(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137776
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】リサイクルプラスチック材料の製造方法及びリサイクルプラスチック材料
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B29B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024032639
(22)【出願日】2024-03-05
(62)【分割の表示】P 2023099593の分割
【原出願日】2023-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健二
(72)【発明者】
【氏名】細川 淳多
(72)【発明者】
【氏名】岩田 高彰
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AC01
4F401AC05
4F401AC10
4F401BA13
4F401DC04
4F401FA07Z
(57)【要約】
【課題】
容リ法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から得られるリサイクル樹脂を利用するに当たって、環境に配慮しながら利用を拡大できる、優れたリサイクルプラスチック材料の製造方法を提供することである。
【解決手段】
容リ法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から、第1樹脂材41を入手する。第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B及び第2(一)樹脂材42Cのうちのいずれか1種類又は少なくとも2種類以上を混合するものの内から、第2樹脂材42を入手する。RP材料は、第1樹脂材41及び第2樹脂材42を投入し、必要に応じ無機フィラー材43を投入して溶融混練して成形される。RP材料の特定範囲は、無機フィラー材43の含有量が10重量%以上43重量%以下の割合とすると共に、アイゾット衝撃強度が3.0kJ/m
2以上に設定されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機フィラー材の含有量が10重量%以上43重量%以下の割合であると共に、アイゾット衝撃強度が3.0kJ/m2以上の特定範囲内であるリサイクルプラスチック材料を製造する製造方法であって、
容器包装リサイクル法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から得られる第1リサイクル樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第1樹脂材」という。)の材料特性を測定する第1測定ステップと、
家電リサイクル法が適用される使用済みプラスチックから得られる第2(家電リサイクル)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(家)樹脂材」という。)、又は、自動車リサイクル法が適用される使用済みプラスチックから得られる第2(自動車リサイクル)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(自)樹脂材」という。)、あるいは、容器包装リサイクル法の適用の対象外で、家電リサイクル法及び自動車リサイクル法のいずれも適用されない使用済みプラスチックから得られる第2(一般リサイクル材)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(一)樹脂材」という。)に関し、前記第2(家)樹脂材、第2(自)樹脂材及び第2(一)樹脂材のうちのいずれか1種類又は少なくとも2種類以上を混合するもの(無機フィラー成分を含むことがあり、以下総称して「第2樹脂材」という。)の材料特性を測定する第2測定ステップと、
前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップで測定された前記第1樹脂材、第2樹脂材の材料特性を基に、前記第1樹脂材の投入量及び第2樹脂材の投入量のそれぞれを算定する算定ステップと、
前記第1樹脂材及び第2樹脂材に関し、算定された各投入量を基に、リサイクルプラスチック材料全体に対する前記無機フィラー材の含有量及び前記アイゾット衝撃強度が前記特定範囲内となるように、無機フィラー材の投入量を求める投入量算出ステップと、を有することを特徴とするリサイクルプラスチック材料の製造方法。
【請求項2】
前記投入量算出ステップにおいて、前記リサイクルプラスチック材料の溶融混練後の無機フィラー成分が前記特定範囲の上限を超える場合、新たな無機フィラー材の投入を無くすことを特徴とする請求項1に記載のリサイクルプラスチック材料の製造方法。
【請求項3】
成形後のリサイクルプラスチックの材料物性が特定範囲とする際に、優先的に適用する優先適用順位に高低を設け、「優先適用 高」としてポリエチレンの含有量が、リサイクルプラスチック材料の全重量に対し30重量%以下にすることを定め、且つ「優先適用 低」としてMFRが2.0g/10min以上となることを少なくとも含めることを特徴とする請求項1又は2に記載のリサイクルプラスチック材料の製造方法。
【請求項4】
前記第1樹脂材のポリエチレンの成分量が、成形後のリサイクルプラスチック材料のポリエチレンの想定成分値より高い場合、第1樹脂材の投入量を、予め定める想定投入量より減らすと共に、前記第2樹脂材及び前記無機フィラー材の投入量を、予め定める想定投入量より増やす投入量調整ステップを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のリサイクルプラスチック材料の製造方法。
【請求項5】
無機フィラー材の含有量が10重量%以上43重量%以下の割合であると共に、アイゾット衝撃強度が3.0kJ/m2以上の特定範囲内であるリサイクルプラスチック材料であって、
容器包装リサイクル法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から得られた第1リサイクル樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第1樹脂材」という。)と、
家電リサイクル法が適用される使用済みプラスチックから得られる第2(家電リサイクル)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(家)樹脂材」という。)と、自動車リサイクル法が適用される使用済みプラスチックから得られる第2(自動車リサイクル)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(自)樹脂材」という。)と、前記容器包装リサイクル法、前記家電リサイクル法及び前記自動車リサイクル法のいずれも適用されない、使用済みプラスチックから得られる第2(一般リサイクル材)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(一)樹脂材」という。)と、前記第2(家)樹脂材、第2(自)樹脂材及び第2(一)樹脂材のうちのいずれか1種類又は少なくとも2種類以上を混合するもの(無機フィラー成分を含むことがあり、以下総称して「第2樹脂材」という。)と、
前記無機フィラー材とを含有し、
リサイクルプラスチック材料全体に対する無機フィラー材の含有量及びアイゾット衝撃強度が前記特定範囲内であることを特徴とするリサイクルプラスチック材料。
【請求項6】
前記第1樹脂材及び前記第2樹脂材は、ポリプロピレン及びポリエチレンを少なくとも含み、第2樹脂材のポリプロピレンの含有量は、第1樹脂材のポリプロピレンの含有量より多いことを特徴とする請求項5に記載のリサイクルプラスチック材料。
【請求項7】
前記第1樹脂材及び前記第2樹脂材は、ポリプロピレン及びポリエチレンを少なくとも含み、第1樹脂材のポリエチレンの含有量は、第2樹脂材のポリエチレンの含有量より多いことを特徴とする請求項5又は6に記載のリサイクルプラスチック材料。
【請求項8】
リサイクルプラスチックの材料物性が特定範囲とする際に、優先的に適用する優先適用順位に高低を設け、「優先適用 高」としてポリエチレンの含有量が、リサイクルプラスチック材料の全重量に対し30重量%以下にすることを定め、且つ「優先適用 低」としてMFRが2.0g/10min以上となることを少なくとも含めることを特徴とする請求項6又は7に記載のリサイクルプラスチック材料。
【請求項9】
前記特定範囲として、曲げ弾性率が1100MPa以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載のリサイクルプラスチック材料。
【請求項10】
前記第1樹脂材の密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の範囲として、前記密度については、0.90乃至0.98g/cm3、前記MFRについては、1.0乃至10.0g/10min、前記曲げ弾性率については、400乃至1200MPa、前記アイゾット衝撃強度については、3.0乃至20.0kJ/m2であることを特徴とする請求項5又は6に記載のリサイクルプラスチック材料。
【請求項11】
