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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137739
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】誘導型角度センサ及びトルクセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01D5/245 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024021385
(22)【出願日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】23164191
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516186407
【氏名又は名称】メレクシス・テクノロジーズ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】MELEXIS TECHNOLOGIES SA
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】ルガーニ,ロレンツォ
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA25
2F077AA27
2F077CC02
2F077NN02
2F077NN21
2F077PP09
2F077QQ07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】同一径の結合素子を有する既存の解決策と比較して、改善された測定範囲、精度、低減された誤差を実現する。
【解決手段】誘導型角度センサであって、送信機コイル(TX)及び励起回路と、第1の周期性Nを有する幾何形状を有する第1のセットの受信機コイルと、該第1の周期性Nを有する周期的な幾何形状を有する第1の移動可能な結合素子と、第1の周期性Nよりも小さい第2の周期性Mを有する幾何形状を有する第2のセットの受信機コイルと、該第2の周期性Mを有する周期的な幾何形状を有する第2の移動可能な結合素子と、を備え、第1の周期性N及び第2の周期性Mの比率N/Mが、1.5に等しい、誘導型角度センサ。そのような誘導型角度センサ及びトルクバーを備える、トルクセンサ。該複数のコイルを備える、プリント回路基板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導型角度センサであって、
-交番磁場を生成するための少なくとも1つの送信機コイル(TX)と、
-前記少なくとも1つの送信機コイルに通電するための交番信号を生成するための少なくとも1つの励起回路と、
-各々が第1の周期性(N)を有する幾何形状を有する、第1のセットの受信機コイル(RX1a、RX1b、RX1c)と、
-各々が前記第1の周期性(N)よりも小さい第2の周期性(M)を有する幾何形状を有する、第2のセットの受信機コイル(Rx2a、RX2b、RX2c)と、
-前記第1のセットの受信機コイル及び前記第2のセットの受信機コイルから得られた信号を評価するための評価回路と、
-前記少なくとも1つの送信機コイル(TX)と前記第1のセットの受信機コイル(RX1a、RX1b、RX1c)との間に誘導結合を提供するための第1の移動可能な結合素子であって、前記第1の周期性(N)を有する周期的な幾何形状を有する、第1の移動可能な結合素子と、
-前記少なくとも1つの送信機コイルと前記第2のセットの受信機コイル(Rx2a、RX2b、RX2c)との間に誘導結合を提供するための第2の移動可能な結合素子であって、前記第2の周期性(M)を有する周期的な幾何形状を有する、第2の移動可能な結合素子と、を備え、
前記第1の周期性(N)及び前記第2の周期性(M)の比率が、1.5に等しいことと、
前記第1の周期性及び前記第2の周期性(N、M)が、以下の組み合わせ:
i)前記第1の周期性(N)が6に等しく、かつ前記第2の周期性(M)が4に等しいこと、又は、
ii)前記第1の周期性(N)が9に等しく、かつ前記第2の周期性(M)が6に等しいこと、又は、
iii)前記第1の周期性(N)が12に等しく、かつ前記第2の周期性(M)が8に等しいこと、又は
iv)前記第1の周期性(N)が15に等しく、かつ前記第2の周期性(M)が10に等しいこと、又は
v)前記第1の周期性(N)が18に等しく、かつ前記第2の周期性(M)が12に等しいこと、のうちの1つであることと、を特徴とする、誘導型角度センサ。
【請求項2】
前記評価回路が、前記第1のセットの受信機コイル及び前記第1の周期性(N)から得られた前記信号に基づいて、第1の角度値(α1)を判定することと、前記第2のセットの受信機コイル及び前記第2の周期性(M)から得られた前記信号に基づいて、第2の角度値(α2)を判定することと、前記第1の角度値(α1)と前記第2の角度値(α2)との間の差を判定することと、を行うように構成されている、請求項1に記載の誘導型角度センサ。
【請求項3】
前記第1のセットの受信機コイルが、二相ループ構造を有し、かつ前記第2のセットの受信機コイルが、二相ループ構造を有するか、又は
前記第1のセットの受信機コイルが、二相ループ構造を有し、かつ前記第2のセットの受信機コイルが、三相ループ構造を有するか、又は
前記第1のセットの受信機コイルが、三相ループ構造を有し、かつ前記第2のセットの受信機コイルが、二相ループ構造を有するか、又は
前記第1のセットの受信機コイルが、三相ループ構造を有し、かつ前記第2のセットの受信機コイルが、三相ループ構造を有する、請求項1又は2に記載の誘導型角度センサ。
【請求項4】
前記第1のセットの受信機コイル及び前記第2のセットの受信機コイルのうちの少なくとも1つが、三相ループ構造を有し、
前記少なくとも1つの送信機コイルと、前記第1のセットの受信機コイルと、前記第2のセットの受信機コイルと、が、単一の多層プリント回路基板上に実装されている、請求項1又は2に記載の誘導型角度センサ。
【請求項5】
前記プリント回路基板が、4層プリント回路基板である、請求項1又は2に記載の誘導型角度センサ。
【請求項6】
誘導型トルクセンサであって、
トーションバーと、
請求項1又は2に記載の誘導型角度センサと、を備え、
前記第1の移動可能な結合素子及び前記第2の移動可能な結合素子が、前記トーションバーに接続されている、誘導型トルクセンサ。
【請求項7】
プリント回路基板であって、
-交番磁場を生成するための少なくとも1つの送信機コイル(TX)と、
-各々が第1の周期性(N)を有する幾何形状を有する、第1のセットの受信機コイル(RX1a、RX1b、RX1c)と、
-各々が前記第1の周期性(N)よりも小さい第2の周期性(M)を有する幾何形状を有する、第2のセットの受信機コイル(Rx2a、RX2b、RX2c)と、を備え、
-前記プリント回路基板が、4層のみを含むことと、
-前記第1の周期性(N)及び前記第2の周期性(M)の比率が、1.5に等しいことと、
前記第1の周期性及び前記第2の周期性(N、M)が、以下の組み合わせ:
i)前記第1の周期性(N)が6に等しく、かつ前記第2の周期性(M)が4に等しいこと、又は、
ii)前記第1の周期性(N)が9に等しく、かつ前記第2の周期性(M)が6に等しいこと、又は、
iii)前記第1の周期性(N)が12に等しく、かつ前記第2の周期性(M)が8に等しいこと、又は
iv)前記第1の周期性(N)が15に等しく、かつ前記第2の周期性(M)が10に等しいこと、又は
v)前記第1の周期性(N)が18に等しく、かつ前記第2の周期性(M)が12に等しいこと、のうちの1つであることと、を特徴とする、プリント回路基板。
【請求項8】
-前記少なくとも1つの送信機コイルに通電するための交番信号を生成するための少なくとも1つの励起回路と、
-前記第1のセットの受信機コイル及び前記第2のセットの受信機コイルから得られた信号を評価するための評価回路と、を更に備える、請求項7に記載のプリント回路基板。
【請求項9】
