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特開2024-137719ナトリウム電池用正極材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137719
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ナトリウム電池用正極材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20240927BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20240927BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20240927BHJP
   C01B 33/32 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/1397
H01M4/36 A
H01M10/054
C01B33/32
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024012945
(22)【出願日】2024-01-31
(31)【優先権主張番号】202310280551.7
(32)【優先日】2023-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522485888
【氏名又は名称】湖北万潤新能源科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUBEI WANRUN NEW ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 勤
【テーマコード(参考)】
4G073
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G073BA04
4G073BA20
4G073BA32
4G073BA36
4G073BA63
4G073BA69
4G073BA75
4G073BB05
4G073BB24
4G073BB58
4G073CB04
4G073FB50
4G073FD24
4G073FF04
4G073GA11
4G073GA12
4G073GA16
4G073GA28
4G073UA20
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AL13
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ28
5H029DJ16
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ08
5H029HJ14
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA15
5H050CA01
5H050CB12
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA06
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】加工を容易にすると同時に、電池の容量を向上させることができるナトリウム電池用正極材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】正極材料は、炭素層で被覆したケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムであり、ケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムの分子式は、NaqFexMny(TiO2)z(SiO4)mであり、ここで、1.5≦q≦2.5、0.7≦x≦0.8、0.2≦y≦0.3、0.07≦z≦0.5、0.5≦m≦1.5である。正極材料の製造方法は、鉄源と、マンガン源と、ナトリウム源と、溶媒と、を混合し仮焼して、前駆体を得るステップ(1)と、前駆体をケイ酸エステルとチタネートと有機溶媒と混合して、混合物を得、混合物を有機物の存在下で仮焼して、ナトリウム電池用正極材料を得るステップ(2)と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素層で被覆したケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムを含み、ケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムの分子式は、NaqFexMny(TiO2)z(SiO4)mであり、ここで、1.5≦q≦2.5、0.7≦x≦0.8、0.2≦y≦0.3、0.07≦z≦0.5、0.5≦m≦1.5である、ことを特徴とするナトリウム電池用正極材料。
