(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137768
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】時計用のクラッチ装置
(51)【国際特許分類】
G04F 7/08 20060101AFI20240927BHJP
G04B 27/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G04F7/08 Z
G04B27/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024031119
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】10 2023 107 566.7
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506100185
【氏名又は名称】ランゲ ウーレン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ レーマン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構成簡単で、必要とする設置スペースが小さく、時計における針のゼロ設定を支障なく可能にする、時計用クラッチ装置を提供する。
【解決手段】クラッチ出力ホイールを相対回転不可能に支持する軸2上に配置されたクラッチ入力ホイール1と、軸2に対して同軸のクラッチ入力ホイール1のクラッチディスク3であって、軸線方向に変位可能な対抗クラッチディスク4が、クラッチディスク3と摩擦係合的に当接するためにばね力によって負荷されると共に、爪8によって下方から把持可能であり、対抗クラッチディスク4は、クラッチディスク3との結合位置に当接する位置で爪8によってデカップリング位置に持ち上げ可能である、クラッチディスク3とを備え、爪8は、手動で作動可能なデカップリングプッシャにより、負荷が生じない非作動位置から、対抗クラッチディスク4をクラッチディスク3から持ち上げる作動位置に移動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用のクラッチ装置であって、
・回転駆動可能であると共に、軸線方向に固定され、かつクラッチ出力ホイールを相対回転不可能に支持する軸(2)上に配置された、ムーブメントで回転可能に駆動されるクラッチ入力ホイール(1)と、
・前記軸(2)に対して同軸の前記クラッチ入力ホイール(1)のクラッチディスク(3)であって、前記クラッチディスク(3)に、軸線方向に変位可能な対抗クラッチディスク(4)が同軸に配置され、前記対抗クラッチディスク(4)が、前記クラッチディスク(3)と摩擦係合的に当接するためにばね力によって負荷されると共に、爪(8)によって下方から把持可能であり、前記対抗クラッチディスク(4)が、前記クラッチディスク(3)との結合位置に当接する位置で前記爪(8)によってデカップリング位置に持ち上げ可能である、前記クラッチディスク(3)と、
を備え、
前記爪(8)が、手動で作動可能なデカップリングプッシャにより、負荷が生じない非作動位置から、前記対抗クラッチディスク(4)を前記クラッチディスク(3)から持ち上げる作動位置に移動可能であるクラッチ装置において、
前記対抗クラッチディスク(4)が、前記デカップリングプッシャの部分的な作動が生じると、前記爪(8)により、第1デカップリングストロークだけ、前記クラッチディスク(3)から、ロック装置(15)によってロック可能な第1デカップリング位置に持ち上げ可能であり、その後に前記デカップリングプッシャの完全な作動が生じると、前記爪(8)が、前記第1デカップリングストロークとは反対の第2デカップリングストロークで前記対抗クラッチディスク(4)から下降可能であり、その後に前記デカップリングプッシャが部分的に解放されると、前記対抗クラッチディスク(4)が、前記爪(8)により、前記第2デカップリングストロークから第3デカップリングストロークに上昇可能であり、この場合に前記ロック装置(15)が、ロック解除され、その後に前記デカップリングプッシャが完全に解放されると、前記対抗クラッチディスク(4)が、前記ばね力によって前記結合位置に戻されることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクラッチ装置であって、前記対抗クラッチディスク(4)が、カップ状クラッチスリーブ(6)の底部によって形成され、前記クラッチスリーブ(6)が、前記底部から離れた側の端部に、半径方向に突出するカラー(7)を有することを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクラッチ装置であって、前記爪(8)が、前記軸(