(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137757
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ベール成形体、ブロック共重合体、樹脂組成物、及びブロック共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 297/04 20060101AFI20240927BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20240927BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20240927BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08F297/04
C08L25/04
C08L25/12
C08L53/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024029695
(22)【出願日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2023048313
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000228109
【氏名又は名称】日本エラストマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 英樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 将士
(72)【発明者】
【氏名】安本 敦
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BC02W
4J002BC04W
4J002BC06W
4J002BC07W
4J002BP01X
4J002GQ00
4J026HA15
4J026HA26
4J026HA32
4J026HA39
4J026HA48
4J026HB06
4J026HB26
4J026HB32
4J026HB39
4J026HB45
4J026HB48
4J026HE01
(57)【要約】
【課題】適度な硬さを有し、粉砕しやすく、ハンドリング性に優れたブロック共重合体からなるベール成形体を提供する。
【解決手段】芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位を有するブロック共重合体のベール成形体であって、
前記ブロック共重合体が、ブロック芳香族ビニル部を有し、
<条件(a)~(d)>を満たすベール成形体。
<条件(a)>
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が10~30質量%。
<条件(b)>
芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率が90~100質量%。
<条件(c)>
ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量が10,000~30,000。
<条件(d)>
ブロック芳香族ビニル部の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が1.15~1.40。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位を有するブロック共重合体のベール成形体であって、
前記ブロック共重合体が、ブロック芳香族ビニル部を有し、
下記<条件(a)>~<条件(d)>を満たす、ベール成形体。
<条件(a)>
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が10~30質量%。
<条件(b)>
芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率が90~100質量%。
<条件(c)>
ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量が10,000~30,000。
<条件(d)>
ブロック芳香族ビニル部の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が1.15~1.40。
【請求項2】
前記ブロック共重合体の5質量%のスチレン溶液粘度が、25℃の温度条件下で7~15mPa・sである、
請求項1に記載のベール成形体。
【請求項3】
前記ブロック共重合体の共役ジエン単量体単位の1,2-ビニル結合量が、15~30モル%である、
請求項1に記載のベール成形体。
【請求項4】
JIS K6253に準じて、硬度計タイプEにより測定された硬度が50~72である、
請求項1に記載のベール成形体。
【請求項5】
芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位を有するブロック共重合体であって、
前記ブロック共重合体が、ブロック芳香族ビニル部を有し、
下記<条件(a)>~<条件(d)>を満たす、ブロック共重合体。
<条件(a)>
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が10~30質量%。
<条件(b)>
芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率が90~100質量%。
<条件(c)>
ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量が10,000~30,000。
<条件(d)>
ブロック芳香族ビニル部の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が1.15~1.40。
【請求項6】
前記ブロック共重合体の5質量%のスチレン溶液粘度が、25℃の温度条件下で7~15mPa・sである、
請求項5に記載のブロック共重合体。
【請求項7】
前記ブロック共重合体の共役ジエン単量体単位の1,2-ビニル結合量が、15~30モル%である、
請求項5に記載のブロック共重合体。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベール成形体を構成するブロック共重合体3~20質量部と、
スチレン系樹脂97~80質量部と、
の重合物である、樹脂組成物。
【請求項9】
前記スチレン系樹脂が、スチレン系化合物とアクリロニトリルとの共重合体である、
請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のベール成形体を構成するブロック共重合体の製造方法であって、
反応器に共役ジエン化合物を供給し、ピーク温度が91~100℃となるように共役ジエン化合物を重合させる工程と、
前記反応器内の温度が90~100℃で芳香族ビニル化合物を供給し、重合させる工程を有する、
ブロック共重合体の製造方法。
【請求項11】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載のブロック共重合体3~20質量部と、
スチレン系樹脂97~80質量部と、
の重合物である、樹脂組成物。
【請求項12】
