(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137677
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ボルテージレギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G05F1/56 310L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213500
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2023047165
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高田 幸輔
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB11
5H430EE06
5H430FF02
5H430FF13
5H430HH03
5H430JJ07
(57)【要約】
【課題】負荷電流の急激な変動に対して出力電圧の応答が高速なボルテージレギュレータを提供する。
【解決手段】ボルテージレギュレータ100は、基準電圧VREFと帰還電圧VFBの差を増幅した信号を出力する誤差増幅回路121と、誤差増幅回路121から供給された信号を増幅し制御信号として出力するソース接地増幅回路103と、制御信号が供給されるゲートを含み、出力電圧VOUTを出力するPMOSトランジスタ127と、を備え、ソース接地増幅回路103は、抵抗125と容量126とを含む位相進み補償回路と、オフセット電圧を発生させるオフセット生成素子と抵抗122とを含む負荷と、誤差増幅回路121から出力された信号が供給されるゲートと、抵抗125の一端及び容量126の一端と接続されるソースと、負荷と接続されるドレインと、を含むトランジスタ124と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧と帰還電圧の差を増幅した信号を出力する誤差増幅回路と、
前記誤差増幅回路から供給された前記信号を増幅し制御信号として出力するソース接地増幅回路と、
前記制御信号が供給されるゲートを含み、出力電圧を出力する出力トランジスタと、を備え、
前記ソース接地増幅回路は、抵抗と容量とを含む位相進み補償回路と、
オフセット電圧を発生させるオフセット生成素子と抵抗とを含む負荷と、
前記誤差増幅回路から出力された前記信号が供給されるゲートと、前記位相進み補償回路に含まれる前記抵抗の一端及び前記容量の一端と接続されるソースと、前記負荷と接続されるドレインと、を含むトランジスタと、
を有することを特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項2】
前記制御信号に基づく電圧に応じて、前記誤差増幅回路の出力端子と回路動作の基準となる電源電圧を供給する電源端子とを連絡する経路を導通状態又は開放状態に切り替えるスイッチを有する過電流保護回路を備える請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項3】
第1の電源電圧を供給する第1の電源端子と第2の電源電圧を供給する第2の電源端子との間に接続され、前記制御信号に基づく電圧を発生させる電圧生成回路と、前記電圧生成回路が発生させる電圧に応じて、前記誤差増幅回路の出力端子と前記第1の電源端子とを連絡する経路を導通状態又は開放状態に切り替えるスイッチと、を有する過電流保護回路を備える請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項4】
前記オフセット生成素子は、ゲートとドレインとを接続したトランジスタである請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルテージレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ボルテージレギュレータは、電源電圧を受けて一定の出力電圧を発生し、電源電圧や負荷電流が変動しても出力電圧を一定の値に維持することが望ましい。一例として、基準電圧源と、誤差増幅回路と、出力トランジスタと、ミラー容量を用いた位相補償回路と、を備えるボルテージレギュレータがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のボルテージレギュレータでは、制御ループの位相補償にミラー容量による遅れ補償を用いているため、負荷電流の急激な変動に対して出力電圧の応答に遅延が発生するという点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上述した事情を考慮し、負荷電流の急激な変動に対して出力電圧の応答が従来よりも高速なボルテージレギュレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るボルテージレギュレータは、基準電圧と帰還電圧の差を増幅した信号を出力する誤差増幅回路と、前記誤差増幅回路から供給された前記信号を増幅し制御信号として出力するソース接地増幅回路と、前記制御信号が供給されるゲートを含み、出力電圧を出力する出力トランジスタと、を備え、前記ソース接地増幅回路は、抵抗と容量とを含む位相進み補償回路と、オフセット電圧を発生させるオフセット生成素子と抵抗とを含む負荷と、前記誤差増幅回路から出力された前記信号が供給されるゲートと、前記位相進み補償回路に含まれる前記抵抗の一端及び前記容量の一端と接続されるドレインと、前記負荷と接続されるソースと、を含むトランジスタと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、負荷電流の急激な変動に対して出力電圧の応答が従来よりも高速なボルテージレギュレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るボルテージレギュレータの構成例を示す回路図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係るボルテージレギュレータの構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るボルテージレギュレータを、図面に基づいて説明する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るボルテージレギュレータの一例であるボルテージレギュレータ100の回路図である。