【請求項2】
比表面積は、15-25m2/gであり、粉末の抵抗率は、8-12Ω・cmであり、D50粒径は、7-10μmである、ことを特徴とする請求項1に記載のナトリウム電池用正極材料。
【請求項3】
タップ密度は、1-2g/mLであり、圧縮密度は、1-3g/mLであり、前記炭素層の厚さは、2-3nmである、ことを特徴とする請求項1に記載のナトリウム電池用正極材料。
【請求項4】
鉄源と、マンガン源と、ナトリウム源と、溶媒と、を混合し仮焼して、前駆体を得るステップ(1)と、
前駆体をケイ酸エステルとチタネートと有機溶媒と混合して、混合物を得、混合物を有機物の存在下で仮焼して、ナトリウム電池用正極材料を得るステップ(2)と、を含むことを特徴とするナトリウム電池用正極材料の製造方法。
【請求項5】
前記鉄源と、マンガン源と、ナトリウム源とのモル比は、1:(0.1-1):(5-10)である、ことを特徴とする請求項4に記載のナトリウム電池用正極材料の製造方法。
【請求項6】
前記前駆体中のナトリウムと、ケイ酸エステル中のケイ素と、チタネート中のチタンとのモル比は、2:(0.7-0.9):(0.1-0.3)であり、
前記有機物と混合物との質量比は、1:(0.02-0.05)である、ことを特徴とする請求項4に記載のナトリウム電池用正極材料の製造方法。
【請求項7】
前記ナトリウム源は、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム又は乳酸ナトリウムのうちの1種又は複数種であり、
前記鉄源は、硝酸鉄、クエン酸鉄、ステアリン酸鉄、オレイン酸鉄、酒石酸鉄、アルギン酸鉄、カルボキシメチルセルロース鉄又は乳酸鉄のうちの1種又は複数種であり、
前記マンガン源は、硝酸マンガン、クエン酸マンガン、ステアリン酸マンガン、オレイン酸マンガン、酒石酸マンガン、アルギン酸マンガン、カルボキシメチルセルロースマンガン又は乳酸マンガンのうちの1種又は複数種であり、
前記ケイ酸エステルは、オルトケイ酸イソプロピル、オルトケイ酸エチル又はトリメチルシロキシケイ酸エステルのうちの1種又は複数種であり、
前記チタネートは、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート又はチタン酸テトラエチルのうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項4に記載のナトリウム電池用正極材料の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(1)において、仮焼の温度は、650-750℃であり、時間は、4-6hであり、前記ステップ(2)において、仮焼の温度は、620℃であり、時間は、10-15hである、ことを特徴とする請求項4に記載のナトリウム電池用正極材料の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(2)において、仮焼された材料を接着剤と希釈剤と混合し、噴霧造粒してナトリウム電池用正極材料を得ることをさらに含む、ことを特徴とする請求項4に記載のナトリウム電池用正極材料の製造方法。
【請求項10】
請求項1-3のいずれか一項に記載のナトリウム電池用正極材料を含む、ことを特徴とする電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2023年3月21日に提出された出願番号が202310280551.7である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その内容全体は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ナトリウム電池用正極材料の技術分野に関し、より具体的には、ナトリウム電池用正極材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、ナトリウムイオン電池は、豊富なナトリウム資源の埋蔵量及びリチウムイオン電池と類似した作動原理に基づいて、持続的に注目されており、エネルギー貯蔵技術の低コスト適用及び持続可能な発展を促進することが期待される新しいエネルギー貯蔵技術の1つである。ポリ陰イオン性化合物は、広く研究されている高性能で高安全な正極材料であり、その構造中の強い共有結合は、構造フレームの安定化に有利であるため、充放電プロセスでの電極の安全性を効果的に向上させることができる。
