(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137753
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】少なくとも1つのSiCバルク単結晶の熱的後処理のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20240927BHJP
C30B 23/06 20060101ALI20240927BHJP
C30B 33/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B23/06
C30B33/02
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024027533
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】23163761
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504398340
【氏名又は名称】エスアイクリスタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト エッカー
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン コワシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ シュー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス シュトックマイアー
(72)【発明者】
【氏名】竹川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】アルント-ディートリヒ ヴェーバー
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BE08
4G077DA02
4G077DA18
4G077FE01
4G077FE11
4G077FE17
4G077HA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】SiCバルク単結晶の熱的後処理のための改善された方法及び装置を提供する。
【解決手段】方法は、軸方向に測定された結晶長を有し、半径方向に測定された結晶直径を有し、軸方向に延在する結晶中心縦軸10を有し、且つ3つの境界面、即ち、底面11、上面12及び外周端面13を備えた、実質的に円筒形の基本形状を有する少なくとも1つのSiCバルク単結晶2の熱的後処理を目的とする。SiCバルク単結晶は、事前の結晶育成の完了後にSiCバルク単結晶に存在する機械的応力を低減するために、後処理温度にされる。ここで、結晶中心立軸から外周端面まで連続的に上昇する半径方向の熱勾配を有する不均質温度プロフィールが、SiCバルク単結晶内に設定され、SiCバルク単結晶の、それを取り囲む自由空間4との間の、熱交換が、3つの境界面(11,12,13)のうちの少なくとも2つで自由熱放射によって行なわれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に測定された結晶長を有し、半径方向に測定された結晶直径を有し、軸方向に延在する結晶中心縦軸(10)を有し、且つ3つの境界面、即ち、底面(11)、上面(12)及び外周端面(13)を備えた、実質的に円筒形の基本形状を有する少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)の熱的後処理方法であって、
a) SiCバルク単結晶(2)が後処理温度にされて、事前の結晶育成の完了後に前記SiCバルク単結晶(2)中に存在する機械的応力を低減し、ここで、
b) 前記結晶中心縦軸(10)から外周端面(13)まで連続的に増加する半径方向温度勾配を有する不均質温度プロフィールが前記SiCバルク単結晶(2)内に設定され、そして、
c) 前記SiCバルク単結晶(2)と、これを取り囲む自由空間(4)との、熱交換が前記3つの境界面(11,12,13)のうちの少なくとも2つの上で自由熱放射により行なわれる
熱的後処理方法。
【請求項2】
前記SiCバルク単結晶(2)と前記周囲の自由空間(4)との熱交換が、3つの境界面(11,12,13)全てにおける自由熱放射によって行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SiCバルク単結晶(2)とこれを取り囲む前記自由空間(4)との熱交換が、前記SiCバルク単結晶(2)の全表面の半径方向表面部分における自由熱放射によって起こり、ここで、前記全表面積が前記3つの境界面(11,12,13)の合計から構成され、前記半径方向表面部分が前記全表面積の63%~83%の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記半径方向温度勾配が、前記結晶中心縦軸(10)から前記結晶直径の半分まで半径方向に延在する前記SiCバルク単結晶(2)の中心領域において0.1K/cmから0.3K/cmの間の値をとるように設定されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記半径方向温度勾配が、前記結晶直径の半分から外周端面にまで延在する前記SiCバルク単結晶(2)の端部領域において0.25K/cmから0.8K/cmの間の値をとるように設定されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記SiCバルク単結晶(2)の周囲にガス雰囲気を設定し、その目的のために、少なくとも1つのケイ素不含有プロセスガス、特にアルゴン、ヘリウム、他の希ガス及び窒素からなる群から選ばれるガス又はこの群からのガスの混合物、を供給することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記結晶長が50mm以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記結晶直径が少なくとも150mmであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記結晶長を前記結晶直径で割ることによって形成されるアスペクト比が、0.05~0.35の範囲内にあることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)の熱的後処理のための装置であって、軸方向に測定された結晶長を有し、半径方向に測定された結晶直径を有し、軸方向に延在する結晶中心縦軸(10)を有し、且つ3つの境界面、即ち、底面(11)、上面(12)及び外周端面(13)を備えた、本質的に円筒状の基本形状を有する装置において、
a)熱的に後処理される前記少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)のための受容空間(4)を備えた熱的後処理用坩堝(3)、
b)前記後処理用坩堝(3)及びその中に載置される前記SiCバルク単結晶(2)を、後処理温度まで加熱して、事前の結晶育成の完了後に前記SiCバルク単結晶(2)内に存在する機械的応力を軽減するための加熱装置(7;21;23,24,25;28)、及び
c) 熱的に後処理される前記少なくとも1つのSiC体積の単結晶(2)に接触して保持する保持面(9)を備えた前記後処理用坩堝(2)に配置された結晶保持具(8)を有する装置であって、
d) ここで、前記保持面(9)は、後処理対象の前記少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)と、前記SiCバルク単結晶(2)の半径方向端部領域においてのみ、接触し、
