにおける故障特定・制御システム100を示すブロック図である。
【0037】
故障特定・制御システム100は、キーボード111およびポインティングデバイス/媒体112と接続可能なヒューマン・マシン・インターフェイス(human machine interface:HMI)167と、プロセッサ155と、ストレージデバイス154と、メモリ137と、ローカルエリアネットワークおよびインターネットネットワークを含むネットワーク151と接続可能なネットワークインターフェイスコントローラ163(network interface controller:NIC)と、表示デバイス165に接続された表示インターフェイス161と、入力デバイス135と接続可能な入力インターフェイス139と、印刷デバイス131と接続可能なプリンタインターフェイス133とを含む。メモリ137は、方法100Bを実行する際に、ストレージデバイス154と関連付けることによって、故障特定・制御プログラム159をロードするように構成されている。場合によっては、メモリ137とストレージデバイス154とをメモリと呼ぶこともある。
【0038】
故障特定・制御システム100は、NIC163に接続されたネットワーク151を介して、インバータベースのマイクログリッド115に配置されたインテリジェント電子デバイス145の電流および電圧の時系列測定値を示す電気信号195を受信することができる。ネットワーク151は、インテリジェント電子デバイスの遠隔制御を実行するために、マイクログリッド115のインテリジェント電子デバイスに制御信号を提供可能な外部システム(複数可)101に接続されている。さらに、故障特定・制御システム100は、外部システム101がマイクログリッド115に配置されたスイッチング動作を制御できるように、ネットワーク151を介して外部システム101に故障特定状態データ(信号)を提供することができる。さらに、故障特定・制御システム100は、ネットワーク151を介して故障特定・制御システム100の制御データ(信号)を受信することによって、外部システム101から制御することができる。
【0039】
ストレージデバイス154は、マイクログリッド115に関する故障前トポロジおよびパラメータ158と、故障特定・制御プログラムモジュール159とを含む。入力デバイス/媒体135は、コンピュータ読取可能記録媒体(図示せず)上に格納されたプログラムを読み取るモジュールを含み得る。
【0040】
マイクログリッド115内の弱信号故障を特定するために、故障特定・制御システム100は、マイクログリッド115に含まれるインテリジェント電子デバイス145からマイクログリッドの状態データを受信し得る。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によると、マイクログリッド115は、線路区間と接続された端末バスのセット、およびインバータベースの発電機または同期発電機のセットを含み得る。マイクログリッド115は、マイクログリッド115に設置されたマイクログリッドコントローラ(図示せず)と接続されたIEDを含む。IEDに接続されたマイクログリッドコントローラは、弱信号故障の故障位置および故障タイプを示す故障特定コマンドの受信に応答して、IEDのスイッチを使用してマイクログリッドを隔離および復旧することによって、マイクログリッド115を運転および制御するように構成されている。この場合、故障特定コマンドは、故障特定・制御システム100からマイクログリッドコントローラに送信される。場合によっては、マイクログリッドコントローラは、外部システム101に設置されて、外部システム101を介してマイクログリッドを制御する。さらに、故障特定コマンドは、外部システム101に設置された表示インターフェイス(図示せず)を含む表示モニタに送信されて、外部システム101のオペレータに対して、故障位置の状態および弱信号故障の故障種別に関する警告を示すことができる。故障特定・制御システム100は、故障特定コマンドを用いて、外部システム101に設置された表示モニタの表示インターフェイスに故障特定コマンドを送信することによって、外部システム101の表示モニタにマイクログリッド115の運転状態を表示する。故障特定・制御システム100は、インターフェイス153を使用して、ネットワーク151(通信網)を介して、インテリジェント電子デバイスについて測定された電流および電圧を示す時系列測定データを受信する。メモリ137は、ストレージ154に格納されたコンピュータ実行可能プログラムをロードすることができ、このコンピュータ実行可能プログラムには、故障前(正常状態)トポロジおよびパラメータ158と、マイクログリッド115に生じた弱信号故障を特定し、マイクログリッド115における故障の制御方式を判定するように構成された故障特定・制御プログラム(モジュール)159とが含まれる。メモリ137と接続している少なくとも1つのプロセッサ155とインターフェイス153とは、ストレージ154からロードされた故障特定・制御プログラム159を実行するために使用される。たとえば、プロセッサ155によって実行されると、故障特定・制御プログラム159は、プロセッサ155にインテリジェント電子デバイス145から電圧および電流の測定値195を受信させ、プロセッサ155は、故障特定・制御プログラム159を実行して、離散ウェーブレット変換アルゴリズムを用いてノイズ除去された時系列の測定値に基づいて変動モード分解アルゴリズムによって生成された固有モード周波数成分を調べることによって、マイクログリッド115に弱信号故障が発生しているかどうかを判定する。