前記スチレン系樹脂が、スチレン系化合物とアクリロニトリルとの共重合体である、
請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載のブロック共重合体の製造方法であって、
反応器に共役ジエン化合物を供給し、ピーク温度が91~100℃となるように共役ジエン化合物を重合させる工程と、
前記反応器内の温度が90~100℃で芳香族ビニル化合物を供給し、重合させる工程を有する、
ブロック共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベール成形体、ブロック共重合体、樹脂組成物、及びブロック共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は、剛性、透明性、及び光沢等が優れ、かつ成形性も優れているため、従来から各種用途に広く使用されているが、耐衝撃性が劣るためゴム状重合体が改質剤としてスチレン系樹脂に加えられている。
スチレン系樹脂にゴム状重合体を添加する方法としては、例えば、ゴム状重合体を機械的にポリスチレン系樹脂にブレンドする方法、ゴム状重合体のスチレン溶液を塊状重合する方法、又は塊状・懸濁重合する方法が挙げられる。
特に、上述したような各種の重合方法によってスチレン系樹脂にゴム状重合体を添加する方法は、得られる樹脂組成物の物性が優れていることから、耐衝撃性スチレン系樹脂組成物として工業的に広く実施されており、家庭用電気製品の材料として利用されている。
【0003】
また、アクリロニトリル-スチレン系樹脂(ABS)の樹脂改質に関しては、改質剤として用いるゴム状重合体の粒子の小粒径化のために、低粘度の芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体の5質量%スチレン溶液を使用する技術が知られている。
例えば、下記特許文献1及び特許文献2には、改質剤である芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体中のブロックスチレン部のピークトップ分子量を所定の値に規定することにより、良好な耐衝撃性スチレン系樹脂を製造する技術が開示されている。
また、下記特許文献3には、Li量が低減された共役ジエン系重合体の製造方法が開示されており、さらには、前記共役ジエン系重合体の5質量%スチレン溶液の粘度を11~35mPa・sとして、これをHIPS樹脂やABS樹脂等の樹脂改質に用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4029470号
【特許文献2】特許第4029471号
【特許文献3】特許第6646437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような改質剤としての芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体は、スチレン溶液の粘度を低く調製することにより良好なベール成形性が得られる。
しかしながら、このようなスチレン溶液粘度が低い芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体であっても、成形されたベール成形体の硬度が高い場合がある。かかる場合には、輸送用ロボットの爪で挟んでベール成形体を移動する際に、爪のくいこみが甘くなり、ベール成形体が外れて落下する場合がある、という問題点を有している。また、ベール成形体が硬いとベール成形体の粉砕時に負荷がかかるため、ベール成形体の投入間隔をあける必要がある、という問題点を有している。
前記ベール成形体の硬さは、芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体の構造の影響を受ける。前記特許文献2には、ベール成形性についての記載はあるが、特許文献1~3にはベール成形体の硬さ及びベール成形体の粉砕性について何ら記載されていない。
なお、「ベール成形体」とは、合成ゴムをプレス成形した25~35kgの大きさのブロック単位の直方体をいう。
【0006】
そこで、本発明においては、適度な硬さを有し、粉砕しやすく、ハンドリング性に優れたブロック共重合体からなるベール成形体、及び前記ベール成形体を構成するブロック共重合体、前記ブロック共重合体とスチレン系樹脂との重合物である樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するため鋭意検討した結果、芳香族ビニル単量体単位の含有量、芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率、ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量、及びブロック芳香族ビニル部の分子量分布を特定することにより、上述した従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
〔1〕
芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位を有するブロック共重合体のベール成形体であって、
前記ブロック共重合体が、ブロック芳香族ビニル部を有し、
下記<条件(a)>~<条件(d)>を満たす、ベール成形体。
<条件(a)>
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が10~30質量%。
<条件(b)>
芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率が90~100質量%。
<条件(c)>
ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量が10,000~30,000。
<条件(d)>
ブロック芳香族ビニル部の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が1.15~1.40。
〔2〕
前記ブロック共重合体の5質量%のスチレン溶液粘度が、25℃の温度条件下で7~15mPa・sである、前記〔1〕に記載のベール成形体。
〔3〕
前記ブロック共重合体の共役ジエン単量体単位の1,2-ビニル結合量が、15~30モル%である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のベール成形体。
〔4〕
JIS K6253に準じて、硬度計タイプEにより測定された硬度が50~72である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のベール成形体。
〔5〕
芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位を有するブロック共重合体であって、
前記ブロック共重合体が、ブロック芳香族ビニル部を有し、
下記<条件(a)>~<条件(d)>を満たす、ブロック共重合体。
<条件(a)>
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が10~30質量%。
<条件(b)>
芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率が90~100質量%。
<条件(c)>
ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量が10,000~30,000。
<条件(d)>
ブロック芳香族ビニル部の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が1.15~1.40。
〔6〕
前記ブロック共重合体の5質量%のスチレン溶液粘度が、25℃の温度条件下で7~15mPa・sである、前記〔5〕に記載のブロック共重合体。
〔7〕
前記ブロック共重合体の共役ジエン単量体単位の1,2-ビニル結合量が、15~30モル%である、前記〔5〕又は〔6〕に記載のブロック共重合体。
〔8〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のベール成形体を構成するブロック共重合体3~20質量部と、
スチレン系樹脂97~80質量部と、
の重合物である、樹脂組成物。
〔9〕
前記スチレン系樹脂が、スチレン系化合物とアクリロニトリルとの共重合体である、前記〔8〕に記載の樹脂組成物。
〔10〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のベール成形体を構成するブロック共重合体の製造方法であって、
反応器に共役ジエン化合物を供給し、ピーク温度が91~100℃となるように共役ジエン化合物を重合させる工程と、
前記反応器内の温度が90~100℃で芳香族ビニル化合物を供給し、重合させる工程を有する、
ブロック共重合体の製造方法。
〔11〕
前記〔5〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のブロック共重合体3~20質量部と、
スチレン系樹脂97~80質量部と、
の重合物である、樹脂組成物。
〔12〕
前記スチレン系樹脂が、スチレン系化合物とアクリロニトリルとの共重合体である、前記〔11〕に記載の樹脂組成物。
〔13〕
前記〔5〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のブロック共重合体の製造方法であって、
反応器に共役ジエン化合物を供給し、ピーク温度が91~100℃となるように共役ジエン化合物を重合させる工程と、
前記反応器内の温度が90~100℃で芳香族ビニル化合物を供給し、重合させる工程を有する、
ブロック共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、適度な硬さを有し、粉砕しやすくハンドリング性に優れた芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体からなるベール成形体、及び前記ベール成形体を構成するブロック共重合体、前記ブロック共重合体とスチレン系樹脂との重合物であって光沢性と耐衝撃性に優れる樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0011】
〔ベール成形体、及びブロック共重合体〕
本実施形態のベール成形体は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位を有する、本実施形態のブロック共重合体のベール成形体である。
なお、本明細書において、モノマーがブロック共重合体中の構成要素となったものを「単量体単位」といい、重合体に組み込まれる前のモノマーを「化合物」という。
本実施形態のベール成形体を構成する、本実施形態のブロック共重合体は、ブロック芳香族ビニル部を有し、また、下記の<条件(a)>~<条件(d)>を満たす。
<条件(a)>
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が10~30質量%。
<条件(b)>
芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率が90~100質量%。
<条件(c)>
ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量が10,000~30,000。
<条件(d)>
ブロック芳香族ビニル部の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が1.15~1.40。
【0012】
本実施形態のベール成形体及びブロック共重合体が上記構成を有することにより、適度な硬さを有し、粉砕しやすく、ハンドリング性に優れたベール成形体が得られる。
【0013】
本明細書中、重合体の製造に用いられるモノマーを「化合物」と記載し、重合体構成要素を「単量体単位」と記載する。
ブロック共重合体中の共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン化合物としては、以下に限定されないが、例えば1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(すなわちイソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン等が挙げられる。これらの中では1,3-ブタジエンや2-メチル-1,3-ブタジエンが好ましく、特に1,3-ブタジエンが好ましい。これらの共役ジエン化合物は、それぞれ1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位を形成する芳香族ビニル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル化合物は、それぞれ1種のみを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
(<条件(a)>ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量)
本実施形態のベール成形体を構成するブロック共重合体、及び本実施形態のブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、10~30質量%であり、好ましくは14~26質量%であり、より好ましくは17~23質量%である。
また、前記ブロック共重合体中の共役ジエン単量体単位の含有量は、70~90質量%であり、好ましくは74~86質量%であり、より好ましくは77~83質量%である。
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が10質量%以上であると、必要なベール成形体の硬さを担保し、荷重により変形しにくくなる傾向にある。また、芳香族ビニル系樹脂の強靭化剤として使用した際に剛性の改善効果が得られる傾向にある。芳香族ビニル単量体単位の含有量が30質量%以下であると、ベール成形体の硬さが高くなり過ぎず、良好なベール成形体の粉砕性、溶解性が得られる傾向にあり、芳香族ビニル系樹脂の強靭化剤として使用した際の耐衝撃性を確保できる。
なお、本明細書中、「ベール成形体の硬さ」とは、ブロック共重合体にオイルを添加しないで成形したベール成形体の硬さを意味する。本実施形態においては、いわゆる非油展の状態のベール成形体の硬さを、ブロック共重合体の構造によって制御することにより、ベール成形体のハンドリング性を改良しつつ、ベール成形体が使用される用途において、意図しないオイルが含まれることが無くなり、樹脂組成物の設計自由度の向上等の効果も得られる。
