(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137735
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】実装ツールおよび実装装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020398
(22)【出願日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2023048708
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】楠部 善弘
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK02
5F044LL01
5F044LL04
5F044PP16
5F044PP17
5F044QQ01
(57)【要約】
【課題】異なるサイズの電子部品であっても実装ツールの形状を変えずに使用でき、基板に実装する際の気泡の残留を低減できる実装ツール及び実装装置を提供する。
【解決手段】実施形態の実装ツール31は、電子部品2の相反する一対の外縁よりも内側を保持する保持面311aを有する保持部311と、保持面311aの外縁よりも外側に突出することにより電子部品2における保持面311aに保持されていないオーバーハング部2cに対し、離隔して対向する対向面312aを有する拡張部312と、保持面311aに設けられた第1の開口313と、対向面312aに設けられた第2の開口315と、第1の開口313に連通し、内部の圧力を負圧にすることにより保持面311aに電子部品2を吸引して保持する第1の通気路314と、第2の開口315に連通し、内部の圧力を負圧にすることにより対向面312aに対向する電子部品2のオーバーハング部2cを吸引する第2の通気路316と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の電子部品を基板に実装する実装ツールであって、
前記電子部品の相反する一対の外縁よりも内側を保持する保持面を有する保持部と、
前記保持部における前記保持面の外縁よりも外側に突出することにより前記電子部品における前記保持面に保持されていないオーバーハング部に対し、離隔して対向する対向面を有する拡張部と、
前記保持面に設けられた第1の開口と、
前記対向面に設けられた第2の開口と、
前記第1の開口に連通し、内部の圧力を負圧にすることにより前記保持面に前記電子部品を吸引して保持する第1の通気路と、
前記第2の開口に連通し、内部の圧力を負圧にすることにより前記対向面に対向する前記電子部品の前記オーバーハング部を吸引する第2の通気路と、
を有することを特徴とする実装ツール。
【請求項2】
前記対向面は、前記第2の通気路の負圧により吸引された前記電子部品に非接触で対向することを特徴とする請求項1記載の実装ツール。
【請求項3】
前記保持面は平坦面であることを特徴とする請求項1記載の実装ツール。
【請求項4】
前記保持面は曲面であることを特徴とする請求項1記載の実装ツール。
【請求項5】
前記第2の開口は、前記拡張部に設けられた線状の溝であることを特徴とする請求項1記載の実装ツール。
【請求項6】
前記線状の溝は、前記保持部を囲む枠状であることを特徴とする請求項5記載の実装ツール。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの実装ツールを、実装対象に前記電子部品が接離する方向に移動させるツール移動機構と、
前記第1の通気路に対する負圧の有無を切り替える第1の切替部と、
前記第2の通気路に対する負圧の有無を切り替える第2の切替部と、
を有することを特徴とする実装装置。
【請求項8】
前記第2の通気路に対する負圧を調整する調整部を有することを特徴とする請求項7記載の実装装置。
【請求項9】
前記基板に対する前記実装ツールの接触を検知する検知部を有し、
前記検知部により接触を検知した場合に、
前記第1の切替部が前記第1の通気路の負圧を停止した後、前記第2の切替部が前記第2の通気路の負圧を維持したままの状態で、前記ツール移動機構が前記電子部品を離脱させることを特徴とする請求項7記載の実装装置。
【請求項10】
前記実装ツールに対する接触を検知する検知部を有し、
前記検知部により接触を検知した場合に、前記第1の切替部が前記第1の通気路の負圧を停止した後、前記第2の切替部が前記第2の通気路の負圧を停止して、前記ツール移動機構が前記電子部品を離脱させることを特徴とする請求項7記載の実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装ツールおよび実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロジック、メモリ、画像センサなどの半導体素子である電子部品を、基板に実装する際には、半導体素子が形成されたウエーハを、切断することにより個片化したチップとする。そして、このチップを一つずつピックアップし、基板へ移送して実装することが行われている。
【0003】