前記第2樹脂材が前記家電リサイクル由来の樹脂材からなる場合、第2樹脂材の密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の範囲として、前記密度については、0.91乃至0.97g/cm3、前記MFRについては、10.0乃至35.0g/10min、前記曲げ弾性率については、1000乃至1600MPa、前記アイゾット衝撃強度については、4.0乃至15.0kJ/m2であることを特徴とする請求項5又は6に記載のリサイクルプラスチック材料。
【請求項12】
前記第2樹脂材が前記自動車リサイクル由来の樹脂材からなる場合、第2樹脂材の密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の範囲として、前記密度については、0.95至1.10g/cm3、前記MFRについては、15.0乃至40.0g/10min、前記曲げ弾性率については、1500乃至2500MPa、前記アイゾット衝撃強度については、6.0乃至35.0kJ/m2であることを特徴とする請求項5又は6に記載のリサイクルプラスチック材料。
【請求項13】
前記第2樹脂材が前記一般材由来のリサイクル樹脂材からなる場合、第2樹脂材の密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の範囲として、前記密度については、0.91乃至1.0g/cm3、前記MFRについては、3.0乃至30.0g/10min、前記曲げ弾性率については、900乃至1600MPa、前記アイゾット衝撃強度については、4.0乃至25.0kJ/m2であることを特徴とする請求項5又は6に記載のリサイクルプラスチック材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常用途と異なる特定用途や特定目的のリサイクルプラスチック材料を製造するための、リサイクルプラスチック材料の製造方法及びリサイクルプラスチック材料に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料開発では、用途を限定しない「通常用途」とは異なる、特定用途や特定目的に使用するために開発設計することがある。例えば特許文献1に記載のプールフロアでは、特定用途として、水中で使用することを想定した製品開発が必要である。水中に設置するプールフロアの場合は、そのフロアが水中で浮くことが無いよう、比重(密度)が水より大きい素材、例えば塩化ビニル樹脂や、ポリカーボネート樹脂等を使用した製品開発を行う。なお「比重」は、物性上「密度」とほぼ同じ値であるので、この出願では「密度」と「比重」を同義として扱う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年プラスチック材による製品開発として、バージン材を使用せずに、リサイクル材を使用することが望まれている。特に、容器包装リサイクル法(以下「容リ法」という。)が制定された以降は、容リ法が適用されるリサイクル材の利用が推奨されている。しかし、容リ法が適用されるリサイクル材には、多様な樹脂等の材料が混入して、比重が水より小さい素材が多く含まれる可能性がある。そのため、容リ法が適用されるリサイクル樹脂を、例えばプールフロア等の水中(特定用途)で使用する場合は、通常用途にリサイクル材を利用する状況とは異なる、種々の工夫が必要である。
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、その目的としては、通常用途と異なる特定用途や特定目的にリサイクルプラスチック材料を使う場合においても、容リ法が適用されるリサイクルプラスチック材料を利用できる、優れたリサイクルプラスチック材料の製造方法及びリサイクルプラスチック材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、製造方法の本発明は、以下の手段を有する。即ち、手段1として、無機フィラー材の含有量が10重量%以上43重量%以下の割合であると共に、アイゾット衝撃強度が3.0kJ/m2以上の特定範囲内であるリサイクルプラスチック材料を製造する製造方法であって、容器包装リサイクル法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から得られる第1リサイクル樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第1樹脂材」という。)の材料特性を測定する第1測定ステップと、家電リサイクル法が適用される使用済みプラスチックから得られる第2(家電リサイクル)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(家)樹脂材」という。)、又は、自動車リサイクル法が適用される使用済みプラスチックから得られる第2(自動車リサイクル)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(自)樹脂材」という。)、あるいは、容器包装リサイクル法の適用の対象外で、家電リサイクル法及び自動車リサイクル法のいずれも適用されない使用済みプラスチックから得られる第2(一般リサイクル材)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(一)樹脂材」という。)に関し、前記第2(家)樹脂材、第2(自)樹脂材及び第2(一)樹脂材のうちのいずれか1種類又は少なくとも2種類以上を混合するもの(無機フィラー成分を含むことがあり、以下総称して「第2樹脂材」という。)の材料特性を測定する第2測定ステップと、前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップで測定された前記第1樹脂材、第2樹脂材の材料特性を基に、前記第1樹脂材の投入量及び第2樹脂材の投入量のそれぞれを算定する算定ステップと、前記第1樹脂材及び第2樹脂材に関し、算定された各投入量を基に、リサイクルプラスチック材料全体に対する前記無機フィラー材の含有量及び前記アイゾット衝撃強度が前記特定範囲内となるように、無機フィラー材の投入量を求める投入量算出ステップとを有する。
【0006】
手段2として、前記手段1において、前記投入量算出ステップにおいて、前記リサイクルプラスチック材料の溶融混練後の無機フィラー成分が前記特定範囲の上限を超える場合、新たな無機フィラー材の投入を無くすことが好ましい。
【0007】
手段3として、前記手段1又は2において、成形後のリサイクルプラスチックの材料物性が特定範囲とする際に、優先的に適用する優先適用順位に高低を設け、「優先適用 高」としてポリエチレンの含有量が、リサイクルプラスチック材料の全重量に対し30重量%以下にすることを定め、且つ「優先適用 低」としてMFRが2.0g/10min以上となることを少なくとも含めることが好ましい。
【0008】
手段4として、前記手段1乃至3のいずれか一において、前記第1樹脂材のポリエチレンの成分量が、成形後のリサイクルプラスチック材料のポリエチレンの想定成分値より高い場合、第1樹脂材の投入量を、予め定める想定投入量より減らすと共に、前記第2樹脂材及び前記無機フィラー材の投入量を、予め定める想定投入量より増やす投入量調整ステップを備えることが好ましい。
【0009】
また、製造物である本発明は以下の手段を有する。即ち、手段5として、無機フィラー材の含有量が10重量%以上43重量%以下の割合であると共に、アイゾット衝撃強度が3.0kJ/m2以上の特定範囲内であるリサイクルプラスチック材料であって、容器包装リサイクル法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から得られた第1リサイクル樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第1樹脂材」という。)と、家電リサイクル法が適用される使用済みプラスチックから得られる第2(家電リサイクル)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(家)樹脂材」という。)と、自動車リサイクル法が適用される使用済みプラスチックから得られる第2(自動車リサイクル)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(自)樹脂材」という。)と、前記容器包装リサイクル法、前記家電リサイクル法及び前記自動車リサイクル法のいずれも適用されない、使用済みプラスチックから得られる第2(一般リサイクル材)樹脂材(無機フィラー成分を含むことがあり、以下「第2(一)樹脂材」という。)と、前記第2(家)樹脂材、第2(自)樹脂材及び第2(一)樹脂材のうちのいずれか1種類又は少なくとも2種類以上を混合するもの(無機フィラー成分を含むことがあり、以下総称して「第2樹脂材」という。)と、前記無機フィラー材とを含有し、リサイクルプラスチック材料全体に対する無機フィラー材の含有量及びアイゾット衝撃強度が前記特定範囲内であることを特徴とする。
【0010】
手段6として、前記手段5において、前記第1樹脂材及び前記第2樹脂材は、ポリプロピレン及びポリエチレンを少なくとも含み、第2樹脂材のポリプロピレンの含有量は、第1樹脂材のポリプロピレンの含有量より多いことが好ましい。
【0011】
手段7として、前記手段5又は手段6において、前記第1樹脂材及び前記第2樹脂材は、ポリプロピレン及びポリエチレンを少なくとも含み、前記第1樹脂材のポリエチレンの含有量は、第2樹脂材のポリエチレンの含有量より多いことが好ましい。
【0012】