【0004】
しかし、現在報告されているポリ陰イオン型正極は、単一のポリアニオン基の条件下で多電子反応を実現することが困難であり、そのエネルギーの発揮が著しく制限されている。ケイ酸鉄ナトリウム(Na2FeSiO4) を例にとると、それは、理論的には、2電子反応を実現でき、276mAh/gと高い理論容量を有するものの、Na2FeSiO4の固有電子伝導率が低いため、電極内の電荷交換プロセスが遅く、電解液の安全電圧ウィンドウの範囲内では、Na2FeSiO4正極は、多電子反応を実現できないため、その実際の容量は、理論容量よりはるかに低くなる。
【0005】
浙江大学の姜銀珠教授らは、ケイ酸鉄ナトリウムの構造フレームを設計し、フッ素イオンを修飾剤として選択して酸素サイト置換を行う。動力学的には、フッ素イオンは、Na2FeSiO4構造中の局所的な電荷のバランスを破り、電子移動経路を増加させるため、電荷移動を促進することができ、熱力学的には、フッ素の導入により、Fe4+を含む中間相を安定化させるため、Fe3+/Fe4+酸化還元反応を促進できることが初めて証明される。製造して得られたフッ素置換ケイ酸鉄ナトリウム正極(NFSF)の比容量は、271mAh/gと高いため、完全かつ可逆的な2電子反応を実現することができる。しかし、上記論文の製造プロセスが比較的複雑であるため、産業化を実現することができない。
【発明の概要】
【0006】
この点に鑑み、本発明は、ナトリウム電池用正極材料及びその製造方法を提供することを目的としており、それは、チタンとマンガンのドープ及び炭素の被覆により、加工を容易にすると同時に、後続電池の容量を向上させることができる。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を使用する。
【0008】
炭素層で被覆したケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムであるナトリウム電池用正極材料であって、ケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムの分子式は、NaqFexMny(TiO2)z(SiO4)mであり、ここで、1.5≦q≦2.5、0.7≦x≦0.8、0.2≦y≦0.3、0.07≦z≦0.5、0.5≦m≦1.5である。
【0009】
本発明のナトリウム電池用正極材料の比表面積は、15-25m2/gであり、好ましくは19.75m2/gであり、粉末の抵抗率は、8-12Ω・cmであり、好ましくは9.5Ω・cmであり、ナトリウム電池用正極材料のD50粒径は、7-10μmであり、好ましくは7.8μmであり、ナトリウム電池用正極材料のD90粒径は、20-30μmであり、好ましくは25.3μmである。
【0010】
本発明のナトリウム電池用正極材料のタップ密度は、1-2g/mLであり、好ましくは0.95g/mLであり、
【0011】
圧縮密度は、1-3g/mLであり、好ましくは2.15g/mLであり、
前記炭素層の厚さは、2-3nmであり、好ましくは2.5nmである。
【0012】
本発明のケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムの分子式は、NaqFexMnyTiz(SiO4)mであり、ここで、1.5≦q≦2.5、0.7≦x≦0.8、0.2≦y≦0.3、0.07≦z≦0.5、0.5≦m≦1.5であり、好ましくは、1.8≦q≦2.0、0.095≦z≦0.285、0.665≦m≦0.855である。
【0013】
本発明のナトリウム電池用正極材料の分子式は、NaqFexMny(TiO2)z(SiO4)m/Cであり、ここで、1.5≦q≦2.5、0.7≦x≦0.8、0.2≦y≦0.3、0.07≦z≦0.5、0.5≦m≦1.5であり、好ましくは、1.8≦q≦2.0、0.095≦z≦0.285、0.665≦m≦0.855である。
【0014】
本発明の一実施例では、ケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムの分子式は、Na1.97Fe0.77Mn0.25(TiO2)0.25(SiO4)0.77であり、ナトリウム電池用正極材料の分子式は、Na1.97Fe0.77Mn0.25(TiO2)0.25(SiO4)0.77/Cである。