故障の存在が検出された場合、故障特定・制御プログラム159はさらに、プロセッサ155に対して、ストレージ154から正常な接続トポロジおよびパラメータを提供するように要求し、次に、プログラム159は、まず、隣接するインテリジェント電子デバイスの相関行列に基づいて疑わしい故障位置を判定し、近傍間の距離が動的時間ワーピングアルゴリズムによって測定されているK近傍を利用することによって、それらの位置の中から故障位置を絞り込む。故障位置が特定された後、故障特定・制御プログラム159はさらに、シーケンス成分および位相ベクトル測定値を監視し、観測入力を論理回路モデルに供給することによって、故障タイプを特定する。次に、プロセッサ155は、故障の位置を示す故障後トポロジと、判定された故障制御方式によって必要とされる関連スイッチ動作とを出力する。さらに、インターフェイス(NIC)163は、マイクログリッド115からネットワーク151を介して予め設定された期間ごとに測定信号195を受信することができる。故障特定・制御システム100は、マイクログリッド115に設置されたIEDから所定の正常信号範囲を示す電流および電圧の時系列測定値を受信しつつ、マイクログリッド115の故障を判定/検出しない場合、正常状態コマンドを生成し、ネットワーク151を介して正常状態コマンドの信号を外部システム101に設置された表示モニタの表示インターフェイスに送信して、外部システム101の表示モニタにマイクログリッド115の正常動作状態を表示することができる。故障特定・制御システム100によって生成された正常状態コマンドおよび故障特定コマンドのデータは、ネットワーク151を介して他の保守システム(複数可)に送信されて、1つまたは複数のシステムがマイクログリッド115の運転状態を監視することを可能にし得る。
【0042】
場合によっては、故障の特定を開始/実行する指示は、キーボード111を用いて故障特定・制御システム100に送信されるか、またはネットワーク151を介して外部システム101から送信され得る。
【0043】
インバータベースのマイクログリッドの定義およびシミュレーション
マイクログリッドは、メイングリッドに対して単一の制御可能なエンティティとして機能する、相互接続された負荷および分散型エネルギー資源のグループである。マイクログリッドは、系統連系モードまたはアイランドモードで運転するように、メイングリッドに対して接続したり、切り離したりすることができる。分散型エネルギー資源は、従来の同期発電機または電力インバータベースの発電機などの発電源となり得る。負荷は、配電線を通じて発電機から供給される。インテリジェント電子デバイス(IED)は、マイクログリッド内に設置されて、マイクログリッドコントローラがグリッドの運転および制御を管理するためのリアルタイム情報を提供する。
【0044】
インテリジェント電子デバイスとは、保護リレー装置、タップ切替装置コントローラ、回路遮断器コントローラ、コンデンサバンクスイッチ、再閉路装置コントローラ、および電圧レギュレータといった、電力系統機器のマイクロプロセッサベースのコントローラを表すために使用される用語である。本開示では、各IEDは、スイッチング可能なデバイスに関連する。
【0045】
図2Aは、7つのバスを有する例示的なインバータベースのマイクログリッドを示す。このマイクログリッドは、バス5において3相の25kV、200MVAの同期発電機に接続され、バス1においてメイングリッドを表す3相等価発電機が接続されている。マイクログリッドはアイランドモードで運転されている、すなわち、バス1における等価発電機は、マイクログリッドから切り離されている。バス2および4は、2つのインバータを含む。バス4には系統形成型インバータ(grid forming inverter:GFM)が接続され、バス2には系統追従型インバータ(grid following inverter:GFL)が接続され、どちらもインバータのそれぞれのPCCを介してそれぞれのバスに接続されている。負荷L1の定格は、200kWおよび4.16kVである。負荷L2~L7の定格は、100kWおよび4.16kVである。2つの別々のPVパネルが、インバータコントロールおよびIGBTスイッチを介して各インバータに接続されている。各PVパネルからの直流出力は、各インバータに接続された8000Vの直流電源で表される。測定値は、
図2Aに示すような位置に設置された12個のIEDから収集される。マイクログリッドは3つの分岐を含む。分岐1はIED M1~M4を含み、分岐2はIED M5~M8を含み、分岐3はIED M9~M12を含む。送電網の異なる位置に地絡が発生している。
図1Cに示されるように、IED M1~M12は、故障特定・制御システム100から受信した故障特定コマンドに応答してマイクログリッドを隔離および復旧するように構成されたスイッチを含む。IEDの各々は、ネットワーク151を介して、シーケンス構成要素の変動状態および位相ベクトル測定値に関するデータセット/信号を提供/送信するように構成されている。
【0046】