手段8として、リサイクルプラスチックの材料物性が特定範囲とする際に、優先的に適用する優先適用順位に高低を設け、「優先適用 高」としてポリエチレンの含有量が、リサイクルプラスチック材料の全重量に対し30重量%以下にすることを定め、且つ「優先適用 低」としてMFRが2.0g/10min以上となることを少なくとも含めることが好ましい。
手段9として、前記特定範囲として、曲げ弾性率が1100MPa以上であることが好ましい。
手段10として、前記第1樹脂材の密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の範囲として、前記密度については、0.90乃至0.98g/cm3、前記MFRについては、1.0乃至10.0g/10min、前記曲げ弾性率については、400乃至1200MPa、前記アイゾット衝撃強度については、3.0乃至20.0kJ/m2であることが好ましい。
手段11として、前記第2樹脂材が家電リサイクル由来の樹脂材からなる場合、第2樹脂材の密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の範囲として、前記密度については、0.91乃至0.97g/cm3、前記MFRについては、10.0乃至35.0g/10min、前記曲げ弾性率については、1000乃至1600MPa、前記アイゾット衝撃強度については、4.0乃至15.0kJ/m2であることが好ましい。
手段12として、前記第2樹脂材が自動車リサイクル由来の樹脂材からなる場合、第2樹脂材の密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の範囲として、前記密度については、0.95至1.10g/cm3、前記MFRについては、15.0乃至40.0g/10min、前記曲げ弾性率については、1500乃至2500MPa、前記アイゾット衝撃強度については、6.0乃至35.0kJ/m2であることが好ましい。
手段13として、前記第2樹脂材が一般材由来のリサイクル樹脂材からなる場合、第2樹脂材の密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度の範囲として、前記密度については、0.91乃至1.0g/cm3、前記MFRについては、3.0乃至30.0g/10min、前記曲げ弾性率については、900乃至1600MPa、前記アイゾット衝撃強度については、4.0乃至25.0kJ/m2であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通常用途と異なる特定用途にリサイクルプラスチック材料を使う場合においても、容リ法が適用されるリサイクルプラスチック材料を利用することができる、優れたリサイクルプラスチック材料の製造方法及びリサイクルプラスチック材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を具体化した実施の形態のリサイクルプラスチック材料を用いて形成したプールフロアの正面図である。
【
図2】本実施の形態のリサイクルプラスチック材料を溶融混練して成形する押出機の説明図である。
【
図3】同実施の形態におけるポリエチレン含有率とウエルド強度の関係を示すグラフ。
【
図4】同実施の形態における製造工程を示すフローチャート。
【
図5】同実施の形態における樹脂材の成分値及び物性値を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を具体化した実施の形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施の形態のリサイクルプラスチック材料(以下この材料を「RP材」という。)を用いて成形したプールフロアの正面図である。
図1のプールフロア10は、プールの利用者(例えば背が高くない子供等)が載るための天板11と、この天板11を下方から支える複数の脚20とからなる。なお、通常用途と異なる特定用途(特定目的)にRP材を使う場合として、プールフロアを例示したが、これ以外の製品で実施してもよい。プールフロアを成形するRP材の材料密度は、1.00g/cm
3以上且つ1.30g/cm
3以下(特定範囲)が望ましいが、製品の目的、用途等に応じて、上記特定範囲以外の材料密度に変更してもよい。
【0016】
図1に示す押出成形機37は、そのホッパ36にペレット材42(後述する第1樹脂材41、第2(家電リサイクル)樹脂材42A、第2(自動車リサイクル)樹脂材42B、第2(一般材リサイクル)樹脂材42Cまたは無機フィラー材43等からなる)を投入することができ、ペレット材42は内部にスクリュウーを備える搬送部38内で搬送される。押出成形機37は、内部で投入されたペレット材42を溶融混練して成形すると共に、排出口39から新たなペレット材として排出することができる。溶融混練法としては、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いることができる。
本実施形態のペレット材42では、容リ法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から得られるリサイクル樹脂材41(以下このリサイクル樹脂材41を「第1樹脂材41」と称す。)が必須構成要素になる。また、ペレット材42の構成要素として、家電リサイクル法が適用される使用済みプラスチックから得られるリサイクル樹脂材(以下このリサイクル樹脂材を「以下第2(家電リサイクル)樹脂材42A」と称す。)を含めることができる。また、ペレット材42の他の構成要素として、自動車リサイクル法が適用される使用済みプラスチックから得られるリサイクル樹脂材(以下このリサイクル樹脂材を「以下第2(自動車リサイクル)樹脂材42B」と称す。)を含めることができる。
【0017】
更に、ペレット材42の構成要素として、容リ法、家電リサイクル法及び自動車リサイクル法のいずれも適用されない、一般の使用済みRP材料から得られるリサイクル樹脂材(以下このリサイクル樹脂材を「以下第2(一般材リサイクル)樹脂材42C」と称す。)を含めることができる。
第1樹脂材41、第2(家電リサイクル)樹脂材42A、第2(自動車リサイクル)樹脂材42B、第2(一般材リサイクル)樹脂材42Cは、
図5に示す如く、ポリプロピレン(以下「PP」と記載する。)の成分と、ポリエチレン(以下「PE」と記載する。)の成分と、無機フィラーの成分と、それら以外の成分と(以下「その他」と記載)を含んでおり、製品の出所等により、成分量等に偏りがあって物性上のばらつきに特徴がある。
【0018】
また、ペレット材42に対し、任意的な構成要素として、剛性を向上させるため、または、比重(密度)を増加させるため無機フィラー材43を加えることできる。第1樹脂材41、第2(家電リサイクル)樹脂材42A、第2(自動車リサイクル)樹脂材42B、第2(一般材リサイクル)樹脂材42Cは無機フィラー成分を含んでおり、その成分量に応じ剛性を向上させる効能がある。仮に、所望する剛性が不足する場合は、追加の無機フィラー材43を加えることできる。無機フィラー材43は、プラスチック材料の特性に影響を及ぼさず、且つ、剛性を向上させるものであれば公知のものでよい。無機フィラー材としては、例えばカルシウム、マグネシウム、チタン、アルミニウム、鉄、亜鉛などの炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酸化物、若しくはこれらの水和物の粉末状のものが挙げられる。具体的には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カリオン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、珪酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベンナイト、ウォラストナイト、ドロマイト、黒鉛などが挙げられる。これらは単独または2種類以上併用して、含有しても良い。
なお、
図1に示す第1樹脂材41、第2(家電リサイクル)樹脂材42A、第2(自動車リサイクル)樹脂材42B、第2(一般材リサイクル)樹脂材42C(以下これらを纏めて第2樹脂材42と総称する場合がある。)または無機フィラー材43(これらの混合物)は、理解しやすくするように概略的にペレット材の形態として図示するが、この形態は必ずしもペレット状のものに限定されない。また、押出成形機37の排出口39から出る樹脂材の形態は、ペレット状であっても良いし、それ以外の形態であっても良い。
【0019】
本願発明者及び研究者等は、長年にわたり、RP材料の材料物性や、成分分析、市場動向及び活用分野等を検討した。その結果、RP材料に多様な樹脂等が存在することが原因になって、物性の低下、物性のぶれ、偏り及びばらつき等が生じ易いことを把握した。また、RP材料の製品出所等の相違により、材料物性や成分分析に特定の傾向が生じやすく、概略的に以下の(1)乃至(4)に区分できることを把握した。
(1)容リ法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から得られる第1樹脂材41(この場合、第1樹脂材41(第1リサイクル樹脂材)は、容リ法由来の樹脂材といえる。)
(2)容リ法の適用の対象外で家電リサイクル法が適用されるRP材料から得られる第2(家電リサイクル)樹脂材42A(以下略して、第2(家)樹脂材42Aと称すが、これは家電リサイクル法由来の樹脂材といえる。)