このような電子部品の実装において、電子部品と基板との間に気泡が残留する場合がある。電子部品と基板との間に気泡が存在すると、接続不良、強度不足となり、実装不良につながる。これに対処するため、電子部品を実装する際に、基板に対して圧着する実装ツールにおいて、電子部品を曲面に倣うように湾曲させて保持し、電子部品の一部を基板に接触させてから、弾性体で押圧することにより、電子部品と基板との間の気体を押し出すように実装することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電子部品の湾曲の形状は、電子部品のサイズによって異なるため、上記のように曲面に倣うように電子部品を湾曲させる場合には、電子部品に合わせて曲面の形状が異なる実装ツールを用意しなければならない。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、異なるサイズの電子部品であっても実装ツールの形状を変えることなく使用でき、基板に実装する際の気泡の残留を低減できる実装ツール及び実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、矩形の電子部品を基板に実装する実装ツールであって、前記電子部品の相反する一対の外縁よりも内側を保持する保持面を有する保持部と、前記保持部における前記保持面の外縁よりも外側に突出することにより前記電子部品における前記保持面に保持されていないオーバーハング部に対し、離隔して対向する対向面を有する拡張部と、前記保持面に設けられた第1の開口と、前記対向面に設けられた第2の開口と、前記第1の開口に連通し、内部の圧力を負圧にすることにより前記保持面に前記電子部品を吸引して保持する第1の通気路と、前記第2の開口に連通し、内部の圧力を負圧にすることにより前記対向面に対向する前記電子部品の前記オーバーハング部を吸引する第2の通気路と、を有する。
【0008】
実施形態の実装装置は、前記実装ツールを、実装対象に前記電子部品が接離する方向に移動させるツール移動機構と、前記第1の通気路に対する負圧の有無を切り替える第1の切替部と、前記第2の通気路に対する負圧の有無を切り替える第2の切替部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実装ツール及び実装装置によれば、異なるサイズの電子部品であっても実装ツールの形状を変えることなく使用でき、基板に実装する際の気泡の残留を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】実施形態の実装ツールを示す側面図(A)、底面図(B)、断面図(C)である。
【
図4】実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】実施形態の電子部品を実装する手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態の電子部品の実装態様を示す説明図である。
【
図7】従来の実装ツールによる電子部品の吸引を示す断面図(A)、電子部品の基板への接触を示す断面図(B)である。
【
図8】実験に用いた電子部品を示す平面図(A)、実装ツールを示す側面図(B)である。
【
図9】実験による電子部品の変形を示すグラフである。
【
図10】実験による電子部品の変形を示すグラフである。
【
図11】実験による電子部品の変形を示すグラフである。
【
図12】第1の開口を溝とした実装ツールの変形例を示す底面図である。
【
図13】保持面を曲面とした実装ツールの変形例を示す側面図である。
【
図14】保持面が電子部品の被保持面に接していない部分が生じた場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態の実装装置について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式図であって、各部のサイズ、比率等は、理解を容易にするために誇張している部分を含んでいる。
図1及び
図2に示すように、実装装置1は、供給装置10、ピックアップ装置20、搭載装置30、制御装置50を備え、矩形の電子部品2をピックアップ装置20によって供給装置10からピックアップして搭載装置30へと受け渡し、搭載装置30によって、基板ステージ60に支持された基板Wに実装する装置である。矩形の電子部品2とは、矩形の面で構成された直方体形状の電子部品2である。電子部品2は、例えば、チップ状の部品である。本実施形態では、電子部品2は、ウエーハを個片に分割した半導体チップであり、直方体形状の板体である。
【0012】
[供給装置]
供給装置10は、電子部品2をピックアップ装置20へと供給する装置である。供給装置10は、ピックアップ対象の電子部品2を供給位置P1に移動させる。供給位置P1とは、ピックアップ装置20が、ピックアップ対象となる電子部品2をピックアップする位置である。供給装置10は、電子部品2が貼り付けられたシート11を支持する供給ステージ12、供給ステージ12を移動させるステージ移動機構13を備える。ステージ移動機構13は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構である。
【0013】
電子部品2が貼り付けられたシート11は、ここでは、図示しないウエーハリングに貼り付けられた粘着性を有するウエーハシートである。シート11上には複数の電子部品2がマトリクス(行列)状に配置されている。本実施形態では、電子部品2は、機能面が上方に露出したフェイスアップ状態で配置されている。
【0014】
供給ステージ12は、シート11が貼り付けられたウエーハリングを水平に支持する台である。つまり、電子部品2が貼り付けられたシート11を、ウエーハリングを介して支持する。供給ステージ12は、ステージ移動機構13によって、水平方向に移動可能に設けられている。シート11は供給ステージ12とともに水平に支持されているため、シート11及び当該シート11に載せられた電子部品2もまた、水平方向に移動可能に設けられている。これにより、供給装置10は、複数の電子部品2のうちピックアップ対象となる電子部品2を、供給位置P1に移動させて位置付けることができる。
【0015】
なお、
