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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137707
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】枠付き膜・電極構造体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1004 20160101AFI20240927BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20240927BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240927BHJP
【FI】
H01M8/1004
H01M8/0273
H01M4/86 M
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006047
(22)【出願日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】202310286602.7
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 嵩瑛
(72)【発明者】
【氏名】田中 之人
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018HH03
5H126AA02
5H126AA15
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE11
5H126EE22
5H126EE23
5H126FF04
5H126GG18
5H126JJ03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】塵芥の混入を抑制することができ、膜・電極構造体における電気化学反応の効率の低下を抑制することができる、枠付き膜・電極構造体を提供する。
【解決手段】枠付き膜・電極構造体10は、膜・電極構造体20と樹脂製の枠シート部材30とを備える。膜・電極構造体20の第1電極22及び第2電極23は、全周に亘って電解質膜21の外周端21eよりも枠シート部材30に向かう外方に延びる。第1電極22の外周部22PTは、全周に亘って枠シート部材30の一方の面30f1に接合される。第2電極23の外周部23PTは、全周に亘って枠シート部材30の他方の面30f2に接合される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜と、第1電極と、第2電極とを含む膜・電極構造体と、
前記膜・電極構造体の外周部に全周に亘って設けられた樹脂製の枠シート部材と、
を備えた枠付き膜・電極構造体であって、
前記第1電極及び前記第2電極は、全周に亘って前記電解質膜の外周端よりも前記枠シート部材に向かう外方に延びており、
前記第1電極の外周部は、全周に亘って前記枠シート部材の一方の面に接合され、
前記第2電極の外周部は、全周に亘って前記枠シート部材の他方の面に接合される、枠付き膜・電極構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の枠付き膜・電極構造体であって、
前記枠シート部材は、前記第1電極及び前記第2電極の各々が接合される第1接合部を有し、
前記枠シート部材の外側から内側に向かう方向における前記第1接合部の幅は、0.4mm以上である、枠付き膜・電極構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の枠付き膜・電極構造体であって、
前記第1電極は、全周に亘って第1傾斜部を有し、
前記第2電極は、全周に亘って第2傾斜部を有し、
前記第1傾斜部は、外側から内側に向かうほど前記第2電極に近づき、
前記第2傾斜部は、前記第1傾斜部よりも外側に位置し、外側から内側に向かうほど前記第1電極から離れる、枠付き膜・電極構造体。
【請求項4】
請求項3に記載の枠付き膜・電極構造体であって、
前記枠シート部材の外側から内側に向かう方向における前記第2傾斜部の幅は、全周に亘って、前記枠シート部材の外側から内側に向かう方向における前記第1傾斜部の幅よりも短い、枠付き膜・電極構造体。
【請求項5】
請求項1に記載の枠付き膜・電極構造体であって、
前記膜・電極構造体は、前記電解質膜と前記第1電極との間に設けられる第1触媒層と、前記電解質膜と前記第2電極との間に設けられる第2触媒層とを有し、
前記第1触媒層の外周端は、全周に亘って前記第2触媒層の外周端よりも内側に配置される、枠付き膜・電極構造体。
【請求項6】
請求項5に記載の枠付き膜・電極構造体であって、
前記第1触媒層の外周端は、前記電解質膜と前記枠シート部材との間、又は、前記枠シート部材と前記第1電極との間に配置される、枠付き膜・電極構造体。
【請求項7】
請求項1に記載の枠付き膜・電極構造体であって、
前記第1電極及び前記第2電極の各々は、全周に亘って接着又は溶着により前記枠シート部材に接合される、枠付き膜・電極構造体。
【請求項8】
請求項1に記載の枠付き膜・電極構造体であって、