(3)容リ法の適用の対象外で自動車リサイクル法が適用されるRP材料から得られる第2(自動車リサイクル)樹脂材42B(以下略して、第2(自)樹脂材42Bと称すが、これは自動車リサイクル法由来の樹脂材といえる。)
(4)容リ法、家電リサイクル法及び自動車リサイクル法のいずれも適用されない、一般のRP材料から得られる第2(一般リサイクル材)樹脂材42C(以下略して、第2(一)樹脂材42Cと称すが、第2(一)樹脂材42Cは、第2(家)樹脂材42A及び第2(自)樹脂材42Bと異なり、一般材由来の樹脂材といえる。)
【0020】
なお、容リ法の正式名は「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等」に関する法律である(必要に応じ、同法の条文・定義等を引用する)。具体的な対象としては、例えば、包装フィルム、食品トレーなどが挙げられるが、同法上の対象物は限定されることになる。(同法の対象物から得られるR樹脂材は、容リ材由来樹脂材であって第1樹脂材41に相当するが、同法等の改正等に従った内容の変更がある。)
また、家電リサイクル法の正式名は「特定家庭用機器再商品化法」に関する法律である(必要に応じ、同法の条文・定義等を引用する)。対象となる品目は、家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、衣類乾燥)であるが、同法を適用する使用済みプラスチックは、一般家庭、事務所から排出されるものに限定される。そのため、同法が適用される家電4品目であっても、排出元が異なることで同法が適用されない場合がある。(同法の対象となる品目から得られるR樹脂材は、家電材由来の樹脂材であって第2(家)樹脂材42Aに相当するが、家電リサイクル法等の改正等に従った内容の変更がある。)
また、自動車リサイクル法の正式名は「使用済自動車の再資源化等に関する法律」である(必要に応じ、同法の条文・定義等を引用する)。同法では「自動車」等が定義され、同法上の具体的な対象は、例えば、自動車バンパーや自動車内装材等に限定される。(同法の対象物から得られるR樹脂材は、自動車材由来の樹脂材であって第2(自)樹脂材42Bに相当するが、自動車リサイクル法等の改正等に従った内容の変更がある。)
また、容リ法、家電リサイクル法及び自動車リサイクル法のいずれも適用されない、一般の使用済みRP材料から得られるR樹脂材が存在する。例えば(1)家電リサイクル法が適用される家電4品目以外の品目のRP材料から得られるR樹脂材、(2)自動車リサイクル法が適用されない二輪車などのRP材料等から得られる樹脂材が挙げられる。(このR樹脂材は、一般材由来の樹脂材であって第2(一)樹脂材42Cに相当するが、容リ法、家電リサイクル法及び自動車リサイクル法等の変更に従い内容の変更がある。)
このような法上の扱いから、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cは、成分及び材料物性に類似する点がある一方、適用する法律に係る製品の由来により、成分及び材料物性の相違点があり、特定の傾向が生じている。
【0021】
図5には表1乃至表4が示されている。表1は第1樹脂材41の4組の材料(材料1、材料2、材料3、材料4)に関し、PPの成分値重量%、PEの成分値重量%、無機フィラーの成分値重量%、それ以外の成分(以下「その他」と記載)の成分値重量%を示し、更に、4物性値(この場合、密度、メルトフローレート(以下「MFR」と記載する。)、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度)を示す。
表2乃至表4は、表1同様に、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、及び、第2(一)樹脂材42Cに関する、各材料(材料1、材料2、材料3、材料4)の成分(PP成分、PE成分、無機フィラー成分、その他成分)値重量%を示す他、4物性値(この場合、密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度)を示す。各樹脂材(41、42A、42B、42C)の材料1乃至材料4の表示は、4個以下又はそれ以上であっても良い。また、測定対象となる4物性は、必要に応じ、それ以外の物性を対象としても良い。
【0022】
次に、樹脂材の材料特性を測定する方法について説明する。樹脂材の材料特性の一つを表すメルトフローレート(以下「MFR」と記載する。)は、メルトインデクサーG-02(株式会社東洋精機製作所製)を用い、MFR測定方法(JIS K7210 摂氏230度 荷重2.16kg)でもって測定できる。また、樹脂材の材料特性の一つを表す曲げ弾性率は、ベントグラフB-2(株式会社東洋精機製作所製)を用い、曲げ特性の測定法(JIS K7171)でもって測定できる。また、樹脂材の材料特性の一つを表すアイゾット衝撃強度は、衝撃試験機IT(株式会社東洋精機製作所製)を用い、アイゾット衝撃測定方法(JIS K7110)でもって測定できる。また、樹脂材の材料特性の一つを表す材料密度は、電子比重計SD-200L(アルファーミラージュ株式会社製)を用い、密度及び比重測定方法(JIS K7112)で測定できる。
表に示す第1樹脂材41の材料1のMFRは3.1g/10minである。また、第1樹脂材41の材料1の曲げ弾性率は、666MPaである。また、第1樹脂材41の材料1のアイゾット衝撃強度は、4.6kJ/m
2である。第1樹脂材41の材料1の材料密度は0.96g/cm
3であり、第1樹脂材41の材料2、材料3、材料4の欄に、成分分析されたPP、PE、その他樹脂、無機フィラーの各成分値が記載されている。樹脂材中のPP、PE、その他樹脂の測定には、例えば日本分光株式会社製の赤外分光光度計FT/IR-4Xを用いることができ、これ以外として異なる装置を用いてもよい。無機フィラーの量の測定は、燃焼残渣量を用いて測定される。例えばアドバンテック東洋株式会社製の電気るつぼ炉FUC030FBを用いることができる。これらの数値は、
図5の表1乃至表4(材料1、材料2、材料3、材料4)の欄に記載されている。
【0023】
次に、
図5の表1乃至4に示す樹脂材について説明する。最初に第1樹脂材41(材料1乃至材料4)について説明すると、第1樹脂材41は、PEの含有量が大きく、且つPPの含有量が小さく、その他の含有量や無機フィラーの含有量も小さい点に特徴がある。材料1乃至材料4の密度が0.94乃至0.97g/cm
3の範囲で点在し、MFR値が3.0乃至3.8g/10minの範囲で点在し、曲げ弾性率が666乃至937MPaの範囲で点在し、アイゾット衝撃強度が、4.6乃至8.4kJ/m
2程度の範囲で点在する。
第1樹脂材41単体の特性としては、密度が0.90乃至0.98g/cm
3の範囲が大まかな実用範囲であり、0.93乃至0.96g/cm
3の範囲が好適な実用範囲である。また、第1樹脂材41のMFRについては、射出成形時の成形性の観点から、1.0乃至10.0g/10minの範囲が大まかな実用範囲であり、更に、3.0乃至7.0g/10minの範囲が好適な実用範囲である。また、第1樹脂材41の曲げ弾性率については、製品の剛性(強度)の関係から、400乃至1200MPaの範囲が大まかな実用範囲であり、600乃至1100MPaの範囲が好適な実用範囲である。また、第1樹脂材41のアイゾット衝撃強度については、製品の耐衝撃(割れ易さ回避)の関係から、3.0乃至20.0kJ/m
2の範囲が大まかな実用範囲であり、更に、5.0乃至15.0kJ/m
2の範囲が好適な実用範囲である。
【0024】
また、
図5表2に示す第2(家)樹脂材42A(材料1乃至材料4)は、PPの含有量が極めて大きく、且つPEの含有量が極めて小さく、その他の含有量や無機フィラーの含有量も小さく、その他の含有量や無機フィラーの含有量も小さい点に特徴がある。また、第2(家)樹脂材42Aの密度が0.91乃至0.92g/cm
3の範囲で点在し、MFR値が25.4乃至28.7g/10minの範囲で点在し、曲げ弾性率が1259乃至1370MPaの範囲で点在し、アイゾット衝撃強度が6.0乃至7.3kJ/m
2の範囲で点在する。この結果、第2(家)樹脂材42A(材料1乃至材料4)は、第1樹脂材41(材料1乃至材料4)と比べ、MFR、曲げ弾性率及びアイゾット衝撃強度の値が優れている。
第2(家)樹脂材42A単体の特性としては、密度が0.91乃至0.97g/cm
3の範囲が大まかな実用範囲であり、また、0.91乃至0.94g/cm
3の範囲が好適な実用範囲である。また、第2(家)樹脂材42AのMFRについては、射出成形時の成形性の観点から、10.0乃至35.0g/10minの範囲が大まかな実用範囲であり、更に、15.0乃至30.0g/10minの範囲が好適な実用範囲である。また、第2(家)樹脂材42Aの曲げ弾性率については、製品の剛性(強度)の関係から、1000乃至1600MPaの範囲が大まかな実用範囲であり、更に、1100乃至1400MPaの範囲が好適な実用範囲である。また、第2(家)樹脂材42Aのアイゾット衝撃強度については、製品の耐衝撃(割れ易さ回避)の関係から、4.0乃至15.0kJ/m
2の範囲が大まかな実用範囲であり、更に、6.0乃至12.0kJ/m
2の範囲が好適な実用範囲である。
【0025】
また、
