(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137754
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】生産計画装置、生産計画方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20240927BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240927BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027751
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023046898
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】増田 朗丈
(72)【発明者】
【氏名】横山 愛莉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴晃
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA12
3C100AA16
3C100BB03
(57)【要約】
【課題】
複数の生産ラインにおいて複数種類の物品を作成する場合にも生産スループットを低減できる生産計画が、容易に実行され得る。
【解決手段】生産計画装置1は、取得部11と分配計画部13とを備えている。取得部11は、物品リスト情報を取得する。物品リスト情報は、複数種類の物品の情報を含んでいる。分配計画部13は、分配計画データを作成する。分配計画データは、物品リスト情報に含まれる複数種類の物品を複数の生産ラインに分配するデータである。分配計画部13は、各生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられたエントロピーに基づいて、分配計画データを作成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の物品の情報を含む物品リスト情報を取得する取得部と、
前記物品リスト情報に含まれる前記複数種類の物品を複数の生産ラインに分配する分配計画データを、作成する分配計画部と、を備え、
前記分配計画部は、各前記生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられているエントロピーに基づいて、前記分配計画データを作成する、生産計画装置。
【請求項2】
前記ロス情報は、各前記生産ラインに分配される前記物品の種類ごとの数を含んでおり、
前記エントロピーは、各前記生産ラインに分配される前記物品の種類ごとの数に関連付けられている、請求項1に記載の生産計画装置。
【請求項3】
前記分配計画部は、各前記生産ラインに分配される前記複数種類の物品の総数が関連付けられたエンタルピーと前記エントロピーとに基づいて、前記分配計画データを作成する、請求項1に記載の生産計画装置。
【請求項4】
前記分配計画部は、各前記生産ラインに分配された前記複数種類の物品の予測処理時間を演算する時間演算部と、前記時間演算部によって演算された前記予測処理時間に基づいて、前記複数の生産ラインの各々へ前記物品リスト情報に含まれる前記複数種類の物品を分配する分配パターンを演算する分配演算部と、を含んでおり、
前記時間演算部は、前記エントロピーと前記エンタルピーとに基づいて、前記予測処理時間を演算する、請求項3に記載の生産計画装置。
【請求項5】
前記分配演算部は、各前記生産ラインの前記予測処理時間の合計及び分散を演算し、演算結果に基づいて前記各生産ラインへ前記物品リスト情報に含まれる前記複数種類の物品を分配する分配パターンを演算する、請求項4に記載の生産計画装置。
【請求項6】
前記複数の生産ラインの各々において、各前記生産ラインにおける前記予測処理時間が“Timepred”であり、各前記生産ラインに分配された前記複数種類の物品の予測処理速度が“vpred”であり、各前記生産ラインにおける最大処理速度が“vmax”であり、各前記生産ラインにおける前記エンタルピーが“H”であり、各前記生産ラインにおける前記エントロピー及び前記エンタルピーから演算されるギブスエネルギーが“G”である場合、前記時間演算部は、
Timepred=H/vpred
vpred=vmax(G/H)
が満足されるように、前記予測処理時間を演算する、請求項4又は5に記載の生産計画装置。
【請求項7】
前記複数の生産ラインの各々において、各前記生産ラインにおける前記予測処理時間が“Timepred”であり、各前記生産ラインにおける理想処理時間が“Timeideal”であり、各前記生産ラインにおける損失時間が“Timeloss”であり、各前記生産ラインに分配された前記複数種類の物品のうちi番目の種類の物品の総数が“Ni”であり、各前記生産ラインに分配された前記複数種類の物品のうちi番目の種類の物品の予想処理速度が“vi”であり、各前記生産ラインに分配された前記複数種類の物品の各々を特定する複数種類のパラメータのうちj番目のパラメータの係数が“Xj”であり、前記複数種類のパラメータのうちj番目のパラメータに対する前記エントロピーが“Sj”である場合、
前記時間演算部は、
Timepred=Timeideal+Timeloss
Timeideal=Σ(Ni/vi)
Timeloss=ΣXjSj
が満足されるように、前記予測処理時間を演算する、請求項4又は5に記載の生産計画装置。
【請求項8】
前記物品リスト情報は、前記複数種類の物品の各々を特定する複数種類のパラメータについて、各前記パラメータの値を示すパラメータ情報を含んでおり、
前記ロス情報は、各前記パラメータの値の種類ごとの数を含んでおり、
前記分配計画部は、前記複数種類のパラメータに含まれる複数の前記パラメータの各々の値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーに基づいて、前記分配計画データを作成する、請求項1に記載の生産計画装置。
【請求項9】
前記複数種類のパラメータの間における相関情報に基づいて、前記複数種類のパラメータから複数の前記パラメータを抽出するパラメータ抽出部をさらに備え、
前記分配計画部は、前記パラメータ抽出部において抽出された前記パラメータごとに前記パラメータの値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーに基づいて、前記分配計画データを作成する、請求項8に記載の生産計画装置。
【請求項10】
前記パラメータ抽出部は、前記複数種類のパラメータのうちの第1の組合せの相関係数よりも低い相関係数を有している第2の組合せに含まれる前記パラメータを抽出する、請求項9に記載の生産計画装置。
【請求項11】
複数種類の物品の情報を含む物品リスト情報を取得することと、
前記物品リスト情報に含まれる前記複数種類の物品を複数の生産ラインに分配する分配計画データを、各前記生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられたエントロピーに基づいて作成することと、を有している、生産計画方法。
【請求項12】
複数種類の物品の情報を含む物品リスト情報を取得することと、
前記物品リスト情報に含まれる前記複数種類の物品を複数の生産ラインに分配する分配計画データを、各前記生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられたエントロピーに基づいて作成することと、をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産計画装置、生産計画方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物品の生産計画データを作成する生産計画装置が知られている。たとえば、特許文献1に開示されている生産計画装置は、複数種類の物品の生産の手順を示す生産計画データを作成する。この生産計画装置は、複数種類の物品の情報を取得し、取得された情報に基づいて生産計画データを作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、生産計画データは、遺伝的アルゴリズムを用いて作成されている。遺伝的アルゴリズムが用いられる場合、たとえば、生産計画データの親データから子供データが作成され、作成された子供データから親データとするという処理が繰り返される。たとえば、複数種類の物品の生産順序に対して遺伝的アルゴリズムを適用することによって、生産スループットを低減する生産計画データが作成され得る。
【0005】
複数の生産ラインで複数種類の物品を生産する場合、各生産ラインへの物品の分配のパターンも生産スループットに関係する。このため、物品の生産順序に加えて、各生産ラインへの物品の分配のパターンも考慮して、遺伝的アルゴリズムを適用することが考えられる。しかし、この場合、1つの生産ラインで生産計画データを作成する場合に比べて、演算量が格段に増加する。この結果、生産計画データの作成に非現実的な時間を要し、実用性を損なうおそれがある。
【0006】