d1)前記後処理対象の少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)において、結晶中心立軸(10)から外周端面(13)まで連続的に増加する半径方向の熱勾配を有する不均質な温度プロファイルが確立され、そして
d2)前記後処理対象の少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)の、それを取り囲む自由空間との、熱交換が自由熱放射によって、前記3つの境界面(11,12,13)のうちの少なくとも2つの境界面で行なわれ、ここで、前記自由空間が前記受容空間(4)の一部である
装置。
【請求項11】
前記後処理用坩堝(3)の内径が前記結晶直径よりも大きく、その結果、前記SiCバルク単結晶(2)を前記後処理用坩堝(3)に挿入した際に、接線方向に完全に周方向に自由な環状間隙(17)が、前記SiCバルク単結晶(2)の外周端面(13)と前記後処理用坩堝(3)の内壁との間に、存在することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記結晶保持具(8)が環状結晶支持体として設計されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記結晶保持具(8)が、軸方向に測定して1mm~5mmの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記結晶保持具(8)を構成するかそれが含有する保持具材料が、前記後処理用坩堝(3)を構成するかそれが含有する坩堝材料よりも低い熱伝導率を有することを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記結晶保持具(8)を構成するかそれが含有する保持具材料が、前記後処理用坩堝(3)を構成するかそれが含有する坩堝材料よりも高い気孔率を有することを特徴とする請求項10~14のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、特許文献1の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、軸方向に測定された結晶長を有し、半径方向に測定された結晶直径を有し、軸方向に延在する結晶中心縦軸を有し、3つの境界面、即ち、底面、頂面及び外周端面を備えた本質的に円筒状の基本形状を持つ、少なくとも1つのSiCバルク単結晶の熱的後処理のための方法に関する。本発明は、また、少なくとも1つのこのようなSiCバルク単結晶の熱的後処理のための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
その優れた物理的、化学的、電気的及び光学的特性により、半導体材料炭化ケイ素(SiC)は、電力用電子半導体部品用、高周波部品用及び特殊発光半導体部品用の出発材料としても使用されている。これらの部品には、可能な限り大きな基板直径を有し可能な限り品質の高いSiC基板(=SiCウエハ)が求められている。その基本は高品位SiCバルク単結晶である。
【0004】
このようなSiCバルク単結晶は、通常、物理的蒸着(PVT)によって、例えば特許文献2に記載されている昇華方法によって、製造される。この方法では、単結晶SiCディスクを適切なソース材料と共にSiC種結晶として結晶育成坩堝に導入する。制御された温度、圧力及びガス条件下で、ソース材料は昇華され、ガス状種(=SiC成長気相)がSiC種結晶上に堆積され、SiCバルク単結晶を成長させる。
【0005】
ディスク形状の単結晶SiC基板は、これらのSiCバルク単結晶から切り出され、次いで、これに、部品製造プロセスの一部として、その表面の多段階研磨処理の後に、特にSiCから成る少なくとも1つのエピタキシャル層が、設けられる。一般に、SiC基板からの欠陥は、適用されたエピタキシャル層によって受け継がれ、従って、部品特性の劣化につながる。従って、部品の品質は、育成されたSiCバルク単結晶及びそれから得られるSiC基板の品質に大きく依存する。
【0006】
使用されるSiC基板の幾何学的形状は、構成要素のエピタキシャル層の製造にとって非常に重要である。例えば、エピタキシー反応器において、均質で高品質のエピタキシャル層成長のために非常に重要である良好な熱結合は、本質的に、顕著な湾曲のないSiC基板でのみ達成される。対照的に、幾何学的特性に劣るSiC基板、即ち、特に過度の湾曲及び/又は反りを伴うSiC基板、は、必然的に、品質低下又はエピタキシープロセスからの歩留まり低下を招く。
【0007】
特許文献3には、SiCバルク単結晶内の熱応力を低減し従って結晶品質を改善するための、SiCバルク単結晶の熱的後処理方法が記載されている。その結晶育成後、SiCバルク単結晶は、付加的な処理ステップの間、坩堝中で焼き戻され、そこで、SiC粉末中に完全に埋め込まれる。熱的後処理の間、SiCバルク単結晶中の温度場はできるだけ等温又は均質である。好ましくは、中心縦軸(=軸)の方向に測定される温度差は、軸方向の機械的応力の均一化に有利なように、可能な限り低く、最大2Kに、設定される。しかしながら、そのような等温温度場は、SiCバルク単結晶中の応力場に全体的な影響を及ぼすことができるだけであり、従って、結晶構造中に存在する機械的応力は部分的に緩和されるにすぎない。
【0008】
特許文献4には、SiCバルク単結晶の熱的後処理の更なる方法が記載されており、この方法は、そこから得られるSiC基板の幾何学的形状に好ましい影響を与えることを意図している。この後処理の間、SiCバルク単結晶は、結晶育成の間に設定された軸方向温度勾配と反対方向の軸方向温度勾配を受ける。焼き戻し対象のSiCバルク単結晶は、グラファイト中間片上に静止することができる。
【0009】
特許文献5には、SiCバルク単結晶の熱的後処理のための別の方法が記載されており、この方法では、SiCバルク単結晶は、粉末化された多結晶SiCソース材料に直接的又は間接的に完全に埋め込まれている。間接的埋め込みの場合、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶は、低密度の多孔質グラファイトで作られた薄壁容器中に置かれ、次に、多結晶SiCソース材料の内部に置かれる。焼き戻しは、できるだけ均一な温度で行なわれるのがよい。軸方向及び半径方向の温度勾配の両方が最小化されるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第23163761.2号明細書
【特許文献2】米国特許第8,865,324B2号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102009048868B4号明細書
【特許文献4】米国特許第8,449,671B2号明細書
【特許文献5】米国特許第7,767,022B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、SiCバルク単結晶の熱的後処理のための更に改善された方法並びに更に改善された装置を提供することである。
【0012】
方法の目的を達成するために、請求項1の特徴による方法が開示される。本発明による方法では、SiCバルク単結晶は、事前の結晶育成の完了後にSiCバルク単結晶に存在する機械的応力を低減するために、処理後温度にされる。ここで、結晶中心立軸から外周端面に向かって連続的に増加する半径方向熱勾配を有する不均質温度プロフィールが、SiCバルク単結晶に設定され、3つの境界面のうちの少なくとも2つにおいて、自由熱放射によって、それを取り囲む自由空間を有するSiCバルク単結晶の熱交換が起こる。
