(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013768
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】バキュームポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 37/16 20060101AFI20240125BHJP
F04B 39/10 20060101ALI20240125BHJP
F04C 25/02 20060101ALI20240125BHJP
F04C 29/12 20060101ALI20240125BHJP
F16K 15/03 20060101ALI20240125BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F04B37/16 Z
F04B39/10 A
F04B39/10 N
F04C25/02 Z
F04C29/12 G
F16K15/03 A
B60T17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116114
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 功史
(72)【発明者】
【氏名】眞玉 良佑
【テーマコード(参考)】
3D049
3H003
3H058
3H076
3H129
【Fターム(参考)】
3D049BB09
3D049HH09
3D049HH30
3D049JJ08
3D049LL05
3H003AA05
3H003AB06
3H003AC02
3H003BC00
3H003CC06
3H003CC11
3H058AA07
3H058AA15
3H058BB03
3H058BB28
3H058BB33
3H058BB38
3H058CA02
3H058CA22
3H058CD24
3H058EE04
3H058EE24
3H076AA21
3H076BB10
3H076BB45
3H076CC43
3H076CC93
3H076CC95
3H129AA05
3H129AA16
3H129AB06
3H129BB16
3H129BB18
3H129BB44
3H129CC15
3H129CC25
3H129CC39
(57)【要約】
【課題】過酷な使用環境であっても浸水対策の信頼性を損なわないバキュームポンプを提供する。
【解決手段】バキュームポンプ1は、ポンプ室10と、ポンプ室10から吐出された気体が流入する気体入口22を有する消音室20と、消音室20内に設けられ、バキュームポンプ1の停止時に消音室20の気体入口22を閉塞可能な逆止弁60と、消音室20に連通し大気開放された排気口30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室と、
前記ポンプ室から吐出された気体が流入する気体入口を有する消音室と、
前記消音室内に設けられ、バキュームポンプの停止時に前記消音室の前記気体入口を閉塞可能な逆止弁と、
前記消音室に連通し大気開放された排気口と、
を備えるバキュームポンプ。
【請求項2】
前記気体入口は、前記消音室内に突出する連通ポートにより形成され、
前記連通ポートは、前記ポンプ室の上方に配置された前記消音室内に上方へ突出し、
前記逆止弁は、閉弁時に前記連通ポートの開口端に上から被さるように構成された弁体部を含む
請求項1に記載のバキュームポンプ。
【請求項3】
前記気体入口は、前記消音室内に突出する連通ポートにより形成され、
前記逆止弁は、
前記連通ポートに対して不動に前記連通ポートに設けられるベース部と、
前記ベース部に対して、前記連通ポートの開口端にシートする閉位置と前記開口端から離れた開位置との間で可動に支持された弁体部と、
を含む請求項1又は2に記載のバキュームポンプ。
【請求項4】
前記弁体部は、
前記開位置にて前記連通ポートの前記開口端から最も離れる先端部と、
前記ベース部に接続される基端部と、
を含み、
前記ベース部は、前記弁体部のうち前記基端部が前記排気口側に位置するように前記弁体部を支持する
請求項3に記載のバキュームポンプ。
【請求項5】
前記逆止弁は、前記ベース部および前記弁体部が一体的にエラストマにより構成された
請求項3に記載のバキュームポンプ。
【請求項6】
前記連通ポートは、外周面が径方向内側に凹んだネック部を有し、
前記ベース部は、前記連通ポートが篏合する貫通孔と、前記ネック部に係合するように前記貫通孔の内周面に設けられた係合突起とを有する
請求項5に記載のバキュームポンプ。
【請求項7】
前記ベース部の周囲に巻かれた拘束バンドを備える
請求項5に記載のバキュームポンプ。
【請求項8】
前記逆止弁は、前記ベース部と前記弁体部とを連結するヒンジを含む
請求項3に記載のバキュームポンプ。
【請求項9】
前記ベース部は、前記連通ポートが圧入又は螺合可能な貫通孔を有する
請求項8に記載のバキュームポンプ。
【請求項10】
前記ベース部は、前記連通ポートと一体的に設けられた
請求項8に記載のバキュームポンプ。
【請求項11】
前記消音室を密封するためのシール材を備え、
前記気体入口は、前記消音室内に突出する連通ポートにより形成され、
前記逆止弁は、