【0015】
本発明は、ナトリウム電池用正極材料の製造方法をさらに提供し、前記方法は、
鉄源とマンガン源とナトリウム源と溶媒とを混合し、仮焼して前駆体を得るステップ(1)と、
前駆体をケイ酸エステルとチタネートと有機溶媒と混合して混合物を得、混合物を有機物の存在下で仮焼してナトリウム電池用正極材料を得るステップ(2)と、を含む。
【0016】
本発明では、前記鉄源と、マンガン源と、ナトリウム源とのモル比は、1:(0.1-1):(5-10)であり、好ましくは1:(0.1-0.5):(7-10)であり、より好ましくは1 : 0.45 : 7である。
【0017】
前記鉄源、マンガン源及びナトリウム源の総質量と溶媒との質量比は、1:(5-10)であり、好ましくは1:(4-8)であり、より好ましくは1:6である。
【0018】
本発明では、前記前駆体中のナトリウムと、ケイ酸エステル中のケイ素と、チタネート中のチタンとのモル比は、2:(0.7-0.9):(0.1-0.3)であり、好ましくは2 : 0.8 : 0.25であり、前記前駆体と有機溶媒との質量比は、1:(1-10)であり、好ましくは1:(3-5)であり、より好ましくは1:4である。
【0019】
前記ステップ(2)において、前記有機物と混合物との質量比は、1:(0.02-0.05)であり、前記有機物は、好ましくはガスの形態で仮焼プロセスに参加し、前記有機物は、好ましくはn-プロピルアルコールガスである。気相堆積法により、ケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムの表面に炭素をより均一に被覆することができる。
【0020】
本発明のステップ(1)において、前駆体と、ケイ酸エステルと、チタネートと、有機溶媒と、を混合した後、混合物を得、混合物を粉砕することが好ましく、前記破砕方式は、粉砕であり、粒径が130nmになるまで粉砕し、粉砕の温度は、≦45℃である。
【0021】
前記仮焼を行う前に、鉄源と、マンガン源と、ナトリウム源と、溶媒と、を混合して得られた混合物を乾燥させることが好ましく、前記乾燥は、噴霧乾燥であることが好ましい。
【0022】
前記ナトリウム源は、硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム又は乳酸ナトリウムのうちの1種又は複数種であり、好ましくは硝酸ナトリウムである。
【0023】
前記鉄源は、硝酸鉄、クエン酸鉄、ステアリン酸鉄、オレイン酸鉄、酒石酸鉄、アルギン酸鉄、カルボキシメチルセルロース鉄又は乳酸鉄のうちの1種又は複数種であり、好ましくは硝酸鉄である。
【0024】
前記マンガン源は、硝酸マンガン、クエン酸マンガン、ステアリン酸マンガン、オレイン酸マンガン、酒石酸マンガン、アルギン酸マンガン、カルボキシメチルセルロースマンガン又は乳酸マンガンのうちの1種又は複数種であり、好ましくは硝酸マンガンである。
【0025】
前記ケイ酸エステルは、オルトケイ酸イソプロピル、オルトケイ酸エチル又はトリメチルシロキシケイ酸エステルのうちの1種又は複数種であり、好ましくはオルトケイ酸イソプロピルである。
【0026】
前記フタル酸エステルは、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート又はチタン酸テトラエチルのうちの1種又は複数種であり、好ましくはテトライソプロピルチタネートである。
【0027】
硝酸塩は、分解しやすい特性を有し、反応温度を大幅に下げ、反応時間を短縮することができるため、一次粒子径の小さい粒子を得、その後の反応活性を向上させることができる。
【0028】
本発明の前記ステップ(1)において、仮焼の温度は、650-750℃であり、好ましくは700℃であり、時間は、4-6hであり、好ましくは5hであり、仮焼終了後、材料温度が≦80℃になるまで冷却した後、材料を排出することが好ましく、仮焼の昇温速度は、好ましくは2.5℃/hである。
【0029】
仮焼プロセスで発生する排気ガスは、好ましくは水酸化ナトリウム溶液で吸収して硝酸ナトリウム溶液を得、これを再利用することができる。
【0030】
本発明の前記ステップ(2)において、仮焼の温度は、620℃であり、時間は、10-15hであり、
仮焼は、昇温段階、保温段階及び降温段階に分けられ、昇温プロセスで炉内の酸素含有量を5ppm未満に維持し、好ましくは窒素ガスを導入することで炉内の酸素含有量を5ppm未満に維持し、昇温段階の昇温速度は、1.0-2.5℃/hであり、
保温段階では、システムに有機ガスを導入し、保温時間は、11-14hであり、