前記少なくとも1つの励起回路及び前記評価回路が、前記プリント回路基板上に装着された単一の集積回路デバイス内に実装されている、請求項8に記載のプリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、誘導型角度センサ及び誘導型トルクセンサの分野に関し、より具体的には、送信機コイル、第1のセットの受信機コイル、第1の移動可能な結合素子、第2のセットの受信機コイル、及び第2の移動可能な結合素子を備えるタイプの誘導型角度センサ及び誘導型トルクセンサに関する。本発明はまた、誘導型角度センサ又は誘導型トルクセンサでの使用に好適なプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導型角度センサは、当技術分野で既知である。それらは、物理的接触なしに角度位置を測定することができるという利点を提供し、したがって、機械的な摩耗、傷、摩擦などの問題を回避する。それらは、典型的には、励起コイル(「送信機コイル」としても知られている)及び複数の検出コイル(「受信機コイル」としても知られている)を備える。励起コイルは、結合素子の角度位置に応じて、受信機コイルのセットに結合される、交番磁場を生成する。受信機コイルから得られた信号は、エレクトロニクス回路で処理され、角度位置は、これらの信号に基づいて判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/319467号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第3885711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、2つのセットの受信機コイルと、2つの移動可能な素子と、これらの移動可能な素子間の角度を判定するための電子回路と、を有する誘導型角度センサに関する。これらの結合素子がトルクバーに接続されている場合、結合素子間の角度は、トルクバーに加わるトルクと関係している。
【0005】
特許文献1は、少なくとも1つの励起コイル、少なくとも1つの発振器回路、ステータ回路基板、少なくとも2つの回転子、及び評価手段を備える、自動車用誘導型トルクセンサを開示する。
【0006】
改善又は代替のための余地が常にある。
【0007】
本発明の実施形態の目的は、誘導型角度センサと、そのような角度センサを備えるトルクセンサと、そのような角度センサで用いるプリント回路基板と、を提供することである。
【0008】
本発明の実施形態の目的は、以下の特徴のうちの1つ以上を有する誘導型角度センサ及び/又はトルクセンサを提供することである:同様のサイズ(例えば、同一径の結合素子)を有する既存の解決策と比較して、同じ又は改善された測定範囲、同じ又は改善された精度(例えば、同じ又は低減された誤差)、及び好ましくはこれらの全て。
【0009】
本発明の実施形態の目的は、同様の測定範囲及び/又は同様の精度(例えば、同様の誤差)を有する既存の解決策と比較して、より小さい寸法(例えば、より小径の結合素子)を有する誘導型角度センサ及び/又はトルクセンサを提供することである。
【0010】
本発明の実施形態の目的は、既存の解決策と比較して、同様の寸法及び同様の精度を有するが、より単純及び/又は低コスト及び/又は製造が容易である、誘導型角度センサ及び/又はトルクセンサを提供することである。
【0011】
本発明の実施形態の目的は、自動車環境での使用に好適な誘導型センサ及び/又はトルクセンサを提供することである。
【0012】
本発明の実施形態の目的は、産業環境又はロボット環境での使用に好適な誘導型センサ及び/又はトルクセンサを提供することである。
【0013】
これらの目的は、本発明の実施形態によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様によれば、本発明は、誘導型角度センサであって、交番磁場を生成するための少なくとも1つの送信機コイル(例えば、TX)と、該少なくとも1つの送信機コイルに通電するための交番信号を生成するための少なくとも1つの励起回路と、各々が第1の周期性Nを有する幾何形状を有する、第1のセットの受信機コイル(例えば、RX1a、RX1b、RX1c)と、各々が第1の周期性Nよりも小さい第2の周期性Mを有する幾何形状を有する、第2のセットの受信機コイル(例えば、Rx2a、RX2b、RX2c)と、第1のセットの受信機コイル及び第2のセットの受信機コイルから得られた信号を評価するための評価回路と、少なくとも1つの送信機コイル(例えば、TX)と第1のセットの受信機コイル(例えば、RX1a、RX1b、RX1c)との間に誘導結合を提供するための第1の移動可能な結合素子(「第1のターゲット」とも称される)であって、該第1の周期性Nを有する周期的な幾何形状を有する、第1の移動可能な結合素子と、少なくとも1つの送信機コイルと第2のセットの受信機コイル(例えば、Rx2a、RX2b、RX2c)との間に誘導結合を提供するための第2の移動可能な結合素子(「第2のターゲット」とも称される)であって、該第2の周期性Mを有する周期的な幾何形状を有する、第2の移動可能な結合素子と、を備え、第1の周期性N及び第2の周期性Mの比率が、1.5に等しい、誘導型角度センサを提供する。
【0015】
驚くべきことに、本発明者らは、このような誘導型角度センサの精度が、実質的に同じ角度範囲を有するが、第1の周期性と第2の周期性との整数比を有する誘導型角度センサの精度よりも、信号対ノイズ比(SNR)がより優れているだけでなく、特にクロストークがはるかに低いため、はるかに優れていることを見出した。
【0016】
第2の結合素子は、第1の結合素子との間に角度を形成するように、第1の結合素子に対して移動可能である。
【0017】
少なくとも1つの送信機コイル及び複数の受信機コイルは、単一基板(例えば、プリント基板、PCB)上に実装され得るか、又は2つの別個のPCB上に実装され得る。
【0018】
実施形態では、誘導型角度センサは、第1のセットの受信機コイル及び受信機コイルの第2のセットの受信機コイルの両方によって受信される磁場を生成するように配置された、単一の送信機コイルのみを備える。
【0019】
実施形態では、誘導型角度センサは、第1のセットの受信機コイルによって受信される磁場を生成するための第1の送信機コイルと、第2のセットの受信機コイルによって受信される磁場を生成するための第2の送信機コイルと、を含む、2つの送信機コイルを備える。
【0020】
実施形態では、励起回路及び評価回路は、集積半導体デバイス(「チップ」とも称される)に実装される。
【0021】
評価ユニットは、第1のセットの受信機コイルから得られた信号に基づいて、第1の角度値を判定することと、第2のセットの受信機コイルから得られた信号に基づいて、第2の角度値を判定することと、任意選択的にまた、第1の角度値と第2の角度値との間の角度差を判定することと、を行うように構成され得る。評価ユニットはまた、角度差に基づいて、トルク値を判定するようにも構成され得る。
【0022】
集積半導体デバイスは、第1の角度値、第2の角度値、角度差(判定された場合)、及びトルク値(判定された場合)のうちの1つ以上を出力し得る。
【0023】
誘導型角度センサは、第1の受信機コイル及び第2の受信機コイルに一般的に使用される単一の送信機コイルを備え得る。代替的に、誘導型角度センサは、第1のセットの受信機コイル用のものと、第2のセットの受信機コイル用のものと、の2つの送信機コイルを備え得る。
【0024】
実施形態では、評価回路は、第1のセットの受信機コイルから得られた信号に基づいて、第1の角度値(α1)を判定することと、第2のセットの受信機コイルから得られた信号に基づいて、第2の角度値(α2)を判定することと、第1の角度値(α1)と第2の角度値(α2)との間の差を判定することと、を行うように構成されている。
【0025】
実施形態では、第1の周期性Nは6に等しく、第2の周期性Mは4である。
【0026】
実施形態では、第1の周期性Nは9に等しく、第2の周期性Mは6である。
【0027】
実施形態では、第1の周期性Nは12に等しく、第2の周期性Mは8である。
【0028】
実施形態では、第1の周期性Nは15に等しく、第2の周期性Mは10である。
【0029】
実施形態では、第1の周期性Nは18に等しく、第2の周期性Mは12である。
【0030】
(N=6又は9又は12)との組み合わせは、上記の利点に加えて、相対的に広い以下の測定範囲を提供するので、自動車用途での使用に特に有用である:±15°(N=6、M=4の場合)、±10°(N=9、M=6の場合)、±7.5°(N=12、M=8の場合)。