前記電解質膜の外周端は、全周に亘って前記第2電極と前記枠シート部材とに挟まれる、枠付き膜・電極構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠付き膜・電極構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするために、エネルギーの効率化に貢献する燃料電池に関する研究開発が行われている。
【0003】
燃料電池は、膜・電極構造体(MEA)を備える。特許文献1には、枠付き膜・電極構造体が開示されている。枠付き膜・電極構造体は、膜・電極構造体と、樹脂シートを有する枠部材とを備えている。膜・電極構造体は、電解質膜と、第1電極と、第2電極とを含む構造体である。枠部材は、膜・電極構造体の外周部に全周に亘って設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7034212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、膜・電極構造体と樹脂シートとの界面から膜・電極構造体の内部に、鉄イオン等の塵芥が混入すると、膜・電極構造体における電気化学反応の効率が低下する傾向にある。また、膜・電極構造体の内部に塵芥が混入すると、電解質膜の分解が加速する傾向がある。そのため、枠付き膜・電極構造体の構造を改善する要請があった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、電解質膜と、第1電極と、第2電極とを含む膜・電極構造体と、前記膜・電極構造体の外周部に全周に亘って設けられた樹脂製の枠シート部材と、を備えた枠付き膜・電極構造体であって、前記第1電極及び前記第2電極は、全周に亘って前記電解質膜の外周端よりも前記枠シート部材に向かう外方に延びており、前記第1電極の外周部は、全周に亘って前記枠シート部材の一方の面に接合され、前記第2電極の外周部は、全周に亘って前記枠シート部材の他方の面に接合される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、塵芥の混入を抑制することができる。その結果、膜・電極構造体における電気化学反応の効率の低下を抑制することができる。また、電解質膜の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態による、発電セルの要部分解斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線断面図である。
図3図3は、第1接合部の幅と、イオン侵入量との関係を示すグラフである。
図4図4は、変形例による、図1のII-II線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態による、発電セルの要部分解斜視図である。発電セル12は、例えば固体高分子型燃料電池等の燃料電池である。複数の発電セル12が積層されて燃料電池スタック11が構成される。燃料電池スタック11は、例えば自動車(図示せず)等の移動体に搭載される。
【0011】
発電セル12は、枠付き膜・電極構造体10と、第1セパレータ14と、第2セパレータ16とを備える。枠付き膜・電極構造体10は、以下、枠付きMEA10と称する。枠付きMEA10は、第1セパレータ14及び第2セパレータ16により挟持される。
【0012】
第1セパレータ14は、例えば、金属板、あるいは、カーボン部材等で構成される。金属板として、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、チタン板、チタン合金板、めっき処理鋼板等が挙げられる。第1セパレータ14が金属板で構成される場合、その金属板の表面に、防食用の表面処理が施されてもよい。
【0013】
第2セパレータ16は、例えば、金属板、あるいは、カーボン部材等で構成される。金属板として、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、チタン板、チタン合金板、めっき処理鋼板等が挙げられる。第2セパレータ16が金属板で構成される場合、その金属板の表面に、防食用の表面処理が施されてもよい。
【0014】
枠付きMEA10、第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、実質的に同じ外形形状を有する。図1では、枠付きMEA10、第1セパレータ14及び第2セパレータ16が長方形の外形形状を有する場合の例が示されている。
【0015】
枠付きMEA10は、膜・電極構造体20と、枠シート部材30とを備える。膜・電極構造体20は、MEA20と称される。図2は、図1におけるII-II線断面図である。
【0016】
MEA20は、電解質膜21と、第1電極22と、第2電極23とを含む構造体である。MEA20は、電解質膜21、第1電極22及び第2電極23の他に、第1触媒層24と、第2触媒層25とを含む。
【0017】
第1電極22及び第2電極23の一方は、アノード電極である。第1電極22及び第2電極23の他方は、カソード電極である。本実施形態では、第1電極22は、アノード電極である。そのため、以下では、第1電極22は、アノード電極22と称される。また、本実施形態では、第2電極23は、カソード電極である。そのため、以下では、第2電極23は、カソード電極23と称される。