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、重合工程において、芳香族ビニル化合物の添加量、重合時間を調整することにより、上述した数値範囲に制御できる。
【0016】
(<条件(b)>ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率)
本実施形態のベール成形体を構成するブロック共重合体、及び本実施形態のブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率は、90~100質量%であり、好ましくは93~100質量%であり、より好ましくは95~99.9質量%の範囲である。
ここで、「ブロック芳香族ビニル部」とは、芳香族ビニル単量体単位が10連鎖以上結合しているブロック部をいう。
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率が、90質量%以上であることにより、ベール成形体を粉砕した後のスチレンやスチレン/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸エステル等への溶解性が良好となる傾向にあり、芳香族ビニル系樹脂の強靭化剤として使用した際に耐衝撃性も改善しやすい傾向にある。
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率は、重合工程における芳香族ビニル化合物の添加のタイミングを調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
【0017】
(<条件(c)>ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量)
本実施形態のベール成形体、及び本実施形態のブロック共重合体を構成するブロック共重合体は、前記ブロック共重合体を構成するブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量が10,000~30,000である。
具体的には、前記ブロック共重合体をオゾン分解し、ブロック芳香族ビニル部の分子量分布曲線におけるピークトップ分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)で測定される標準単分散ポリスチレン換算の値で、10,000~30,000の範囲であり、好ましくは11,000~27,000の範囲であり、より好ましくは12,000~25,000の範囲である。
ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量が10,000以上であることで、本実施形態のベール成形体が必要な硬さを有し、ベール成形体を段積みした際に荷重によるベール成形体の変形が起きにくい傾向にある。ブロック芳香族ビニル部の分子量分布曲線のピークトップ分子量が30,000以下であることで、本実施形態のベール成形体の硬さが高くなりすぎず、取り扱い性が良好で、粉砕時の負荷増大も防止できる傾向にある。また、ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量が10,000~30,000の範囲であると、芳香族ビニル系樹脂の強靭化剤として使用した際に耐衝撃性や光沢のバランスが良好なものとなる傾向にある。
芳香族ビニル部のピークトップ分子量は、重合開始剤の添加量及び重合工程における芳香族ビニル化合物の添加量を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
【0018】
(<条件(d)>ブロック芳香族ビニル部の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比)
本実施形態のベール成形体を構成するブロック共重合体、及び本実施形態のブロック共重合体の重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)(以下、分子量分布と記載する)は、1.15~1.40である。
具体的には、ブロック共重合体をオゾン分解し、ブロック芳香族ビニル部の分子量測定を行ったとき、分子量分布(Mw/Mn)が1.15~1.40の範囲であるものとする。本実施形態のベール成形体の硬さの調整の観点から、好ましくは1.15~1.35の範囲であり、より好ましくは1.15~1.30の範囲であり、さらに好ましくは1.15~1.25の範囲であり、さらにより好ましくは1.18~1.35の範囲であり、よりさらに好ましくは1.18~1.30の範囲であり、特に好ましくは1.20~1.30の範囲である。
ブロック芳香族ビニル部の分子量分布を上記範囲とすることにより、ベール成形体の硬さを実用上良好な数値に制御できる傾向にある。ここで、ベール成形体の硬さとは、JIS K 6253に準じて、硬度計タイプEにより測定された硬度であり、具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
ブロック芳香族ビニル部の分子量分布(Mw/Mn)が1.15以上であると、ベール成形体の硬さを72以下に調整しやすく、ベール成形体をロボット等の爪で挟んで移動する場合に爪を食い込ませてベール成形体が落下することを防止できる傾向にある。ブロック芳香族ビニル部の分子量分布(Mw/Mn)が1.40以下であると、ベール成形体の硬さが50以上になりやすく、ベール成形体を段積みした際、荷重によるベール成形体の変形を防止できる傾向にある。
ブロック芳香族ビニル部の分子量分布は、重合工程において、芳香族ビニル化合物添加時の反応器内の温度を調整することにより上記数値範囲に制御できる。
【0019】
上述した本実施形態のブロック共重合体のベール成形体の硬さ、すなわちJIS K 6253に準じて、硬度計タイプEにより測定された硬度は、50~72の範囲が好ましく、より好ましくは53~70であり、さらに好ましくは55~68である。ベール成形体の硬さが50以上であることで、ベール成形体を複数個段積みした際、荷重により下のベール成形体が変形することを防止できる傾向にある。ベール成形体の硬さが72以下であることでロボットアームによるベール成形体の取り扱い性を確保でき、また、ベール成形体の粉砕時に負荷が高くならず、間隔を開けなくても粉砕機へベール成形体を連続投入することができ、良好な粉砕効率を担保できる傾向にある。
ブロック共重合体のベール成形体の硬さは、ブロック共重合体を構成するブロック芳香族ビニル部の分子量分布(Mw/Mn)を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。具体的には、前記分子量分布(Mw/Mn)を1.15以上に調整することによりベール成形体の硬さを72以下に制御でき、前記分子量分布(Mw/Mn)を1.40以下に調整することにより、ベール成形体の硬さを50以上に制御できる傾向にある。
ブロック芳香族ビニル部の分子量分布は、重合工程において、芳香族ビニル化合物添加時の反応器内の温度を調整することにより上記数値範囲に制御できる。
【0020】
本実施形態のベール成形体を構成するブロック共重合体、及び本実施形態のブロック共重合体においては、ブロック芳香族ビニル部が前記ブロック共重合体の末端に配置されることが好ましい。これにより、ベール成形体の粉砕後に、スチレン、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸エステル等に溶解させる用途において、これらへの溶解性が良好となる傾向にある。