図5表3に示す第2(自)樹脂材42B(材料1乃至材料4)は、PPの含有量が大きく、且つPEの含有量が小さい点に特徴がある他に、第1樹脂材41、第2(家)樹脂材42A及び第2(一)樹脂材42Cに比べ、無機フィラーの含有量が多い点に特徴がある。そのため、第2(自)樹脂材42B(材料1乃至材料4)を使用する場合は、第2(自)樹脂材42B(材料1乃至材料4)自体が無機フィラー成分を多く含むため、使用時に無機フィラー材43を追加使用しない場合がある。但し、第2(自)樹脂材42B(材料1乃至材料4)自体の無機フィラー成分が想定に比べ少ない場合は、必要量の無機フィラー材43を追加する。
第2(自)樹脂材42Bの密度が1.04乃至1.06g/cm
3の範囲で点在し、MFR値が24.8乃至35.1g/10minの範囲で点在し、曲げ弾性率が1906乃至2159MPaの範囲で点在し、アイゾット衝撃強度が17.5乃至24.6kJ/m
2程度の範囲で点在する。この結果、第2(自)樹脂材42Bの材料1乃至4については、第1樹脂材41(材料1乃至材料4)と比べ、MFR、曲げ弾性率及びアイゾット衝撃強度の値が優れている。
第2(自)樹脂材42B単体の特性としては、密度が0.95至1.10g/cm
3が大まかな実用範囲であり、更に、0.97至1.07g/cm
3の範囲が好適な実用範囲である。また、第2(自)樹脂材42BのMFRについては、射出成形時の成形性の観点から、15.0乃至40.0g/10minの範囲が大まかな実用範囲であり、更に、20.0乃至35.0g/10minの範囲が好適な実用範囲である。また、第2(自)樹脂材42Bの曲げ弾性率については、製品の剛性(強度)の関係から、1500乃至2500MPaの範囲が大まかな実用範囲であり、1800乃至2300MPaの範囲が好適な実用範囲である。また、第2(自)樹脂材42Bのアイゾット衝撃強度については、製品の耐衝撃(割れ易さ回避)の関係から、6.0乃至35.0kJ/m
2の範囲が大まかな実用範囲であり、更に、10.0乃至30.0kJ/m
2の範囲が好適な実用範囲である。
また、
図5表4に示す第2(一)樹脂材42C(材料1乃至材料4)は、PPの含有量が極めて大きく、且つPEの含有量が極めて小さく、その他の含有量や無機フィラーの含有量も小さい点に特徴がある。また、第2(一)樹脂材42Cの密度が0.94乃至0.98g/cm
3の範囲で点在し、MFRが9.6乃至14.0g/10minの範囲で点在し、曲げ弾性率が1180乃至1324MPaの範囲で点在し、アイゾット衝撃強度が5.8乃至11.1kJ/m
2の範囲で点在する。この結果、第2(一)樹脂材42C(材料1乃至材料4)は、第1樹脂材41(材料1乃至材料4)と比べ、MFR、曲げ弾性率及びアイゾット衝撃強度の値が優れている。
第2(一)樹脂材42Cとしては、密度が0.91乃至1.0g/cm
3の範囲が大まかな実用範囲であり、0.91乃至0.96g/cm
3の範囲が好適な実用範囲である。また、MFRについては、射出成形時の成形性の観点から、3.0乃至30.0g/10minの範囲が大まかな実用範囲であり、更に、4.0乃至25.0g/10minの範囲が好適な実用範囲である。また、第2(一)樹脂材42Cの曲げ弾性率については、製品の剛性(強度)の関係から、900乃至1600MPaの範囲が大まかな実用範囲であり、更に、1100乃至1400MPaの範囲が好適な実用範囲である。また、第2(一)樹脂材42Cのアイゾット衝撃強度については、製品の耐衝撃(割れ易さ回避)の関係から、4.0乃至25.0kJ/m
2の範囲が大まかな実用範囲であり、更に、5.0乃至15.0kJ/m
2の範囲が好適な実用範囲である。
【0026】
また、PP成分とPE成分を混合する場合、本願発明者等の実験結果として、以下の特性を有することを承知している。即ち、
図2は、RP材料(PPとPEからなる樹脂材)に対するPE含有比率と、ウエルド強度の関係を示すグラフであり、
図2の縦軸はウエルド強度(MPa)を示し、
図2の横軸はPEの含有比率に示す。
図2によれば、PEの含有比率が0%(この場合のウエルド強度は32.6MPaである。)から、含有比率50%(この場合のウエルド強度は19.0MPaである。)に向かって、徐々に下がる傾向がある。そして、
図2においてPEの含有比率が30%でウエルド強度が23.0MPa程度であって、PEの含有比率が0%乃至30%の範囲(好ましくは、0%乃至20%の範囲)であれば、ウエルド強度は十分に保たれて(即ち強度保持率は70%以上である)、製品化において問題が生じない程度の強度(許容状況)であると把握する。ウエルド強度の測定方法は、中央にウエルドが形成された150×100×4mmの試験片を用い、JIS K7161で定める条件で測定した。
【0027】
本実施の形態のような第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42C等は、PPを主成分とする樹脂材(以下「PP主成分樹脂材」と称することがある。)であって、PP主成分樹脂材と第1樹脂材41を混合する場合(PPとPE以外の異物が混入してもウエルド強度において概ね無視できる。)、PP主成分樹脂材と第1樹脂材41に対するPEの含有比率に関して、
図2のグラフを適用できることが分かる。その結果PEの含有比率が0乃至30%の範囲であれば、RP材料の製品強度としての許容範囲を維持できることが分かる。
次に
図5を用いて、RP材料から成形される製品の材料特性(商品特性)について説明する。製品の材料特性は、溶融混練後のRP材料の特定範囲(成分分析した成分量と材料物性値)に関連付け付けられる。また、材料物性が特定範囲は、製品使用上の観点から、優先的に適用する「優先適用 高」と、「優先適用 低」(優先適用「高」よりも低い)に分けることができる。
下記の表1によれば、「溶融混練後の無機フィラー材の投入量を10重量%以上43重量%以下の割合とする」ことは、「優先適用 高」であり、製品の重量の適正を図るため重要性が高い。また、「PEの含有量が30重量%以下であること」が「優先適用 高」になる。同様に、「溶融混練後のRP材料の物性として、密度が1.00g/cm
3以上且つ1.30g/cm
3以下であること」が「優先適用 高」になる。一方、「アイゾット衝撃強度が3.0kJ/m
2以上であること」、「曲げ弾性率1100MPa以上であること」、「MFRが2.0g/10min以上であること」は、「優先適用 低」である。
ここで、材料密度を1.0以上に設定した理由は、水中でプールフロアが浮かないようにするため、水より比重を大きいことが望ましいからである。また、材料密度を1.30g/cm
3以下に設定した理由は、同様の製品に利用する樹脂の材料密度が1.35g/cm
3程度であることから、設置前に完成品として、製造工場から設置場所へ搬送する際の軽量化(搬送コストのコストダウン等)及び構築時の利便性を図る観点から、同製品の密度に準ずるものにする。この場合、「優先適用 高」で定める条件を、本実施の形態では、最優先の条件と定める。そして、「優先適用 低」で定める内容は、上記条件の範疇で、製品の特徴等に応じて、条件を適宜設定する方法を選定し、RP材を用いた製品設計の際の柔軟性を担保する。なお、優先適用の高低は、一律ではなく製品の使用環境及び製品の特徴等に応じて変わることがあり、特に、「優先適用 低」に関するものは、製品の使用環境及び製品の特徴等に応じて変更できる。
【0028】
【0029】
次に本実施の形態の製造方法に関し、
図3に示すフローチャートを用いて説明する。
図3において、最終的なRP材料から成形される、製品化予定の商品の材料特性を予め把握する。最初に、製品化予定の商品の材料特性を把握し、その材料特性を構成する成分分析(この場合「PP成分、PE成分、その他成分、無機フィラー材」の成分比率)の他、材料物性(密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度)を把握する。以下、このステップを商品特性把握ステップS1と称し、
図3では「S1」と略記する。なお、成分分析した数値、及び材料物性値の双方を総称して商品特性(材料特性)と称す。
次に、第1樹脂材41の成分分析し、更に材料物性値を測定する(ステップS2)。以下、このステップを成分分析・材料物性測定ステップS2と称し、
図3では「S2」と略記する。この場合、第1樹脂材41を溶融混練し、第1樹脂材41の「PP成分、PE成分、その他成分、無機フィラー材」の成分分析の他、材料物性である「密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度」を測定する(ステップS2)。ステップS2の材料特性を測定する材料特性測定ステップが、請求項の「第1測定ステップ」に該当する。
次に、第1樹脂材41の成分分析及び材料物性の結果と、商品特性把握ステップS1で把握する成分分析及び材料物性の結果を対比して検証する(ステップS3)。以下、このような対比検証ステップを対比検証ステップS3と称し、
図3では「S3」と略記する。ステップS4では、第2(家)樹脂材42Aの成分分析し、更に材料物性値を測定する。以下、第2(家)樹脂材42Aの成分分析値及び材料物性値を測定するステップを成分分析・材料物性測定ステップS4と称し、
図3では「S4」と略記する。この場合、第2(家)樹脂材42A単体を溶融混練し、混練後の第2(家)樹脂材42Aの「PP成分、PE成分、その他成分、無機フィラー材」の成分分析の他、材料物性である「密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度」を測定する。ステップS4における第2(家)樹脂材42Aの材料特性を測定する材料特性測定ステップが、請求項の「第2測定ステップ」に該当する。なお、仮に、第2(家)樹脂材42Aの使用予定がない場合は、第2(家)樹脂材42Aの材料特性の測定を行うことは不要とする。