2)に対して前記非作動位置と前記作動位置との間で軸線方向に変位可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のクラッチ装置であって、前記爪(8)が、前記軸(2)に対して平行であると共に前記爪(8)に堅固に配置された爪ピン(10)により、ストローククラウンホイール(9)で移動するよう駆動可能であり、その歯(11,12)に、前記爪ピン(10)における端面の一つが当接し、前記ストローククラウンホイール(9)が、デカップリングプッシャにより、クラウンホイール軸線周りで段階的に順送り可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のクラッチ装置であって、前記ストローククラウンホイール(9)が、第1歯(11)及び第2歯(12)で構成された複数の対を交互に有し、前記第1歯(11)が、前記第2歯(12)よりも高さが小さく、前記爪ピン(10)が、前記第1歯(11)により、前記爪(8)を第1デカップリングストロークに上昇させ、その後に前記デカップリングプッシャの完全な作動が生じると、前記爪ピン(10)が、前記第1歯(11)の後の第1隙間(13)で第2デカップリングストロークに下降可能であり、その後に前記デカップリングプッシャが部分的に解放されると、前記爪ピン(10)及び該爪ピン(10)と一緒に前記爪(8)が、前記第2歯(12)により、第3デカップリングストロークに上昇可能であり、次いで前記爪ピン(10)が、前記第2歯(12)の後の第2隙間(14)に下降可能であると共に、前記爪(8)が、結合位置に下降可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項6】
請求項4に記載のクラッチ装置であって、前記ストローククラウンホイール(9)が、前記デカップリングプッシャによって段階的に回転駆動可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のクラッチ装置であって、前記ロック装置(15)が、クロー(17)を有し、該クロー(17)が、前記対抗クラッチディスク(4)において、前記軸(2)に対して平行なクロー軸(16)周りで旋回可能に配置され、前記クローが、前記第1デカップリングストロークに達したときに前記軸(2)のロック凹部(18)と係合可能であり、前記第3デカップリングストロークに達したときに前記ロック凹部(18)から係合解除可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項8】
請求項6に記載のクラッチ装置であって、前記クロー(17)が、第1デカップリングストロークの間、軸(2)の外周面上に半径方向内側に弾性的に当接するよう保持され、第1デカップリング位置に達した後、前記軸(2)における前記外周面の周方向のロック凹部(18)に半径方向内側に係合することを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のクラッチ装置であって、クラッチディスク(3)により近い、前記ロック凹部(18)の第1側壁(26)が、半径方向に延在し、対抗クラッチディスク(4)からより離れた、前記ロック凹部(18)の第2側壁(27)が、前記ロック凹部(18)の開口を拡大するよう傾斜している摺動壁であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項10】
請求項8及び9に記載のクラッチ装置であって、前記クロー(17)が、第2デカップリングストロークから第3デカップリングストロークへの経路において、前記ロック凹部(18)の前記第2側壁(27)に第1摺動傾斜路(21)によって当接し、前記第2側壁(27)に沿って摺動しながら前記ロック凹部(18)から出るよう移動可能であり、前記軸(2)から、ロック解除位置に離れるよう移動可能であると共に、前記ロック解除位置に保持可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項11】
請求項6~10の何れか一項に記載のクラッチ装置であって、前記クロー(17)が、第3デカップリング位置から結合位置への前記対抗クラッチディスク(4)の経路において、前記軸(2)の前記外周面上を摺動するよう移動可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項12】