前記連通ポートの開口端にシートする閉位置と前記開口端から離れた開位置との間で可動に構成された弁体部と、
前記シール材から前記連通ポートに向かって延設され、前記弁体部と前記シール材とを接続する接続部と、
を含む
請求項1又は2に記載のバキュームポンプ。
【請求項12】
前記消音室を画定するケーシングを備え、
前記ケーシングは、前記シール材が収容されるシール溝を有し、
前記シール溝は、前記接続部を受け入れるための切り欠きを有する
請求項11に記載のバキュームポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バキュームポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポンプ室と、ポンプ室への気体の吸込及びポンプ室からの気体の吐出を行うための可動部とを含むバキュームポンプが知られている。
【0003】
例えば、自動車等の車両におけるブレーキブースターの負圧室内を負圧にするためにバキュームポンプが使用される。ブレーキブースター向けのバキュームポンプは、車両のエンジンルームに搭載されることが多いが、場合によっては地面に近い場所に搭載されることもあり、搭載場所によっては車両が深い水溜まりを走行する際にバキュームポンプが浸水することがある。バキュームポンプが浸水した場合、排気口から侵入した液体がポンプ室に流入すると、可動部が正常に動作できなくなり、ポンプ作用を発揮できなくなる恐れがある。
【0004】
特許文献1には、バキュームポンプの浸水時に排気口からの液体の侵入を抑制する目的で、排気口を閉塞するための弁体を備えたバキュームポンプが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のバキュームポンプでは、大気開放された排気口を閉塞可能な位置に弁体が設けられるため、バキュームポンプの使用環境によっては、外部からの異物の影響により弁体の正常な動作が損なわれる場合がある。
例えば、上述したブレーキブースター向けのバキュームポンプの場合、車両の走行によって舞い上がった土埃が弁体に付着し、弁体の開閉動作に影響を及ぼす可能性がある。他の用途のバキュームポンプであっても、使用環境によっては、排気口からの異物の混入に起因して同様な問題が起こり得る。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、過酷な使用環境であっても浸水対策の信頼性を損なわないバキュームポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るバキュームポンプは、
ポンプ室と、
ポンプ室から吐出された気体が流入する気体入口を有する消音室と、
消音室内に設けられ、バキュームポンプの停止時に消音室の気体入口を閉塞可能な逆止弁と、
消音室に連通し大気開放された排気口と、
を備える。
【0009】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]の構成において、
気体入口は、消音室内に突出する連通ポートにより形成され、
連通ポートは、ポンプ室の上方に配置された消音室内に上方へ突出し、
逆止弁は、閉弁時に連通ポートの開口端に上から被さるように構成された弁体部を含む。
【0010】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]の構成において、
気体入口は、消音室内に突出する連通ポートにより形成され、
逆止弁は、
連通ポートに対して不動に連通ポートに設けられるベース部と、
ベース部に対して、連通ポートの開口端にシートする閉位置と開口端から離れた開位置との間で可動に支持された弁体部と、
を含む。
【0011】
[4]幾つかの実施形態では、上記[3]の構成において、
弁体部は、
開位置にて連通ポートの開口端から最も離れる先端部と、
ベース部に接続される基端部と、
を含み、
ベース部は、弁体部のうち基端部が排気口側に位置するように弁体部を支持する。
【0012】
[5]幾つかの実施形態では、上記[3]又は[4]の構成において、
逆止弁は、ベース部および弁体部が一体的にエラストマにより構成される。
【0013】
[6]幾つかの実施形態では、上記[5]の構成において、
連通ポートは、外周面が径方向内側に凹んだネック部を有し、
ベース部は、連通ポートが篏合する貫通孔と、ネック部に係合するように貫通孔の内周面に設けられた係合突起とを有する。
【0014】
[7]幾つかの実施形態では、上記[5]又は[6]の構成において、
バキュームポンプは、ベース部の周囲に巻かれた拘束バンドを備える。
【0015】
[8]幾つかの実施形態では、上記[3]又は[4]の構成において、
逆止弁は、ベース部と弁体部とを連結するヒンジを含む。
【0016】
[9]幾つかの実施形態では、上記[8]の構成において、
ベース部は、連通ポートが圧入又は螺合可能な貫通孔を有する。
【0017】
[10]幾つかの実施形態において、上記[8]の構成において、
ベース部は、連通ポートと一体的に設けられる。
【0018】
[11]幾つかの実施形態において、上記[1]又は[2]の構成において、
バキュームポンプは、消音室を密封するためのシール材を備え、
気体入口は、消音室内に突出する連通ポートにより形成され、