降温段階では、降温速度は、1-1.5℃/hであり、材料温度が≦60℃になるまで降温した後、冷却を停止し、次に材料を排出する。
【0031】
本発明の一実施例では、有機ガスは、ガス状のn-プロピルアルコールであり、n-プロピルアルコールは、蒸気状態まで事前に加熱されている。
【0032】
本発明では、前記溶媒は、水、エタノール、アセトンのうちの1種又は複数種であり、好ましくは水であり、前記有機溶媒は、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、アセトンのうちの1種又は複数種であり、好ましくはエタノールである。
【0033】
本発明の前記ステップ(2)において、混合物を乾燥処理して、乾燥物を得、
前記乾燥は、不活性ガスの存在下で行われ、不活性ガスは、好ましくは窒素ガスであり、窒素ガスの温度は、330-350℃であり、乾燥処理は、好ましくは噴霧乾燥であり、噴霧乾燥は、好ましくは圧力噴霧乾燥であり、噴霧乾燥のガス圧力は、8-12 気圧であり、単位時間あたりの吸気体積は、入ったスラリーの体積の800-2000倍であり、
噴霧乾燥終了後、噴霧乾燥材料と有機ガスをサイクロン集塵塔内に入らせて固気分離し、固形物を収集し、窒素ガスと有機ガスは、集塵布袋で濾過された後、凝縮され、有機溶媒は回収され、窒素ガスはサイクル使用される。
【0034】
本発明では、導入される有機ガスの総質量は、噴霧乾燥材料の質量の0.002-0.006倍であり、好ましくは0.04倍である。
【0035】
本発明の前記ステップ(2)において、乾燥を行う前に、混合物を粉砕処理することが好ましく、ジルコニアボールを粉砕媒体とし、粉砕プロセスでは冷却水で降温させ、有機溶媒の温度を45℃以下に維持し、スラリーの粒径が130nmになるまで粉砕し、粉砕物を得る。
【0036】
本発明では、前記製造方法は、前記ステップ(2)において、仮焼後の材料を接着剤と希釈剤と混合し、噴霧造粒を行って、ナトリウム電池用正極材料を得ることをさらに含み、
粉砕された材料は、好ましくは80-150メッシュふるいにかけられ、仮焼された材料は粉砕された後、鉄が電磁気によって除去され、それを接着剤と希釈剤と混合し、磁性物質の含有量が1ppm未満になるまで除鉄すると、除鉄が停止し、
前記接着剤は、ポリウレタンであり、前記希釈剤は、酢酸エチル、トルエン、ジメチルホルムアミド、グリコールエーテル、グリコールエステルのうちの1種又は複数種である。
【0037】
本発明の製造方法によって得られたナトリウム電池用正極材料は、粒径が5-15μmであり、その構造がコアシェル構造であり、内コアがケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムであり、ケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムの表面には、2-3nmの炭素層が均一に被覆される。
【0038】
本発明は、上記ナトリウム電池用正極材料を含む電池をさらに提供する。
【0039】
本発明は、電池の負極などの他の原料及び製造方法に対して特別な要求を有せず、本分野の従来の原料及び方法を使用すればよい。
【0040】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。
【0041】
1、鉄源、マンガン源、ナトリウム源を使用して製造することで前駆体を得、マンガン、鉄、ナトリウムが均一に混合された材料を得ることができ、溶液法を使用することで鉄イオン、ナトリウムイオン、マンガンイオンの原子レベルでの混合を実現することができ、それを噴霧乾燥方式で乾燥させて高温仮焼し、混合に関わるサイズ範囲が比較的小さいため、イオン移動距離を大幅に減少させることができる。
【0042】
2、本発明は、ナトリウム電池用正極材料を設計する際に、ケイ酸塩とチタンを導入し、チタンの導入は、チタンのドープを実現できるため、イオン導電性を向上させることができ、それにより容量を向上させることができ、チタンの導入はさらに、材料の表面に残留する遊離ナトリウムを効果的に消費することができ、チタンと遊離ナトリウムイオンは、チタン酸ナトリウムを形成できるため、加工性能を向上させると同時に、後続電池の容量をさらに向上させることができる。
【0043】