【0013】
SiCバルク単結晶の底面は、特に本質的に円形であり、好ましくは本質的に平坦である。底面は、必須ではないが、好ましくは、SiCバルク単結晶の育成のために使用されるSiC種結晶の下面によって形成される。或いは、SiC種結晶は、熱的後処理に先立つ事前の結晶育成中に成長したSiCバルク単結晶の部分から分離することもできる。SiCバルク単結晶の上面は底面と反対側にある。それは、特に、平らでなく、好ましくはキャップ形状又はドーム形状をしている。外周端面は、本質的に、円筒面の形態をしている。SiCバルク単結晶は、その育成中に、軸方向に成長する。「軸方向」という用語は、ここでは、結晶の中心縦軸に平行な又はそれに沿った方向を指し、「半径方向」という用語は、それに垂直な方向を指し、「接線方向」という用語は、結晶中心立軸の周りに延在する円周方向を指す。
【0014】
熱的後処理中に焼き戻し対象のSiCバルク単結晶中に広がる半径方向の熱勾配は、結晶構造中の機械的応力の低減にとって、これまで既知の後処理プロセスの主な焦点であった軸方向の熱勾配よりも、より重要であることが認識されている。これは、特に結晶直径が大きいほど当てはまる。
SiCバルク単結晶の昇華育成中、成長界面は温度場の等温線で規定される。湾曲した成長界面は高品位SiCバルク単結晶を生成するための重要な前提条件である。従って、SiCバルク単結晶は、育成中、湾曲した温度場で成長する。湾曲した成長界面では種々の温度が支配する。このことは、特に、成長界面の中心と端部領域との間の温度比較に当てはまる。これらの温度差は、成長中のSiCバルク単結晶中に、転位と機械的応力を発生させる。後でSiCバルク単結晶から切り出されるSiC基板も、結晶育成中に異なる温度で成長した部分領域を有する。SiC基板に生じる機械的応力は、前述の湾曲及び/又は反りの1つの原因である。育成中に設定された熱場の曲率も、また、半径方向に相当程度広がる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ここで本発明が登場する。結晶中心縦軸から始まり半径方向に連続的に増加する熱勾配が、SiCバルク単結晶における所望の応力減少を達成し、その結果、SiCバルク単結晶から得られるSiC基板の幾何学的形状にプラスの影響を与えるために、特に効果的な熱的後処理方法であることが分かった。このような連続的に増加する半径方向の熱勾配は、有利には、SiCバルク単結晶の結晶構造における応力バランスの減少又は好ましくは最小化にさえつながる。この文脈では、応力とは、特に、結晶格子内の凍結転位及び/又は他の欠陥として理解されるべきである。熱的後処理の間、SiCバルク単結晶は、これらの転位が好適に移動する後処理温度にされる。次いで、それらは結晶構造内を移動することができる。半径方向に連続的に増加する熱勾配も、また、可動性になった転位が動きやすい方向を規定する。特に、転位は、次いで、半径方向外向きに移動するか又は溶解する。これは、また、SiCバルク単結晶中のエントロピーを有利に減少させる。
【0016】
半径方向に連続的に増加する熱勾配を有するこの有利な不均質な温度プロファイルは、熱的後処理の間に、SiCバルク単結晶を、特にその結晶表面全体の50%超において、自由空間によって取り囲むことによって、又はその結晶表面全体の50%超を自由空間に隣接させることによって、特に良好に設定することができることも認識されている。特に、SiCバルク単結晶は、これらの時点で非接触である。即ち、後処理用坩堝の内壁若しくは結晶保持具の保持面のような他の物体と又はSiC粉末材料のような他の材料と、機械的接触をしていない。有利には、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶と、SiCバルク単結晶の3つの境界面の少なくとも2つに位置するこれらの非接触点における自由空間と、の間の熱交換は、自由熱放射によって行なわれる。特に、非接触領域、即ちSiCバルク単結晶の接触点又は領域、における熱交換は、主に熱伝導によって起こるが、ここで、自由熱放射を伴う結晶表面全体の割合は、熱伝導を伴う結晶表面全体の割合よりも優位であることが好ましい。後処理温度において、両方のメカニズムにより、様々な程度に熱が伝達されるが、熱放射メカニズムの方が、特に、熱伝導メカニズムよりも良好である。自由熱放射を伴う表面積の割合に対する熱伝導を伴う表面積の割合の比率は、特に、半径方向に連続的に増加する熱勾配を伴う不均質温度プロファイルを設定するための好ましいパラメータである。
【0017】
これとは対照的に、これまでに知られている熱的後処理法のいくつかは、反対の温度場を使用する。これは、特に、SiCバルク単結晶がSiC粉末によって完全に取り囲まれる後処理方法に適用される。この埋め込みは、特に、高い後処理温度で起こり得るSiCバルク単結晶の非化学量論的溶解を防止するために実施される。一方、SiC粉末中への完全な埋込みにより、熱放射による熱輸送が低減する。代わりに、環境との熱交換は、ほとんど熱伝導によってのみ行なわれる。その結果、これらの後処理方法により、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶中に高温均質性がもたらされる。しかしながら、この理由により、連続的に増加する半径方向の熱勾配を有する不均質な温度プロフィールの故に、本発明による後処理方法のように、SiCバルク単結晶において同様に好ましい応力除去を達成することはできない。更に、本発明による方法は、SiC粉末中にSiCバルク単結晶を埋め込む既知の後処理方法を超える更なる利点を有する。そのような埋め込みがないと、SiCはSiCバルク単結晶の表面から蒸発する可能性がある。しかしながら、この効果は、後処理用坩堝内のプロセス圧力を調整、特に増加、させることによって打ち消すことができる。一方、SiC粉末への埋め込みをなしで済ますことは、寄生(parasitic)SiCが、本発明による熱的後処理の間に焼き戻し対象のSiCバルク単結晶上に制御不能に成長することがないという利点を提供する。寄生SiCのそのような成長は、熱的後処理の完了後、SiC粉末内に埋め込まれたSiCバルク単結晶の冷却中に、SiCバルク単結晶の端部領域における更新された及び/又は追加の機械的応力を引き起こす可能性があり、これは、特に、これらの応力によって生じる湾曲及び/又は反りのために、SiCバルク単結晶から生成されたSiC基板の幾何学的形状に負の効果を有し得る。
【0018】
本発明による方法の有利な実施形態は、とりわけ、請求項1に従属する請求項の特徴から生じる。
【0019】
好ましい実施形態では、周囲の自由空間とのSiCバルク単結晶の熱交換は、3つ全ての境界面での自由熱放射によって行なわれる。特に、SiCバルク単結晶の非接触点又は非接触領域は、その境界面の3つ全てに位置することができ、ここで、それぞれの境界面は、好ましくは、完全に又は部分的にのみ非接触であることができる。熱放射による熱交換が特に効率的である。SiCバルク単結晶の非接触でない点又は領域では、即ち、接触するものでは、熱交換は、主に、熱伝導によって起こる。
【0020】
更なる好ましい実施形態によれば、SiCバルク単結晶とそれを取り囲む自由空間との熱交換は、SiCバルク単結晶の全表面積のうちの放射表面部分における自由熱放射によって行なわれ、ここで、全表面積は、3つの境界面の合計から構成され、放射表面部分は全表面積の63%から83%、特に63%から78%、の範囲内である。これにより、不均質な温度プロフィールを、結晶中心縦軸から半径方向に連続的に上昇する熱勾配で、特に良好に調節することができる。放射表面部分は、特に、他の物体又は材料と接触していない全表面積の部分である。従って、非接触であることが好ましい。
【0021】
