(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137764
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】作動要素及びプッシャを備える時計
(51)【国際特許分類】
G04B 37/06 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G04B37/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024031092
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】10 2023 107 563.2
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506100185
【氏名又は名称】ランゲ ウーレン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ステファン マイバウム
(57)【要約】
【課題】作動要素及びプッシャを備える時計において、従来の欠点を回避すると共に、少ない個数のプッシャで、プッシャの個数よりも多くの機能の切り替え可能性を実現する。
【解決手段】本発明は、作動要素と、プッシャ9とを備える時計に関し、作動要素は、少なくとも2つの位置に調整可能である。作動要素の第1位置において、プッシャ9は、中立位置から第1レバーアセンブリ10を介して時計の第1機能を有効に作動切り替え可能である。作動要素の第2位置において、プッシャ9は、第2レバーアセンブリ11を介して時計の第2機能を有効に作動切り替え可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動要素と、プッシャ(9)とを備える時計であって、前記作動要素が、少なくとも2つの位置に調整可能であり、前記作動要素の第1位置において、前記プッシャ(9)が、中立位置から第1レバーアセンブリ(10)を介して前記時計の第1機能を有効に作動切り替え可能である時計において、
前記作動要素の第2位置において、前記プッシャ(9)が、第2レバーアセンブリ(11)を介して前記時計の第2機能を有効に作動切り替え可能であることを特徴とする、時計。
【請求項2】
請求項1に記載の時計であって、前記作動要素が、軸線方向において、前記第1位置と前記第2位置との間で調整可能であることを特徴とする、時計。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の時計であって、前記作動要素の更なる位置により、前記時計の更なる機能が有効に作動切り替え可能であることを特徴とする、時計。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の時計であって、前記作動要素により、更なるプッシャ(19)が、前記時計における2つの更なる機能を有効に作動切り替え可能であることを特徴とする、時計。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の時計であって、前記作動要素が、軸線方向に変位可能な巻き軸(1)であり、該巻き軸(1)により、前記プッシャ(9,19)の有効な切り替え可能性に加えて、前記時計の香箱が巻き位置で巻き上げ可能であり、及び/又は、前記時計の針設定が針設定位置で変更可能であることを特徴とする、時計。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の時計であって、前記プッシャ(9,19)が、非作動の場合、中立位置に自動的に戻るよう切り替え可能であることを特徴とする、時計。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の時計であって、前記作動要素により、切り替えレバー軸線(6,6')周りで旋回可能な切り替えレバー(7,7')が、第1切り替え位置と第2切り替え位置とに旋回可能であり、前記第1切り替え位置において、前記第1レバーアセンブリ(10,10')が、前記時計の第1機能に有効に作動可能に切り替えられ、前記第2切り替え位置において、前記第2レバーアセンブリ(11,11')が、前記時計の第2機能に有効に作動可能に切り替えられていることを特徴とする、時計。
【請求項8】
請求項7に記載の時計であって、前記切り替えレバー(7,7')により、スライダ(8,8')が、第1調整位置と第2調整位置との間で調整可能であり、前記スライダ(8,8')により、前記第1調整位置において、前記プッシャ(9,19)と前記第1レバーアセンブリ(10,10')との間で作動接続が確立可能であり、前記第2調整位置において、前記プッシャ(9,19)と前記第2レバーアセンブリ(11,11')との間で作動接続が確立可能であることを特徴とする、時計。