【0018】
電解質膜21は、例えば、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。固体高分子電解質膜は、例えば、水分を含んだパーフルオロスルホン酸の薄膜である。電解質膜21は、アノード電極22及びカソード電極23に挟持される。電解質膜21は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。
【0019】
電解質膜21は、アノード電極22及びカソード電極23よりも小さい平面寸法(外形寸法)を有する。電解質膜21の外周端21eは、全周に亘って、アノード電極22の外周端22e及びカソード電極23の外周端23eよりも内側に位置する。電解質膜21の外周端21eは、全周に亘ってカソード電極23と枠シート部材30とに挟まれる。
【0020】
アノード電極22は、第1ガス拡散層22aと、第1補助拡散層22bとを有する。カソード電極23は、第2ガス拡散層23aと、第2補助拡散層23bとを有する。
【0021】
第1ガス拡散層22a及び第2ガス拡散層23aの各々は、例えば、カーボンペーパ、あるいは、カーボンクロス等により形成される。第1補助拡散層22b及び第2補助拡散層23bの各々は、例えば、カーボン粒子と撥水樹脂とのコンポジット材料等から形成される。第1補助拡散層22b及び第2補助拡散層23bは、設けられなくてもよい。
【0022】
アノード電極22及びカソード電極23は、電解質膜21よりも大きい平面寸法(外形寸法)を有する。アノード電極22及びカソード電極23の各々は、全周に亘って電解質膜21の外周端21eよりも外方に延びている。
【0023】
アノード電極22の外周部22PTは、枠シート部材30の一方の面30f1に接合される。アノード電極22と電解質膜21とに枠シート部材30の端部が挟まれる。そのため、アノード電極22は、全周に亘って第1傾斜部22tを有する。この第1傾斜部22tによってアノード電極22に段差が設けられる。第1傾斜部22tは、電解質膜21の外周端21eよりも内側に位置する。第1傾斜部22tは、外側から内側に向かうほどカソード電極23に近づくように傾斜する。第1傾斜部22tは、枠シート部材30の内周端30eから離れるほどカソード電極23に近づく。
【0024】
カソード電極23の外周部23PTは、枠シート部材30の他方の面30f2に接合される。カソード電極23と枠シート部材30の端部との間に電解質膜21の端部が挟まれる。そのため、カソード電極23は、全周に亘って第2傾斜部23tを有する。この第2傾斜部23tによってカソード電極23に段差が設けられる。第2傾斜部23tは、枠シート部材30の内周端30eよりも外側に位置する。第2傾斜部23tは、第1傾斜部22tよりも外側に位置する。第2傾斜部23tは、外側から内側に向かうほどアノード電極22から離れるように傾斜する。第2傾斜部23tは、電解質膜21の外周端21eに近づくほどアノード電極22から離れる。
【0025】
枠シート部材30の外側から内側に向かう方向における第2傾斜部23tの幅L2は、全周に亘って、枠シート部材30の外側から内側に向かう方向における第1傾斜部22tの幅L1よりも短くてもよい。この場合は、第2傾斜部23tの傾斜は、第1傾斜部22tの傾斜に比べると急峻となる。電解質膜21、第1触媒層24及び第2触媒層25の全体の厚さは、枠シート部材30の厚さ以上であってもよい。
【0026】
第1触媒層24及び第2触媒層25の各々は、白金を含む。第1触媒層24及び第2触媒層25の各々は、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子等により形成される。第1触媒層24及び第2触媒層25の各々は、アノード電極22及びカソード電極23よりも小さい平面寸法(外形寸法)を有する。
【0027】
第1触媒層24は、例えば、イオン導電性高分子バインダを介して、電解質膜21の面21f1に接合される。第2触媒層25は、例えば、イオン導電性高分子バインダを介して、電解質膜21の面21f1とは逆の面21f2に接合される。
【0028】
第1触媒層24は、第2触媒層25よりも小さい平面寸法(外形寸法)を有する。第1触媒層24の外周端24eは、全周に亘って第2触媒層25の外周端25eよりも内側に配置される。第1触媒層24の外周端24eは、電解質膜21と枠シート部材30との間に配置される。第2触媒層25は電解質膜21の全面に積層される。そのため、第2触媒層25の外周端25eは、電解質膜21の外周端21eまで延びる。第1触媒層24の外周端24eは、第2触媒層25の外周端25eよりも内側に位置する。
【0029】
枠シート部材30は、MEA20の外周部に全周に亘って設けられる。枠シート部材30は、樹脂製のシート部材である。枠シート部材30は、1枚のシートとして平坦状に形成される。
【0030】
枠シート部材30の材料として、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、m-PPE(変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、変性ポリオレフィン等が挙げられる。
【0031】
