(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137779
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】液体を噴霧するための器具、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 11/02 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61M11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024033977
(22)【出願日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】23163809
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】シュトラウブ・フランク
(72)【発明者】
【氏名】フェヒ・アンドレアス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】器具の外部で混合される液体成分を噴霧するための医療器具および方法を提供する。
【解決手段】器具10は、複数の相互に反応する液体を少なくとも1つの旋回ガス流14によって噴霧し、また、それらの液体を器具のノズル部11の外部で混合するために使用される。器具のノズル部は、1以上の液体を定量供給可能な少なくとも1つの液体出口と、少なくとも1つの旋回ガス流を定量供給可能で、かつ少なくとも1つの液体出口を好ましくは完全に取り囲むガス出口部とを有するノズル本体を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回ガス流(14、14’、14’’)によって液体(13、13’)を噴霧するノズル部(11)が遠位側に配置されている、好ましくは最小侵襲用の器具(10)であって、
前記ノズル部(11)は、液体出口(15、15’)およびガス出口部(16)を有するノズル本体(12)を含み、
前記器具(10)は、前記液体出口(15、15’)を通して液体流(17、17’)を定量供給するように、かつ、前記ガス出口部(16)を通して前記旋回ガス流(14、14’、14’’)を定量供給するように配置され、前記ガス出口部(16)は、前記液体出口(15、15’)を取り囲む
器具(10)。
【請求項2】
前記ノズル部(11)は、前記第1液体出口(15)および第2液体出口(15’)を有し、前記第2液体出口(15’)を通して第2液体流(17’)を定量供給可能であり、前記第2液体出口(15’)は、前記液体出口(15)から離れて配置されている
請求項1に記載の器具(10)。
【請求項3】
前記ガス出口部(16)は、前記第1液体出口(15)に対して同心円状に配置されている第1ガス出口開口部(21)を有する
請求項2に記載の器具(10)。
【請求項4】
前記ガス出口部(16)は、前記第2液体出口(15’)に対して同心円状に配置されている第2ガス出口開口部(21’)を有し、前記第1ガス出口開口部(21)および前記第2ガス出口開口部(21’)は、それぞれ旋回ガス流(14、14’)を放出する
請求項3に記載の器具(10)。
【請求項5】
前記第1ガス出口開口部(21)を通って出てくる前記旋回ガス流(14、14’)および前記第2ガス出口開口部(21’)を通って出てくる前記旋回ガス流(14、14’)は、同じ方向に回転するか、または互いに反対方向に回転する旋回を受ける
請求項4に記載の器具(10)。
【請求項6】
前記第1液体出口(15)および前記第2液体出口(15’)は、中心軸(M)を規定する共通のフロー本体(22)内に互いに離れて配置されている
請求項2に記載の器具(10)。
【請求項7】
前記ガス出口部(16)は、前記フロー本体(22)を取り囲み、かつ、好ましくは前記フロー本体(22)の前記中心軸(M)に対して同心円状に配置されているガス出口開口部(21’’)を有する
請求項6に記載の器具(10)。
【請求項8】
前記フロー本体(22)は、凸状または円錐状の外輪郭を有する
請求項6に記載の器具(10)。
【請求項9】
前記第1旋回ガス流(14)、前記第2旋回ガス流(14’)、および/または、前記フロー本体(22)を取り囲む前記旋回ガス流(14’’)は、前記第1液体流(17)および前記第2液体流(17’)を好ましくは完全に包み込む
請求項2に記載の器具(10)。
【請求項10】
前記器具(10)は、前記ノズル本体(12)に通じるガス供給チャネル(18)を備え、前記ガス供給チャネル(18)を介して、前記ガス出口部(16)にガス供給流(19)を供給することができ、前記ガス供給流(19)に所定の旋回を加える少なくとも1つの旋回生成手段、好ましくは旋回体(20)が前記ノズル本体(12)内に収容されている