【0011】
ボルテージレギュレータ100は、電源端子101と、接地端子102と、基準電圧源120と、誤差増幅回路121と、抵抗122と、PMOSトランジスタ123と、NMOSトランジスタ124と、抵抗125と、容量126と、PMOSトランジスタ127と、抵抗128と、抵抗129と、出力端子110と、を備えている。接地端子102は、回路動作の基準となる電源電圧の一例として、0V(ゼロボルト)の電源電圧(以下、「接地電圧」とする)を供給する電源端子である。抵抗122、PMOSトランジスタ123、NMOSトランジスタ124、抵抗125、及び容量126は、ソース接地増幅回路103を構成している。
【0012】
ソース接地増幅回路103は、抵抗122とPMOSトランジスタ123とを含む負荷と、抵抗125と容量126とを含む位相進み補償回路と、NMOSトランジスタ124と、を有している。また、ソース接地増幅回路103は、入力端103a及び出力端103bを有している。ここで、入力端103aは、誤差増幅回路121の出力端子及びNMOSトランジスタ124のゲートの接続点であり、誤差増幅回路121から供給される信号を受けるノードである。出力端103bは、NMOSトランジスタ124のドレインと、PMOSトランジスタ123のゲート及びドレインと、PMOSトランジスタ127のゲートとの接続点であり、PMOSトランジスタ127のゲートへ制御電圧を出力するノードである。
【0013】
基準電圧源120は、一端が誤差増幅回路121の非反転入力端子(+)に接続され、他端が接地端子102に接続されている。
NMOSトランジスタ124は、ゲートが誤差増幅回路121の出力端子に接続され、ソースが抵抗125の一端と容量126の一端に接続され、ドレインがPMOSトランジスタ123のゲート及びドレインとPMOSトランジスタ127のゲートに接続されている。
抵抗122は、一端が電源端子101に接続され、他端がPMOSトランジスタ123のソースに接続されている。
抵抗125は、他端が接地端子102に接続されている。容量126は、他端が接地端子102に接続されている。
出力トランジスタとしてのPMOSトランジスタ127は、ソースが電源端子101に接続され、ドレインが出力端子110と抵抗128の一端に接続されている。抵抗128は、他端が抵抗129の一端と誤差増幅回路121の反転入力端子(-)に接続されている。抵抗129は、他端が接地端子102に接続されている。
【0014】
次に、ボルテージレギュレータ100の動作について説明する。
電源端子101は、所定の電源電圧を供給する。接地端子102は、接地電圧を供給する。
【0015】
出力端子110は、ボルテージレギュレータ100の出力端子であり、出力端子110の電圧を出力電圧VOUTとする。抵抗128と抵抗129は、出力電圧VOUTを分圧して帰還電圧VFBを生成する。誤差増幅回路121は、基準電圧源120から出力される基準電圧VREFと帰還電圧VFBとの大小を比較して出力端子から誤差電圧VERRを出力する。誤差電圧VERRは、ソース接地増幅回路103(より詳細にはNMOSトランジスタ124のゲート)に供給される。
【0016】
ソース接地増幅回路103では、NMOSトランジスタ124と、抵抗125と、容量126によって進み補償が生成される。また、オフセット生成素子としてのPMOSトランジスタ123は、その両端、すなわちソース-ドレイン間にオフセット電圧を発生させる。ソース接地増幅回路103は、PMOSトランジスタ123のソース-ドレイン間にオフセット電圧を発生させるので、負荷のインピーダンスが低減され、利得が低減されている。ソース接地増幅回路103で増幅された信号は、制御信号として出力端103bからPMOSトランジスタ127のゲートに供給される。PMOSトランジスタ127は、制御信号としての電圧VGATEの供給をゲートに受けて、ドレインに出力電圧VOUTを出力する。出力電圧VOUTは、PMOSトランジスタ127のドレインと接続される出力端子110に供給される。
【0017】
続いて、抵抗122及びPMOSトランジスタ123を含むソース接地増幅回路103の負荷のインピーダンスが低減されている理由を説明する。
【0018】
PMOSトランジスタ123は、ゲートとドレインが接続されているため、ソース-ドレイン間のインピーダンスが小さく、ソース-ドレイン間にオフセット電圧を生成するオフセット生成素子として動作している。PMOSトランジスタ127を導通させるための制御信号、すなわちPMOSトランジスタ127のゲート-ソース間電圧は、オフセット電圧と抵抗122の両端電圧とで生成される。このように、負荷内にオフセット電圧が存在するため、当該オフセット電圧が存在しない場合に対して、抵抗122の電圧降下(両端電圧)は低減される。この結果、ソース接地増幅回路103の負荷のインピーダンスが低減される。
【0019】
ボルテージレギュレータ100によれば、ソース接地増幅回路103に制御ループの進み補償を追加し、さらに利得を低減することによって、ボルテージレギュレータ100の位相余裕を確保することができる。また、ボルテージレギュレータ100によれば、制御ループにミラー容量による遅れ補償を使用しないため、制御ループにミラー容量による遅れ補償を使用しているボルテージレギュレータよりも負荷電流の急激な変動に対して出力電圧の応答速度を速めることができる。すなわち、負荷電流の急激な変動に対する出力電圧の応答を、従来よりも高速にすることができる。