逆止弁は、
連通ポートの開口端にシートする閉位置と開口端から離れた開位置との間で可動に構成された弁体部と、
シール材から連通ポートに向かって延設され、弁体部とシール材とを接続する接続部と、
を含む。
【0019】
[12]幾つかの実施形態では、上記[11]の構成において、
バキュームポンプは、消音室を画定するケーシングを備え、
ケーシングは、シール材が収容されるシール溝を有し、
シール溝は、接続部を受け入れるための切り欠きを有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、排気口から消音室に侵入した水が、消音室の気体入口を介してポンプ室側に移動することを逆止弁によって阻止できる。また、逆止弁が消音室内に収容されるため、外部からの異物付着に起因した逆止弁の機能低下を抑制できる。
よって、過酷な使用環境であっても、逆止弁を用いた浸水対策の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係るバキュームポンプの構成を概略的に示す図である。
【
図2】他の実施形態に係るバキュームポンプの構成を概略的に示す図である。
【
図3A】一実施形態に係る逆止弁を示す断面図である。
【
図4A】他の実施形態に係る逆止弁を示す断面図である。
【
図5A】さらに別の実施形態に係る逆止弁を示す断面図である。
【
図6】一実施形態に係るバキュームポンプの全体構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
図1は、一実施形態に係るバキュームポンプ1Aの構成を概略的に示す図である。
図2は、他の実施形態に係るバキュームポンプ1Bの構成を概略的に示す図である。
以下、バキュームポンプ1A,1Bを含む幾つかの実施形態に係るバキュームポンプをバキュームポンプ1と総称することがある。バキュームポンプ1は、バキュームポンプ1A,1Bに限定されず、不図示の他の実施形態に係るバキュームポンプも包含する。
【0024】
幾つかの実施形態では、
図1及び
図2に示すように、バキュームポンプ1は、ポンプ室10と、ポンプ室10から吐出された気体が流入する消音室20と、消音室20に連通する排気口30とを含む。
【0025】
ポンプ室10は、吸入口12及び吐出口14を有する。
バキュームポンプ1が容積移送式真空ポンプである場合、バキュームポンプ1は、ポンプ室10内に気体移送部40を含む。気体移送部40は、所定の体積の気体を吸入口12から吐出口14へと周期的に運ぶように構成される。
【0026】
気体移送部40は、バキュームポンプ1のタイプに応じて種々の構成を採り得る可動部42を含む。可動部42は、往復動又は回転によって気体を移送可能に構成される。
例えば、バキュームポンプ1が往復運動式ポンプである場合、気体移送部40は、ダイアフラム又はピストン等の可動部42を含む。他の実施形態では、バキュームポンプ1は、回転式ポンプであり、気体移送部40の可動部42として種々の形状のロータを含む。
【0027】
ポンプ室10から吐出される気体は、吐出口14から下流側へと流れる。気体の流れ方向に関してポンプ室10の下流側には消音室20が設けられる。
図1に示す実施形態では、ポンプ室10は消音室20に直接連通する。他の実施形態では、ポンプ室10と消音室20との間に1以上の中間室が配置され、ポンプ室10は1以上の中間室を介して消音室20に連通する。
図2に示す例示的な実施形態では、ポンプ室10と消音室20との間に中間消音室50が設けられ、ポンプ室10は中間消音室50を介して消音室20に連通する。
さらに別の実施形態では、ポンプ室10から消音室20に至る流路(中間室を含んでもよい。)は途中で分岐する。さらに別の実施形態では、並列に設けられた複数本の流路(中間室を含んでもよい。)を介して、ポンプ室10が消音室20に連通する。
【0028】
消音室20は、ポンプ室10から吐出された気体が流入する気体入口22を有する。
幾つかの実施形態では、
図1及び
図2に示すように、消音室20の気体入口22は、消音室20内に突出して設けられる連通ポート24によって形成される。連通ポート24は、消音室20の上流側のポンプ室10又は中間室(例えば中間消音室50)と消音室20とを連通するための構造物である。連通ポート24は、少なくとも部分的に消音室20に突出して設けられていればその具体的構造は限定されず、連通流路を形成するための流路管であってもよいし、バキュームポンプ1のケーシングによって形成される流路構造であってもよい。
他の実施形態では、消音室20に開口する気体入口孔によって気体入口22が形成される。この場合、気体入口22(気体入口孔)は、消音室20の壁面と面一である。
【0029】
消音室20は、大気開放された排気口30に連通している。バキュームポンプ1の運転中、ポンプ室10から吐出された気体は、気体入口22から消音室20内に流入し、消音室20から排気口30を介して大気側へと排出される。
幾つかの実施形態では、
図1及び
図2に示すように、排気口30は消音室20に設けられる。他の実施形態では、排気口30は、1以上の中間室を介して消音室20に連通するように消音室20の下流側に設けられる。
図1及び