図1及び
図2に示すように、水平方向のうち、供給装置10と搭載装置30が並ぶ方向をX方向、X方向に直交する水平方向をY方向という。また、シート11の平面に直交する方向をZ方向または上下方向という。上方向とは、シート11の平面を境界として電子部品2が載せられている側の方向であり、下方向とは、シート11の平面を境界として電子部品2が載せられていない側の方向である。
【0016】
[ピックアップ装置]
ピックアップ装置20は、供給装置10から電子部品2をピックアップし、ピックアップした電子部品2を搭載装置30に受け渡す中継装置である。このピックアップ装置20は、ピックアップノズル21と、ノズル移動機構22と、方向転換部23と、突き上げピン24とを備える。
【0017】
ピックアップノズル21は、電子部品2を保持し、また保持状態を解除して電子部品2を解放する筒状の吸着ノズルである。ピックアップノズル21は、その先端の吸着面に開口するノズル孔を有する。ノズル孔は真空ポンプ等の負圧発生装置(図示しない)と連通しており、当該装置が負圧を発生させることによって、ノズル孔で電子部品2を吸引して保持する。また、負圧発生装置が負圧を解除することで、ピックアップノズル21から電子部品2を解放する。
【0018】
ノズル移動機構22は、供給位置P1と受け渡し位置P2との間でピックアップノズル21を往復移動させ、また、供給位置P1及び受け渡し位置P2で昇降させる機構である。具体的には、ノズル移動機構22は、スライド機構221、昇降機構222を備える。なお、受け渡し位置P2とは、ピックアップ装置20が、供給位置P1でピックアップした電子部品2を後述する受取部として機能する実装ツール31に受け渡す位置である。
【0019】
供給位置P1及び受け渡し位置P2は、主に水平方向(XY方向)の位置を意味し、必ずしも上下方向(Z方向)の位置を意味するものではない。また、Z方向の位置(高さ)を意味する場合であっても、その高さには所定の幅があるものとする。所定の幅には、電子部品2の受け渡しの際の、電子部品2の厚み、電子部品2を突き上げる距離、電子部品2を吸着可能な距離などが含まれる。
【0020】
スライド機構221は、ピックアップノズル21を供給位置P1と受け渡し位置P2との間で往復移動させる。ここでは、スライド機構221は、X方向と平行に延び、支持フレーム221aに固定されたレール221bと、レール221b上を走行するスライダ221cとを有する。スライダ221cは、不図示の回転モータにより駆動されるボールねじ、リニアモータ等により駆動される。
【0021】
昇降機構222は、ピックアップノズル21を上下方向に移動させる。具体的には、昇降機構222は、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。すなわち、サーボモータの駆動により、ピックアップノズル21がZ方向に沿って昇降する。この昇降機構222は、スライド機構221のスライダ221cに取り付けられている。
【0022】
方向転換部23は、ピックアップノズル21とノズル移動機構22の間に設けられている。方向転換部23は、ここでは、ピックアップノズル21の向きを変更するモータ等の駆動源、ボールベアリング等の回転ガイドを含んでなるアクチュエータである。向きを変更するとは、上下方向に0°~180°回転させることである。例えば、吸着面を供給ステージ12へと下に向けたピックアップノズル21が供給位置P1で電子部品2を吸引して保持する。その後、方向転換部23は、吸着面が上に向くようにピックアップノズル21の向きを変更する。この時、回転角度は180°である。
【0023】
突き上げピン24は、供給位置P1で、供給装置10のシート11の下方に設けられている。突き上げピン24は、先端の尖った針状の部材である。突き上げピン24は、長さ方向がZ方向に平行になるようにバックアップ体241の内部に設けられている。
【0024】
バックアップ体241は、突き上げピン24をその内部から進出またはその内部へと退避させる駆動機構を有する。この進出または退避は、上下方向に行われる。この駆動機構は、例えば、エアシリンダやカム機構によって駆動される機構である。また、バックアップ体241は、図示しない負圧回路が接続され。シート11を吸引して保持する。
【0025】
[搭載装置]
搭載装置30は、ピックアップ装置20から受け取った電子部品2を実装位置P3まで搬送し、基板Wに実装する装置である。実装位置P3とは、電子部品2を基板Wに実装する位置である。搭載装置30は、実装ツール31、ツール移動機構32を有する。
【0026】
[実装ツール]
実装ツール31は、受け渡し位置P2でピックアップノズル21から電子部品2を受け取る受取部としての機能を有し、また当該電子部品2を実装位置P3で基板Wに実装する部材である。実装ツール31は、電子部品2を、不図示の負圧回路による負圧によって吸引して保持し、また実装後は負圧を解除して電子部品2を解放する。具体的には、実装ツール31は、
図3(A)、(B)、(C)に示すように、直方体形状であり、保持部311、拡張部312を有する。なお、
図3(A)は、実装ツール31が電子部品2を吸引して保持している様子を示す側面図である。
図3(B)はその底面図、
図3(C)はその断面図である。
【0027】
(保持部)
保持部311は、電子部品2に相似する直方体形状の板体である。保持部311は、電子部品2を保持する保持面311aを有する。保持面311aは、保持部311の底面に構成された平坦面である。
【0028】