本発明の一つの態様は、複数の生産ラインにおいて複数種類の物品を作成する場合にも生産スループットを低減できる、生産計画が容易に実行され得る生産計画装置を提供することを目的とする。本発明の別の態様は、複数の生産ラインにおいて複数種類の物品を作成する場合にも生産スループットを低減できる、生産計画が容易に実行され得る生産計画方法を提供することを目的とする。本発明のさらに別の態様は、複数の生産ラインにおいて複数種類の物品を作成する場合にも生産スループットを低減できる、生産計画が容易に実行され得るプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様における生産計画装置は、取得部と分配計画部とを備えている。取得部は、物品リスト情報を取得する。物品リスト情報は、複数種類の物品の情報を含んでいる。分配計画部は、分配計画データを作成する。分配計画データは、物品リスト情報に含まれる複数種類の物品を複数の生産ラインに分配するデータである。分配計画部は、各生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられたエントロピーに基づいて、分配計画データを作成する。
【0008】
この生産計画装置において、分配計画部は、エントロピーに基づいて、分配計画データを作成する。エントロピーは、各生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられている。このように、エントロピーと生産処理速度のロスに関するロス情報とが関係付けられており、エントロピーに基づいて分配計画データを作成する。このため、演算量が抑制されながら、生産スループットが低減される分配計画データが作成される。したがって、複数の生産ラインにおいて複数種類の物品を作成する場合にも、生産スループットを低減できる生産計画が容易に実行され得る。
【0009】
上記一つの態様では、ロス情報は、各生産ラインに分配される物品の種類ごとの数を含んでいてもよい。エントロピーは、各生産ラインに分配される物品の種類ごとの数に関連付けられていてもよい。この場合、容易かつ確実に生産スループットが低減される分配計画データが作成される。
【0010】
上記一つの態様では、分配計画部は、各生産ラインに分配される複数種類の物品の総数が関連付けられたエンタルピーとエントロピーとに基づいて、分配計画データを作成してもよい。この場合、より容易かつ確実に、生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0011】
上記一つの態様では、分配計画部は、時間演算部と、分配演算部とを含んでいてもよい。時間演算部は、各生産ラインに分配された複数種類の物品の予測処理時間を演算してもよい。分配演算部は、時間演算部によって演算された予測処理時間に基づいて、複数の生産ラインの各々へ物品リスト情報に含まれる複数種類の物品を分配する分配パターンを演算してもよい。時間演算部は、エントロピーとエンタルピーとに基づいて、予測処理時間を演算してもよい。この場合、より容易かつ確実に、生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0012】
上記一つの態様では、分配演算部は、各生産ラインの予測処理時間の合計及び分散を演算し、演算結果に基づいて各生産ラインへ物品リスト情報に含まれる複数種類の物品を分配する分配パターンを演算してもよい。この場合、より容易かつ確実に、生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0013】
上記一つの態様では、時間演算部は、Timepred=H/vpred、vpred=vmax(G/H)が満足されるように、予測処理時間を演算してもよい。この場合、複数の生産ラインの各々において、各生産ラインにおける予測処理時間は、“Timepred”であってもよい。各生産ラインに分配された複数種類の物品の予測処理速度は、“vpred”であってもよい。各生産ラインにおける最大処理速度は、“vmax”であってもよい。各生産ラインにおけるエンタルピーは、“H”であってもよい。各生産ラインにおけるエントロピー及びエンタルピーから演算されるギブスエネルギーは、“G”であってもよい。この場合、予測処理時間がより容易に演算される。
【0014】
上記一つの態様では、時間演算部は、Timepred=Timeideal+Timeloss、Timeideal=Σ(Ni/vi)、及び、Timeloss=ΣXiSiが満足されるように、予測処理時間を演算してもよい。この場合、複数の生産ラインの各々において、各生産ラインにおける予測処理時間は、“Timepred”であってもよい。各生産ラインにおける理想処理時間は、“Timeideal”であってもよい。各生産ラインにおける損失時間は、“Timeloss”であってもよい。各生産ラインに分配された複数種類の物品のうちi番目の種類の物品の総数は、“Ni”であってもよい。各生産ラインに分配された複数種類の物品のうちi番目の種類の物品の予想処理速度は、“vi”であってもよい。各生産ラインに分配された複数種類のパラメータのうちj番目のパラメータの係数は、“Xj”であってもよい。各生産ラインに分配された複数種類のパラメータのうちj番目のパラメータに対するエントロピーは、“Sj”であってもよい。この場合、予測処理時間がより容易に演算される。
【0015】
上記一つの態様では、物品リスト情報は、複数種類の物品の各々を特定する複数種類のパラメータについて、各パラメータの値を示すパラメータ情報を含んでいてもよい。ロス情報は、各パラメータの値の種類ごとの数を含んでいてもよい。分配計画部は、複数種類のパラメータに含まれる複数のパラメータの各々の値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーに基づいて、分配計画データを作成してもよい。この場合、より容易かつ確実に、生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0016】
上記一つの態様では、生産計画装置は、パラメータ抽出部をさらに備えていてもよい。パラメータ抽出部は、複数種類のパラメータの間における相関情報に基づいて、複数種類のパラメータから複数のパラメータを抽出してもよい。分配計画部は、パラメータ抽出部において抽出された前記パラメータごとにパラメータの値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーに基づいて、分配計画データを作成してもよい。この場合、より容易かつ確実に、生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0017】
上記一つの態様では、パラメータ抽出部は、複数種類のパラメータのうちの第1の組合せの相関係数よりも低い相関係数を有している第2の組合せに含まれるパラメータを抽出してもよい。この場合、より容易かつ確実に、生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0018】
本発明の別の態様における生産計画方法は、複数種類の物品の情報を含む物品リスト情報を取得することと、分配計画データを作成することとを有している。分配計画データは、物品リスト情報に含まれる複数種類の物品を複数の生産ラインに分配するデータである。分配計画データは、各生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられたエントロピーに基づいて作成される。
【0019】
本発明のさらに別の態様におけるプログラムは、複数種類の物品の情報を含む物品リスト情報を取得することと、分配計画データを作成することと、をコンピュータに実行させる。分配計画データは、物品リスト情報に含まれる複数種類の物品を複数の生産ラインに分配するデータである。分配計画データは、各生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられたエントロピーに基づいて作成される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一つの態様は、複数の生産ラインにおいて複数種類の物品を作成する場合にも生産スループットを低減できる、生産計画が容易に実行され得る生産計画装置を提供する。本発明の別の態様は、複数の生産ラインにおいて複数種類の物品を作成する場合にも生産スループットを低減できる、生産計画が容易に実行され得る生産計画方法を提供する。本発明のさらに別の態様は、複数の生産ラインにおいて複数種類の物品を作成する場合にも生産スループットを低減できる、生産計画が容易に実行され得るプログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態における生産計画装置のブロック図である。
【
図2】複数の生産ラインへの物品の分配を示す概念図である。
【
図4】生産ラインに処理する物品の処理時間を示す概念図である。
【
図5】平均生産速度とエントロピーとの相関図である。
【
図6】平均生産速度とエントロピーとエンタルピーとの相関図である。
【
図7】平均生産速度と本実施形態における予測処理速度との相関図である。
【
図8】生産計画方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】分配計画処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本実施形態の変形例における分配計画処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】遺伝子的アルゴリズムで求めた切替時間の総和と、熱力学的に求めた切替時間の総和の相関図である。
【
図12】本実施形態の変形例における生産計画装置のブロック図である。