図2に示す例示的な実施形態では、排気口30は鉛直方向の下向きに大気に開口するように設けられる。この場合、バキュームポンプ1の運転中において、排気口30から排出される気体は下向きに流れる。下向きに大気へと開口する排気口30は、消音室20側への雨滴等の侵入を抑制可能な点で有利である。
【0030】
消音室20内には、バキュームポンプ1の停止時に気体入口22を閉塞可能な逆止弁60が設けられる。逆止弁60は、消音室20内において、気体入口22に近接して配置される。
上述のとおり、バキュームポンプ1の運転中、ポンプ室10から吐出された気体は、消音室20に流入する方向にて気体入口22を通過する。これに対し、バキュームポンプ1の運転停止時、ポンプ室10側が大気圧よりも低いことから、気体は逆方向に流れようとするが、ポンプ室10と大気圧との圧力差によって逆止弁60が閉じることで逆方向の気体流れを阻止する。
こうして、逆止弁60は、バキュームポンプ1の運転中における気体の流れを許容する一方、バキュームポンプ1の停止時における気体の逆流を阻止する機能を有する。また、逆止弁60は、バキュームポンプ1の浸水時、消音室20内に侵入した水の気体入口22を介したポンプ室10側への移動を阻止する機能も有する。
【0031】
幾つかの実施形態では、
図1及び
図2に示すように、逆止弁60は、消音室20内に突出した連通ポート24の開口端にシート可能な弁体部62を含む。
弁体部62は、逆止弁60の開状態において、連通ポート24の開口端から離れた開位置(
図1及び
図2の実線参照)に存在する。これに対し、逆止弁60の閉弁時、弁体部62は、連通ポート24の開口端にシート(接触)した閉位置(
図1及び
図2の二点鎖線参照)へと移動し、連通ポート24の開口端を塞ぐ。弁体部62が閉位置にあるとき、消音室20から連通ポート24を逆流しようとする気体の流れ、または、消音室20に侵入した水の連通ポート24を介したポンプ室10側への流れは、弁体部62によって遮断される。
このように、連通ポート24の開口端を逆止弁60のシートとして利用することで、簡素な構成で、バキュームポンプ1の浸水対策としての逆止弁60を消音室20に設置できる。
【0032】
なお、気体入口22が、連通ポート24ではなく、消音室20に開口する気体入口孔によって形成される他の実施形態では、消音室20の壁面のうち気体入口22(気体入口孔)の周囲の部分であるシートに弁体部62が接触することで、気体入口22が閉塞される。
【0033】
幾つかの実施形態では、
図1及び
図2に示すように、連通ポート24に対して不動に連通ポート24に設けられるベース部64を含み、弁体部62はベース部64に対して可動に支持される。
ここで、ベース部64が、「連通ポート24に対して不動に連通ポート24に設けられる」とは、連通ポート24に対して相対的に移動できないような態様にて連通ポート24に設けられることを意味する。例えば、連通ポート24とは別部品で構成されるベース部64を連通ポート24に取り付け(固定し)、ベース部64を連通ポート24に対して不動としてもよい。あるいは、連通ポート24とベース部64とを同一材料で形成する結果、ベース部64が連通ポート24に対して不動になっていてもよい。
他の実施形態では、弁体部62は、連通ポート24とは無関係(連通ポート24から離れた位置)に設けられたベース部64に対して可動に支持される。
【0034】
図1及び
図2に示す実施形態では、ベース部64は、弁体部62のうち基端部62Bが排気口30側に位置するように弁体部62を支持する。言い換えると、弁体部62は、弁体部62の先端部62Aが基端部62Bを挟んで排気口30の反対側に位置するような配向でベース部64に支持される。
ここで、先端部62Aは、弁体部62のうち、開位置にて連通ポート24の開口端から最も離れる部位である。基端部62Bは、弁体部62のうち、ベース部64に接続される部位である。弁体部62は、ベース部64と基端部62Bとの接続部を回動中心として、開位置と閉位置との間で回動するようになっていてもよい。
弁体部62の基端部62B側を排気口30に向けることで、排気口30からの異物が連通ポート24のシート面に付着しづらくなり、逆止弁60の動作の信頼度が向上する。
【0035】
幾つかの実施形態では、
図2に示すように、消音室20はポンプ室10の上方に配置され、かつ、連通ポート24は消音室20内に上方へ突出する。この場合において、弁体部62は、逆止弁60の閉弁時に、連通ポート24の開口端に上から被さるように構成される。
ここで、弁体部62が開口端に「上から被さる」とは、弁体部62の重力荷重が少なくとも部分的に連通ポート24の開口端に作用するように、閉位置(シート位置)における弁体部62の下側に連通ポート24の開口端が位置することを意味する。
図2には、水平面内に存在する連通ポート24の開口端が、閉状態の弁体部62の鉛直方向の真下に位置する例が示されている。他の例では、水平方向に対して斜めである平面内に存在する連通ポート24の開口端が、閉状態の弁体部62の下側に位置する。
【0036】
続いて、
図3A~
図5Bを参照して、逆止弁60の具体的構成について述べる。なお、以下で述べる逆止弁60A,60B,60Cは、
図1及び
図2を参照した逆止弁60の具体例であり、逆止弁60の構成はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0037】