【請求項9】
請求項8に記載の時計であって、前記スライダが、伝達要素を有し、該伝達要素が、前記第1調整位置において、前記プッシャ(9,19)と前記第1レバーアセンブリにおける第1負荷要素(17,17')との間に配置され、前記第2調整位置において、前記プッシャ(9,19)と前記第2レバーアセンブリ(11,11')における第2負荷要素(18,18')との間に配置されていることを特徴とする、時計。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の時計であって、前記レバーアセンブリ(10,10')が、第1レバー軸線(13,13')周りで旋回可能な第1レバー(14,14')を有し、前記第2レバーアセンブリ(11,11')が、第2レバー軸線(15,15')周りで旋回可能な第2レバー(16,16')を有することを特徴とする、時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動要素と、プッシャとを備える時計に関し、作動要素は、少なくとも2つの位置に調整可能であり、作動要素の第1位置において、プッシャは、中立位置から第1レバーアセンブリを介して時計の第1機能を有効に作動切り替え可能である。
【背景技術】
【0002】
リューズ及び1個のプッシャ又は複数のプッシャを備える時計では、プッシャに常に単一かつ特定の機能を割り当てることが既知である。例えば、月修正部としてのプッシャは、カレンダ表示の月だけを修正する。クロノグラフにおけるスタート/ストップ・プッシャは、ストップウォッチの計測停止と計測開始との間でモードを切り替える。
【0003】
複数の機能を備える時計では、複数のプッシャが設けられている場合がある。例えば、パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)付きストップウォッチは、最大で7個のプッシャを備えることができる。その結果、部品及び設置スペースが大きくなり、プッシャアセンブリに関して分かり難さが生じ、誤操作の恐れが生じる。更に、各プッシャを水の浸入に対してシールするために、より大きな手間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、冒頭に述べたタイプの作動要素及びプッシャを備える時計において、上述した欠点を回避すると共に、少ない個数のプッシャで、プッシャの個数よりも多くの機能の切り替え可能性を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するため、作動要素の第2位置において、プッシャは、第2レバーアセンブリを介して時計の第2機能を有効に作動切り替え可能であることを特徴とする。
【0006】
この構成により、作動要素の第2位置によって同じ1個のプッシャが第1機能から第2機能に有効に切り替え可能である。換言すれば、1個のプッシャが時計における2つの機能を有効に作動させることができる。これにより、部品数及び必要な設置スペースが減少する。
【0007】
省スペースで簡単な構成において、作動要素は、軸線方向において、第1位置と第2位置との間で調整することができる。
【0008】
プッシャの個数の更なる減少は、作動要素の更なる位置により、時計の更なる機能が有効に作動切り替え可能になることで実現することができる。
【0009】
複数の機能において、作動要素は、軸線方向に変位可能な巻き軸とすることができ、その巻き軸により、プッシャの有効な切り替え可能性に加えて、時計の香箱が巻き位置で巻き上げ可能であり、及び/又は時計の針設定が針設定位置で変更可能である。
【0010】
機能を有効に作動切り替えした後、プッシャを能動的にリセットする必要性をなくすために、プッシャは、非作動の場合、中立位置に自動的に戻るよう切り替え可能とすることができる。
【0011】
省スペースで簡単な構成では、作動要素により、切り替えレバー軸線周りで旋回可能な切り替えレバーは、第1切り替え位置と第2切り替え位置とに旋回可能であり、第1切り替え位置において、第1レバーアセンブリは、時計の第1機能に有効に作動可能に切り替えられ、第2切り替え位置において、第2レバーアセンブリは、時計の第2機能に有効に作動可能に切り替えられている。
【0012】
この場合、切り替えレバーにより、スライダは、第1調整位置と第2調整位置との間で調整可能であり、そのスライダにより、第1調整位置において、プッシャと第1レバーアセンブリとの間で作動接続が確立可能であり、第2調整位置において、プッシャと第2レバーアセンブリとの間で作動接続が確立可能である。
【0013】