保持面311aは、電子部品2よりもサイズが小さい。すなわち、保持面311aは、電子部品2の保持される被保持面2a(本実施形態では、電子部品2の機能面である上面)よりもサイズが小さい。これにより、保持面311aは、供給位置P1に位置付けられた電子部品2の外縁2bよりも内側を保持する。つまり、保持部311は、保持面311aの外縁311bが、電子部品2の外縁2bよりも内側となるように、電子部品2を保持する。この時、保持部311は、少なくとも電子部品2の相反する一対の外縁2bよりも内側を保持すればよい。本実施形態では、
図3(B)に示すように、保持部311は、保持面311aの外縁311bの全周が、電子部品2の外縁2bの全周よりも内側となるように、電子部品2を保持する。なお、
図3(B)において、電子部品2を点線で示す。
【0029】
このように、保持部311は、電子部品2の外縁2bよりも内側を保持するため、電子部品2は、被保持面2aが保持面311aに重ならないことにより、保持面311aの外縁311bから突出する部分が生じる。この突出する部分を、オーバーハング部2cと呼ぶ。
【0030】
保持部311が電子部品2の実装時の圧力では弾性変形しないように、実装ツール31は硬質な材料で形成されていることが好ましい。本実施形態の保持面311aは、矩形(長方形、正方形を含む)であるが、上記のように電子部品2を保持できる形状であればよい。
【0031】
(拡張部)
拡張部312は、保持部311における保持面311aの外縁311bよりも外側に突出することにより、電子部品2におけるオーバーハング部2cに離隔して対向する部分を有する。本実施形態の拡張部312は、保持部311の上面に設けられた矩形の板体である。拡張部312のオーバーハング部2cに対向する面が対向面312aである。対向面312aは、オーバーハング部2cに対向する部分があればよく、全面が対向している必要はない。
【0032】
さらに、実装ツール31は、第1の開口313、第1の通気路314、第2の開口315、第2の通気路316を有する。第1の開口313は、保持面311aに設けられた孔である。第1の開口313は、保持面311aに複数設けられている。複数の第1の開口313は、
図3(B)に示すように、マトリクス状に並んでいる。
【0033】
第1の通気路314は、第1の開口313に連通し、内部の圧力を負圧にすることにより、保持面311aに電子部品2を吸引して保持する。
図3(C)に示すように、第1の通気路314には、負圧を発生させる真空ポンプ等の負圧発生装置400が、配管410及び切替部420を介して連通している。切替部420は、第1の通気路314に対する負圧の有無を切り替える第1の切替部として機能するバルブである。
【0034】
第2の開口315は、対向面312aに設けられた線状の溝である。第2の開口315は、保持部311を囲む矩形の枠状である。第2の開口315は、電子部品2のオーバーハング部2cに対向している。
【0035】
第2の通気路316は、第2の開口315に連通し、内部の圧力を負圧にすることにより、対向面312aに対向するオーバーハング部2cを吸引する。これにより、電子部品2の周縁部のオーバーハング部2cが反って変形する。
図3(C)は、
図3(B)のA-A矢視断面図で、電子部品2が吸引されて保持面311aに接する部分が平坦に保持され、オーバーハング部2cが変形している様子を示す。第2の通気路316は、第2の開口315の一対の辺の中央に設けられている。第2の通気路316には、負圧を発生させる負圧発生装置400が、配管430及び調整部440を介して連通している。調整部440は、第2の通気路316に対する負圧の有無を切り替える第2の切替部として機能するとともに、排気による吸引力を調整する調整部として機能するバルブである。
【0036】
[ツール移動機構]
ツール移動機構32は、実装ツール31を受け渡し位置P2と実装位置P3との間で往復移動させ、受け渡し位置P2と実装位置P3で昇降させる。ツール移動機構32は、スライド機構321、昇降機構322を有する。
【0037】
スライド機構321は、実装ツール31を受け渡し位置P2と実装位置P3との間で往復移動させる。ここでは、スライド機構321は、X方向と平行に延び、支持フレーム321aに固定された2本のレール321bと、レール321b上を走行するスライダ321cとを有する。なお、図示はしないが、スライド機構321は、実装ツール31をY方向にスライド移動させるスライド機構を有している。このスライド機構も、Y方向のレールとレールを走行するスライダによって構成できる。
【0038】
昇降機構322は、実装ツール31が着脱可能に設けられたアームを駆動することにより、実装ツール31を上下方向に移動させる。具体的には、昇降機構322は、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構を用いることができる。すなわち、サーボモータの駆動により、実装ツール31がZ方向に沿って昇降する。さらに、昇降機構322には、実装ツール31の基板Wに対する接触を検知する検知部322aが設けられている。検知部322aとしては、歪ゲージやピエゾ素子などの荷重センサを用いることができる。
【0039】
基板ステージ60は、電子部品2を実装するための基板Wを支持する台である。基板ステージ60は、ステージ移動機構61に設けられている。ステージ移動機構61は、基板ステージ60をXY平面上でスライド移動させ、基板Wにおける電子部品2の実装位置P3に合わせる移動機構である。ステージ移動機構61は、例えば、サーボモータによって駆動されるボールねじ機構である。
【0040】
[制御装置]