【
図14】物品のパラメータの相関関係を示す図である。
【
図15】本実施形態の変形例における生産計画方法の一例を示すフローチャートである。
【
図16】生産計画装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図17】比較例における生産計画データの複数の生産ラインのガントチャートである。
【
図18】本実施形態に示す例における生産計画データの複数の生産ラインのガントチャートである。
【
図19】本実施形態に示す例と比較例とに関して、予測処理時間の合計を比較するグラフである。
【
図20】本実施形態に示す例と比較例とに関して、予測処理時間の分散を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0023】
まず、
図1を参照して、本実施形態における生産計画装置の機能及び構成を説明する。
図1は、生産計画装置のブロック図である。生産計画装置1は、複数種類の物品の生産計画データを作成し、生産計画を立案する。「物品」は、たとえば、生産計画装置1によって生産を計画される製品である。生産計画装置1は、たとえば、電子部品の生産計画データを作成する。電子部品は、たとえば、DIPコンデンサであってもよい。
【0024】
生産計画装置1は、複数種類の物品を複数の生産ラインへ分配する分配計画を立案する。生産計画装置1が作成する生産計画データは、複数種類の物品を複数の生産ラインへ分配する分配パターンを含んでいる。
図2は、複数の生産ラインへの物品の分配を示す概念図である。たとえば、
図2に示されているように、物品リスト情報Lに含まれる複数種類の物品が、複数の生産ラインα
1~α
Nへ分配される。たとえば、生産ラインα
1~α
Nは、それぞれ、マシンM
1~M
Nを含んでおり、分配された互いに異なる物品の生産処理を実行する。生産計画装置1が作成する上述の分配パターンは、物品リスト情報Lに含まれる複数種類の物品の各々を、生産ラインα
1~α
Nのいずれへ分配するかを示している。
【0025】
本実施形態に示す例において、生産計画装置1は、さらに、生産ラインにおける物品の作成順序に関する順序計画を立案する。この場合、生産計画装置1が作成する生産計画データは、さらに、生産ラインにおいて物品を作成する順序パターンも含んでいる。
【0026】
図3は、物品の生産処理パラメータを示す表である。たとえば、生産ラインにおいて、複数のロットA
1~A
10を生産する処理が実行される。複数のロットA
1~A
10は互いに異なる種類の物品を含んでおり、同一のロットは同一の種類の物品を含んでいる。各ロットA
1~A
10は、複数種類の物品を含んでいる。
図3は、各ロットA
1~A
10において、物品数PCSと、1物品の生産処理に要する生産処理時間timeと、各ロットの生産処理におけるパラメータP1,P2の有無とを示している。パラメータP1,P2は、たとえば、ロットに含まれる物品が有している特徴、生産処理に用いる部品、又は、生産処理に用いる器具である。
図3に示される表において、パラメータP1,P2の“1”はパラメータP1,P2を有していること示しており、パラメータP1,P2の“0”はパラメータP1,P2を有していないこと示している。
【0027】
図4は、生産ラインにおいて処理する物品の処理時間を示す概念図である。
図4において、ロット処理時間31,32,33,34は、それぞれ、ロットの生産処理に要する生産処理時間を示している。ロット処理時間31,32,33,34の各々は、ロットA
1~A
10のうち少なくとも1つの物品の生産処理時間を示している。準備時間41は、生産ラインにおいて生産処理を開始するのに要する生産準備時間である。切替時間51~53は、それぞれ、ロットの切替えに要するロット切替時間である。したがって、生産ラインにおいて、ロットA
1~A
10の全ての生産処理に要するトータル処理時間t
totalは、以下の式(1)で表される。
【数1】
【0028】
“tAi”は、各ロットを生産する処理時間である。“f(Ai,Ai+1)”は、“Ai”から“Ai+1”へ切り替える際のロット切替え時間である。“g(A0)”は、生産準備時間である。
【0029】
生産計画装置1は、取得部11と、分配計画部13と、順序計画部17と、格納部18と、出力部19とを備えている。取得部11は、物品リスト情報Lを取得する。物品リスト情報Lは、たとえば、複数種類の物品の情報を含んでいる。複数種類の物品の情報は、たとえば、物品を特定する物品名を含んでいる。物品名は、たとえば、互いに異なる種類の物品にそれぞれ対応している。生産計画装置1は、取得部11によって取得された物品リスト情報Lに基づいて、生産計画データを作成する。
【0030】
取得部11は、生産計画装置1の内部又は外部から入力された情報を取得する。たとえば、取得部11は、インターネットなどの外部ネットワーク又は内部ネットワークを介して、生産計画装置1の外部の記憶領域から物品リスト情報Lを取得する。取得部11は、格納部18から物品リスト情報Lを取得してもよい。取得部11は、ユーザから直接的に入力された情報を物品リスト情報Lとして取得してもよい。
【0031】
分配計画部13は、分配計画データを作成する。分配計画データは、物品リスト情報Lに含まれる複数種類の物品を複数の生産ラインに分配する分配パターンを示している。分配計画部13は、エントロピーSに基づいて、分配計画データを作成する。エントロピーSは、各生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられている。ロス情報は、たとえば、各生産ラインに分配される物品の種類ごとの数を含んでいる。換言すれば、分配計画部13は、各生産ラインに分配される物品の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーSに基づいて、分配計画データを作成している。
【0032】
たとえば、生産ラインに分配された物品の種類が多いほど、ロット切替時間が増え、生産処理速度のロスも増えると考えられる。したがって、熱力学に置き換えれば、生産ラインに分配された物品の種類が多いほど、乱雑さが高く、エントロピーも大きいと考えられる。このため、たとえば、各生産ラインに分配される物品の種類ごとの数を、熱力学における粒子の種類ごとの数に対応させる。
【0033】
熱力学において、エントロピーSは、式(2):S=k
BInWによって表される。“k
B”は、ボルツマン定数である。“W”は、配置数である。“W”は、以下の式(3)によって表される。“n
i”は、i番目の粒子の数である。“N”は、n
iの総和である。
【数2】
【0034】
分配計画部13は、たとえば、式(3)の“N”に、生産ラインに分配される物品の数を代入し、式(3)の“ni”に、生産ラインに分配される物品の種類ごとの数を代入する演算によって、エントロピーSを演算する。この際、“kB”は、1としても差し支えない。
【0035】
エントロピーSは、
図5に示されているように、生産ラインに分配された物品の平均生産速度に対して相関関係を有している。
図5は、エントロピーSを用いずに演算された平均生産速度と、エントロピーSとの相関図である。この際、R
2値は、0.8である。本明細書において、「エントロピーを用いずに演算された平均生産速度」は、生産ラインにおける物品の作成順序と複数種類の物品を複数の生産ラインへ分配する分配パターンとに対して同時に遺伝的アルゴリズムを適用することによって演算された生産処理速度である。
【0036】
本実施形態に示す例において、分配計画部13は、エンタルピーHとエントロピーSとに基づいて、分配計画データを作成する。エンタルピーHは、各生産ラインに分配される複数種類の物品の総数が関連付けられている。熱力学において、エンタルピーHは、粒子が持つエネルギーの総和である。エンタルピーHとエントロピーSとの関係は、式(4)G=H-TSによって表される。“G”は、ギプスエネルギーである。“T”は、係数である。式(4)は、式(5):G/H=1-(TS/H)に変形され得る。
【0037】
エンタルピーH及びエントロピーSによって構成される式(5)は、熱力学における熱効率に相当する。式(5)の“T”を1とした式(6):1-(S/H)は、
図6に示されているように、エントロピーSを用いずに演算された平均生産速度に対して相関関係を有している。
図6は、エントロピーSを用いずに演算された平均生産速度とエントロピーSとエンタルピーHとの相関図である。
図6は、エントロピーSを用いずに演算された平均生産速度と、1-(S/H)との相関図である。この際、R
2値は、0.93である。
【0038】
式(5)の両辺に、生産ラインにおける最大処理速度v
maxを積算すると、式(7):v
max(G/H)=v
max-v
max(TS/H)が導かれる。最大処理速度は、各生産ラインにおける物品の最大生産速度(pcs/min)に相当する。式(7)は、以下の式(8)に対応している。
【数3】
【0039】
式(8)の左辺は、予測処理速度である。予測処理速度は、生産ラインに分配された物品の生産処理速度であり、エントロピーS及びエンタルピーHを用いた演算によって予測される平均生産速度である。以下、予測処理速度は、部分的に、バーの表記を省略し、単に、“vpred”と示す。“vloss_pred”は、予測ロス速度である。予測ロス速度は、生産ラインにおける生産処理速度のロスであり、エントロピーS及びエンタルピーHを用いた演算によって予測される値である。
【0040】
予測処理時間が“Time