請求項6~11の何れか一項に記載のクラッチ装置であって、前記クロー(17)が、前記クロー軸(16)から半径方向に延在するクローアーム(19)を有し、前記軸(2)の前記ロック凹部(18)と係合可能な前記クローアーム(19)における端面側の自由端が、前記クロー軸(16)に対して半径方向に向けられた係合先端(20)を有するよう屋根状に形成され、前記係合先端(20)の側面(24,25)が、前記クロー軸(16)に対して半径方向平面内で延在し、前記クロー(17)が、前記クローアーム(19)に形成された第2摺動傾斜路(28)を有し、前記第2摺動傾斜路(28)が、前記軸(2)を同心円状に完全に又は部分的に包囲すると共に、前記係合先端(20)により近い領域から前記係合先端(20)からより離れた領域に向けて傾斜し、前記対抗クラッチディスク(4)が前記第3デカップリング位置から前記結合位置に移動されると、前記軸(2)に堅固に配置されると共に、クラッチ入力ホイール(1)から離れるよう向けられた円錐部(22)が前記第2摺動傾斜路(28)に当接し、前記クロー(17)が、前記クロー軸(16)周りで旋回しながら前記第2摺動傾斜路(28)に沿って摺動し、この場合、クローばね(23)が、前記クロー(17)を前記ロック凹部(18)外に出るよう負荷する前記係合先端(20)の前記第2側面(25)から、前記クロー(17)を前記ロック凹部(18)内に入るよう負荷する前記係合先端(20)の前記第1側面(24)に移動することを特徴とする、クラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用のクラッチ装置に関し、このクラッチ装置は、回転駆動可能であると共に、軸線方向に固定され、かつクラッチ出力ホイールを相対回転不可能に支持する軸上に配置された、ムーブメントで回転可能に駆動されるクラッチ入力ホイールと、軸に対して同軸のクラッチ入力ホイールのクラッチディスクであって、クラッチディスクに、軸線方向に変位可能な対抗クラッチディスクが同軸に配置され、対抗クラッチディスクは、クラッチディスクと摩擦係合的に当接するためにばね力によって負荷されると共に、爪によって下方から把持可能であり、対抗クラッチディスクは、クラッチディスクとの結合位置に当接する位置で爪によってデカップリング位置(非結合位置)に持ち上げ可能である、上記クラッチディスクとを備え、爪は、手動で作動可能なデカップリングプッシャ(非結合プッシャ)により、負荷が生じない非作動位置から、対抗クラッチディスクをクラッチディスクから持ち上げる作動位置に移動可能である。
【背景技術】
【0002】
このような既知のクロノグラフ用クラッチ装置では、回転可能な部品間の摩擦により、針のゼロ設定(ゼロ調整)が妨げられる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の課題は、冒頭に述べた時計用クラッチ装置において、構成簡単であり、必要とする設置スペースが小さく、時計における針のゼロ設定を支障なく可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するため、本発明に係る時計用のクラッチ装置は、対抗クラッチディスクが、デカップリングプッシャの部分的な作動が生じると、爪により、第1デカップリングストローク(第1非結合ストローク)だけ、クラッチディスクから、ロック装置によってロック可能な第1デカップリング位置に持ち上げ可能であり、その後にデカップリングプッシャの完全な作動が生じると、爪が、第1デカップリングストロークとは反対の第2デカップリングストロークで対抗クラッチディスクから下降可能であり、その後にデカップリングプッシャが部分的に解放されると、対抗クラッチディスクが、爪により、第2デカップリングストロークから第3デカップリングストロークに上昇可能であり、この場合にロック装置が、ロック解除され、その後にデカップリングプッシャが完全に解放されると、対抗クラッチディスクが、ばね力によって結合位置に戻されることを特徴とする。
【0005】
本発明に係るこの構成により、対抗クラッチディスクが、デカップリングプッシャの部分的な作動が生じて、爪により、第1デカップリングストロークだけ、クラッチディスクから、ロック装置によってロック可能な第1デカップリング位置に持ち上げられていれば、クラッチ装置は、時計の針をゼロ設定するために、デカップリングプッシャが完全に作動しているときに、開放されたままであると共に、爪の下降によって容易に回転可能である。その後にデカップリングプッシャの完全な作動が生じると、爪が、第1デカップリングストロークとは反対の第2デカップリングストロークで対抗クラッチディスクから下降可能である。その後にデカップリングプッシャが部分的に解放されると、対抗クラッチディスクが、爪により、第2デカップリングストロークから第3デカップリングストロークに上昇可能であり、これによりロック装置が、ロック解除され、その後にデカップリングプッシャが完全に解放されると、対抗クラッチディスクが、ばね力によって結合位置に戻されると共に、再び非作動位置に戻される。
【0006】
対抗クラッチディスクは、カップ状クラッチスリーブの底部によって形成することができ、クラッチスリーブは、底部から離れた側の端部に、半径方向に突出するカラーを有する。
【0007】