制御装置50は、供給装置10、ピックアップ装置20、搭載装置30、基板ステージ60の起動、停止、速度、動作タイミング等を制御する。すなわち、制御装置50は、実装装置1の制御装置である。制御装置50は、例えば、専用の電子回路又は所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって実現できる。制御装置50には、オペレータが制御に必要な指示や情報を入力する入力装置、装置の状態を確認するための出力装置が接続されている。入力装置は、スイッチ、タッチパネル、キーボード、マウスなどを用いることができる。出力装置は、液晶、有機ELなどの表示部を用いることができる。
【0041】
図4は、制御装置50の機能ブロック図である。制御装置50は、供給装置制御部51、突き上げピン制御部52、ピックアップノズル制御部53、実装ツール制御部54、基板ステージ制御部56、記憶部57を有している。
【0042】
供給装置制御部51は、供給ステージ12の移動を制御する。すなわち、シート11に載せられたピックアップ対象となる電子部品2の移動を制御する。突き上げピン制御部52は、突き上げピン24の移動を制御する。
【0043】
ピックアップノズル制御部53は、ピックアップノズル21の移動、すなわちノズル移動機構22及び方向転換部23の動作を制御する。また、ピックアップノズル制御部53は、ノズル孔と連通した負圧発生装置を制御し、電子部品2の保持及び解放を制御する。
【0044】
実装ツール制御部54は、実装ツール31の移動、すなわちツール移動機構32の動作を制御する。また、実装ツール制御部54は、実装ツール31の第1の通気路314及び第2の通気路316と連通した負圧発生装置400、切替部420、調整部440を制御し、第1の開口313、第2の開口315の負圧の有無、第2の開口315の吸引圧の調整をすることにより、電子部品2の保持及び解放、反りを制御する。また、実装ツール制御部54は、検知部322aによる接触検知に応じて、第1の通気路314及び第2の通気路316の負圧の有無の切り替えを制御する。基板ステージ制御部56は、基板ステージ60の移動、すなわちステージ移動機構61の動作を制御する。
【0045】
記憶部57は、HDDまたはSSDなどの記録媒体である。記憶部57には、実装装置1の動作に必要なデータ、プログラムが予め記憶され、また、実装装置1の動作に必要なデータを記憶する。この必要なデータとは、例えば、供給位置P1、受け渡し位置P2、実装位置P3の位置座標、各移動機構の位置座標である。上述の各移動機構は、これらの座標に基づいて各構成の移動制御を行う。また、記憶部57には、実装ツール31の第1の通気路314、第2の通気路316の負圧の有無を切り替えるタイミング、負圧による吸引圧が記憶されている。
【0046】
[動作]
以上のような実装装置1の動作を説明する。まず、ピックアップ装置20は、供給装置10から電子部品2をピックアップし、当該電子部品2を搭載装置30に受け渡す。つまり、ピックアップ装置20によって、ピックアップノズル21を突き上げピン24が位置する供給位置P1に移動させ、ピックアップノズル21のノズル孔と突き上げピン24を対向させる。
【0047】
一方、供給装置10は、供給ステージ12を移動させ、供給位置P1にピックアップ対象の電子部品2を位置させる。この後、ピックアップ装置20は、ピックアップノズル21を下降させて吸着面を供給位置P1の電子部品2に当接させて電子部品2を吸着する。次いで、ピックアップノズル21は、電子部品2を保持したまま上昇しつつ、電子部品2を突き上げピン24が突き上げることによって、電子部品2をシート11から剥がしながらピックアップする。
【0048】
ピックアップ装置20は、方向転換部23によって、ピックアップノズル21を反転させる。すなわち、ピックアップノズル21の向きを上下方向に180°回転させ、ピックアップノズル21の吸着面を上方へ向ける。なお、反転動作は供給位置P1から受け渡し位置P2までの間のどの地点で行われてもよい。
【0049】
ピックアップ装置20は、ノズル移動機構22によって、受け渡し位置P2にピックアップした電子部品2を移動させる。搭載装置30の実装ツール31は、ツール移動機構32によって、受け渡し位置P2に移動して待機して、電子部品2を介してピックアップノズル21のノズル孔と、実装ツール31の保持面311aが対向する。
【0050】
そして、受け渡し位置P2に位置したピックアップノズル21に向けて実装ツール31が下降して、切替部420が実装ツール31の第1の通気路314に負圧を作用させて、第1の開口313に働く負圧によって保持面311aに電子部品2を吸引保持した後、ピックアップノズル21が負圧を解除する。これにより、ピックアップノズル21から実装ツール31へと電子部品2が受け渡される。
【0051】
この後、実装ツール31は、実装位置P3へと移動し、電子部品2を基板Wに実装する。この実装動作を、
図5のフローチャート、
図6の動作説明図を参照して説明する。まず、実装ツール31が実装位置P3に移動して、
図6(A)に示すように、実装ツール31に保持された電子部品2が、基板Wに対向する(ステップS01)。このとき、調整部440が、実装ツール31の第2の通気路316に負圧を作用させ、第2の開口315に働く負圧によって、電子部品2のオーバーハング部2cが吸引されるので、電子部品2の周縁部が変形する。つまり、電子部品2の周縁部が、吸引される方向に向かって反る。本実施形態では、電子部品2の周縁部の上から、第2の開口315が吸引しているため、電子部品2の周縁部が上側に向かって反る。そして、実装ツール31が下降して、電子部品2を基板Wに接近させる(ステップS02)。
【0052】
図6(B)に示すように電子部品2が基板Wに接触したことを、検知部322aが検知すると(ステップS03のYES)、実装ツール31が下降を停止する(ステップS04)。電子部品2は、保持面311aによって押圧される部分は基板Wに圧着されるが、第2の通気路316の負圧により反った部分は、基板Wに圧着されない。つまり、上側に沿った電子部品2の周縁部は基板Wに圧着されない。