時計における第1機能から第2機能への切り替えは、スライダが、伝達要素を有し、その伝達要素が、第1調整位置において、プッシャと第1レバーアセンブリにおける第1負荷要素との間に配置され、第2調整位置において、プッシャと第2レバーアセンブリにおける第2負荷要素との間に配置されていることによって可能になる。
【0014】
レバーアセンブリは、第1レバー軸線周りで旋回可能な第1レバーを有し、第2レバーアセンブリは、第2レバー軸線周りで旋回可能な第2レバーを有する。
【0015】
以下、図面に示す本発明の一実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】非作動位置にある時計の作動機構において、第1プッシャが押されていない、かつ第2プッシャが押されていない状態を示す平面図である。
【
図2】非作動位置にある
図1の作動機構において、第1プッシャが押されていると共に第1機能が有効に作動可能な状態、かつ第2プッシャが押されていると共に第2機能が有効に作動可能な状態を示す平面図である。
【
図3】作動位置にある
図1の作動機構において、第1プッシャが押されている、かつ押第2プッシャが押されていない状態を示す平面図である。
【
図4】作動位置にある
図1の作動機構において、第1プッシャが押されていると共に第3機能が有効に作動可能な状態、かつ第2プッシャが押されていると共に第4機能が有効に作動可能な状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図に示す時計の一部は、中立位置から軸線方向において第1位置から第2位置に変位可能な巻き軸1を示す。
【0018】
第1レバーアーム4及び第2レバーアーム5を有する二腕角度レバー2は、巻き軸1によって角度レバー軸線3周りで中立位置から第1位置及び第2位置に旋回可能である。
【0019】
第1レバーアーム4の自由端により、第1切り替えレバー軸線6周りで旋回可能な切り替えレバー7は、第1切り替え位置及び第2切り替え位置に旋回可能である。
【0020】
切り替えレバー7により、スライダ8が第1調整位置と第2調整位置との間で移動可能である。第1調整位置では、第1プッシャ9と第1レバー軸線13周りで第1レバーアセンブリ10の第1レバー14との間で作動接続が確立され、第2調整位置では、第1プッシャ9と第2レバー軸線15周りで第2レバーアセンブリ11の第2レバー16との間で作動接続が確立される。
【0021】
この目的のために、スライダ8上に配置された伝達要素12は、第1調整位置において、第1プッシャ9と第1レバーアセンブリ10における第1負荷要素17との間の作用方向に配置されるよう位置決めされる。
【0022】
第1レバー14の旋回により、この第1レバー14は、時計における第1機能の切り替え要素(図示せず)に作用する。
【0023】
切り替えレバー7を旋回させてスライダ8をその第1調整位置から第2調整位置に移動させることにより、伝達要素12は、第1プッシャ9と第2レバーアセンブリ11における第2負荷要素18との間の作用方向に配置されるよう再位置決めされる。
【0024】
第2レバー16の旋回により、この第2レバー16は、時計における第2機能の切り替え要素(図示せず)に作用する。
【0025】
第1プッシャ9がその非作動位置から作動されてスライダ8の伝達要素12に押圧すると、負荷要素17,18のどちらが第1プッシャ9及び伝達要素12の作用方向に位置するかに応じて、負荷要素17又は負荷要素18を負荷する。これにより、各負荷要素17,18に割り当てられた時計の機能が有効に作動される。
【0026】
第2レバーアーム5の自由端により、第1切り替えレバー軸線6'周りで旋回可能な切り替えレバー7'は、第1切り替え位置及び第2切り替え位置に旋回可能である。切り替えレバー7'により、スライダ8'が第1調整位置と第2調整位置との間で移動可能である。第1調整位置では、第2プッシャ19と第1レバー軸線13'周りで第1レバーアセンブリ10'の第1レバー14'との間で作動接続が確立され、第2調整位置では、第2プッシャ19と第2レバー軸線15'周りで第2レバーアセンブリ11'の第2レバー16'との間で作動接続が確立される。
【0027】
この目的のために、スライダ8'上に配置された伝達要素12'は、第1調整位置において、第2プッシャ19と第1レバーアセンブリ10'における第1負荷要素17'との間の作用方向に配置されるよう位置決めされる。
【0028】
第1レバー14'の旋回により、この第1レバー14'は、時計における第3機能の切り替え要素(図示せず)に作用する。
【0029】
切り替えレバー7'を旋回させてスライダ8'をその第1調整位置から第2調整位置に移動させることにより、伝達要素12'は、第2プッシャ19と第2レバーアセンブリ11'における第2負荷要素18'との間の作用方向に配置されるよう再位置決めされる。
【0030】
第2レバー16'の旋回により、この第2レバー16'は、時計における第4機能の切り替え要素(図示せず)に作用する。