請求項1に記載の器具(10)。
【請求項11】
前記液体出口(15)および/または前記第2液体出口(15’)は、前記器具(10)から遠位側に突出して配置されている
請求項2に記載の器具(10)。
【請求項12】
前記器具(10)は、さらに、前記ガス供給チャネル(18)と、各液体出口(15、15’)用の液体毛細管(25、25’)とが互いに離れて延在する長尺シャフト(24)を備え、前記器具(10)は、また、供給装置(28)に連結可能で近位側に配置されたインタフェース装置(26)を備え、前記供給装置(28)は、前記器具(10)に前記液体(13、13’)および前記ガス供給流(19)を供給する
請求項1~11のいずれか1項に記載の器具(10)。
【請求項13】
前記器具(10)は、前記噴霧する工程が終了すると、前記ガス流(14)および前記第2ガス流(14’)よりも先に、前記液体流(17)および前記第2液体流(17’)を遮断するように設計されている制御部(30)を備える
請求項2に記載の器具(10)。
【請求項14】
好ましくは請求項1~11のいずれか1項に記載の器具(10)によって、液体(13、13’)を噴霧する方法であって、
前記ノズル部(11)からガス出口部(16)を通って噴霧方向に流出する旋回ガス流(14、14’、14’’)を生成するステップと、
液体出口(15)を通って流出する第1液体流(17)を生成するステップと、
液体出口(15’)を通って流出する第2液体流(17’)を生成するステップとを含み、
前記旋回ガス流(14、14’、14’’)は、少なくとも1つの前記液体流(17)を包み込む
方法。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載の器具(10)と、必要な前記作動手段を前記器具(10)に供給するための供給装置(28)とを備えるシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回ガス流によって液体を噴霧するノズル部が遠位側に配置された、好ましくは最小侵襲用の医療器具と、この器具を備えるシステムとに関する。本発明は、また、薬液を噴霧するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体の内部、特に、患者の腹部内における外科的介入中、個々の臓器間および/または個々の臓器と腹壁との間に病的付着が形成される場合がある。これらの病的付着は、癒着としても知られ、時には処置後に患者に深刻な影響をもたらし得る。
【0003】
そのような付着を防ぐために、例えば特許文献1に記載されているように、いわゆる付着バリアが使用される。これらの付着バリアは、患部組織領域上へ他の組織層が成長しないように当該患部組織領域に塗布することができる物質である。付着バリアは、噴霧によって有利に塗布される。これらの付着バリアは、塗布直前または塗布中にのみ混合される2つの成分から形成されることが好ましい。
【0004】
付着防止用の複数の成分を噴霧するための様々なシステムが先行技術から知られており、それらは、特に腹腔鏡分野でも使用されている。
【0005】
特許文献2には、2成分の付着バリアを噴霧するように設計されている装置について記載されている。その装置は、2つの成分のそれぞれに対して別個のスプレーノズルを備える。それらの成分はガス流によって噴き出されるため、ガス流は、ノズルを取り囲む周方向の隙間を通って流出する。
【0006】
特許文献3には、患者の体の内部で加圧ガスを用いて少なくとも2つの成分を噴霧するための第2装置について記載されている。その装置はスプレーヘッドを備え、そのスプレーヘッド内において、成分が互いに別々に出てきて、同様にスプレーヘッドに出てくるガス流によって混合および噴霧される。
【0007】
複数の成分用のさらなる噴霧装置については、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、および特許文献8に記載されている。
【0008】
特許文献9にも、生理的接着剤用の外部混合ノズルについて記載されている。このノズルでは、液体成分はノズルの内部で旋回し、噴霧中にノズルの外部に生じる噴霧円錐内で混ざる。
【0009】
特許文献10にも、体積流量および/または粘性が異なる少なくとも2つの流体が噴霧される外部混合ノズルについて記載されている。
【0010】