【0053】
そして、
図6(C)に示すように、切替部420が第1の通気路314の負圧を停止する(ステップS05)。さらに、
図6(D)に示すように、実装ツール31が上昇して、電子部品2を残して基板Wから退避する(ステップS06)。すると、電子部品2のオーバーハング部2cへの吸引力が働かなくなり、電子部品2の反った周縁部が外側に向かって、徐々に基板Wの平坦面に倣うので、気泡が外側に排除されて基板Wに実装される。
【0054】
例えば、
図7に示すように、従来の実装ツールTの場合、電子部品2の水平方向の長さと実装ツールTの接触面の水平方向の長さは同じである。吸引孔Hは実装ツールTの接触面の中央に形成されているため、電子部品2を吸着保持する位置は、電子部品2の中心付近となる。この状態で、
図7(A)に示すように、実装ツールTが電子部品2を吸引保持すると、電子部品2の周縁部は吸引作用が働かないため、実装ツールTの接触面の周縁部と電子部品2の周縁部との間に隙間ができる。つまり、電子部品2の中心の吸引部分を支点に、周縁部が垂れ下がるように下側に反る形となる。
【0055】
この状態で、
図7(B)に示すように、実装ツールTを下降させて、基板Wに実装しようとすると、電子部品2の周縁部が先に基板Wに接する。そして、実装ツールTが、電子部品2をさらに基板Wに押し込むことにより、電子部品2の周縁部以外の部分が基板Wに接する。しかし、この場合、電子部品2の周縁部が先に基板Wに接することで、電子部品2の周縁部以外の部分と基板Wとの間に空間ができる。このような空間ができると、その空間に空気が入り込み易い状態となる。この状態で、実装ツールTが基板Wを押し込んで、電子部品2の周縁部以外の場所を基板Wに接触させると、気泡が存在した状態で接合されてしまう。実装ツールTで押し込んだとしても、電子部品2の周縁部が先に接合されているため、気泡は逃げる場所が無い。つまり、気泡が残留して、接合不良となる。
【0056】
このように、基板Wに対して、電子部品2の周縁部が先に接触及び接合することは、気泡が取り込まれた状態で接合することになる。一方、本実施形態では、電子部品2の周縁部を上向きに反るように、実装ツールTで保持し、その状態で、電子部品2の周縁部以外の平坦面を、基板Wに対して接触及び接合させる。これにより、電子部品2及び基板Wは、平坦面同士が接合するため、気泡が入る隙間ができ難く、気泡が残留することが抑制される。
【0057】
また、実装ツールTの接触面が下に凸となっている、蒲鉾形となっているなどによって、中央が隆起している場合には、実装ツールTの接触面は、電子部品2の周縁部よりも中央に先に接触して吸引保持する。この場合にも、電子部品2の中心の吸引部分を支点に、周縁部が垂れ下がるように下側に反る形となるので、電子部品2の周縁部が基板Wに先に接合され、気泡は逃げる場所が無くなり、気泡が残留して接合不良となる。
【0058】
さらに、実装ツールTの平坦な接触面の周縁部にも吸引孔Hを設けると、電子部品2の周縁部の垂れ下がりを防ぐことができる。しかし、この場合には、電子部品2の中央と周縁部が、基板Wにほぼ同時に接触することになるため、気泡の逃げ道が塞がれて、接合不良となってしまう。本実施形態では、電子部品2のオーバーハング部2cを吸引して垂れ下がりを防いで、気泡の逃げ道をつくることができるので、基板Wとの接合不良を防止できる。
【0059】
[実施例]
実施形態の実装ツール31を用いて、吸引保持した電子部品2を変形させた試験の結果を説明する。使用した電子部品2は、
図8(A)、(B)に示すように、幅Wc=9mm、縦Lc=12mm、厚さTc=0.1mmの直方体形状の半導体チップである。
【0060】
実装ツール31の保持部311の外側へ突出した対向面312aは、保持面311aと平行な突出長Prは、1.5mmである。また、保持部311に保持された電子部品2の拡張部312の外側への突出長Pcは、0.5mmである。保持部311の厚さ、つまり対向面312aと変形していない状態のオーバーハング部2cとの間隔dは、0.01mmである。
【0061】
試験は、電子部品2を第1の通気路314の負圧によって保持面311aに吸引保持した状態で、第2の通気路316の負圧の吸引圧を、25kPa、50kPa、75kPaに変えて吸引した場合の電子部品2の変形量を、白色共焦点式の変位測定器にて計測した。その結果を、それぞれ
図9~
図11に示す。
図9(A)、
図10(A)、
図11(A)における1~10の数字(横軸)は、
図8(A)に示す電子部品2のX1~X10の列の位置に対応する。実線は中央のY7の行に対応するX1~X10の位置の変形量、一点鎖線及び破線は両端に近いY1、Y13の行に対応するX1~X10の位置の変形量を示す。
図9(B)、
図10(B)、
図11(B)における1~13の数字(横軸)は、
図8(A)に示す電子部品2のY1~Y13の行の位置に対応し、実線は中央のX5の列に対応するY1~Y13の位置の変形量、一点鎖線及び破線は、両端に近いX1、X10の列に対応するY1~Y13の位置の変形量を示す。
【0062】
したがって、
図9(A)、
図10(A)、
図11(A)は、電子部品2の、
図8における幅方向のプロファイルを示し、
図9(B)、
図10(B)、
図11(B)は、電子部品2の、
図8における縦方向のプロファイルを示している。なお、
図9~
図11のグラフは、
図8(B)の図示下側(電子部品2側)から電子部品2の表面の高さを計測したものとなる。縦軸の変形量は、マイナスが、電子部品2が拡張部312側へ変形することを示す。X1、X10、Y1、Y13の位置は、電子部品2の各辺の端部から、突出長Pcである0.5mm分内側に位置する。概ね、拡張部312の各辺の端部に位置する。対向面312aの各辺の端部は、X2、X9、Y2、Y12近傍となる。