3つの不平衡位相ベクトルの任意のシステムは、元のシーケンスと同じ位相シーケンスで平衡三相システムを表す正のシーケンスと、元のシーケンスと反対の位相シーケンスで平衡三相システムを表す負のシーケンスと、3つの位相ベクトルの大きさおよび位相が等しいシステムを表すゼロシーケンスとを含む、3つの対称成分に分解することができる。
【0047】
図2Aに示すように、ユーティリティベースのインバータには、2つの基本的な制御技術がある。系統形成型(GFL)インバータ(
図2B)と系統追従型(GFL)インバータ(
図2C)とである。大型の同期機と比較して、インバータベースの資源は、その出力をはるかに高速に変化させることができ、電力平均分配がトリガされる前にシステムの周波数変化を阻止することができる。
【0048】
GFMインバータは、系統連系同期発電機と同様に、結合リアクタンスの背後にある制御可能な電圧源である。垂下特性を有する電圧源インバータは、電圧と周波数とを直接制御することができる。不測の事態が発生した場合、垂下制御されたGFM電源は瞬時に出力電力を増減させて、負荷のバランスをとり、局所電圧と周波数とを維持する。垂下制御GFMインバータでは、出力電力の変化と出力周波数の変化との間に大きな遅れはない。そのため、GFM電源は、GFL電源の応答よりも不測の事態に対する応答がはるかに速い。GFMインバータは、電圧源(PVバス)とみなすことができる。
【0049】
GFLインバータは、所与の位相角で電流を注入することによって、有効電力と無効電力との出力を制御する。位相ロックループ(phase-locked loop:PLL)は、グリッド位相角をリアルタイムで追跡するために使用される。GFLインバータは、系統電圧と周波数とを直接調整することはできない。電圧基準と周波数基準とは、GFMインバータまたはメイングリッドによって外部から供給される。基本的に、GFLインバータは、電圧源/周波数源を失うと、シャットダウンしなければならない。GFLインバータは電流源(PQバス)とみなすことができる。
【0050】
アイランド型インバータベースのマイクログリッドの弱信号故障検出
離散ウェーブレット変換(DWT)と変分モード分解(VMD)とを含む2ステップの時間領域周波数成分分析ベースのアプローチを使用することによって、マイクログリッドにおける弱信号故障が検出される。
【0051】
離散ウェーブレット変換(DWT)は、所与の信号fを複数の集合に分解する変換であり、各集合は、対応する周波数帯域における信号の時間発展を記述する時系列の係数である。DWTは、予め設定されたウェーブレット関数、分解レベルおよび信号拡張モードで、元の信号を異なるウェーブレット成分に合成することによって、ノイズの多い信号をノイズ除去し、予め設定された閾値および閾値モードで信号閾値アルゴリズムを適用することによってノイズ成分を圧縮するために使用できる。DWTベースのノイズ除去の基本的な考え方は、DWTが信号の特徴を少数の大きなウェーブレット係数に集中させることである。値が小さいウェーブレット係数は一般的にノイズであり、これらの係数は、信号品質に影響を与えることなく、回避または除去することができる。係数を閾値処理した後、データを再構成することができる。
【0052】
ノイズの多いどのような信号に対しても、DWTは元の時系列データセットを、高いスケールと低い周波数とを有する近似成分と、異なる分解能レベルで高い周波数と低いスケールとを有する詳細成分のセットとに分解する。近似成分と詳細成分とは、対応する近似係数と詳細係数とによって重み付けされた近似関数と詳細関数との和によって定義され、近似関数と詳細関数との各々は、基本ウェーブレット関数に固有である。ノイズの多い信号のノイズ除去には、(1)予め設定された信号拡張モードと予め設定された分解レベルとを有するウェーブレット関数を用いて、データに前方離散ウェーブレット変換を適用し、近似関数と詳細関数との係数リストを得るステップと、(2)予め設定された閾値と予め設定された閾値モードとで、詳細係数に信号閾値技術を適用するステップと、(3)基本ウェーブレット関数、信号拡張モード、および分解レベルを同じ設定にして、閾値処理後の近似係数と詳細係数とを用いて信号を再構成するために逆離散ウェーブレット変換を適用するステップとを用いることができる。上記DWTノイズ除去の模範設定は以下の通りである:ウェーブレット関数はWavelet Daubechies 4関数であり、分解レベルは5に設定し、信号拡張モードは周期的パディングであり、閾値モードはソフト閾値処理であり、閾値は0.4である。
【0053】
VMDは、適応的な準直交分解アルゴリズムであり、ノイズの多い信号fをk個の離散周波数モードに分離することを目的とし、これらの離散周波数モードは、各モードの(推定)中心周波数ωkを中心にコンパクトである。VMDは、まず、各モード(推定)ukにヒルベルト変換を適用することによって片側周波数スペクトルを求め、次に、推定モード周波数を中心とする指数成分を混合することによって各モードの周波数スペクトルをベースバンドにシフトし、最終出力はk個の固有モード関数(intrinsic mode function:IMF)成分の集合であり、各成分は周波数ωkにおける高調波成分ukを表す。IMFは、単純高調波関数と対をなすものとして、一般に単純な振動モードを表す。定義上、IMFは、極値およびゼロ交差の数が同じで、包絡線がゼロに関して対称である任意の関数である。