【0031】
測定範囲は、機能範囲(典型的には、±5%)を含むだけでなく、機能安全のための追加の範囲も含むので、(N=6又はN=9)との組み合わせは、特に有利である。
【0032】
実施形態では、第1のセットの受信機コイルは二相ループ構造を有し、かつ第2のセットの受信機コイルは二相ループ構造を有する。
【0033】
実施形態では、第1のセットの受信機コイルは二相ループ構造を有し、かつ第2のセットの受信機コイルは三相ループ構造を有する。
【0034】
実施形態では、第1のセットの受信機コイルは三相ループ構造を有し、かつ第2のセットの受信機コイルは二相ループ構造を有する。
【0035】
実施形態では、第1のセットの受信機コイルは三相ループ構造を有し、かつ第2のセットの受信機コイルは三相ループ構造を有する。
【0036】
実施形態では、第1のセットの受信機コイル及び第2のセットの受信機コイルのうちの少なくとも1つは三相ループ構造を有し、少なくとも1つの送信機コイルと、第1のセットの受信機コイルと、第2のセットの受信機コイルと、は、単一の多層プリント回路基板上に実装されている。
【0037】
一方のセットのコイルによって誘導される信号の第2の高調波は、他方のセットのコイルによって、高調波周波数の3.0倍又は1.33倍として見られるが、この周波数に敏感でないことは、本実施形態の利点である。多層プリント回路基板はまた、上記の集積半導体デバイスを含み得る。
【0038】
好ましくは、多層PCBは、第1の移動可能な結合素子と第2の移動可能な結合素子との間に配置されている。そうすることによって、コイルと、対応する移動可能な結合素子との間の距離を縮めることができ、一方、受信信号は十分に大きく、PCBと移動可能な素子との間の物理的間隔(エアギャップ)は、接触を回避するのに十分に大きい。
【0039】
実施形態では、この多層PCBは、6層PCBである。第1のセットの受信機コイルは、主に2つの隣接する層上に実装され得、第2のセットの受信機コイルは、主に2つの他の隣接する層に実装され得、2つの内側層は、主に遮蔽目的のため(例えば、クロストークを防止又は低減するため)に使用され得る。
【0040】
実施形態では、プリント回路基板は、4層プリント回路基板である。
【0041】
驚くべきことに、三相ループ構造は、第3の高調波及び第9の高調波に実質的に影響を受けないので、第1のセットのコイルで誘導された信号の第2の(及び第6の)高調波が、第2のセットのコイルで第3の(及び第9の)高調波妨害として経験され得る(比率1.5のため)という事実にも関わらず、周期性間の比率が係数1.5であり、かつ第1のセットの受信機コイル及び第2のセットの受信機コイルのうちの少なくとも1つが三相ループ構造で実装される場合、6層PCBは必要とされないことが見出された。
【0042】
第2の態様によれば、本発明はまた、誘導型トルクセンサであって、トーションバーと、第1の態様による誘導型角度センサと、を備え、第1の移動可能な結合素子及び第2の移動可能な結合素子が、トーションバーに接続されている、誘導型トルクセンサを提供する。(例えば、トーションバーの両端)。
【0043】
実際のトルク値は、評価回路によって計算され得、集積半導体デバイスによって出力され得る。代替的に又は追加的に、評価回路は、2つの角度位置、及び/若しくはそれらの間の差を出力し得るか、又はトルク値は、評価回路の外側、例えば、集積半導体デバイスに接続された電子制御ユニット(ECU)内で計算され得る。
【0044】
第3の態様によれば、本発明はまた、(例えば、第1の態様による誘導型角度センサ、又は第2の態様による誘導型トルクセンサでの使用に好適な)プリント回路基板であって、交番磁場を生成するための少なくとも1つの送信機コイル(例えば、TX)と、各々が第1の周期性Nを有する幾何形状を有する、第1のセットの受信機コイル(例えば、RX1a、RX1b、RX1c)と、各々が第1の周期性Nよりも小さい第2の周期性Mを有する幾何形状を有する、第2のセットの受信機コイル(例えば、Rx2a、RX2b、RX2c)と、を備え、プリント回路基板が、4層のみを含み、第1の周期性N及び第2の周期性Mの比率N/Mが、1.5に等しい、プリント回路基板を提供する。
【0045】
実施形態では、第1の周期性Nは6に等しく、第2の周期性Mは4である。
【0046】
実施形態では、第1の周期性Nは9に等しく、第2の周期性Mは6である。
【0047】
実施形態では、第1の周期性Nは12に等しく、第2の周期性Mは8である。
【0048】
実施形態では、第1の周期性Nは15に等しく、第2の周期性Mは10である。
【0049】
実施形態では、第1の周期性Nは18に等しく、第2の周期性Mは12である。
【0050】
実施形態では、プリント回路基板は、該少なくとも1つの送信機コイルに通電するための交番信号を生成するための少なくとも1つの励起回路と、第1のセットの受信機コイル及び第2のセットの受信機コイルから得られた信号を評価するための評価回路と、を更に備える。
【0051】
実施形態では、少なくとも1つの励起回路及び評価回路は、プリント回路基板上に装着された単一の集積回路デバイス内に実装されている。
【0052】
第4の態様によれば、本発明はまた、誘導型角度センサであって、交番磁場を生成するための少なくとも1つの送信機コイルと、該少なくとも1つの送信機コイルに通電するための交番信号を生成するための少なくとも1つの励起回路と、各々が第1の周期性Nを有する幾何形状を有する、第1のセットの受信機コイルと、各々が第1の周期性Nよりも小さい第2の周期性Mを有する幾何形状を有する、第2のセットの受信機コイルと、第1のセットの受信機コイル及び第2のセットの受信機コイルから得られた信号を評価するための評価回路と、少なくとも1つの送信機コイルと第1のセットの受信機コイルとの間に誘導結合を提供するための第1の移動可能な結合素子であって、該第1の周期性Nを有する周期的な幾何形状を有する、第1の移動可能な結合素子と、少なくとも1つの送信機コイルと第2のセットの受信機コイルとの間に誘導結合を提供するための第2の移動可能な結合素子であって、該第2の周期性Mを有する周期的な幾何形状を有する、第2の移動可能な結合素子と、を備え、第1の周期性N及び第2の周期性Mの比率N/Mが、4/3、6/5、5/2、及び7/2からなる群から選択された非整数値であり、少なくとも1つの送信機コイルと、第1のセットの受信機コイルと、第2のセットの受信機コイルと、は、単一の4層プリント回路基板上に実装されている、誘導型角度センサを提供する。
【0053】
任意選択的に、第1のセットの受信機コイル及び第2のセットの受信機コイルのうちの少なくとも1つは、三相ループ構造を有する。
【0054】
これらの値のうちの1つに等しい比率N/Mを有する第1のセットの受信機コイル及び第2のセットの受信機コイルを有する誘導型角度センサは、特に、無視できる程度のクロストークに関して、N/M=1.5である誘導型角度センサと同じ特性の多くを有することを示すことができる。したがって、複数のコイルは、遮蔽層が必要とされないため、4層PCB上に実装することができる。このことは、(6層PCBと比較して)製造が容易であり、したがって、安価である解決策をもたらす。
【0055】
第5の態様によれば、本発明はまた、誘導型トルクセンサであって、トーションバーと、第4の態様による誘導型角度センサと、を備え、第1の移動可能な結合素子及び第2の移動可能な結合素子が、トーションバーに接続されている、誘導型トルクセンサを提供する。(例えば、トーションバーの両端)。
【0056】
評価回路は、実際のトルク(例えば、典型的には、実際のトルクに比例する上述の角度差)を示す信号を出力するように構成され得る。
【0057】
第6の態様によれば、本発明はまた、第4の態様による誘導型角度センサ、又は第5の態様による誘導型トルクセンサでの使用に好適なプリント回路基板であって、交番磁場を生成するための少なくとも1つの送信機コイルと、各々が第1の周期性Nを有する幾何形状を有する、第1のセットの受信機コイルと、各々が第1の周期性Nよりも小さい第2の周期性Mを有する幾何形状を有する、第2のセットの受信機コイルと、を備え、プリント回路基板が、4層のみを含み、第1の周期性N及び第2の周期性Mの比率N/Mが、3/2、4/3、6/5、5/2、及び7/2からなる群から選択された非整数値である、プリント回路基板を提供する。