【0063】
この
図9~
図11に示すように、オーバーハング部2cを吸引することにより、電子部品2の周縁部を反らすように変形させることが可能であることがわかる。また、吸引圧を変化させることにより、変形量を調整できることがわかる。
【0064】
例えば、
図9(A)では、Y1、Y7、Y13のいずれの位置においても、X1、X10は、中央付近(X5~X6,Y6~Y8)に対して、概ね1μmの変形が見られる。これに対し、X3~X8の位置の変形量は、Y1、Y7、Y13のいずれの位置においても、0.5μm程度で、保持部311の平坦面にほぼ平坦に吸引保持されていると言える。この状態は、
図9(B)にみられるように、電子部品2の縦方向においても同様である。つまり、厚さ0.1mmの電子部品2の周縁部に、-25kPaの吸引圧を0.01mm離れて作用させることで、電子部品2の保持部311で保持している部分は平坦に保持し、かつ、電子部品2の4辺の周縁部が反るように変形させることができている。
【0065】
また、この状態は、
図10に示すように、-50kPaの吸引圧を作用させても同じである。この場合、電子部品2の周縁部は、約1~2μmの変形量で変形させることができている。さらに、
図11に示すように、-75kPaの吸引圧を作用させても同じであり、このときは、電子部品2の周縁部は、約2μmの変形量で変形させることができている。つまり、吸引圧を制御することで、変形量を制御できている。また、いずれの吸引圧の状態でも、保持部311の保持面311aに、電子部品2は平坦に保持できている。
【0066】
なお、いずれの吸引圧であっても、電子部品2の厚さ(Tc)が0.2mm以上では、電子部品2の周縁部を変形させることができなかった。このことから、本実施形態が適用されるのは、電子部品2の厚さが0.2mmより薄いものと言える。
【0067】
[効果]
(1)本実施形態は、矩形の電子部品2を基板Wに実装する実装ツール31であって、電子部品2の相反する一対の外縁2bよりも内側を保持する保持面311aを有する保持部311と、保持部311における保持面311aの外縁311bよりも外側に突出することにより電子部品2における保持面311aに保持されていないオーバーハング部2cに対し、離隔して対向する部分を有する拡張部312と、保持面311aに設けられた第1の開口313と、対向面312aに設けられた第2の開口315と、第1の開口313に連通し、内部の圧力を負圧にすることにより保持面311aに電子部品2を吸引して保持する第1の通気路314と、第2の開口315に連通し、内部の圧力を負圧にすることにより対向面312aに対向する電子部品2のオーバーハング部2cを吸引する第2の通気路316と、を有する。
【0068】
また、本実施形態の実装装置1は、実装ツール31を、実装対象に電子部品2が接離する方向に移動させるツール移動機構32と、第1の通気路314に対する負圧の有無を切り替える第1の切替部(切替部420)と、第2の通気路316に対する負圧の有無を切り替える第2の切替部(調整部440)と、を有する。
【0069】
このため、第1の通気路314を負圧にして保持面311aに電子部品2を吸引保持しつつ、第2の通気路316を負圧にすることにより対向面312aに対向する電子部品2の部分を吸引して電子部品2を変形させた状態で、ツール移動機構32によって電子部品2を実装対象である基板Wに接触させることができる。つまり、電子部品2の周縁部以外の部分を対向面312aで保持し、電子部品2の周縁部であるオーバーハング部2cを吸引して反らすことにより、周縁部以外の部分を先に基板Wに接触させる。そして、第1の通気路314の負圧を停止して吸着保持を解除し、実装ツール31を電子部品2から離脱させることにより、第2の通気路316の吸引力から電子部品2の反った周縁部を離脱させる。電子部品2の周縁部が基板Wに倣うように平坦となる過程で、電子部品2の中央部からの気泡の排出を妨げない状態で電子部品2は実装される。これによって、電子部品2と基板Wとの間に気泡が残留することが抑制され、実装不良が低減する。このように、保持面311aの形状に依存させるのではなく、第2の通気路316の負圧を制御することにより、電子部品2の変形をさせることができるので、実装ツール31の形状を変えることなく、異なるサイズの電子部品2を実装できる。このため、多種の電子部品2に応じて、異なる実装ツール31を用意する必要がない。
【0070】
(2)対向面312aは、第2の通気路316の負圧により吸引された電子部品2に非接触で対向する。つまり、上側に反った電子部品2の周縁部が接触しない位置に、対向面312aが設けられている。このため、対向面312aへの接触により電子部品2の反り量が制限されることがなく、反り量の自由度が高く、種々のサイズの電子部品2に適用できる。但し、本発明は、対向面312aが、吸引された電子部品2に非接触の場合に限定されるものではなく、接触する場合も含む。
【0071】
(3)保持面311aは平坦面である。電子部品2の周縁部のオーバーハング部2cは、隙間をもって基板Wと対峙するため、その隙間から気泡が逃げやすくなるが、電子部品2の中央部分は保持面311aに平坦に保持されるので、電子部品2に荷重集中が生じないことから、電子部品2のダメージを抑制できる。つまり、電子部品2の一部の点や線、領域から接触させて押圧を開始すると、狭い領域に押圧力が集中してダメージを与えるが、本実施形態では、平坦面で基板Wに接するため、ダメージが抑制される。また、保持面311aに特定の曲面を形成しなくても、種々のサイズの電子部品2に適用できる。実装ツール31の形状が簡素となるため、製造が容易となる。