3、本発明は、原料としてケイ酸エステルとチタネートを使用し、ケイ酸エステルとチタネートは、有機溶媒に完全に溶解することができ、ケイ酸エステルとチタネートを前駆体と混合した後、噴霧乾燥し、前駆体とケイ酸エステルとチタネートとの混合物は、結晶析出し、混合は、より十分になり、その後の反応をより十分にし、同時に、有機物中のアルキル基の熱分解は、炭素源を生成できるため、粒子の成長を効果的に制限し、一次粒子径の小さい材料を得ることができ、被覆効果の観点から、追加の炭素源を導入する態様と比較して、炭素の被覆率を向上させることができるため、被覆の効果は、より高くなる。同時に、有機システムでは、ケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムの分散性は優れているため、最終製品の一次粒子径は、より均一になる。
【0044】
4、本発明では、仮焼の保温段階において、気相堆積法により、有機ガスをシステムに導入し、炭素で被覆されていない部位に第一鉄イオンがあり、すなわち、第一鉄イオンは外に露出していると、有機ガスは、この部位で触媒的に分解されて炭素になり、炭素は、この部位に付着するため、炭素被覆の均一性をさらに向上させることができる。
【0045】
5、噴霧乾燥の段階で本発明は、粒径を制御し、最終成品は、粉砕されず、直接ふるいにかけられるため、5-15μmの粒径の球状粒子の造粒を実現することができ、噴霧乾燥は、最終加工プロセスでのスラリーを均一にするときの固形分を向上させることができるため、加工性能を向上させ、コストを削減することができると同時に、製品の極片圧縮密度を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】実施例1のステップ(1)における焼結後の未粉砕の前駆体のSEM図である。
図2】実施例1のステップ(1)における焼結後の粉砕後の前駆体のSEM図である。
図3】実施例1で得られたナトリウム電池用正極材料のSEM図である。
図4】実施例1で得られた粉砕後のナトリウム電池用正極材料の透過型電子顕微鏡図である。
図5】実施例1で得られたナトリウム電池用正極材料の充放電曲線である。
図6】実施例1で得られたナトリウム電池用正極材料のサイクル曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施例を参照しながら、本発明の技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。無論、説明される実施例は、本発明の実施例の一部であり、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労力を要さずに想到し得る他のすべての実施例はいずれも、本発明の保護範囲に属する。
【0048】
本発明をさらに説明するために、以下、実施例により詳細に説明する。本発明の以下の実施例で使用される原料はいずれも、市販品である。
【0049】
電気化学性能試験:極片の配合比率(質量比)は、電極材料:導電黒鉛:PVDF=87:8:5である。
【0050】
金属ナトリウムを参照電極として、CR2025型ボタン電池を製造し、負極は、ナトリウム片であり、電解液は、六フッ化リン酸ナトリウムである。製造したボタン電池を室温(25℃)で10時間放置した後、ボタン電池を充放電して活性化し、次いで、藍電の電池充放電試験機を用いて上記で製造したボタン電池の充放電サイクル試験を行う。
【0051】
まず、室温(25℃)で、0.1Cの倍率で1サイクルし、次に0.2Cの倍率で1サイクルし続け、さらに0.5Cの倍率で1サイクルし、次に1Cの倍率で1サイクルし続け、ここで、制御電池の充放電電圧範囲は、1.0-4.5Vの電圧ウィンドウで検出される。
【0052】
その他の性能試験
タップ密度の測定方法: 50gの材料を取り、校正された100mLのメスシリンダー内に入れ、次に振幅を2cmとし、振動回数を5000回とし、計算して得られた密度をタップ密度とする。
【0053】
圧縮密度の測定方法:電子圧縮密度計を使用し、1gの材料を取り、次に金型に入れ、3T圧力で30sプレスし、次にその密度を計算して圧縮密度とする。
【実施例0054】
実施例1
【0055】
(1)硝酸鉄と、硝酸マンガンと、硝酸ナトリウムと、を質量比0.75:0.25:1.9で混合し、純水を添加して溶解し、均一に混合し、硝酸鉄、硝酸マンガン及び硝酸ナトリウムの総質量と純水の質量比は、1:6であり、次に噴霧乾燥して、噴霧材料を得、2.5℃/hの速度で700℃まで昇温させ、5h仮焼し、次に材料温度≦80℃まで冷却した後、材料を排出し、仮焼プロセスで発生した排気ガスは、水酸化ナトリウム溶液で吸収され、硝酸ナトリウム溶液を得、これを戻して使用し、ステップ(1)の方法で前駆体を得ることができ、前駆体の主成分は、硝酸鉄、硝酸マンガン及び硝酸ナトリウムの混合物である。前駆体の性能検出データは、表1に示すとおりである。粉砕前と粉砕後の前駆体のSEMは、それぞれ図1図2に示すとおりである。