【0031】
第2プッシャ19がその非作動位置から作動されてスライダ8'の伝達要素12'に押圧すると、負荷要素17',18'のどちらが第2プッシャ19及び伝達要素12'の作用方向に位置するかに応じて、負荷要素17'又は負荷要素18'を負荷する。これにより、各負荷要素17,18に割り当てられた時計の機能が有効に作動される。
【符号の説明】
【0032】
1 巻き軸
2 角度レバー
3 角度レバー軸線
4 第1レバーアーム
5 第2レバーアーム
6 切り替えレバー軸線
6' 切り替えレバー軸線
7 切り替えレバー
7' 切り替えレバー
8 スライダ
8' スライダ
9 第1プッシャ
10 第1レバーアセンブリ
10' 第1レバーアセンブリ
11 第2レバーアセンブリ
11' 第2レバーアセンブリ
12 伝達要素
12' 伝達要素
13 第1レバー軸線
13' 第1レバー軸線
14 第1レバー
14' 第1レバー
15 第2レバー軸線
15' 第2レバー軸線
16 第2レバー
16' 第2レバー
17 第1負荷要素
17' 第1負荷要素
18 第2負荷要素
18' 第2負荷要素
19 第2プッシャ
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動要素と、プッシャ(9)とを備える時計であって、前記作動要素が、少なくとも2つの位置に調整可能であり、前記作動要素の第1位置において、前記プッシャ(9)が、中立位置から第1レバーアセンブリ(10)を介して前記時計の第1機能を有効に作動切り替え可能である時計において、
前記作動要素の第2位置において、前記プッシャ(9)が、第2レバーアセンブリ(11)を介して前記時計の第2機能を有効に作動切り替え可能であることを特徴とする、時計。
【請求項2】
請求項1に記載の時計であって、前記作動要素が、軸線方向において、前記第1位置と前記第2位置との間で調整可能であることを特徴とする、時計。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の時計であって、前記作動要素の更なる位置により、前記時計の更なる機能が有効に作動切り替え可能であることを特徴とする、時計。
【請求項4】
請求項1に記載の時計であって、前記作動要素により、更なるプッシャ(19)が、前記時計における2つの更なる機能を有効に作動切り替え可能であることを特徴とする、時計。
【請求項5】
請求項1に記載の時計であって、前記作動要素が、軸線方向に変位可能な巻き軸(1)であり、該巻き軸(1)により、前記プッシャ(9,19)の有効な切り替え可能性に加えて、前記時計の香箱が巻き位置で巻き上げ可能であり、及び/又は、前記時計の針設定が針設定位置で変更可能であることを特徴とする、時計。
【請求項6】
請求項1に記載の時計であって、前記プッシャ(9,19)が、非作動の場合、中立位置に自動的に戻るよう切り替え可能であることを特徴とする、時計。
【請求項7】
請求項1に記載の時計であって、前記作動要素により、切り替えレバー軸線(6,6')周りで旋回可能な切り替えレバー(7,7')が、第1切り替え位置と第2切り替え位置とに旋回可能であり、前記第1切り替え位置において、前記第1レバーアセンブリ(10,10')が、前記時計の第1機能に有効に作動可能に切り替えられ、前記第2切り替え位置において、前記第2レバーアセンブリ(11,11')が、前記時計の第2機能に有効に作動可能に切り替えられていることを特徴とする、時計。
【請求項8】
請求項7に記載の時計であって、前記切り替えレバー(7,7')により、スライダ(8,8')が、第1調整位置と第2調整位置との間で調整可能であり、前記スライダ(8,8')により、前記第1調整位置において、前記プッシャ(9,19)と前記第1レバーアセンブリ(10,10')との間で作動接続が確立可能であり、前記第2調整位置において、前記プッシャ(9,19)と前記第2レバーアセンブリ(11,11')との間で作動接続が確立可能であることを特徴とする、時計。
【請求項9】
請求項8に記載の時計であって、前記スライダが、伝達要素を有し、該伝達要素が、前記第1調整位置において、前記プッシャ(9,19)と前記第1レバーアセンブリにおける第1負荷要素(17,17')との間に配置され、前記第2調整位置において、前記プッシャ(9,19)と前記第2レバーアセンブリ(11,11')における第2負荷要素(18,18')との間に配置されていることを特徴とする、時計。
【請求項10】
請求項1に記載の時計であって、前記レバーアセンブリ(10,10')が、第1レバー軸線(13,13')周りで旋回可能な第1レバー(14,14')を有し、前記第2レバーアセンブリ(11,11')が、第2レバー軸線(15,15')周りで旋回可能な第2レバー(16,16')を有することを特徴とする、時計。
【外国語明細書】