枠シート部材30の厚みは、アノード電極22の厚みよりも薄くてもよく、カソード電極23の厚みよりも薄くてもよい。枠シート部材30の内周部は、アノード電極22とカソード電極23との間に配置される。枠シート部材30の内周部は、第1接合部30aと、第2接合部30bとを有する。
【0032】
第1接合部30aは、アノード電極22及びカソード電極23の各々と接合された部分である。第1接合部30aは、第2接合部30bよりも外側に配置される。第1接合部30aは、電解質膜21と重ならない。第1接合部30aの一方の面30f1は、全周に亘ってアノード電極22の外周部22PTと接合される。第1接合部30aとアノード電極22の外周部22PTとは接着又は溶着により接合される。第1接合部30aの他方の面30f2は、全周に亘ってカソード電極23の外周部23PTと接合される。第1接合部30aとカソード電極23の外周部23PTとは接着又は溶着により接合される。
【0033】
第2接合部30bは、アノード電極22及び電解質膜21の各々と接合された部分であり、第1接合部30aと離間している。第2接合部30bは、第1接合部30aよりも内側に配置される。第2接合部30bは、電解質膜21と重なる。第2接合部30bの一方の面30f1は、全周に亘ってアノード電極22の外周部22PTと接合される。第2接合部30bとアノード電極22の外周部22PTとは接着又は溶着により接合される。
【0034】
第2接合部30bの他方の面30f2の外側は、全周に亘って電解質膜21と接合される。また、第2接合部30bの他方の面30f2の内側は、全周に亘って第1触媒層24と接合される。第2接合部30bは、接着又は溶着により電解質膜21及び第1触媒層24と接合される。
【0035】
図3は、第1接合部30aの幅L3(図2)と、イオン侵入量との関係を示すグラフである。第1接合部30aの幅L3は、枠シート部材30の外側から内側に向かう方向(面方向)の長さである。イオン侵入量とは、外部から枠付きMEA10の内部(電解質膜21の外周端21e)に至るイオンの量である。イオンは、第1接合部30aとアノード電極22との界面、及び、第1接合部30aとカソード電極23との界面の少なくとも1つを介して、枠付きMEA10の内部に至る。
【0036】
第1接合部30aの幅L3が0.4mm以上である場合、イオン侵入量が概ねなくなることが実験により得られた。なお、接着により第1接合部30aをアノード電極22及びカソード電極23と接合した場合、及び、溶着により第1接合部30aをアノード電極22及びカソード電極23と接合した場合のいずれも、同等の結果が得られている。
【0037】
このように枠付きMEA10では、アノード電極22とカソード電極23とで枠シート部材30を挟んで封入部が形成される。枠シート部材30の端部と電解質膜21との端部とは、前記封入部よりも枠付きMEA10の内側にずれて配置される。そのため、前記封入部に含まれる枠シート部材30を1枚で構成することができ、枠付きMEA10を薄厚化することができる。
【0038】
次に、発電セル12の流路構造に関して説明する。図1に示すように、発電セル12の矢印B方向(水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔40a、冷却媒体入口連通孔42a及び燃料ガス出口連通孔44bが設けられる。酸化剤ガス入口連通孔40aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する。冷却媒体入口連通孔42aは、冷却媒体を供給する。燃料ガス出口連通孔44bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。酸化剤ガス入口連通孔40a、冷却媒体入口連通孔42a及び燃料ガス出口連通孔44bは、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
【0039】
発電セル12の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給する燃料ガス入口連通孔44a、冷却媒体を排出する冷却媒体出口連通孔42b、及び酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス出口連通孔40bが設けられる。燃料ガス入口連通孔44a、冷却媒体出口連通孔42b及び酸化剤ガス出口連通孔40bは、矢印C方向に配列して設けられる。
【0040】
第1セパレータ14の枠付きMEA10に向かう面14aには、燃料ガス入口連通孔44aと燃料ガス出口連通孔44bとに連通する燃料ガス流路46が設けられる。具体的に、燃料ガス流路46は、第1セパレータ14と枠付きMEA10との間に形成される。燃料ガス流路46は、矢印B方向に延在する複数本の直線状流路溝(又は波状流路溝)を有する。
【0041】
第2セパレータ16の枠付きMEA10に向かう面16aには、酸化剤ガス入口連通孔40aと酸化剤ガス出口連通孔40bとに連通する酸化剤ガス流路48が設けられる。具体的に、酸化剤ガス流路48は、第2セパレータ16と枠付きMEA10との間に形成される。酸化剤ガス流路48は、矢印B方向に延在する複数本の直線状流路溝(又は波状流路溝)を有する。
【0042】