【0030】
ステップS5では、第2(自)樹脂材42Bの成分分析し、更に材料物性値を測定する。以下、第2(自)樹脂材42Bの成分分析値及び材料物性値を測定するステップを成分分析・材料物性測定ステップS5と称し、
図3では「S5」と略記する。この場合、第2(自)樹脂材42B単体を溶融混練し、混練後の第2(自)樹脂材42Bの「PP成分、PE成分、その他成分、無機フィラー材」の成分分析の他、材料物性である「密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度」を測定する。なお、仮に、第2(自)樹脂材42Bの使用予定がない場合は、第2(自)樹脂材42Bの材料特性の測定を行うことは不要とする。ステップS5における第2(自)樹脂材42Bの材料特性を測定する材料特性測定ステップが、請求項の「第2測定ステップ」に該当する。
ステップS6では、第2(一)樹脂材42Cの成分分析し、更に材料物性値を測定する。以下、第2(一)樹脂材42Cの成分分析値及び材料物性値を測定するステップを成分分析・材料物性測定ステップS6と称し、
図3では「S6」と略記する。この場合、第2(一)樹脂材42C単体を溶融混練し、混練後の第2(一)樹脂材42Cの「PP成分、PE成分、その他成分、無機フィラー材」の成分分析の他、材料物性である「密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度」を測定する。ステップS6における第2(一)樹脂材42Cの材料特性を測定する材料特性測定ステップが、請求項の「第2測定ステップ」に該当する。なお、仮に、第2(一)樹脂材42Cの使用予定がない場合は、第2(一)樹脂材42Cの材料特性の測定を行うことは不要とする。
【0031】
ステップS7では、ステップS2で測定された第1樹脂材41の材料特性、ステップS4乃至S6で測定された第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B及び第2(一)樹脂材42Cの材料特性を基に、第1樹脂材41の投入量の他、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B及び第2(一)樹脂材42Cのうちのいずれか1種類(必要なら2種類以上を混合するもの)の投入量を算定する。以下、投入量を算定するステップを投入量算定ステップS7と称し、
図3では「S7」と略称する。)投入量算定ステップS7が請求項の「算定ステップ」に該当する。なお、投入量算定された第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B及び第2(一)樹脂材42Cのうちのいずれか1種類(2種類以上を混合するものは混合第2樹脂材とも称するが、これらを纏めて第2樹脂材42と称することがある。)が溶融混練され成形された樹脂材について、この際、ステップS6で成分分析値及び材料物性値が測定された第1樹脂材41のPEの成分量が、RP材料のPEの想定成分値より高い場合、第1樹脂材41の投入量を、予め定める想定投入量より減らすと共に、第2樹脂材42の投入量を、予め定める想定投入量より増やす工程を行うのが好ましい。
ステップS8では、S7で投入量が算定された第1樹脂材41と、S7で投入量が算定された混合第2樹脂材との両方を投入し、溶融混練され成形される第1樹脂材41及び第2樹脂材42(混合第2樹脂材を含む)の成形物45(以下「成形第1・第2樹脂材45」と称す。)の成分分析し、更に材料物性値を測定する(以下、このステップを成分分析・材料物性測定ステップS8と称し、
図3では「S8」と略記する。この場合、成形第1・第2樹脂材45の「PP成分、PE成分、その他成分、無機フィラー材」の成分分析の他、材料物性である「密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度」を測定する。仮に、溶融混練後の材料特性(成形第1・第2樹脂材45)の無機フィラー成分が特定範囲内に入る場合、無機フィラー材43の追加の投入が不要となる。
【0032】
ステップS9では、成形第1・第2樹脂材45に関し、RP材料の溶融混練後の材料特性が、S1で把握する商品特性(材料特性)が目標(特定範囲)内となるように、無機フィラー材43の投入量を求める。以下、無機フィラー材43の投入量を求めるステップを算定ステップS9と称し、
図3では「S9」と略記する。無機フィラー成分が特定範囲内に入っており、特定範囲の上限を超える場合、新たな無機フィラー材43の投入を無くす(中止する)ことになる。投入量算定ステップS9が請求項の「投入量算定ステップ」に該当する。
ステップS10では、S9において投入量が算定された無機フィラー材43と、算定された成形第1・第2樹脂材45を投入し、無機フィラー材43と成形第1・第2樹脂材45が溶融混練され成形される成形物(以下「成形最終体46」と称す。)の材料特性を測定する(以下、成形最終体46の成分分析値や材料物性値を測定するステップを成分分析・材料物性測定ステップS10と称し、
図3では「S10」と略記する。この場合、成形最終体46の「PP成分、PE成分、その他成分、無機フィラー材」の成分分析の他、材料物性である「密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度」を測定する。
ステップS11では、成形最終体46の成分分析及び材料物性の結果と、商品特性把握ステップS1で把握する成分分析及び材料物性の結果を対比して検証する。以下、このような対比検証ステップを対比検証ステップS11と称し、
図3では「S11」と略記する。対比検証の結果、成形最終体46の材料の成分が不適切であると判断する場合、例えば、無機フィラー材43と成形第1・第2樹脂材45の投入量を再調整する工程を行う。
ステップS11では、溶融混練し成形される成形最終体46が、S1で把握する商品特性(材料特性)の目標を達成できると判断すると、次のステップS12に進む。ステップS12では、成形最終体46と同様なものを大量に製造する製造工程に進む。
【0033】
表1に示す第1樹脂材41の場合、市場での流通量が多いが、曲げ弾性率が1000MPa以下であって、曲げ弾性率である1100MPa(表1参照)に達しない。このため第1樹脂材41単体ではRP材料を用いたリサイクル製品の品質は保てない。一方、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42C(
図4表2乃至表4参照)が示す「密度、MFR、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度」は、
図5に示す水準に達しているものが多く、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cを用いる場合は軽量化したリサイクル製品を製造できることが分かる。
但し第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cの流通については、RP材料の購入希望会社及び販売会社間の商取引の関係が深くなっており、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cの流通量が減少する状況になると、そのような商取引関係を有しない購入希望会社は希望時に市場から希望数量の第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cを入手しにくい。
【0034】
ところで、本願発明者等が、これまでに蓄積した実験データや知見等から導出したものとして、第1樹脂材41、第2樹脂材42を成分分析し材料物性を測定した結果、第1樹脂材41に対する第2樹脂材42の投入量を調整して混合溶融混練した成形第1・第2樹脂材45等のPP成分が増え、曲げ弾性率の数値が上がって、成形最終体46等は製品化に利用できることが分かる。第1樹脂材41、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cを成分分析し材料物性を測定した結果、第1樹脂材41、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cは、PP、PE及び無機フィラー成分を少なくとも含み、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42CのPPの含有量が、第1樹脂材41のPEの含有量より多く、且つ、第1樹脂材41のPEの含有量が、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42CのPEの含有量より多いことが分かる。
そして、第1樹脂材41のPEの成分量が、溶融混練後のRP材料のPEの想定成分値より高いことを想定できる場合、第1樹脂材41の投入量を予め定める想定投入量より減らすと共に、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cを混合して投入する投入量を予め定める想定投入量より増やす方法が有効であることを見出した。その結果、第1樹脂材41単体は、流通量が大きいものの、曲げ弾性率が1000MPa以下であるため使用用途が限定的であったのが、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cを第1樹脂材41に対し混入させ配合比率を適切に設定する方策を採用することで、溶融混練後のPE成分が減る一方PP成分が増え、更に、曲げ弾性率等の数値が上がって、第1樹脂材41の使用用途に展望が開ける状況になった。即ち、第1樹脂材41に対する第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cの投入量を調整し溶融混練する製造方法の場合、実施例1及び2(後述)に示すような配合比率で、第1樹脂材41に対し第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cを投入させ、これらを混入させ溶融混練させることで、第1樹脂材41の特性より向上して有効利用できることが分かる。