別の好ましい実施態様によれば、半径方向の熱勾配は、半径方向に結晶中心縦軸から結晶の直径の半分まで延びるSiCバルク単結晶の中心領域において、0.1K/cmから0.3K/cmの間、特に0.1K/cmから0.25K/cmの間、の値をとるように、設定される。これは、SiCバルク単結晶の結晶構造において特に良好な応力除去をもたらす。
【0022】
更なる好ましい実施態様によれば、半径方向の熱勾配は、半径方向に結晶直径の半分から外周端面まで延びるSiCバルク単結晶の端部領域において、0.25K/cmから0.8K/cmの間、特に0.25K/cmから0.7K/cmの間、の値を取るように、設定される。この方法は、また、SiCバルク単結晶の結晶構造における応力除去に役立つ。
【0023】
別の好ましい実施形態によれば、後処理温度の温度値は、SiCバルク単結晶が育成された育成温度よりも高く、特に最大500℃まで高く、好ましくは最大200℃高く、設定される。特に、1950℃を超える、好ましくは2000℃を超える、好ましくは2200℃を超える、後処理温度が設定され、この温度の上限値は、特に2500℃、好ましくは2450℃、である。
【0024】
更に別の好ましい実施形態によれば、SiCバルク単結晶の周囲にガス雰囲気が設定され、その目的のために少なくとも1つのケイ素を含まないプロセスガスが供給される。好ましくは、この少なくとも1つのケイ素を含まないプロセスガスは、アルゴン、ヘリウム、別の希ガス及び窒素の群から選ばれるガス又はこの群から選ばれるガスの混合物である。SiCバルク単結晶の熱的後処理は、特に、気体や固体のケイ素含有成分を積極的に添加することなく実施される。特に、気体であれSiC粉末のような固体であれ、ケイ素含有成分は、後処理用坩堝に導入されない。焼き戻し対象のSiCバルク単結晶は、好ましくは、そのようなケイ素含有成分と直接接触しない。例えば多孔質分離要素又は多孔質膜の形態の障壁を挿入することによって達成され得るような間接的接触は、特にここには存在しない。これにより、ケイ素含有成分の積極的供給による後処理用坩堝内でのケイ素含有雰囲気の形成が防止される。それにもかかわらず、特に、雰囲気中に少量のケイ素含有ガス含有量が存在するとすれば、それは、例えば、SiCバルク単結晶の表面からのSiCの蒸発が原因で、それ自体が焼き戻し対象のSiCバルク単結晶のみに本質的に起因する。
【0025】
更なる好ましい実施形態によれば、プロセスガス圧力は、800ミリバール~1200ミリバールの範囲、特に800ミリバール~1000ミリバールの範囲、に設定される。
【0026】
別の好ましい実施形態によれば、結晶長は、最大で50mm、特に最大で45mm、である。好ましくは、25mm~30mmである。結晶長の下限値は、特に15mm、好ましくは25mm、最も好ましくは30mmである。
【0027】
更に別の好ましい実施形態によれば、結晶直径は少なくとも150mm、特に少なくとも200mm、である。結晶直径の上限値は、特に450mm、好ましくは300mm、である。結晶直径が増大するにつれて、SiCバルク単結晶から生成されたSiC基板が、SiCバルク単結晶の結晶構造における熱誘起機械的応力によって誘起された乱れた湾曲及び/又は反りを有する可能性が増加する。特に、これは結晶直径が約150mm以上のSiCバルク単結晶に当てはまる。従って、本発明による後処理方法は、SiCバルク単結晶の結晶構造中で次第に増大する機械的応力が緩和されるので、このような大きな結晶直径を有するSiCバルク単結晶にとって、特に有利かつ効率的である。
【0028】
更なる好ましい実施形態によれば、結晶長を結晶直径で割ることによって形成されるアスペクト比は、0.05~0.35の範囲、特に0.1~0.3の範囲、である。物理蒸着(PVT)によって生成することができるSiCバルク単結晶の結晶長は、特に数センチメートルに限定され、結晶直径にほとんど依存しない。結晶直径が大きくなると、SiCバルク単結晶のアスペクト比が変化する。それは、ますます小さくなる。結晶直径が大きくなるにつれて、軸方向の熱勾配と比較して、半径方向の熱勾配が、成長するSiCバルク単結晶の特性に対して次第に支配的になる。その結果、成長するSiCバルク単結晶中の応力及びその後にそれから製造されるSiC基板の幾何学形状への影響は、次第に、育成中に優勢な半径方向の熱勾配によって決定されるようになる。アスペクト比が或る上限を下回るとき、軸方向の熱勾配はあまり重要ではないことが認識されている。これは、SiCバルク単結晶の育成と熱的後処理との両方に適用される。アスペクト比のこの上限は、特に0.3~0.35の範囲にある。その代わり、決定的な要因は、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶から製造されるSiC基板の幾何学的形状に所望のプラスの影響を与えるために、本発明による後処理方法において提供される半径方向の熱勾配に焦点を当てることである。
【0029】
別の好ましい実施形態によれば、熱的に後処理される少なくとも1つのSiCバルク単結晶は、この少なくとも1つのSiCバルク単結晶に接触させて保持するための保持面を備えた後処理用坩堝内に配置された結晶保持具上に載置され、ここで、保持面は、後処理される少なくとも1つのSiCバルク単結晶と、SiCバルク単結晶の半径方向端部領域においてのみ接触する。
【0030】
更に別の好ましい実施態様によれば、結晶直径よりも大きい後処理用坩堝の内径が提供され、その結果、SiCバルク単結晶が後処理用坩堝に挿入されると、接線方向に完全に周方向に自由な環状の間隙がSiCバルク単結晶の外周端面と後処理用坩堝の内壁との間に存在する。
【0031】
更なる好ましい実施態様によれば、結晶保持具は環状結晶支持体として設計される。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、軸方向に測定して、1mmから5mmの間の範囲、特に1mmから3mmの間の範囲、の結晶支持体の厚さが提供される。
【0033】
更に別の好ましい実施形態によれば、結晶保持具を構成する保持具材料又は結晶保持具が含有する保持具材料に対して、後処理用坩堝を構成する又は後処理用坩堝が含有する坩堝材料の熱伝導率よりも低い熱伝導率が提供される。
【0034】
更なる好ましい実施形態によれば、結晶保持具を構成する保持具材料又は結晶保持具が含有する保持具材料に対して、後処理用坩堝を構成する又は後処理用坩堝が含有する坩堝材料の気孔率よりも高い気孔率が提供される。
【0035】
装置の目的を達成するために、請求項10の特徴による装置が開示される。本発明による装置は、熱的に後処理される少なくとも1つのSiCバルク単結晶のための受容空間を備えた熱的後処理用坩堝と、後処理用坩堝及びその中に載置されるSiCバルク単結晶を後処理温度まで加熱して、先行する育成の完了後にSiCバルク単結晶中に存在する機械的応力を減少させるための加熱装置と、熱的に後処理される少なくとも1つのSiCバルク単結晶に接触させ保持するための保持面を備えた後処理用坩堝内に配置された結晶保持具とを有する。このプロセスでは、保持面は、SiCバルク単結晶の半径方向端部領域においてのみ、後処理される少なくとも1つのSiCバルク単結晶と接触し、その結果、半径方向の熱勾配を有する不均質温度プロファイルが、後処理される少なくとも1つのSiCバルク単結晶において確立され、このプロファイルは、結晶中心立軸から外周端面に連続的に上昇し、自由空間に取り囲まれた後処理される少なくとも1つのSiCバルク単結晶の熱交換が、3つの境界面のうちの少なくとも2つで自由熱放射によって行なわれる。ここで、自由空間は、受容空間の一部である。
【0036】
結晶保持具の保持面が接触するSiCバルク単結晶の半径方向端部領域は、特に、外周端面並びに外周端面に隣接する底面及び上面の部分的領域を含む。