【0058】
任意選択的に、第1のセットの受信機コイル及び第2のセットの受信機コイルのうちの少なくとも1つは、三相ループ構造を有する。
【0059】
実施形態では、第1のセットの受信機コイルは三相ループ構造を有し、かつ第2のセットの受信機コイルは二相ループ構造を有する。
【0060】
実施形態では、第1のセットの受信機コイルは二相ループ構造を有し、かつ第2のセットの受信機コイルは三相ループ構造を有する。
【0061】
実施形態では、第1のセットの受信機コイルは三相ループ構造を有し、かつ第2のセットの受信機コイルは三相ループ構造を有する。
【0062】
実施形態では、比率は2.5に等しく、Nは15に等しく、Mは6に等しい。
【0063】
実施形態では、プリント回路基板は、該少なくとも1つの送信機コイルに通電するための交番信号を生成するための少なくとも1つの励起回路と、第1のセットの受信機コイル及び第2のセットの受信機コイルから得られた信号を評価するための評価回路と、を更に備える。
【0064】
実施形態では、少なくとも1つの励起回路及び評価回路は、プリント回路基板上に装着された単一の集積回路デバイス内に実装されている。
【0065】
本発明の特定の及び好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載されている。従属請求項からの特徴は、必要に応じて独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と組み合わせることができ、単に特許請求の範囲に明示的に記載されるものだけではない。本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】(A)は本発明の一実施形態による、トルクセンサの概略図を示す。これは、本発明の一実施形態による角度センサと、入力軸部分及び出力軸部分に装着されたトルクバーとを備え、(B)はN個の突出部を有する第1の結合素子の例解的な例を示し(本例では、N=9)、(C)は複数のコイルを備える、プリント回路基板の例解的な例を示し、(D)はM個の突出部を有する第2の結合素子の例解的な例を示す(本例では、M=6)。
図2A】少なくとも1つの送信機コイル及び第1のセットの受信機コイルを備える基板に対して移動可能に装着された、図1(B)の第1の結合素子の例解的な例を示し、これらの受信機コイルは、第1の結合素子と同じ周期性を有する(本例では、N=9)。
図2B】少なくとも1つの送信機コイル及び第2のセットの受信機コイルを備える基板に対して移動可能に装着された、図1(D)の第2の結合素子の例解的な例を示し、これらの受信機コイルは、第2の結合素子と同じ周期性を有する(本例では、M=6)。
図3】本発明の実施形態で使用され得る電子回路のハイレベルブロック図を示す。
図4A】(N=9、M=6)を有する誘導型角度センサが、(N=18、M=9)を有する誘導型角度センサと同じ測定範囲(すなわち、20°又は±10°)を有することを例解するグラフを示す。
図4B】本発明の実施形態で使用され得るような、N及びMの5つの例解的な組み合わせに対する角度範囲を示す。
図5】周期性の関数として、受信機コイルから得られた信号の典型的な信号強度のグラフを示す。
図6】結合素子及び受信機コイルの周期性(すなわち、突出部の数)の関数としての典型的なノイズ量(任意の単位)を示す曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図面は、概略のみであり、非限定的である。図面では、素子のいくつかのサイズは、例解目的上、誇張され、縮尺どおりに描画されていない場合がある。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。異なる図面では、同じ又は同様の参照符号(例えば、同じモジュロ100)は、典型的には、同じ又は類同の素子を指す。
【0068】
本発明は、特定の実施形態に関して及び特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0069】
本明細書及び特許請求の範囲における第1の、第2のなどの用語は、同様の要素を区別するために使用され、時間的、空間的、順位付け、又は任意の他の様式のいずれかで、必ずしも順序を記述するためではない。そのように使用される用語は、適正な状況下で交換可能であり、本明細書に記載の本発明の実施形態は、本明細書に記載又は例解される以外の順序で動作可能であることを理解されたい。
【0070】
本明細書及び特許請求の範囲における上(top)、下(under)などの用語は、説明の目的ために使用され、必ずしも相対的な位置を説明するために使用されるわけではない。そのように使用される用語は、適正な状況下で交換可能であり、本明細書に記載の本発明の実施形態は、本明細書に記載又は例解される以外の配向で動作可能であることを理解されたい。
【0071】
特許請求の範囲において使用される「備える(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されるものと解釈されるべきではなく、他の要素又はステップを除外しないことに留意されたい。したがって、述べられた特徴、整数、ステップ又は言及された構成要素の存在を指定するものと解釈されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ若しくは構成要素、又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。したがって、「手段A及びBを備えるデバイス」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなるデバイスに限定されるべきではない。これは、本発明に関して、デバイスのただ関連する構成要素が、A及びBであることを意味する。
【0072】
本明細書全体を通して「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な個所における「一実施形態では」又は「実施形態では」という句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではないが、そうである場合もある。更に、特定の特徴、構造又は特性は、本開示から当業者には明らかであるように、1つ以上の実施形態において、任意の好適な様式で組み合わせることができる。
【0073】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴が、本開示を合理化し、様々な発明の態様のうちの1つ以上の理解を支援する目的で、単一の実施形態、図面、又はそれらの説明にまとめられることがあることを理解されたい。しかしながら、開示の本方法は、特許請求される発明が、各特許請求項に明示的に列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、上記の単一の開示された実施形態の全ての特徴よりも少ない。したがって、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、この詳細な説明に明示的に組み込まれ、各特許請求項は、本発明の別個の実施形態として独立している。
【0074】
更に、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかではあるが他ではない特徴を含むが、当業者によって理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内であることを意味し、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲では、特許請求される実施形態のいずれも、任意の組み合わせで使用することができる。
【0075】
本明細書に提供される説明では、多数の具体的な詳細が記載されている。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施され得ることが理解される。他の例では、周知の方法、構造、及び技法は、本説明の理解を曖昧にしないために、詳細に示されていない。
【0076】
本文書では、「励起コイル」及び「送信機コイル」という用語は同じ意味である。
【0077】
本文書では、「受信機コイル」及び「検出コイル」という用語は同じ意味である。