さらに、特許文献11には、回転ガス流を用いて、接着剤を形成する2成分を噴霧する装置について記載されている。ガス流の出口開口部は、成分用の2つの別個の出口開口部間の中央に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2015/176905号
【特許文献2】国際公開第00/09199号
【特許文献3】欧州特許出願公開第3145417号明細書
【特許文献4】欧州特許第0951311号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0302411号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第2739401号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/189944号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第2695626号明細書
【特許文献9】米国特許第5368563号明細書
【特許文献10】欧州特許第2907582号明細書
【特許文献11】特開2011-194304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これに基づき、本発明の目的は、器具の外部で混合される液体成分を噴霧するための医療器具および方法を提供することであり、特に、液体成分の改善された混合を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本目的は、請求項1に記載の医療器具、請求項14に記載の方法、および請求項15に記載のシステムによって達成される。
【0014】
本発明に係る医療器具は、旋回ガス流によって液体を噴霧する、遠位側に配置されたノズル部を備える。ノズル部は、液体出口およびガス出口部を含むノズル本体を有する。器具は、液体出口を通して液体流を定量供給するように、かつ、ガス出口部を通して旋回ガス流を定量供給するように配置されている。ガス出口部は、旋回ガス流が液体流と可能な限り大きいオーバーラップ領域を有するように、液体出口を好ましくは完全に取り囲むような方法で配置されている。
【0015】
ガス流は、ガス出口部から、ガス出口部で決まる噴霧角度で伝播方向に広がる。ガス流は、伝播方向を向く流れ成分に加えて渦流を受ける(以下、旋回とも呼ぶ)。ガス流がオーバーラップ領域で液体流の液滴を捕捉すると、これらの液滴は、ガス流によって引き込まれ、混合される。ガス流には渦流(旋回)が付与されているため、液体流の液滴にさらなるせん断力が作用し、空中で液滴をより微細な液滴に分裂させる。その結果、より小さい液滴サイズの液滴スペクトルを得ることができる。このように、旋回ガス流により、ノズル部の外部での液体の混合を改善することができる。
【0016】
本発明に係る医療器具の特有の特徴は、ノズル部によって旋回ガス流が生成され、その旋回ガス流を用いてノズル部の外部で液体が混合および噴霧され、それよって、ノズル部に出てくる液体は、好ましくはその全体が、旋回ガス流の周りに、および/または旋回ガス流の中を流れることである。ガス流に旋回が付与されると、ガス/液体混合物の噴霧角度が大きくなり得、それによって、特に広い表面の場合、ガス/液体混合物の塗布および分配が容易になり、加速され得る。ガス流に旋回を加えることによって、制御されたさらなる乱流がガス流に付与される。旋回ガス流が周りを流れる第1液体流の液滴は引き込まれ、内部から外部へおよび/または外部から内部へ軌道に沿って運ばれ、それによって、液滴にせん断力が作用した結果、液滴は霧状になる。また、ガス流に付与された旋回により、液滴サイズが小さい場合、ガス/液体混合物の軸方向流出速度が低下し、液体を組織に均等に塗布することが確実に可能になる。
【0017】
噴霧される液体は、複数の相互に反応する成分からなることが好ましい。噴霧される液体は、例えば初期状態において少なくとも2つの成分で存在する、ゲルにすることができる。ゲルは、ヒドロゲルであることが好ましい。ヒドロゲルは、保水性であると同時に不水溶性のポリマーである。
【0018】
ヒドロゲルは、ポリウレタン系であることが好ましい。液体の成分は、例えば、プレポリマーと、架橋に必要な反応相手とにすることができる。これらの成分は、混合すると互いに反応し、これらの成分が互いに反応する反応速度は、比較的速い。例えば、それらの成分は、室温または体温で60秒以内、50秒以内、40秒以内、またはそれ未満内に互いに(完全に)反応してもよい。したがって、成分は、使用後のノズルアセンブリの詰まりを避けるために、ノズルアセンブリの外部で混合されることが好ましい。
【0019】