【0037】
本発明による装置及びその実施形態は、本発明による方法及びその実施形態に関連して既に説明したのと本質的に同じ利点を提供する。
【0038】
本発明による装置の有利な実施形態は、とりわけ、請求項10に従属する請求項の特徴から生じる。
【0039】
好ましい実施形態は、結晶保持具が、SiCバルク単結晶と周囲の自由空間との熱交換が3つ境界面全てで自由熱放射によって起きるように、構成されるものである。
【0040】
更なる好ましい実施形態によれば、結晶保持具は、SiCバルク単結晶のそれを取り囲む自由空間との熱交換がSiCバルク単結晶の全表面積のうちの放射表面部分上の自由熱放射によって、行なわれるように、設計され、このとき、全表面積は、3つの境界面の合計で構成され、放射表面部分は、全表面積の63%から83%の範囲、特に63%から78%の範囲、である。
【0041】
別の好ましい実施形態によれば、保持面による少なくとも1つのSiCバルク単結晶のへの接触は、SiCバルク単結晶の中心領域における半径方向の熱勾配が、0.1K/cmから0.3K/cm、特に0.1K/cmから0.25K/cm、の間の値をとり、SiCバルク単結晶の中心領域が、結晶中心縦軸から結晶直径の半分まで半径方向に延びるように、設計される。
【0042】
更に別の好ましい実施形態によれば、保持面による少なくとも1つのSiCバルク単結晶への接触は、SiCバルク単結晶の端部領域における半径方向の熱勾配が、0.25K/cmから0.8K/cm、特に0.25K/cmから0.7K/cm、の間の値をとり、SiCバルク単結晶の端部領域が、半径方向に結晶直径の半分から外周端面まで延びるように、設計される。
【0043】
更なる好ましい実施形態によれば、後処理温度は、SiCバルク単結晶が予め育成された育成温度よりも高い、特に最大500℃高い、好ましくは最大200℃高い、温度値である。特に、後処理温度は1950℃より高く、好ましくは2000℃より高く、好ましくは2200℃より高く、ここでこの温度の上限値は、特に2500℃、好ましくは2450℃、である。
【0044】
別の好ましい実施態様によれば、後処理用坩堝の内径は結晶直径よりも大きいので、SiCバルク単結晶を後処理用坩堝に挿入すると、SiCバルク単結晶の外周端面と後処理用坩堝の内壁との間に、接線方向に完全に周方向に自由な環状間隙が存在する。その結果、熱交換は、自由環状間隙にも及ぶ自由空間との自由熱放射によって、SiCバルク単結晶の周縁表面で行なわれる。環状間隙は、特に5mmから20mmの間の範囲、好ましくは5mmから15mmの間の範囲、の間隙幅を有する。
【0045】
更に別の好ましい実施形態によれば、結晶保持具は、環状結晶支持体として設計される。これにより、本質的に円筒形であるSiCバルク単結晶を、特に周辺端部及び底面の領域で、非常に良好に支持することができる。一方、環状結晶支持体は、SiCバルク単結晶の境界面の僅かな部分にのみ接触し、そのため、境界面の大部分が自由熱放射による熱交換のために利用可能である。
【0046】
更なる好ましい実施形態によれば、結晶支持体は、軸方向に測定して、1mmから5mmの間の範囲、特に1mmから3mmの間の範囲、の厚さを有する。使用される結晶支持体の厚さも、また、好ましくは、結晶支持体を介して熱伝導を制御するために使用することができ、これは、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶中の半径方向の熱勾配も、また、更に適合及び/又は調節され得ることを意味する。結晶支持体の厚さは、特に、熱伝導と熱放射との間の比率、即ち、結晶支持体上に載置されたSiCバルク単結晶が、熱的後処理中にその環境と、特にその環境中に位置する物体と又は周囲の自由空間と、熱交換する2つの熱交換機構の間の比率を調節又は微調整するための手段の1つである。
【0047】
別の好ましい実施形態によれば、結晶保持具を構成する保持具材料又は結晶保持具が含有する保持具材料は、後処理用坩堝を構成する坩堝材料又は後処理用坩堝が含有する坩堝材料よりも低い熱伝導率を有する。また、保持具材料の熱伝導率は、好ましくは、結晶支持体を介して熱伝導を制御するために使用することができ、これは、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶中の半径方向の熱勾配が、更に適合及び/又は調節され得ることを意味する。特に、保持具材料の熱伝導率は、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶との間の熱伝導と熱放射との比を調節又は微調整する手段の一つでもある。保持具材料は、特にグラファイトとすることができる。特に、坩堝材料は、また、グラファイトであり得る。
【0048】
更に別の好ましい実施形態によれば、結晶保持具を構成する保持具材料又は結晶保持具が含有する保持具材料は、後処理用坩堝を構成する坩堝材料又は後処理用坩堝が含有する坩堝材料よりも高い気孔率を有する。気孔率が高くなると、直接ヒートブリッジが少なくなる、即ち直接接触点が少なくなるため、特に熱伝導の程度が低下する。また、保持具材料の気孔率は、好ましくは、結晶支持体を介して熱伝導を制御するために使用することができるが、これは、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶中の半径方向の熱勾配が、更に適合及び/又は調節され得ることを意味する。特に、保持具材料の気孔率は、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶との間の熱伝導と熱放射との比を調節又は微調整するための手段の1つでもある。保持具材料は、特に多孔質グラファイトとすることができる。特に、坩堝材料は、また、グラファイトであり得る。グラファイトは、種々の変形体で入手可能である。保持具材料のグラファイトは、坩堝材料のグラファイトに比べて、より多孔質であることが好ましい。特に、結晶保持具は、例えば、緻密な第1の保持具材料、例えば緻密なグラファイト、からなる基体と、第1の保持具材料に比べてより多孔質である第2の保持具材料、例えば多孔質グラファイト、からなる基体被覆層とを含有する、2層又は多層構造として実装することもできる。
【0049】
更なる好ましい実施形態によれば、受容空間は、熱的後処理対象の少なくとも1つのSiCバルク単結晶を受容するように設計され、結晶長は最大で50mm、特に最大で45mm、である。好ましくは、結晶長さは、25mm~30mmである。結晶長の下限値は、特に15mm、好ましくは25mm、最も好ましくは30mm、である。
【0050】
別の好ましい実施形態によれば、受容空間は、熱的後処理対象の少なくとも1つのSiCバルク単結晶を受容するように設計され、結晶直径は、少なくとも150mm、特に少なくとも200mm、である。結晶直径の上限値は、特に450mm、好ましくは300mm、である。
【0051】
更に別の好ましい実施形態によれば、受容空間は、熱的後処理対象の少なくとも1つのSiCバルク単結晶を受容するように設計され、結晶長を結晶直径で割ることによって形成されるアスペクト比は、0.05~0.35の範囲、特に0.1~0.3の範囲、である。
【0052】
本発明の更なる特徴、利点及び詳細は、図面を参照した実施形態の以下の説明において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】後処理用坩堝内に結晶保持具を有する、SiCバルク単結晶を熱的後処理するための装置の第1の実施形態を示す。
【
図2】焼き戻しされるSiCバルク単結晶が結晶保持具上に置かれている、
図1による装置の拡大断面図を示す。
【