【0021】
また、本実施形態のベール成形体を構成するブロック共重合体、及び本実施形態のブロック共重合体においては、前記ブロック共重合体の5質量%のスチレン溶液粘度が、25℃の温度条件下で、7~15mPa・sであることが好ましく、より好ましくは8~13mPa・sであり、さらに好ましくは9~12mPa・sである。
ブロック共重合体の5質量%のスチレン溶液粘度が7mPa・s以上であることにより、芳香族ビニル系樹脂の強靭化剤として使用した際に耐衝撃性を改善しやすい傾向にある。
また、ブロック共重合体の5質量%のスチレン溶液粘度が15mPa・s以下であることで、芳香族ビニル系樹脂の強靭化剤として使用した際に、芳香族ビニル系樹脂のゴム粒子を十分に小粒径化しやすく、耐衝撃性、光沢、剛性のバランスを良好にしやすい傾向にある。
ブロック共重合体の5質量%のスチレン溶液粘度は、ブロック共重合体のピークトップ分子量を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
【0022】
本実施形態のベール成形体を構成するブロック共重合体、及び本実施形態のブロック共重合体は、共役ジエン単量体単位の1,2-ビニル結合量が15~30モル%であることが好ましく、より好ましくは16~28%であり、さらに好ましくは17~25%である。1,2-ビニル結合量が30モル%以下であることで、本実施形態のベール成形体、及び本実施形態のブロック共重合体を耐衝撃性芳香族ビニル系樹脂の強靭化剤として使用した際、耐衝撃性芳香族ビニル系樹脂中のゴム粒子の形態がサラミ粒子になるようにグラフト量を適切な範囲に制御しやすく、粒径も制御しやすい傾向にある。また、1,2-ビニル結合量が15モル%以上であると、本実施形態のベール成形体、及び本実施形態のブロック共重合体を耐衝撃性芳香族ビニル系樹脂の強靭化剤として使用した際、特に、アクリロニトリル-スチレン系樹脂(ABS)中でのゴム粒子が小粒子化しやすい傾向にあり、かかる耐衝撃性芳香族ビニル系樹脂と本実施形態のブロック共重合体との重合物である樹脂組成物の耐衝撃性を改善しやすい傾向にある。
ブロック共重合体の1,2-ビニル結合量は、極性物質の添加量及び重合工程における重合反応温度の調整により上記数値範囲に制御できる。
【0023】
本実施形態のベール成形体を構成するブロック共重合体及び本実施形態のブロック共重合体は、ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が10~30質量%、芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率が90~100質量%、ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量が10,000~30,000、ブロック芳香族ビニル部の分子量分布(Mw/Mn)が1.15~1.40の範囲である。
この構造を有するブロック共重合体は、触媒添加量の調整に加えて、反応器に共役ジエン化合物を供給し、ピーク温度が91~100℃となるように共役ジエン化合物を重合させた後、反応器内の温度が90~100℃で芳香族ビニル化合物を供給し、重合させる方法により得られる。
好ましくは、反応器内の温度が91~99℃で芳香族ビニル化合物を供給し、より好ましくは、反応器内の温度が92~98℃で芳香族ビニル化合物を供給し、重合させる方法が挙げられる。
反応器内の温度が90℃未満の場合、ブロック芳香族ビニル部の分子量分布(Mw/Mn)が1.15よりも低くなる傾向となる。反応器内の温度が100℃を超えると、ブロック芳香族ビニル部の分子量分布が広くなり、2山になることもあり、分子量分布(Mw/Mn)がばらつきやすくなる傾向にある。
【0024】
(ブロック共重合体の製造方法)
本実施形態のベール成形体を構成するブロック共重合体は、芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位を有し、さらには、ブロック芳香族ビニル部を有する。
前記ブロック共重合体は、例えば、有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、炭化水素溶媒中で重合することにより製造できる。
【0025】
有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、分子中に一個以上のリチウム原子を結合した化合物が挙げられる。以下に限定されないが、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ヘキサメチレンリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。これらは一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0026】
ブロック共重合体の製造に用いる炭化水素溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素; シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素; 又はベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒が挙げられる。
これらは一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0027】
ブロック共重合体の共役ジエン単量体単位の1,2-ビニル結合量を調整する方法としては、例えば、重合開始剤として有機リチウム化合物を含む重合系に、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド等の極性物質を添加する方法が挙げられる。
これらは一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0028】
具体的には、有機リチウム化合物と極性物質を含有する重合系で、反応器に共役ジエン化合物を供給し、ピーク温度が91~100℃となるように共役ジエン化合物を重合させた後、反応器内の温度が90~100℃で芳香族ビニル化合物を供給し、重合させることが好ましい。
また、重合時間は長くなるが、芳香族ビニル化合物の添加時間を長くする方法や芳香族ビニル化合物を分割添加する方法を適用することにより、ブロック芳香族ビニル部の分子量分布(Mw/Mn)を1.15~1.40の範囲に制御することができる。
より好ましくは、反応器に共役ジエン化合物を供給し、ピーク温度が91~100℃となるように共役ジエン化合物を重合させた後、反応器内の温度が90~100℃で芳香族ビニル化合物を供給し、重合させてブロック共重合体を得る方法であり、当該方法は、重合レートが最も良く効率的である。
さらに、重合系の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。
重合圧力は、前記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するために充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものでない。
【0029】
(添加剤)