【0072】
(4)第2の開口315は、拡張部312に設けられた線状の溝である。このため、広範囲に亘って負圧を作用させることができる。本実施形態では、線状の溝が保持部311を囲む枠状である。このため、オーバーハング部2cの全周に亘って負圧を作用させることができる。
【0073】
(5)実装装置1は、第2の通気路316に対する負圧を調整する調整部440を有する。このため、電子部品2のサイズに応じて、所望の反り量が得られる負圧とすることができる。
【0074】
(6)基板Wに対する実装ツール31の接触を検知する検知部322aを有し、検知部322aにより接触を検知した場合に、第1の切替部が第1の通気路314の負圧を停止した後、第2の切替部が第2の通気路316の負圧を維持したままの状態で、ツール移動機構32が実装ツール31を基板Wから離脱させる。このため、電子部品2の基板Wへの接触時には電子部品2の周縁部の反りを維持し、実装ツール31を離脱させるときに、電子部品2が基板Wに倣うように実装される。
【0075】
[変形例]
本実施形態は、以下のような変形例も適用可能である。
(1)第1の開口313を線状の溝としてもよい。例えば、
図12に示すように、第1の開口313を保持面311aの対角線上に形成されたX字形状の溝とする。Xの溝の交点に第1の通気路314を設ける。但し、第1の開口313の溝の四つの端部は、保持面311aの角には達していない。これにより第1の通気路314の数を最小限としつつ、広範な領域で吸引保持ができる。ただし、第1の開口313の溝の四つの端部は、保持面313aの角には達していないようにする。これにより、電子部品2の周縁部の吸引と保持のための吸引とを切り分けることができる。
【0076】
(2)第2の開口315を、第2の通気路316に連通した複数の孔としてもよい。また、拡張部312は、第2の通気路316に連通した第2の開口315が設けられた対向面312aを有していればよく、保持部311の外周の全体ではなく、一部からのみ突出していてもよい。
【0077】
(3)保持面311aは曲面であってもよい。例えば、
図13に示すように、保持面311aが、球面の側面の一部、円筒の側面の一部のように隆起した形状であってもよい。なお、ここでいう円筒の側面の一部とは、断面が円形、楕円形、角丸長方形、トラック形の筒状体の一部である場合も含む。これにより、電子部品2の周縁部での湾曲が緩やかとなり、電子部品2に対する影響を抑えることができる。このように保持面311aを曲面としても、保持面311aが小さいため、異なるサイズの電子部品2に適用できる。
【0078】
(4)
図14に示すように、電子部品2の周縁部を吸引した場合の保持面111aに、電子部品2の被保持面2aが接してない部分が生じたとしても、電子部品2に対する影響の抑制効果はある。つまり、保持面311aが凸形状で一部の領域が突出して押圧力が集中するのとは異なり、保持面311aに保持された部分の電子部品2自体が変形していて、隙間が生じていて、それが基板Wに倣うように実装されるので、電子部品2に対して一部に荷重集中することがなく、電子部品2への影響が抑制される。ただし、電子部品2の中央部分が保持面311aに近く、凹となるような場合には、その中央部分に気泡が残留してしまう虞があるため、被保持面2aは、保持面311aに密着することが好ましい。
【0079】
(5)検知部322aにより接触を検知した場合に、第1の切替部が第1の通気路314の負圧を停止した後、第2の切替部が第2の通気路316の負圧を停止して、ツール移動機構32が電子部品2を離脱させてもよい。これによっても、電子部品2の基板Wへの接触時に、電子部品2の周縁部の反りを維持して気泡の排出を妨げず、その状態から電子部品2の周縁部の吸引を停止させることにより、電子部品2を基板Wに倣わせることができる。つまり、実装ツール31による電子部品2の保持開放の仕方が変わっても、基板Wに対する電子部品2の接触のさせ方と倣い方が同じとなるので、気泡の排除を妨げずに実装できる。
【0080】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記に示す他の形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び他の形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 実装装置
2 電子部品
2a 被保持面
2b 外縁
2c オーバーハング部
10 供給装置
11 シート
12 供給ステージ
13 ステージ移動機構
20 ピックアップ装置
21 ピックアップノズル
22 ノズル移動機構
23 方向転換部
24 突き上げピン
30 搭載装置
31、T 実装ツール
32 ツール移動機構
50 制御装置
51 供給装置制御部
52 突き上げピン制御部
53 ピックアップノズル制御部
54 実装ツール制御部
56 基板ステージ制御部
57 記憶部
60 基板ステージ
61 ステージ移動機構
111a 保持面
221 スライド機構
221a 支持フレーム
221b レール
221c スライダ
222 昇降機構
241 バックアップ体
311 保持部
311a 保持面
311b 外縁
312 拡張部
312a 対向面
313 第1の開口
314 第1の通気路
315 第2の開口
316 第2の通気路
321 スライド機構
321a 支持フレーム
321b レール
321c スライダ
322 昇降機構
322a 検知部
400 負圧発生装置
410 配管
420 切替部
430 配管
440 調整部
H 吸引孔
P1 供給位置
P2 受け渡し位置
P3 実装位置