図3】結晶長は同じであるが結晶直径が異なる、焼き戻しされるSiCバルク単結晶の実施形態の例を示す。
【
図4】結晶長は同じであるが結晶直径が異なる、焼き戻しされるSiCバルク単結晶の実施形態の例を示す。
【
図5】結晶長は同じであるが結晶直径が異なる、焼き戻しされるSiCバルク単結晶の実施形態の例を示す。
【
図6】他の加熱装置を用いた、熱的後処理のための装置の更なる実施形態の例を示す。
【
図7】他の加熱装置を用いた、熱的後処理のための装置の更なる実施形態の例を示す。
【
図8】他の加熱装置を用いた、熱的後処理のための装置の更なる実施形態の例を示す。
【0054】
対応する部分には、
図1から
図8に同じ参照符号を付している。以下でより詳細に説明する実施形態例の詳細は、それ自体で発明を構成し又は発明の主題の一部を形成することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1及び
図2は、SiCバルク単結晶2の熱的後処理のための装置1の実施形態例を示す。装置1は、焼き戻し装置と呼ぶこともできる。
【0056】
それは、後処理用坩堝3を含み、その内部は、熱的後処理(=焼き戻し)されるSiCバルク単結晶2のための受容空間4を形成する。後処理用坩堝3は、坩堝材料からなり、これは、実施形態例では緻密なグラファイトである。或いは、坩堝材料は、タンタル(Ta)、タングステン(W)若しくは他の耐火金属又は例えば炭化タンタル(TaC)若しくは炭化タングステン(WC)などの炭化金属であってもよい。後処理用坩堝3は、図示の実施形態例では、グラファイトフェルトからなる断熱材5によって囲まれている。断熱材5には、頂部及び底部に2つの開口部があり、それぞれがパイロメータチャンネル6の形をしており、図示されていないパイロメータを使用して後処理用坩堝3における温度を測定することができるようになっている。断熱材5は、加熱コイル7の形をした誘導加熱装置によって囲まれている。
【0057】
結晶保持具8は、後処理用坩堝3の受容空間4内に配置され、この坩堝は、熱的後処理中にSiCバルク単結晶2が載せられる保持面9を有する。結晶保持具8は、環状結晶支持体として構成され、図示の実施形態例では、坩堝材料と比較してより高い気孔率とより低い熱伝導率を有する保持具材料からなる。この実施形態例では、保持具材料は多孔質グラファイトである。しかしながら、保持具材料が、坩堝材料と同じ又は少なくとも同様の気孔率及び熱伝導率を有する代替実施形態例も存在し、このとき、これらの2つの材料特性は、その後、熱伝導対熱放射の比の(微)調整のためのパラメータとして使用されないか又はせいぜい非常に僅かな程度しか使用されない。次いで、この調整は、ほとんど排他的に、SiCバルク単結晶2の全表面積中の非接触領域の比率を介して実施される(下記参照)。
【0058】
図示の装置1は、1つのSiCバルク単結晶2のみの熱的後処理のために設計されている。しかし、これは基本的な制限ではない。2つ又はそれ以上のSiCバルク単結晶を一緒に焼き戻すことができる他の装置もある。
【0059】
図2に示す装置1の、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶2が熱的後処理の間に位置する部分の、拡大表示によれば、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶2は、結晶中心縦軸10を備え、3つの境界面、即ち、平らな円形底面11、キャップ形状の頂面12及び円筒状外周端面13を備えた本質的に円筒状の基本形状を有する。結晶中心縦軸10は、その育成中にSiCバルク単結晶2が成長した軸方向に延在し、それに沿ってSiCバルク単結晶2の結晶長Lも測定する。それに垂直な方向、即ち半径方向、にSiCバルク単結晶2の結晶直径Dが測定される。
【0060】
育成の過程で、機械的応力が、成長中のSiCバルク単結晶2の結晶構造に生じ、これは、後でSiCバルク単結晶2から生成されるSiC基板の幾何学的形状及び従ってSiC基板の品質に好ましくない影響を有し得る。このため、これらの応力は、SiCバルク単結晶2の熱的後処理によって緩和されるべきである。
【0061】
SiCバルク単結晶2の結晶直径Dが大きいほど、半径方向温度勾配(=熱勾配)が育成中の成長するSiCバルク単結晶2の特性に及ぼす影響が大きい。同時に軸方向温度勾配の影響は小さくなる。
【0062】
これは、また、結晶育成に使用される物理蒸着法が、ますます大きな結晶直径Dを有するSiCバルク単結晶の製造を可能にするが、軸方向の達成可能な結晶長Lが数センチメートルに制限されるという事実による。従って、ここでアスペクト比と呼ぶ、結晶直径Dに対する結晶長Lの比は、結晶直径Dの増加とともに変化する。即ち、より小さくなる。
【0063】
図3~
図5の表現は、この効果を示す。3つのSiCバルク単結晶14、15及び16が示されており、それぞれ、25mmの同じ結晶長Lを有するが、異なる結晶直径Dを有する。
図3によるSiCバルク単結晶14は、結晶直径Dが76.2mmであり、従って、アスペクト比L/Dは0.33である。
図4によるSiCバルク単結晶15は、150mmの結晶直径Dを有し、従って、アスペクト比L/Dは0.17である。
図4によるSiCバルク単結晶15は、150mmの結晶直径Dを有し、従って、アスペクト比L/Dは0.17である。
図5によるSiCバルク単結晶16は、200mmの結晶直径Dを有し、従って、アスペクト比L/Dは0.13である。
【0064】
半径方向の比率の増加の影響は、SiC体積単結晶2の成長をもたらす応力にも影響を及ぼし、結晶直径Dが増大するにつれて、ますます、半径方向の温度勾配によって決まるようになる。
【0065】
この効果は、熱的後処理中にも考慮しなければならないことが認識されている。可能な限り完全な応力除去を達成するために、後処理プロセス中に、SiCバルク単結晶2の半径方向に特別な温度条件を設ける。有利には、結晶中心縦軸から外周端面まで連続的に増加する半径方向温度勾配を伴う不均質な温度プロフィールが、設定される。
【0066】
この焼き戻し対象のSiCバルク単結晶2内部の特別な不均質温度プロフィールは、装置1の外部加熱装置のみによって生成されるものではない。加熱コイル7の形態の外部加熱装置は、本質的に、後処理用坩堝3の坩堝壁内の温度に直接影響を及ぼすだけである。装置1内において、後処理用坩堝3は、一種のヒーターを構成する。これは、それに供給された熱を内部の受容室4に輸送する。SiCバルク単結晶2中の不均質な半径方向温度勾配を有する温度プロフィールを調節するために、温度に影響を及ぼす更なる対策が装置1内に提供される。
【0067】
この熱輸送機構は、熱を坩堝壁から後処理用坩堝3の内部のSiCバルク単結晶2に伝達するものであり、SiCバルク単結晶2内の温度分布にも影響を及ぼす。
【0068】
例えば、SiC粉末中にSiCバルク単結晶2を埋め込むことにより、熱放射による熱伝達を妨げることが分かっている。代わりに、熱伝達には熱伝導が決め手となる。更に、SiC粉末は、SiCバルク単結晶2内の温度プロフィールに、むしろ絶縁的で均質化する影響を与えることが示されている。半径方向に増加する温度勾配を持つ不均質な温度プロフィールは設定することができない。
【0069】
SiC粉末中への完全な埋め込みと同様の効果は、SiCバルク単結晶2の全底面11が支持体表面上に載っている場合に、生じる。底面11と支持体表面との接触領域では、熱伝導によって、SiCバルク単結晶2から、そしてSiCバルク単結晶2へ、熱が輸送される。
【0070】