上述した本実施形態のブロック共重合体には、前記ブロック共重合体の溶液に水、アルコール、有機酸等で停止させたのち各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤や、その他の公知の添加剤を添加してもよい。
【0030】
また、本実施形態のブロック共重合体は、例えば特許第6646437号記載のように、必要に応じて触媒残渣を除去し、ブロック共重合体を溶液から分離することができる。溶媒からの分離は、ブロック共重合体の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングによって溶媒を除去することにより行うことができる。スチームストリッピング等の脱溶剤工程後に、押出機により押出成形され、次いで、熱風乾燥や真空乾燥して得られたクラム状のブロック共重合体を、ベール成形機で成形することでベール成形体とすることができる。
上述のようにして製造された本実施形態のベール成形体は、取り扱い性に優れた硬さに調整でき、ロボットによる取り扱い性や粉砕性に優れ、ABS等の芳香族ビニル系樹脂中においてゴム粒子の小粒径化を図ることができ、これにより、光沢や耐衝撃性に優れた樹脂組成物が得られる。すなわち、本実施形態のブロック共重合体は、光沢や耐衝撃性の改善が可能な樹脂の改質剤(強靭化剤)として使用可能である。
【0031】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、上述した本実施形態のベール成形体を構成するブロック共重合体又は本実施形態のブロック共重合体3~20質量部と、スチレン系樹脂97~80質量部との重合物である。
スチレン系樹脂としては、樹脂組成物の製造において用いられるスチレン系化合物を用いることができる。なお、前記スチレン系化合物は、ポリマー、モノマー、及びオリゴマーのいずれの状態も含むものとする。
スチレン系化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等のスチレン及びその誘導体の少なくとも1種類が挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。
これらのスチレン系化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記スチレン系化合物は、前記化合物の単独重合体であってもよく、スチレンとその他の化合物との共重合可能な化合物との共重合体であってもよい。
スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物、アクリル酸メチルエステル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチルエステル等のメタクリル酸エステル等のビニル系単量体が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物における、本実施形態のブロック共重合体の含有量は、5~18質量部が好ましく、8~15質量部がより好ましい。
また、スチレン系樹脂の含有量は95~82質量部が好ましく、92~85質量部がより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、スチレン系樹脂とブロック共重合体を重合させることにより製造でき、スチレン系樹脂のモノマーとブロック共重合体とを混合し、重合させてもよい。具体的には、後述する実施例に記載する方法により製造できる。
【実施例0032】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態をさらに詳しく説明するが本発明は、以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
実施列及び比較例における物性の測定、及び特性の評価は以下のようにして行った。
【0033】
((1)ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量)
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、ブロック共重合体を検体として、試料をクロロホルム溶液とし、測定器(JASCO製:V-550)を用いて、芳香族ビニルのフェニル基によるUV254nmの吸収により芳香族ビニル単量体単位の含有量(質量%)を測定することにより得た。
【0034】
((2)ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の含有量の比率)
ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の含有量は、L.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.,1,429(1948)に記載されるオスミウム酸分解法に従って測定した。
具体的には、ブロック共重合体0.05gをクロロホルム10mLに溶解し、tert-ブチルハイドロパーオキサイドの69%水溶液16mLと四酸化オスミウムの0.05%クロロホルム溶液4mLを加え、90℃バス中にて12分間還流させて酸化分解反応を行った。反応終了後、反応溶液を冷却し、反応溶液中にメタノール200mLを攪拌下に加えてブロック芳香族ビニル部成分を沈殿させ、これを5μmのガラスフィルターにて濾別し、ブロック共重合体中の、ブロック芳香族ビニル部の含有量を測定した。次に、上述した(1)により測定された値であるブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の全含有量に対するブロック芳香族ビニル部の比率を算出した。
【0035】
((3)ブロック共重合体のピークトップ分子量)
ブロック共重合体のピークトップ分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)により測定した。
GPC(装置は東ソー社製HLC-8320GPC EcoSECであり、カラムは、PL Gel Cloumn MiniMIX-C 4.6mmΦ×300mm 3本、溶媒はテトラヒドロフランを使用した。測定条件は、カラム温度40℃、流速0.4mL/分、試料濃度0.1質量%、注入量50μLである。)のクロマトグラフを測定した。
分子量が既知の市販の標準単分散ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用し、得られたGPCクロマトグラムから、ピークトップ分子量を求めた。
GPC ;HLC-8320GPC EcoSEC(東ソー社製)
検出器 ;RI
カラム ;PL Gel Cloumn 5μm MiniMIX-C
4.6mmmΦ×300mm 3本
溶媒 ;テトラヒドロフラン
流量 ;0.4mL/分
濃度 ;0.1質量%
カラム温度 ;40℃
注入量 ;50μL
【0036】
((4)ブロック共重合体中のブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量、及び分子量分布(Mw/Mn))
ブロック共重合体0.1gをジクロロメタン100mLに溶解した溶液に、オゾン濃度1.5%の酸素を150mL/分で通過させて酸化分解し、得られたオゾニドを、水素化アルミニウムリチウムを混合したジエチルエーテル中に滴下して還元した。