【0056】
【表1】
【0057】
(2)前駆体と、オルトケイ酸イソプロピルと、テトライソプロピルチタネートと、を混合し、前駆体中のナトリウムと、ケイ酸エステル中のケイ素と、チタネート中のチタンとのモル比は、2:0.8:0.25であり、エタノール溶媒を添加し、前駆体とエタノールとの質量比は、1:4であり、それをサンドグラインダに入れて粉砕し、ジルコニアボールを粉砕媒体として使用し、粉砕プロセスでは冷水で降温させ、有機溶媒の温度を45℃以下に維持し、スラリーの粒径が130nmになるまで粉砕し、粉砕物を得る。
【0058】
(3)粉砕物を圧力噴霧乾燥し、噴霧乾燥は、窒素ガスを加熱媒体として使用し、窒素ガスを330℃まで加熱し、次に窒素ガスを噴霧乾燥塔に導入して噴霧液滴を乾燥させ、有機溶媒をガス化し、次に噴霧乾燥材料と有機ガスをサイクロン集塵塔に入れて固気分離し、固形物を収集し、窒素ガスと有機ガスを集塵布袋で濾過した後、それを凝縮し、有機溶媒を回収し、窒素ガスをサイクル使用し、噴霧乾燥プロセスでは、圧力噴霧乾燥のガス圧力は、9気圧であり、単位時間あたりの吸気体積は、入ったスラリーの体積の1500倍であり、上記ステップで製造して噴霧乾燥材料を得、噴霧乾燥材料のD50粒径は、9.2μmである。
【0059】
(4)噴霧乾燥材料を雰囲気炉内に入れて仮焼し、仮焼は、昇温段階、保温段階及び降温段階に分けられ、仮焼プロセスの保温段階では窒素ガスを導入し、炉内の酸素含有量を5ppm未満に維持し、昇温段階の昇温速度は、1.3℃/hであり、次に温度が620℃になるまで昇温させ、次にこの温度で13h保温仮焼し、次に降温させ、降温速度は、1.4℃/hであり、材料温度≦60℃まで降温させた後、冷却を停止し、次に材料を排出し、保温段階では、システムにn-プロピルアルコールを導入し、n-プロピルアルコールは、事前に蒸気状態に加熱され、有機ガスのガス管を雰囲気炉内のチャージ匣鉢の底部に挿入し、合計で導入した有機ガスの質量は、噴霧乾燥材料の質量の0.04倍であり、降温後の材料を粉砕した後、125メッシュふるいにかけ、それに対して電磁による除鉄を行い、磁性物質の含有量が0.87ppm未満になるまで除鉄を停止し、次にポリウレタン接着剤と酢酸エチルを混合し、次に直接噴霧造粒し、粉砕せずに、球状の炭素被覆ナトリウム電池用正極材料を得、それは、分子式がNa1.97Fe0.77Mn0.25(TiO2)0.25(SiO4)0.77/Cであり、粒径が7.8μmであり、SEM図が図3に示すとおりであり、性能が表2に示すとおりであり、粉砕後のナトリウム電池用正極材料を透過型電子顕微鏡で試験し、その結果は、図4に示すとおりであり、ケイ酸鉄マンガンチタンナトリウムの表面には、2.5nm程度の炭素層が被覆され、且つ炭素層の被覆が均一であることがわかる。
【0060】
本発明のナトリウム電池用正極材料を電池に組み立て、充放電曲線は、図5に示すとおりであり、サイクル曲線は、図6に示すとおりである。
【0061】
【表2】
【0062】
データから、本発明の材料は、容量が非常に大きく、サイクル寿命が長い。
【0063】
対比例1
【0064】
実施例1におけるステップと条件パラメータを参照し、ステップ(1)で得られた前駆体を二酸化ケイ素と二酸化チタンと混合し、エタノールを添加し、後続試験を行い、ここで、前駆体中のナトリウムと、二酸化ケイ素と二酸化チタン中のケイ素と、チタネート中のチタンとのモル比は、2:0.8:0.25である。
本対比例で得られた製品の性能試験は、下記の表3に示すとおりであり、原料から製造されたナトリウムイオン電池用正極材料は、初回放電効率が著しく低下するだけでなく、-20℃及び常温での容量保持率も大幅に低下することがわかる。
【0065】
【表3】
【0066】
以上で開示された実施例の説明は、当業者が本発明を実現又は使用することを可能にする。これらの実施例に対する様々な修正は、当業者にとって明白であり、本明細書で定義された一般的な原理は、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、他の実施例で実現され得る。従って、本発明は、本明細書に示されたこれらの実施例に限定されるものではなく、本明細書に開示された原理及び新規の特徴と一致する最も広い範囲に適合するものである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6