別の知見によれば、SiCバルク単結晶2において半径方向に増加する温度勾配を有する不均質な温度プロフィールを設定するためには、自由熱放射がSiCバルク単結晶2との間の熱伝達のための支配的なメカニズムであるべきである。しかしながら、特に熱伝達には別のメカニズムがあり、これは熱伝導に基づいている。熱伝達における熱伝導の比率と熱伝達における熱放射の比率の比は、熱的後処理の間に内側から外側へと半径方向に増加する温度勾配を有する不均質温度プロフィールを有利に設定するために使用することができる。従って、SiCバルク単結晶2は、自由熱放射によってSiCバルク単結晶2との間の熱伝達が有意な又は優勢な割合となるように、結晶保持具8によって受容室4内に支持又は保持される。この目的のために、結晶保持具8は、保持されたSiCバルク単結晶2が、3つの境界面、即ち、底面11、上面12及び外周端面13から構成されるその全表面積の最大部分において、後処理用坩堝3の内壁又は結晶保持具8の保持面9などの別の物体と接触しないように、設計されることが好ましい。焼き戻し対象のSiCバルク単結晶2とそれに隣接する受容室4の自由空間との間の熱交換又は熱伝達は、その後、自由熱放射によって、SiCバルク単結晶2の全表面のこれらの非接触領域で行なわれる。これらの非接触領域は放射表面部分を形成し、それはSiCバルク単結晶2の全表面積に対して、特に63%と83%の間の範囲である。従って、SiCバルク単結晶2の全表面積の他の領域では、その全表面積の割合は、特に17%~37%の範囲であり、装置1の他の物体又は構成要素、特に結晶保持具8、との接触があり、その結果、そこでは主に熱伝導によって熱が伝達される。
【0071】
自由熱放射による周囲の自由空間とのSiCバルク単結晶2の熱交換は、
図1及び
図2に示す実施形態例では、3つの境界面の少なくとも2つで、3つの境界面すべてでさえも、行なわれることが好ましい。底面11の中央部分は、環状結晶支持体として設計される結晶保持具8と接触しない。底面11は、結晶保持具の環状開口部の領域において非接触のままであり、その結果、そこでは、隣接する自由空間と自由熱放射によって熱交換がされる。上面12と外周端面13は完全に非接触であり、従って自由熱放射による熱交換に完全に利用することができる。
【0072】
後処理用坩堝3の内径がSiCバルク単結晶2の結晶直径よりも大きいので外周端面13は非接触であり、その結果、挿入されたSiCバルク単結晶2の外周端面2と後処理用坩堝3の内壁との間に接線方向に完全に周方向に自由な環状間隙17が存在することになる。この環状間隙17は、好ましくは5mm~20mmの間隙幅Bを有する(
図2参照)。
【0073】
自由熱放射の手段によるSiCバルク単結晶2と周囲の自由空間との間のこの熱交換のおかげで、半径方向に上昇する温度勾配を有する有利な不均質温度プロフィールが、熱的後処理の間にSiCバルク単結晶2内に生じ、SiCバルク単結晶2内の機械的応力の所望の低減につながる。
【0074】
半径方向温度勾配の更なる適合及び調整のための任意の追加の手段として、環状結晶支持体として設計された結晶保持具8の厚さを変化させることができ、これに加えて又はこれに代えて、相応に適合された熱伝導率又は気孔率を有する保持具材料を結晶保持具8に使用することができる。特に、低い熱伝導率及び/又は高い気孔率を有する保持具材料を選択することができる。
【0075】
上述の構成要素とは別に、装置1は、更なる構成部分を有するが、これらは、明瞭さのために
図1及び2に示されていない。また、少なくとも一つの排気装置と、プロセスガスの制御された気体流を供給し後処理プロセス中のプロセスガス雰囲気を調節可能なプロセスガス圧力に維持するための気体装置とがある。供給されるプロセスガスは、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)若しくは窒素(N)又はこれらのガスの混合物である。
【0076】
熱的後処理プロセスは、以下に、より詳細に記載される。
【0077】
実際の後処理プロセスが開始する前に、制御された雰囲気を確実に達成し、不純物を最小限に抑えるために、排気が行なわれる。加熱前に、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶2からのSiC材料の表面蒸発を最小限に抑えるために、800ミリバール~1200ミリバール、好ましくは800ミリバール~1000ミリバール、の範囲のプロセスガス圧力が設定される。
【0078】
その後、後処理用坩堝3は、SiCバルク単結晶2が中に載置された状態で所望のプロセス温度に加熱される。ここで、900℃~1500℃、好ましくは1000℃~1200℃、の温度範囲に達した後、実際の後処理温度までの更なる温度上昇は、追加の応力の形成を回避するために、1℃/h~5℃/hの温度傾斜で実施される。実際の後処理温度は、SiCバルク単結晶2が育成される育成温度よりも最大500℃、好ましくは最大200℃、高い。従って、後処理温度は1950℃~2450℃の範囲である。
【0079】
実際の熱的後処理の開始後、圧力、大気組成及び温度のプロセス条件は、5時間~72時間、好ましくは15時間~50時間、続くプロセス期間の間、可能な限り一定に保たれる。僅かな温度変動は10℃未満、好ましくは2℃未満、である。一方では、これは、SiCバルク単結晶の結晶構造における機械的応力の低減のための十分な時間を提供する。他方では、応力解放は、プロセスパラメータの変動によっては妨げられない。
【0080】
プロセス時間が経過した後、SiCバルク単結晶2は、熱輸送機構によって引き起こされ得る温度不均質性による新しい機械的応力の形成を回避するために、0.5℃/h~3℃/h、好ましくは0.5℃/h~2℃/h、の温度傾斜で、900℃~1500℃、好ましくは1000℃~1200℃、の温度範囲まで、ゆっくりと冷却される。処理後の坩堝3及び焼き戻されたSiCバルク単結晶2をほぼ室温まで最終冷却した後、処理後の坩堝3を周囲雰囲気で満たし、SiCバルク単結晶2を更なる処理のために取り出す。
【0081】
図1及び
図2に記載の装置1は、後処理用坩堝3内部の全体的な温度分布を調節することができる誘導加熱装置を有する。しかしながら、加熱装置は、必ずしも誘導的であるように設計される必要はない。
図6~8は、加熱コイル7の代わりに抵抗加熱器を備えたSiCバルク単結晶2の熱的後処理のための代替の焼き戻し装置18、19及び20を示す。これらの抵抗加熱器は、装置1の誘導ヒーターと同様に、後処理用坩堝3内部の全体的な温度分布を調節するために使用することができる。しかしながら、両方の加熱概念は、後処理用坩堝3自体の温度を調節するためにのみ使用することができる。装置1を参照して上述した追加の温度影響手段は、焼き戻し装置18、19、20と共に有利に使用されるが、焼き戻し装置18、19、20のいくつかの他の構成要素と同様に、
図6~8には示されていない。
【0082】
図6による焼き戻し装置18では、円筒状抵抗加熱素子21が、接線方向に周囲を取り囲む円筒状坩堝側壁22に隣接するか、これと接触して、後処理用坩堝3内に配置される。
【0083】
図7に示す焼き戻し装置19では、円筒状抵抗加熱素子23と2つの円形の抵抗加熱素子24及び25とが、後処理用坩堝3の外側ではあるが、絶縁体5の内側に配置されている。抵抗加熱素子23は円筒形の坩堝側壁22を包囲する。抵抗発熱体24及び25は、それぞれ、後処理用坩堝3の上側及び下側の軸方向坩堝端壁26及び27を覆う。
【0084】
図8に示す焼き戻し装置20では、円筒状の抵抗加熱素子28が、後処理用坩堝3の外側で且つ絶縁体5の内側で円筒状の坩堝側壁22を囲んでいる。抵抗加熱素子28は、焼き戻し装置19の抵抗加熱素子23に相当する。焼き戻し装置19とは対照的に、焼き戻し装置20では後処理用坩堝3の2つの軸方向端面に抵抗加熱素子は存在しない。
【0085】
装置1、18、19及び20はそれぞれ、回転対称の加熱装置を有する。これらは実施形態の例である。他の、特に非回転対称の、構造及び加熱装置の代替配置、又は種々の加熱装置の組合せも可能である。