第1の実施の形態では、ノズル部は、第1液体出口および第2液体出口を有し、その第2液体出口を通して第2液体流が定量供給され得、第2液体出口は、第1液体出口から離れて配置されている。第2液体出口は、別個の液体出口であることが好ましい。第1液体出口は、第1液体毛細管に関連付けられ、その第1液体毛細管を通して第1液体の第1供給流がノズル部に導かれることが好ましく、第2液体出口は、第2液体毛細管に関連付けられ、その第2液体毛細管を通して第2液体の第2供給流がノズル部に導かれることが好ましい。したがって、混合される2つの液体は、供給装置から器具のノズル部へ別々に輸送することができ、旋回ガス流によってノズル部の外部で混合および噴霧することができる。2つの液体をノズル部の外部で混合することによって、ノズル部の詰まりを避けることができる。第1液体出口と第2液体出口との距離は、0.8mm~1.5mm、好ましくは1.4mmにすることができ、それによって、液体の良好な混合を実現することができると同時に、ノズル部の詰まりを防ぐことができる。
【0020】
ガス出口部は、第1液体出口に対して同心円状に配置されている第1ガス出口開口部を有することが好ましい。ガス出口開口部は、例えば、環状隙間開口部にすることができる。環状隙間開口部の幅は、0.08mm~0.15mm、好ましくは0.1mmにすることができる。しかしながら、ガス出口開口部はまた、複数の環状隙間セグメントに分割することもできる。あるいは、ガス出口部は、第1液体出口に対して同心円状に規定された円上に配置されている複数のガス出口開口部を有することができる。
【0021】
特に、ガス出口部は、第2液体出口に対して同心円状に配置されている第2ガス出口開口部を有し、第1ガス出口開口部および第2ガス出口開口部は、それぞれ旋回ガス流を定量供給する。したがって、第1液体出口および第2液体出口は、それぞれガス出口開口部に取り囲まれている。旋回ガス流は、液体出口から出てくる液体を取り込み、それらの液体を、生じる2つの噴霧円錐がノズル部の外部でオーバーラップする状態で噴霧する。2つの液体流の改善された混合がオーバーラップ領域で生じる。
【0022】
第1ガス出口開口部および第2ガス出口開口部を通って流出する旋回ガス流は、同じ方向に回転するか、または互いに反対方向に回転する旋回を受けることが好ましい。
【0023】
第2の実施の形態では、第1液体出口および第2液体出口は、中心軸Mを規定するフロー本体内に互いに離れて配置されている。
【0024】
特に、ガス出口部は、フロー本体を取り囲み、かつ、好ましくはフロー本体の中心軸Mに対して同心円状に配置されているガス出口開口部を有する。フロー本体は、凸状外輪郭を有することが好ましく、それによって、ガス流は、フロー本体sの外輪郭に沿い、2つの液体の引き込みが改善され得る。フロー本体sの表面は、疎水性コーティングで設計されることが好ましい。これにより、器具の遠位端部に液滴が付着するのを防ぐことができ、そうでなければ、(互いに反応して)硬化した液滴の蓄積を招く可能性があり、ガス出口開口部および/または液体出口を塞ぎ得る。
【0025】
第1の実施の形態および/または第2の実施の形態では、ノズル部の上流で液体流とガス流とができるだけ広範囲にオーバーラップするように、1以上の旋回ガス流が第1液体流および第2液体流を完全に包み込むことが好ましい。このようにして、液体の可能な限り大きい混合ゾーンを得ることができる。
【0026】
少なくとも1つのガス供給チャネルがノズル本体に通じており、それによって、ガス供給チャネルを介して、ガス出口部にガス供給流を供給できることが好ましい。特に、ガス供給流に所定の旋回を加える少なくとも1つの旋回生成手段がノズル本体内に収容されている。旋回生成手段は、例えば、ガス供給流に所定の旋回が付与されるように配置されている旋回体として設計することができる。旋回生成手段は、また、所定の旋回が付与されるようにガス供給流をガス出口開口部に供給する連結チャネルとして設計することもできる。旋回の回転軸に対する旋回の角度を表すガス旋回角度は、特に15°よりも大きく、好ましくは20°よりも大きく、特に好ましくは25°よりも大きくすることができる。
【0027】
特に、第1液体出口および/または第2液体出口は、器具から遠位側に突出して配置され、これにより、噴霧工程が中断された場合、器具の遠位端部に液滴がより付着しにくくなる。ガス流は液滴を覆って流れ、そのため、液体流とガス流とがほぼ同時に遮断されても、液体出口に付着している液滴が、既に流れ出たガス流によって引き込まれる。
【0028】
器具は、また、ガス供給チャネルと、各液体出口用の液体毛細管とが配置されている長尺シャフトを備えることが好ましい。器具は、また、供給装置に連結可能で近位側に配置されたインタフェース装置を備えることもできる。供給装置は、器具に液体およびガス供給流を供給するように配置されてもよい。