【0054】
開示された2ステップアプローチでは、第1のステップとして離散ウェーブレット変換(DWT)技術を用いた信号再構成が行われ、これにより入力信号、すなわち測定装置からの電流・電圧データから、ノイズが除去される。第1のノイズ除去ステップの目的は、開示されたアプローチをノイズの影響を受けないようにすることである。実際の適用では、複数の測定ノイズおよびシステムノイズが存在し、これらのノイズが出力からの誤った推論を引き起こす。開示された2ステップアプローチは、このようなノイズに対するアルゴリズムのロバスト性の依存を低減する。第2のステップでは、再構成された信号を入力とし、それらの入力は、VMDアルゴリズムを用いて固有モード関数(IMF)成分として合成される。特に、IMF成分の各々は、時間領域における個々の高調波成分を表し、弱信号故障の期間中、1つ以上のIMF成分が観測可能な変化を示すことが期待される。第2のステップでは、IMF成分ごとの時系列データを提供し、それによって測定値中の高周波数の小さいマグニチュード成分の存在を示す。
【0055】
開示されたアプローチの大きな利点の1つは、異なる構成のグリッドシステムに拡張可能であることである。どのようなタイプのグリッド構成およびトポロジであっても、グリッドの隣接する位置間には時間的関係が存在するため、故障源から比較的離れた位置からの測定値は、故障期間にわたってある程度の変動を示す。したがって、グリッドトポロジに関係なく、実際の故障源に近接する任意の位置からの測定値のIMF成分は、弱信号故障の発生を検出することができる。
【0056】
開示した方法の有効性を実証するため、
図2Aに示すマイクログリッドの典型的な故障が、MathWorks SIMULINKを使用してシミュレートされる。
【0057】
バス2およびバス4の近傍に、3線地絡(TLG)、2線地絡(DLG)、1線地絡(SLG)を含む、各タイプの地絡が個別に発生している。TLGは、A相→B相→C相→接地故障でシミュレートされるため、ABCG故障と表現される。同様に、DLGおよびSLGはそれぞれ、A相→B相→接地故障およびA相→接地故障でシミュレートされるため、それぞれABG故障およびAG故障と表現される。インバータ直流側短絡は、各インバータのPVパネルからの直流電源を個別に短絡させることによってモデル化される。インバータトリップは、インバータごとのPCC近傍の三相接続をトリップさせることによって表現する。前述の2つの位置の各々における故障タイプは、時間2.5秒に発生し、3.0秒に除去される。インバータトリップは2.5秒~2.6秒まで発生している。
【0058】
2.0秒~3.5秒の時間間隔で、電流・電圧位相ベクトル、電流・電圧シーケンス成分、実効電力・無効電力測定値が収集される。データセットは1kHzの周波数でサンプリングされて、1.5秒間に1500回の測定が行われる。
【0059】
図3~
図7は、
図2Aに示すマイクログリッドにおいてシミュレートされた、異なるタイプの弱信号故障の電流波形を示す。波形は、VMDアルゴリズムによって生成され、予め総数が5と定義されているIMFモードで実現されるVMDアルゴリズムによって生成される。IEDから受信した電流および電圧の測定値は、まずDWTでノイズ除去された後、入力としてVMDに供給される。
【0060】
図3は、IMFモード1のABCG故障の電流波形を示す。次に、IED M5で、バス4付近の三相ラインでのABCG故障(故障インピーダンス6000Ω)の電流測定値が収集される。
図3に示すように、電流波形の顕著な異常信号変動は、前述の故障持続時間である2.5秒~3.0秒で確認できる。故障はバス4付近に位置しているが、
図3の電流測定はIED M5からのものであり、これは、VMDアルゴリズムが、系統のどの位置からの測定値を用いても高インピーダンス故障の存在を示すことができる有効性を反映している。
【0061】
測定信号の異常信号変動は、測定信号の正常信号範囲の長さに対する、測定信号の正常信号範囲と測定信号の異常信号範囲との間の長さの差の絶対値の比率が故障閾値よりも大きい場合に特定される。故障閾値は、正常信号範囲と異常信号範囲との間の差に基づく比率として定義することができる。正常信号範囲と異常信号範囲とは、約1.0秒などの予め設定された長さを有する所与の期間(2.0秒~3.0秒など)にわたる測定信号の変動範囲に基づいて判定される。
【0062】
故障閾値は、約0.15などに予め設定されている。故障閾値をストレージ154に格納することができ、故障特定・制御システム100を使用してマイクログリッド115における故障を自動的に検出するために使用することができる。
【0063】
上述のアプローチは静的アプローチである。特定は、同一の幅を有する連続した監視時間窓間の信号変動の比較に基づく動的アプローチを使用することによっても達成できる。連続する2つの監視時間窓のうちの第1の監視時間窓における測定信号の信号変動範囲の長さに対する、連続する2つの監視時間窓における測定信号の信号変動範囲の間の長さの差の絶対値の比率が故障閾値よりも大きい場合、測定信号の異常信号変動が特定される。監視時間窓の幅は、0.1秒などに予め設定されている。たとえば、