次に、純水を滴下して加水分解し、炭酸カリウムを添加し塩析、濾過を行うことによりブロック芳香族ビニル部の成分を得た。このブロック芳香族ビニル部をGPCにより測定した。
GPC(装置は東ソー社製HLC-8320GPC EcoSECであり、カラムはShodex KF-803L、KF-801を2本、溶媒はテトラヒドロフランを使用し、測定条件は、カラム温度40℃、流速0.8mL/分、試料濃度0.1質量%、注入量50μLである。)のクロマトグラフを測定し、ピークトップ分子量を得た。
分子量が既知の市販の標準単分散ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用し、得られたGPCクロマトグラムから、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnを求め、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
GPC ;HLC-8320GPC EcoSEC(東ソー社製)
検出器 ;UV
カラム ;Shodex K-803L、K801、K801 3本
溶媒 ;テトラヒドロフラン
流量 ;0.8mL/分
濃度 ;0.1質量%
カラム温度 ;40℃
注入量 ;50μL
【0037】
((5)ブロック共重合体中の共役ジエン単量体単位の1,2-ビニル結合量)
共役ジエン単量体単位の1,2-ビニル結合量は、赤外分光分析法「Hampton,Anal,Chem,21,923(1941)」により求めた。
【0038】
((6)25℃の温度条件下のブロック共重合体5質量%のスチレン溶液粘度)
25℃の温度条件下のブロック共重合体5質量%のスチレン溶液粘度は、ブロック共重合体5gをスチレン95gに溶解し、測定温度25℃にて、キャノンフェンスケタイプの粘度計(草野科学器械製作所製、製品名:キャノンフェンスケNo.200)で測定した。
【0039】
((7)ブロック共重合体のベール成形体の硬さ)
ベール成形用金型(長さ70cm、幅35cm)にブロック共重合体のクラムを35kg投入し、圧縮圧力;200kg/cm2、圧縮時間;50秒間、圧縮温度;60℃、の条件でベール成形し、得られたベール成形体の硬さをアスカー社製の「JIS K 6253 硬度計タイプE」を用いて、平滑な部分に硬度計を押し当てたときの最大値を記録した。
ベール成形体を裏返して平滑な部分5か所を測定しその平均値をベール成形体の硬さとした。
【0040】
((8)ブロック共重合体のベール成形体の粉砕時のピーク電流)
リーツカッター(ホソカワミクロン株式会社 リーツラバーチョッパ 型式PB15H)に、ブロック共重合体のベール成形体35kgを縦方向に投入し、その後に、リーツカッターの電源を入れてスクリュ回転させた。リーツカッター内の回転するスクリュにベール成形体全量が縦方向に食い込んだ時のピーク電流値を測定し、ベール成形体の粉砕時の負荷の指標とした。
なお、リーツカッター電源入れた際のベール食い込み開始時に瞬間的に電流値が上限を越えて振り切れるケースあるが、一瞬でありこれはピーク電流値としないものとした。
【0041】
((9)ブロック共重合体のベール成形体の粉砕時間)
上記リーツカッターにベール成形体35kgを縦方向に投入し、ベール成形体がスクリュタイプのハンマーと固定刃の間で剪断され、スクリュの移動でオリフィスプレートから押し出された粉砕品はカットオフナイフでさらに切断された。この時のベール成形体投入開始から、前記オリフィスプレートから粉砕品が出てこなくなる次のベール成形体投入前の電流値の戻りまでの時間を1ベールあたりの粉砕時間とした。
ベール成形体を投入しないときのリーツカッター電流値は19アンペアであった。
【0042】
〔ブロック共重合体の重合及びベール成形体の作製〕
[実施例1]
(ブロック共重合体(SBR1)の重合及びベール成形)
内容積100リットルの、回転撹拌翼とジャケットを備えた重合槽を用い、100ppmの1,2-ブタジエンを含む1,3-ブタジエン79質量部と、150ppmのテトラヒドロフラン(THF)を含むシクロヘキサン溶液600質量部を重合槽に仕込み、1,2-ビニル結合量の調整剤として、0.016質量部のテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を添加し、重合開始温度43.2℃で、0.095質量部の重合開始剤n-ブチルリチウムを添加して撹拌下で重合を行った。1,3-ブタジエンの反応ピーク温度96.1℃であった。その反応ピーク温度に達してから1分後にスチレン21質量部を添加した。スチレン添加時の反応器内温度は95.2℃であった。
次いで、スチレンの反応ピーク温度に達してから5分後にメタノールを重合開始剤n-ブチルリチウムの0.8倍モル添加して、失活させ、ブロック共重合体(SBR1)の重合反応を完了させた。
その後、安定剤として2,4-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールをブロック共重合体の質量に対して0.15質量%添加した。
同様に重合を4回行い、メタノールで失活後に安定剤を添加し、4回分のブロック共重合体ゴム溶液をブレンドした。
さらに、得られたブロック共重合体ゴム溶液を攪拌下熱湯中に投下して、純水を用いてスチームストリッピング法により溶媒を除去した後、真空乾燥処理して、クラム状のブロック共重合体を得た。
得られたクラムから35kgを用いて、ベール成形機(ベール成形用金型:長さ70cm、幅35cm)に投入し、ブロック共重合体(SBR1)のベール成形体を作製した。
ブロック共重合体(SBR1)の重合内容、ブロック共重合体の物性、ベール成形体の硬さ調整結果、及びベール成形体の粉砕性を表1に示す。
【0043】
[実施例2、3及び比較例1、2、3]
実施例1と同様の手法にて、重合開始温度を変更し、1,3-ブタジエンの反応ピーク温度及びスチレン添加時の反応器内温度を変化させた以外は、表1及び表3に記載した重合内容の条件により、ブロック共重合体(SBR2、SBR3、SBR13、SBR14、SBR15)のベール成形体を得た。
実施例2、3及び比較例1、2、3のブロック共重合体(SBR2、SBR3、及びSBR13、SBR14、SBR15)の重合内容、ブロック共重合体の物性、ベール成形体の硬さ調整結果、及びベール成形体の粉砕性を表1及び表3に示す。
比較例3のSBR15は、実施例のSBR2とSBR3、及び比較例のSBR13とSBR14と比較してベール粉砕後のリーツカッター内に粉砕品の一部付着が若干多かったことが分かった。
【0044】
[実施例4及び比較例4]
実施例1と同様の手法にて、1,2-ビニル結合量の調整剤であるテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)の添加量を増量し、ブロック共重合体SBR4及びSBR16のベール成形体を得た。
実施例4及び比較例4のブロック共重合体SBR4及びSBR16の重合内容、ブロック共重合体の物性、ベール成形体の硬さ調整結果、及びベール成形体の粉砕性を表1及び表3に示す。
【0045】
[実施例5、6及び比較例5]
表1及び表3に記載された重合内容の条件で、芳香族ビニル単量体単位の含有量が16.2質量%のブロック共重合体(SBR5)、芳香族ビニル単量体単位の含有量が24.8質量%のブロック共重合体(SBR6)、及び芳香族ビニル単量体単位の含有量が34.8質量%のブロック共重合体(SBR17)のベール成形体を得た。実施例5、実施例6、及び比較例5として、ブロック共重合体の物性、ベール成形体の硬さ調整結果、及びベール成形体の粉砕性を表1及び表3に示す。