【0029】
器具は、さらに、噴霧工程が終了すると、ガス流および存在すれば第2ガス流よりも先に、第1液体流および存在すれば第2液体流を遮断する制御部を備えることが好ましい。制御部は、また、噴霧工程が開始されると、第1液体流よりも先に第1ガス流を流し始め、存在すれば同様に、第2液体流よりも先に第2ガス流を流し始めることができる。どちらの対策も、器具の遠位端部における液滴の蓄積を避ける助けとなり得る。
【0030】
好ましくは上記タイプの器具によって液体を噴霧するための本発明に係る方法は、以下のステップを含む。
【0031】
ノズル部からガス出口部を通って噴霧方向に流出する第1旋回ガス流および/または第2旋回ガス流を生成するステップ。
【0032】
液体出口を通って第1液体ガス流へ流出する第1液体流を生成するステップ。
【0033】
第2液体出口を通って第1ガス流へ、または存在すれば第2旋回ガス流へ流出する第2液体流を生成するステップ。
【0034】
第1旋回ガス流および/または第2旋回ガス流は、第1液体流および第2液体流を好ましくは完全に包み込む。
【0035】
特に、噴霧工程が終了すると、第1液体流および第2液体流は、第1ガス流および存在すれば第2ガス流よりも先に遮断される。噴霧工程の開始時には、第1ガス流および存在すれば第2ガス流は、第1液体流および第2液体流よりも先に流し始められることが好ましい。
【0036】
本発明に係る器具に関して説明される特徴および利点はすべて、本発明に係る方法にも適用可能である。
【0037】
本発明に係るシステムは、上記タイプの器具と、必要な作動手段を器具に供給するための供給装置とを備える。作動手段は、例えば、ガスもしくは液体などの流体、および/または、電圧、特に高周波交流電圧にすることができる。
【0038】
有利なさらなる実施の形態のさらなる詳細または本発明の詳細は、図面、明細書および従属請求項から導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、供給装置を備えた器具の実施例の概略図である。
【
図2】
図2は、第1の実施例による器具におけるノズル部の横断面図である。
【
図3】
図3は、第2の実施例による器具におけるノズル部の横断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施例による器具におけるノズル部の縦断面図である。
【
図5】
図5は、第2の実施例による器具におけるノズル部の縦断面図である。
【
図6】
図6は、第3の実施例による器具におけるノズル部の遠位上面図である。
【
図7】
図7は、第3の実施例による器具におけるノズル部の縦断面図である。
【
図8】
図8は、第3の実施例による器具における変更されたノズル部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、複数の液体成分を供給、混合および噴霧するためのシステム100を示す。システム100は、器具10と、供給装置28とを備える。器具10は、最小侵襲用、特に腹腔鏡用に設計されることが好ましい。器具10は、その遠位側に配置されているノズル部11を備える。ノズル部11は、第1旋回ガス流14および/または第2旋回ガス流14’によって液体13および13’を噴霧するように設計されている。
【0041】
ノズル部11は、第1液体出口15および第2液体出口15’を有し、それらを通って、第1液体13の第1液体流17および第2液体13’の第2液体流17’が流れる。ノズル部11は、さらに、第1ガス流14および/または第2ガス流14’を定量供給するガス出口アセンブリ16を含む。
【0042】
器具10は、噴霧される液体13’および13と、旋回ガス流を生成するためのガスとが輸送される長尺シャフト31を備える。器具10は、その近位端部33にインタフェース装置26を備える。インタフェース装置26は、供給装置28に連結される。供給装置28は、液体13および第2液体13’を供給する。
【0043】
器具10の長尺シャフト31は、液体13に関連付けられている液体毛細管25と、第2液体13’に関連付けられている別個の第2液体毛細管25’とを有する。液体13および13’は、器具10の近位端部33のインタフェース装置26から、器具10の遠位端部32のノズル部11まで液体毛細管25および25’を介して輸送される。器具10の長尺シャフト31内には、器具10の近位端部33のインタフェース装置26から遠位端部32のノズルアセンブリ11までガス供給流19を輸送するガス供給チャネル18も配置されている。
【0044】