互いに隣接する第1セパレータ14の面14bと第2セパレータ16の面16bとの間には、冷却媒体入口連通孔42aと冷却媒体出口連通孔42bとに連通する冷却媒体流路50が、矢印B方向に延在して形成される。
【0043】
第1セパレータ14の面14a(枠付きMEA10に向く面)には、燃料ガス流路46を形成する凸部52が複数設けられる。凸部52は、アノード電極22側に向かって膨出するとともにアノード電極22に当接する。第2セパレータ16の面16a(枠付きMEA10に向く面)には、酸化剤ガス流路48を形成する凸部54が複数設けられる。凸部54は、カソード電極23側に向かって膨出するとともにカソード電極23に当接する。凸部52、54間に、MEA20が挟持される。
【0044】
第1セパレータ14の面14aには、燃料ガスの外部への漏れを防止するため、第1セパレータ14の外周部を周回する1本又は複数本のビードシール56が設けられる。ビードシール56は、プレス成形により、枠シート部材30に向かって膨出成形される。内側のビードシール56は、燃料ガス流路46、燃料ガス入口連通孔44a及び燃料ガス出口連通孔44bを周回し且つこれらを連通させる。
【0045】
ビードシール56の凸部先端面には、第1シール部材が印刷又は塗布等により固着される。ビードシール56は、第1シール部材を介して、枠シート部材30に気密及び液密に当接する。第1シール部材は、枠シート部材30に固着されてもよい。
【0046】
第1セパレータ14には、ビードシール56に代えて、枠シート部材30に向かって突出する弾性体からなる凸状シール部が設けられてもよい。
【0047】
第2セパレータ16の面16aには、酸化剤ガスの外部への漏れを防止するため、第2セパレータ16の外周部を周回する1本又は複数本のビードシール58が設けられる。ビードシール58は、プレス成形により、枠シート部材30に向かって膨出成形される。内側のビードシール58は、酸化剤ガス流路48、酸化剤ガス入口連通孔40a及び酸化剤ガス出口連通孔40bを周回し且つこれらを連通させる。
【0048】
ビードシール58の凸部先端面には、第2シール部材が印刷又は塗布等により固着される。ビードシール58は、第2シール部材を介して、枠シート部材30に気密及び液密に当接する。第2シール部材は、枠シート部材30に固着されてもよい。
【0049】
第2セパレータ16には、ビードシール58に代えて、枠シート部材30に向かって突出する弾性体からなる凸状シール部が設けられてもよい。
【0050】
第1シール部材又は第2シール部材は、例えば、ポリエステル繊維、シリコーン、EPDM、FKM等が使用される。第1シール部材又は第2シール部材は、不可欠ではなく、なくてもよい。第1シール部材がない場合、ビードシール56は、枠シート部材30に直接当接する。第2シール部材がない場合、ビードシール58は、枠シート部材30に直接当接する。
【0051】
ビードシール56とビードシール58とは、枠シート部材30を挟み込む。枠シート部材30の外周部は、第1セパレータ14のビードシール56と、第2セパレータ16のビードシール58との間に挟持される。なお、第1セパレータ14及び第2セパレータ16に上記凸状シール部が設けられる場合、枠シート部材30の外周部は、第1セパレータ14の凸状シール部と、第2セパレータ16の凸状シール部との間に挟持される。
【0052】
このように構成される発電セル12を含む燃料電池スタック11の動作について、図1を用いて以下に説明する。
【0053】
酸化剤ガス入口連通孔40aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給される。また、燃料ガス入口連通孔44aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔42aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
【0054】
酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔40aから第2セパレータ16の酸化剤ガス流路48に供給され、矢印B方向に移動してMEA20のカソード電極23に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔44aから第1セパレータ14の燃料ガス流路46に供給される。燃料ガスは、燃料ガス流路46に沿って矢印B方向に移動し、MEA20のアノード電極22に供給される。
【0055】
MEA20では、カソード電極23に供給される酸化剤ガスと、アノード電極22に供給される燃料ガスとが、第2触媒層25及び第1触媒層24内で電気化学反応により消費されて、発電が行われる。
【0056】
次いで、カソード電極23に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔40bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極22に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔44bに沿って矢印A方向に排出される。
【0057】