pred”である場合に、式(7)及び式(8)を考慮すれば、式(9)が成立する。予測処理時間は、生産ラインに分配された物品の生産処理時間である。
【数4】
【0041】
分配計画部13は、時間演算部21と分配演算部22とを含んでいる。時間演算部21は、各生産ラインに分配された複数種類の物品の予測処理時間を演算する。時間演算部21は、エントロピーSとエンタルピーHとに基づいて、予測処理時間を演算する。
【0042】
時間演算部21は、たとえば、式(9)が満足されるように、予測処理時間を演算する。たとえば、時間演算部21は、式(10):Timepred=H/vpred、及び、式(11):vpred=vmax(G/H)が満足されるように、予測処理時間を演算する。この場合、複数の生産ラインの各々において、各生産ラインにおける予測処理時間が“Timepred”であり、各生産ラインに分配された複数種類の物品の予測処理速度が“vpred”であり、各生産ラインにおける最大処理速度が“vmax”であり、各生産ラインにおけるエンタルピーが“H”であり、各生産ラインにおけるエントロピー及びエンタルピーから演算されるギブスエネルギーが“G”である。
【0043】
予測処理速度は、
図7に示されているように、生産ラインに分配された物品の平均生産速度に対して相関関係を有している。
図7は、エントロピーSを用いずに演算された平均生産速度と、予測処理速度との相関図である。この際、R
2値は、0.93である。
【0044】
分配演算部22は、時間演算部21によって演算された予測処理時間に基づいて分配計画データを作成する。分配演算部22は、時間演算部21によって演算された予測処理時間に基づいて複数の生産ラインの各々へ物品リスト情報Lに含まれる複数種類の物品を分配する分配パターンを演算する。たとえば、分配演算部22は、複数の生産ラインの予測処理時間の合計及び分散を演算し、演算結果に基づいて複数の生産ラインの各々へ物品リスト情報Lに含まれる複数種類の物品を分配する分配パターンを演算する。
【0045】
分配演算部22は、以下の式(12)によって、複数の生産ラインの予測処理時間の合計Time
totalを演算する。“M”は、生産ラインの数である。たとえば、“M”は、物品を分配するマシンの数である。“Time
i
pred”は、i番目の生産ラインの予測処理時間である。
【数5】
【0046】
分配演算部22は、以下の式(13)によって、複数の生産ラインの予測処理時間の分散varを演算する。“Time
pred_AVG”は、予測処理時間の平均である。
【数6】
【0047】
順序計画部17は、順序計画データを作成する。順序計画データは、生産ラインにおける物品の作成順序を示している。順序計画部17は、分配計画部13によって演算された分配計画データに基づいて、順序計画データを作成する。順序計画部17は、既知の手法によって、生産ラインに分配された物品の作成順序を演算する。たとえば、順序計画部17は、遺伝的アルゴリズムによって、生産処理時間が短くなるように物品の作成順序を演算する。
【0048】
格納部18は、種々の情報を予め格納しており、各種の機能部からの情報を格納する。格納部18は、たとえば、取得部11において取得された情報、分配計画部13において作成された分配計画データ、及び、順序計画部17において作成された順序計画データを格納する。
【0049】
出力部19は、生産計画データを出力する。出力部19は、たとえば、分配計画部13において作成された分配計画データ、及び、順序計画部17において作成された順序計画データを出力する。出力部19は、たとえば、表示部を含み、生産計画データを表示する。出力部19は、生産計画装置1の外部に、生産計画データを送信してもよい。
【0050】
次に、
図8を参照して、本実施形態における生産計画方法の一例について説明する。
図7は、生産計画方法の一部を示すフローチャートである。
【0051】
まず、取得部11が、物品リスト情報Lを取得する(処理S1)。次に、分配計画部13が、分配計画処理を実行する(処理S2)。処理S2において、分配計画部13は、処理S1において取得された物品リスト情報Lに基づいて、分配計画データを作成する。処理S2において、分配計画部13は、物品リスト情報Lに含まれる複数種類の物品を複数の生産ラインに分配する分配計画データを、各生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられたエントロピーに基づいて作成する。
【0052】
次に、順序計画部17が、順序計画処理を実行する(処理S3)。処理S3において、順序計画部17は、処理S2において演算された分配計画データに基づいて、順序計画画データを作成する。換言すれば、処理S3において、順序計画部17は、分配計画データに基づいて生産ラインに分配される物品について、作成順序を演算する。
【0053】
次に、出力部19が、生産計画データを出力する(処理S4)。出力部19は、たとえば、分配計画部13において作成された分配計画データ、及び、順序計画部17において作成された順序計画データを出力する。
【0054】
次に、
図9を参照して、本実施形態における分配計画処理の一例について説明する。
図9は、分配計画処理の一部を示すフローチャートである。
【0055】
まず、分配演算部22が、乱数を導出し、乱数に基づいて複数の分配パターンを作成する(処理S11)。たとえば、処理S11において、分配演算部22は、処理S1において取得された物品リスト情報Lに含まれている物品を、生産ラインのマシンにランダムに分配した複数の分配パターンを作成する。処理S11において、作成された複数の分配パターンは、親データに設定される。たとえば、各分配パターンは、各物品の分配先のマシンの情報を遺伝子として有している。
【0056】
次に、時間演算部21が、各マシンの予測処理時間を演算する(処理S12)。たとえば、処理S12において、時間演算部21は、生産ラインのマシンごとに、エントロピーSとエンタルピーHとを演算する。時間演算部21は、演算されたエントロピーSとエンタルピーHと式(4)、式(10)、及び、式(11)に基づいて、予測処理時間を演算する。時間演算部21は、処理S12において、親データとして設定されている複数の分配パターンの全ての各生産ラインについて、予測処理時間を演算する。
【0057】
次に、分配演算部22は、合計処理時間及び分散を演算する(処理S13)。処理S13において、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの各々において、式(12)に基づいて予測処理時間の合計を演算する。たとえば、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの全てにおいて、予測処理時間の合計を演算する。処理S13において、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの各々において、式(13)に基づいて、予測処理時間の分散を演算する。たとえば、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの全てにおいて、予測処理時間の分散を演算する。
【0058】
次に、分配演算部22は、処理S13から処理S19のループ回数が所定値であるか否かを判断する(処理S13)。所定値は、たとえば、2以上の数である。たとえば、処理S13において、分配演算部22は、処理S13から処理S19のループ回数を取得し、取得されたループ回数が3の倍数であるか否かを判断する。ループ回数が所定値であると判断された場合には、処理は処理S14に進む(処理S13のYES)。ループ回数が所定値であると判断されなかった場合には、処理は処理S15に進む(処理S13のNO)。
【0059】
ループ回数が所定値であると判断された場合には、分配演算部22は、予測処理時間の合計を演算する(処理S14)。処理S14が終了すると、処理は処理S16へ進む。たとえば、処理S14において、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの各々において、式(12)に基づいて予測処理時間の合計を演算する。たとえば、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの全てにおいて、予測処理時間の合計を演算する。
【0060】
ループ回数が所定値でないと判断された場合には、分配演算部22は、予測処理時間の分散を演算する(処理S15)。処理S15が終了すると、処理は処理S16へ進む。たとえば、処理S15において、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの各々において、式(12)に基づいて、予測処理時間の分散を演算する。たとえば、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの全てにおいて、予測処理時間の分散を演算する。
【0061】
分配演算部22は、予測処理時間の合計又は予測処理時間の分散に基づいて、複数の分配パターンを選択する(処理S16)。たとえば、処理S16において、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンから、処理S14において予測処理時間の合計が短い上位X%の分配パターンを選択する。たとえば、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンから、処理S15において予測処理時間の分散が小さい上位X%の分配パターンを選択する。上位X%は、たとえば、上位50%である。分配演算部22は、処理S16において選択された複数の分配パターンを、親データとして更新する。