図3の最大電流範囲は、第1の時間窓(すなわち2.4秒~2.5秒)で800アンペア付近から、第2の時間窓(すなわち2.5秒~2.6秒)で1000アンペア付近に変化している。故障閾値を0.15と設定した場合、800アンペア付近に対する絶対差(200アンペア付近)の比率が0.25付近となり、これは故障閾値(0.15)よりも大きいことから、2.5秒から異常信号の変動が開始していることが特定できる。
【0064】
図4および
図5は、IMFモード1およびモード2のABG故障の電流波形を示す。
【0065】
図4に示すように、バス2近傍の三相線に3000Ωの故障インピーダンスを有するABG故障が発生した場合、電流IMFモード1の波形には、2.5秒から3.0秒の間、同様の異常信号変動を特定することができる。しかしながら、それ以前の時間インスタンスでこの波形に変動が存在するため、故障の存在を確認するためには、
図5に示すようなIMF2を分析に含める必要がある。
【0066】
図6は、IMFモード2のインバータ直流側短絡(DC-side short-circuit:DCSC)故障の電流波形を示す。
図6に示すように、バス4に接続されたGFMインバータの直流電源におけるDCSC故障に対して、IMF2成分から得られた結果は、2.5秒から3.0秒の間に故障の存在を示している。
【0067】
図7は、IMFモード2のインバータトリッピング(IT)故障の電流波形を示す。IT故障は2.5秒に導入され、2.6秒に除去されるため、電流位相ベクトルはこの期間で異常な信号変動を示している。ABG故障およびインバータ直流側短絡故障(DCSC)と同様に、IT故障をIMF2成分で検出できる。
【0068】
図3~
図7に示すように、VMDは、アイランド型インバータベースのマイクログリッドの弱信号故障の存在を効果的に判定することができる。
【0069】
アイランド型インバータベースのマイクログリッドの弱信号故障位置特定
低インピーダンス故障の背後にある一般的な仮定は、故障位置の近くの測定値は、故障から遠く離れた位置の測定値よりも大きく変化するというものである。しかしながら、すべての位置での測定偏差はリレーで検出するには小さすぎるため、この仮定は弱信号故障の場合には有効ではない。
【0070】
インバータトリッピングおよびインバータ直流側短絡を含むインバータ関連故障の位置特定は、比較的簡単である。トリップしたインバータのPCCにおける電流は、それぞれのインバータにおけるインバータトリッピングの存在を示す。インバータ直流側短絡の場合、特定のインバータの出力における電圧および電流の位相ベクトルは、故障期間中に大きな変化を示すと予想される。したがって、インバータの交流側で測定された電流および電圧に異常な信号変動が確認されれば、インバータ関連故障を容易に特定することができる。
【0071】
本発明者らは、電気回路のノードにおけるキルヒホッフの電流則(Kirchhoff’s Current Law:KCL)の利用による、高インピーダンス故障の局所化に焦点を当てている。正常運転状態における特定の分岐について、2つの異なる位置に設置されたIEDが同じ分岐における電流I
1とI
2とを報告すると仮定する。KCLによれば、2つの測定装置間に故障状態がない場合、I
1とI
2とは同じような傾向をたどると予想される。しかしながら、これら2つの測定点間に故障が存在する場合、
図8に示すように、故障点と地面との間に導電路が形成され、その結果、I
1とI
2とは正反対の傾向をたどり、これは、グリッド内の他の測定装置の間ではありえない挙動である。隣接する2台の測定装置から得られた電流測定値間で計算された相関の絶対値は、一般に高く1に近いことが予想されるが、故障状態では時間領域での傾向が正反対になるため、相関は非常に小さくなる。したがって、相関を使用して故障位置を特定することができる。
【0072】
【0073】
【0074】
開示された方法の1つの利点は、共分散ベースの行列が、1線地絡(SLG)、2線地絡(DLG)、および3線地絡(TLG)を含む、すべてのタイプの地絡に適用可能であることである。これに加えて、開示された方法は、追加の特定の装置からではなく、送電網の特定の位置に既に設置されているIEDから得られるデータを使用する。とはいえ、開示された相関ベースの方法にはいくつかの制限がある。第1に、2つのノード間の相関は、故障から遠く離れた位置で発生した故障状態の場合、閾値τよりも小さくなる可能性がある。第2に、これらの2つのノード間に既存の負荷またはスラックジェネレータが接続されている場合、これらのノード間の相関はτより小さくなる可能性がある。そのため、相関行列は正しい故障位置のみを与えるのではなく、いくつかの可能性のある故障位置(すなわち、故障候補位置)を与え、これらの位置のうちの1つが実際の故障位置である。故障の正しい位置は得られないかもしれないが、相関ベースのアプローチは、多数の位置を複数の疑わしい位置(すなわち、故障候補位置)だけに絞り込むのに役立つ。
【0075】