また、冷却媒体入口連通孔42aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ14と第2セパレータ16との間の冷却媒体流路50に供給された後、矢印B方向に流通する。この冷却媒体は、MEA20を冷却した後、冷却媒体出口連通孔42bから排出される。
【0058】
上記実施形態は、以下のように変形されてもよい。
【0059】
(変形例1)
図4は、変形例による、図1のII-II線断面図である。本変形例では、第1触媒層24は、アノード電極22(第1電極22)に接合される。例えば、第1触媒層24は、イオン導電性高分子バインダを介して、アノード電極22に接合される。本変形例の場合、第1触媒層24の外周端24eは、枠シート部材30と、第1電極22との間に配置される。
【0060】
このように、第1触媒層24は、アノード電極22(第1電極22)に接合されてもよい。なお、第2触媒層25は、電解質膜21に接合されてもよいし、カソード電極23(第2電極23)に接合されてもよい。
【0061】
(変形例2)
図示しないが、第1触媒層24の外周端24eは、電解質膜21と枠シート部材30との間、又は、枠シート部材30と第1電極22との間に配置されずに、枠シート部材30の内周端30eと接触されてもよい。この場合、第1触媒層24は、電解質膜21に接合されてもよいし、第1電極22に接合されてもよい。
【0062】
以上の記載から把握し得る本発明を以下に開示する。
【0063】
(付記1)
本発明は、電解質膜(21)と、第1電極(22)と、第2電極(23)とを含む膜・電極構造体(20)と、前記膜・電極構造体の外周部に全周に亘って設けられた樹脂製の枠シート部材(30)と、を備えた枠付き膜・電極構造体(10)である。前記第1電極及び前記第2電極は、全周に亘って前記電解質膜の外周端(21e)よりも前記枠シート部材に向かう外方に延びており、前記第1電極の外周部(22PT)は、全周に亘って前記枠シート部材の一方の面(30f1)に接合され、前記第2電極の外周部(23PT)は、全周に亘って前記枠シート部材の他方の面(30f2)に接合される。
【0064】
これにより、塵芥の混入を抑制することができる。その結果、膜・電極構造体における電気化学反応の効率の低下を抑制することができる。また、電解質膜の劣化を抑制することができる。
【0065】
(付記2)
付記1に記載の枠付き膜・電極構造体であって、前記枠シート部材は、前記第1電極及び前記第2電極の各々が接合される第1接合部(30a)を有し、前記枠シート部材の外側から内側に向かう方向における前記第1接合部の幅(L3)は、0.4mm以上であってもよい。これにより、塵芥の混入を概ねなくすことができる。
【0066】
(付記3)
付記1に記載の枠付き膜・電極構造体であって、前記第1電極は、全周に亘って第1傾斜部(22t)を有し、前記第2電極は、全周に亘って第2傾斜部(23t)を有し、前記第1傾斜部は、外側から内側に向かうほど前記第2電極に近づき、前記第2傾斜部は、前記第1傾斜部よりも外側に位置し、外側から内側に向かうほど前記第1電極から離れてもよい。これにより、膜・電極構造体の厚みを極力薄くすることができる。
【0067】
(付記4)
付記3に記載の枠付き膜・電極構造体であって、前記枠シート部材の外側から内側に向かう方向における前記第2傾斜部の幅(L2)は、全周に亘って、前記枠シート部材の外側から内側に向かう方向における前記第1傾斜部の幅(L1)よりも短くてもよい。これにより、膜・電極構造体の厚みを極力薄くすることができる。
【0068】
(付記5)
付記1に記載の枠付き膜・電極構造体であって、前記膜・電極構造体は、前記電解質膜と前記第1電極との間に設けられる第1触媒層(24)と、前記電解質膜と前記第2電極との間に設けられる第2触媒層(25)とを有し、前記第1触媒層の外周端(24e)は、全周に亘って前記第2触媒層の外周端(25e)よりも内側に配置されてもよい。これにより、触媒の使用量を極力削減することができる。
【0069】
(付記6)
付記5に記載の枠付き膜・電極構造体であって、前記第1触媒層の外周端は、前記電解質膜と前記枠シート部材との間、又は、前記枠シート部材と前記第1電極との間に配置されてもよい。これにより、膜・電極構造体の内部において電解質膜が露出することを抑制することができる。その結果、電気化学反応の効率の低下を抑制することができる。
【0070】
(付記7)
付記1に記載の枠付き膜・電極構造体であって、前記第1電極及び前記第2電極の各々は、全周に亘って接着又は溶着により前記枠シート部材に接合されてもよい。これにより、膜・電極構造体の内部への塵芥の混入を抑制することができる。
【0071】
(付記8)
付記1に記載の枠付き膜・電極構造体であって、前記電解質膜の外周端は、全周に亘って前記第2電極と前記枠シート部材とに挟まれてもよい。これにより、膜・電極構造体の内部において電解質膜が露出することを抑制することができる。その結果、電気化学反応の効率の低下を抑制することができる。
【0072】
本発明は上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0073】
10…枠付き膜・電極構造体 20…膜・電極構造体
21…電解質膜 22…第1電極(アノード電極)
23…第2電極(カソード電極) 24…第1触媒層
25…第2触媒層 30…枠シート部材
30a…第1接合部 30b…第2接合部
図1
図2
図3
図4