【0062】
次に、分配演算部22は、遺伝的アルゴリズム処理を実行する(処理S17)。たとえば、処理S17において、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンから2つの分配パターンを選択し、選択された2つの分配パターンの遺伝子の共通部分の情報を引き継いだ分配パターンを子供データとして作成する。処理S17において、分配演算部22は、たとえば、乱数によって、親データとして設定されている複数の分配パターンから2つの分配パターンを選択する。処理S17において、分配演算部22は、たとえば、親データから引き継がない遺伝子を、マシンの制約条件を守りつつ乱数によって決定された情報に入れ替える。処理S17において、分配演算部22は、処理S11において作成された分配パターンの数だけ、子供データとして分配パターンを作成する。
【0063】
処理S17において、分配演算部22は、規定の確率で突然変異データが加えられた子供データを作成する。分配演算部22は、突然変異データとして、親データから選択された分配パターンの共通部分の一部の情報を入れ替える。たとえば、分配演算部22は、1%の確率で、突然変異データとして、制約条件を守りつつ乱数によって決定された情報に入れ替える。
【0064】
次に、分配計画部13は、評価を行う(処理S18)。たとえば、処理S18において、時間演算部21は、処理S17において作成された子供データを用いて、処理S12と同様に各マシンの予測処理時間を演算する。時間演算部21は、処理S18において、子データとして設定されている複数の分配パターンの全ての各生産ラインについて、予測処理時間を演算する。処理S18において、分配演算部22は、子データとして設定されている複数の分配パターンの全てにおいて、予測処理時間の合計を演算する。分配演算部22は、たとえば、処理S18において演算された予測処理時間の合計を評価値に設定する。
【0065】
次に、分配演算部22は、所定回数だけ連続で評価値の改善なしか否か判断する(処理S19)。たとえば、所定回数連続で評価値の改善なしであると判断された場合には、処理は処理S20へ進む(処理S19のYES)。たとえば、所定回数連続で評価値の改善なしであると判断されなかった場合には、子供データが親データとして設定され、処理は処理S13へ進む(処理S19のNO)。たとえば、所定回数は、10回である。
【0066】
所定回数連続で評価値の改善なしであると判断されなかった場合には、分配演算部22は、出力する分配パターンを演算する(処理S20)。予測処理時間の合計は、ループを繰り返すことによって、比較的安定した値に収束する。これに対して、予測処理時間の分散は、振動する。このため、たとえば、分配演算部22は、予測処理時間の合計が最小である世代の±5世代において、最も予測処理時間の分散が小さい分配パターンを、出力する分配パターンとして演算する。以上により、予測処理時間の合計と予測処理時間の分散との双方が低減された分配パターンが出力され得る。
【0067】
以上、生産計画方法の一例について説明したが、各処理の順序及びループの回数はこれに限定されない。たとえば、予測処理時間の合計の演算、及び、予測処理時間の分散の演算は、処理S13より後に行われてもよい。
【0068】
次に、
図10を参照して、本実施形態の変形例における生産計画方法の一例について説明する。本変形例は、NSGA2を用いる点で、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
図10は、生産計画方法の一部を示すフローチャートである。
【0069】
まず、分配演算部22は、乱数を導出し、乱数に基づいて複数の分配パターンを作成する(処理S21)。たとえば、処理S21において、分配演算部22は、処理S1において取得された物品リスト情報Lに含まれている物品を、生産ラインのマシンにランダムに分配した複数の分配パターンを作成する。処理S21において、作成された複数の分配パターンは、親データに設定される。たとえば、各分配パターンは、各物品の分配先のマシンの情報を遺伝子として有している。
【0070】
次に、時間演算部21は、各マシンの予測処理時間を演算する(処理S22)。たとえば、処理S22において、時間演算部21は、生産ラインのマシンごとに、エントロピーSとエンタルピーHとを演算する。時間演算部21は、演算されたエントロピーSとエンタルピーHと式(4)、式(10)、及び、式(11)に基づいて、予測処理時間を演算する。時間演算部21は、処理S22において、親データとして設定されている複数の分配パターンの全ての各生産ラインについて、予測処理時間を演算する。
【0071】
次に、分配演算部22は、予測処理時間の合計及び分散を演算する(処理S23)。処理S23において、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの各々において、式(12)に基づいて予測処理時間の合計を演算する。たとえば、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの全てにおいて、予測処理時間の合計を演算する。処理S23において、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの各々において、式(13)に基づいて、予測処理時間の分散を演算する。たとえば、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンの全てにおいて、予測処理時間の分散を演算する。
【0072】
次に、分配演算部22は、非優先ソート及び混雑度ソートを実行する(処理S24)。たとえば、分配演算部22は、予測処理時間の合計と予測処理時間の分散とを目的変数として、非優先ソートを実行する。非優先ソートによって、分配演算部22は、親データとして設定されている複数の分配パターンから、2つの目的変数が両輪している上位50%を選択する。分配演算部22は、処理S24において選択された複数の分配パターンを、親データとして更新する。たとえば、分配演算部22は、予測処理時間の合計と予測処理時間の分散との目的変数空間において、混雑度ソートを実行する。
【0073】
次に、分配演算部22は、遺伝的アルゴリズム処理を実行する(処理S25)。分配演算部22は、たとえば、混雑度の低い2つの分配パターンを乱数によって選択し、選択された2つの分配パターンの遺伝子の共通部分の情報を引き継いだ分配パターンを子供データとして作成する。処理S25において、分配演算部22は、たとえば、親データから引き継がない遺伝子を、マシンの制約条件を守りつつ乱数によって決定された情報に入れ替える。処理S25において、分配演算部22は、処理S21において作成された分配パターンの数だけ、子供データとして分配パターンを作成する。
【0074】
処理S25において、分配演算部22は、規定の確率で突然変異データが加えられた子供データを作成する。分配演算部22は、突然変異データとして、親データから選択された分配パターンの共通部分の一部の情報を入れ替える。たとえば、分配演算部22は、1%の確率で、突然変異データとして、制約条件を守りつつ乱数によって決定された情報に入れ替える。
【0075】
次に、分配演算部22は、所定回数だけループを実行したか否かを判断する(処理S26)。たとえば、所定回数だけループを実行したと判断された場合には、処理は処理S27へ進む(処理S26のYES)。たとえば、所定回数だけループを実行したと判断されなかった場合には、処理は処理S22へ進む(処理S26のNO)。所定回数は、たとえば、予め決められた値である。
【0076】
次に、分配演算部22は、分配パターンを演算する(処理S27)。たとえば、分配演算部22は、原点からユーグリッド距離で最も近い点に相当する分配パターン、又は、規定の分散以下の分配パターンのうち予測処理時間の合計が最小の分配パターンを、出力する分配パターンとして演算する。以上により、予測処理時間の合計と予測処理時間の分散との双方が低減された分配パターンが出力され得る。以上、生産計画方法の一例について説明したが、各処理の順序及びループの回数はこれに限定されない。
【0077】
次に、
図11から
図14を参照して、本実施形態の変形例における生産計画装置について説明する。
図11は、生産計画装置のブロック図である。
図12は、物品のパラメータを示す表である。本変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。本変形例は、分配計画部13の代わりに分配計画部13Aを備えていると共にパラメータ抽出部70を備えている点で、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0078】
生産計画装置1Aの取得部11において取得される物品リスト情報Lは、たとえば、複数種類の物品の情報を含んでいる。
図12に示されているように、生産計画装置1Aの取得部11において取得される物品リスト情報Lは、複数種類の物品の各々を特定する複数種類のパラメータについて、各パラメータの値を示すパラメータ情報を含んでいる。パラメータ情報は、たとえば、物品を特定する物品名と、パラメータXと、パラメータYと、パラメータZと、パラメータWとを含んでいる。生産計画装置1Aは、取得部11によって取得された物品リスト情報Lに基づいて、生産計画データを作成する。