疑わしい位置をさらに絞り込むために、消費電力プロファイルを組み込んだ教師ありのK近傍(KNN)ベースの手法が開発されている。K近傍(KNN)モデルは、ノンパラメトリックの教師あり学習分類器であり、近接性を利用して、個々のデータ点のグループ化に関する分類または予測を行う。分類問題では、クラスラベルは多数決に基づいて割り当てられる。すなわち、所与のデータ点の周辺で最も頻繁に表示されているラベルが使用される。KNNモデルを判定するメトリックは、正確な分類のために重要である。ユークリッド距離は一般に、入力データセット間の最近傍を見つけるためのメトリックとして使用され、2点間の1対1の距離が、2つの異なるデータセットから同時に計算される。このため、データセットが時間領域で互いに完全に一致していない場合、ユークリッド距離は、2つの時系列データセット間の正確な距離情報を提供しない。KNNモデルにおいて時系列入力データセットの最近傍を計算するために、動的時間ワーピング(DTW)を使用することによって、異なる時間的整合を有する2つの時系列データセット間の距離をより正確に測定することができる。したがって、マイクログリッドの分岐を通る電力消費プロファイルが時系列データであることを考慮して、DTWをKNNモデルのメトリックとして採用する。
【0076】
【0077】
既存の研究とは対照的に、KNNへの入力として、故障インシデントごとに各分岐の消費電力データを使用し、KNNからの出力によって、分岐を故障/非故障に分類する。KNNモデルは、相関行列ベースのアプローチによって提供される疑わしい故障ノードの中で、故障ノードを含む分岐を特定する。これら2つの方法の結果を組み合わせることで、マイクログリッド内の実際の故障位置をピンポイントで特定することができる。KNNの最適な近傍数Kを選択し、相関閾値τを選択することによって、より精度の高い位置特定を達成することができる。電力網データにはノイズが含まれているため、2つの類似した時系列測定値間の相関は0.99より低くなる可能性がある。そのため、0.90以上、たとえば0.90~0.98の値が閾値τに適している。
【0078】
KNNモデルは、訓練ケースのセットについて、入力としてノイズ除去された分岐電力消費データ、および出力として故障のラベル付けされたデータで訓練され、訓練ケースは、故障していないケースと故障したケースとを含み、故障したケースは、異なる故障タイプ、異なる故障インピーダンス、および分岐の異なる故障位置を含み、KNNの近傍数Kは、予め設定されている。
【0079】
開示された故障位置特定方法と既存の研究との違いは、以下の通りである:(1)系統構成およびトポロジに関係なく、故障位置の両側における電流測定値は、異なる挙動を示し、隣接する2つの異なる位置からの電流測定値間の相関と比較して相対的に小さい相関を有する。(2)KNNモデルは、系統のすべての分岐からの電力消費データを使用する。どちらのステップでも、故障位置情報は系統の構成およびトポロジには依存せず、むしろ時間領域における電流および電力消費プロファイルの一般的な挙動に依存する。KNNパラメータを適切に調整することによって、ほぼ完璧な位置特定精度が得られる。(3)インバータトリッピングおよびインバータ直流側短絡の場合、影響を受けるインバータおよび対応するPCCのみの電流および電圧の挙動を観察する。系統構成に関係なく、影響を受けるインバータおよびPCCは故障時に期待される挙動を示すため、開示された方法は、直流側短絡故障とインバータトリッピング故障とに対してスケーラブルになる。したがって、開示されたハイブリッド方法は、弱信号の位置特定がグリッド構造に依存することを排除し、それによって、あらゆる大規模グリッドシステムに拡張可能である。
【0080】
上述の方法を用いて
図2Aに示すマイクログリッド内の故障の位置を特定するために、電流の正のシーケンス成分を用いて相関行列Cを構成する。2つの故障位置の各々における故障タイプごとに、1.5秒間(2秒~3.5秒)の総消費電力データを抽出する。さらに、故障ケースごとに、故障インピーダンスも変化させる。高インピーダンス故障を実証するため、1200Ω、3000Ω、および6000Ωの3つの非常に大きな値の故障インピーダンスについて考える。故障インピーダンスの組み合わせが54通りあるため、分岐ごとに54個の時系列消費電力データが提供され、KNNの入力に供給される。3つの分岐の場合、3つの非故障状態を含む入力サンプルの合計サイズは165である。出力は、対応する分岐が故障を含む場合は1に分類され、そうでない場合は0に分類される。訓練データセットとテストデータセットとは、80:20の比率で分割される。KNNの精度が最も高くなるように、近傍数Kを約2から約6まで変化させる。相関行列閾値τに対する故障分類精度τを、0.9~0.98に変化させて分析する。
【0081】
図2Aを参照して、4×4の相関行列が分岐ごとに最初のステップで作成される。
図9~
図11は、バス4付近に故障が発生したTLG故障に対するグリッドの3つの分岐の相関行列を示す。相関閾値τ=0.9の場合、分岐1の要素(1,2)=(2,1)、分岐2の要素(2,3)=(3,2)、および分岐3の要素(2,3)=(3,2)の3つの可能な故障位置が得られる。故障は、連続する2つのIED間のみで、電流測定が反対方向に進むことが予想されるため、対角線の右/左のインデックスが1つである要素のみを考慮する。たとえば、分岐3の(2,3)番目の要素は、M10とM11との間の点に対応するため、バス4付近で故障が発生した可能性があることを示す。この結果は、相関行列ベースの方法が故障の位置特定に有効であることを示す。バス相関行列ベースの方法は、実際の故障位置を含め、故障の可能性がある位置を示すことができるが、複数の疑わしい位置を示すため、誤判定(False Positive:FP)ケースの可能性が生じる。FPは、開示された故障位置特定方法によって、故障位置でない位置が疑わしいとみなされるケースと定義される。入力としてノイズ除去された分岐消費電力データ、および出力として故障のラベル付けされたデータでKNNを訓練した後で、テストデータセットで結果の精度をテストする。精度は、テストケースの総数に対する正しい予測の比率として定義される。