【0035】
以下具体例について説明する。比較例1及び実施例1は
図5の表1の第1樹脂材41の材料2を使用する共に、
図5の表4の第2(一)樹脂材42Cの材料3を使用する。もっとも、
図5の表1の第1樹脂材41の材料2外を使用してもよいし、また、
図5の表4の第2(一)樹脂材42Cの材料3以外を使用しても良い。
最初に、無機フィラー43、第2(家)樹脂材42A及び第2(自)樹脂材42Bを十分に入手できない状況で、第1樹脂材41及び第2(一)樹脂材42Cのみを利用する状況下で、第1樹脂材41、第2(一)樹脂材42Cの成分検出に基づき、配合比率を変更するRP材料の製造方法について開示する。
【0036】
【0037】
上記比較例1に関して、第2(一)樹脂材42C単体を溶融混練した第2樹脂材42と、第1樹脂材41とを溶融混練した成形第1・第2樹脂材45が成形最終体46となる。比較例1の成分(比率)及び材料物性については上記の通りである。比較例1ではPE成分は30.9重量%(背景色有)で、特定範囲であるPE成分は30重量%以下の条件を満たさない。同様に、密度が0.98g/cm3(背景色有)であることから、特定範囲である密度が1.00g/cm3以上且つ1.30g/cm3以下であること」の条件を満たさない。同様に、無機フィラー43が7.0重量%(背景色有)であることから、特定範囲である「溶融混練後の無機フィラー材の投入量を10重量%以上43重量%以下の割合であること」以下の条件を満たさない。
この状態を解決するため、第1樹脂材41、第2樹脂材42間の比率を変更する対策(投入量調整等)を行う。即ち、比較例1の場合では、第1樹脂材41(40重量%)、第2樹脂材42(55重量%)及び無機フィラー(5重量%)であった配合を、投入量を変更調整することで、実施例1では、第1樹脂材41(35重量%)、第2樹脂材42(56重量%)及び無機フィラー(9重量%)の配合を変更する。この投入量調整は、蓄積した実験データや知見等から導出したものを前提として、成分分析し材料物性を測定した結果に基づき行われる。この結果、成形最終体46を成分分析し材料物性を測定すると、下記の実施例1のようになった。
【0038】
【0039】
この結果、PE成分は27.9重量%であって、特定範囲である「PE成分が30重量%以下であること」の条件を満たす。また、無機フィラー43が10.9重量%であって、特定範囲である「溶融混練後の無機フィラー材の投入量を10重量%以上43重量%以下の割合とする」の条件を満たす。同様に、密度が1.00g/cm3であることから、特定範囲である密度が1.00g/cm3以上且つ1.30g/cm3以下であること」以下の条件を満たす。また、MFRが7.1g/10minであることから、「MFRが3.0g/10min以上であること」の特定範囲を満たすことが分かる。また、アイゾット衝撃強度は8.3kJ/m2であることから、「アイゾット衝撃強度が3.0kJ/m2以上であること」の特定範囲を満たす。また、無機フィラーが10.9g/cm3であることから、「無機フィラーが全重量に対し10乃至43重量%以下となること」の特定範囲を満たす。
比較例1及び実施例1の結果から、第2(家)樹脂材42A及び第2(自)樹脂材42Bを十分に入手できない状況でも、第1樹脂材41の投入量を減らし、PP成分を多く含む第2(一)樹脂材42Cの投入量を増やす対応を採用すれば、第1樹脂材41が有効活用できることが分かる。この対応により溶融混練後のPE成分が減る一方PP成分が増え、RP材料の剛性や耐衝撃性等が向上したので、このような配合比率を変更する方法が有効であることが分かる。
【0040】
次に、第2(家)樹脂材42A及び第2(自)樹脂材42Bの使用量を十分に入手できず、第1樹脂材41、第2(一)樹脂材42C及び無機フィラー43のみを利用する状況下で、第1樹脂材41、第2(一)樹脂材42C及び無機フィラー43の成分検出に基づき、配合比率を変更するRP材料の製造方法について開示する。
【0041】
【0042】
比較例2及び実施例2においては、第2(家)樹脂材42A及び第2(自)樹脂材42Bを使用しないため、第2(一)樹脂材42C単体を溶融混練した第2樹脂材42と、第1樹脂材41と無機フィラー43とを溶融混練した成形第1・第2樹脂材45の成形最終体46を成形している。比較例2の成分(比率)に関しては、第1樹脂材41(45重量%)と、第2(一)樹脂材42C(10重量%)とを溶融混練した第2樹脂材42と、無機フィラー43(45重量%)とからなる。比較例2では、無機フィラー43は、45.9重量%(背景色有)であって、特定範囲である「無機フィラーが全重量に対し10乃至43重量%以下となること」の特定範囲を満たさない。同様に、密度が1.33g/cm3(背景色有)であることから、特定範囲である密度が1.00g/cm3以上且つ1.30g/cm3以下であること」の条件を満たさない。アイゾット衝撃強度は2.7kJ/m2(背景色有)であることから、「アイゾット衝撃強度が3.0kJ/m2以上であること」の特定範囲の条件を満たさない。この状態を解決するため、第1樹脂材41と第2樹脂材42との比率を変更する対策(投入量調整等)を行う。即ち、比較例2の場合では、第1樹脂材41(45重量%)と、第2(一)樹脂材42C(10重量%)と、無機フィラー43(45重量%)とであった配合を、投入量を変更調整することで、実施例2では、第1樹脂材41(45重量%)と、第2(一)樹脂材42C(13重量%)と、無機フィラー43(42重量%)の配合に変更する。この投入量調整は、蓄積した実験データや知見等から導出したものを前提として、成分分析し材料物性を測定した結果に基づき行われる。成形最終体46を成分分析し材料物性を測定すると、この内訳値は下記の通りである。
【0043】
【0044】
この結果、実施例2では、無機フィラー43は43.0重量%であり、「無機フィラーが全重量に対し10乃至43重量%であること」の特定範囲の条件を満たす。同様にアイゾット衝撃強度は3.0kJ/m2であることから、「アイゾット衝撃強度が3.0kJ/m2以上であること」の特定範囲の条件を満たす。また、曲げ弾性率が2646MPaであることから、「曲げ弾性率が1100MPa以上であること」の特定範囲の条件を満たす。また、MFRが2.8g/10minであることから、「MFRが2.0g/10min以上であること」の特定範囲を満たす。同様に、密度が1.30g/cm3であることから、「密度が1.00g/cm3以上且つ1.30g/cm3以下であること」の特定範囲の条件を満たす。また、アイゾット衝撃強度は3.0kJ/m2であることから、「アイゾット衝撃強度が3.0kJ/m2以上であること」の特定範囲を満たす。
このような比較例2及び実施例2の結果から、第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B及び第2(一)樹脂材42Cの使用量を十分に入手できず、第1樹脂材41、第2(一)樹脂材42C及び無機フィラー43のみを利用する状況でも、第1樹脂材41の投入量を減らし、PP成分を多く含む第2(一)樹脂材42Cの投入量を増やす対応を採用すれば、第1樹脂材41が有効活用できることが分かる。この対応により溶融混練後のPE成分が減る一方PP成分が増え、曲げ弾性率等の数値が上がったので、このような配合比率を変更する方法が有効であることが分かる。
【0045】
以上、詳述した如く、本実施の形態の製造方法の発明によれば、以下の構成要素を含むものである。即ち、材料密度が1.00g/cm3以上且つ1.30g/cm3以下の特定範囲内となるように材料性能として密度が1.00g/cm3以上且つ1.30g/cm3以下であることを特定範囲とするリサイクルプラスチック材料を製造する製造方法であって、容器包装リサイクル法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から得られる第1樹脂材41(無機フィラー成分を含むことがある)の材料性能を測定する第1測定ステップ(S2)と、ポリプロピレンを主成分とする使用済みプラスチックから得られる第2樹脂材42(無機フィラー成分を含むことがある)の材料性能を測定する第2測定ステップ(S4乃至S6)と、前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップで測定された前記第1樹脂材41及び前記第2樹脂材42(無機フィラー成分を含むことがある)の材料性能を基に、前記第1樹脂材41及び前記第2樹脂材42の投入量のそれぞれを算定する算定ステップ(S7)と、前記第1樹脂材41及び前記第2樹脂材42(無機フィラー成分を含むことがある)に関し、算定された各投入量を基に、前記リサイクルプラスチック材料の溶融混練後の材料性能が前記特定範囲内(密度が1.00g/cm3以上且つ1.30g/cm3以下)となるように、無機フィラー材43の投入量を算定する投入量算定ステップ(S9)とを備える。このような本実施の形態のRP材料の製造方法の場合、第1樹脂材41に対し第2樹脂材42が混入され溶融混練されることで、RP材料の曲げ弾性率やアイゾット衝撃強度の数値が上がって、溶融混練した樹脂材(成形最終体46)は単独で利用が可能となる。この結果、非特許文献1(「2020年の廃プラスチックの使用状況」)の記載の如く、第1樹脂材41の流通量が大きいにもかかわらず有効活用できず、第1樹脂材41単体では使用用途が限定的であった状況が、第1樹脂材41に対し第2樹脂材42を混入させ溶融混練することで、その材料の材料物性(曲げ弾性率の数値等)が上がって、使用用途が限定的な状況が改善される。この結果流通量が多い第1樹脂材41に関し、従来に比べ、環境に配慮して活用することができ、容リ法が適用されるRP材料の利用を有効に進めることができる。