【0020】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態に係るボルテージレギュレータの一例であるボルテージレギュレータ200の回路図である。
【0021】
ボルテージレギュレータ200は、ボルテージレギュレータ100に対して、過電流保護回路106をさらに備える点で相違するが、その他の点では実質的に相違しない。そこで、本実施形態の説明では、相違する過電流保護回路106を中心に説明し、ボルテージレギュレータ100と重複する構成要素については、同じ符号を付して、説明を省略する。
【0022】
ボルテージレギュレータ200は、電源端子101と、接地端子102と、基準電圧源120と、誤差増幅回路121と、抵抗122と、PMOSトランジスタ123と、NMOSトランジスタ124と、抵抗125と、容量126と、PMOSトランジスタ127と、抵抗128と、抵抗129と、過電流保護回路106と、出力端子110と、を備えている。
【0023】
過電流保護回路106は、PMOSトランジスタ131と、抵抗132と、NMOSトランジスタ133と、を有している。PMOSトランジスタ131及び抵抗132は、PMOSトランジスタ131と抵抗132との接続点であるノードN1に電圧VN1を生成する電圧生成回路を構成する。
【0024】
過電流保護回路106は、過電流保護回路106の外部と接続するための接続端106a~106dを有している。接続端106aは、誤差増幅回路121の出力端子及びNMOSトランジスタ124のゲートと接続されている。接続端106bは、接地端子102と接続されている。接続端106cは、PMOSトランジスタ123のゲート及びドレインと、NMOSトランジスタ124のドレインと、PMOSトランジスタ127のゲートとに接続されており、電圧VGATEが入力される。接続端106dは、電源端子101に接続されている。
【0025】
PMOSトランジスタ131は、ソースが電源端子101に接続され、ゲートはNMOSトランジスタ124のドレインと、PMOSトランジスタ123のゲート及びドレインと、PMOSトランジスタ127のゲートとの接続点と接続され、ドレインが抵抗132の一端に接続されている。抵抗132は、他端が接地端子102に接続されている。NMOSトランジスタ133は、ドレインが誤差増幅回路121の出力端子及びNMOSトランジスタ124のゲートの接続点に接続され、ソースが接地端子に102に接続され、ゲートがノードN1に接続されている。すなわち、スイッチとしてのNMOSトランジスタ133は、制御信号に基づく電圧の一例である電圧VN1に応じて、誤差増幅回路121の出力端子と接地端子102とを連絡する経路を導通(オン)状態と開放(オフ)状態とを切り替える。
【0026】
次に、ボルテージレギュレータ200の動作について説明する。なお、ボルテージレギュレータ200の動作を説明するにあたり、出力端子110が接地端子102とショートし、過電流保護回路106が動作している場合を中心に説明する。
【0027】
同一のノードであるPMOSトランジスタ131のゲートとPMOSトランジスタ127のゲートには、同じ電圧VGATEが印加される。PMOSトランジスタ131及びPMOSトランジスタ127には、比例したドレイン電流が流れる。PMOSトランジスタ127のドレイン電流は、抵抗132に流れて、ノードN1に電圧VN1を発生させる。
【0028】
仮に、PMOSトランジスタ127,131のドレイン電流が大きく、電圧VN1がNMOSトランジスタ133の閾値電圧を超える場合、NMOSトランジスタ133がオンして、NMOSトランジスタ124のゲート電圧が低下する。NMOSトランジスタ124のゲート電圧が低下すると、電圧VGATEが上昇するので、PMOSトランジスタ127のドレイン電流及びPMOSトランジスタ131のドレイン電流は低下する。このように、ボルテージレギュレータ200には、負帰還ループが形成されており、過電流保護回路106は、ボルテージレギュレータ200に形成される負帰還ループの負帰還によって、過電流保護の動作をする。
【0029】
ボルテージレギュレータ200によれば、ボルテージレギュレータ100と同様に、負荷電流の急激な変動に対する出力電圧の応答を、従来よりも高速にすることができる。また、ボルテージレギュレータ200には、PMOSトランジスタ127,131のドレイン電流が大きく、電圧VN1がNMOSトランジスタ133の閾値電圧を超える場合にPMOSトランジスタ133をオンしてPMOSトランジスタ127,131のドレイン電流を低下させる負帰還ループが形成されるので、過電流保護が可能である。ボルテージレギュレータ200によれば、形成される負帰還ループにソース接地回路103が含まれているので、負荷電流の急激な変動に対して過電流保護機能の応答速度を速めることができる。すなわち、負荷電流の急激な変動に対する過電流保護機能の応答を、従来よりも高速にすることができる。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え又は変更することができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
100 ボルテージレギュレータ
101 電源端子
102 接地端子
103 ソース接地増幅回路
106 過電流保護回路
120 基準電圧源
121 誤差増幅回路
124 NMOSトランジスタ
123 PMOSトランジスタ(オフセット生成素子)
122、125、128、129 抵抗
126 容量
127 PMOSトランジスタ(出力トランジスタ)
133 NMOSトランジスタ(スイッチ)
110 出力端子