図3Aは、一実施形態に係る逆止弁60Aを示す断面図である。
図3Bは、
図3Aに示す逆止弁60Aの斜視図である。
図4Aは、他の実施形態に係る逆止弁60Bを示す断面図である。
図4Bは、
図4Aに示す逆止弁60Bの斜視図である。
図5Aは、さらに別の実施形態に係る逆止弁60Cを示す断面図である。
図5Bは、
図5Aに示す逆止弁60Cの斜視図である。
【0038】
幾つかの実施形態では、
図3A及び
図3Bに示すように、逆止弁60Aは、ベース部64および弁体部62が一体的にエラストマ70により構成される。
ここで、「エラストマ」は、弾性を有する高分子材料全般を意味し、天然ゴム、合成ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を含む。
【0039】
エラストマ70により構成される弁体部62は、基端部62B側でベース部64に接続される。弁体部62は、エラストマ70のうち基端部62Bとベース部64との接続部周辺が弾性変形することによって、基端部62Bとベース部64との接続部周りに回動可能である。これにより、弁体部62は、連通ポート24のシート面25から弁体部62が離れた開位置と、シート面25に弁体部62が密着した閉位置との間で移動可能である。
なお、
図3Aには、開位置にある弁体部62が閉位置に向かって回動する様子を矢印方向で示している。
【0040】
エラストマ70により構成されるベース部64は、連通ポート24が篏合する貫通孔72を有する。逆止弁60Aは、ベース部64の貫通孔72に連通ポート24を篏合させることで、連通ポート24に対して不動に取り付けられる。
【0041】
逆止弁60Aの連通ポート24への装着時、連通ポート24の開口端周辺のベース部64の表面71は、連通ポート24のシート面25と比較して、弁体部62から遠い位置にある。換言すれば、連通ポート24は、ベース部64の表面71から突出するように設けられ、連通ポート24のシート面25はベース部64に埋没せずに消音室20に露出している。
このため、逆止弁60Aの閉弁時、連通ポート24のシート面25にシート(接触)した弁体部62と、ベース部64の表面71との間に隙間が形成される。
【0042】
上記構成の逆止弁60Aは、エラストマ70の弾性力によって連通ポート24に保持され、連通ポート24から逆止弁60Aが意図せず脱落することがないようになっている。
【0043】
幾つかの実施形態では、逆止弁60Aは、連通ポート24からの逆止弁60Aの脱落をより確実に防止するためにさらに以下の構成を備える。
例えば、
図3Aに示すように、連通ポート24は、外周面が径方向内側に凹んだネック部26を有し、エラストマ70により構成されるベース部64は、ネック部26に係合するように貫通孔72の内周面に設けられた係合突起74を有してもよい。
また、
図3A及び
図3Bに示すように、エラストマ70により構成されるベース部64の周囲に拘束バンド76を巻き付けてもよい。
【0044】
他の幾つかの実施形態では、
図4A及び
図4Bに示すように、逆止弁60Bは、ベース部64と弁体部62とを連結するヒンジ80を含む。
弁体部62は、ヒンジ80を回動中心として回動可能であり、連通ポート24のシート面25から弁体部62が離れた開位置と、シート面25に弁体部62が密着した閉位置との間で移動するようになっている。
なお、逆止弁60Bの閉弁時、連通ポート24のシート面25にシート(接触)した弁体部62と、連通ポート24の開口端の周辺のベース部64の表面(取付部64Bの端面)との間に隙間が形成されてもよい。
【0045】
ベース部64は、ヒンジ80を支持する支持部64Aと、支持部64Aと一体的に設けられる連通ポート24への取付部64Bとを含む。
支持部64Aは、連通ポート24のシート面25に弁体部62が密着可能な高さに弁体部62を保持可能な高さにてヒンジ80を支持するように構成される。
取付部64Bは、連通ポート24に逆止弁60Bを取り付けるために、連通ポート24が螺合可能な貫通孔82を有する。貫通孔82には、連通ポート24の外周面に設けられた雄ねじに螺合する雌ねじが切られている。他の実施形態では、取付部64Bは、連通ポート24が圧入可能な貫通孔(雌ねじが切られていない貫通孔)を有する。
【0046】
さらに別の実施形態では、ベース部64は連通ポート24と一体的に設けられ、連通ポート24は、ベース部64と同一材料で継ぎ目なく形成される。
この場合、連通ポート24は、気体入口22を形成する機能に加えて、逆止弁60Bのベース部64としての機能も果たす。
逆止弁60Bの弁体部62は、連通ポート24と一体的に設けられたベース部64にヒンジ80を介して回動自在に取り付けられる。
【0047】
他の幾つかの実施形態では、
図5A及び
図5Bに示すように、逆止弁60Cの少なくとも一部は、消音室20を密封するためのシール材90と一体的に設けられる。
具体的には、逆止弁60Cは、弁体部62と、弁体部62とシール材90とを接続する接続部92とを含む。接続部92は、シール材90から連通ポート24に向かって延設される。接続部92は、シール材90と同一材料(典型的にはエラストマ)により構成される。弁体部62は、接続部92の弾性変形によって、基端部62Bとシール材90との接続部92周りに回動可能である。これにより、弁体部62は、連通ポート24のシート面25から弁体部62が離れた開位置と、シート面25に弁体部62が密着した閉位置との間で移動するようになっている。