【0078】
本文書では、「結合素子」及び「ターゲット」及び「回転子」という用語は同じ意味である。
【0079】
本文書では、「第1のコイルセット」という表現は、文脈に応じて、少なくとも1つの送信機コイルの有無に関わらず「第1のセットの受信機コイル」を指し得る。
【0080】
本文書では、「第2のコイルセット」という表現は、文脈に応じて、少なくとも1つの送信機コイルの有無に関わらず「第2のセットの受信機コイル」を指し得る。
【0081】
本文書では、移動可能なターゲットの「周期性」は、突出部の数を指し得る。
【0082】
本文書では、移動可能なターゲットの「機械的角度」を、その周期性で除算した、移動可能なターゲットの「電気的角度」として計算され得る。
【0083】
本文書では、sqrt()は、平方根関数を意味する。
【0084】
本発明は、2つのセットの受信機コイルを有し、かつ(例えば、特許文献1に記載されるものと同様のタイプの)2つの移動可能な結合素子を有する、誘導型角度センサに関する。考察を容易にするために、第1のターゲットは、第1の周期性N(例えば、N個の突出部)を有し、第2のターゲットは、第2の周期性M(例えば、M個の突出部)を有し、ここで、N及びMは、整数値であると仮定される。特許文献1では、Nの値は、Mの整数倍であり、N/Mの好ましい比率は、2.0に等しいとしている。角度周期性15°を有する(N=30、及びM=15)を有する誘導型センサ、及び角度周期性20°を有する(N=18、及びM=9)を有する別の誘導型センサの例をあげる。そのような組み合わせは、ほとんど測定誤差をもたらさないとされる。
【0085】
本発明者らは、測定誤差を大幅に増加させることなく、同様の測定範囲を有する、誘導型角度センサを見出すことを望んだ。
【0086】
彼らは実験を開始し、驚くべきことに、全ての関連する態様を考慮に入れると、同様のサイズ(例えば、同じ外径のターゲット)であるが、1.5に等しい比率N/Mを有する誘導型角度センサが、同じ測定範囲を有する(N/M=2)の先行技術のセンサよりも低い測定誤差をもたらすことを見出した。これは、予想外であった。又は別の言い方をすると、彼らは、同じ測定範囲及び同じ測定誤差を有する誘導型角度センサが、より小さいサイズ又は形状因子で実装され得、したがって、より低コストで実装され得ることを見出した。これは、特に、自動車市場が非常に競争の激しい市場であることと、特許文献1が、12年よりも前に既に公開されていることと、を考えると、大きな驚きであった。
【0087】
本発明の原理は、以下でより詳細に説明される。N=18及びM=9(比率N/M=2)を有する上記の先行技術のセンサは、「基準センサ」と称される。
【0088】
ここで図を参照する。
【0089】
図1(A)は、角度センサ101及びトルクバー141を備えるトルクセンサ100の概略図を示す。トルクバー141は、一端で入力軸142に接続され得、その他端で出力軸143に接続され得る。
【0090】
角度センサ101は、
-交番磁場を生成するための少なくとも1つの送信機コイル(例えば、ただ1つの送信機コイル、又は2つの送信機コイルTx1、Tx2)であって、例えば、図2A及び図2Bに例解されるように、略円形状を有し得る、少なくとも1つの送信機コイルと、
-該少なくとも1つの送信機コイルに通電するための交番信号(例えば、正弦波電流)を生成するための少なくとも1つの励起回路321(例えば、図3を参照のこと)と、
-各々が第1の周期性Nを有する幾何形状を有する、第1のセットの受信機コイルRx1a、Rx1b、Rx1cであって、例えば、二相システムの場合、2つの受信機コイルが、互いに対して90°位相シフトされるか、又は、三相システムの場合、互いに対して120°位相シフトされる、第1のセットの受信機コイルRx1a、Rx1b、Rx1cと、
-各々が第1の周期性Nよりも小さい第2の周期性Mを有する幾何形状を有する、第2のセットの受信機コイルRx2a、Rx2b、Rx2cと、
-第1のセットの受信機コイル及び第2のセットの受信機コイルから得られた信号を評価するための評価回路320と、
-少なくとも1つの送信機コイルと第1のセットの受信機コイルとの間に誘導結合を提供するための第1の移動可能な結合素子131(「第1のターゲット」又は「第1の回転子」とも称される)であって、該第1の周期性Nを有する周期的な幾何形状を有し、図1(D)の例では、360°/9=40°の倍数で角度的に離間された9個の突出部(N=9)を有する形状を有する、第1の移動可能な結合素子131と、
-少なくとも1つの送信機コイルと第2のセットの受信機コイルとの間に誘導結合を提供するための第2の移動可能な結合素子132(「第2のターゲット」又は「第2の回転子」とも称される)であって、該第2の周期性Mを有する周期的な幾何形状を有し、図1(B)~図1(D)の例では、360°/6=60°の倍数で角度的に離間された6個の突出部(M=6)を有する形状を有する、第2の移動可能な結合素子132と、を備え、
第1の周期性N及び第2の周期性Mの比率が、1.5に等しい。
【0091】
単一の送信機コイルは、両方の移動可能なターゲットを励起するのに十分であることに留意されたい。
【0092】
実施形態では、送信機コイルは、全体的な円形状を有する。代替的に、送信機コイルは、全体的なC字形を有する。
【0093】
図1(A)が示唆しているように、第1のターゲット131は、第1のセットのコイルから距離「g」を置いて位置し、第2のターゲット132は、第2のセットのコイルから距離「g」を置いて位置する。好ましい実施形態では、「g」は、0.1~5.0mmの範囲の値、又は0.5~4.0mmの範囲の値、例えば、1.0~3.0mmの範囲の値、又は1.5~2.5mmの範囲の値、例えば、約2.0mmに等しい。値「g」が小さいほど、受信機コイルから得られる信号が大きくなり、したがって、信号対ノイズ比(SNR)が大きくなるが、機械的摩擦を回避するための機械的な公差は小さくなる(すなわち、要件がより高くなる)。
【0094】
図1(B)は、N個の突出部を有する第1の結合素子の例解的な例を示す。示された例では、Nは、9に等しい。
【0095】
図1(C)は、複数のコイル(図1(C)には明示的に示されていないが、例えば、図2A及び図2Bを参照のこと)を備える、プリント回路基板PCB110の例解的な例を示す。PCBはまた、励起回路321及び評価回路320も備え得、好ましくは、(例えば、図3に例解されるように)単一の半導体デバイス128に集積されている。PCBは、典型的には、フレーム(図示せず)に固定して装着されている。
【0096】
図1(D)は、M個の突出部を有する第2の結合素子の例解的な例を示す(本例では、M=6)。
【0097】
図1(A)~図1(D)に示される例では、周期性Nを有する第1のターゲット131は、出力軸143の側に位置し、周期性Mを有する第2のターゲット132は、入力軸142の側に位置するが、本発明はこれらに限定されず、第1のターゲット131を入力軸142に接続し、第2のターゲット132を出力軸143に接続することも当然可能である。
【0098】
図1(B)の例では、PCBは、下部に矩形部分、上部に半円部分を有する特定の形状を有するが、本発明はこれに限定されず、他の形状も可能である。PCBは、単一の6層PCBであり得、第1のセットのコイルは、第1のターゲット131の近くにある、図1(A)の左側に位置する2つの層に実装され、第2のセットのコイルは、第2のターゲット132の近くにある、図1(A)の右側に位置する2つの層に実装され、2つの内層は、一方では、第1のターゲットと第1のセットのコイルとの間のクロストークを低減するための遮蔽として機能し、他方では、第2のターゲットと第2のセットのコイルとの間のクロストークを低減するための遮蔽として機能する。
【0099】
図2Aは、送信機コイルTx1及び第1のセットの受信機コイルRx1a、Rx1b、Rx1cに対して移動可能に装着された、図1(B)の第1の結合素子131、231の例解的な例を示す。これらのコイルは、プリント回路基板に実装され得る(例えば、図1(C)に例解されるが、図2Aには明示的に示されていない)。受信機コイルRx1a、Rx1b、Rx1cは、第1の結合素子231と同じ周期性Nを有する。図2Aに示される具体的な例では、第1の周期性Nは9に等しいが、本発明はこれに限定されず、N以外の値もまた可能である(例えば、図4Bを参照のこと)。
【0100】