【0086】
全体として、装置1、18、19及び20の全ては、非常に有利な熱的後処理を可能にし、その場合、半径方向に増加する温度勾配を有する不均質な温度プロフィールが、SiCバルク単結晶2内部の応力バランスに対応して、焼き戻し対象のSiCバルク単結晶2内に設定される。これは、既存の機械的応力の非常に良好な減少をもたらす。湾曲と反りが非常に低い高品質SiC基板を、この方法で熱的に後処理したSiCバルク単結晶2から製造することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に測定された結晶長を有し、半径方向に測定された結晶直径を有し、軸方向に延在する結晶中心縦軸(10)を有し、且つ3つの境界面、即ち、底面(11)、上面(12)及び外周端面(13)を備えた、円筒形の基本形状を有する少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)の熱的後処理方法であって、
a) SiCバルク単結晶(2)が後処理温度にされて、事前の結晶育成の完了後に前記SiCバルク単結晶(2)中に存在する機械的応力を低減し、ここで、
b) 前記結晶中心縦軸(10)から外周端面(13)まで連続的に増加する半径方向温度勾配を有する不均質温度プロフィールが前記SiCバルク単結晶(2)内に設定され、そして、
c) 前記SiCバルク単結晶(2)と、これを取り囲む自由空間(4)との、熱交換が前記3つの境界面(11,12,13)のうちの少なくとも2つの上で自由熱放射により行なわれる
熱的後処理方法。
【請求項2】
前記SiCバルク単結晶(2)と前記周囲の自由空間(4)との熱交換が、前記3つの境界面(11,12,13)全てにおける自由熱放射によって行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SiCバルク単結晶(2)とこれを取り囲む前記自由空間(4)との熱交換が、前記SiCバルク単結晶(2)の全表面の半径方向表面部分における自由熱放射によって起こり、ここで、前記全表面積が前記3つの境界面(11,12,13)の合計から構成され、前記半径方向表面部分が前記全表面積の63%~83%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記半径方向温度勾配が、前記結晶中心縦軸(10)から前記結晶直径の半分まで半径方向に延在する前記SiCバルク単結晶(2)の中心領域において0.1K/cmから0.3K/cmの間の値をとるように設定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記半径方向温度勾配が、前記結晶直径の半分から外周端面にまで延在する前記SiCバルク単結晶(2)の端部領域において0.25K/cmから0.8K/cmの間の値をとるように設定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記SiCバルク単結晶(2)の周囲にガス雰囲気を設定し、その目的のために、少なくとも1つのケイ素不含有プロセスガスを供給することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記結晶長が50mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記結晶直径が少なくとも150mmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記結晶長を前記結晶直径で割ることによって形成されるアスペクト比が、0.05~0.35の範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)の熱的後処理のための装置であって、軸方向に測定された結晶長を有し、半径方向に測定された結晶直径を有し、軸方向に延在する結晶中心縦軸(10)を有し、且つ3つの境界面、即ち、底面(11)、上面(12)及び外周端面(13)を備えた、本質的に円筒状の基本形状を有する装置において、
a)熱的に後処理される前記少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)のための受容空間(4)を備えた熱的後処理用坩堝(3)、
b)前記後処理用坩堝(3)及びその中に載置される前記SiCバルク単結晶(2)を、後処理温度まで加熱して、事前の結晶育成の完了後に前記SiCバルク単結晶(2)内に存在する機械的応力を軽減するための加熱装置(7;21;23,24,25;28)、及び
c)熱的に後処理される前記少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)に接触して保持する保持面(9)を備えた前記後処理用坩堝(3)に配置された結晶保持具(8)を有する装置であって、
d)ここで、前記保持面(9)は、後処理対象の前記少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)と、前記SiCバルク単結晶(2)の半径方向端部領域においてのみ、接触し、
d1)前記後処理対象の少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)において、結晶中心立軸(10)から外周端面(13)まで連続的に増加する半径方向の熱勾配を有する不均質な温度プロファイルが確立され、そして
d2)前記後処理対象の少なくとも1つのSiCバルク単結晶(2)の、それを取り囲む自由空間との、熱交換が自由熱放射によって、前記3つの境界面(11,12,13)のうちの少なくとも2つの境界面で行なわれ、ここで、前記自由空間が前記受容空間(4)の一部である
装置。
【請求項11】
前記後処理用坩堝(3)の内径が前記結晶直径よりも大きく、その結果、前記SiCバルク単結晶(2)を前記後処理用坩堝(3)に挿入した際に、接線方向に完全に周方向に自由な環状間隙(17)が、前記SiCバルク単結晶(2)の外周端面(13)と前記後処理用坩堝(3)の内壁との間に、存在することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記結晶保持具(8)が環状結晶支持体として設計されていることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記結晶保持具(8)が、軸方向に測定して1mm~5mmの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記結晶保持具(8)を構成するかそれが含有する保持具材料が、前記後処理用坩堝(3)を構成するかそれが含有する坩堝材料よりも低い熱伝導率を有することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記結晶保持具(8)を構成するかそれが含有する保持具材料が、前記後処理用坩堝(3)を構成するかそれが含有する坩堝材料よりも高い気孔率を有することを特徴とする請求項10に記載の装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
図3~
図5の表現は、この効果を示す。3つのSiCバルク単結晶14、15及び16が示されており、それぞれ、25mmの同じ結晶長Lを有するが、異なる結晶直径Dを有する。
図3によるSiCバルク単結晶14は、結晶直径Dが76.2mmであり、従って、アスペクト比L/Dは0.33である。
図4によるSiCバルク単結晶15は、150mmの結晶直径Dを有し、従って、アスペクト比L/Dは0.17である
。図5によるSiCバルク単結晶16は、200mmの結晶直径Dを有し、従って、アスペクト比L/Dは0.13である。
【外国語明細書】