供給装置28は、第1成分の第1ソース34と、第2成分の第2ソース35と、希釈剤の第3ソース36と、ガスの第4ソース37とを有する。第1成分は、例えば、プレポリマーであってもよい。第1ソース34内のプレポリマーは、例えば9mPa・sよりも大きい比較的高い粘性を有することができ、そのため、混合装置40内でそのプレポリマーに第3ソース36からの希釈剤を加えることができる。希釈剤は、例えば水にすることができる。希釈剤と混合された第1成分は第1液体13を形成し、その第1液体13は、予混合後に第1投与部38を介してインタフェース装置26に定量供給することができる。第2成分は、触媒であってもよい。第2成分は第2液体13’を形成し、第2液体13’は、供給装置28から別個の計量部39を介してインタフェース装置26に定量供給することができる。第2液体は、例えば、第1液体の触媒にすることができる。供給装置28は、また、ガス用の第4ソース37を有する。ガスは、二酸化炭素、空気、または不活性ガス、例えば、窒素、もしくはアルゴンなどの希ガスであることが好ましい。第4ソース37からのガスは、供給装置28によってインタフェース装置26を介して器具10に供給される。ソース34、35、36、37は、例えば、成分が貯蔵されるリザーバまたはタンクであってもよい。あるいは、ソース34、35、36、37はまた、成分の供給ラインとの連結部にすることもできる。
【0045】
器具10は、また、噴霧工程が終了すると、ガス流14、14’、14’’よりも先に液体流17、17’を遮断する制御部30を備える。同様に、制御部30は、噴霧工程の開始時にガス流14、14’、14’’よりも後に液体流17および17’を作動させる。
【0046】
図2は、
図4に描かれた断面Aに沿った、第1の実施例による器具10におけるノズル部11のノズル本体12の横断面を示す。ノズル本体12内には、ガス供給流19が導かれるガス供給チャネル18が設けられている。ガス供給流19は、図面平面から外に向かっている。
【0047】
ノズル本体12内には、第1液体出口15および第2液体出口15’も配置されている。第1液体流17は、第1液体出口15を通して定量供給される。第2液体出口15’は、第2液体流17’用に設けられている。液体出口15および15’は、ガス出口部16を共に形成するガス出口開口部21および21’にそれぞれ取り囲まれている。
【0048】
さらに、ノズル本体12は、旋回生成手段を収容している。この実施例では、旋回生成手段は、連結ダクト41、41’によって形成されており、それらの連結ダクト41、41’を介して、ガス出口開口部21および21’がガス供給ダクト18に流体的に連結されている。連結ダクト41は、中央ガス供給流19が2つの部分ガス流に分割されるように配置されている。部分ガス流は、第1ガス出口開口部21に第1旋回ガス流14が形成され、第2ガス出口開口部21’に第2旋回ガス流14’が形成されるように、連結ダクト41、41’によってガス出口開口部21、21’内に導かれる。部分ガス流は、連結ダクト41、41’を通して、ガス出口部16のガス出口開口部21、21’内に、好ましくは液体出口15、15’に対して接線方向に導入される。部分流は、ノズル本体12の横断面に対してある流入角度でガス出口開口部21、21’に流れ込むことができる。この実施例において、連結ダクト41、41’は、第1ガス流14および第2ガス流14’が同じ回転方向に流れるように配置されている。さらに、または代替として、ガス出口開口部21、21’には、第1ガス流14および第2ガス流14’に旋回を与える旋回体20、20’を配置することができる。
【0049】
図3は、第2の実施例による
図5の断面Aに沿った横断面を示す。
図3に示す例について、連結ダクト41は、ガス流14および14’が互いに反対方向に回転するように配置されているが、前述したことは、参照符号を参照して適宜適用される。
図3は、
図5の断面Aに沿った横断面を示す。
【0050】
図4は、第1の実施例によるノズル部11の縦断面を示す。ノズル本体12は、ガス供給流19をノズル部11に供給するガス供給チャネル18を収容している。第1液体流17および第2液体流17’が導かれる第1液体毛細管25および第2液体毛細管25’も、ノズル本体12内に配置されている。第1液体毛細管25は、第1液体出口15で終端し、第2液体毛細管25’は、第2液体出口15’で終端する。
【0051】