【0079】
生産計画装置1Aの分配計画部13Aは、エントロピーSに基づいて、分配計画データを作成する。エントロピーSは、各生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられている。ロス情報は、たとえば、各パラメータの値の種類ごとの数を含んでいる。換言すれば、分配計画部13Aは、複数種類のパラメータに含まれる複数のパラメータの各々の値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーSに基づいて、分配計画データを作成している。
【0080】
生産計画装置1Aの分配計画部13Aは、たとえば、式(3)の“N”に、生産ラインに分配される物品の数を代入し、式(3)の“n
i”に、生産ラインに分配される物品の各パラメータの値の種類ごとの数を代入する演算によって、エントロピーSを演算する。たとえば、
図12に示されている表において、物品名の値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーSは、In(5!/1!1!2!1!)である。パラメータXの値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーSは、In(5!/1!1!2!1!)である。パラメータYの値ごとの種類の数に関連付けられたエントロピーSは、In(5!/2!3!)である。パラメータZの値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーSは、In(5!/5!)である。パラメータWの値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーSは、In(5!/4!1!)である。
【0081】
本変形例において、分配計画部13Aは、エンタルピーHとエントロピーSとに基づいて、分配計画データを作成する。エンタルピーHは、各生産ラインに分配される複数種類の物品の総数が関連付けられている。熱力学において、エンタルピーHは、粒子が持つエネルギーの総和である。複数種類のパラメータに対して各パラメータのエントロピーをSiとすると、エンタルピーHとエントロピーSとの関係は、式(21)G/H=1-(1/H)ΣTiSiによって表される。“i”は、パラメータの種類の違いを示している。
【0082】
生産計画装置1Aは、生産計画装置1の構成に加えて、パラメータ抽出部70をさらに備えている。パラメータ抽出部70は、複数種類のパラメータの間における相関情報に基づいて、複数種類のパラメータから複数のパラメータを抽出する。
【0083】
たとえば、パラメータ抽出部70は、複数種類のパラメータのうちの第1の組合せの相関係数よりも低い相関係数を有している第2の組合せに含まれるパラメータを抽出する。
図13は、物品のパラメータの相関関係を示す図である。
図13には、パラメータ間の相関係数が示されている。
図13に示す例において、物品名と、パラメータXと、パラメータYと、パラメータZとにおいて、互いの相関係数は、0.87~1である。パラメータWは、その他のパラメータに対して、0.66以下の相関係数を有している。この場合、たとえば、物品名、パラメータX、パラメータY、及び、パラメータZからなる組み合わせが第1の組み合わせに相当し、パラメータWとその他のパラメータとの組み合わせが第2の組み合わせに相当する。パラメータ抽出部70は、たとえば、第2の組み合わせに含まれるパラメータXとパラメータZとを抽出する。
【0084】
この場合、式(9)への式(21)の代入によって、以下の式(22)が導かれる。
【数7】
【0085】
分配計画部13Aは、パラメータ抽出部70において抽出されたパラメータごとにパラメータの値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーSiに基づいて、分配計画データを作成する。時間演算部21Aは、たとえば、式(22)が満足されるように、予測処理時間を演算する。分配演算部22Aは、以下の式(12)によって、複数の生産ラインの予測処理時間の合計Timetotalを演算する。分配演算部22Aは、以下の式(13)によって、複数の生産ラインの予測処理時間の分散varを演算する。
【0086】
次に、
図14を参照して、本変形例における生産計画方法について説明する。
図14は、生産計画方法の一部を示すフローチャートである。
図14に示す生産計画方法は、分配計画部13の代わりに分配計画部13Aが用いられる点、及び、パラメータ抽出部70によるパラメータの抽出処理が含まれている点において、
図8に示す生産計画方法と相違する。以下、
図8に示す生産計画方法との相違点を主として説明する。
【0087】
まず、取得部11が、物品リスト情報Lを取得する(処理S1)。次に、パラメータ抽出部70が、物品リスト情報Lに含まれている複数種類のパラメータの間における相関情報に基づいて、複数種類のパラメータから複数のパラメータを抽出する(処理S31)。パラメータ抽出部70は、複数種類のパラメータのうちの第1の組合せの相関係数よりも低い相関係数を有している第2の組合せに含まれるパラメータを抽出する。
【0088】
次に、分配計画部13Aが、分配計画処理を実行する(処理S2)。処理S2において、分配計画部13Aは、パラメータ抽出部70において抽出されたパラメータごとにパラメータの値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーSiに基づいて、分配計画データを作成する。
【0089】
次に、順序計画部17が、順序計画処理を実行する(処理S3)。次に、出力部19が、生産計画データを出力する(処理S4)。出力部19は、たとえば、分配計画部13Aにおいて作成された分配計画データ、及び、順序計画部17において作成された順序計画データを出力する。
【0090】
次に、
図15を参照して、本実施形態の変形例における生産計画装置について説明する。本変形例は、概ね、上述した実施形態及び変形例と類似又は同じである。本変形例は、時間演算部21Aが上述の時間演算部21Aと異なる処理を行う点で、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0091】
本変形例においても、分配計画部13Aは、エントロピーSに基づいて、分配計画データを作成する。エントロピーSは、各生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられている。本変形例において、ロス情報は、たとえば、各生産ラインにおいて分配された物品の切替時間、すなわち、各生産ラインにおけるロット切替時間を含んでいる。換言すれば、ロス情報は、たとえば、各パラメータの値の種類ごとの数に応じた切替時間を含んでいる。換言すれば、分配計画部13は、各生産ラインにおけるロット切替時間に関連付けられたエントロピーSに基づいて、分配計画データを作成している。
【0092】
複数の生産ラインの各々における予測処理時間において、式(23):Timepred=Timeideal+Timeloss が成立する。“Timepred”は、各生産ラインにおける予測処理時間である。予測処理時間は、生産ラインに分配された物品の生産処理時間である。“Timeideal”は、各生産ラインにおける理想処理時間である。“Timeloss”は、各生産ラインにおける損失時間である。損失時間は、たとえば、各生産ラインにおいて分配された物品の切替時間、すなわち、各生産ラインにおけるロット切替時間に相当する。
【0093】
この場合、“Timeideal”は、式(24):Timeideal=Σ(Ni/vi)によって表される。“Nj”は、各生産ラインに分配された複数種類の物品のうちi番目の種類の物品の総数である。“vj”は、各生産ラインに分配された複数種類の物品のうちi番目の種類の物品の予想処理速度である。
【0094】
“Timeloss”は、エントロピーS用いて、式(25):Timeloss=ΣXjSjと表される。“Xj”は、各生産ラインに分配された複数種類のパラメータのうちj番目のパラメータの係数である。“Sj”は、各生産ラインに分配された複数種類のパラメータのうちj番目のパラメータに対するエントロピーである。
【0095】
本変形例において、時間演算部21Aは、式(23)、式(24)、及び式(25)が満足されるように、予測処理時間を熱力学的に演算する。このようにして熱力学的に求められた予測処理時間は、遺伝子的アルゴリズムで求められた予測処理時間と相関関係を有する。
図15は、遺伝子的アルゴリズムで求めた切替時間の総和と熱力学的に求めた切替時間の総和との相関図である。R
2値は、0.9526である。このように、遺伝子的アルゴリズムで求めた切替時間の総和と、熱力学的に求めた切替時間の総和とは、強い相関関係を有している。
【0096】
次に、
図16を参照して、生産計画装置1,1Aのハードウェア構成について説明する。
図16は、生産計画装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。生産計画装置1Aも、生産計画装置1と同様のハードウェア構成を有している。
【0097】