【0082】
図12は、近傍数K=3、つまり近傍数の最良の選択が3である場合の最高精度を示す。消費電力データにランダムなガウスノイズを加えて行った同じ実験について、この表はKNN精度が変化しないことを示している。
【0083】
相関行列は単独で正しい故障位置の候補の集合を提供できるが、KNNと組み合わせることで、誤判定(FP)の数を減らすことができる。KNNがFPのケースに与える影響は、
図13から明らかである。ただし、FPケースの数は相関閾値τに依存する。相関閾値が90%でK=3の場合、開示された故障検出方法は、高インピーダンスの弱信号故障の位置を特定するのに最適な結果を提供する。
【0084】
アイランド型インバータベースのマイクログリッドの弱信号故障分類
一般に、故障分類は電流の重畳シーケンス成分を使用することで達成できる。従来の送電網システムでは、重畳電流シーケンス成分の相対的な挙動を分析することによって、異なる地絡を分類することができる。しかしながら、インバータベースのマイクログリッドの場合、正および負のシーケンス電流は、コンバータ制御システムの基準点によって制御される。この現象により、インバータベースのマイクログリッドによって注入される電流は、従来の送電網の場合とは異なる挙動を示す。開示された故障分類法は、時系列測定における電流シーケンス成分の挙動に重点を置いている。単一サンプルのシーケンス成分測定に焦点を当てるのではなく、初期化の瞬間と故障の除去の瞬間とを含む故障期間にわたる時系列属性は、故障タイプごとに異なる挙動を示す。
【0085】
開示された故障分類法は、
図14に示すような論理回路モデルに基づいている。論理回路モデルは、弱信号故障タイプによる故障期間にわたる故障特徴を示すIED時系列測定値間の関係を定義している。故障タイプには、インバータベースの故障と高インピーダンス故障とがある。インバータベースの故障には、インバータトリッピング(IT)およびインバータ直流側短絡(DCSC)が含まれる。高インピーダンス故障には、3線地絡(TLG)、2線地絡(DLG)、および1線地絡(SLG)が含まれる。IED測定値が示す故障特徴には、正のシーケンス電流変化、負のシーケンス電流変化、負のシーケンス過渡電流、相電流変化、相電圧電流、およびゼロ付近のインバータPCC電流が含まれる。
【0086】
故障分類は、t
0~t
0+Tの時系列測定値を分析することによって弱信号故障が検出された後に実行され、ハイブリッド相関行列とKNN法とによって故障位置が特定される。配電線における2つのIEDの間で故障位置が特定されると、これらのデバイスからの電圧および電流位相ベクトル測定値と共に、対応する時系列の電流測定値のシーケンス成分が、故障タイプを分類するために
図14の論理回路に供給される。シーケンス成分と位相ベクトル測定値とからの観測結果は、
図14に示すような論理回路モデルにおいて利用される。特定のシーケンス成分または位相ベクトルツアー測定値がt
1からt
2の間で異常な信号変動を示す場合、
図14の論理回路において対応する入力はBoolean1であり、それ以外の場合はBoolean0である。対応する故障タイプのみの出力はBoolean1であり、それ以外の場合はBoolean0である。
【0087】
特定のインバータのインバータ直流側短絡(DCSC)故障時、影響を受けるインバータの交流側の電圧および電流の測定値は大きく変化すると予想される。特定のインバータの交流側の正弦波電圧および電流の測定値が故障期間中に異常な信号変動を示す場合、対応する故障タイプはインバータ直流側短絡と分類できる。
図14に示すように、調査対象のインバータの交流側の電圧または電流位相ベクトル、および電流の正のシーケンス成分について異常な信号変動が感知された場合、DCSC故障と判定される。
【0088】
インバータトリッピングの場合、インバータが短期間ラインから切り離されるため、PCCでの電流の大きさが大幅に減少する。そのため、電流位相ベクトルがゼロに近く、正のシーケンス成分の信号が異常に変動する場合は、インバータトリップ故障を示す。
図14の専用論理回路は、ゼロに近い電流位相ベクトルと正のシーケンス成分の異常信号変動とを検知すると、インバータがトリップしたと判定されることを示している。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
故障電流IFの厳密な値は、故障インピーダンス、系統トポロジ、および故障位置近傍に接続されている機械に依存するため、高インピーダンス故障時の故障電流の正確な値を予測することは困難である。正確な数値または数値の範囲を使用するにもかかわらず、故障時の異なるシーケンス成分の時系列挙動から、より一般化され、トポロジに影響されにくい故障の分類が得られるはずである。(4)~(6)は、異なるタイプの故障時のシーケンス成分の相対的な挙動を示す。t0~t0+Tの時系列電流シーケンス測定値(Tは正の非ゼロ値であり、故障はt1で発生しt2で除去される(t2<T))には、TLG、DLGおよびSLGのような故障タイプに関する情報が含まれている。