爪がその非作動位置と作動位置との間で軸に対して軸線方向に変位可能であれば、爪と対抗クラッチディスクとの間の摩擦損失が回避され、クラッチ装置の動作が円滑になる。
【0008】
爪は、軸に対して平行であると共に爪に堅固に配置された爪ピンにより、ストローククラウンホイールで移動するよう駆動可能とすることができ、その歯に、爪ピンにおける端面の一つが当接し、ストローククラウンホイールは、デカップリングプッシャにより、クラウンホイール軸線周りで段階的に順送り可能である。
【0009】
この場合、簡単な構成は、ストローククラウンホイールが、第1歯及び第2歯で構成された複数の対を交互に有し、第1歯が、第2歯よりも高さが小さく、爪ピンが、第1歯により、爪を第1デカップリングストロークに上昇させ、その後にデカップリングプッシャの完全な作動が生じると、爪ピンが、第1歯の後の第1隙間で第2デカップリングストロークに下降可能であり、その後にデカップリングプッシャが部分的に解放されると、爪ピン及びその爪ピンと一緒に爪が、第2歯により、第3デカップリングストロークに上昇可能であり、次いで爪ピンが、第2歯の後の第2隙間に下降可能であると共に、爪が、結合位置に下降可能であることによって実現される。
【0010】
ストローククラウンホイールは、デカップリングプッシャによって段階的に回転駆動することができる。
【0011】
ロック装置が、クローを有し、そのクローが、対抗クラッチディスクにおいて、軸に対して平行なクロー軸周りで旋回可能に配置され、クローが、第1デカップリングストロークに達したときに軸のロック凹部と係合可能であり、第3デカップリングストロークに達したときにロック凹部から係合解除可能であれば、構成が簡単になる。
【0012】
この場合、クローは、第1デカップリングストロークの間、軸の外周面上に半径方向内側に弾性的に当接するよう保持することができ、第1デカップリング位置に達した後、軸における外周面の周方向のロック凹部に半径方向内側に係合することができる。
【0013】
クラッチディスクにより近い、ロック凹部の第1側壁が、半径方向に延在していれば、良好なロックが得られ、対抗クラッチディスクからより離れた、ロック凹部の第2側壁が、ロック凹部の開口を拡大するよう傾斜している摺動壁であることにより、容易なロックが可能になる。
【0014】
この場合、クローは、第2デカップリングストロークから第3デカップリングストロークへの経路において、ロック凹部の第2側壁に第1摺動傾斜路によって当接し、第2側壁に沿って摺動しながらロック凹部から出るよう移動可能であり、軸から、ロック解除位置に離れるよう移動可能であると共に、ロック解除位置に保持可能である。
【0015】
クローは、第3デカップリング位置から結合位置への対抗クラッチディスクの経路において、デカップリングプロセスが行われ得る位置に再び直ぐに位置するために、軸の外周面上を摺動するよう移動可能とすることができる。
【0016】
簡単な構成において、クローは、クロー軸から半径方向に延在するクローアームを有することができ、軸のロック凹部と係合可能でないクローアームにおける端面側の自由端は、クロー軸に対して半径方向に向けられた係合先端を有するよう屋根状に形成され、係合先端の側面は、クロー軸に対して半径方向平面内で延在し、クローは、クローアームに形成された第2摺動傾斜路を有し、第2摺動傾斜路は、軸を同心円状に完全に又は部分的に包囲すると共に、クロー軸により近い領域からクロー軸からより離れた領域に向けて傾斜し、対抗クラッチディスクが第3デカップリング位置から結合位置に移動されると、軸に堅固に配置されると共に、クラッチ入力ホイールから離れるよう向けられた円錐部が第2摺動傾斜路に当接し、クローは、クロー軸周りで旋回しながら第2摺動傾斜路に沿って摺動し、この場合、クローばねは、クローをロック凹部外に出るよう負荷する係合先端の第2側面から、クローをロック凹部内に入るよう負荷する係合先端の第1側面に移動する。
【0017】
以下、図面に示す本発明の一実施形態をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第3デカップリング位置から結合位置への移行にあるクラッチ装置を示す断面図である。
【
図2】結合位置にある
図1におけるクラッチ装置を示す平面図である。
【
図3】第2デカップリング位置にある
図1におけるクラッチ装置を示す断面図である。
【
図4】第2デカップリング位置にある
図1におけるクラッチ装置を示す平面図である。
【
図5】第1デカップリング位置にある
図1におけるクラッチ装置を示す断面図である。
【
図6】第3デカップリング位置にある
図1におけるクラッチ装置を示す平面図である。
【
図7】第3デカップリング位置にある
図1におけるクラッチ装置を示す断面図である。
【
図8】