【0048】
幾つかの実施形態では、
図5A及び
図5Bに示すように、弁体部62は、シール材90及び接続部92と同一材料(典型的にはエラストマ)にてシール材90及び接続部92と一体的に設けられる。接続部92は、
図5A及び
図5Bに示すように、弁体部62よりも小さい厚さ及び幅を有する。これにより、接続部92の弾性変形を利用した弁体部62の開閉動作がスムーズに行われるようになっている。
他の実施形態では、弁体部62は、接続部92とは別素材で形成され、接続部92に接着やインサート成形等の任意の方法で固定される。
【0049】
図5A及び
図5Bに示すように、消音室20を画定するケーシング100は、2個のパーツ100A,100Bを含む。2個のパーツ100A,100Bは、シール材90を挟んだ状態で互いに締結されることで、ケーシング100を構成する。
ケーシング100の何れか一方のパーツ(
図5A及び
図5Bに示す例ではパーツ100B)には、シール材90が収容されるシール溝102が設けられる。シール溝102は2個のパーツ100A,100Bの合わせ面に沿って連続的に設けられる。シール材90は、パーツ100A,100Bの締結の結果、シール溝102内で潰れるように弾性変形する。
なお、ケーシング100の2個のパーツ100A,100Bは、それぞれ、
図6を参照して後述するバキュームポンプ1のトップカバー100A,ポンプカバー100Bであってもよい。
【0050】
幾つかの実施形態では、
図5Bに示すように、シール溝102は、シール溝102の全長のうち一部の範囲において、接続部92を受け入れるための切り欠き104を有する。
これにより、逆止弁60Cの閉弁時において、シール溝102と接続部92との干渉を回避し、弁体部62を連通ポート24のシート面25に確実に密着させることができる。
【0051】
図5A及び
図5Bに示す例では、シール材90は断面が円形であるOリングである。他の実施形態では、シール材90は、断面が非円形であるXリング、Dリング、Tリングである。
【0052】
続けて、上述した実施形態に係るバキュームポンプ1の全体構造の具体例について述べる。
図6は、一実施形態に係るバキュームポンプ1の全体構造を示す分解斜視図である。バキュームポンプ1は、例えば、自動車等の車両におけるブレーキブースター(マスターバック)の負圧室内を負圧にするための電動バキュームポンプであってもよい。
以下において「上」及び「下」とは、バキュームポンプ1が車両に設置された状態における「上」及び「下」を意味する。
【0053】
バキュームポンプ1は、ケーシング100と、ケーシング100内に設けられる気体移送部40の可動部42とを含む。
幾つかの実施形態では、
図6に示すように、可動部42は、ケーシング100内に回転可能に設けられるロータ120である。ロータ120は、ケーシング100の下方に設けられたモータ180によって駆動され、中心O周りに回転する。
【0054】
図6に示す例示的な実施形態では、ケーシング100は、可動部42としてのロータ120が収容されるポンプ室10を有する。ポンプ室10は、ケーシング100の内壁面の一部であるカム面11によって画定される。カム面11は、非円形(例えば楕円形)の輪郭によって規定される。
他方、ロータ120は、点Oを中心とする円形の輪郭によって規定される外周面121を有する。外周面121には、複数のスリット122が形成される。各々のスリット122には、ポンプ室10を複数の隔室に分割するベーン130が設けられる。
【0055】
図6に示す例では、ケーシング100は、ロータ120が収容されるポンプ室10の底面および側面を形成する凹部を有するポンプケーシング本体100Cと、ポンプ室10の上面を形成するポンプカバー100Bとを含む。ポンプカバー100Bの上方には、ポンプカバー100Bを覆うトップカバー100Aが設けられる。ポンプケーシング本体100Cとモータ180との間には、ポンプケーシング本体100Cの下側を覆うボトムカバー100Dが設けられる。
【0056】
トップカバー100Aとポンプカバー100Bとの間に設けられるシール材90は、内側シール部94と、内側シール部94を取り囲む外側シール部96と、内側シール部94及び外側シール部96を互いに接続する接続部95と、を含む。
ポンプカバー100Bにトップカバー100Aが締結されると、シール材90はシール溝102内において潰れるように弾性変形し、ポンプカバー100Bとトップカバー100Aとの隙間を塞ぐ。これにより、内側シール部94と外側シール部96との間には、上述の消音室20が形成される。消音室20には、2個の逆止弁60が設けられる。
図6に示す例示的な実施形態では、各々の逆止弁60は、
図3A及び
図3Bに示した逆止弁60Aである。他の実施形態では、逆止弁60Aに替えて、
図4A及び
図4Bに示した逆止弁60Bが連通ポート24に装着される。さらに別の実施形態では、
図5A及び
図5Bに示した逆止弁60Cが、シール材90(内側シール部94又は外側シール部96の何れか一方)と一体的に設けられる。
【0057】
ポンプケーシング本体100Cは、ポンプ室10に向かう気体流れの入口である吸気ポート190を有する。