ノズル部11の一方の端部セクション内には、第1液体出口15を中心として同心円状にガス出口開口部21が配置されている。この例において、第1ガス出口開口部21は、環状隙間として設計されている。中央ガス供給チャネル18は、連結チャネル41を介して第1ガス出口開口部21に連結されている。ノズル部11の端部セクション内には、第2液体出口15’を中心として同心円状に第2ガス出口開口部21’も配置されている。第2ガス出口開口部21’も、環状隙間として設計されており、第2ガス出口開口部21は、連結チャネル41’を介してガス供給チャネル18に連結されている。連結ダクト41は、ガス供給流19が、反時計回りの旋回を有する2つの部分流に分割されるように配置されている。第1旋回ガス流14および第2旋回ガス流14’は、同じ方向に回転する。第1液体出口15および第2液体出口15’は、器具10から遠位側に距離V突出している。
【0052】
図5は、ノズル部11の第2の例の縦断面を示す。
図5に関しても、前述したことが参照符号に基づいて適宜適用される。
図5は、旋回ガス流14と第2旋回ガス流14’とが互いに反対方向に回転するように連結ダクト41が配置されている点で
図4と異なる。
【0053】
図6は、第3の実施例によるノズル部11の遠位上面図を示す。この実施例において、液体出口15および15’は、共通のフロー本体22内に配置されている。フロー本体22は、ガス出口部16に取り囲まれている。この目的のために、ガス出口部16は、フロー本体22を取り囲むガス出口開口部21’’を有する。このガス出口開口部21’’も、環状隙間として設計されている。フロー本体22を取り囲む旋回ガス流14’’を生成するために、ガス供給流19にさらなる角運動量を付与する旋回体20がノズル本体12内に設けられている。
【0054】
図7は、2つの液体出口15および15’がフロー本体22内に配置されているノズル部の実施例を示す。フロー本体22は、ガス出口開口部21’’に取り囲まれている。ガス出口開口部21’’には、ガス供給流19に回転運動量を付与する旋回体20が少なくとも1つ配置されている。フロー本体22の外輪郭は、円錐として設計されている。さらに、フロー本体22の外輪郭が円錐台として設計されることも可能である。フロー本体22の表面23は、追加コーティング27を有する。そのコーティングは、例えば疎水性を有し得る。
【0055】
図8は、液体出口15および15’がフロー本体22内に設けられているノズル部の第2の例を示す。フロー本体22は、凸状外輪郭を有する。
図8に示す例においても、フロー本体22の表面23にはコーティングが施されており、そのコーティングは、例えば疎水性にすることができる。
【0056】
図9は、時間tに対する第1ガス流14、第2ガス流14’または第3ガス流14’’と、第1液体流17または第2液体流17’との質量流量
(以降mと記載する)を示す。それぞれの質量流量は、m14、m14’、m14’’およびm17、m17’と表示されている。噴霧工程の開始時には、液体流17、17’の質量流量m17、m17’が導入される前に、ガス流14、14’または14’’の質量流量m14、m14’、m14’’が最初に導入される。それに対応して、噴霧工程終了時には、ガス流14、14’、14’’の質量流量m14、m14’、m14’’よりも先に、液体流17、17’の質量流量m17、m17’が遮断される。
【0057】
本発明に係る器具10は、複数の相互に反応する液体13、13’を少なくとも1つの旋回ガス流14、14’、14’’によって噴霧し、また、それらの液体13、13’を器具10のノズル部11の外部で混合するために使用される。器具10のノズル部11は、1以上の液体13、13’を定量供給可能な少なくとも1つの液体出口15、15’と、少なくとも1つの旋回ガス流14、14’、14’’を定量供給可能で、かつ少なくとも1つの液体出口を好ましくは完全に取り囲むガス出口部16とを有するノズル本体12を含む。
【符号の説明】
【0058】
10 器具
11 ノズル部
12 ノズル本体
13 第1液体(プレポリマー)
13’ 第2液体(触媒)
14 第1旋回ガス流
14’ 第2旋回ガス流
14’’ 旋回ガス流
15 第1液体出口
15’ 第2液体出口
16 ガス出口部
17 第1液体流
17’ 第2液体流
18 ガス供給チャネル
19 ガス供給流
20 旋回体
21 第1ガス出口開口部
21’ 第2ガス出口開口部
21’’ ガス出口開口部
22 フロー本体
23 フロー本体の表面
24 器具のシャフト
25 第1液体毛細管
25’ 第2液体毛細管
26 インタフェース装置
27 コーティング
28 供給装置
29 第1液体供給流
29’ 第2液体供給流
30 制御部
31 器具の長尺シャフト
32 器具の遠位端部
33 器具の近位端部
34 第1成分の第1ソース
35 第2成分の第2ソース
36 希釈剤(水)の第3ソース
37 ガスの第4ソース
38 第1投与部(ポンプ)
39 第2投与部(ポンプ)
40 混合部
41 連結チャネル
A 断面
m 質量流量
t 時間
V 距離
【外国語明細書】