即ち、第2樹脂材42は単体でリサイクルできるのに対し、流入量が多い第1樹脂材41は単体ではリサイクルし難い現状であり、また、第2樹脂材42のうち、特に自動車リサイクル法由来、家電リサイクル法由来の樹脂材は、第1樹脂材41に比べ流通量が少なく、更に、RP材料の購入会社及び販売会社間でのビジネス上の結び付きが強く、流通市場から入手し難くリサイクルが進みにくい現況下、第1樹脂材41に対し第2樹脂材42を適切量混入させ溶融混練することで、溶融混練した樹脂材は、第1樹脂材41の物性に比べて優れる物性になってリサイクルの途を開くことができるので、流入量の多い第1樹脂材41においてリサイクルが大きく進む可能性が高く、総じてリサイクル全体が進むことで、産業上の奏する効果は極めて大きいものと言える。
【0046】
また、本実施の形態のRP材料は、以下の構成要素を含むものである。即ち、材料性能として密度が1.00g/cm3以上且つ1.30g/cm3以下であることを特定範囲とするように製造されるリサイクルプラスチック材料であって、容器包装リサイクル法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から得られ、測定された材料性能を基に、投入量が算定される第1樹脂材41(無機フィラー成分を含むことがある)と、ポリプロピレンを主成分とする使用済みプラスチックから得られ、測定された材料性能を基に、投入量が算定される第2樹脂材42(無機フィラー成分を含むことがある)と、前記第1樹脂材41及び前記第2樹脂材42に関し、算定された各投入量を基に、前記リサイクルプラスチック材料の溶融混練後の材料性能が前記特定範囲(密度が1.00g/cm3以上且つ1.30g/cm3以下)内となるように投入量が算定される無機フィラー材43と、これら投入量が算定された前記第1樹脂材41、前記第2樹脂材42及び前記無機フィラー材43のそれぞれを溶融混練して成形される。このような本実施の形態のRP材料の場合、第1樹脂材41単体では利用用途が限定的であったのに対し、第1樹脂材41に対し第2樹脂材42が混入され溶融混練される成形最終体46の場合、曲げ弾性率やアイゾット衝撃強度等の数値が上がって溶融混練した樹脂材は第1樹脂材41単独の場合と異なり、広範囲に利用できること分かる。この結果、流通量が多い第1樹脂材41が環境に配慮して活用することができ、容リ法が適用されるRP材料の利用を有効に進めることができる。
なお、本実施の形態によれば、第1樹脂材41に対し、第2樹脂材42を用いて、投入量を調整する投入量調整方法を採用したが、必ずしも投入量調整方法を採用する必要はなく、適切な配合比率を最初から設定する方策を採用してもよい。
第1樹脂材41の物性を改善するために投入する第2樹脂材42については、リサイクル材以外のバージン材料を利用しても良いし、市場に出る前の第2(家)樹脂材42A、第2(自)樹脂材42B、第2(一)樹脂材42Cを利用してもよい。
【0047】
以下付記を記載する。付記1は以下の通りである。即ち、材料性能として密度が1.00g/cm3以上且つ1.30g/cm3以下であることを特定範囲とするリサイクルプラスチック材料を製造する製造方法であって、容器包装リサイクル法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から得られる第1リサイクル樹脂材(無機フィラー成分を含むことがある)の材料性能を測定する第1測定ステップ(S2)と、ポリプロピレンを主成分とする使用済みプラスチックから得られる第2リサイクル樹脂材(無機フィラー成分を含むことがある)の材料性能を測定する第2測定ステップ(S4乃至S6)と、前記第1測定ステップ及び前記第2測定ステップで測定された前記第1リサイクル樹脂材及び前記第2リサイクル樹脂材(無機フィラー成分を含むことがある)の材料性能を基に、前記第1リサイクル樹脂材及び前記第2リサイクル樹脂材の投入量のそれぞれを算定する算定ステップ(S7)と、前記第1リサイクル樹脂材及び前記第2リサイクル樹脂材(無機フィラー成分を含むことがある)に関し、算定された各投入量を基に、前記リサイクルプラスチック材料の溶融混練後の材料性能が前記特定範囲内となるように、無機フィラー材の投入量を算定する投入量算定ステップ(S9)と、を有することを特徴とする。
付記2は以下の通りである。即ち、付記1に記載のリサイクルプラスチック材料の製造方法において、投入量算出ステップにおいて、前記リサイクルプラスチック材料の溶融混練後の無機フィラー成分が特定範囲の上限を超える場合、新たな無機フィラー材の投入を無くすことを特徴とする。
付記3は以下の通りである。即ち、付記1又は2に記載のリサイクルプラスチック材料の製造方法において、成形後のリサイクルプラスチックの材料物性が特定範囲とする際に、優先的に適用する優先適用順位に高低を設け、「優先適用 高」としてポリエチレンの含有量が、リサイクルプラスチック材料の全重量に対し30重量%(リサイクルプラスチック材料が溶着される場合は15重量%)以下にすることを定め、以下にすることを定め、且つ「優先適用 低」としてMFRが3.0g/10min以上となることを少なくとも含めることを特徴とする。
付記4は以下の通りである。即ち、付記1乃至3のいずれか一に記載のリサイクルプラスチック材料の製造方法において、第1及び第2リサイクル樹脂材が、ポリプロピレン及びポリエチレンを少なくとも含み、前記第2リサイクル樹脂材のポリプロピレンの含有量は、前記第1リサイクル樹脂材のポリプロピレンの含有量より多く、且つ、前記第1リサイクル樹脂材のポリエチレンの含有量は、前記第2リサイクル樹脂材のポリエチレンの含有量より多いものが選定されることを特徴とする。
付記5は以下の通りである。即ち、付記1乃至4のいずれか一に記載のリサイクルプラスチック材料の製造方法において、第1リサイクル樹脂材のポリエチレンの成分量が、リサイクルプラスチック材料のポリエチレンの想定成分値より高いことが想定できる場合、第1リサイクル樹脂材の投入量を予め定める想定投入量より減らすと共に、第2リサイクル樹脂材を予め定める想定投入量より増やす投入量調整ステップを備えることを特徴とする。
付記6は以下の通りである。即ち、材料性能として密度が1.00g/cm3以上且つ1.30g/cm3以下であることを特定範囲とするように製造されるリサイクルプラスチック材料であって、容器包装リサイクル法が適用される使用済みプラスチック製容器包装から得られ、測定された材料性能を基に、投入量が算定される第1リサイクル樹脂材(無機フィラー成分を含むことがある)と、ポリプロピレンを主成分とする使用済みプラスチックから得られ、測定された材料性能を基に、投入量が算定される第2リサイクル樹脂材(無機フィラー成分を含むことがある)と、前記第1リサイクル樹脂材及び前記第2リサイクル樹脂材に関し、算定された各投入量を基に、前記リサイクルプラスチック材料の溶融混練後の材料性能が前記特定範囲内となるように投入量が算定される無機フィラー材と、これら投入量が算定された前記第1リサイクル樹脂材、前記第2リサイクル樹脂材及び前記無機フィラー材のそれぞれを溶融混練したことを特徴とする。
付記7は以下の通りである。即ち、付記6に記載のリサイクルプラスチック材料において、成形後のリサイクルプラスチック材料におけるポリエチレンの含有量が、リサイクルプラスチック材料の全重量に対し、30重量%以下となるように調整配合されていることを特徴とする。
付記8は以下の通りである。即ち、付記6及び7に記載のリサイクルプラスチック材料において、前記リサイクルプラスチック材料が溶着する場合、成形後のリサイクルプラスチック材料におけるポリエチレンの含有量が、リサイクルプラスチック材料の全重量に対し、15重量%以下となるように調整配合されていることを特徴とする。
付記9は以下の通りである。即ち、付記6乃至8のいずれか一に記載のリサイクルプラスチック材料において、前記材料性能の特定範囲は、下記(1)乃至(4)の全ての条件を満たしている。
(1) 密度(JIS規格 K 7112準拠)が1.00g/cm3率(JIS規格 K 7171準拠)が1100MPa以上、
(2) MFR(JIS規格 K 7210準拠)が2.0g/10min以上、
(3) 曲げ弾性率(JIS規格 K 7171準拠)が1100MPa以上、
(4) アイゾット衝撃強度(JIS規格 K 7110準拠)が3.0kJ/m2以上
【符号の説明】
【0048】
41 第1リサイクル樹脂材(第1樹脂材)
42 PP主成分樹脂材 第2樹脂材
42A 第2(家)樹脂材(家電リサイクル材由来)
42B 第2(自)樹脂材(自動車リサイクル材由来)
42C 第2(一)樹脂材(一般リサイクル材由来)
43 無機フィラー材
S2 第1測定ステップ
S4乃至S6 第2測定ステップ
S7 算定ステップ
S9 投入量算出ステップ