吸気ポート190は、ポンプケーシング本体100Cに設けられた連通路191Aと、ポンプカバー100Bに設けられた連通路191Bとを介して、ポンプカバー100Bとトップカバー100Aとの間に形成される吸気通路193に導かれる。連通路191Bは、ポンプカバー100Bを貫通しており、ポンプケーシング本体100Cに設けられた連通路191Aを通過後の気体は、連通路191Bを通ってポンプカバー100Bの上方に形成される吸気通路193へと流入する。
【0058】
吸気通路193は、ポンプカバー100Bに設けられた隔壁部194及び内側シール部94によって隔壁部194の周囲の消音室20から流体的に隔離される。
吸気通路193は、ポンプカバー100Bに設けられたポンプ室10の吸入口12(12A,12B)を介してポンプ室10の内部空間に連通している。一対の吸入口12(12A,12B)は、ロータ120の中心Oを挟んで反対側に位置する。このため、吸気通路193は、一対の吸入口12(12A,12B)の位置を通過するように、ロータ120の径方向に沿って、連通路191Bから中心Oを挟んで反対側に向かって延在する。
【0059】
こうして、吸気ポート190から取り込まれた気体は、連通路191A、連通路191B、吸気通路193を順に通過した後、一対の吸入口12(12A,12B)からポンプ室10に流入する。
【0060】
ポンプ室10の底面を構成するポンプケーシング本体100Cの壁面には、ポンプ室10の吐出口14が設けられる。
図6には、1個の吐出口14のみが図示されているが、中心Oを挟んで反対側の周方向位置にもう一つの吐出口14(不図示)が設けられている。
一対の吐出口14を介してポンプ室10から流出した気体は、ポンプケーシング本体100C及びボトムカバー100Dによって形成される中間消音室50(
図2参照)に流入する。中間消音室50は、ポンプカバー100Bの上方に形成される消音室20に、一対の連通路197及びこれらに対応する連通ポート24を介して連通する。各々の連通ポート24は、対応する連通路197に対応した位置に設けられ、消音室20内に突出して設けられる。但し、
図6では、連通ポート24に取り付けられた逆止弁60Aによって連通ポート24が隠れている。
【0061】
消音室20には、消音室20から下向きに垂下するように設けられた排気口30が連通している。
図6に示すように、消音室20内における逆止弁60Aの配向は、弁体部62の基端部62Bが排気口30側に位置するように決定される。すなわち、逆止弁60Aは、弁体部62の先端部62Aが基端部62Bを挟んで排気口30の反対側に位置するような配向にて連通ポート24に装着される。
【0062】
なお、
図6に示す例示的な実施形態では、バキュームポンプ1は、中心Oを挟んで両側に吸入口12及び吐出口14の一対のペアを配置することで、吸入圧と吐出圧との圧力差に起因してロータ120に作用する荷重をバランスさせるようにした平衡型ベーンポンプである。
他の実施形態では、バキュームポンプ1は、吸入圧と吐出圧との圧力差に起因して、吐出口14から吸入口12に向かう偏荷重がロータ120に作用する非平衡型ベーンポンプである。
【0063】
以上述べた幾つかの実施形態に係るバキュームポンプ1について、幾つかの構成とそれによって得られる作用効果を以下にまとめる。
【0064】
[1]バキュームポンプ1は、
ポンプ室10と、
ポンプ室10から吐出された気体が流入する気体入口22を有する消音室20と、
消音室20内に設けられ、バキュームポンプ1の停止時に消音室20の気体入口22を閉塞可能な逆止弁60と、
消音室20に連通し大気開放された排気口30と、
を備える。
【0065】
上記[1]の構成によれば、バキュームポンプ1の浸水時、排気口30から消音室20に侵入した水が、消音室20の気体入口22を介してポンプ室10側に移動することを逆止弁60によって阻止できる。また、逆止弁60が消音室20内に収容されるため、外部からの異物付着に起因した逆止弁60の機能低下を抑制できる。
さらに、バキュームポンプ1の排気音を低減する機能を担う消音室20を逆止弁60の設置スペースとして利用することで、逆止弁60のための専用の設置スペースを確保する必要がない。このため、バキュームポンプ1のコンパクト化を実現できる。
【0066】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]の構成において、
消音室20の気体入口22は、消音室20内に突出する連通ポート24により形成され、
連通ポート24は、ポンプ室10の上方に配置された消音室20内に上方へ突出し、
逆止弁60は、閉弁時に連通ポート24の開口端(シート面25)に上から被さるように構成された弁体部62を含む。
【0067】
上記[2]の構成によれば、バキュームポンプ1の停止中、弁体部62に作用する重力を利用して、弁体部62が連通ポート24の開口端(シート面25)に密着した状態を維持しやすくなる。よって、逆止弁60を用いた浸水対策の信頼性を高めることができる。
【0068】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]の構成において、
消音室20の気体入口22は、消音室20内に突出する連通ポート24により形成され、