比較例5(SBR17)は、ベール成形体の硬さが78と高いため、粉砕時のピーク電流が47Aと粉砕機の負荷が大であることが分かった。
【0046】
[実施例7、8及び比較例6]
表2及び表3に記載された重合内容の条件で重合を行い、1,3-ブタンジエン反応が90℃を超えて、かつ反応ピーク前の段階でスチレンを添加した。実施例7(SBR7)は90.3℃、実施例8(SBR8)は95.2℃、比較例6(SBR18)は92.0℃でスチレンを添加した。その結果、芳香族ビニル単量体単位の含有量に対するブロック芳香族ビニル部の含有量の比率は、それぞれ90.8質量%、90.5質量%、91.4質量%であった。
また、比較例6(SBR18)は触媒添加量を減らして分子量を高めたことにより、ブロック芳香族ビニル部のピークトップ分子量が3万を超えたことによりベール成形体の硬さが80を超えており、粉砕時の負荷が高くなり粉砕性が悪化した。
【0047】
[比較例7]
表3に記載された重合内容の条件で重合を行い、重合開始前にスチレン6.3質量部を1,3-ブタジエン79質量部とともに重合槽に仕込み、残りのスチレン14.7質量部は1,3-ブタジエン反応ピーク温度後に添加した。その結果、芳香族ビニル単量体単位の含有量に対するブロック芳香族ビニル部の含有量の比率が73.1質量%のブロック共重合体(SBR19)を得た。
ベール硬さが42と低く、ベール粉砕時の負荷は小さいが、比較例3(SBR15)と同様に粉砕時の発熱で粉砕機内に付着が確認された。またベール成形体の硬さが低いためベール成形体を積み重ねた際にベール成形体が変形しやすいことが分かった。
【0048】
[実施例9]
実施例1と同様の手法にて、重合開始剤であるn-BuLiの添加量を増量したブロック共重合体(SBR9)のベール成形体を得た。
重合開始剤を増量したことで、実施例1よりもブロック共重合体のピークトップ分子量が低くなり、ベールの硬さは49であった。
ブロック共重合体(SBR9)の重合内容、ブロック共重合体の物性、ベール成形体の硬さ調整結果、及びベール成形体の粉砕性を表2に示す。
【0049】
[実施例10]
実施例1と同様の手法にて、重合開始剤であるn-BuLiの添加量を減量したブロック共重合体(SBR10)のベール成形体を得た。
重合開始剤を減量したことで、実施例1よりもブロック共重合体のピークトップ分子量が高くなり、ベールの硬さは69であった。
ブロック共重合体(SBR10)の重合内容、ブロック共重合体の物性、ベール成形体の硬さ調整結果、及びベール成形体の粉砕性を表2に示す。
【0050】
[実施例11]
実施例1と同様の手法にて、1,2-ビニル結合量の調整剤であるテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を添加せず、テトラヒドロフラン(THF)の添加量を増量し、1,2-ビニル結合量13.3質量%のブロック共重合体(SBR11)のベール成形体を得た。ブロック共重合体(SBR11)の重合内容、ブロック共重合体の物性、ベール成形体の硬さ調整結果、及びベール成形体の粉砕性を表2に示す。
【0051】
[実施例12]
実施例1と同様の手法にて、1,2-ビニル結合量の調整剤であるテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)の添加量を増量し、1,2-ビニル結合量31.2%のブロック共重合体(SBR12)のベール成形体を得た。
ブロック共重合体(SBR12)の重合内容、ブロック共重合体の特性、ベール成形体の硬さ調整結果及びベール成形体の粉砕性を表2に示す。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
表1~表3より、ブロック共重合体SBR1~12(実施例1~12)は、ベール成形体を粉砕するために最適なベール成形体の硬さ調整が可能で、粉砕時の負荷(電流値)も低く、連続投入が可能であり、1ベール成形体あたりの粉砕時間が短く良好であることが分かった。
【0056】
〔耐衝撃性芳香族ビニル系樹脂組成物の特性〕
後述の[実施例13~19]、[比較例8、比較例9]に示すように、耐衝撃性芳香族ビニル系樹脂組成物を作製し、以下の特性の測定及び評価を行った。
【0057】
<ゴム粒子平均粒子径>
耐衝撃性芳香族ビニル系樹脂組成物を、ジメチルフォルムアミドに溶解させ、前記樹脂組成物中のマトリックスを形成するポリスチレン系樹脂部分のみを溶解させ、その溶液の一部を堀場製作所製の粒径分布(レーザー回折/散乱式)測定装置、LA-920型を使って測定セル中の溶媒ジメチルフォルムアミド液に分散させて測定し、得られた体積平均粒子径をゴム粒子径とした。
【0058】
<光沢性>
JIS Z8742(入射角60°)に準拠して光沢を測定した。
【0059】
<耐衝撃性>
アイゾット(Izod)衝撃強度を、JIS K7110(ノッチ付)に従って測定した。
【0060】
[実施例13~19]
窒素置換を行った攪拌型の重合槽に、スチレン含有量75質量%、アクリロニトリル含有量25質量%のモノマー混合物100質量部に対して、エチルベンゼン20質量部、ブロック共重合体(表4に記載)を12質量部溶解し、さらに0.15質量部のオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとモノマー混合物100質量部に対して200質量ppmの1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、及びモノマー混合物100質量部に対して1500質量ppmのt-ドデシルメルカプタンを添加し、攪拌150rpm、100℃で7時間、その後、攪拌15rpmとし、120℃で1時間、135℃で2時間、150℃で2時間、170℃で2時間と順次昇温して重合を継続し、最終的に230℃で30分間加熱処理を行い、その後、重合槽内を大気圧としたのちに、加熱時に重合物である耐衝撃性芳香族ビニル系樹脂組成物を取り出し、純水中で冷却させた。
未反応のスチレン、アクリロニトリル及びエチルベンゼンを除去するため、冷却後の重合物100gあたり、1000mlのジクロロメタンを加えて攪拌溶解させた。
その溶解液に対して10倍量のイソプロピルアルコール中に溶解液を滴下し再沈殿させた。
再沈殿させた耐衝撃性芳香族ビニル系樹脂組成物を真空乾燥させて、耐衝撃性芳香族ビニル系樹脂組成物(ABS樹脂組成物)を得た。
これを200℃の熱プレスしたのち冷却後に5mmφサイズで粉砕後、粉砕品を射出成形してABS樹脂組成物の物性を測定した。
測定結果を表4に示す。
【0061】
[比較例8、比較例9]
ブロック共重合体としてSBR14及びSBR15を使用し、実施例13と同様にしてABSの試験片を製造した。
物性測定結果を表4に示す。
【0062】
【0063】
表4より、ブロック共重合体のブロック芳香族ビニル部の分子量分布(Mw/Mn)の異なるブロック共重合体SBRを使用したABS樹脂組成物の物性を比較した結果、実施例13のMw/Mn=1.20のSBR1と、比較例8のMw/Mn=1.07のSBR14では、ABS樹脂組成物の物性は同等で良好であったが、比較例9のMw/Mn=1.41のSBR15では、ABSの耐衝撃性が劣ることが分かった。