【0095】
本開示の故障分類法の主な利点は、位置に対する感度が低いことである。本開示の方法では、まず疑わしい位置を検出して位置を特定し、次に
図14の論理回路を疑わしい位置のみで適用する。したがって、開示された分類方法は、不正確な故障タイプを与える可能性が低い。開示した方法の第二の利点は、拡張性である。故障位置は既に求められているため、疑わしい位置のみから電流シーケンス成分および位相ベクトル測定値を観測し、対応するBoolean入力を
図14の論理回路に入力すれば十分である。より複雑な送電網システムの場合、故障位置の特定は、疑わしい位置を1点か数点のみに減らすため、複雑な大規模送電網システムであっても、開示された論理回路ベースの方法の精度は高いと予想される。既存の研究では、これら2つの故障の分類アプローチに取り組んでいないため、インバータ直流側短絡(DCSC)故障およびインバータトリッピング(IT)故障の分類は、既存の研究に対する開示方法の第三の利点である。
【0096】
図14の開示された論理回路による故障分類には、Boolean入力が必要である。特定の位相ベクトルまたはシーケンス測定が故障期間中に異常な信号変動を示す場合、対応する入力信号は1に設定される。論理回路からの出力は、故障タイプを示す。2つの異なる位置で3つの異なるインピーダンスレベルの地絡の各々を用いると、18個の地絡が発生する可能性がある。さらに、バス2におけるGFLインバータとバス4におけるGFMインバータとの各直流電源において、別々にインバータ直流側短絡(DCSC)を適用した。最後に、各インバータをPCC近傍で個別にトリップさせて、合計22個の故障を発生させた。
【0097】
要約すると、弱信号故障の故障タイプは故障分類論理回路によって分類され、電流の正のシーケンス成分について異常な信号変動が特定され、電流の負のシーケンス成分について異常な信号変動が特定されないか、または負のシーケンス過渡現象の異常な信号変動が特定される場合、故障タイプは3線地絡(TLG)と判定され;電流の正および負のシーケンス成分について異常信号変動が特定される場合、故障タイプは2線地絡(DLG)と判定され;電流の正および負のシーケンス成分について異常な信号変動が特定されるか、または電流の正および負のシーケンス成分について異常な信号変動が特定されない場合、故障タイプは1線地絡(SLG)と判定され;インバータ交流側電圧について異常信号変動が特定され、かつ、インバータ交流側電流について異常信号変動が特定される場合、故障タイプはインバータ直流側短絡(DCSC)故障と判定され;電流の正のシーケンス成分について異常信号変動が特定され、かつ、インバータのPCCにおける相電流がゼロに近い場合、故障タイプはインバータトリッピング(IT)故障と判定される。
【0098】
図15は、開示した論理回路による分類結果と実際の故障タイプとの比較を示す。開示された方法は、分類アルゴリズムを実行する前に故障の位置を突き止めるため、SLG、TLG、インバータ直流側短絡(DCSC)、およびインバータトリッピング(IT)故障に対して100%の精度を示している。しかしながら、DLGの場合、開示された論理回路は、DLG故障とSLG故障との両方に対してBoolean1を示す。この結果は、実際の故障がDLGのみである場合、DLG故障とSLG故障との間に不確実性があることを意味する。しかしながら、DLG故障とSLG故障との緩和および修復技術は類似しているため、この不確実性はシステム運用者にとって重大な問題にはならないと予想される。
【0099】
模範的なアイランド型インバータベースのマイクログリッドに対するテストに関する注釈
前述の結果から、開示された故障特定方法は、弱信号故障を検出でき、ノイズの多い状態でも適切に調整されたパラメータで故障の位置を正確に特定できることが明らかである。さらに、分類方法は、正しい故障タイプを特定することができ、電力網回復力を維持するための正確な緩和および復旧アクションを保証する。
【0100】
開示された故障特定方法は、従来のIEDから利用可能な電圧および電流の測定値を使用して、アイランド型インバータベースのマイクログリッドの故障検出、位置特定、および分類のための効果的な技術を提示している。まず、本発明者らは、VMDを適用して、5などの所定のモード番号で障害の存在を検出した。結果は、グリッドの任意の位置からの測定値が、イベントの持続時間にわたる弱信号故障の存在を示し得ることを明らかにした。故障の存在を検出した後、相関行列とKNNとを適用して故障の位置を特定した。結果は、相関行列は比較的高いFPのケースで正確に故障の位置を与えることを示した。KNNを相関行列とさらに組み合わせることによって、FPケースの数を、7~10の範囲から0~3の範囲に大幅に減らすことができる。特に、KNNはK=3で100%の精度をもたらし、相関行列とKNNとを組み合わせた方法は、閾値0.9でFPの数は0である。さらに、開示された方法の精度は測定ノイズに依存しないことが示されている。開示された方法の最後の部分は、シーケンス成分の相対的な挙動と位相ベクトル測定値とを用いた分類である。その結果、2線地絡(DLG)と1線地絡(SLG)との間の不確実性を除いて、すべてのタイプの故障に対して100%の精度が示された。
【外国語明細書】