図1におけるクラッチ装置のクロー及びリセットピンを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図示のクラッチ装置は、クラッチ入力ホイール1を備え、このクラッチ入力ホイール1は、軸線方向に固定された軸2上において、自由に回転可能であると共に、軸線方向に変位可能に配置されている。
【0020】
クラッチ入力ホイール1は、クロノグラフのムーブメント(図示せず)によって回転可能に駆動されている。
【0021】
クラッチ入力ホイール1は、クラッチディスク3を相対回転不可能に有し、クラッチディスク3には、軸線方向に変位可能な対抗クラッチディスク4が同軸に配置され、この対抗クラッチディスク4は、圧縮ばね5のばね力により、クラッチディスク3との結合位置で摩擦係合的に当接するために負荷されている。
【0022】
対抗クラッチディスク4は、クラッチスリーブ6の底部によって形成され、結合位置において、クラッチディスク3に摩擦係合的に当接している。クラッチスリーブ6は、対抗クラッチディスク4から離れた側の端部において、半径方向外側に延在する周方向カラー7を有する。
【0023】
カラー7は、爪8によって下方から把持可能であり、この爪8は、手動で作動可能なデカップリングプッシャ(図示せず)により、カラー7を負荷しない非作動位置から、対抗クラッチディスク4をクラッチディスク3から持ち上げる作動位置に移動可能である。
【0024】
爪8により、クラッチスリーブ6、従って対抗クラッチディスク4は、デカップリングプッシャを作動させることによって、圧縮ばね5のばね力に抗してクラッチディスク3から持ち上げ可能である。
【0025】
デカップリングプッシャ(図示せず)により、ストローククラウンホイール9がクラウンホイール軸線周りで段階的に順送り可能である。
【0026】
軸2に対して平行に延在すると共に、変位可能に取り付けられた爪ピン10は、爪8と堅固に接続され、爪8から離れた側の端面がストローククラウンホイール9に当接している。
【0027】
ストローククラウンホイール9は、第1歯11及び第2歯12で構成された複数の対を交互に有し、第1歯11は、第2歯12よりも高さが小さい。デカップリングプッシャの第1ステップにおいて、爪ピン10の第1歯11により、爪8は、第1デカップリングストロークで、クラッチディスク3から持ち上げ可能であり、対抗クラッチディスク4及びクラッチスリーブ6は、ロック装置15によってロック可能である。次いで、デカップリングプッシャが完全に作動されると、爪ピン10がストローククラウンホイール9の隙間13に下降可能であり、この場合、第2デカップリングストロークが生じて爪8がクラッチスリーブ6よりも更に下方に移動され、これにより爪8とカラー7との接触が解除される。その後、デカップリングプッシャが部分的に解放されると、爪ピン10は、第3デカップリングストロークで、歯12上に移動する。この場合、クラッチスリーブ6は、爪8により、第1デカップリングストロークよりも大きな第3デカップリングストロークで持ち上げられる。これにより、ロック装置がロック解除され、その後にデカップリングプッシャが作動されなければ、クラッチスリーブ6が圧縮ばね5によって結合位置に戻される。
【0028】
ロック装置15は、クロー17を有し、このクロー17は、クラッチスリーブ6において、軸2に対して平行なクロー軸16周りで旋回可能に配置されると共に、第1デカップリングストロークに達したときに、環状溝として構成された軸2のロック凹部18と係合可能である。
【0029】
この場合、クロー17は、第1デカップリングストロークの間、軸2の外周面上に半径方向内側に弾性的に当接するよう保持され、第1デカップリングストロークの終わりに達した後、半径方向内側にロック凹部18と係合する。
【0030】
クラッチディスク3により近い、ロック凹部18の第1側壁26は、半径方向に延在し、対抗クラッチディスク4からより離れた、ロック凹部18の第2側壁27は、ロック凹部18の開口を拡大するよう傾斜している摺動壁である。
【0031】
クロー17は、クロー軸から半径方向に延在するクローアーム19を有し、軸2のロック凹部18と係合可能でないクローアーム19における端面側の自由端は、クロー軸に対して半径方向に向けられた係合先端20を有するよう屋根状に形成されている。係合先端20の側面は、クロー軸に対して半径方向平面内で延在している。クロー17上に配置された第2摺動傾斜路28は、軸2を部分的に同心円状に包囲すると共に、係合先端20により近い領域から係合先端20からより離れた領域に向けて傾斜している。対抗クラッチディスク4が第3デカップリング位置から結合位置に移動されると、軸2に堅固に配置されると共に、クラッチ入力ホイール1から離れるよう向けられた(リセットピン29の)円錐部22が第2摺動傾斜路28に当接し、クロー17は、クロー軸周りで旋回しながら第2摺動傾斜路28に沿って摺動する。この場合、クローばね23は、クロー17をロック凹部18外に出るよう負荷する(係合先端20の)第2側面25から、クロー17をロック凹部18内に入るよう負荷する(係合先端20の)第1側面24に移動する。