逆止弁60(60A,60B)は、
連通ポート24に対して不動に連通ポート24に設けられるベース部64と、
ベース部64に対して、連通ポート24の開口端(シート面25)にシートする閉位置と開口端(シート面25)から離れた開位置との間で可動に支持された弁体部62と、
を含む。
【0069】
上記[3]の構成によれば、消音室20に突出する連通ポート24を利用して逆止弁60(60A,60B)を設置することができ、逆止弁60(60A,60B)の設置構造を簡素化できる。
【0070】
[4]幾つかの実施形態では、上記[3]の構成において、
弁体部62は、
開位置にて連通ポート24の開口端から最も離れる先端部62Aと、
ベース部64に接続される基端部62Bと、
を含み、
ベース部64は、弁体部62のうち基端部62Bが排気口30側に位置するように弁体部62を支持する。
【0071】
バキュームポンプ1の外部から排気口30を介して侵入する異物の影響は、排気口30に近いほど強い。このため、弁体部62の基端部62B側を排気口30に向けることで、連通ポート24のシート面25への異物の付着を抑制し、密着性を高めることができる。
また、バキュームポンプ1の運転中、連通ポート24からの気体を排気口30とは反対側に噴出することで気体のショートパスの形成を防止し、消音室20全体を利用した消音効果を享受しやすくなる。
【0072】
[5]幾つかの実施形態では、上記[3]又は[4]の構成において、
逆止弁60Aは、ベース部64および弁体部62が一体的にエラストマ70により構成される。
【0073】
上記[5]の構成によれば、逆止弁60Aの閉弁時に金属打音が発生せず、静粛性に優れたバキュームポンプ1を実現できる。また、エラストマ70製の弁体部62がシート面に合わせて僅かに変形することで密着性が向上する。
【0074】
[6]幾つかの実施形態では、上記[5]の構成において、
連通ポート24は、外周面が径方向内側に凹んだネック部26を有し、
ベース部64は、連通ポート24が篏合する貫通孔72と、ネック部26に係合するように貫通孔72の内周面に設けられた係合突起74とを有する。
【0075】
上記[6]の構成によれば、エラストマ70製のベース部64の貫通孔72に連通ポート24を篏合させるだけで、エラストマ70の弾性力およびネック部26と係合突起74との係合により、逆止弁60Aの連通ポート24への取付けが可能である。このため、逆止弁60Aの取付作業を効率的に行うことができる。
また、ネック部26と係合突起74との係合により、連通ポート24からの逆止弁60Aの意図しない脱落を効果的に防止できる。
【0076】
[7]幾つかの実施形態では、上記[5]又は[6]の構成において、
バキュームポンプ1は、ベース部64の周囲に巻かれた拘束バンド76を備える。
【0077】
上記[7]の構成によれば、拘束バンド76によってエラストマ70製のベース部64を締め付けることで、連通ポート24からの逆止弁60Aの意図しない脱落を効果的に防止できる。
【0078】
[11]幾つかの実施形態において、上記[1]又は[2]の構成において、
バキュームポンプ1は、消音室20を密封するためのシール材90を備え、
気体入口22は、消音室20内に突出する連通ポート24により形成され、
逆止弁60Cは、
連通ポート24の開口端(シート面25)にシートする閉位置と開口端(シート面25)から離れた開位置との間で可動に構成された弁体部62と、
シール材90から連通ポート24に向かって延設され、弁体部62とシール材90とを接続する接続部92と、
を含む。
【0079】
上記[11]の構成によれば、逆止弁60Cを少なくも部分的にシール材90に一体的に設けることで、部品点数の削減を図ることができる。また、シール材90を装着することで逆止弁60Cの設置が完了することから、バキュームポンプ1の組立作業を効率化できる。
【0080】
[12]幾つかの実施形態では、上記[11]の構成において、
バキュームポンプ1は、消音室20を画定するケーシング100(100A,100B)を備え、
ケーシング100(100A,100B)は、シール材90が収容されるシール溝102を有し、
シール溝102は、接続部92を受け入れるための切り欠き104を有する。
【0081】
上記[12]の構成によれば、逆止弁60Cの閉弁時において、シール溝102と接続部92との干渉を回避し、弁体部62を連通ポート24のシート面25に確実に密着させることができる。
また、シール溝102のうち接続部92に対応する位置に切り欠き104を形成することで、ケーシング100に対するシール材90の位置決めを容易に行うことができる。
【0082】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0083】
1(1A,1B) :バキュームポンプ
10 :ポンプ室
20 :消音室
22 :気体入口
24 :連通ポート
26 :ネック部
30 :排気口
60(60A~60C) :逆止弁
62 :弁体部
62A :先端部
62B :基端部
64 :ベース部
70 :エラストマ
72 :貫通孔
74 :係合突起
76 :拘束バンド
80 :ヒンジ
82 :貫通孔
90 :シール材
92 :接続部
100 :ケーシング
102 :シール溝
104 :切り欠き