図2Aに示される例では、第1のセットの受信機コイルは、互いに120°離間した3つの受信機コイルRx1a、Rx1b、Rx1cを含む。これらの3つの受信機コイルから得られた信号は、三相システムを使用して復号することができる。しかし、本発明はこれに限定されず、90°離間された2つの受信機コイル(図示せず)のみを有する第1のセットの受信機コイルを使用することもまた可能である。これらの2つの受信機コイルから得られた信号は、二相システムを使用して復号することができる。二相システム及び三相復号システムは、当技術分野で周知であり、本発明の主な焦点ではなく、したがって、ここで更に詳細に説明する必要はない。
【0101】
図2Bは、送信機コイルTx2及び第2のセットの受信機コイルRx2a、Rx2b、Rx2cに対して移動可能に装着された、図1(D)の第2の結合素子132、232の例解的な例を示す。これらのコイルは、第1のセットの受信機コイルと同じプリント回路基板に、又は別のプリント回路基板に実装され得る。受信機コイルRx2a、Rx2b、Rx2cは、第2の結合素子232と同じ周期性Mを有する(本例では、M=6であるが、他の値もまた可能であり、例えば、図4Bを参照のこと)。
【0102】
図2Bに示される例では、第2のセットの受信機コイルは、互いに120°離間した3つの受信機コイルを含み、三相コイルシステムを形成するが、本発明はこれに限定されず、90°離間した2つの受信機コイル(図示せず)のみを有する第2のセットの受信機コイルを使用することもまた可能である。
【0103】
実施形態では、第1のセットの受信機コイルは、互いに対して90°位相シフトされた2つのコイルを含み、第2のセットの受信機コイルはまた、互いに対して90°位相シフトされた2つのコイルも含む。
【0104】
実施形態では、第1のセットの受信機コイルは、互いに対して90°位相シフトされた2つのコイルを含み、第2のセットの受信機コイルは、互いに対して120°位相シフトされた3つのコイルを含む。
【0105】
実施形態では、第1のセットの受信機コイルは、互いに対して120°位相シフトされた3つのコイルを含み、第2のセットの受信機コイルは、互いに対して90°位相シフトされた2つのコイルを含む。
【0106】
実施形態では、第1のセットの受信機コイルは、互いに対して120°位相シフトされた3つのコイルを含み、第2のセットの受信機コイルはまた、互いに対して120°位相シフトされた3つのコイルも含む。
【0107】
コイルのレイアウトに詳しくない読者は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献2を参照し得るが、本発明はこれに限定されず、他のコイルレイアウトもまた使用され得る。
【0108】
図3は、本発明の実施形態で使用され得る電子回路のハイレベルブロック図を示すが、本発明はこれに限定されず、他の回路もまた使用され得る。
【0109】
図3の電子回路は、2つの主要なサブ回路である励起回路321及び評価回路320を備える。図3の例では、これらのサブ回路は、単一の集積半導体デバイス328に実装されているが、それは絶対的に必要ではなく、励起はまた、別個の回路、例えば、別個のチップによって実行され得る。
【0110】
図3の電子回路は、(単一の黒い矩形Txによって概略的に例解される)少なくとも1つの送信機コイルに接続されているが、上述したように、2つの個別の送信機コイルTx1、Tx2を使用することもまた可能である。その場合、2つの送信機コイルは、好ましくは、例えば、それらを直列に又は並列に接続することによって、単一の励起信号によって駆動される。送信機コイルTXは、励起回路321の一部であり得るが、それは絶対的に必要ではない。送信機コイルTxは、約1MHz~約20MHzの周波数で励起され得る。励起周波数は、発振器回路の共振周波数よりも高く若しくは低くあり得るか、又は実質的に等しくあり得る。これらの態様は、当技術分野で周知であるが、本発明の主な焦点ではなく、したがって、ここでより詳細に説明する必要はない。
【0111】
図3の電子回路はまた、(3つの黒い矩形Rx1a、Rx1b、Rx1cによって概略的に例解される)第1のセットの受信機コイル、及び(3つの黒い矩形Rx2a、Rx2b、Rx2cによって概略的に例解される)第2のセットの受信機コイルにも接続されている。回路328は、各セットの受信機コイルから信号を受信することと、任意選択的に、増幅器322a、322bを使用してこれらの信号を増幅することと、既知の様式で(例えば、受信信号をベースバンド信号に復調することによって)受信信号を復号することと、を行うように構成されている。復調は、同期整流及び低域フィルタリングを含み得る。復調信号は、例えば、アナログ-デジタル変換器327と、デジタルプロセッサ326(例えば、DSP)と、不揮発性メモリ324(例えば、フラッシュ)に接続されたコントローラ325と、を含む、アナログ又はデジタル回路を使用して更に処理され得る。
【0112】
評価回路320は、第1のセットの受信機コイル及び第1の周期性Nから得られた信号に基づいて(例えば、受信信号に基づいて第1の電気的角度を判定し、この電気的角度を第1の周期性Nで除算することによって)、第1の機械的角度値α1を判定することと、第2のセットの受信機コイル及び第2の周期性Mから得られた信号に基づいて(例えば、受信信号に基づいて第2の電気的角度を判定し、この電気的角度を第2の周期性Mで除算することによって)、第2の機械的角度値α2を判定することと、を行うように構成され得る。2つのターゲット間の相対的な位置は、値α1とα2との間の差に基づいて計算され得る。この相対的な位置は、トーションバー141に加わるトルクを示す(例えば、それに比例する)。角度差及び/又はトルク値は、評価回路320の内部で計算され得、外部プロセッサ、例えば、回路328に接続された電子制御ユニット(ECU、図示せず)に出力され得る。代替的に又は追加的に、角度α1及びα2が出力され得、角度差及び/又はトルクは、該外部プロセッサによって計算され得る。
【0113】
図3に示される電子回路のアーキテクチャは、角度値を得るために、受信機コイルから得られた信号がどのように処理され得るかの一例に過ぎないが、本発明はこれに限定されず、他のアーキテクチャもまた使用され得ることに留意されたい。
【0114】
図4Aは、先行技術からは知られていないが、本発明によって提示されるグラフを示し、第1の周期性N及び第2の周期性Mのいくつかの組み合わせに対する測定範囲を例解する。発明者らは、第1の周期性N及び第2の周期性Mを有する、図1(A)に示されるような構造を有する誘導型角度センサの測定範囲が、次式によって表すことができることを見出した。
測定範囲=360°/LCM(N,M)[1]
式中、LCMは、値N及び値Mの最小公倍数である。
【0115】
より具体的には、図4Aは、以下の2つの「曲線」を示す。
-上部の曲線(黒色)は、第2の周期性Mの固定値(6に等しい)に対する、第1の周期性Nの関数としての測定範囲を示す。図に示すように、この曲線は、複数の相対的に高いピーク(「X」で示す)、すなわち、N=12(2×6)、及びN=18(3×6)、及びN=24(4×6)などに対するピークを提供する。
【0116】
-下部の曲線(灰色)は、第2の周期性Mの固定値(9に等しい)に対する、第1の周期性Nの関数としての測定範囲を示す。図に示すように、この曲線はまた、いくつかの相対的に高いピーク、すなわち、N=18(2×9)、及びN=27(3×9)などに対するピークを提供する。
【0117】
本発明者らは、驚くべきことに、上部の曲線が、比率N/Mが1.5であるN=9及びM=6に対して、追加のピークを示すことを見出した。図4Aから理解することができるように、本発明によって提案され、円によって示されるように、(N=9、M=6、比率=1.5)を有する誘導型角度センサによって得られる範囲±10°は、(N=18、M=9、比率=2)を有する古典的な誘導型角度センサと同じ測定範囲であり、(N=18、M=6、比率=3)を有する古典的な誘導型角度センサと同じ測定範囲である。
【0118】
この観察は、本発明の第1の洞察を例解するが、そのような誘導型角度システムによって得られる精度又は誤差についての手がかりを提供しない。
【0119】
精度又は誤差を説明する前に、図4Bは、本発明の実施形態で使用され得るような、N及びMの5つの例解的な組み合わせに対する角度範囲を列挙する表を提供する。以下が理解され得る:
i)本発明によって提案されるような(N=6、M=4、比率=1.5)の組み合わせは、(N=12、M=6、比率=2)を有する古典的なセンサによって得ることができるものと同じ範囲(すなわち、±15°)を提供し、
ii)本発明によって提案されるような(N=9、M=6、比率=1.5)の組み合わせは、(N=18、M=9、比率=2)を有する古典的なセンサによって得ることができるものと同じ範囲(すなわち、±10°)を提供し、
iii)本発明によって提案されるような(N=12、M=8、比率=1.5)の組み合わせは、(N=24、M=6、比率=4)を有する古典的なセンサによって得ることができるものと同じ範囲(すなわち、±7.5°)を提供する。
【0120】
これらの例から、整数比N/M=2以上を使用する先行技術の解決策と比較して、比率N/M=1.5でより小さい周期性を使用して、同じ範囲を達成し得ることが分かる。このことは、同等の寸法の誘導型角度センサの場合、より強い信号は、ノイズを低下させ、位置ずれに対する感度を低下させる一方で、分解能をわずかに低下させることを意味する。
【0121】
測定範囲は、用途に依存し得ることに留意されたい。例えば、自動車用途でのハンドルのトルクの測定のために、少なくとも10°、又は少なくとも15°、又は少なくとも20°の測定範囲が必要とされ得る。より狭い測定範囲は、他の分野、例えば、特定のロボット及び/又は産業用途に適用可能であり得る。この点において、図4Bのリストは網羅的ではないこと、並びに、N及びMの更なる組み合わせ(N及びMが、1.5の比率を有する整数値である)を容易に見出すことができることに留意されたい。
【0122】
しかし、本発明の基礎となる重要な第2の洞察は、例えば、図4Bに列挙するように、第1の周期性N及び第2の周期性Mの様々な値を有する、図1(A)に例解されるようなタイプの誘導型角度センサの誤差(又は、精度)を理解すること、並びに定量化することができることである。
【0123】
既存の解決策は、所与の測定範囲に対するセンサの分解能を最大化するために、N及びMの値を選択するようである。自動車用途の典型的な測定範囲は、±10°である。「高分解能」は重要であるが、誘導型角度センサの優れた性能にとっても重要な他の因子は、ノイズ及びクロストークである。これらの因子の各々は、次でより詳細に説明する。
【0124】
i)第1の因子:範囲及び分解能
第1のセットの受信機コイル及び第1の移動可能な素子は、第1の周期性Nを有する。第2のセットの受信機コイル及び第2の移動可能な素子は、第2の周期性Mを有する。上記のように、測定範囲は、N及びMの最小公倍数で360°を除算したものである。
【0125】
差分角度の分解能は、値N及びMのうちのより小さい方の分解能によって、したがって、Mによって判定される。分解能は、典型的には、1LSB(最小有効ビット)に対応する機械的角度として定義される。(例えば、事前定義された数のビット、例えば、12ビットを有するADCを有する)所与の評価回路の場合、周期性が高いほど、分解能が高い。より具体的には、12ビットのADCを使用する場合、最小数は0を表し得、最大数は4095を表し得、分解能は、機械角度で表される場合、(360/M)/4096として定義され得るか、又は一般に、分解能=(360°/M)を2のK乗で除算したものとして定義され得、ここで、K=12(12ビットのADCの場合)である。
【0126】
(N=9、M=6、比率=1.5、範囲=±10°)を有する本発明の誘導型角度センサを、(N=18、M=9、比率=2、範囲=±10°)を有する古典的な誘導型角度センサと比較すると、本発明によって提案されたセンサの分解能は、わずか1.5倍だけ低い。
【0127】
ii)第2の因子:ノイズ及び信号強度
高い周期性(すなわち、より大きいN又はM)を有する誘導型センサは、重大な欠点を有する。周期性が増加するにつれて、ターゲットの突出部(又は歯)が小さくなり、効率的に励起されず、ノイズレベルが増加する(すなわち、信号対ノイズ比、SNRが減少する)ので、受信機コイルによって提供される信号の信号強度が弱くなる。
【0128】
これを図5に例解し、周期性の関数としての典型的な信号強度を有するグラフを示す。図に示すように、周期性が大きいほど、信号強度は小さくなる。誘導型センサの信号強度は、その周期性(読み取り:N及びM)並びに寸法(例えば、半径)に大きく依存する。所与の寸法(例えば、半径)に対して、周期性が増加するにつれて、信号強度が低下する。
【0129】
図6は、測定又はコンピュータシミュレーションから得ることができるような、受信機コイルから事前定義された距離を置いて装着された、結合素子及び受信機コイルの周期性(例えば、突出部の数)の関数としての典型的なノイズ量(任意の単位)を示す、例解的な曲線を示す。
【0130】
ノイズは、信号強度に反比例する。したがって、センサのノイズ性能は、信号レベルを増加させることによって改善することができる。「電気角度で表されるノイズ」は、1/信号_強度として得られることに留意されたい。「機械角度で表されるノイズ」を得るために、「電気角度のノイズ」を周期性で除算する必要がある。
【0131】
図6の例は、プリント回路基板110から2.0mmのエアギャップ「g」に配置された、ターゲットコイルの直径5.0cmを有する、図1(A)に例解されるような誘導型角度センサの信号強度をモデル化するコンピュータシミュレーションによって得られた。
【0132】
(N=9、M=6、比率=1.5、範囲=±10°)を有する本発明の誘導型角度センサを、(N=18、M=9、比率=2、範囲=±10°)を有する古典的な誘導型角度センサと比較すると、前者のノイズは、典型的には、後者よりも約29%低く、図6から理解することができるように、N=9に関連するノイズは約32であり、M=6に関連するノイズは約34であるため、(N=9及びM=6)に対する全ノイズは、本発明によって提案されたセンサの
【数1】
に比例し、N=18に関連するノイズは約51であり、M=9に関連するノイズは約32であり、したがって、(N=18及びM=9)を有する古典的なセンサの全ノイズは、
【数2】
に比例する。したがって、本発明によって提案されるように、N=9及びM=6を有するセンサのノイズは、同じ角度範囲(N=18及びM=9)を有する古典的なセンサのノイズよりも約29%低い。これは、N=9及びM=6の例に過ぎないが、N=9及びM=6以外の周期性を有する本発明のセンサにも、同じ又は同様の原理が適用される。
【0133】
iii)第3の因子:クロストーク
理想的には、第1の角度値(例えば、入力軸の角度値)は、第2の角度値(例えば、出力軸の角度値)から独立しており、その逆もまた同様であるが、実際には、単一のプリント回路基板を用いて独立した測定を得るために、クロストークを回避するために、第1のセットのコイルと第2のセットのコイルとの間の遮蔽層が必要とされ得、このことは、そのようなプリント回路基板110(図1(C)を参照のこと)が、少なくとも6つの層(第1のセットの受信機コイル用の2層、2つの遮蔽層、及び第2のセットの受信機コイル用の2層)を有する必要があることを意味する。
【0134】
周期性Nを有する誘導ターゲットは、完全な正弦波によって励起されても、例えば、受信機コイル及び/又は移動可能なターゲットの周期性及び/又は幾何形状に関連する空間変調に起因して、基底周波数、及びN次、2N次、3N次、4N次、5N次、6N次、7N次などの高調波を含む交番磁場を生成する。驚くべきことに、1.5に等しいN/M比を有する、本発明によって提案された誘導型角度センサが、クロストークの点で特に有利であることが見出された。
【0135】
実際、本発明者らは、驚くべきことに、(2つの入力信号が実質的に同じ振幅を有するが、90°位相シフトされた)二相コイルシステムは、奇数次高調波、すなわち、N次、3N次、5N次、7N次、9N次などの高調波に敏感であるが、(3つの入力信号が実質的に同じ振幅を有するが、120°位相シフトされた)三相コイルシステムは、N次、5N次、7N次、11N次、13N次などの高調波に敏感であるが、3N次、9N次、及び3Nの他の倍数次の高調波に敏感でないことを見出した。
【0136】
(周期性Mを有する)第2のコイルセットが、基底周波数を有する信号を送信するとき、それは、(周期性N=1.5×Mを有する)第1のコイルセットによって、基底周波数の1.5倍の周波数を有する信号として「見られる」が、これに敏感ではない。