【0032】
第3デカップリングストロークにおいて、デカップリングプッシャが解放されていれば、クロー7は、ロック凹部18から係合解除可能であり、クラッチスリーブ6は、圧縮ばね5により、結合位置に戻ることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 クラッチ入力ホイール
2 軸
3 クラッチディスク
4 対抗クラッチディスク
5 圧縮ばね
6 クラッチスリーブ
7 カラー
8 爪
9 ストローククラウンホイール
10 爪ピン
11 第1歯
12 第2歯
13 第1隙間
14 第2隙間
15 ロック装置
16 クロー軸
17 クロー
18 ロック凹部
19 クローアーム
20 係合先端
21 摺動傾斜路
22 円錐部
23 クローばね
24 第1側面
25 第2側面
26 第1側壁
27 第2側壁
28 第2摺動傾斜路
29 リセットピン
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用のクラッチ装置であって、
・回転駆動可能であると共に、軸線方向に固定され、かつクラッチ出力ホイールを相対回転不可能に支持する軸(2)上に配置された、ムーブメントで回転可能に駆動されるクラッチ入力ホイール(1)と、
・前記軸(2)に対して同軸の前記クラッチ入力ホイール(1)のクラッチディスク(3)であって、前記クラッチディスク(3)に、軸線方向に変位可能な対抗クラッチディスク(4)が同軸に配置され、前記対抗クラッチディスク(4)が、前記クラッチディスク(3)と摩擦係合的に当接するためにばね力によって負荷されると共に、爪(8)によって下方から把持可能であり、前記対抗クラッチディスク(4)が、前記クラッチディスク(3)との結合位置に当接する位置で前記爪(8)によってデカップリング位置に持ち上げ可能である、前記クラッチディスク(3)と、
を備え、
前記爪(8)が、手動で作動可能なデカップリングプッシャにより、負荷が生じない非作動位置から、前記対抗クラッチディスク(4)を前記クラッチディスク(3)から持ち上げる作動位置に移動可能であるクラッチ装置において、
前記対抗クラッチディスク(4)が、前記デカップリングプッシャの部分的な作動が生じると、前記爪(8)により、第1デカップリングストロークだけ、前記クラッチディスク(3)から、ロック装置(15)によってロック可能な第1デカップリング位置に持ち上げ可能であり、その後に前記デカップリングプッシャの完全な作動が生じると、前記爪(8)が、前記第1デカップリングストロークとは反対の第2デカップリングストロークで前記対抗クラッチディスク(4)から下降可能であり、その後に前記デカップリングプッシャが部分的に解放されると、前記対抗クラッチディスク(4)が、前記爪(8)により、前記第2デカップリングストロークから第3デカップリングストロークに上昇可能であり、この場合に前記ロック装置(15)が、ロック解除され、その後に前記デカップリングプッシャが完全に解放されると、前記対抗クラッチディスク(4)が、前記ばね力によって前記結合位置に戻されることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクラッチ装置であって、前記対抗クラッチディスク(4)が、カップ状クラッチスリーブ(6)の底部によって形成され、前記クラッチスリーブ(6)が、前記底部から離れた側の端部に、半径方向に突出するカラー(7)を有することを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクラッチ装置であって、前記爪(8)が、前記軸(2)に対して前記非作動位置と前記作動位置との間で軸線方向に変位可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のクラッチ装置であって、前記爪(8)が、前記軸(2)に対して平行であると共に前記爪(8)に堅固に配置された爪ピン(10)により、ストローククラウンホイール(9)で移動するよう駆動可能であり、その歯(11,12)に、前記爪ピン(10)における端面の一つが当接し、前記ストローククラウンホイール(9)が、デカップリングプッシャにより、クラウンホイール軸線周りで段階的に順送り可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のクラッチ装置であって、前記ストローククラウンホイール(9)が、第1歯(11)及び第2歯(12)で構成された複数の対を交互に有し、前記第1歯(11)が、前記第2歯(12)よりも高さが小さく、前記爪ピン(10)が、前記第1歯(11)により、前記爪(8)を第1デカップリングストロークに上昇させ、その後に前記デカップリングプッシャの完全な作動が生じると、前記爪ピン(10)が、前記第1歯(11)の後の第1隙間(13)で第2デカップリングストロークに下降可能であり、その後に前記デカップリングプッシャが部分的に解放されると、前記爪ピン(10)及び該爪ピン(10)と一緒に前記爪(8)が、前記第2歯(12)により、第3デカップリングストロークに上昇可能であり、次いで前記爪ピン(10)が、前記第2歯(12)の後の第2隙間(14)に下降可能であると共に、前記爪(8)が、結合位置に下降可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項6】