生産計画装置1,1Aは、プロセッサ101と、主記憶装置102と、補助記憶装置103と、通信装置104と、入力装置105と、出力装置106とを備えている。生産計画装置1,1Aは、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1又は複数のコンピュータを含んでいる。取得部11、分配計画部13,13A、順序計画部17、格納部18、出力部19、及び、パラメータ抽出部70のそれぞれは、1つのコンピュータによって構成されていてもよいし、複数のコンピュータによって構成されていてもよい。生産計画装置1,1Aは、ハードウェアと協働して実現されている。
【0098】
生産計画装置1,1Aが、複数のコンピュータによって構成される場合には、これらのコンピュータはローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つの生産計画装置1,1Aが構築される。
【0099】
プロセッサ101は、オペレーティングシステム及びアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶装置102は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。たとえば、生産計画装置1の各種機能部の少なくとも一部は、プロセッサ101及び主記憶装置102によって実現され得る。たとえば、取得部11、分配計画部13,13A、順序計画部17、格納部18、出力部19、及び、パラメータ抽出部70の少なくとも一部は、プロセッサ101及び主記憶装置102によって実現される。
【0100】
補助記憶装置103は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶装置103は、一般的に主記憶装置102よりも大量のデータを記憶する。たとえば、格納部18の少なくとも一部は、補助記憶装置103によって実現される。
【0101】
通信装置104は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。たとえば、取得部11及び出力部19の少なくとも一部は、通信装置104によって実現される。入力装置105は、キーボード、マウス、及び、タッチパネルなどにより構成される。たとえば、取得部11の少なくとも一部は、入力装置105によって実現される。出力装置106は、ディスプレイ及びプリンタなどにより構成される。たとえば、出力部19の少なくとも一部は、出力装置106によって実現される。たとえば、出力装置106は、表示装置を含んでいる。
【0102】
補助記憶装置103は、予め、プログラム及び処理に必要なデータを格納している。プログラムは、生産計画装置1,1Aの各機能要素をコンピュータに実行させる。このプログラムによって、たとえば、上述した処理S1から処理S31がコンピュータにおいて実行される。このプログラムは、たとえば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に記録された上で提供されてもよい。このプログラムは、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0103】
次に、本実施形態又は変形例における生産計画装置1,1A、生産計画方法、及び、プログラムの作用効果について説明する。
【0104】
この生産計画装置1において、分配計画部13は、エントロピーSに基づいて、分配計画データを作成する。エントロピーSは、各生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられている。このように、エントロピーSと生産処理速度のロスに関するロス情報とが関係付けられており、エントロピーSに基づいて分配計画データを作成する。
図5に示されているように、エントロピーSは、生産ラインに分配された物品の平均生産速度に対して相関性を有している。このため、エントロピーSに基づいて分配計画データを作成すれば、演算量が抑制されながら生産スループットが低減される分配計画データが作成される。したがって、複数の生産ラインにおいて複数種類の物品を作成する場合にも、生産スループットを低減できる生産計画が容易に実行され得る。生産計画装置1Aについても同様である。
【0105】
ロス情報は、各生産ラインに分配される物品の種類ごとの数を含んでいてもよい。エントロピーは、複数の生産ラインの各々に分配される物品の種類ごとの数に関連付けられていてもよい。この場合、エントロピーSと生産ラインに分配された物品の平均生産速度との相関性がより確実に確保される。したがって、容易かつ確実に生産スループットが低減される分配計画データが作成される。
【0106】
分配計画部13は、各生産ラインに分配される複数種類の物品の総数が関連付けられたエンタルピーHとエントロピーSとに基づいて、分配計画データを作成してもよい。
図6に示されているように、エンタルピーH及びエントロピーSからなる“1-(S/H)”は、エントロピーを用いずに演算された平均生産速度に対して相関性を有している。この相関性は、エンタルピーHを用いない場合よりも高い。したがって、より容易かつ確実に、生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0107】
分配計画部13は、時間演算部21と、分配演算部22とを含んでいてもよい。時間演算部21は、各生産ラインに分配された複数種類の物品の予測処理時間を演算する。分配演算部22は、時間演算部21によって演算された予測処理時間に基づいて、複数の生産ラインの各々へ物品リスト情報Lに含まれる複数種類の物品を分配する分配パターンを演算する。時間演算部21は、エントロピーSとエンタルピーHとに基づいて、予測処理時間を演算してもよい。この場合、より容易かつ確実に、生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0108】
分配演算部22は、各生産ラインの予測処理時間の合計及び分散を演算し、演算結果に基づいて各生産ラインへ物品リスト情報Lに含まれる複数種類の物品を分配する分配パターンを演算してもよい。この場合、より容易かつ確実に、生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0109】
時間演算部21は、Timepred=H/vpred、vpred=vmax(G/H)が満足されるように、予測処理時間を演算してもよい。この場合、複数の生産ラインの各々において、各生産ラインにおける予測処理時間は、“Timepred”であってもよい。各生産ラインに分配された複数種類の物品の予測処理速度は、“vpred”であってもよい。各生産ラインにおける最大処理速度は、“vmax”であってもよい。各生産ラインにおけるエンタルピーは、“H”であってもよい。各生産ラインにおけるエントロピー及びエンタルピーから演算されるギブスエネルギーは、“G”であってもよい。この場合、予測処理時間がより容易に演算される。
【0110】
時間演算部21は、Timepred=Timeideal+Timeloss、Timeideal=Σ(Ni/vi)、及び、Timeloss=ΣXjSjが満足されるように、予測処理時間を演算してもよい。この場合、複数の生産ラインの各々において、各生産ラインにおける予測処理時間は、“Timepred”であってもよい。各生産ラインにおける理想処理時間は、“Timeideal”であってもよい。各生産ラインにおける損失時間は、“Timeloss”であってもよい。各生産ラインに分配された複数種類の物品のうちi番目の種類の物品の総数は、“Ni”であってもよい。各生産ラインに分配された複数種類の物品のうちi番目の種類の物品の予想処理速度は、“vi”であってもよい。各生産ラインに分配された複数種類のパラメータのうちi番目のパラメータの係数は、“Xj”であってもよい。各生産ラインに分配された複数種類のパラメータのうちj番目のパラメータに対するエントロピーは、“Si”であってもよい。この場合、予測処理時間がより容易に演算される。
【0111】
物品リスト情報Lは、複数種類の物品の各々を特定する複数種類のパラメータについて、各パラメータの値を示すパラメータ情報を含んでいてもよい。ロス情報は、各パラメータの値の種類ごとの数を含んでいてもよい。分配計画部13Aは、複数種類のパラメータに含まれる複数のパラメータの各々の値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーに基づいて、分配計画データを作成している。この場合、より容易かつ確実に、生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0112】
生産計画装置1Aは、パラメータ抽出部70をさらに備えている。パラメータ抽出部70は、複数種類のパラメータの間における相関情報に基づいて、複数種類のパラメータから複数のパラメータを抽出する。分配計画部13Aは、パラメータ抽出部において抽出された前記パラメータごとにパラメータの値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーに基づいて、分配計画データを作成してもよい。この場合、必要性が低いパラメータが除かれロバスト性が向上され得る。したがって、より高精度に生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0113】
パラメータ抽出部70は、複数種類のパラメータのうちの第1の組合せの相関係数よりも低い相関係数を有している第2の組合せに含まれるパラメータを抽出してもよい。この場合、相関係数に基づいてパラメータに関して、必要性が低いパラメータが除外され得る。パラメータの数が低減されれば、ロバスト性が向上し得る。したがって、より高精度に生産スループットを低減できる分配計画データが作成される。