第2のコイルセットが、第2の高調波(2M)を送信するとき、それは、(3N)として第1のコイルセットによって見られるが、第1のコイルセットが三相システムである場合、この周波数に敏感ではない。
第2のコイルセットが、第3の高調波(3M)を送信するとき、それは、(4.5N)として第1のコイルセットによって見られるが、この周波数に敏感ではない。
第2のコイルセットが、第4の高調波(4M)を送信するとき、それは、(6N)として第1のコイルセットによって見られるが、この周波数に敏感ではない。
第2のコイルセットが、第5の高調波(5M)を送信するとき、それは、(7.5N)として第1のコイルセットによって見られるが、この周波数に敏感ではない。
第2のコイルセットが、第6の高調波(6M)を送信するとき、それは、(9N)として第1のコイルセットによって見られるが、第1のコイルセットが三相システムである場合、この周波数などに敏感ではない。
【0137】
したがって、本発明の(N/M=1.5を有する)誘導型角度センサでは、(周期性Nを有する)第1のコイルセットは、第1のコイルセットが三相システムである場合、(周期性Mを有する)第2のコイルセットによって放出された信号からのクロストークを経験しない。言い換えれば、(周期性Mを有する)第2のコイルセットは、(周期性Nを有する)第1のコイルセットの信号を妨害しない。実際には、シミュレーションにより、N/M=1.5を有する誘導型角度センサのクロストークは、三相システムだけでなく、二相システムでも無視できることが示されている。
【0138】
同様の推論に続いて、(周期性Mを有する)第2のコイルセットもまた、(周期性Nを有する)第1のコイルセットによって放出された信号からクロストークを被らないことを示すことができる。実際、
(周期性Nを有する)第1のコイルセットが、基底周波数を有する信号を送信するとき、それは、(周期性M=N/1.5を有する)第2のコイルセットによって、基底周波数の0.67倍の周波数を有する信号として「見られる」が、この周波数に敏感ではない。
第1のコイルセットが、第2の高調波(2N)を送信するとき、それは、(1.33×M)として第2のコイルセットによって見られるが、この周波数に敏感ではない。
第1のコイルセットが、第3の高調波(3N)を送信するとき、それは、(2M)として第2のコイルセットによって見られるが、この周波数に敏感ではない。
第1のコイルセットが、第4の高調波(4N)を送信するとき、それは、(2.66×M)として第2のコイルセットによって見られるが、この周波数に敏感ではない。
第1のコイルセットが、第5の高調波(5N))を送信するとき、それは、(3.33×M)として第2のコイルセットによって見られるが、この周波数に敏感ではない。
第1のコイルセットが、第6の高調波(6N)を送信するとき、それは、(4×M)として第2のコイルセットによって見られるが、この周波数などに敏感ではない。
【0139】
したがって、本発明の(N/M=1.5を有する)誘導型角度センサでは、(周期性Mを有する)第2のコイルセットは、第2のコイルセットが二相システムで実装されるか三相システムで実装されるかに関わらず、(周期性Nを有する)第1のコイルセットによって放出された信号からのクロストークを経験しない。言い換えれば、(周期性Nを有する)第1のコイルセットは、(周期性Mを有する)第2のコイルセットの信号を妨害しない。
【0140】
これは、第1のセットの受信機コイル及び第2のセットの受信機コイルが、6層PCBよりも製造が複雑でなく、したがって、はるかに安価である、2つの遮蔽層のない4層プリント回路基板上に実装されている場合であっても当てはまることである。
【0141】
第1のセットのコイル及び第2のセットのコイルの相互の独立性は、シミュレーションを介して定量的に調査された。遮蔽層のないモデルであって、N=9、M=6、比率=1.5、Txコイルの直径:38mm、Rxコイルの外径:34mm、Rxコイルの内径:22mm、ターゲットの外径:40mm、ターゲットの内径:20mm、第1のターゲットと第1のセットの受信機コイルとの間のエアギャップ:2.0mm、第2のターゲットと第2のセットの受信機コイルとの間のエアギャップ:2.0mm、PCB厚:1.0mm、第1のターゲットと第2のセットの受信機コイルとの間のエアギャップ:3.0mm、第2のターゲットと第1のセットの受信機コイルとの間のエアギャップ:3.0mmであり、例えば、図1(A)に描示されるように、PCB厚1.0mmを想定している、モデルを使用した。
【0142】
N=9及びM=6を有する本発明の誘導型角度センサについて、以下の結果が見出された:(N=9を有する)第1の移動可能なターゲットが、第1の受信機コイルで10mVの信号を生成し、(M=6を有する)第2の移動可能なターゲットが、第2の受信機コイルで20mVの信号を生成し、(N=9を有する)第1のターゲットが、(M=6を有する)第2のセットのコイルで10μV未満の信号を生成し、(M=6を有する)第2のターゲットが、(N=6を有する)第1のセットのコイルで10μV未満の信号を生成し、0.01°未満の差分角度の誤差をもたらした。
【0143】
これらのシミュレーションはまた、同じ寸法(d=5cm、g=3mm)を有し、遮蔽層のない、N=18及びM=9、比率=2を有する古典的な誘導型角度センサのモデルについても実行された。この場合、(M=9を有する)第2のターゲットは、(N=18を有する)第1のセットのコイルで0.2mVの信号を生成し、0.1°を超える差分角度の誤差をもたらした。
【0144】
要約すると、N/M=1.5である、第1の周期性N及び第2の周期性Mを有する上記のような誘導型角度センサは、N/Mが整数値である、第1の周期性N及び第2の周期性Mを有する古典的な誘導型角度センサの有効な代替物であると結論付けることができる。
【0145】
2つの遮蔽層を含む6層PCBを備える場合、提案された(N/M=1.5を有する)解決策は、周期性の値がより小さく、かつ有意なクロストークがないため、同様の範囲と、わずかに(典型的には、1.5倍)低い分解能と、わずかに(典型的には、1.29倍)低いノイズと、を有する。全体的に見て、このことは、2つの遮蔽層を含み、同じ範囲及び同じ寸法を有する6層PCBにも実装されている古典的な解決策と比較して、わずかに優れた精度を意味する。
【0146】
2つの遮蔽層のない4層PCBを備える場合、提案された(N/M=1.5を有する)解決策は、周期性の値がより小さいが、クロストークがはるかに低いため、同様の範囲と、わずかに(典型的には、1.5倍)低い分解能と、わずかに(典型的には、2.5倍)低いノイズと、を有する。全体的に見て、このことは、遮蔽層のない、同じ範囲及び同じ寸法を有する4層PCBにも実装されている古典的な解決策と比較して、はるかに優れた精度を意味する。
【0147】
上記の説明は、主に、N=9及びM=6を有する誘導型角度センサについて提供されたが、同じ推論はまた、(例えば、図4Bに例解されるようなN及びMの値を有する)N/M=1.5の他の誘導型角度センサにも適用可能である。
【0148】
12ビットのADCを有する例が使用されたが、本発明はこれに限定されず、(例えば、14ビット又は16ビットを有する)他のADCもまた使用され得る。
【符号の説明】
【0149】
100 トルクセンサ(角度センサシステム及びトルクバーを備える)
101 角度センサシステム(複数のコイル、2つのターゲット、電子機器を備える)
110、310 プリント回路基板(PCB)
320 センサデバイス
321 発振器回路
322 増幅器
323 復調器又は整流器&フィルタ
324 NV MEM(例えば、フラッシュ)
325 コントローラ
326 DSP
327 ADC
128、328 集積半導体デバイス(IC又はチップ)
131、231、331 第1の移動可能なターゲット
132、232、332 第2の移動可能なターゲット
141 トーションバー
142 入力軸部分
143 出力軸部分
g エアギャップ
N 第1の周期性
M 第2の周期性
TX 送信機コイル
RX1a、RX1b、RX1c 第1のセットの受信機コイル
RX2a、RX2b、RX2c 第2のセットの受信機コイル
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
【外国語明細書】