請求項4に記載のクラッチ装置であって、前記ストローククラウンホイール(9)が、前記デカップリングプッシャによって段階的に回転駆動可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項7】
請求項1に記載のクラッチ装置であって、前記ロック装置(15)が、クロー(17)を有し、該クロー(17)が、前記対抗クラッチディスク(4)において、前記軸(2)に対して平行なクロー軸(16)周りで旋回可能に配置され、前記クローが、前記第1デカップリングストロークに達したときに前記軸(2)のロック凹部(18)と係合可能であり、前記第3デカップリングストロークに達したときに前記ロック凹部(18)から係合解除可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項8】
請求項6に記載のクラッチ装置であって、前記クロー(17)が、第1デカップリングストロークの間、軸(2)の外周面上に半径方向内側に弾性的に当接するよう保持され、第1デカップリング位置に達した後、前記軸(2)における前記外周面の周方向のロック凹部(18)に半径方向内側に係合することを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のクラッチ装置であって、クラッチディスク(3)により近い、前記ロック凹部(18)の第1側壁(26)が、半径方向に延在し、対抗クラッチディスク(4)からより離れた、前記ロック凹部(18)の第2側壁(27)が、前記ロック凹部(18)の開口を拡大するよう傾斜している摺動壁であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のクラッチ装置であって、前記クロー(17)が、第2デカップリングストロークから第3デカップリングストロークへの経路において、前記ロック凹部(18)の前記第2側壁(27)に第1摺動傾斜路(21)によって当接し、前記第2側壁(27)に沿って摺動しながら前記ロック凹部(18)から出るよう移動可能であり、前記軸(2)から、ロック解除位置に離れるよう移動可能であると共に、前記ロック解除位置に保持可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項11】
請求項6~10の何れか一項に記載のクラッチ装置であって、前記クロー(17)が、第3デカップリング位置から結合位置への前記対抗クラッチディスク(4)の経路において、前記軸(2)の前記外周面上を摺動するよう移動可能であることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項12】
請求項6~10の何れか一項に記載のクラッチ装置であって、前記クロー(17)が、前記クロー軸(16)から半径方向に延在するクローアーム(19)を有し、前記軸(2)の前記ロック凹部(18)と係合可能な前記クローアーム(19)における端面側の自由端が、前記クロー軸(16)に対して半径方向に向けられた係合先端(20)を有するよう屋根状に形成され、前記係合先端(20)の側面(24,25)が、前記クロー軸(16)に対して半径方向平面内で延在し、前記クロー(17)が、前記クローアーム(19)に形成された第2摺動傾斜路(28)を有し、前記第2摺動傾斜路(28)が、前記軸(2)を同心円状に完全に又は部分的に包囲すると共に、前記係合先端(20)により近い領域から前記係合先端(20)からより離れた領域に向けて傾斜し、前記対抗クラッチディスク(4)が前記第3デカップリング位置から前記結合位置に移動されると、前記軸(2)に堅固に配置されると共に、クラッチ入力ホイール(1)から離れるよう向けられた円錐部(22)が前記第2摺動傾斜路(28)に当接し、前記クロー(17)が、前記クロー軸(16)周りで旋回しながら前記第2摺動傾斜路(28)に沿って摺動し、この場合、クローばね(23)が、前記クロー(17)を前記ロック凹部(18)外に出るよう負荷する前記係合先端(20)の前記第2側面(25)から、前記クロー(17)を前記ロック凹部(18)内に入るよう負荷する前記係合先端(20)の前記第1側面(24)に移動することを特徴とする、クラッチ装置。
【外国語明細書】