【0114】
次に、
図17から
図20を参照して、本実施形態における生産計画装置の検証の一例を説明する。
図17は、比較例における生産計画データの複数の生産ラインのガントチャートである。
図18は、本実施形態に示す例における生産計画データの複数の生産ラインのガントチャートである。比較例では、複数種類の物品が人の経験則によって生産ラインに分配され、生産ラインごとに遺伝子的アルゴリズムを用いて作成された生産計画データである。
図17及び
図18では、互いに異なる種類の物品N1~N12の生産処理時間が示されている。同一の記号は、同一種類の物品である。
【0115】
同一種類の物品を生産する生産ラインでは、式(1)におけるロット切替時間が低減されると考えられる。一方で、生産ラインに分配された物品の種類が多いほど、ロット切替時間も増加すると考えられる。比較例では、生産ライン間において、分配される物品の種類の数が多く異なる。比較例では、生産の終了時間も大幅にズレている。これに対して、本実施形態に示す例における生産計画データでは、生産処理時間が比較例よりも短縮され、生産の終了時間のズレも低減されいることが確認された。
【0116】
図19は、本実施形態に示す例と比較例とに関して、予測処理時間の合計を比較するグラフである。
図19において、データD1は比較例を示しており、データD2は本実施形態における例を示している。
図19において、データD1では、エントロピーSが用いられておらず、生産ラインにおける物品の作成順序と複数種類の物品を複数の生産ラインへ分配する分配パターンとに対して同時に遺伝的アルゴリズムが適用されている。データD2では、生産計画装置1Aにおいて分配計画データを作成し、作成された分配計画データに基づいて物品を分配した後に遺伝的アルゴリズムによって作成順序が作成されている。この場合、データD2の予測処理時間の合計の方がデータD1の予測処理時間の合計よりも短縮されていることが確認された。
【0117】
図20は、本実施形態に示す例と比較例とに関して、予測処理時間の分散を比較するグラフである。
図20において、データD11は比較例を示しており、データD12は本実施形態における例を示している。
図20において、データD11では、エントロピーSが用いられておらず、生産ラインにおける物品の作成順序と複数種類の物品を複数の生産ラインへ分配する分配パターンとに対して同時に遺伝的アルゴリズムが適用されている。データD12では、生産計画装置1Aにおいて分配計画データを作成し、作成された分配計画データに基づいて物品を分配した後に遺伝的アルゴリズムによって作成順序が作成されている。この場合、データD12の予測処理時間の分散の方がデータD11の予測処理時間の分散よりも低減されていることが確認された。
【0118】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0119】
たとえば、本実施形態において示した例において、分配計画部13,13Aと順序計画部17との双方を備えており、分配計画処理と順序計画処理との双方を実行する構成が示されている。しかしながら、順序計画部17を備えずに、分配計画部13,13Aのみを備えていてもよい。この場合、生産計画データとして、分配計画データのみが出力されてもよい。
【0120】
本実施形態において示した例において、エントロピーとエンタルピーとの双方に基づいて予測処理時間を演算する構成を説明した。しかしながら、予測処理時間を演算せずに、生産計画データが作成されてもよい。エンタルピーを用いずに、エントロピーのみを用いて、生産計画データが作成されてもよい。
【0121】
上述した実施形態の記載から把握されるとおり、本明細書は、以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
複数種類の物品の情報を含む物品リスト情報を取得する取得部と、
前記物品リスト情報に含まれる前記複数種類の物品を複数の生産ラインに分配する分配計画データを、作成する分配計画部と、を備え、
前記分配計画部は、各前記生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられているエントロピーに基づいて、前記分配計画データを作成する、生産計画装置。
(付記2)
前記ロス情報は、各前記生産ラインに分配される前記物品の種類ごとの数を含んでおり、
前記エントロピーは、前記複数の生産ラインの各々に分配される前記物品の種類ごとの数に関連付けられている、付記1に記載の生産計画装置。
(付記3)
前記分配計画部は、各前記生産ラインに分配される前記複数種類の物品の総数が関連付けられたエンタルピーと前記エントロピーとに基づいて、前記分配計画データを作成する、付記1又は付記2に記載の生産計画装置。
(付記4)
前記分配計画部は、各前記生産ラインに分配された前記複数種類の物品の予測処理時間を演算する時間演算部と、前記時間演算部によって演算された前記予測処理時間に基づいて、前記複数の生産ラインの各々へ前記物品リスト情報に含まれる前記複数種類の物品を分配する分配パターンを演算する分配演算部と、を含んでおり、
前記時間演算部は、前記エントロピーと前記エンタルピーとに基づいて、前記予測処理時間を演算する、付記3に記載の生産計画装置。
(付記5)
前記分配演算部は、各前記生産ラインの前記予測処理時間の合計及び分散を演算し、演算結果に基づいて前記各生産ラインへ前記物品リスト情報に含まれる前記複数種類の物品を分配する分配パターンを演算する、付記4に記載の生産計画装置。
(付記6)
前記複数の生産ラインの各々において、各前記生産ラインにおける前記予測処理時間が“Timepred”であり、各前記生産ラインに分配された前記複数種類の物品の予測処理速度が“vpred”であり、各前記生産ラインにおける最大処理速度が“vmax”であり、各前記生産ラインにおける前記エンタルピーが“H”であり、各前記生産ラインにおける前記エントロピー及び前記エンタルピーから演算されるギブスエネルギーが“G”である場合、前記時間演算部は、
Timepred=H/vpred
vpred=vmax(G/H)
が満足されるように、前記予測処理時間を演算する、付記4又は付記5に記載の生産計画装置。
(付記7)
前記複数の生産ラインの各々において、各前記生産ラインにおける前記予測処理時間が“Timepred”であり、各前記生産ラインにおける理想処理時間が“Timeideal”であり、各前記生産ラインにおける損失時間が“Timeloss”であり、各前記生産ラインに分配された前記複数種類の物品のうちi番目の種類の物品の総数が“Ni”であり、各前記生産ラインに分配された前記複数種類の物品のうちi番目の種類の物品の予想処理速度が“vi”であり、各前記生産ラインに分配された前記複数種類のパラメータのうちj番目のパラメータの係数が“Xj”であり、各前記生産ラインに分配された前記複数種類のパラメータのうちj番目のパラメータに対する前記エントロピーが“Sj”である場合、
前記時間演算部は、
Timepred=Timeideal+Timeloss
Timeideal=Σ(Ni/vi)
Timeloss=ΣXjSj
が満足されるように、前記予測処理時間を演算する、付記4又は付記5に記載の生産計画装置。
(付記8)
前記物品リスト情報は、前記複数種類の物品の各々を特定する複数種類のパラメータについて、各前記パラメータの値を示すパラメータ情報を含んでおり、
前記ロス情報は、各前記パラメータの値の種類ごとの数を含んでおり、
前記分配計画部は、前記複数種類のパラメータに含まれる複数の前記パラメータの各々の値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーに基づいて、前記分配計画データを作成する、付記1から付記7のいずれか一つに記載の生産計画装置。
(付記9)
前記複数種類のパラメータの間における相関情報に基づいて、前記複数種類のパラメータから複数の前記パラメータを抽出するパラメータ抽出部をさらに備え、
前記分配計画部は、前記パラメータ抽出部において抽出された前記パラメータごとに前記パラメータの値の種類ごとの数に関連付けられたエントロピーに基づいて、前記分配計画データを作成する、付記8に記載の生産計画装置。
(付記10)
前記パラメータ抽出部は、前記複数種類のパラメータのうちの第1の組合せの相関係数よりも低い相関係数を有している第2の組合せに含まれる前記パラメータを抽出する、付記9に記載の生産計画装置。
(付記11)
複数種類の物品の情報を含む物品リスト情報を取得することと、
前記物品リスト情報に含まれる前記複数種類の物品を複数の生産ラインに分配する分配計画データを、各前記生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられたエントロピーに基づいて作成することと、を有している、生産計画方法。
(付記12)
複数種類の物品の情報を含む物品リスト情報を取得することと、
前記物品リスト情報に含まれる前記複数種類の物品を複数の生産ラインに分配する分配計画データを、各前記生産ラインにおける生産処理速度のロスに関するロス情報に関連付けられたエントロピーに基づいて作成することと、をコンピュータに実行させる、プログラム。
【符号の説明】
【0122】
1,1A…生産計画装置、11…取得部、13,13A…分配計画部、21,21A…時間演算部、22,22A…分配演算部、70…パラメータ抽出部、H…エンタルピー、L…物品リスト情報、S,Si…エントロピー、vmax…最大処理速度、var…分散。